第8話 幸せな私と、幸せなあいつ

あの日から数ヶ月が経ち、俺はなるべく目立った行動を取らないように気をつけていた。


すると、悪目立ちしないというだけで、クラス内での居心地の悪さは徐々に減っていき、クラスメイトと挨拶を交わせるぐらいまでにはなれていた。


ただ、未だに友達と呼べる人はできてはいない。

クラス内で堂々と絵理と付き合っているといえるほどの立ち位置になりたいところだが、なかなかうまくいかない。


「田仲くん、そこホッチキスいらないよ」

「あ、ああ。悪い」


放課後、佐々木とクラス委員の作業を行う。

手慣れたと思っていたが、案外気を抜けないものらしい。


「最近どうだ?綾野さんとうまくいってるのか?」

「うん。彼氏とヨリを戻してから、なんか少し優しくなったみたい」

「それはよかった」

「まあ、彼氏とヨリを戻したからそうなったのかは、ちょっと疑問だけどね」

「あはは」


佐々木に睨まれて、乾いた笑い声しか出せずにいる。


「それより、田仲くんはどう?結構クラスになじでるんじゃない?」

「うーん、前よりかはね。けど、まだ壁があるように感じて」

「そっか」


そう言って、彼女は作業する手を止めない。

そろそろ、愛想を尽かされるんじゃないかと、頭をよぎるがホッチキスの音とともにそれを消し去った。


「後もう一歩だと思うよ」

「もう一歩か...」

「そう。もう一歩」


作業を終わらせ、あとは出来上がった書類を先生に運ぶだけとなった。


「じゃ、これ持っていくよ。また、明日な」

「わかった。また明日」


そう言って、手を振り佐々木が教室を後にした。


もう一歩。


こいつの正体は、何かわかっている。


俺はまだ止まっているだけで、動き出したわけではなかった。


そろそろ自分から、動かなければいけないみたいだ。


☆ ☆ ☆


「沙織、いつもどこで髪を切ってるんだ?」

「え、何急に?」

「一歩前に進みたいんだ」

「さすがに私でも何言ってるのかわからないよ、兄ちゃん」


今までの経緯を説明し、まずは見た目からどうにかしようと思っていることを伝えた。


「なるほどね。あの兄ちゃんが友達を...。雪でも降りそうだね」

「んなもん降るか。教えてくれよ」

「はいはい。ラインに地図送っとく。ちゃんと予約してから行くんだよ?」

「お、おお。ありがとう」


思い立ったらすぐ行動、沙織に教えられた美容院へ予約を入れ、母さんから金をもらい、すぐ切りに行った。


「うん、まあまあいい感じじゃないかな」


帰ってきて、沙織に感想をもらい、やや満足気味。


髪を切っただけで、なぜか少しだけ前向きになれた気がした。


「明日それで、思いっきり砕けてこいお兄ちゃん」

「砕けたくはねえな」

「でもさ、いきなり佐々木さんを海に誘うよりかは簡単でしょ?」

「ふっ、たしかに。そうかもな」


沙織にはいつも励まされている気がする。


「あ!私お菓子作ろうか?それも一緒に渡せば友達なんてすぐだよ?」

「あはは。前よりも嫌われる」

「あ?」

「い、いや。沙織もうそろそろ受験だろ?気持ちだけ受け取っとくよ」


あんなものを渡したら刑務所に連れていかれる。


「まあ、何はともあれ頑張ってね」

「ああ。お前も受験、いい結果となるといいな」

「まあ、私は優秀だからね。楽勝だよ」

「そうだな。お前なら絶対大丈夫だ。本当にそう思う」

「なっ、は、早く寝て明日砕けてこい!バカ兄ちゃん」

「ああ。そうする」


お休みと言って、自室に戻った。


あの日のことを思い出す。

