田原総一朗と田原総一朗とその他無数の田原総一朗たち

破壊神1/4《シヴァ・クォーター》

大激論! スマッシュ田原ーズ!!

 目の前に無数の田原総一朗が居た。

 右を見れば田原がいた。左を見れば田原がいた。

 両の手には到底収まりきらない、無数の田原総一朗がそこには居た。

 そしてそれを見る自身もまた、田原総一朗だった。

 横では若い男が愉快そうににやにやと笑って告げる。

「さあ、始めようぜ。どの『田原総一朗』の人生を選ぶべきか──朝まで討論と行こうじゃないか!」

 どうしてこのようなことになったのか、田原総一朗は回顧する。


***


 いつものようにご飯と味噌汁に焼き魚という質素な晩御飯を済ませたあと、田原総一朗はふとスマートフォンを開いた。

 三月三十一日、年度末の日のことである。三寒四温もとうに過ぎ去ったと見えて、穏やかな空気に誘われた桜があちらこちらで花を咲かせている、そんな春の夜のことだった。

 確か今日が締切だったな、とスマートフォンで検索をかける。目当てのサイトはすぐに見つかった。Web小説投稿サイト「カクヨム」。開いたページには自身の名が無数に表示されていた。

 実在人物の二次創作を行いたい──カクヨムからそんな申し出があった時は何を言っているんだと耳を疑ったが、その挑戦的な企画を面白いと思い、快諾した。果たして本当に集まるものかと思いもしたが、こうして見る限り数は集まっているようである。

 田原はページをスクロールし、ざっと投稿された作品を眺める。「異世界」「転生」「女子高生」などの自分とはまるで縁のない文字がちらほらと見え、田原は苦笑した。「小さくまとまっても面白くない。どうせなら思い切り自由にやって欲しい」と言ったのは田原自身だが、その自由さには笑いしか出ない。

 正式な選考はまた後日行うことになっているため、いくつか概要を見ただけでページを閉じる。今時の若者──正確な年齢層などは知らないが、自分からしてみればおおよそ若者と言っていいだろうと田原は思った──が自分をモデルにどのような小説を書くのか、非常に興味深い気持ちでいっぱいだった。

 スマートフォンを閉じ、乱雑に積まれた新聞、本、雑誌などの資料がうず高くそびえる机へと向き直る。夜はまだ早い。田原の普段の就寝時間は一時頃である。まだまだ仕事の時間はたくさんあった。



***


 風呂上りに娘に電話した後、仕事を再開しようと机に座ったところで、誰かに呼ばれたような気がして田原は顔を上げた。

 耳をすますと、かすかだが部屋の外から田原を呼ぶ声がする。しかしおかしい。この家には自分しか住んでいないのだ。長年連れ添った妻とも死に別れて久しい。訪問者ならインターホンが鳴るはずだが、声はどうも玄関の外から聞こえてくるような感じではない。

 お迎えでも来たか。冗談半分にそんなことを思うが、しかし気になるものは気になる。席を立ち、部屋の扉を開いた。

 そこには、見知らぬ廊下が広がっていた。

 は、とつい口から間抜けな声が漏れた。ありえないことだ。ここは自宅、見知らぬ廊下などあるはずもない。

 しかし現にそこは見知らぬ場所であった。

 どういうことだ、とひとまず自室に戻ろうと振り返った田原は、先ほど自分が開けた扉が消失しているのを確認し、また唖然とする。

 これはどうしたことか、狐にでも抓まれたか。しかし故郷の彦根ならまだしも、ここは湾岸を見下ろすタワーマンションにある自室である。いや、もはや自室ではないのか?

