そんな時に我々は、交差点にある喫茶店でグラタンパイを食べ、 東に向かっ走り出しすのです

五木史人

アホ化したわたしには理解不能だが


わたしは子どもの頃、神童だった。

時間と共にアホ化が進み、今に至る。

もしあと少しアホ化の進行が早かったら、大学には入れてなかったはずだ。


神童だった頃の日記を読むと、日々の事や物事に対する考え方や生き方が書かれていた。


ここで日記の抜粋。


『そんな時に我々は、交差点にある喫茶店でグラタンパイを食べ、

東に向かっ走り出しすのです』


意味不明だが、神童の言う事は意味深だ。

アホ化したわたしには理解不能だが。


我々とは、すべての時間軸にいる自分の事だ。

そう、だから今のわたしも含まれる。


『そんな時』がどんな時かと言うと、『おもちゃが壊れた時』だそうだ。

例えが子どもだが、まあそれは神童とは言え所詮わらべなのだ。


『おもちゃが壊れた時』今のわたしに例えるなら、『すべての人間関係が壊れた時』に当たるだろう。

身の危険を感じる程の壊れっぷりに、さすがにビビっている。


交差点の喫茶店で、グラタンパイなど頼んでる場合じゃないのだ!

やばい!友人が・・・違う元友人がわたしを探す姿が見えた!


わたしはグラタンパイを口に押し込み、素早く会計を済ませ、おつりも受け取らずに東へ走り出した。


東に何があるかなんて、アホ化したわたしには解らない。

ただ神童だった自分を信じるほかない。


交差点の向こうで信号待ちの元友人たちが、怒鳴り散らしていた。

構うもんか!わたしは無視して東へ走った。


大切な日記はリュックの中だ。その存在になにか安心感を感じた。

わたしは駅に突入すると、電車の閉まりかけのドアに滑り込んだ。

普段駅を使わないわたしには、どこに向かうかも解らなかった。



・・・と、見知らぬ駅に降りた時、目の前にいた初めて会う女子大生に説明した。


彼女が紺色のデニムのジャケットを着ていたからだ。

始めた会う人間にこんな事を言われて、彼女は驚いていた。


『そんな時に我々は、交差点にある喫茶店でグラタンパイを食べ、

東に向かっ走り出すのです』

この後に書かれた文を紹介しよう。

『見知らぬ場所で、我々好みの女子が新たなおもちゃをくれる。

その女子は紺色の服を着ているはず』


もしかしたら神童だった頃のわたしは、運命の糸を読めたのかもしてない。

そう思えるかのように、紺色のデニムのジャケットを着た女子は、

「おもしろ話だね」

と言って笑ってくれた♪


完♪

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そんな時に我々は、交差点にある喫茶店でグラタンパイを食べ、 東に向かっ走り出しすのです 五木史人 @ituki-siso

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