オルターエゴ人間と魔女の冒険譚
動点t/ポテトたくさんの人
プロローグ
両親を…殺害された。
昨日の出来事であった。
高校生の俺にはあまりにもキツすぎた現実を突きつけられた。
それはいつも通り、普段と相変わらずして過ごしていた時のこと。夏休み前のあのウキウキ感で胸が躍っていたころだよ。
いつも同じ時刻、学校に出る時、母親から
「最近物騒だから行き帰りとか、気をつけてね」
と言われた。
まさか、そんな被害に俺は遭うとは思ってもいなかった。
放課後、友達は皆バイトで忙しかったので、一人で家路についた。
家に帰ってきてテレビをつけると、
「おいおい…そこ、両親の職場やんけ…」
そう、職場である枕山市もろともが壊滅していた。その映像が虚しくも俺の目の前に映った。
死者は多数、5万人を超えたそうだ。
犯人は…
"グラウド"
"グラウド"とは、超巨大超越型猛獣グラウドと呼ばれている。だいだらぼっちみたいな見た目をした、首から上は人間でそこから下は巨大かつ強靭な肉体を持ち、得体の知れぬ液体で塗れている。
その"グラウド"の身体構成細胞は、この世に存在しないものだとわかっている。
そんな猛獣たちが、ここ日本で暴走し、平日の昼、父と母の職場の枕山市を消滅させてしまったと。
悔しすぎる。何もできなかった自分が悔しい。
それからグラウドが討伐されるまでは早かった。市を滅亡後すぐに討伐されたようだ。
全国、いや世界中でこのことが起きているのだ。国際的に問題視されていることであり、被害者が世界で106万人を超えたそうだ。
世界のどこかの国では、都市を数個滅亡させられ、国が崩壊したということが報道された。
誰が討伐した、などは報道されておらず、周りの人間も知ってはいなかった。
Twitterをみても誰が討伐したのか、ということの考察が無数にされている。
そして"グラウド"の暴走と同時並行してよくニュースに上がることが…
首のない死体が相次いで発見される_____
犯人は、かの"グラウド"…ではない。何者かはほとんどわかっていない。
逆に、わかっていることとすれば、黒ずくめの"人"であること、らしい。
そして、それらの犯行は全て真夜中に行われると。
そこで、ある一つの噂が立てられている。
グラウドの生首と首なき死体がほぼ一致した、というものだ。
信じ難いが、もしこれが真実であるなら、関連性を見出せるのかもしれない…。
俺は噂には信じないのだが、これにはなにか妙に惹かれるものがあり、これだけ少し信じている。
だから俺は、その黒ずくめの"人間"と"グラウドを許さない、許すわけにはいかない。
いつしかこの手で_____
とは現実にはいかない。そんな技量があればとっくに大金持ちさ。
そんな暗くも悲しき思いを抱きながら、俺は祖父母たちへ連絡し、祖父母の家に行った。
行き途中、泣いた。無惨にもなにもできない。
その夜、街灯に照らされた街で一人、闇を抱えたまま眠る少年がいた。
朝、祖父母に心配されるも、
「大丈夫、俺はちゃんと生きていけるよ」
と、言い残し、家を出た。
俺は普通の、平凡な高校生、神田真介。
…すぐには立ち直れないよ。
両親が、得体の知れないデカブツに殺された俺の気持ちを考えてみてくれよ…。
「もう…なんか嫌やな…。でもいつしか、科学者にでもなって"グラウド"を倒す!」
そう意気込んだ瞬間、周りの景色が一変した。
「は…ここは…どこやねんここは!」
異質極まりない謎の空間に1人、俺は取り残されている、そんな感じがした。
そして次の瞬間…
目の前が白飛びした。
「ここは…どこや…?」
重い瞼を開く。するとそこには…
箒に跨った人々が青天高く飛んでおり、おそらく仕事をこなしている。
あるところでは商売あるところでは魔法?の練習、あるところでは花植え…と。
目の前には聳え立つ、壮大で威厳に満ちた城らしきものがある。
その手前、数本の道の交差点には噴水があり、花で縁取られていた。
周りの景色はというと、まるでRPGのような、現実世界とは違うものである。
白を基調とした建築物たちが俺を囲う。
空は美しき青藍に染められ、混ざり合いし白雲とは別格のハーモニーを有し、我が身を熱す光線はギラギラと照りつけ輝いている。
優しい、どこか懐かしいような、でも嗅いだことのない香りが俺を纏う。
「え…ここ、どこやねん…」
と立ちあがろうとしたとき、
ゴソッ
「ん…なんや…?」
そこには、同い年くらいの女子がいた。
「あ…あ、すみません!」
「いえいえいえ、こちらこそなのですが。」
「え…もしかして…!」
「あなたも…」
『ここに迷い込んで…!』
「とりあえず、落ち着いていきましょう。俺の名前は神田真介。高1やってます」
「わ…私は天野玲子。私も高校生で1年です」
まさか…本当に同い年とは。
「そうか…そうなら敬語はいらんな。気軽にいきましょう」