 混乱する田原の耳に、再度自らを呼ぶ声が聞こえる。それも、先ほどよりもはっきりと。

 ともかく、この状況が何なのか探らねばなるまい。意を決して、田原は廊下を歩きだす。声の導くまま進むと、やがて開けた空間へと出た。

 そして眼前の光景を見て、田原は今までよりもさらに大きな驚愕に包まれた。

 そこは例えるなら、大学の講義室に似ていた。机が段々に並び、そこに無数の人間が座っている。それらと向かい合うように、最前に机が一つ。田原は講義室で言えば教授側から入ったようだ。

 そして向かい合う段々机に座っているのは──無数の田原自身だった。

 右を見れば田原がいた。左を見れば田原がいた。

 両の手には到底収まりきらない、無数の田原総一朗がそこには居た。

 そしてそれを見る自身もまた、田原総一朗だった。

 あまりの意味不明さに、開いた口が塞がらない。

 もしかしたら自分は今まさに死に瀕していて、これは脳が生み出した最後の幻覚ではないのか? 一瞬そんな考えが脳裏をよぎったが、だとしても流石に嫌すぎる。人生最後の光景が無数の自分自身とか、困るどころの話ではない。


「お、ようやく来たか」

 混乱する田原の背に声がかけられ、振り返るとそこには若い男が居た。精悍な顔立ちの、黒々した髪をした青年である。どこかで見たような顔だな、と田原は思った。よく知っているようでありながら、それでいて随分と久しぶりに見たような気もする。奇妙な感覚に困惑する田原に対し、青年は「ま、座れよ」と促した。

「君は誰だ。ここはどこだ。あいつらはなんだ。僕をどうするつもりだ?」

「おいおいそんなに矢継ぎ早に聞くなよ。ちゃんと答えてやるからさ。俺のことは……そうだな、『司会』とでも呼んでくれ」

 再度『司会』に促され、田原は講義室で言えば教授の座る席に着く。司会もその横の椅子に腰かけた。

 改めて前に目をやると、相も変わらず多数の田原たちが鎮座している。その光景に目が眩むようだ。

「これは……いわゆるドッキリというやつか? 僕のそっくりさんをたくさん集めて……」

「そんなんじゃないっていうのは自分がよく分かってるだろ? あれは紛れもなく自分自身だって」

 その通りだ。無数の田原は細部に違いこそあれど、確かにどれも田原総一朗だった。しかしそんなわけがない、田原総一朗は自分一人のはずだ。

「そうだな。分かりやすく説明すると、あれは並行世界のお前自身だ」

「並行世界……」

「どこかで聞いたことくらいあるだろ? 並行世界、パラレルワールド。ここではない、別の世界さ。今ここにいるのはお前自身から分岐した様々な並行世界の田原総一朗だ」

 なるほど、それなら全員が田原でありながらそれぞれ微妙に違うのも頷ける。しかし何故、別世界の田原がここに勢ぞろいしているのか。疑問を呈すると、司会は「あー」と唸った。

「それについては少しややこしい説明になるんだが……シュレディンガーの猫って知ってるか?」

 今度は知らない言葉であった。田原は頭を振る。

「量子力学で有名な思考実験でな……開けるまで観測不能な箱の中に猫を入れ、50パーセントの確率で即死の毒ガスが発生する装置のボタンを押す。さて、箱の中の猫は生きているのか死んでいるのか? 箱の中ではっていう考えだ」

「そんなことはあり得ないだろう。生きていながら死んでいるなどと」

「そう、ありえない。マクロの世界ではな。だがミクロな──量子の世界ではそういうことが起こりうる」

 そして魔術においては、マクロとミクロは照応するものだぜ、と司会は言う。

 魔術? 田原は胡乱な言葉に眉をしかめた。そんな田原をさておき、司会は続ける。

「さて、ここまでの話は前提として、問題はそれだ」

 と、指し示したのはスマートフォン。首を傾げる田原。

「正確にはスマートフォンそのものじゃなく、カクヨム上で開催されたお前の二次創作企画が問題だ。結構な作品数が集まったよな。それによってお前の色んな可能性が示されたわけだ。スマートフォンやPCという『箱』の中に、無数の『可能性』がな」

