3「金髪の男」

「お酒を注いであげなさい」


「はい(承)」


 親戚にお酒を注いでくれと、母に言われた。面倒くさい。だが、断るほうがより面倒くさい。


 しょうがない。


 俺はいやいやお酒を注ぐ。


 ……親にもサイボーグのことを話していないのだ。


 言ったら自分を責めるかもしれない、らしい。


 よくわからん。


 俺にもちゃんと感情がある。


 しかし悪いのは、俺をサイボーグにした研究者たちに決まっているだろう。


 責めるのはそいつらのはずだ。なぜ罪のない自分を責める?


「おはよう」


 戸を開けて入ってきたのは、見慣れない金髪で髪の長い男だった。


 この人にも酒を……


「酒はいらん。酔いたくないんだ」


 後ろからもう一人……


 !!!!!!!!!!


 酒が入った瓶を危うく落としそうになる。


 後ろから出てきた女は――アメリカの映画館で震えていた、あの女だったのだ。


 まさかこいつら組織の……!


「(察)あ、違うよ。僕たちは君――いや世界の味方だよ」


 俺が口を挟もうとした瞬間、彼はすかさず弁明した。


 ……凄い洞察力だ。俺の言いたいことを完全に読み切っている。


 後ろの女は……前と同じく震えていた。


「世界の味方だって? 何を言っている?(疑)」


「僕は倫理的に世界を救おうと考えている。この子も俺が救った」


 男は震える女をかばうように手を回した。


「震えてるじゃないか。前と同じだ。信用できない」


「そう、震えているんだ。あいつらから逃げてきた。だから震えているんだ」


「……その証拠は?」


「これだ」


 男が取り出したのは、この国の身分証明書。奴らでも偽造はできないような緻密なもの。


 そこに書かれていたのは――

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