【KAC20229】部活動で助っ人が活躍するのは創作の中でだけ

姫川翡翠

東藤と村瀬と球技大会

「疲れた」

「ははは!」

「なにわろとんねん」

「東藤ってやっぱり運動神経終わってんな!」

「うるせぇカス。自分がちょっと運動できるからっていきんな」

「へー? 頼れる相棒にそんな言い方は無いんじゃないですか、この雑魚が!」

「お前も初戦負けやないか雑魚!」

「おかげさまでね! ペアの僕も負けましたわ!」

「いやな? 俺だってほんとは卓球が良かったんや」

「卓球なら上手なん?」

「はぁ? 下手やけど?」

「じゃあなんでやねん」

「楽やからに決まってるやろ」

「理由が最低すぎる。まあとりあえず僕らの球技大会は終了ってことで、お疲れさん」

「おう。てか同じブロックの2ペアが両方現役テニ部のペアとか、頭おかしいんちゃうか? というか球技大会で自分の専門競技出るなや。卑怯やろ」

「しゃーない。いろいろと運が悪かったんや」

「寒い。教室帰っていいんかな?」

「いやいや。僕らは早めに終わっちゃったけど、普通はこれから盛り上がるところやから。そもそも教室とか全部鍵かかってるで」

「あとどのくらいかかる?」

「最低でも1時間半くらいはかかりそうやけど」

「まじかよ。12月の寒空の下で凍え死ねってこと?」

「とりあえず室内競技でも見に行く?」

「まあその方がマシよな。他何があったっけ?」

「えーと、外で男子フットサルと男女テニスやってるやろ? 室内は体育館で男子バスケと女子バレー、特別棟のホールで男女卓球やから体育館かホールやな」

「ホールはなぁ、狭いんよなぁ。ちょっと遠いし」

「じゃあ体育館で」

「せやな。バスケとバレーの方が見てて楽しいし」

「そんじゃ僕うんこ行ってくるから先行っといて」

「もうちょっと言い方濁せよ」

「なんで?」

「くそったれが!」

「お前もうんこぐらいするやろ!」

「もう! ええからはよいけ!」



 ★



「うわ、体育館もさむー」

「あ、東藤君!」

「え? あ、き、木村君? はい、東藤でございます……」

「ちょうどいいところに! 頼む! バスケの試合出てくれへん!?」

「は? え? いや俺は……」

「山下のやつが3試合目で突き指しちゃって保健室行ったから、次の試合に出れそうにないねん! お願い!」

「でも俺……」

「大丈夫! あと2試合突っ立ってるだけでいいから! 正直俺と北上がいれば勝てるし!」

「そうそう。俺ら1年で既にバスケ部のダブルエースやねんで!」

「それにさ、ここだけの話、俺ら女子たちにいいとこ見せてワンチャン狙ってるんよ」

「ほら、上に川瀬と安田いるやろ? やから東藤君ぐらいどんくs……、まあ、とりあえず俺らでカバーするから」

「(なんやねんこいつら。それやったら4人で出ればいいやろ。ダルいねん。ていうか素人相手にいきってんなよ)」

「ん? なんか言った?」

「い、いえいえ! えと、立っていればいいんですね?」

「うん!」

「立ってるだけですからね? 言いましたよ?」

「4組! 試合の準備してくださーい!」

「はいはい! じゃあ東藤君頼むわ!」



 ★



「東藤君さ、突っ立ってるだけじゃ邪魔なんよ。そこにいられるとスペースがつまって北上と連携取りにくいって」

「そうそう。もうちょっと考えてよ。しかもディフェンスもなにあれ? やる気ある? ちゃんとやってくれな負けるやん」

「は、はい(なんやねんこいつら(2回目))」

「瀬上と山崎はちょっと雑なシュート多いから、無理するくらいなら俺らにパス回して。5組の7番と9番がデカいからリバウンドきついし」

「お、おう」

「しゃ、じゃあ後半で逆転するで! 円陣組もか」

「行くぞ!」

「「オー!」」

「お、おー……(なんやねんこいつらマジで(3回目))」



 ★



「あー、しんど。なんとか勝ったけどさぁ、マジで東藤君下手過ぎ。完全に4対5やったやん」

「さすがに俺らもカバーできひんっていうかさ。まあ俺と木村がどうにかしたけどさ」

「……すみません(なんやねんこいつら(4回目))」

「次は頼むで」

「……はい(なんやねんこいつら(5回目))」

「東藤ー!」

「む、村瀬!」

「僕がうんこ言ってる間に何があってん! よう頑張ってるやんけ!」

「お前トイレ長すぎやねん! でもええわ! 俺と変わってくれ!」

