メシマズ

「……すけ、龍之介!」


ん?なんだ?まだ眠いのに


「龍之介朝だぞ!一緒に長老に会いに行くんだろ」


長老?


「はっ!そうだった!」


勢い良く起き上がるが途中でゴン!と頭の中に火花が散った。十中八九ぶつかった相手はレティシアだ。


「っ!ってレティシア大丈夫か」


クラクラする頭を振る。ぶつかったおかげで寝ぼけることもなく正常に思考が回転する。


「急に起き上がらないでくれ……」


周りを見渡すとベットの右側で額を押さえてうずくまっているレティシアを発見した。


「ごめん、少し熟睡しすぎた」


朝早くに呼びに来てくれたレティシアは全く反応がないことを心配して部屋まで起こしにきてくれたのだろう。


「まったく……ほらリュウノスケ、早く着替えて長老のところに行くぞ」


額をさすりながらレティシアが寝室から出ていく。


「……よし!今日も一日頑張ろう!」


急いでベットから降り着替えをすませるとリビングへむかった。


「準備はできたか?では行こうか」


昨日の夜のデレ?は、何処へやらいつものクールなレティシアがそこにいた。


「ついさっき起きたから朝食もとってないだろう、ほらこれ家で作ってきたんだ」


二人並んで歩いているときレティシアから紙に包まれた物を渡された。包み紙を開けると中身はサンドウィッチだった。


「これ食べて良いの?」


「当然だろう、他に誰が食べると言うんだ」


呆れた顔でこたえられた。


「いらないなら私が食べるぞ、良いのか?」


「いります!食べさせてもらいます!」


レティシアのことだからなにも言わなかったら本当に食べられる。そんなことになったらまだ何も食べていない俺の腹が、全力でデモを起こして一歩も動けなくなってしまうだろう。俺はサンドウィッチにかぶりついた。


「……レティシア、俺は物凄い勘違いをしていたようだ」


が一口食っただけで手が止まってしまう。


「?」


不思議そうな顔をして首を傾げるレティシアの目を直視できない。


「いやなんでもない。とても美味しいよ!」


言葉で表せられないぐらい美味しくなかった。だが折角作ってくれたものまずいなどと言えるはずもない。


「そうか!昔からこれだけはだけはうまかったんだ!だが他はリークから作るなと禁止令を出されてしまった……おいしいのになぜリークは作るなって言うんだろうな?リュウノスケはわかるか?」


嬉しそうに微笑むレティシアだがやはり自覚はないみたいだ。


「さ、さぁ?なんでだろうね」


言えない、とても言えない、口が裂けても言えない。サンドイッチ一つ食べきるのが、途方もなく遠く感じる。むしろリークはこのサンドイッチは大丈夫だといったのだからこれでもまだおいしいのだろう。ならそんなリークにすら禁止令がだされる料理って本当に料理なのだろうか?毒のほうがあってるのではないか。


「ただリークも食べてるときおいしいとは言うんだが、顔が青いんだ」


違った。リークの舌は正常だ!レティシアの尊厳を守るために必死になって食べて、美味しいと言ったのだ!リーク、俺が間違っていた君は漢だった、見直したよ。


「初々しいの、朝っぱらから老人を起こしておいてそれかね?」


「「ヒッ」」


またもや気配や足音がなかったのに後ろにいつの間にか村長が立っていた。


「龍之介、確かエレメイトの適性を調べたいんじゃったなあいにく調べるための道具が家にあっての家ですましてしまおう、レティシアもどうせついてくるのじゃろう?」


村長には何でもお見通しというわけですか。


村長と合流したレティシアと俺はときどき村長のいたずら(主に不意をついて急に後ろから脅かしてくる)

をうけながらも村長の家についた。


「少し待っておれ、今もってくるのでな」


そう言うと家の中に消えていった。しばらくして村長がもどってきた。


「待たせたの、これが適正を見るための道具だ」


置かれたのは占い師が持っているような丸っこい水晶玉だった。


「これに手をおくとそのエレメイトの色がでてくる。例えば焔のエレメイトに適性がある紅、水のエレメイトだと蒼だ、それからそれぞれの色の濃さで大体の適性度が確認できる。適性度が高いほど同じ魔力量、魔法での威力が上がる」


なるほどつまり濃ければ濃いほど単純火力は強くなるわけだ。


「さあ龍之介、そこ手を置いてくれ」


何の属性の適性があるかワクワクしながら水晶玉に手をおく。


「あれ?何も起きない?」


水晶玉は何か模様が出てくるわけでもなく、その属性の色に合わせて光るわけでもなく、全くの反応なし。


「村長無反応って……」


やばい冷や汗が出て来た。


「………」


村長もどう言っていいか迷ってる。


「ふむ、適性のあるエレメイトはないな」


レティシアさん!貴方なんでこんなときものの見事に切り捨てちゃうの!


「ままあ龍之介よそんなことも稀にある、気にしないでくれ、魔法の素養がないだけだから」


村長、追い打ちをかけないで、もう俺死んでしまう。


「まあそんな時もありますよね、ハハハ…」


重い空気で水晶玉をその場の3人が眺めた。


「えっ!?」


全員が素っ頓狂な声をあげた。


今まで何の反応も示さなかった水晶玉が、突如一瞬強く光り真っ二つに割れた。


「えーと……村長これは何のエレメイトの適性?」


まさか何か凄い魔法の適性があるのかと期待しながら村長のほうをむくと村長は唸り声を上げていた。


「これは……やっぱり適性のあるエレメイトはない」


世界は無慈悲なのか。

ガックリと落胆した。


「ただ魔・力・だけはある水晶玉が壊れるほどの」


んー魔力だけあってもなー、いい所爆裂魔法に極振りした中二病少女の補給役にしかなれない、ある意味魅力的だけど。


「良かったな、これで無魔法が使えるぞ!」


ハイテンションでレティシアが教えてくれる。


「ほう!それでどんな感じなんだ!?」


これはもしかしてのもしかして!?


「それはだな!魔力を衝撃波に変換するんだ!」


駄目だったーー!!


無属性だから全ての魔法を中級まで使えるとかあると思ってたのに!まぁさかの衝撃波オンリー無にもほどがある。


「龍之介よ落ち込むなこの世の中は魔法だけでは……全ては決まらん……」


必死のフォロー胸に染みるほどありがたいんですけど、その言い方だと大抵のことが決まりそうですよ。


「村長、いいですよ水晶玉が割れるほどの魔力量なんですよねそれで十分です」


折角調べてもらって責めるのはお門違いだ。


「でその衝撃波を出せる魔法はどうやれば良いんですか?」


話を変える為にも使い方を知るためにもこれは聞いておかないといけない。


「そうだったの、ある賢者が詠唱によって魔法が発言することを発見したのだそしてその研究結果を公開した結界、各国が競うように研究し、独自の進化を遂げたのだそしてこの国……いや儂はそのうちの1つ魔法書に描かれた魔法陣を暗記することで無詠唱で発動できるトレース式を使うようになった。他にも世界には様々な方式があるが数え切れない」


それでレティシアは無詠唱でやってたのか。


「この辺りの歴史は後で教えよう、ここで龍之介に選んでほしい基本、一度修得した方式はよほどのことがない限り一生ものだ龍之介がトレース式を学ぶのなら今から教えれるが他ならまた別の者に教えを請わねばならん。どうするかの?」

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せっかくの異世界転生なのに手違いで選んでしまったのが銃って夢がない? 深空 月夜 @Lachenvanargand

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