【完結】「活躍しすぎてムカつく」〜ハーレムを企むリーダーに追放された俺。めっっっちゃありがたい!何故なら恋人との時間が増えるから〜

悠/陽波ゆうい

追放らしい……けど、大好きな彼女とイチャイチャできるから問題なしっ!!

「ユウィン、今日でお前をうちのパーティーから追放する」


 行きつけの酒場で、いきなりパーティーリーダーであるバッファーに告げられた。


「ちょっと!バッファー何言ってるのよ!」

「そうです! パーティーの要のユウィンさんを追放だなんて!」

「バッファーさんはいつからそんなに偉くなったんですか!」


 続いてパーティーの女性陣から猛烈なバッシング。バッファーは、その圧に押され気味になるも、すぐに立て直す。


「はは、はん! 俺はリーダーだ。リーダー命令は絶対なんだぞ!」

「俺は別にいいが……バッファー。お前は戦闘中何をしている?」



 昨日のダンジョンを振り返ってみる。


「バッファー! 頼む!」

「バッファー!」


 前線ジョブのバッファーに魔物を任せる。


「ひっ、ひっ……」

「おい、バッファー!」


 しかし、バッファーは怖気付き、尻餅を付いた。先ほどから振っている剣は魔物に擦りもしない。


 彼に任せたのはゴブリン。ゴブリンというと、繁殖力が強く、冒険者が初期の頃に最も倒したであろう魔物。なので、冒険ならば、倒させないといけないのだが……




「はっきり言わせてもらうと、昨日だってお前は殆ど魔物を倒していない。戦闘しながら進む俺たちについてこれない、戦闘に追いついたかと思えば流れ弾で怪我をする、俺たちが踏まなかった罠を踏み抜いてパーティーを危機に陥らせる……本当に大丈夫か?」


 ビシッと言うつもりが、最後の最後に心配が勝ってしまった。


「ユウィンさんの言う通りです!」

「てか、出て行くならアンタの方じゃない?」

「そうですそうです!!」


「う、うるさい! うるさい! ユウィン! おお、お前が強すぎるんだよ! 活躍しすぎてムカつく! だから追放だ!」

  

 バッファーが放った言葉に俺以外の3人もツッコむことなく、呆れ。


「お前が活躍するから俺様の活躍の場がなくなるんだよ! 俺様が弱く見えるんだよ!」

「……つまり、俺がいなくなればバッファーは活躍できると?」

「あ、ああ! もちろんだとも!」

 

 まぁ人数が減る分、仕事が多くなるから自動的に活躍するチャンスは増える。

 俺はふと考えた。

 バッファーの尻拭いばかりしてきたが、1人前にさせるためにもここは俺が抜けた方がいいのでは……? それにこのパーティーを抜ければ……。


「……分かった。受け入れよう」

「!」


「そんなっ」

「ユウィンさん!!」

「考え直してください!!」


 その後も女性陣から説得されたが、俺の意見は変わらず。そのまま居酒屋を去った。



 ユウィンを追放したバッファーは居酒屋から帰り、部屋で笑っていた。


「くっくっっ……これでこのパーティーの女は俺とモノだ……。はっはっ! ユウィンめっ! ざまぁみやがれ! 俺様より活躍して女どもを魅了するからだ! 」





 翌朝。

 追放されたので、元パーティーと顔を合わせるのは気まずいかなと思い、別の宿に泊まっていた。


 昼間になり、バッファーたちは今頃依頼をこなしていることだろうと、住んでいた宿へ。


「……わぁお」


 自分の部屋に入り、思わずそんな間抜けな声が出た。


 部屋の中は散々に荒らされ、高価な重要アイテムは根こそぎ奪われていた。

 別に「この野郎ふざけんななァァァァ!!」という怒りはない。

 本当に大切なモノは肌身離さず持ってるし。


 俺はあらためて室内を見回し、持っていけそうな物を探し出す。 


 しっかし、冒険に役立ちそうな物は根こそぎ持っていかれていた。ポーションが一本ある。お前はこれで十分だろうって言ってるみたい。


「えーと、着替えと……あ、コレはどうしよう……いらないか」

 

