愛するとは何を意味するのか。

 主人公は大商人の娘。

 貴族や王族も通う学園に在籍していて、成績優秀のため、同級生の第四王子の教育係に任命されます。

 第四王子は王子とは名ばかりの庶子であり、何の後ろ盾もありません。おまけに、大予言者から「愛する方とは永遠に結ばれないでしょう」と言われてしまったために、貴族たちも自分の娘を彼に近づけようとはしないのでした。

 商人の娘である主人公は、資金を貯めて自分の店を繁盛させるという夢のために教育係を引き受けます。



 この作品の世界は、よくあるネットファンタジー小説のように、主人公たちを甘やかしはしません。主人公は恵まれた環境にいるものの、やはり平民は平民であり、第四王子は社会からこれでもかというほど軽んじられています。突然授けられた特殊能力も、フェアリーゴッドマザーも存在しないのです。

 そのような苦難を乗り越えていく上で、主人公と第四王子の間には愛情とはまた違う絆が生まれていきます。

 注目すべきは、主人公の目的は教育係を引き受けたときからひとつも変わっていないところです。

 彼女はそのために自分のできる限りの努力をします。第四王子に対して特別な感情を抱いているものの、彼女の行動原理は決して「王子のため」ではありません。

 彼女は自分の意思を曲げず、その上で彼とともに生きることを選択するのです。

 皆さんもこの小説を最後まで読み、王子に下された予言の解釈を知ると、ああ、良かった、とつぶやくことでしょう。


(「主人公が我が道をゆく小説」4選/文=芦花公園)

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