AIであり増幅装置。もうひとつの機能は……。

巡礼のように寺院を訪ねながら私生活の一部になっているAIアルデバランとの問答。近未来の設定も素晴らしいですが、驚くのはこのAIです。あれこれ指示をだすような関係ではなく、微苦笑を誘うような「問いかけ」が存在するのです。読んでいるほうは滑らかで疑問にも思わないかもしれませんが、問いかけ自体が人間の持つ「優しさ」だと気づくとき、物語は寺院から宇宙のはるか彼方まで広がりを見せます。ジェンダーや昨今の世界情勢、夫婦との深い関係までもが繋がっていく、巧妙な味わいの物語。
読むたびに色々な発見がありそうで、作者さまが世情を真摯に捉えている部分も高く評価したいです。おすすめです。