第2話 恋してしまった

 棘帆 奶留。スピノサウルス・エジプティクス。日本にいる爬虫類型人類のおよそ5%を占める。

そんな彼女は美少女と言っていいほどに美しかった。薄い金髪を後ろでゴムでお団子状にまとめている。前髪は片方は目を隠すほど長く片方はおでこが見えるぐらいに短い。アシンメトリーな髪型だ。

そんな彼女にも爬虫類型たる尻尾が生えており、背中にはスピノサウルスに酷似している帆がある。

普通の感性を持った人間ではそんな恋に落ちたりなどしないはずなのだ。

確かに実例もあるが、それでも人間と遜色ないラプトル系や気性が荒くない草食系なのだ。

「まぁさ、誰に恋しようが勝手だけどさ、お前結構クラスの人から引かれてるぜ。」

 「大丈夫だって。奶留さんに引かれてなければ明日も生きていける。」

「引かれてるかもな。」

「生きる意味を失ったー!」

そんなリアクション取るなよ。と鮎斗を嗜めて鈴木は自分の席に戻っていくのであった。


好きだ。好きだ好きだ。大好きだ。彼女の全てが好きだ。別段に親しくもないのにこんな感情になってしまうなんて。これはもう告白してしまおうか。変にキモがられたら死んでしまうかもしれない。そんな事を考えながらも、彼女のことを見ていた。

 「長良、ここぉ分かるか?」

先生の呼び声で正気に戻った。なんだ。そんな問題か…。そんなことで僕の至高の時間を潰そうなんて。いいだろう。答えてやろう。

「わかりません」

「ならちゃんと黒板見ろー。」

「すみません。」

そりゃ、分からん。なんだこれ?暗号か?こんな暗号を解かそうとするなら、もっと頭のいい奴を選べ。馬鹿なのか?

「じゃぁ…奶留、わかるか?」

ナイス。先生ナイス。お前天才か?最高じゃないか。奶留さんの声が聞こえるなんて、いつも無口で貴重性の高い奶留さんの声。先生、お前ももしかしたら好きなのか?奶留さんのこと。だめだぞぉ?教師は手を出すな。

わかりません。それだけ言うと奶留さんは席に座っていった。そうかー。分からないかー。奶留さんも分からないのかー。まぁ、あんな暗号を解ける奴の方がおかしいと言うものだ。むしろ分からない方が正常なのだ、多分。

 放課後。

「お前さー。注意しても一向に止める気ねぇじゃん。ちゃんと黒板見ろよ。」

「はっ。黒板と女性、黒板を優先するなんて、そんなの女性に失礼だぜ。」

「女性に失礼なのはお前だ。いつも見られてると、ストレスがたまるってもんだ」

「馬鹿野郎。そこは…バレないようにしてるだろ?教科書の上から少し覗いたり、寝たふりしてるんだし。」

「なんつーか…お前馬鹿だよな。バレバレなんだよ。首を動かすな。馬鹿」

 そう言って鈴木は家の方向へ向かっていった。

翌日。いつものように早く、迅速に投稿した僕に一つのサプライズがあった。

下駄箱に手紙があった。しかも奶留さんから。まじか。ましかまじかまじか。なんかなー。今時ラブレターとか。可愛すぎる。

まぁ。まぁまぁまぁ。まだ?ラブレターとは決まってないし?もしかしたら別の内容かもしれないし。取り敢えず内容を見ておこう。


       放課後屋上に来てください

きれいな文字でそう書いてあった。キタコレ。カッタコレ。みんな…僕は幸せになります!

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恐竜に恋してしまった @hounennebi

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