「そ…そうね。まぁそれはおいといて、ここは一体どこなのかしら」
「いやー全然わかんねぇぜ。とりあえずなにもせーへんわけにはいかへんから通行人に聞くしかないな」
「なにも行動せず彷徨うよりその方がいい」
ということで、慌てつつも冷静になり。
「すみません…少しお伺いよろしいですか?」
「はい、なんでしょう」
おお、ここは母国語が日本語なのか、日本語が通じるのか!なんと嬉しいものであるか。よかった。
隣にいる天野という女子も安堵の様子。
「ここって、一体どこなのでしょう…?」
「もしかして…異世界人かい?」
「…!そうなんです!急に…迷い込んでここにやってきました」
「わ…私もなのです。どうかここのことを教えてくれないでしょうか」
「いいでしょう、お教えいたします」
その男の人は笑顔で答えてくれた。
「ここは宇宙大二世界の一つ、"ユビリート"。宇宙には2つの世界が同時並行で存在していて、一つは君たちの出身の地球世界。そして二つ目がこの君たちでいう異世界、"ユビリート"」
「なるほどです…」
「私もちゃんと聞いてないとね」
「そしてここは"ユビリート"の一つの国家"アルソウラスカ帝国"。そしてその首都ミナロバの中枢街。ここはね、魔法で満ち溢れている世界なのだよ」
「あ、今でも上空で箒に跨って飛んでらっしゃいますものね」
「そう。ここの人間は生まれてすぐに魔術を習得して、それぞれの自分の道に生かすのだよ。ただ異世界人からしたらちと難しいかもよ」
「この国家の隣には"ナサティルー帝国"が存在していたのだが…」
『だが…?』
「つい最近な…。知っているだろう、"グラウド"たちによって滅ぼされたんだ」
「ほんとですか…!」
「あぁ、そこは貿易国で栄えていたから我々の国、他の国々も大ダメージだよ。とくに大農作物であった"ロルリード"の生産がストップしてしまったからな」
「その"ロルリード"とやらというのは?」
「地球世界でいう米みたいなものだよ。我々の主食に値する」
「そんなものが少なくなると…!」
「そう、ここら一体が軽い食糧難にあっているのだよ」
「それは災難ですね…」
「そんでもって、"グラウド"はいつどこで出現するかわからない。だから我々の国のど真ん中に出現してもおかしくない状況なのだ」
「そしてもう一つ話そう。魔法を使えるようになったら、男は魔漢大師、女は魔女になれる。そしてそれらになると一つ、切符を授かることになる」
「その切符とは?」
「そう、地球世界でいう"警察"、"ラルライザ防衛隊"の一員になれるのだ」
「"ラルライザ防衛隊"は出現した"グラウド"たちを討伐することが仕事である。皆命懸けなのだ。その戦場で命を落とす人も少なくない」
「なるほど…ということは、実質的に"グラウド"をボッコボコにできるということか」
「そして、その際にはどこかしらで異空間ゲートが出現する。そこから地球世界に移動でき、漏れ出した"グラウド"を討伐する」
「地球世界では、誰が倒したなど報じられてなかったんです」
「なるほど。隠したかったんだろうな。話を戻そう。その異空間ゲートはいつどこに出現するかわからない。そして"ラルライザ防衛隊"はそれをいち早く感知し見つけ、ゲートをくぐり"向こう側"の安否やこちらの世界での討伐を行う」
「しかしながら…君たちはすごいよ」
「どうしてですか?」
「実はゲートをくぐるときには、地球世界側の人間の体じゃ滅びてしまうほどの魔術を負荷させてしまうので、普通なら消滅する。しかし君たちは何事もなかったようにここにやってきた。君たちはただものではないんだよ」
「なるほど…では私たちはいずれ化けてしまうかも…と」
「まぁ話もここらへんで理解してくれたかな。では金を少し分けてやる。それで泊まり込みやらなんやらに使いなさい。ではワタクシはこれで」
『あっ、ありがとうございます!』
というと、額に傷をつけた男は去っていった。
異世界人だというのにあれだけ紳士に振舞ってくれて、嬉しかった。それもお金もいただいて。あぁ、優しい人でよかった。
「まぁ…なんや。とりあえずこれで宿、泊まるか」
「そうだね…。」
「もしかしてなんやけど、聞いてええか?」
「はい、なんでしょう」
「俺さ…"グラウト"に…両親殺されてしまったんよ」
すると天野は驚いた形相でこちらをみた。
「私も…なんだ。絶対いつか…倒してやる!って意気込んだ瞬間ここに…」
「俺もやねん!……ってことはあの噂…」
「ええ、私は信じてるわ」
「俺もや…ってことは思いも志も同じってわけか」
『絶対"グラウド"を滅亡させて、悪き指導者の首をとる!そして、地球世界とユビリートの平和を掴み取る!』
オルターエゴ人間と魔女の冒険譚 動点t/ポテトたくさんの人 @Doomight
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