「あ、ごめん。またうんこ行きたくなってきた。朝飲んだ牛乳があかんかったんかな……トイレから応援してるで!」

「〇ね!!」

「はぁ!? なんでや!?」





「あー! クソッ! 1組に負けた! なんやねんあいつら! 公式戦やったらファールばっかりやんけ! バスケやったことない素人やからって調子乗りやがって!」

「ホンマそれな! てか素人に審判なんかできるわけなくない?」

「チッ、うっざ! てかさ、瀬上無理に行くなっていったよな? なんで言われたことも出来ひんの?」

「す、すまん」

「山崎のディフェンスは結構よかったけど、肝心なところで優しすぎ。相手があんなけ当たってくるんやからお前も当たれよ」

「そうやな、ごめん」

「東藤君は論外」

「マジで何でいるん?」

「……(なんやねんこいつら泣きそう(6回目))」

「でも1組って1回負けてるよな?」

「うん。初戦でなぜか2組に負けてる」

「じゃあ同じ1敗か……得失点とかじゃなくて最後にもう一回直接対決して決めるんよな?」

「みたいやね。時間もあるし、その方が盛り上がるし」

「一応1組の最終試合の結果次第やけど……まあ6組相手やし勝つやろ。絶対やり返したるわ。全員気合入れろよ!」

「「オー!」」

「…………(なんやねんこいつら(7回目))」

「おう、東藤! お疲れ!」

「…………」

「普段に増して生気がないな」

「正直木村君と北上君が死ぬほどうざい。てか切実に〇んでほしい」

「まあ、普段はいい奴らやから。スポーツマンなんて勝負が絡むとちょっと面倒くさくなる生き物なんやって。というかそもそもなんで東藤がバスケでてるん? 山下は?」

「怪我したらしい……」

「あ……」

「立ってるだけでいいって言われたから……」

「猫の手を貸した結果?」

「客を招くだけでいいからって言われたのに、当然のように接客とレジ打ちをやらされて、挙句の果てには売れない責任すらなすりつけられた招き猫の気分や……」

「絶妙やな」

「あいつらいきってるくせに猫の手に頼りすぎやねん。なにが『俺ら二人いれば余裕やからwwwwww』やねん。きっしょ。嘘つきやん。泥棒やん」

「荒れてんなぁ。よし。猫の手交代や」

「うん。頼むわ。最後の試合で足引っ張ったらもうたぶん俺のメンタルは消滅する……」

「まかせろ」

「てか村瀬ってバスケやったことあんの?」

「ないよ? けど小学生の頃スラムダンクめっちゃ読んでたから」

「俺は知らんからな?」

「東藤君! はよこい! 最後の試合前のミーティングや!」

「ひえぇ(なんやねんこいつら(8回目))」

「あ、村瀬が変わりまーす」

「おう、村瀬か。東藤君よりはましやな」

「あはは。よろしく!」



 ★



「村瀬君すごい!」

「めっちゃかっこよかった!」

「え、そう? ありがとう!」

「さっきは1組に負けてんで? でも今回は勝ったってことは、村瀬君のおかげみたいなもんやん!」

「そうそう! 素人の私でも村瀬君のうまさははっきりわかったで!」

「村瀬君打ち上げくる?」

「えー、どうしよっかな?」

「来てよ!」

「……おい村瀬」

「ああ、木村と北上やん。お疲れ。なに?」

「……いや、お疲れ」

「ちょうどええところに。僕東藤のとこ行くからさ、川瀬さんと安田さん頼むわ」

「え」

「すまんねー。おい東藤!」

「……お疲れ」

「うん。どうやった?」

「お前きっしょ」

「あ? ねぎらえよカス」

「お疲れ言うたやん」

「足りひんやろ。お茶ぐらいだせよ」

「無理いうなボケ。……まあ、正直すっきりした」

「そりゃよかった」

「猫は猫でもライオンやったな」

「そこまでいうなよ。恥ずかしい」

「恥じろうんこまん」

「やめろ」

「え、めっちゃ語呂よくない? 『恥じろうんこまん』」

「お前だってうんこぐらいするやろ」

「そりゃするけど、堂々と人前でそういうことは言わん」

「もうええわ。今日球技大会の打ち上げやるらしいけど行く?」

「行くわけないやろ」

「やろうな。じゃあ僕もいいかなぁ」

「お前は本日のヒーロー様やろ。行ってこいや」

「まあ……考えとく」

「閉会式ってあるっけ?」

「運動場かな」

「ほい。じゃあ行こ」

「うん」

「にしても寒いなぁ」

「風が強すぎ問題」

「あ、ちょっとトイレ行ってくるわ」

「うんこ?」

「聞くな」

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