目を閉じると、彼女の温もりがまだ残っている気がする。


あの日に帰りたい。

その一心でこの数ヶ月、クラスメイトの信頼を取り戻すのに必死だった。

罵倒され、拒絶され、それでもめげずに低姿勢を貫き、歯を食いしばって日々を送った。


すると、なんとか敵意を感じることがほぼなくなった。


佐々木も言った。

後一歩。


それは、自分から人に話しかけ、友達となることを許してもらう。


俺がずっと避けて、やってこなかったことだ。


正直怖くないといえば、嘘になる。

昔とは違う。

すでにみんなグループが出来上がっている。


そんな中に入る。

ほぼ不可能。わかってる。

負け戦濃厚。

ただ惨めで、疎外感を無駄に感じるだけの一日になる。


ただそれでも、可能性がわずかでもあるのなら、それは行動を起こさないことには手に入りはしない。


少なくても、あいつと出会ってそれだけは知ったんだって、そう思いたい。


☆ ☆ ☆


「あ、田仲くん髪切ったんだね」

「あ、ああ。そうなんだ、暑くてな」

「わかるー、最近暑いよね。でさ、恵美あのことなんだけど」



「田仲、頭切った?」

「頭は切ってはいない」

「髪だよな?あはは、間違えた。いい感じじゃん」



「あれ田仲くん髪切ったんだね」

「そうなんだ。妹に店教えてもらって行ってきた」

「へー、涼しそうだね。それでな、山田昨日やったゲームなんだけど」



登校してから少なくても三人に話しかけたが、全くと言っていいほど会話が続かない。

うーん。

普通に、友達作るの無理じゃね。


行動しても、できなくね。


そんなことを思いながら、体育館裏の階段で黄昏ていた。


「何してんだ、お前」


すると、突然見知ったやつに話しかけられた。


「宮崎...」

「髪切ったのか?」

「あ、ああ。心機一転、友達でも作ろと思ってな」

「下らねえ」


そう言って、俺の隣に宮崎が腰掛ける。


「なんか用か?俺お前のことあんまり好きじゃねえんだ」

「友達作ろうとしてるやつの言動とは思えねえな」

「惚れた女の元彼を好きな男はいないだろ?」

「言えてる」


そう言って、宮崎は笑い声を上げた。

数ヶ月前とはだいぶ印象が変わっている。


「変わるもんだな。人って」

「確かに。あの田仲が友達を作ろうとしてるぐらいだ。人は変わっていくもんだろうな」


ここ最近、俺と同様あまり宮崎の噂は聞いていなかった。

たまに学校では見かけてはいたが、実際のところ何をしているのかは全く知らずにいた。


「んで、マジで何の用なんだ?お前が俺に話しかける理由がわからん。前の腹いせにまた俺を殴るのか?」

「もう、暴力は懲り懲りだ。あの後こっ酷く親父に叱られて、お袋に泣かれてやっとで自分のやったことを自覚できたんだ。本当、ろくでもねえやつだった」

「どうしようもねえやつだったな」

「あ、ああ。ただ、お前に言われるとちとムカつく」


そう言って、後頭部を掻きむしった。

宮崎は宮崎なりに、思うところができたみたいだ。


「お前さ、言ってたよな。あん時。崩れてからが面白いって」

「いい言葉だな」

「自分で言うなアホ。とにかく、あの後必死でしがみついてたグループから距離を置かれた後にさ、出来たんだ。自分のままでいられる友達が」

「自分のままでいられる友達...」

「私服はださいわ、流行なんて一つも知らないやつらだけどさ、一緒にいて楽しいんだよ。あいつらと。お前の、言った通りだと思ってな」


そう言って、宮崎は恥ずかしげに笑った。

こんな顔もできたんだなと思った。


