新人探索者の災難~封印迷宮都市シルメイズ物語~
荒木シオン
油断大敵、好事魔多し……迷宮内はご用心
やっと、やっとだ……。
ようやく、この時がやってきた!
ここは
その中心に巨大な大穴、地下深くへと続く大迷宮を
今日、僕はここで
幼い頃、絵本で読んだ彼らの姿に
未知の大迷宮へ危険を
その果てに得るモノは財宝や地位、名誉など多々あれど、なによりも
そうして探索者になることを目標に
先日、成人したのを
高鳴る胸を
都市の中心へと
金銀宝石で
それらを売り買いする多種多様な人種、種族の商人や探索者たち……。
ここが……これが、封印迷宮都市シルメイズ!
そんな
歩いていた大通りが
多くの探索者たちが挑み、散っていった
思わず息を
柵から
まるで世界の全てを
一息ついて周囲を
気持ちは分かる……。分かるけれど、彼らと一緒に立ち止まってはいられない。
だって僕はこの深淵へ、大迷宮へ挑む探索者となるため、ここにやって来たのだから!
そんな覚悟も新たに僕は大穴から離れ、近くにある
★ ★ ★
迷宮の探索自体は協会に加入せずとも可能だが、未加入の探索者はモグリ
というわけで僕も
手続きといってもいたって簡単なもので、名前と年齢、性別、人種や種族を書類に記入し、登録料として五十シルド支払うだけだ。
それらが終わると探索者認識票が二枚ついたチョーカーと探索者の手引きなる薄い本が渡される。
これで僕も今日から晴れて新人探索者となったわけだ! が……。
正直、ちょっと
そのことを登録手続きの説明時に担当してくれた女性職員に尋ねると、厳しくして
つまり、
さておき、予想より早く協会への加入が終わったので、このあとどう過ごすか各種情報掲示板を
「あの! ちょっといいですか、
突然、声をかけられた。
手にした杖と特徴的なとんがり帽子から察するに、魔術師か魔女の
「えっと……なにか?」
そのせいもあり
「あ、あの、えっと……私、クリスっていいます……。それで、あー、その……。もしよろしければ、私たちとパーティを組んでくれませんか?!」
自身の後方、
視線を向けると彼女、クリスの指し示す先には、ドワーフの少年と
その思わぬ申し出に
「わ、私たちもですね、さっき知り合って……。お兄さんも、し、新人っぽいので一緒にパーティが組めるといいかなぁーって? ほら! お兄さん、強そうですし! ね?」
断られると思ったのか慌てた様子で言葉を付け加えるクリス。
う~ん……確かに誰かとパーティは組もうと思ってはいた。
探索は
悩むこと数分。僕はクリスたちとパーティを組むことを
魔術師のクリスにドワーフのケムズ、そして兎人のノンナ、
★ ★ ★
翌日。僕たち四人は早速、迷宮へ挑んでみることにした……。
何事も経験である。まずは試しに探索してみようということになったのだ。
ただ、僕らは新人探索者とは名ばかりのいわば素人の集団でしかない……。
なので、最初は誰かベテランの探索者に引率してもらおうという話になったのだが……そう都合良く協力してくれる人が見つかるわけもなく……。
そんなわけで協会職員さんに「
「だからですね? その金額では
受付の青い髪のお姉さんにけんもほろろに断られ、追い出されてしまった……。
こういうときに探索資金を貸してくれる『投資家』も都市にはいるらしいのだが、彼らは名もなき新人パーティにまず出資してくれないだろう。
また、探索者協会では探索で
経験もない、人脈もない、資金もない、新人探索者にはとにかく色々足りない。
足りないけれど、迷宮へ挑むという勇気だけは確かにあった……。
だから、僕たち四人はこの日、当初の予定通り封印迷宮シルメイズへと足を
★ ★ ★
初めての迷宮はなんというか、想像と少し違うものだった。
幼い頃に呼んだ絵本や物語で憧れた未知の世界ではなく、なんというか
これなら
僕たちに資金がなかったのもあるが、あの受付嬢が言うようにこの程度の洞窟を怖がっているようでは、そもそも探索者なんて無理というものだ。
「な、なんだか拍子抜けですね……! これなら楽勝かもしれません!」
先ほどまで
「うむ……
そんな彼女にドワーフの少年、ケムズは
「えぇ、危険そうな音も聞こえませんの……」
うん……これだけ余裕があればきっと大丈夫だろう。
聞くところによれば、僕たちが探索している表層と呼ばれるここは、
そうして迷宮を進むこと数時間。
他にも人の顔を
ここまで僕らパーティの初めての迷宮探索は実に順調に進んでいた。
しかし、
そろそろ地上へ引き返そうかという時に事件は起こる。
――その壁とともにノンナの姿が消えた……。
まさに一瞬の出来事だった。僕たちはなにが起こったのか分からないながら、慌てて先ほどまで彼女の姿があった場所に
すると、そこには下へと続く深い
おそらくは罠、トラップの
ノンナが壁に手をついた瞬間に発動し、彼女を地の底へと
「ど、ど、どうしたら?! い、急いで、ノ、ノンナをた、助けないと!」
そう言って今にも縦穴へ飛び込もうとするクリスを僕とケムズで慌てて取り押さえる。
「ダメだ、クリス! 彼女はもう……」
「そうだ……。こん穴はかなり深い。これに落ちたとあっちゃ……」
僕らの言葉に
しかし、これが現実である。仮に僕らがこの縦穴へ入ったところで、ノンナが助かる可能性は限りなく低い……。
むしろ、新人探索者パーティ全滅のほうがあり得る未来だ……。
そう二人でクリスを説得し、僕らは無言で迷宮からの
封印迷宮シルメイズ……そこでは出会いも別れもいつだって
そのことを
……to be continued?
新人探索者の災難~封印迷宮都市シルメイズ物語~ 荒木シオン @SionSumire
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます