第98話
アレス達を
「ハァ……ハァ……クソ! なんで私がこんな奴らのためにっ」
実はバズは激昂したように演技をしていただけ……いや、実際にかなり怒ってはいたのだが。その状態でなんとか『迅雷』のメンバーを連れてこの場から逃げ出す方法を考えていた。当然、仲間意識から助けようとしていたのではない。
見捨てて逃げるのはリスクが高い。
だが倒れている『迅雷』のメンバー全員に止めを刺そうにも、もし一人でも生き残ってしまえば同じこと。
女神教に粛清されるのも、あの人の怒りを買って消されるのも御免であった。
(少しで良い。なんとかして時間を稼がないと……)
そう考えたバズはある計画を思い付いた。
もし、アレス達が『迅雷』の傷の治療を許すような甘ちゃんならそれでどうにでもなった。
駄目なら駄目で、バズが激昂した状態で魔法を放てば勝手に攻撃魔法だと勘違いしてくれるはずだと。
ようやく『迅雷』のメンバーを集め終えたバズは肩で息をしながら、懐から転移石を取り出す。
「この屈辱……絶対に忘れんぞ。“転移“のガキも、
そう叫びながら転移石を使用する。
辺りが強い光に包まれると同時に
_____
「チッ……転移石なんか持ってやがったのか」
(新人に当たる可能性もあったとはいえ、土壁をぶっ壊すのに時間をかけすぎちまった……。けど、あの野郎ならもっとうまくやってたかもしれねえ……)
ガンザスは不機嫌そうに頭をガリガリとかきながら溜息をつく。
「……あ、あの」
その姿を見たアレスが申し訳なさそうに声を掛ける。
「なんだ?」
「す、すいませんでした。その……」
アレスは先程からガンザスの足を引っ張ってしまっていたことをかなり気にしていた。
「あやまんねーでいい。俺もアイツを見くびってた。油断は禁物だってのによ……」
ガンザスはそう言って溜息をつく。
「で、だ。さっきも言ったが事情は説明してもらうぜ。俺も首を突っ込んだ手前、何も聞かずに、はいさよなら……とはいかねえからな」
「……はい」
そしてアレスは何故バズたちと戦っていたのかをガンザスに説明した。自分が勇者であることや、ニナが狙われていた理由等は省いてだが。
助けてくれたガンザスに隠し事をするのは気が引けたが、下手なこと話せばグレイたちにまで迷惑を掛けることになる。
「なるほど。あの魔法を使ってた男に恩人の家族が狙われていた、と」
「はい。何故狙われていたまでは……」
ガンザスもアレスが何かを隠していたことに気付いていたが、本来冒険者は互いの事情にあまり踏み込んだりはしないものである。
なので、ただの冒険者同士の喧嘩ならガンザスも態々の介入したりはしなかったのだが……
(どうみてもそんな生易しい感じじゃなかったしな……)
「ま、いい。俺はもう行くぜ。お前もさっさと戻った方が良いんじゃねえか? 次は助けねーぞ」
そう言って背中を向けて歩きだすガンザス。
「あ、あの! ありがとう、ございました!」
「おう。……て、あ」
アレスからの感謝の言葉を聞き流して、さっさと立ち去ろうとしたガンザスだったが、何かを思い出したように急に立ち止まる。
「おい」
「あ、はい」
「今日あったことだが……間違っても俺に助けられたなんて、グレイの野郎に言うんじゃねえぞ」
「え?」
一瞬、何を言われたか理解できずに固まるアレス。
「分かったか?」
「ですが……」
「分かったか!?」
「は、はい!」
「ならいい」
強引にアレスを納得させると、ガンザスはその場を足早に立ち去る。
そして、それを見送ったアレスは最後に頭を下げる。
(……僕も戻ろう)
アレスはグレイたちの家へと戻りながら、取りあえず宿屋の親父へと相談することを決めた。
_____
「おい、これからどうすんだ?」
ポーションで傷の癒えた『迅雷』のリーダーがバズへと問い掛ける。
「……決まっている。一先ず聖堂へと戻ってから、あのガキどものことを報告する……折角助けてやったんだ。お前たちはせいぜい私の護衛として役に立ってもらうぞ」
「……へいへい」
その言葉に『迅雷』のリーダーは舌打ちをしながらそう返した。
__________
野盗“TALK“
B級冒険者 はいきなり襲いかかってきた!
違法奴隷商“TALK“
B級冒険者「すぐにけす すぐにけす すぐにけす」
エルダーオーク“TALK“
B級冒険者「オレ オマエ マルカジリ」
ニナ“とーく“
おとうさん「今後ともよろしく…」
悪人面したB級冒険者 主人公とその幼馴染みたちのパパになる @enji2815
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。悪人面したB級冒険者 主人公とその幼馴染みたちのパパになるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます