時を刻む時計。ゼンマイを巻かれて動き、振り子の鼓動で時を刻む。そして、時間が来るとぼーんぼーんと鳴るのです。 昔はどこの家庭にもあった柱時計。その時計の視点から語られる家族の風景。 時計の優しい視点と、その時計を愛する家族の心が穏やかに語られる短篇です。
私はこの小説が大好きです。昔のものは長く使っていると魂が宿ると言われていたような。その理由がこの小説を読んでいるとわかる。この振り子時計は大正から昭和にかけ長い時間、その家を見ている。でも、とってもやさしい家に来て幸せだったと思える。どこか物悲しいけど、どこか幸せな気持ちにもなれる1話のみの話だけれど、たくさんの物語が詰め込まれているような不思議な小説です。背が高い旦那さんが無くなった時、振り子はボーンボーンと鳴りながら泣いていたのか?それとも「ありがとう」と言ったのかな....?