恋愛じゃなくて親愛。しかも悲しいほうの。

まず一番最初に言わせてもらいたいのは、この小説は自殺を推奨したり、賛美したりするような小説ではないということです。作者があらすじにそう書いているわけではないですが、そのことは読めばわかります。この小説を一言で説明するのは難しいですが、しいていうなら、SOSじゃないかなと思います。

この小説に共感してしまう時点で、読者は精神的にかなり追いつめられたことがあるか、追いつめられてる最中のどちらかだと思うんです。そして作者も、そうした人間の一人だったんじゃないかな、と思います。そうじゃなければ書けないですよ、こんな作品は。

そこを踏まえたうえで本編のレビュー。作品の主要なキャラである男女は二人とも、家庭内暴力を受けています。それが彼らの精神に深刻な影響を与えています。しかもそうした悩みというのはなかなか人には打ち明けられないものです。同情はされても理解はされないし、同情されたとて助けてはくれまいという諦観がそこにあります。

そんなひどい世界で、二人は互いに初めて、仲間を見つけたわけです。そこにあったのは、タイトルにも書いてある通り、恋愛ではなく親愛だったというわけです。しかもそれは、運命のどん底にいる人同士が感じる、いわゆる同病相憐れむ、傷をなめあうような関係性だったというわけです。そして二人はいつしか、死に惹きつけられていくわけです。

この作品の何が魅力かといって、美しさにあると思います。人生のどん底に落ちて、死に近づいた人間だけが感じられる、危険な美しさ。それを僕自身も感じたからこそ、魅力を覚えたんだと思います。そのため、万人向けではないですね。

この小説を、ただの暗い小説で片付けてはいけないと思います。客観的にものごとを見つめるツールにしていかないと。この二人に生きていて欲しかったっていう感想を読後に持った人って少なくないと思います。でもね、他人はそれをあなたに対して思ってるんですよ。それを作者が伝えたかったかどうかまではさすがに不明ですが、そういう使い方はできるってことだけ、言っておきます。