冒険者ギルドで達成した依頼の報告をしてから、子供たちの待つ我が家へと帰る。
途中、楽しそうに買い物をしている親子を見かけたためか、今は無性に子供たちに会いたい。
そんなの関係なくいつも一緒にいたいんだろう、だと?
当たり前だろうが。
「ただいま」
玄関の扉を開き、子供たちへ声をかけると家の奥からニナ、ステラ、ラッツがぱたぱたと走っていつものように
「おとーしゃんおかえり!」
「お帰りパパ」
と、お出迎えをしてくれる。
だが、今日は普段とは圧倒的に違うところが一つあった。それは……
「ああ……ところでその格好はどうしたんだ?」
ちびっ子たちはそれぞれニナはカボチャのような配色のふりふりの服。そして手に持っている人形のアナスタシアも頭の部分に布でできた小さなカボチャマスクが被せられている。
ラッツは全身モフモフの犬の着ぐるみを着た状態でミミを抱っこしている。
……付き合わせてすまんミミ。
そしてステラは……ええと……か、かものはし? のような着ぐるみ(クチバシ付き)だった。
それぞれニナはカボチャの魔女、ラッツはい……オオカミ男、ステラは……かものはし?
か。ステラだけそのまんまって……他にどう言えと言うのだ。
というかなんでかものはし?
そんな三人はニナとステラが左右で謎の可愛いポーズをとり、ラッツは真ん中でミミをスっと持ち上げる。
本当にすまんミミ……。
「おとーしゃん!」
「パパ」
「うん」
「「とりっく! おあ…………」」
二人はそこまで言うとピタリと黙る。そして暫く沈黙が続くと、ミミを持ち上げているラッツは手が疲れたのか次第にぷるぷる震え始めた。
「とりあえずミミを下ろしてあげなさい。ラッツも疲れただろう」
(コクコク)
頷きながらミミを下ろしながら座るラッツ。
そしてニナとステラが傍に屈み込んでヒソヒソとなにかを話しあっている。ラッツはミミを膝に乗せてコクコクと頷いている。
いったいどんなかいわをしているのだろうか?
……いや、正直会話内容はほぼ全て聞こえているのだが……ここはお父さんとしてちゃんと聞こえていない振りをするのが正しい。
正しいのだ。
やがて作戦会議(?)が終わったのかニナ、ステラ、ラッツは先ほどと同じポーズをとる。
「おとーしゃん!」
「パパ」
ああ、そこからやり直すのか……。
「うん」
「「とりっく! おあ とりっく?」」
……?
ええと……うん、成る程。つまり……
お菓子をあげればイタズラしてくれる、ということだな! 素晴らしい。
子供達はお菓子を貰えて幸せ。
俺は子供達にイタズラしてもらえて幸せ。
誰一人として損をしていない……つまり
Win-Winだな。
俺はマジックバッグから取り出したお菓子の詰め合わせを三人に渡す。ミミにも後でおやつをあげよう。
「おとーしゃんありがとっ!」
「パパありがとう」
(ぱあぁぁぁぁ)
三人は輝かんばかりの眩しい笑顔でお菓子を受け取ってその場で食べ始める。天使。
因みにマジックバッグの中にはちゃんとイスカたちの分のお菓子も用意している。完璧だ…!
と、思っていたのだが。
お菓子を食べ終えた三人は
「ごちそうしゃまでした!」
「うん」
「パパおかわり」
「あー……夜ご飯を食べた後でな」
「はーい」
(口元にお菓子の粉をつけてコクコク頷いている)
そうして三人は立ち上がり
「おとーしゃんえほん!」
「絵本読んでー」
(クイクイ)
「ああ。その前に皆手を洗ってからな」
こうして三人にねだられて夜ご飯の準備が始まるまで絵本を読むことになった。
やはり家族は良い。こんなやり取りをしているだけで幸せなのだから。
……あれ、ところでイタズラは?
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本来はこういう異世界ものに季節イベントネタはどうかと思ったんですが……どうしても書きたくなったので……。
コミカライズ版の1巻が12月26日に発売だそうです。そちらの方もよろしくお願いします。
一応今のところ何が、とは言いませんが作業中です。ちゃんと出せるように頑張ります…あと、Webの更新が止まっていますが、書籍のみ…とかはするつもりはありませんので…。