夢を追う君へ

【SS】夢を追う君へ ～ 母の未来予想図 ～

　娘の乗った飛行機が離陸する様子を、夫と並んで見送る。強い風に乱れる髪を抑えつつ、ついさっき見た光景を思い出してふふっと笑いが込み上げた。

　隣で感傷に浸っていた夫が驚いてこちらに顔を向ける。娘が手の届かない場所に行って淋しくなるというのに、という非難めいた視線のようね。コホンとひとつ咳ばらいをして口を開く。

「大丈夫。あの子はすぐに帰ってきますよ」

　あんなに素敵な男性（ひと）と想い合っているんですものと続ければ、夫はひどく動揺した様子で私と飛行機とに視線を迷わせた。あの子と先生の様子を見ていて、何も感じなかったのかしらと不思議に思う。

　夫にもあの子にも教えずにいたけれど、バラは本数ごとにも意味を持つ。

　１本の青い薔薇（ブルーローズ）の意味は『あなたしかいない』。

　そんな想いを抱えていながらも、あの子に気取（けど）らせることなく送り出してくれた先生を、私はちょっぴり応援している。

　微笑ましい甘酸っぱさを懐かしく思いながら、温かい気持ちで娘にエールを送る。いつか、二人が結ばれるその日が待ち遠しい。