冷蔵庫のレイコちゃん
ギヨラリョーコ
第1話
冷蔵庫のレイコさん(出会いと別れ)
「その、優香ちゃんがレイコちゃんと初めて会ったのはいつなの?」
レイコちゃんと会ったのは5月の5日です。覚えてます。
その日の給食にこどもの日のゼリーがついてた。
「初めて会った時のこと、詳しく教えてくれるかな」
家庭科室の掃除してました。5年2組が家庭科室の係で、その週は私の班でした。
みんながホウキとかぞうきん終わって、教室戻って、でも冷蔵庫を開けたくなって、ひとりでこっそり。
「開けて中を見たんだね。どうして中を見たくなったの?」
冷蔵庫が異世界に繋がってる本を読んだ、からです。
「イセカイ、異世界かあ、最近はそういうの流行ってるもんね」
あの、お母さんには、内緒にしてください。
「なんで?」
また変な本読んでるってゆわれるから。
「わかった。お母さんには言わないよ。それで、冷蔵庫開けたら、レイコちゃんがいたんだね」
えっと、最初は調理実習用の小さいやつを全部開けて、でも何にもなくて。最後に、奥にある1番大きいやつを開けたら、そこに。
「レイコちゃんを見つけたこと、どうして誰にも言わなかったの?」
冷蔵庫、なんで開けたのってゆわれるから。先生とかに。本読んでってゆってお母さんにバレたくなかったから。
「そっか。レイコちゃん見てびっくりしなかった?」
びっくりしました。でも異世界の人だ!って思ったから。
「レイコちゃんがしゃべったり動いたりしなかったの、変だと思った?」
変だけど異世界の人だからしょうがないと思った。
異世界の人だからこっちの世界のもの沢山見たいだろうなと思って、ペンとかキラキラのシールとかあげて。
「ああ、レイコちゃんのポケットに入ってたやつ、優香ちゃんが入れたんだね」
うん。毎日昼休みにおしゃべりしてたんです。その日あったこととか。調理実習がないから、みんな奥の冷蔵庫の方までこないし。
放課後、塾ばっかりで、友達いないから、レイコちゃんが色々聞いてくれて嬉しかった。
「やっぱり冷蔵庫にいるからレイコちゃんなの?」
はい。
「それで、レイコちゃんのことどうしてみんなに話すことにしたの?」
みんなには教えたくなかったです。保健室の先生にこっそり。レイコちゃんが病気になったから。先生は嘘つき。
「なんで?」
レイコちゃんのこと先生とか、お姉さんとかにゆったから。いつも、保健室で言ったことは先生との内緒だから、なんでも話していいよってゆってたのに。
「レイコちゃんは本当はあそこから出してあげなきゃいけなかったんだ。だからしょうがないんだよ」
レイコちゃんのため?
「そう。レイコちゃんをあそこから出してあげるには、先生ひとりだと大変だったから、お姉さんたちがお手伝いしたの」
嘘つき。ひとりでできるよ。
「どうしたの?」
ううん、レイコちゃん助かりますか。ほっぺが変な色で、ぱんぱんになって、痛そうだった。おたふく風みたい。私、看病してあげようとしたけどだめだった。
「お母さんのところには帰れると思うよ」
そんなのどうでもいいよ、レイコちゃんをもとに戻して。また会わせて。レイコちゃんとお別れなんて嫌。
「ごめんね、ちょっと難しいかもしれない。でもレイコちゃんは優香ちゃんに優しくしてもらえて嬉しかったと思うよ」
「志倉優香は全部分かってたんじゃないですか」
「全部って?」
「レイコちゃん、金居凛が異世界人じゃないこと。死んでること」
「わかってるならあんな風に振る舞うメリットないでしょう、聡明な子よ」
「じゃあメリットがあるなら?」
「どういうこと?」
「金居凛の身体や持ち物からは志倉優香の指紋が多数検出された」
「でもそれは優香ちゃんが凛ちゃんを看病しようとしたり、ものをあげたりしたからでしょう」
「そうだ。理屈はついている。奇妙なくらい、綺麗に整合性が」
「何が言いたいの」
「聡明な子が、あれが死体じゃないってわからないものか?」
冷蔵庫のレイコちゃん ギヨラリョーコ @sengoku00dr
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