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おまけの弩級ネタバレ「結局セージュは何者なのか」


 ルヴナンを書き始めて一年になりました。

 現在は完全版をエブリスタで公開中。カクヨムで公開しているあれやこれが無かったことになっていたり、多少設定などが違います。


 新エピソードの構想や、そのうち書いてみたいネタはあるのですが、何度も完結している作品なので腰が重く、つい先延ばしにしがちです。

 でもわりといつでも書きたい気持ちはあり、なにより自分が大好きな作品なので、そろそろネタバレがしたくなりました。

 一年も温めてたので潮時かなって。


 キャラクター設定は一応作ったものの、話の本筋にそれらを絡める予定は最初からありませんでした。

 なので、セージュが人間なのか何なのか、ふわふわわからないまま突き進んでいくつもりだったんですが、そうすると設定をお披露目する機会が永遠に無くて。

 ずっと披露しないままなら、たとえ今後設定を大改変しても、誰も変えたとわかるまい。


 不確定の裏設定なら、ネタバレというほどでもないか……。思えば第一話を書いていた頃から既にいくつか設定変わってるしな。


 と、変な方向に合点がいってしまったので、現時点でのキャラクター設定を書かせてください。ずっと誰にも言ったことなかったから、そろそろぶちまけたくなりました。


 では一人ずつどうぞ。



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 一人目・セージュ


 いきなりですが、この人は十五~十六世紀のフランスの山間部で生まれました。スイスかイタリア国境あたりの田舎なもので、ろくすっぽ教育も受けておらず、字も書けません。


 家族も自分も死ぬほど訛っていたので、自分の名前「セルジュ」を「セージュ」と勘違いして育ちます。


 七歳のとき、森の奥の古い木に生きたまま縛り付けられました。ドルイド信仰のような感覚で、森に生贄を捧げる慣習があったのです。

 しかしセージュはたまたま死なず、森と一体化するように、少しずつ時間をかけて人からルヴナンに変化しました。


 古木を通じて植物や森の気質を貰った設定。草木やハーブの体臭はこのため。


 現在は肉や卵のようなたんぱく質を食べずとも生きられる体質に。ただ何十年もお肉を食べずにいたのでアレルギーのようになってしまい、元気にヴィーガンライフを送っています。


 欧州では何度か魔女狩りに遭って死んでいます。東京大空襲でも死にました。死ぬたびにどこかで蘇り、その土地に馴染んで暮らしています。

 明暦の大火(江戸初期)のとき、彼はいったいどこにいたのでしょう。




 二人目・ダリマ


 セージュと同じ時代のイギリス生まれ。父親は家具職人。七歳で人さらいに遭い、変な貴族に買われ、以後しばらくプリンセスのように育てられます。

 ダリマという名はそのとき付けられました。元々の名前はグウェンドリンとかアデレードとかクラシックな感じ。


 貴族は人肉で育てた美女と紫の上ごっこがしたかったので、ダリマにたくさんのお肉とぶどう酒をあたえ、上流階級のマナーや外国語を教え育てました。


 実際人肉で子どもを育てるとどうなるのかは私も気になりますが、ダリマの場合はなぜかルヴナンになりました。徐々に人間離れした力を得たダリマは、監禁状態から逃げ出して放浪。日光に弱いのはこの頃から。


 パリでぼーっとしてたセージュを捕まえ、あそこで稼げ、こっちで働けと指示し日銭を稼がせます。

 基本的にはダリマが親分でセージュが子分という力関係。しかし、互いに死んではどこかで蘇り再会し、というのを何度か繰り返しているうちに、徐々に対等なパートナーとなっていくのでした。



 タイラー/平


 昭和の日本で久しぶりに再会した二人。久しぶりすぎて、ダリマはセージュの名前を忘れていました。その頃のセージュは平さんちの犀樹くんで、平さんのおうちがとても気に入っていた様子。

 以来、ダリマはセージュを「タイラー」と呼ぶようになります。既に平姓を手に入れ何不自由なく暮らすことができたセージュは、ダリマを父親の私生児とかなんとかにし、戸籍をプレゼントして歓迎。出会った頃のように、これからまた二人で力を合わせて生きていくことに。


 しかしその直後、なんやかんやあり、セージュはダリマのことも自分のことも、色々と忘れてしまいます。

 自分の名前が「セージュ」ということしかわからないまま、新宿の繁華街を放浪していると、場末のスナックでシャンソンを歌う「スージー」を見つけます。それが野沢須恵子との運命の出会いでした。



 と、ここからセージュはあれやこれやのお導きで野沢清寿となるのですが。

「戦うイケメン」のプロットでは、ここで幼い姿の清寿になることに理由がありました。



 それより先に説明なのですが、そもそもダリマとセージュは相性の良いルヴナンなので、互いに互いの能力や身体を貸し借りして「戦う」ことができる……という設定でした。

 セージュとダリマが合体した合体版が「死霊のセオリー」の最後に出てくる金髪のセージュです。


(ちなみにカクヨム版では自宅で伊勢谷が金髪のセージュを目撃していますが、公募版では温室にいる場面でしか書いていません)


 で、何と戦うのかというと、ボスは振袖大火を語った打竹さんのつもりだったんです。打竹は火種を運んだりする道具の名前で、いかにも木属性のセージュと相性が悪そうな良い名前ですね〜。

 ですがいまや戦う必要がなくなったので、プロットが空白になっています。


 打竹と合体版セージュ&ダリマがなんやかんやあって戦い、打竹にコテンパンにされた末、セージュだけが身体から半端に追い出されてしまった。という想定で、須恵子と出会ったのは「記憶喪失の小さなセージュ」になりました。


 そしてセージュが平犀樹に戻ったのは、野沢家で回復し、再びダリマと自分の身体を見つけられたことがきっかけです。

 この時、瀕死のダリマが長年平邸に居座っていたせいで、近所の小学生の間では吸血鬼伝説なども生まれてしまいましたが、二人にはまだ戸籍が残っていました。

 以来ダリマとセージュは死亡届、結婚届、出生届を出し、適宜良い感じの年齢を保ったり保ち忘れたり。


 最近は本人確認が厳しいので、その道のプロに頼んでいるような気もします。


 平成に一度セージュとダリマが結婚したのは、セージュが野沢から平姓へ戻るためでした。そのときはすぐ離婚しましたが、一番最近の結婚は令和で、国民保険料節約が主な目的。そう、作中に書いたのは冗談じゃなく、マジだったのです。


 二人とも時代に合わせて色々と試行錯誤している模様。

セージュとダリマのキャラクターは「地域性や時代を反映した存在がルヴナン」という私の想像から生まれました。


 とはいえ、須恵子も結構イマドキな六十代なんですけど。



 とりあえずはこんな感じです。

「生きながら徐々に人でなくなった」という共通項があるセージュとダリマ。私の好きなタイプの怪異です。

 また、セージュを置いて年老いていく須恵子や野沢家の人々も、今後少しずつ書いていきたいと思います。



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【長編】ルヴナンと饒舌な奇談蒐集家【カクヨム加筆公募版】 平蕾知初雪 @tsulalakilikili

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