第7話 拒否
パーティーを組むことになった二人の女性冒険者たちと別れた後、俺は一人で街を歩きながら宿を探した。
しかし、ここで問題が発生する。泊まれる宿が見つからない。
「あいにく、空いている部屋はございません」
「あ、そうですか。分かりました」
これで、5軒続けて断られることになった。こんなに空いていないものなのかな。王都だから、外からやって来る宿泊客も多いということなのか。
【またか】
【運が悪い】
【祭りでもあるのか?】
【観光客が押し寄せてるとか】
【そんな雰囲気はなさそうだけど】
【だとしても5軒連続はありえないでしょ】
周囲を見回してみるが、人通りは普通だと思う。特別なイベントが行われるから、各地から人々が集まってきいる、なんてことでもないようだ。
偶然、満席の宿屋を連続で引いてしまっただけなのか。それとも。
「とりあえず、もう少し流行ってなさそうな宿屋を探してみるか」
コメントに反応して視聴者に語りかけながら、街の中を歩く。あまり焦っていないのは、別に宿がなくても野宿で大丈夫だったから。
街の外にある草原にテントを立てれば、拠点も確保できる。それで十分だった。
【早くしないと日が暮れるぞ】
【彼女たちから頼まれた買い出しもしないと】
「そうだ。先に、そっちの用事を処理しておこうか」
泊まれる宿を見つけるまでに、まだ少しばかり時間がかかりそうだった。なので、先にマリーナたちからお願いされた用事から終わらせることにした。
そう思って、次は商店を巡った。それなのに。
「貴方にお売り出来る商品は、ございません」
「そこに置いてある食料は? それも売れないというのか?」
「はい。ここに置いてある商品は、先約がございます。なので、お売りできません」
「……そうか。邪魔したね」
再び何件か続けて、商品を売れないと拒否された。明らかに、何かある。
【ここでも駄目なの?】
【運が悪い】
【そういう問題じゃないだろ】
【商人もグルか】
【何かヤバそう】
【あの少女たちが怪しい】
【なにか事件に巻き込まれた?】
どうやら俺はこの街で、宿泊することも商品を買うことも拒否されているようだ。何が原因だろうか。
やはり、あの二人の女性が関係しているのかな。理由は分からないが、彼女たちが何か関わっていると思う。何なのか、分からないけれど。
明日の朝、合流したときに彼女たちから話を聞かないと。
宿が見つからないということは、街の外で野宿かな。外で寝ても、俺は別に問題はない。この街に辿り着くまでに、何度も野宿を経験しているから大丈夫だった。
街の外に行くついでに、仕事をしよう。さっき冒険者の登録したギルドに行って、仕事を紹介してもらう。そこで、モンスターの討伐依頼などを受けられるはず。
そう思ったのだが。
「……申し訳ございませんが、依頼を紹介することは出来ません」
「なんだって?」
申し訳無さそうな表情で、そういった受付嬢。先程、俺が冒険者に登録するために対応してくれた彼女が拒否した。
【ここも駄目か】
【おそらく街全体がダメそう】
【いよいよヤバい展開だな】
【あの女達がヤバいのか】
【街の人達の対応がヤバそうだけど】
【理由が分からない】
【なんでテオも拒絶されているのか】
「何故だ?」
「理由は、お教えできません」
宿屋や商店だけでなく、冒険者ギルドまで拒否してきた。せっかく登録したのに、仕事を受けられないなんて。その理由も、彼女は教えてもらえない。
【ヤバいな】
【理由すら教えてもらえないなんて】
【一旦ここは引き下がったほうがよさそう】
【真実が知りたい】
【あの女冒険者たちが鍵か】
「……わかった」
「申し訳ございません」
頭を下げて謝る受付嬢。謝るくらいなら理由を教えてほしい。けれど、彼女は口を開かないだろう。
「あ」
「ッ!」
冒険者ギルドを出ようとした時、数少ない顔見知りと再会した。王都に来るまで、一緒に商隊を護衛した冒険者パーティーのメンバーたちだ。
【さっき誘ってきた件について聞こう!】
【パーティーに誘ってきてたよね?】
【まだ勧誘してるのかい?】
【彼らに話を聞こう】
彼らは俺の顔を見て、気まずそうな表情を浮かべた。別れ際にパーティーを組もうと誘ってきたのに、今は避けようとしている。彼らも、何か指示を受けているのか。
「ちょっと話しませんか。パーティーに誘ってくれた件ですけど」
「あぁ、いや、その。実は、もう新しいメンバーが決まって。君を加入させることは出来なくなった」
「そうなんですか」
彼らまで態度を一変させた。適当な理由で、パーティー加入の件について断ろうとしているのが分かる。
【マジか】
【彼らも駄目ということになると本当に街全体まで影響してそう】
【どこ行っても駄目か】
【変な女に引っかかったな】
【女のパーティーにホイホイ了承してしまったのが運の尽き】
【まだ女冒険者のほうが悪いと決まったわけじゃない】
【何か理由があるはず】
【ここまで拒否するとなると街の権力者とか?】
【それだとますます理由が分からない】
【今日到着したばかりのテオが誰に敵視されるというのか】
【わからん】
「我々は急いでいるので。それじゃあ」
「あ、ちょっと」
そう言って、足早に去っていく彼ら。俺の身の回りに、一体何が起きているのか。真実を知るために、あの少女たちに話を聞かないと。
ただ、配信的に盛り上がっているのでありがたい。現状の謎について、コメントで議論している。そのおかげで、どんどん取得できるポイントが増えていた。まだまだ盛り上がりが加速して、コメントが次々と流れていく。
大量のポイントをゲットできるので、俺にとって今の状況は嬉しかった。
【未完】異世界配信者テオの生活 キョウキョウ @kyoukyou
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