この星の片隅で・・・

五木史人

永遠の友(笑)


僕は、宇宙船から碧い星を見下ろしていた。

「今度はあの星で生きてみよう」

「じゃあ俺も、お前1人じゃ不安だし」

と隣で友が言った。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



僕は敗走した。そりゃそうだろう?

相手はクラス中だよ。クラス中が敵なんだよ。


「俺の友達だと言うのなら、戦えよ!認めねぇよ!お前みたいな弱い奴」

と言う彼は、幼稚園の頃の友だ。


旅芸人の子どもらしく台詞がちょっと熱いのがあれだ。


幼稚園の時、彼と一緒に過ごしたのは3か月くらいだった。

親が旅芸人の彼は、転校を繰り返していた為だ。


幼稚園の頃の彼は、大人しいけど凛々しい子どもだった。

彼が再び同じクラスになったのは、小学校も終わりに向かう小6の事だ。


僕は始めての友に言われて、昼休みに僕を侮辱する奴らに、殴りかかった。

無駄な戦いだとは解っていたんだ。

だってクラス中が敵なんだもん。

児童も教師も味方なんていやしない。


僕は校舎を飛び出して、校外へ逃げた。

さすがに誰も追ってこなかった。


唯一僕を追いかけてきたのは、彼だった。

僕は川辺に座り込んだ。


「どうしよう、クラスの奴らをさらに怒らせてしまった。もう帰るなんて出来ない」


彼は僕の隣に座り、

「お前、弱いな。幼稚園の頃はお前の方が強かったのに」

「そうだった?」

「あの頃、お前だけ俺の味方になってくれただろ」

「ん?覚えてないけど」

「(笑)だから、お前を永遠の友だと決めたんだ」


「そんなことより、明日からどうしよう。もう学校には行けないよ」

「お前自身で落とし前をつけたら、後は俺に任せろ。悪いようにはしない」


僕はクラスの奴一人ひとりに会って、落とし前をつけた。


「すっきりした?」

「すっきりはしたけども、どうするの?」

「俺と一緒に旅に出よう」

「旅芸人の?」

「ああ、後は俺の親がなんとかしてくれる。親は軽すぎるけど信頼は出来る」


さすがの急展開に、僕は言葉を失った。


「昔、俺と別れる時、お前『僕も一緒に行きたい』って言ったよな。だから」

「覚えていたんだ」

「忘れないよ。お前を永遠の友と決めてたし。

一緒に風みたいに、世界中を回ろうぜ!」


なんて熱い台詞だ。そして暑苦しい。

芸風大丈夫か?

僕は心の奥で心配した。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「なあ、お前1人じゃ不安だっだろ」

宇宙船内で僕の友が言った。

「まあ楽しかったよ、後半の方は」



完 ( •⌄• )◞


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