「お前、友達作りたいんだろ?こいつと友達になりたい。そう思えるやつと友達になればいいと、俺は思う」

「お前が言うと説得力が段違いだな」

「あはは。殺すぞ?」


友達になりたいやつと、友達になるか。

思い返せば、俺は誰これ構わず友達になろうとしていた。

俺はいつの間にか、無意識のうちに佐々木のようになれると思い込んでいたんだ。

誰にも好かれ、誰とでも友達になれる。


そんなことを思っていたんだ。


けど、所詮俺は俺だ。

俺でしかない。

だから、俺が俺として友達になりたい人にこそ、話しかけるべきだった。

そんな当たり前のことを、いつの間にか見失っていたんだ。


それに気づかせてくれたのは、この世で一番憎かったやつだなんてな。

本当、人生何が起こるかわからない。


「田仲さ。佐々木さんと仲良いだろ?」

「それがどうしたんだ?」

「あ、謝ってくれないか...?謝って済むとは思ってねえし、許されるとも全く思ってねえけど。ただ、せめてあの出来事の最後には俺の謝罪で終わったって、あの人の中で完結してほしいっていうか。その、なんていうか。俺のことなんて一生見たくもないと思うしさ」


宮崎は立ち上がり、後頭部を掻きむしりながら、震えた声でそう口にした。


言葉を選んで話している、というよりかは何度も自分の中で反芻しながら作った言葉、という印象を受けた。

正直、そのことについて思うところがないと言えば嘘になる。


ただ、今の宮崎の姿を見ると、責めることが正しいとはとても思えなかった。


「わかった。伝えておく」

「ほ、本当か!?ありがとう...」


そう感謝を述べる宮崎の表情は、何とも言い難いものであった。

人は間違いを犯す生き物だ。

だけど、同時に間違いを悔いる生き物でもある。


「お前のやったことは許せねえけどさ、それでも、今のお前ならあいつが選んだにふさわしい男って、ちょっと、ほんのわずか、ちびっっっとだけ、認めてもいいかもな」

「全然認めてねえじゃねえか。独占欲の強い男はモテねえぞ?」


そう言って、宮崎は付き物が取れたかのような笑顔でこの場を去って行った。


その背中を見送り、俺はとある決意をした。


☆ ☆ ☆


「あ、あの、綾野さん...」


心臓が口から飛び出しそうだ。

クラス中が俺を注目している。

当たり前だ。

多少マシになったとはいえ、陰キャがクラスの女王に話しかけているんだ。

目立たないわけがない。


宮崎が言っていた。

友達になりたいやつと、友達になるべきだと。


そう言われた時、真っ先に綾野が思い浮かんだ。

そして、昼休みに話しかけるという決意をした。


ただ、いざ話しかけると全身が硬直する。

何も思い浮かばない。

喉から言葉が出てこない。


怖くて、しかたがない。


「ん?なに?」


とりあえず、無視はされなかった。

だけど、あの頃とは訳が違う。

一言。

一言間違えるだけで、今までの努力が水の泡となり、またクラスの嫌われ者に戻ってしまう。


そうなったら、さすがにもう佐々木に愛想を尽かされる。


何か、何か言わないと...。

だけど、何を言えばいい。


足りない。

圧倒的に経験値が足りていない。


時間だけが過ぎていく。

いい加減何か言わなければ、変に思われてしまう。


何かないか...。

何か。


綾野は人に話しかける時何を言っている?


佐々木は?


沙織は?


宮崎は?


何かないか...。


何か。




じゃ、俺は?




俺なら、どう言うんだ...


