REDーわたしだけのヒーロー♡ー

枡本 実樹

わたしだけのヒーロー

ううーん。今年の人気のアニメはアレとアレ。

で、小学生に流行ってるおもちゃはコレ・・・。

気に入ってそうな服は、アレ、だよな。


あーーー。クリスマスまであと一ヶ月しかないのに。

どうするかねぇ・・・。

オレは毎年恒例の悩み事に、頭を抱えていた。


おぉーい。だいじょうぶかー?

目の前で手のひらをヒラヒラさせる彼。幼馴染のユウ。

「ヒビキ、今年も例の日が近付いてきたな。」


「おう。」

みんなも一緒に考えてくれよ。といっても、ここに居るのは全員高校生男子。

小学生の女の子の好きそうなものなんて解るはずもない。


「お!いよいよ恒例の時期かぁ~。」

ドアが開いたと思ったら、ニヤニヤ笑いながら近付いてくる彼女。幼馴染のリコ。

今年もリコに頼むしかないかな。


「一年で一度だけ、ヒビキが悩むのを見れる貴重な季節。」

そう言って笑うコイツの言葉は憎たらしいけど、言葉と裏腹に優しい対応をしてくれるので、正直なところ、毎年助けられているのは確かだ。


オレには10歳離れた妹がいる。クリスマスは彼女の8歳の誕生日だ。

母は八年前に他界している。

父は単身で海外赴任中。

祖母と6歳離れた兄、オレ、妹の四人で暮らしている。


父は彼女の誕生日前に、今年も休みを取って帰国することになっているが、こっちで流行っている物のプレゼントは買ってあげられないから頼む!と連絡が来た。

兄は仕事が多忙なので、今年もオレが買いに行くことになっている、のだが。

いやぁ、小学生女子の好みは難しすぎて解らない。


ここ五年程、オレが担当。

悩んだ末、毎年、妹が懐いているリコに、それとなくリサーチしてもらっている。

さて、今年はどうやってリサーチしてもらおうか。



週末、遊園地に行くことになった。

いつもツルんでいる友達

ユウ、トウマ、ユズ、イッシ―、大崎、リコの六人と

オレと妹のカナデとの八人で。


提案はいつも通りリコなのだが、いつもはめんどくせーとか言ってるみんなも、今回は二つ返事で答えてくれた。

カナデのことになると、みんないつもすぐに協力してくれて、本当にありがたいと感謝している。


休日出勤の兄が駅まで車で送ってくれた。

「カナデ、ヒビキから離れたらダメだからね。気を付けて行ってくるんだよ。」

歳が離れているせいか、オレにも甘い兄は、16歳も離れた妹には激甘だ。

娘みたいな感じなんだろう。


父親が三人もいるような状態の彼女に、彼氏が出来る日は来るのだろうか・・・。

「はぁい。にぃにもお仕事頑張ってね。早く帰ってきてね。」

兄の贔屓目ひいきめかもしれないが、本当にこの笑顔はかわいい。


「うん。お仕事さっさと終わらせて、早く帰るからね。」

毎日一緒に居るのに、離れ難いような表情を隠せない兄の車を見送って、待ち合わせの場所に向かう。


「おう、こっちこっち。」

トウマが手を振る。

みんな揃ってて、カナデに向かって笑顔で迎えにきてくれる。


「カナデ、またおっきくなったなぁ。」

ユズが妹の頭をわしゃわしゃと撫でると。


「ユズ、女の子におっきくなったな、はないでしょ。そんなんじゃモテないよ。」

いつも通り、カナデはユズに塩対応。


今日もオレに冷たい。としょんぼりしてみせるユズにみんなが爆笑する。

さっさとユウの手を繋いで改札に向かう彼女の後を追って、みんなで電車に乗った。


遊園地で、カナデの身長がクリアできるものに一通り乗って、いくつかあっているステージイベントを観に行くことにした。

女の子向けのステージイベントに、こんなぞろぞろと高校生男子が居るのもおかしい気がしたが、周りの家族連れに交じって、オレたちもなじんでいた。


小さい頃、兄と一緒に戦隊モノのショーに連れて行ってもらったことがあるが、女子の人気アニメも男子と変わらず、いまは戦う戦士なんだと判った。

ステージイベントの後は、リコがガールズトークしたいから、男子は絶叫マシーンでも乗ってきて。と追い払われた。


後は、リコ様々、頼みます。

リコに感謝しながら、その場を後にした。



***


わたしの名前は、木戸きどカナデです。

小学2年生です。

今日は、お兄ちゃんと、お兄ちゃんのお友だちとゆうえんちにきています。


さっき、みんなでアニメのショーをみてきました。

いまからは、リコちゃんと二人で、ガールズトークの時間です。

リコちゃんは、わたしが小さい時から、リボンをむすんでくれたり、おかしをいっしょに作ってくれたりする大すきなお姉ちゃんです。


リコちゃんが、カナデのすきなイチゴのクレープをかってくれました。

男子にはひみつね★とウインクするリコちゃんがかわいくて、カナデもまねしてみました。


「ねぇねぇ、さっきのアニメ、学校でもはやってるの?」

「うん。みんなみてるよ。」


「カナデちゃんはだれがすきなの?あのカッコイイしゅじんこうのカレシとか?」

「うぅーん。とくにすきじゃない。」


「じゃ、あの犬とかネコみたいなようせいのキャラはどれがすき?」

「うぅーん。どれもおなじくらい。」


リコちゃんがかんがえこんでいる。


「そうだ!ほしいぬいぐるみとかってある?」

「ちっちゃいキーホルダーがほしい。」


「どんなやつ?」

「お兄ちゃんの学校の近くにあるお店のクマちゃん。」


少しかんがえこんで、ハッとしてる。リコちゃんかわいい。


「クマちゃんってこれのこと?」

リコちゃんが、自分のリュックについてる黒いクマのキーホルダーを見せる。


「そう、それの黒じゃないやつ。」


前に、お兄ちゃんたちが話してる時に、リコちゃんが “ し ” の色のクマのキーホルダーをつけるのがはやってるっていってたのを聞いた。


「カナデちゃんは何色がすき?」

「赤。」


「前はピンクとオレンジじゃなかった?」

「うん。でも、いまは赤がいちばんすき。」


「そっかぁー。」

うんうん、とうなずきながら、リコちゃんはニコニコしている。

そろそろ、みんなのとこ行こっか。と言って、歩きながら話す。


「カナデちゃんは、あのアニメのヒロインみたいに、かっこいいヒーローに守ってほしくないの?」

「ううーん。だいじょうぶ。」


だって、カナデにはもう、かっこいいヒーローがいるもん。

生まれた時から、ずっと守ってくれてる。

わたしだけのヒーロー。


リコちゃんにもひみつだけど。


***



リコたちと合流する。

カナデはニコニコしながら、イッシーの手を繋いで歩き出す。


後ろから歩いてると、すごく不敵な笑みをしたリコが耳元で囁く。

「収穫あり。」


自分のリュックについてる黒いクマのキーホルダーを見せながら、

「コレの赤いのが欲しいんだって。」


「おう、ありがとな。」

悩み事が一気に消えて、リコに感謝した。



翌日、学校の帰りに、近くの雑貨屋で売られてるというそのクマのキーホルダーを買いに行った。

いつもはバラバラに帰るメンバーもなぜだかついてきている。

赤いクマのキーホルダーをラッピングしてもらって帰る。


別れ際、『コレ、カナデちゃんにプレゼントしといて。』と、6人それぞれから小さいラッピングバックを渡される。

「ありがとうな。」

みんなにお礼を言って、別れる。



その年のクリスマス。

カナデの8歳の誕生日。

サンタを待つ枕元には、靴下と一緒に、誕生日会で渡した

七色のクマのキーホルダーが仲良さそうに並んでいた。



::::::::::୨୧::::::::::୨୧::::::::::୨୧:::::: ଘ♥ଓ :::::୨୧::::::::::୨୧::::::::::୨୧:::::::::::



Wishing this Christmas will bring so much fun and happiness for you.



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REDーわたしだけのヒーロー♡ー 枡本 実樹 @masumoto_miki

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