第4話 初心 (陽奈太視点)
とても綺麗な歌声が聞こえた、歌のうまさで言えば自分からすればまだまだだ、だが不思議と惹きつける何かがある。
そんな歌声で陽奈太は目を覚ました。
「ここは?」
「動かないで!」
そう少女の声が響く、その高音が二日酔いがひどい陽奈太には辛く、頭を抑える。
「だ、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ大丈夫」
少女は少し安心したような表情をした
「で、あの君が俺を助けてくれたってことで間違いない?」
「はい、そうですけど」
「本当にありがとうございます、助かりました」
「別に見捨てるのも気分が悪いので助けただけです」
少女はそっけなさそうに答える
「そうだ、私この後用事があるので、朝ごはん少し多めに作ってそこに置いといたので、よければ食べてってください、それじゃ」
そう言って少女は携帯で時間を見て急いで出て行ってしまった、俺が盗みとかする可能性とかは考えてないのだろうか、見ず知らずの男に朝ごはんまで作るような人だお人好しなのかも知れない
部屋を見渡す、普通の一人暮らしのような家でそこまで広くはない、俺が寝かされていたベットのすぐ近くに置いてある小さな机に朝ごはんが置いてあった。普通の和食だ、ラップをしてあった味噌汁はまだ少し熱が残っていた。俺は置かれていたコンビニでもらえような割り箸を袋から出してありがたく頂いた。
「おいしい……」
つい言葉が出てしまった。他人の手作りなんていつぶりだろうか。歌手として人気が出てからは、ユーバーイーツや外食しかしておらず数年ぶりの感覚だった。
「あれ?」
そして気づいた、出てしまったのは言葉だけではなく涙も出ていたようだ。
小一時間後、俺はありがたい朝食を完食し、家を出ることにした。少女の作った朝食は冷めてるはずなのにとてもあったかくて、俺の後悔を加速させた。きっと家族を思い出してしまったからだ、僕を見捨てた家族、当たり前だろう自分で家族を蔑ろにしたのだから。
自宅に戻るため道に出ると
「今時チラシ配りなんてあるんだなー」
「俺絶対チラシ配りなんてしたくねーだって恥ずすぎだろw」
そう言ってチラシをポイ捨てする男二人組
男2人が見えなくなるまで待ってから捨てられたチラシを拾い見てみる
「え?」
そこには、新人歌い手光(ひかり)YTUBEにて活動中!是非一度聴いてください。と書かれてマイクの前に立つ少女、俺を助けてくれた少女だった。
「歌い手だったんだ」
その後家に急いで戻り、YTUBEで少女、光の曲を聞いてみた。歌っている曲はほとんどがカバー曲、その中でも俺の曲が多くあった。
「なるほど、だから助けてくれたのか」
そんなことを考えながらも曲に集中する。下手ではないがプロには匹敵しないそんなレベルだった。それなのに気づいたら日が暮れるまで聞き入ってしまった。
「あぁ……泣いてばっかで俺ダセェなぁー」
大人気ヴォーカリスト、マネージャーに堕ちる はす @tigerSun
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