「と、友達になってくれ!」


心臓の高鳴りが止まない。


こう言うしか思いつかなかった。


空気を読まずに、真っ直ぐに。


これが一番だとは思えない。


でも俺なら、こう言うしかない。



「は?何言ってんの?」



綾野は、冷たい声色でそう言い放つ。


終わった。


心配そうにこっちを見ていた佐々木に目をやる。


結局、何もできなかった。


やっぱり、俺なんかじゃ何も掴めはしない。


たまたま、すごい人に憧れて、自分もすごくなったと勘違いしただけの痛いやつ。


それが、俺の正体だ。


今も昔も、何も変われやしなかった。


せめて俺のことが好きだと言ってくれた、あいつは間違ってないって思って欲しかったけど


それさえも叶えられないみたいだ。


「そうだよな。わる「もう友達じゃね?」


席に戻ろうとしたら、耳を疑う言葉が聞こえた。


「え?」

「忘れてないから。田仲が私にしてくれたこと」


綾野はそう言いながら、相変わらずスマホをいじり続けている。


涙腺が脆くなるのを感じ、すぐに背を向けた。


「メロンパンとコーヒー牛乳でいいよな?」

「あとコーラね。奢ったげる」


綾野からお金を受け取り、購買まで逃げるように走った。


パシられて、涙が出る事なんて、人生で初めての経験だった。


☆ ☆ ☆


「今日どうだった?兄ちゃん?」


晩御飯、ショートケーキカレーを頬張りながら沙織と今日あったことを話した。


「へえ、よかったじゃん。私が鍛えた甲斐があったね」

「そうだな。沙織のおかげだよ。ありがとう」


カレーを一口無理やり押し込み、胃袋に突っ込んだ。


「あのね、兄ちゃん」

「ん?どうしたんだ?」



「私、兄ちゃんの事大っ嫌いだった」



ただでさえまずいご飯が、さらに喉を通らなくなった。

俺、沙織に嫌われていたのか。


「中身ペラペラの癖に、周りを常に見下してさ。同じ空気を吸うのも死ぬほど嫌だった」

「沙織?」

「覚えてる?兄ちゃん。小学校の友達を家に連れてきた時にあんたが言ったこと」


皿の上にスプーンを置き、真っ直ぐ俺を見据える。


「その子の目の前で、もっと明るいやつと友達になれよって。あんたはそう言ったんだ」


うっすらと覚えている。

沙織は元々あまり家に友達を連れてくるようなやつではなかった。


あの頃、あまり友達を作ることも得意な方ではなかったんだ。

だから、あの頃の俺は無意識のうちに沙織を見下していた。

そして、その友達も当然のように見下した。


無駄に友達が多く、人とコミュニケーションを取ることに長けているつもりでいたあの頃の俺は、身内が友達が少ないタイプだと言うことが許せなかったんだと思う。


「当然、その子とは疎遠になったよ。あの一言のせいでね」

「さ、沙織、ご、ごめ...」

「もう遅いよ」


謝罪すらもう、受け入れて貰えない。

当たり前だ。

謝ったって、何も変わりはしない。


心の傷が、癒えるはずもない。


「ずっと嫌いで、二度と話すこともないって本気で思ってた。思ってたけど...、だけど」


沙織はそう言って少し口ごもる。

本人の中に、何か葛藤があるのだと察するが何も言えはしなかった。


「だけど、あんたは変わった。そのなんていうか、嫌えなくなるほど、変わってしまったんだ」

「沙織...」

「覚えてる、兄ちゃん?私が小六だった時の授業参観。お母さんとお父さんは仕事に付きっきりで、一度もそんな行事に参加なんかしてくれなかった。

平気だとは思っていた、けど実はそうでもなくてさ。やっぱり寂しかったんだ。

そんな時、その授業参観に兄ちゃんが来てくれた」


沙織が、小六の時は俺が中二の時。

つまり、佐々木と出会ったあとだった。


沙織はいつも、学校の行事を両親には話そうとはしなかった。

いつも参加希望のプリントを出しては、カバンにしまっていた。


それをいつも見てて、いつも心苦しかった。

だけど、沙織と二つ違いである俺が出ていくのはどう考えてもおかしい。


「皆ざわついてた。何で中学生が保護者のところにいるんだって。バカにして、笑ってた人だっていた。嫌がらせなのかと思って、お兄ちゃんを睨みつけてやろうとしたらさ

お兄ちゃん、勘違いしたのか嬉しそうにこっちに手を振ってくれた。

悔しいけど、すごく嬉しかった...」


どう考えてもおかしかったけど、本当に大切なものが何なのかをあの頃の俺はもう知っていたんだ。


