第3話 夢見る少女

「はぁー、中々上手くいかないなー」


金髪の女性、鈴音りんが呟く。彼女の容姿はとても整っており、なにかのモデルだと言われても信じるレベルだ。


「次はきっと上手くいくよ、ほら切り替えよ」


そう言ったのは、りんの友達の原もえだ。りんとは、高校からの同級生だ。


「そうだね、もっと歌の練習しないと、次こそオーディション受かってみせる」

「そのいきだよ!」


りんは歌手ならなることを夢見て、歌の練習を重ねてオーディションを受けるが結果は惨敗だった。

もえはそんなりんをずっと応援していた。



この日りんはなけなしのお金で借りたスタジオで歌の練習と録音を行っていた。


「んー、なんか違うんだよなー」

「私は結構いいと思うけど」


もえは手伝いとして来ていた。


「いやダメ、動画として投稿するんだから完璧の一回を取らないと」

「でももうあんまりスタジオの時間残ってないよ」

「後一回だけやる」


りんは、昨今流行りの動画投稿サイトに歌を投稿する歌い手として活動していた。歌い手からメジャーデビューする人もいる時代、りんも光(ヒカリ)名義で夢を追っていた。



「はぁー今日も納得いくの撮れなかった」

「しょうがないよ、また次頑張ろ」


2人は空が暗い中帰路に着いた。

りんは黒マスクを下げた状態で喋り始める。


「もえもごめんね、付き合わせちゃって」

「全然いいよって、高校の時から応援するってずっと言ってるじゃん!」

「ありがとーもえー」


そう言ってもえに抱きつくりん


「そういえば、大炎上した、りんの推しは結局どうなったの?」

「推しじゃないって……憧れではあったけど、HINATAなら結局活動休止だって、事務所の契約も解除だから帰ってくる可能性は低いかな」

「ふーん、まぁ自業自得でしょ、有名になったからって調子乗っちゃったんだから」

「そうだね」


りんの顔が少し曇っていた。


「ほら!元気出して、また明日も練習するんでしょ!私は仕事だから行けないけど、がんばってね」

「うん、ありがとうね」


そうして2人は別れた


「コンビニ寄らなきゃ」


りんは、下げていたマスクを上げて、コンビニでカップ麺を買ってコンビニをでたタイミングでワイヤレスイヤホンをだし音楽をかける。


「こっち行けば近道ってもえが言ってたっけ」


りんはもえに教えてもらった、裏道を通って家に向かう。


「え?」


裏道には酔っぱらいが座り込んでいた。まだ中身の残っている酒が手元にあったので酔っぱらいとは一目で分かる。

だが驚いたのはそこじゃない、酔っぱらいなんてそれなりにいるのだ、問題は顔が知っている顔だったのだ。何度もテレビやライブで見た顔そして最近は全く別の理由で顔をよく見る人物だ。

りんは迷った。ここで無視するのが正解だろうと頭では分かっていながら、話しかけたい欲が抑えられない。




──長い葛藤のすえに、出した結論は見なかったことにする、無視だ彼が炎上前ならサインくらいもらいに行ったかもしれないだが今の彼はクズで最低な男なのだ


あの酔っ払いは私の憧れの人じゃないんだ!


そう言い聞かせ、彼の前を通り過ぎる。





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