凌辱の支配者の棲む山

ぴちぴちピッチ

凌辱の支配者の棲む山

魔力溜まりの薄暗い中でソイツは目覚めた。

辺りを見回すように鎌首を上げ警戒すべき変化が無い事を確認するとゆっくりと巨体を持ち上げる―――


暗闇に怪しく光る真紅の鱗、爬虫類を思わせる体躯、蝙蝠のようだが肉厚な巨大な翼、鋭い爪と獰猛な牙を具え、しばしば口や鼻から炎の息を吐く姿は頭から尾までゆうに20メートルはある成熟したオスのドラゴンだった。


天上の大穴から見える太陽の位置から今が昼時であり獲物が近くにいると言う全身に昂ぶりを感じていた。ドラゴンは一瞬ブルッと身震いをするとその巨体からは信じられないほどの敏捷さを見せ飛び上がると、天井の大穴に鉤爪を突き立てそのまま地上へ登って行き、日の光の下、この地域の支配者たるドラゴンはその雄叫びを上げた。


「グオォー!」


その声を聞き、付近の木々で羽休めをしていた鳥たちが一斉に飛び立った。

この森に生息する生き物たちは本能的に理解していたのだ。自分達が決して敵わない相手が近くにいる事を…そして昂ぶる衝動を抑えながら再び辺りを見回し絶対的な支配者の存在を知り、大慌てで無駄な逃走を図る哀れな獲物たちを値踏みしていく。


その視線の中に一際目を引く存在を見つけた。大慌てで逃走を図る者たちとは違い、こちらへ向けて駆けて二頭曳のホロ馬車、鉄蹄の響も勇ましく馬車の中の冒険者たちは戦いのゴングが鳴るのを待ち構え装備を整えていた。他の生物とは一線を画す存在感を放つその存在を見つけると、絶対の支配者はニタリと笑う。その瞳には強い意思の色があった。


そしてその巨大な翼を広げると、一振り、二振りを羽ばたかせ、やがて揚力を得るとふわりとその巨体が浮かび上がる。


「グオォーッッ!」


雄叫びを上げ上空から狙い済ませた獲物たる駆けるホロ馬車へと一直線に滑空し薄皮の如きホロへと爪を立てた。その衝撃に驚いて走り去った一頭の馬と慌てて飛び降りた冒険者がは運良く逃れたが、これ以上の逃走を逃すのを許さない支配者は暴れる馬に噛み付き逃げ遅れた哀れな冒険者もろとも、馬車の中のに、そのいきり立ったモノを突き立てた!?


(あぁ…やはり馬車と言う物は何かを積んで走っていなければ馬車とは言わない、もう一頭の馬を逃したのは失敗だった、暴れまわる馬車を蹂躙し犯してこその馬車だというのに…)


絶対的な支配者は満足げに喉の奥から低い笑い声を出し、馬車に歪んだ欲望をぶつけるべく腰を振り続ける。


「※※※※※ ※※※※ ※※※!!!」


運良く逃げた冒険者が馬車の中の仲間を救おうと必死で何かを叫び、支配者たる巨大なドラゴンへと無駄な抵抗を示す攻撃を繰り返している。


「※※※!!」


冒険者が何かを叫ぶその度に支配者であるドラゴンの嗜虐心を刺激し、より一層激しく熱くさせた。


「グオォー」


支配者であるドラゴンは自らの快感を高めるべく更に激しく腰を打ち付けて昂ぶりが頂点に近い事を感じると馬を押さえつけていた牙を抜き鎌首を高々と上げると大きく息を吸いこんだ―――


「グオォー!グオォー!」


大きく咆哮すると辺り一面に炎のブレスを撒き散らし、同時に馬車の中には灼熱のマグマのような白濁したモノをぶちまけていく。


―――後に残されたものは、青臭いオスの匂いと肉や木々の炭化したそこに存在した名残だけが静かに佇む焼け焦げた地面だけだった……。

この場を支配する恐怖の対象であったドラゴンは静かに炎を纏った息を小さく吐くと、満足したかのようにゆっくりと空の彼方へ飛び去って行った―――


「ふぅ…ようやく支配者様が立ち去ったか…商隊進めーッ!!いつ支配者の心変わりがあるか判らんから急げーッ!家族に知られたくない死に方は皆したくないだろーッ!さぁ走らんかーッ!」

商人の一人が声を上げ、幾多の馬車が街へ物資を運ぶべく連なって走り去る。

ここは頭のおかしい絶対の支配者が統べる『ドラゴンカーセックス街道』そこは多くの冒険者に多額の報酬を渡し通らなければならない難所だった。冒険者が運良く支配者を倒せれば良し、仮に倒せなかったとしても囮として支配者を満足させてくれれば商人たちは安全に通れるのだ。彼らが命を賭けて支配者たるドラゴンに挑み、敗れ、凌辱され、そして餌となっている間は安全が保障される。一説には命知らずの冒険者が支配者たるドラゴンに一撃を加え、その怒りでこのような蛮行に走ったのだと言われているが真偽は定かではない、だが、その命知らずが居なくなった時はどうすればいいのだろう…まぁ、それはその時考えれば良い…今はこの積み荷を幾らで売り捌くか考えよう…この道の渡り方を知らない者には何倍の値段を吹っ掛けても構わないのだから―――

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