第2話 奈良の柱の幻影に ②

観光客は誰も居なくなっていた…


「なんだ!一体」


四角に囲まれた紅い柱の回廊の出口は見えずに


ただ、柱の中の胡弓を持った金の天女の楽の音に

穏やかで優しげなウグイスの声


「セミの声が聞こえない…ウグイスは…春の鳥」

「人達は何処だ!」


微かに低く響く音は

竜神たちが動く音か、彼らの声なのか?


僕は、出口を求め柱の中を歩く


まるで、エッシャーの騙し絵のように出口が見当たらない

呆然としてたちつくすが

廻りは変わらず、紅い柱の中の竜神や天女達が踊っていたのだ


柱のそばに小さな30センチ前後の水の流れが宙に浮かんで 小さなリボンのような流れる水に浮かぶ 華やかに様々な色合いのハスの花


「雅俊(まさと)ちゃん」


呼ぶ声に振り返れば あの頃のままの12才の綾菜ちゃんがいた…


鼻歌に軽くステップを踏みながら柱を廻る綾菜ちゃん…


すると…柱から現れる度に姿を変える


中学生の制服姿の15才前後の成長した少女の姿に…


遠い時代の古代、奈良の時代の乙女の姿に

天女の扮装に化粧


大人びた淡い色のスーツ姿の女性に…


彼女は現れる度に微笑みかける


今度は後ろから声がした

懐かしい幼い少女の声

「私の事を覚えてたのね…有難う」


「ねぇ、双子の妹の彩乃を覚えてるでしょ!あの子を宜しくね」

笑みを浮かべ彼女は言った


そして…


人のざわめき…セミの声に


観光客で賑わう…寺院

先程の白昼夢前の光景


「今のは」


「え!雅俊ちゃん!?」

声に驚き振り返る


「彩乃よ…覚えてる?」

涙を浮かべ二十二歳の彼女は微笑む


淡い色のスーツ

先程、みた綾菜ちゃんの大人の姿のそのままに…


僕は、彼女に微笑み

両手を広げる


天女のように…

彼女は腕のなかに

フンワリと飛んできた

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奈良の旅路に 赤い柱の楼閣 のの(まゆたん@病持ちで返信等おくれます @nono1

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