健太の真夜中ツチノコ捜索

明石竜 

第1話

真夜中


みなさん、はじめまして。俺の名前は石垣健太。青春真っ盛りな14歳、中

学二年生。東京都渋谷区生まれの渋谷区育ち。都会っ子だ。

 俺は今、春休みを利用して京都にある祖父ちゃん祖母ちゃんちに遊びに来て

いる。

 俺にはある目的があって、祖父ちゃん祖母ちゃんちに来るのを毎回とても楽しみにしているんだ。

 それは、”ツチノコ”を発見して捕獲するという大計画。この付近では大昔から、未確認動物(UMA)の一種として有名なツチノコを目撃したという情報が他の地域と比べてやたら多くてな、今では町の名物になってるんだ。

 俺も幼い頃から年に何回か毎年毎年探しに来ているんだが、未だやつの姿を目撃し

たことはない。俺はもちろん存在を信じている。一度でいいからやつの姿を見てみたいんだ。

 普段は高層ビル群とアスファルトに囲まれた所に暮らしている俺にとって、祖父ちゃん祖母ちゃんちと周囲の山々は、いろんな種類の生き物たちと出会えて大自然の恵みや心の安らぎが感じられる最高のスポットだ。

「いつも朝から夜の浅い時間までで探しておったからのう、今回は真夜中に散策

してみれば見つかるかもしれんぞ。健太ももう大きくなったことだし、夜遅くでも

大丈夫じゃろう」

 と祖父ちゃんから言われ、今回は初めて真夜中に捜索してみることにした。

 今までは夜の山は危ないから絶対ダメと言われ続けて来たけど、ついに認められて

途轍もなく楽しみだ。


 まもなく日付も変わろうという頃、俺は懐中電灯を持ってツチノコ捜索のために

祖父ちゃんと外出。

「祖父ちゃん。俺、池の周り探して来るよ。いっつも雑木林の辺り探してただろ? 

今までそこで見つかった試しないし」

「そうけ? 目撃情報は雑木林が多いんじゃがのう。ワシはここをくまなく探

すぜ」

 そんなわけで、俺一人で湿り気の多い草むらへと向かった。


「んっ?」

 しばらく探し回っていると、突如、俺の背後に何か妙な気配を感じた。

 振り向くと俺の目の前に、やつらしきものがいらっしゃったのだ。目を凝らしてこ

いつの体全体を見渡してみると、全長は短くて胴回りが目立って太いことが分かった。

「こっ、この特徴、まさしくツチノコだ! 図鑑で見たとおりの姿だ! こいつはツ

チノコに絶対間違いねえーっ!」

 俺は目にも留まらぬ速さですばやくこいつの首根っこをつかみ取り、持っていた

バケツに入れて蓋をきっちり閉めた。

 そして、

「祖父ちゃん、見つかったーっ! 見つかった見つかったあああああああーっ!」

 俺は自分でも不思議なくらい大興奮して、祖父ちゃんのもとへと駆け寄った。

「ぅおう! ほんまけ? やるな健太よ。どれどれ」

 祖父ちゃんも興奮しながら蓋を開け、中を覗き込んだ。

「およよ?」

 途端、なんか拍子抜けした表情になった祖父ちゃん。

「あれ?」

 俺も覗き込んでみて唖然とした。

 確かに、バケツの中にヘビはいた。

 だが、口元には消化液で溶けかけの、もはや原型をほとんどとどめていないウ

シガエルの姿が――。

 俺が目撃したこいつの正体は、“アオダイショウの子供が獲物を飲み込んだ直

後の姿”だったのだ。

 おそらく俺が振り回したせいで吐き出したのであろう。このヘビも既にご臨終。チ

ーン。

「あ~あ、残念。とんだ勘違いだ。冬眠明けしたばっかりのアオダイショウさん、

ウシガエルさん、ごめんな」

「まあ気にするな健太よ、こういうことはよくあることなのじゃ」

 祖父ちゃんは苦笑いをしながら俺を慰めてくれた。


そのあとどうしたかって? 天に召された二匹とも、ちゃんと土に埋めてアイス棒で墓標立てて、きちんと供養してあげたよ。

 祖母ちゃんは形さえ整っていればウシガエルを調理して、から揚げにしたかったらしい。

 次こそ本物を見つけるぞ。っとその前に明日から中三だし受験勉強も頑張らなきゃ。

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健太の真夜中ツチノコ捜索 明石竜  @Akashiryu

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