その日暮らしを、異世界で。

みんみん

始まりの時は突然に

その日は、街に雪が積もり、如何にも冬らしい天気だった。

道行く街の人々は皆、寒さをしのぐためか、首にマフラーを巻くなどして

寒さに耐えていた。

道行く人々をぼーっと窓から眺めていた…

そんな感じで数時間が経ち、徐々に睡魔が僕を襲ってきていたので、めんどくさくて昨夜から着たままだった寝巻のまま、僕はベットに横になり、寝てしまったーー


朝になり、目を開けるとそこは見たことがない森の中だった。

自分の着ていたはずの寝巻の服はどこにもなく、寝ていた自分のベッドもない。

代わりに、茶色く土で汚れた質素な服を身に着けていた。

靴も履いておらず、髪もぼさぼさしていた。

おまけに、自分とは思えないほど目線が低く感じ、自分の姿を確認してみることにした。

近くから水の音が聞こえる。音の方向へ進んでみると、沢があった。

水面を覗き込んだ。そこの水面に映ったのはいたのは、自分ではない、少年の顔だった。

髪の色は黒ではなく、赤茶色で、瞳も金色だった。年齢は恐らく10歳程度だろう。

この時、僕は確信した。

この世界は僕のいた世界ではないと。

何故、そう感じたのかはわからない。しかし何故か、自分の中では腑に落ちていた。

辺りを慌てて見回すが、今いるこの場所は、鬱蒼とした暗い森の中である事だけは、僕にもすぐに理解できた。

人の気配はもちろん、動物すらいないように思えた。

何故、僕はここにいるのだろうか…?

ここは何処なのかという不安が僕を襲う。僕は確かに自宅のベットの上で寝ていたはず。

考えれば考えるほど、僕の頭は混乱していく。鬱蒼とした暗い森の中で、僕はどうなってしまうのだろう、これから、どうすればよいのだろうと、ただただ怖かった。

その時、微かに遠くで鳥の鳴く声のようなものが聞こえた。

僕は何を考えずに鳴いている鳴き声の聞こえる方へ向かってみることにした。

鬱蒼とした森の中は暗く、勿論、道もないため、道なき道を行くように進んでいった。

歩きながら、僕は元の世界に戻れるのだろうか?といったことを考えていた。

これといって、未練もないけれど。

その時、足を滑らせて僕は転んでしまった。膝からは赤い血が出ていて、痛みもある。これは夢ではないのだと、あらためて実感させられた。

森の中をひたすら歩いていたが、いつしか鳴き声も聞こえなくなり、今度は空腹に襲われた。食べられるものはあるのだろうか…?

食べ物を探し回ったが、見つからず、僕は、とうとう倒れてしまった。

動きたくても、力が出ない。声も出せない。ここで死んでしまうのだろうか…?

天気も悪くなり、雨が降ってきた。雨水が倒れた僕の体の体温を奪っていく。

意識も朦朧としてきた。僕は、静かに目を閉じた。

目を閉じたその時、微かに人の声と、温かい感覚に包まれた気がしたーーー

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その日暮らしを、異世界で。 みんみん @minmin1121

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