 まさか、と田原は呟く。それがシュレディンガーの猫と同じ状態になったと? その疑問に司会は首肯で応じた。

「今年で米寿……八十八になるというお前の年齢もこの状況にぴったりだった。八は末広がりの数だ。それが『可能性の広がり』を象徴し……結果としてお前を起点としたさまざまな『田原総一朗の可能性』が形を持った」

 年度の切り替わりという不安定な日が、最後の後押しだったなと司会は言う。

「つまり、この状況は魔術的な偶然の一致から引き起こされたわけだ。実在する高齢者の二次創作が大々的に行われるという、おおよそありえないような事態によって、な」

「そんなこと」

「ありえない、と言いたいか? だが現に起きている」

 確かにその通りだ。癪ではあるが、それは認めざるを得なかった。

「さて、それじゃ主役が状況を把握したところで始めよう」

 その言葉にまたしても田原は疑問の声を上げる。始める? 何を。

「言っただろ? ここに居るのはあくまで『可能性』だ。現実は一つしかない。箱を開けた時には、観測結果は一つに収束せねばならない。つまり、だ」

 司会は大きく腕を広げ、無数の田原を示した。

「お前は数多の可能性から一つ、『現実の田原総一朗』を選ばなくちゃならない──そういうことさ!」

 そして選ばれた田原総一朗の人生がそのままお前の人生になるというわけだ。司会は説明する。

「あくまで現実の田原総一朗はお前だからな。どの『現実』を選ぶかの決定権は、お前にある。そういうわけで、お前が決めるんだ。どの田原総一朗が一番いいのかをな」

「そ、そんなこと言われたところで」

「そんなに困んなって。悪い話じゃあないぜ。お前だって、やり直したい失敗の一つや二つあるだろう。あの時違った選択をしていたら、と思うことだってあったはずだ。今ならそれが叶う。滅多にない機会だぜ」

 確かに、と田原は心中頷いた。二次創作に当たってのインタビューで人生を回想した折、思えば転機は色々あったものだとしみじみ思わされた。今となってはやり直すことは出来ないはずだったが、もし機会があるとしたら。

 興味がないと言えば、嘘になる。

 思いを馳せる田原の顔を見て、司会は肩を叩いた。


「タイムリミットは夜明け──光が当たって、観測が為されるまでだ。さあ、始めようぜ。どの『田原総一朗』の人生を選ぶべきか──朝まで討論と行こうじゃないか!」



***


「それじゃあ自分から行かせてもらうか」

 最初に一人の田原が声を上げた。短髪で随分と恰幅の良い、大柄な田原で、今の自分とはずいぶん違う。こんな可能性もあったのか、と田原は驚いた。

「お前はどんな田原だ?」

司会の問いかけに、その田原は「自分は元親方の田原だ」と答えた。

「親方? 大相撲の?」

「そうだ。昔から相撲が好きだったろう?」

 確かにその通りだ。田原は幼少期から大の相撲好きで、非常に強かった。故郷では負け知らずだったほどだ。この田原はそれが高じて力士にまでなったという。

「現役時代は大関にまで上り詰めた。残念ながら横綱には至らなかったが、親方として部屋を新設し、後進の育成に励んだ。どうやら自分は育成の方が才能があったらしい。弟子からは横綱も複数出て、鼻が高い」

 悪くないな、と田原は思う。昔から好きだった相撲に人生を捧げ、その歴史に身を刻むというのはどれほど嬉しいことだろうか。今の自分には考えられないが、こんな人生だってあったのか、と驚く。

 それに後進の育成というのも面白かった。自分はフリーのジャーナリストとしての経験が長く、後輩や弟子の指導というものから縁遠くなって久しい。色んな人間に大きな影響を与えたという自負はあるものの、直接何人もの人間を育て、それが羽ばたいていくというのはまた違った喜びだろう。

 元関取の田原の紹介を受け、現実の田原は唸った。可能性とはこういうことか。確かに、今の自分ではもはや掴めないものも、今なら掴めるかもしれない。そう考えると悪くはない。

