4「最終手段」

 男の身分証明書に書かれていたのは――



『名前:ガヴィル・レフォード

 年齢:二四歳

 職業:政府エージェント潜入部隊隊長』



「政府エージェント潜入部隊隊長……?」


「そうだ。俺は世界を救出する組織の長だ。世界を救うために――」


 彼はそこで少し目を伏せた。そして再び俺の方に目を遣り、続けた。


「――あの者を殺すんだ」


「あの者……?」


 男は人差し指を俺の後ろにいる人物に向けた。


 それは――俺の従妹だった。つまり俺の親戚。


 彼女はすごく可愛い。


 俺にもそれはわかる。男の本能のようなものだろうか。


 ……! 気づくと、男はナイフを片手に握りしめている。


 ピストルやライフルも装備していて、準備万端だ。


「……あいつに何の関係がある?(怒)」


「? その子は核だ。すべての根源はそいつだ」


「普通のかわいい女の子じゃないか(怒怒)」


「普通? 通常通り出産したとしても、その子はハーフだ。人間と悪魔の」


 想像以上のワードが飛んできた。『悪魔』という日常生活で聞くはずのない言葉に、俺は混乱する。


「悪魔……だと?」


「そうか、君は知らなかったのか。ああ、もちろん比喩だ。この世に悪魔なんていない。だがあれは悪魔も同然だ」


「どういうことだ?」


「世界を救ったらまた話すよ。今は核を破壊することが先決だ」


「……この可愛い少女を殺すっていうのか?」


「可愛い? 君がそんなことを言うとは到底思ってもみなかったが……ああそうだ。彼女のせいで、世界は破滅に向かっている。組織は彼女と世界を繋げた。核として、ね」


「核を破壊する以外に方法は?」


「ない。もう手は尽くした。最終手段だということをわかってくれ」

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