第46話
「⋯⋯言ってくれてありがとうございます」
「雪を信じてる。頼むから、本当に二人には言わないで欲しい」
「当然ですよ」
「それと、お金。一生掛けて絶対に返す」
「お金?」
「その、あいつの」
「大丈夫です。問題ありません。払わなくても、大丈夫なんですから」
その言葉に俺は意味が分からなかった。
◆
拓海の叔父を数人の男が囲む。
「な、なんだお前ら!」
男達は戦闘のプロであり、叔父を誘拐する。
睡眠薬で眠されて、とある場所に移動する。
叔父が起き、周囲を確認するとメイド服を着た女性が数人居た。
それに対して叔父が叫ぶ。
「これは誘拐だぞ! 分かってんのか!」
だが、それに反応する人は居なかった。
コツコツ、そんな足音を響かせて冷血な顔をした麻美が入って来た。
「お、お前。なんの真似だ!」
「一つご質問よろしいですか?」
「出せよ! 警察呼べ! お前らこんな事⋯⋯ぐへ」
「ご質問、よろしいですか?」
表情一つ変えずに麻美は淡々と質問する。
「拓海様のお母様について、貴方は何をしましたか? 言わないと、分かりますよね」
足に力を込める麻美。
血相を変えて叔父は言う。
拓海の母親に何をしたのかと。その内容を。女性としての尊厳、人としての人権、それらを奪われた女性の話しだった。
「反吐が出ますね。良くそれで警察に捕まらないモノです。無能ですかね」
「違うよ」
「はい?」
「子供を脅しの材料に使ったんだよ! あいつは子供の話を出すと、簡単に言う事を聞くからな! だから尻尾が掴まれないんだよ!」
「⋯⋯」
「あいつは良い財布に成ったんだ! なのに逃げるから⋯⋯もう良いだろ! 出せよ!」
「お金の件ですが」
「あぁん?」
「貴方のようなゲスでも、売れる部位はあるんですよね〜不思議です」
「な、何を言って。そ、そんな事したら!」
「貴方に身内は居ますか? 貴方の両親は既に居ない。拓海様の血の繋がった父も貴方の所には来ない。日頃の行いで友も居ない。天涯孤独の貴方に、何が出来ますか?」
「こ、ここを出たら」
「無駄ですよ。まぁ、精々最後の時は今までの行いを反省するのですね。それが、お嬢様の伝号です」
「な、や、止めろ!」
◆
学校に行くと、雪の所に、前に話し掛けて来た男が話しかける。
雪は普通に嫌そうな顔をして、「なんですか」と早口で冷たく言い放つ。
少しは愛想良くした方が良いと思う。
凛桜レベルまでして欲しいとは思わないけどね。
「ちょっと良いかな?」
「ここじゃダメなんですか?」
「うん。あんまり聞かれたくない話だから」
「なら、お断りします」
「そこを何とか!」
「無理です。私はたっくんと教室に行くので」
雪が俺の腕を掴んで引っ張って来る。
他の人の対応をしていた凛桜が横目でこっちを見て来ていた。
しかし、そんな俺に向かって無理矢理引き剥がして来る人が居る。
「⋯⋯ッ!」
驚く雪。
「ッ!」
同じ様に短く驚く凛桜。
「わお」
そんな言葉を言う愛桜。
「拓海君。会いたかった!」
そう、俺に抱き着いて雪から引き剥がしたのは誰か分からない女の子だった。
胸の膨らみが当たるが、特に何とも思わない。
ここら辺の感情の起伏は雪に対してしか思わない。
なので、冷静に対応する。
ここまで冷静に居られるのは、一種の殺意だと思われる雪の視線のお陰かもしれん。
肩を掴んで押して、離す。
ツインテールで顔をニマーっとしている。
顔をりんごみたいに真っ赤にしている。
「お久だよ。拓海君!」
「いや、君は誰ですか?」
「えー忘れたのー? 美香ちゃんショック!」
声が高い子だな。耳が痛くなる。
「小学校からの幼馴染の顔を忘れるなんて、酷すぎるよ」
は?
俺の故郷とここはかなり離れている。
だから、小学校からの幼馴染ってのが信じられなかった。
て、不味い。ずっと肩を掴んでいた。
左腕を後ろに引っ張られ、雪が抱き着く。
雪の目が⋯⋯まじで怖かった。
「あれぇ。君は何かな? 感動の再会を邪魔しないでよ」
「たっくんは知らないようですので、変にベタベタしないで下さい。勘違いされたら困ります」
「は? 君は拓海君のなんなの? たっくんたっくんって、キモイんだけど」
「⋯⋯ッ!」
「落ち着いて雪。もうすぐホームルームだ。行こ」
「⋯⋯はい」
俺達は教室へと向かう。
後ろに振り返る事は無かったけど、何故か粘り着く様な視線を感じた。
強く握られる腕。
雪が少し、震えていた。
そして、この出会いが俺達の関係を危うくする始まりだった。
だが、それはまた別のお話。
とても可愛いです。命捧げますので付き合ってください。と言えと言われたので言ったら人生がぶっ壊れたんですが?〜平凡が才色兼備のクール系美少女と付き合ったら人生逆転?〜 ネリムZ @NerimuZ
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