 次に口火を切ったのは、帽子とサングラスの田原だった。手には丸めた本のようなものを持っている。

「お前はどんな田原だ?」

「私は映画監督の田原だ」

 その返事に田原からほう、という声が漏れる。初めて入社した岩波映画製作所のことを想起した。

「『あらかじめ失われた恋人たちよ』、お前も撮っただろう」

「ああ、懐かしいな」

 映画監督の田原に問われ、田原は思い出す。それは田原がテレビディレクターだったころに撮影した初めての、そして唯一の監督作品だった。

「大変だったけど、楽しい経験だった。あいにく売れなかったが……」

「それが売れたんだよ、私の人生ではな。それから天才監督として、様々な映画を撮った。自慢じゃないが、今では黒澤明と並べて語られるほどだ」

「それは凄いな」

 あの黒澤と肩を並べる。世界的な、歴史に残る映画監督ということだ。初めて映画を撮った日のことを思いだす。若き日の自分が知れば、さぞや喜ぶだろう。

「映画はいいぞ。お前も撮ったことがあるなら分かるはずだ。いくつになっても、いい映画を作ろうという情熱は燃え上がるばかり。私はまだまだ、素晴らしい映画を作るぞ! さあ、私を選べ!」

 興奮した映画監督の田原が、手に持った脚本で机を叩く。その熱量に、田原自身も背が伸びる思いだった。

「どうどうどう。えー次は……」

「じゃあ、俺が」

 と手を上げたのは妙にツヤツヤした田原だ。

「キミは?」

「俺はAV男優の田原総一朗だ」

「AV男優????」

 あまりのことに大声をあげて聞き返す。日に焼けたその田原は、力強く頷いた。

「『日本の花嫁』、覚えているか?」

 忘れられるはずがない。全共闘に参加した若者たちの結婚式を取材した時のことだ。花嫁が集まった仲間たちとセックスするという趣向で、花嫁に求められて自分もセックスをし、その様子を撮影させた。なかなか強烈な体験で、今でも「日本初のAV男優はこの僕だ」と話のネタに上げるほどだ。

「あれが忘れられなくてな、紆余曲折して正式AV男優になった。今でも現役だ」

「それは……若いな……」

「この年になっても若い美人とたくさんセックス出来る。男の夢だろう?」

 ううむ、と田原は腕組みする。こんな可能性もあるのか。つくづく人生は分からない。

「下らんな。そんなことよりもっと高尚な文化活動に勤しむべきだ」

 一人の田原が野次を飛ばした。AV男優の田原が怒って返事を返す。

「なんだお前は! どんな田原だ!」

「私か? 私は小説家の田原だ」

 答えた男には、静かな貫禄があった。小説家! その言葉に思わず胸が躍る。かつて目指しながらも、挫折した夢がそこにはあった。

「そうだ。お前にとっても夢だったはずだ。私は諦めなかった。書き続けた結果、作家としての地位を確立した。かつてお前に挫折を経験させた石原慎太郎や大江健三郎にも引けをとらない大作家だ」