 必要なモノをバッグに入れる。

 これは特殊なバッグで、異空間に繋がっていて、何倍もの量を持ち運べる。さらに入れた荷物の重さを感じない

 

 この部屋には用はないので俺は唱える。


「【テレポート】!」






 移動魔法【テレポート】で、着いたのは部屋の中。木製でできている家で、目の前には……


「シェールただいま!」

「え、あ、旦那様!? お帰りなさい」


 背中越しのシェールに声を掛けると、驚くも、トテトテと俺の元に来てくれた。


 彼女の名前はシェール。褐色エルフだ。そして俺の恋人。エルフの村に住んでおり、村から離れられない。

 ちなみに恋人がいることはパーティーには秘密である。だから一人でいる時しか彼女とは会えなかった。


 きっかけは、依頼でエルフ村に行った時だ。

 彼女の容姿は綺麗、可愛い、めっっちゃ好き!の3つ尽きる。いや、3つに絞ったと言った方が正しいな!


 シャツが短くておへそまで見えちゃってるのは、大きいおっぱいを俺に見てほしいかららしい。……か、可愛すぎて死ぬ。


「シェール、おいで」

「はい、旦那様」


 俺が手を広げると、シェールはギュッと腰に抱きついてきた。俺も抱きしめ返す。


「ただいま」

「お帰りなさいです」

 

 ただいまのハグである。

 一旦、腰に回した手を離し、彼女にキスをする。

 唇を合わせると、シェールから舌を入れておねだり。

 こうなるともう止められない。


 ぴちゃぴちゃと音をさせながら口づけを続ける。


「ふ……ん……、シェール……」

「旦那様ぁ……」


 唇を離すと、端にうっすらと涙を溜めたシェールがうっとりした表情で見つめてくる。

 さらりとした銀髪、美しい褐色の肌、淫らな体――俺だけの恋人だ。


「もっかいキスしとく?」

「は、い……。あっ、その前に……」

「ん?」


 シェールはフッ……と一つ息を吐き、言う。


「旦那様、何故今日はこんな早い時間にお帰りに? 私としてはとても嬉しいですが……」

「ああ。簡単な話だよ。俺、追放された」

「つ、追放!? 旦那様ほどの優秀な方が……」

「優秀もとい、活躍しすぎてムカつくからだって。でもこれでシェールと——」「旦那様」

「なに? シェール?」

「私、旦那様が追放されたのに納得がいきません!」

「まぁ理不尽な理由だとは思った。だが、俺はこれで良いと思う」

「そ、そんなの……ダメです!」

「え、ダメなの? シェールは俺とイチャイチャできる時間が増えて嬉しくない?」


 やべっ、ちょっと悲しくて涙でそう……。


「も、もちろ嬉しいですよ? だけど私は戦っている旦那様の姿に惚れたわけで……普段の旦那様も大好きなのですが」

「シェール……」


やばい、今度は嬉しくて泣きそう。


「それに私、旦那様との時間を作りたくて先日、ロフィア様にエルフ村から出る許可をいただきまして……冒険者なろうと思っておりました」

「えぇ!?」


 シェールは確かに強い。下手したら俺よりも……。


「いやいや! 冒険者は色々危ないぞ! シェールが戦っている俺が好きって言うならソロで頑張るからさっ」

「そんなの、旦那様もじゃないですか! それとも旦那様は私とパーティーを組むのは嫌……ですか?」

「嫌じゃないよ! もちろん大歓迎!」


 ああ、言ってしまった……。シェールの上目遣い、ずるいよ……なんでも許してしまう。


「ありがとうございます。旦那様を追放した方を後悔させられるくらい私、頑張ります♪」


 彼女は引くつもりはないようだ。まぁシェールが言うなら……やってしまおう!


 これは、活躍しすぎてムカつくと理不尽な追放をされた男が、愛する恋人ともっと活躍しちゃうお話———






【あとがき】


なんか新しい追放ものないかーと思って、ちょっと練習で書いてみました。

上手く纏まったら長編バージョンもやる予定ですm(__)m

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:追記

長編版はまた新しく作成して更新します。こちらはお試し短編みたいなものですm(__)m

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