ネコとネズミと閏月
磨糠 羽丹王
「ネコとネズミと閏月」
「
神様の御前で数千年振りに開催された動物会議は大荒れです。
というのも、その昔『その年の動物の王様にする』という約束で始まった干支制度でございましたが、荒ぶる人族のせいで誰も王様になれなかったのです。
その事について、干支の順番に神様への報告が始まりました。
「
「
「
トラが悔しそうに涙を流しています。
神様は神妙そうにうなずきました。
「
「
神様は小さく手を合わせて、リュウに謝っているようでした。
「
「
神様が何かを思い出したかの様にスマホを取り出されて、「チッ、リセマラがウマく行かねえなぁ。馬だけに……」とか呟いていましたが、何を確認しているのかは見えませんでした。
「
「
「……千客万来って何だよ。意味わかんねーし……」
神様はサル達と目を合わせません。サル達が
「
これは中々の高得点ですが、人族を従わせている訳では無いので、やはり王では無いようです。
「
この発言に会場はブーイングの嵐です。
「お前らはお腹見せて従っているだけだろうが!」
「人族に尻尾ばかり振りやがって!」
「人族が相手をけなす時に『犬』って使うだろうが、何が王だ!」
余りの
やはり王では無いようです。
「
イノシシが鼻息あらく胸を張ります。自信満々の様です。
「豚じゃん。どのアニメでも勢いばかりで馬鹿にされてるし」
誰かの心ない一言で怒り出したイノシシは、
「……あかんのは、そーいうところやぞ……」
神様の
そして、ある動物の登場に会場が静まり返ります。
神様の前に、美しき姿をした動物が進み出ました。
「ふふふ。
「遅刻魔のお主が何の用だ?」
神様がいぶかしげにネコ族の者を見ています。干支の順番を決める時に一日遅れた事を、いまだに許されていないのです。
「にゃんの! あれはあやつが
鋭い爪で指さしながら、怒りに燃えるネコの
ネズミは震えあがっています。
「そもそも、我々は時間に厳しいにゃ! 起きる時間、食事の時間、遊んでやる時間、おやつの時間。全ての時間で
「ほう。その様な事が……」
神様の目が輝きます。
もしかしたら、ネコ族を動物の王と認めるのでしょうか?
「人族のことわざにも『お猫様のお手をお借りしたい』という言葉がある程にゃ!」
「そうなのか? では、我々もネコの手を借りても良いのかも知れんな……」
神様が感心した様にネコを見つめています。
「でも、その為には!」
「その為には?」
「干支を変えて貰わなければ、納得致しかねますにゃ」
ネコの発言に会場がざわつきます。
これまで長く続いて来た『干支制度』を変更しろと言っているのです。
とんでもない事ではございますが、動物の中で
「うーむ……」
神様は困ってしまい頭を抱えました。
皆も何か良い案がないか話し合っていますが、時間ばかりが過ぎて行きます。
その時でした。
「ネコ様」
皆の前にネズミが進み出て来ました。何か案があるようです。
「何だ! 殺されたいのきゃ!」
ネコは積年の
「い、いえ。これまでのお詫びに、素敵なご提案がございます」
「また、
ネコは更に瞳を細めてネズミを
何となくヤバそうな雰囲気に、神様が割って入られました。
「ネコよ。もしかしたら良い話かもしれぬ。ネズミの言う事を聞いて見ようではないか」
「……」
襲われる心配がなくなり、ネズミは手を擦りながら話し始めました。
「今から干支を変えるとなると、大混乱を招きます。そこで……」
「そこで、何にゃ!」
「は、はい。こ、
「それが何にゃ?」
「その
「栄誉?」
「はい。
その話を聞いて、ネコの目が嬉しそうにまん丸になりました。
十二年に一度しか訪れない
この栄誉をネコ族が受け取ると言うのです。
これは、今まで
「わ、わかったにゃ! それなら、動物たちに王座を取り戻すために、我ら猫の手も貸してあげるにゃ!」
「そうか! では、ネコよ。これから人族の事は頼んだぞ」
「任せるにゃ! 我らは動物の王様にゃ!」
嬉しそうなネコの表情に、神様も満足そうです。
こうして、満場一致で『
そして現在、世界の
今日もネコはネズミを絶対に許しません……。
おしまい
作:磨糠 羽丹王(まぬか はにお)
ネコとネズミと閏月 磨糠 羽丹王 @manukahanio
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