16.聖騎士専用スキルの力
兄ルードによる“修行”の結果、ルークは使い勝手のよいスキルを2つ手に入れることができた。
<爆裂剣>は威力は大きい割に魔力の消費はそれほど大きくないのでメインウェポンとして使える。
さらに<神聖強化>はステータスを底上げできる。ダメージを受けないとステータスが上がらないので最初はわざとダメージを受けなければいけないという、ルークの弱点を補ってくれる。
「スキルがどれくらい強いか試してみよう……」
ルークは一度ギルドに戻って換金を済ませ、ポーションを購入してから再び火竜山へと戻ってきた。
意気揚々と山を登って行く。
そして、さっそく目当てのリザードマンを見つける。
「<神聖強化>!」
ルークは早速聖騎士のスキルで自身のステータスを上げる。
まったくダメージを受けておらず<闘争本能>によるステータスアップがない状態だが、それでも力がみなぎってくるのを感じた。
「はぁぁぁぁッ!!」
気合とともに、リザードマンに斬りかかる。
「グァア!!」
リザードマンが悲鳴を上げるが、構わずさらに一閃。それでリザードマンは絶命した。
「やっぱりすごい……な」
ルークは<神聖強化>の威力を再確認する。
と、仲間の血をかぎつけたのか、向こうから3体のリザードマンがルークの方に近づいてきた。
「……防御力はどれくらい上がってるんだろ」
ルークは、それを試すべく、剣をさやにしまって、両手を広げた。
「さぁ、こい!」
その“挑発”が通じたかのか、リザードマンは早速ルークにファイヤーボールを放ってくる。
ルークはその攻撃を胸で受け止める。
「いたッ――――くない……」
本来リザードマンの攻撃が直撃すれば、それなりの痛みがあるはず。
だが、ルークはなんの痛みも感じなかった。
「……これが<神聖強化>の防御力か」
ルークはその威力をかみしめつつ、近づいてきたリザードマンを<爆裂剣>でを瞬殺するのだった。
「こんなに防御力が高いんだったら……もしかして」
ルークの頭に、ふとあるアイデアがよぎる。
それを試すべく、ルークはあたりの探索を始めた。
†
山奥に入ること一時間ほど。
ルークはようやく目当てのモンスターを見つけた。
――<フレイムドラゴン>。
この山にいるモンスターの中では最強クラスのモンスターだ。
前に対峙した時は、ルークが<ドラゴンブレス>を覚えたことで辛くも勝利した形だった。
だから<神聖強化>という聖騎士の力を手に入れた今ならどうか。
ルークはそれを確かめたかった。
「もしかしたら……瞬殺できるかも」
ルークの中にそんな考えがあった。
「グルァアア!!!」
フレイムドラゴンは咆哮して、ルークにとびかかってくる。
それに対して、ルークは避けようとはせずに敵がやってくるのを待った。
そして、フレイムドラゴンのかぎづめがルークに襲い掛かろうとしたその瞬間。
右手を前に突き出して、攻撃を放つ。
「<ドラゴンブレス>!!」
ドラゴンから手に入れたルークの必殺技。
それを超近距離で放つ。
勢いよく飛び出た火炎が、広がっていく前にドラゴンの身体へ直撃する。
「グルァアアア!!!!!!!!!!!」
業火に焼かれるフレイムドラゴン。
ルークの放った炎は、固いドラゴンのうろこに跳ね返されて、一部自分自身へも降りかかる。
だがそれを<神聖強化>がほとんど防いでくれる。
――本来<ドラゴンブレス>は遠距離・広範囲攻撃である。
至近距離で使った方がダメージを与える効率は良いのだが、そうすると自分にもダメージが及んでしまう。今みたいに相手に当たって跳ね返ってきたものが自分に降りかかってくるからだ。
だが、<神聖強化>によりそれらを大部分跳ね返すことができる。
一方、膨大な魔力を至近距離で受けたフレイムドラゴンはそのまま絶命する。
「……ドラゴンを一発で倒せちゃった」
その強さにルークはさすがに驚く。
魔法攻撃は近距離で使った方が威力が高まる。
しかし本来、<ドラゴンブレス>を覚える<魔法使い>クラスは、近接戦闘が苦手だ。
それゆえ魔法を近距離で使うには、何か工夫がいる。
でも、ルークには、近接戦闘が得意な聖騎士の<神聖強化>を持っているので、近距離で魔法を使うことができる。
様々なスキルを獲得できるルークだからこその“掛け算”が可能なのだ。
「……でも」
倒れたドラゴンを見ながらルークはポツリと漏らす。
「ダメージを受けないから、面白くないな……」
ドM勇者は追放を悦(よろこ)ぶ。~ダメージを受けるほど強くなるマゾヒスティック勘違い無双~ アメカワ・リーチ@ラノベ作家 @tmnorwork
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