5「結構エロいな」
「……殺させない(激怒)」
「へえ、君がそんな風に怒るなんて意外だな」
「一応人間の心は持っているつもりなんでな。無駄に正義感があるんだ」
「でも分かっているだろう? 核を破壊したら犠牲が一人で済むんだ」
「そんなこと……どうでもいいんだよ! 殺させない!」
「なぜそこまでする? 従妹だから? それが正義だから? 君にしては可愛いことを言うじゃないか」
「可愛くて結構。そいつは俺の従妹だし、守るのが俺の正義だ(たぶん)」
「正義正義って……絶対一人の犠牲で済む方が正義だよ」
「……どうでもいいんだよ、そんなの。可愛いから守りたい。殺さない以外の方法を見つけようとしたい」
「現実主義者。――君がサイボーグになりたての時、僕は君に一度会ったことがあるんだが――たしかそう言ってなかったっけ? 命の優先順位がどうとか言っていた気がするんだけれど」
「はあ? なんでそんなの……でも、それは今関係ないだろ? 人間は成長するんだ。考えが変わることだってあるだろ」
「はあ……君のことは尊敬しているのですが、そういう無責任なところは嫌いですよ」
「もう……うるさい! 俺はもう……誰かを守らないと生きていけないんだ!(汗)」
「…………」
「でも……俺はこの世界に価値を見出していない。今だって、人間の感情を知るためだけに生きてる。だからこの世界ごとなくなっちまえばそれで終わりじゃないのか? ――って、そう思っちまうんだ。この世界に百パーセントなんてない。彼女を殺しても世界が救われなかったらどうするってんだ!」
「威勢がいいね。でも逆に世界が破滅したら、君も、僕も、君の従妹もみんな犠牲になるんだ。人を守るのが正義なんじゃなかったかい?」
「ああそうだな……よーしわかった。…俺は今から英雄(ヒーロー)になる!」
「…………は?」
「さっき言ったことは全部やめだ(全言撤回)。世界を破滅させない。でもこいつも助ける。全部守ってやる」
「馬鹿め。無理なことを言う。そんなの組織を潰す以外に方法は……」
「今言ったじゃねえか」
「は……き、君まさか(驚)」
「組織をぶっ潰せばいいんだろ?」
「無茶を言うな! 組織の強大さを知らないとは言わせない。お前も狙われているんだからな(無信)」
「ああ。え……お前もって、おまっ…能力者なのか?」
「そうだね、大した能力じゃないけど」
「そうか……ふんっ……いい。組織をぶっ潰す!」
「だから……」
「絶対やる!」
「この世界に百パーセントはないって自分で言ってたろ?」
「? 『さっき言ったことは全部やめだ』で、それも撤回したつもりだったんだが?」
「っ…そう……そう…だよね……」
「どうした?」
「なんでもありません!」
「(そうだ)なあ……お前たちも協力できないか?」
「「え?」」
二人は同時に言った。そう――金髪の男と、おびえながら見ていた、映画館にいた女だ。
「わ、私は……」
「だめだ」
「ふぇ?」
「こんな奴の良く分からん話に付き合ってる場合ではない。俺は死にたくないんだ。お前も行くな(真)」
「あ……はい…………」
うまく丸め込まれたな。当然か。
助けてくれた恩人だもんな。
「金髪のチャラ男よりは俺の方がましだと思うんだけどな……」
「誰がチャラ男だって!(怒)」
「お前が」
「…………」
急に沈黙の時間が流れた。誰も何もしゃべらない。
金髪の男は突然黙り、深刻そうな表情でこちらを睨みつける。そして――
「――お前の話に付き合ってる暇はないって言っただろうが!」
ああ、確かそんなこと言ってたっけな。もう忘れてた。
「先程は、『こんな奴の良く分からん話に付き合ってる場合ではない』でしたよ。正確には、ですけど(細)」
と、女が言った。言ってしまった。
まずい。さすがに怒るんじゃ…。
「きゃーはずかしい。間違えちゃったわっ(女々)」
「――え?(??????????)」
突如、ぼんっ! と音が鳴り、煙のようなものが男を包み込む。
だんだん煙が晴れていくと、そこにいたのは――金髪の、どことなくあの男に似た、見知らぬ女が立っていた。
「これが、この御方、
そう説明したのは、映画館で出会った女だ。
「能力? 女性に変身する能力……てこと?」
「いいえ、逆です(⇔)」
「逆?」
「はい、天喰様の能力は――イケメンに変身する能力です(告)」
「え。イケメンって……さっきのやつ?(疑)」
「そうです。あれの他にも種類があるそうです。ちなみに、先程のチャラ男――こほん。金髪のイケメンが一番のお気に入りらしいです」
「だから怒ってたのか(解)」
「おい!(呼)」
「性格まで変わるのか?」
「そうみたいです。口調とか変わります」
「へえ……意外と使えそうな能力だな(羨)」
「はい。戦闘向きではないので、クソ能力って言われてます(酷)」
「おい!(疑)」
「戦闘中に隠れて、姿を変えて登場とか出来そうじゃないか?」
「ほう……研究の必要がありますね」
「おい!(悲)」
「あれ……さっきからなんか可愛い女性の声が聞こえる気がするんだが、気のせいか?(本気)」
「確かに……聞こえます(すっとぼけ)」
「お~い(無視すんな)」
「「はっ、後ろだ!(名演技)」」
振り返る二人――――そこにはなんと! 美しい女性が立っていた!
「――って、天喰様じゃないですか」
「いや、じゃないですかじゃなくて! ずっとここから叫んでたから! ずっと無視されてたから!」
「あ、これがあいつの本当の姿。う~ん、結構エロいな……(舐見)」
「なっ……なんて目で私を見てるのよ! 神聖な体が穢れてしまうわ」
「いや冗談だって(嘘)」
「その目はどうしたの! キモイわ!(引)」
「いやそんな
「通報するぞ!(怒)」
「できるならやってみろよ。真っ先にお前が捕まるよ(当然)」
「っ…………」
……銃を持っている人がいたら、真っ先に警戒するだろう。
当然、銃刀法違反だ。
天喰は、普通にリボルバーを持っていた。隠そうともせずに。
俺も護身用に小型のピストルを隠し持っているが、真っ先に注目を浴びるのは、当然、天喰だ。
「あの、私も名乗っていいですか?」
「構わないわ」
女が天喰に許可を求め、天喰がそれを認可する。
「私の名前は――」
=ODT= <ディストピア> 星色輝吏っ💤 @yuumupt
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