朝
美緒は、英治の帰りを待っていたが、夜中まで待っていても隣の家の英治は帰って来た気配は無かった。
あきらめて寝てしまった次の朝。
寝不足の美緒は、眠気で思考が回らない状態で朝食を食べている。
テレビのニュースでは、ビル街を煙が充満している画像。銃声もしている。
アナウンサーが、慌てた口調でじゃべっていた。
なんと、2つ隣の駅のオフィス街でテロがあったらしい。
ヨーロッパのどこかの国の第3王女が移動中に襲われたそうだ。
だが、なぜか王女は無事に脱出して大使館に現れたらしい。
王女がどうやって脱出し、大使館に移動したのか。
その謎に対する憶測を解説者が物知り顔でしゃべっていた。
「テロですって。怖いわね」
「結構、近いなぁ。美緒も気を付けるんだぞ」
何を気を付ければいいんだろう?
そう思いながら、美緒はぼんやりと見ていた。
テロなんかよりも、英治にいちゃんとあの美女のことで頭がいっぱいである。
”英治にいちゃんが帰って来たら、問い詰めなきゃ・・・”
――――
美緒は知らなかった。
M王国の第3王女が襲撃されるのを事前に知り、助け出していたのは英治たちであった。
カフェにいたのは、襲撃時刻までの時間調整のため。
英治は、ほんの偶然からある力を手に入れていた。
24時間先までの未来を知る力。
その力で、美緒を通り魔から救ったのである。
英治は、これまでも世界で起こる複数の事件や事故を未然に防いだ。
未然に防いでいるからこそ、事件があったことさえ多くの人が知ることは無い。
だが、救われた一部の人々のその呼び名を決して忘れない。
オーバークロック。
英治は、もはや美緒だけのヒーローではない。
世界の多くの人から、感謝と尊敬される存在になっているのだ。
私のヒーロー? 三枝 優 @7487sakuya
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