卒業サバイバル旅行の殺人
結騎 了
#365日ショートショート 086
孤独の中、タケシは打ちひしがれていた。テーブルに座り、祈るように組んだ拳を眉間にコツコツと当てている。
「どうしてこんなことになってしまったんだろう。なあ、どうして……」
その疑問に答える者はいなかった。声は虚しく宙に消えていく。
遡ること数日前、タケシを含む男女5人は、この無人島にやってきた。大学サークルの、卒業旅行を兼ねたキャンプ企画。港から船で一時間という近場の無人島で、お手軽にサバイバルを楽しむのが目的だった。
しかし、上陸の翌日、乗ってきた船が爆発。ほぼ同時刻、何者かの手によって通信手段も経たれてしまった。そして、一人、また一人と、見るも無残な死体で発見される学友たち。この中に殺人鬼がいるのか、あるいは、島に猟奇犯でも潜んでいたのか。疑心と恐怖の末に、生き残ったタケシは寝泊まりしていた小屋で頭を抱えていた。
「……でも、やはり犯人は俺たちの中にいると思う」
タケシはただテーブルを真っ直ぐに見つめながら、口を開いた。
「この数日、島をくまなく探索した。人が住んでいる痕跡はどこにも無かった。そう、端から端まで、何度も行き来した。その可能性は無い……」
そのまま、すっと顔を上げる。
「そうなると、やはり我々5人の誰かが犯人だ。信じたくない。そんなことは信じたくない、が……。俺にはこの答えしか出せなかった。どれだけ考えても、答えはこれなのだ」
腰を浮かし、ゆっくりと立ち上がるタケシ。その目は虚である。どこを見ているのか、いや、どこも見ていないのか。覚悟を決めたのか、もしや全てを諦めたのか。たった数日で一気に老け込んだような、哀れな姿がそこにあった。
「なあ、分かってるんだろう。俺が何を言いたいのか」
ぐるりと、タケシの目が剥ける。
「……俺じゃないんだ。だから、もう、お前しかいないんだよ」
やめろ、なにをする。その手を離せ。首を絞めるな。離せと言っているだろっ。
卒業サバイバル旅行の殺人 結騎 了 @slinky_dog_s11
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