 その言葉に、心が揺らぐのを田原は感じる。若き青春の夢。甘く苦い記憶。それが実現した世界が、手の届くところにある。

「今も文字を書いているお前なら分かるはずだ。選ぶべきは何かを。今こそ取り返すときだ」

 小説家の田原の言葉は、魅力的だった。

 思わず考え出した田原を思いとどまらせようと、「待て待て、自分の話も聞け!」「俺もだ!」と他の田原たちが叫ぶ。

 画家の田原。政治家の田原。社長の田原。様々な田原が様々な人生を語った。色とりどりの現在がそこにあった。

「随分変わった格好だが……キミは?」

「俺は異世界転生した田原総一朗だ」

「異世界転生!?」

 ……本当に、いろいろな人生があった。



「これで……全員か?」

 どれくらい経ったろうか、総勢八十六名の田原の話を聞き、呟く。目の前にいる田原全員から話を聞き、議論を交わしたはずだ。

 しかし、司会は首を振る。

「いや、まだだ」

「そうか? 確かに全員聞いたと思ったが……」

「いや、あと一人残っている」

 それは誰だ、と聞こうとして、田原はふと何かに気が付いた。

 目の前にいる男、その顔に確かに見覚えがある。それは──。

「気付いたか」

 司会が言う。その瞳は、田原のそれと同じだった。

「田原が討論するときの『司会』が誰かなんて、決まってるだろう? ──そう、俺が八十七人目、最後の田原だよ」

 そこに居たのは、若き日の田原総一朗、その人の姿だった。

「馬鹿な……キミも僕と同じ年だろう?」

「そうだ。だが俺は不老でな。昔、インドに行っただろう? あそこで行者に才能を見出され、魔術を修めたのがこの俺だ」

 司会は、若い田原は言う。

「なあ、俺を選べよ。若いってのはいいことだ。それはお前が一番分かってるだろう? 意味もなく体が軋むことはない。どんだけ取材しても体力は尽きない。飯も酒も遠慮せず飲み放題だ。わざわざ運動して体に気を遣うことなんてない。今とは大違いだろう? 思い出せよ、あの青春を。それが今なら、手に入るんだぜ?」

 青年の田原の誘惑は、まるで誘惑のようだった。

 田原は部屋中の自分を見る。関取、映画監督、AV男優、小説家、画家、政治家、社長、異世界転生者、そして不老。様々な田原の可能性たち。

 それらを目の当たりにして、田原はそっと目を閉じてしばし考え。


「──いや、やっぱり僕はこの僕を選ぶよ」

 と。あらゆるもしもIFを、静かに辞退した。



「馬鹿な!」

 若い田原が叫ぶ。

「欲しくはないのか! 今とは違う今を! 若さを! 名声を! 諦めた夢も! 取り返しのつかない後悔も! 今この瞬間なら全てが思いのままだ!」

「確かにそうだろうね」

 田原は答える。

「でもね、僕は今の僕を気に入ってるんだ。そりゃ、思い返すことはあるさ。小説家を諦めなければとか、今でもテレビディレクターをやっていたらとか、昔不倫をしたのも、当時の妻に悪かったなぁと思う」

 でもね。それを全部ひっくるめて僕だ。

 田原はそういうと己の手を大きく天に掲げる。皺だらけの、老人の手。

「ここに刻まれたしわの、一つ一つが僕だ。どんな後悔があっても、それをなかったことにはしたくない」

 田原は語る。

「僕はジャーナリストとして、取材のときは相手の人生すべてに全身全霊で向き合うことにしている。間違いも後悔も、人生の全てにだ。それは僕自身の人生に対しても同じことだよ」

 その言葉を、そのうちに込められたジャーナリストとしての矜持を聞き、全ての田原が苦笑した。

「そりゃそうだ。俺たちだって自分の人生に誇りを持っているから、自分が一番だと言っていたわけだしな。現実の俺でもそれは変わらないか」

 あーあ、と司会の田原は大きく伸びをする。

「結局、いらん時間だったな。悪かった、お前を呼び立てて。さあ、自分の人生に帰りな」

 その言葉を聞いて田原総一朗はにっこりと笑い。


「何を言ってるんだ。まだ朝まで時間はあるだろう?」


「──え?」

 その言葉に、並行世界の田原たちが唖然とする。それに構わず、現実の田原は興奮した様子で告げた。

「今までいろんな人に取材してきたけど、自分の取材なんて初めてだ! もっと色々質問させてくれ! もっと話を聞かせてくれ! もっともっと、意見を交換しよう!」

 田原総一朗。御年八十七歳、あと二週間ほどで八十八歳。

 その「生涯現役」のジャーナリスト魂は──稀有な経験をして、これまでにないほど燃え上がっていた。


「さあ、話を続けよう! 誰一人として寝かせないぞ! 今日は朝まで、生田原だ!!!」

 無数の田原総一朗たちの鼓膜を、誰よりも熱い田原総一朗の声が震わせた。



(完)

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