「つまり、何が言いたいのかって言うと、お兄ちゃんをそこまで変えてくれた、佐々木さんを大事にしないと、今度こそ許さないから」


それだけと言って、沙織は再びカレーを口に運んだ。


沙織がそんな思いを抱えていたなんて、知りもしなかった。

知らない間に傷つけて、知らない間に許されていたんだ。


そういう思いの上で、今がある。


「わかった。肝に銘じておく」

「早く食べなよ。冷めるから」


カレーを一口頬張った。


人は間違いを犯す生き物だ。

それは俺も例外ではない。


だったら、俺にできることはもはや悔いるしかない。


ただ、気になることがある。


「なあ、どうしてその話を今してくれたんだ?」

「なっ、何でもいいでしょ?たまたまだよ」

「たまたまなぁ。俺は根っこの部分は弱いからな。例え、佐々木に想いを伝える決意をしたとしても、もしかしたらヒヨるのかもしれない」


もう一口カレーを口に入れ、飲み込む。


「逃げ道を閉ざす為に、そんな思い出したくもない過去を教えてくれたんじゃないのか?」


本来なら、明日想い人に告白をする前日の夜にそんな話なんてするはずがない。

ただ、沙織なら今話さなければならないと思ってしまうんだろう。


「ふっ、そんなんじゃないって言いたいけど、お兄ちゃんにはわかっちゃうよね。よくわかるね」

「家族だからな。わかるよ、そんぐらい」

「お兄ちゃん...」


どれだけ食べても、カレーが減りやしない。


「なら、今私が考えてることわかるよね?」

「俺のカレーを食べたいとか?」

「あはは。ざんねーん。おかわりたくさん作ったから全部食べてね、だよ?お兄ちゃん!」


やっぱり、色んな意味でこいつには敵わない。

クソまずいカレーを胃袋に押し込みながら、そう思った。


☆ ☆ ☆


後日、綾野のおかげもあってか、クラス内での空気が以前よりさらに優しいものとなった。


普通に挨拶を交わし、雑談をし、時に笑い合うほどにまで皆に溶け込むことができた。


そして、クラス内で佐々木と話をすることも、何も違和感がなかった。


たわいない話だった。


授業の話だった。


難しいかっただの、なんだの。


たったそれだけのことだった。


それだけのことであったが、人生の中で一番の達成感を味わえた。


こんな日が本当に来るとは、全く思っていなかったからだ。


あの日砂浜にいたままでは、絶対に手に入れなかったことだ。


あいつと、出会っていなかったら味わえなかったことなんだ。


ただ、まだ終わったわけじゃない。


というよりかは、むしろここからの方が本番だとも言える。


「佐々木、そこホッチキスいらない」

「う、うん。ごめん」


いつもの放課後、わけのわからない書類をホッチキスで止める作業。

ここは、俺と佐々木が唯一学校内で話ができる場所だった。


「あのさ、佐々木」

「な、なに?田仲くん」

「その、なんだ...」


ここまできて、言葉が出てこない。

本当に、今で良いんだろうか。

もっとクラスに馴染んでからの方が良いんじゃないのか。


言葉に詰まれば詰まるほど、そんな考えが次々と頭をよぎってくる。


今日は、やめておこう。


『私も、伊織を愛してる』


ここで、逃げるわけにはいかないよな。


「絵理、ずっと俺のそばにいてくれ」


「遅いよ、バカ...」


「遅い...?も、もう他に好きなや...」


そう言い切る前に、唇に懐かしい感触を感じる。


ずっと、焦がれていた感触。


あの日からずっと、今日に戻りたかった。


自然と涙がこぼれ落ちていく。


「他の人を好きになるわけないでしょ。本当にバカね」

「バカって言うな。これでも毎日死ぬほど不安だったんだ」

「私だって不安だった!いつ諦めてどこかにいくんじゃないかって。でも、伊織ならできるって信じてた」


体を抱き寄せ、彼女を抱きしめた。


「それで、返事は?」

「言う必要がある?」

「言ってくれ」


その為にここまできたんだ。


「愛してる。もう二度と離れない」

「俺も、初めて会った時からずっと愛してる」


そして、俺たちは再び笑顔で、キスを交わした。


「幸せな私と、幸せなあいつ」 -終-

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不幸な私(リア充)と、幸せそうなあいつ(陰キャ) @atmosphere0124

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