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「勇者よ、異世界への来訪を歓迎します」
女神はそう言って、俺は目が覚めていた。いつの間にか、白いコントラストを背景に、とても現実的とは思えない空間にいた。
もしかしたら夢でも見てるのではないかと思っていたが、明らかに現実世界であった。五感がはっきりしすぎている。
まるで仮想現実のような感覚である。だが、夢にしては意識や五体満足の現実すぎる。
(ここはどこなんだ?そして君は誰?)
俺の前に、美しい少女がいたのだ。彼女は微笑みながら言った。
「ようこそいらっしゃいました。私の名前はアリスティア・フォンティーヌです。以後お見知りおきを」
「えっ……?」
目の前に立っているのはどう見ても日本人ではない美少女だった。それもただの外国人ではなく、テレビの中でしか見られないような完璧な容姿の持ち主だったのだ。髪の色と瞳の色は銀色だ。彼女の着ている純白で上品な服と相まってまるでアニメのキャラクターみたいな感じだと思った。
そのあまりにも綺麗すぎる顔を見て、思わず固まってしまう。そして言葉を失う。なぜなら目の前にいるこの女の子から圧倒的な神性を感じたからだ。しかもこの少女の美しさは並外れていて、その美貌だけでも圧倒される。
そして同時に、彼女からは不思議な魔力のようなものを感じていた。まるでファンタジー小説に出て来る女神様そのもののような雰囲気を持っているのだ。それこそ、彼女が本当の意味での『女神』ではないかと疑ってしまうくらいに…… 俺は戸惑いながら思った。こんな可愛くて美人さんがどうして自分のことを"勇者様""異世界への来訪を歓迎します"などと言って来たのか理解できない。それに、そもそもここって何処なのかわからないんだよね……。
(ねえ君、ここってもしかして日本じゃないよね?それに異世界とか言ってるけど何のこと?)
「はい、貴方は今日から私が住んでいる世界――アースガルズへとご招待いたしました」
アースガ―ルズだと……!? アースガルドっていう名前は北欧神話に登場する国の名前で、そこに住んでいた巨人族は人間族によって滅ぼされてしまい、その後は巨人の死体から生まれたとされる小人だけが生き残り繁栄したという国らしい。ちなみに巨人族の生き残りはアース神として崇められているようだ。つまりは巨人たちの神であるオーディンが住む世界ということらしい。
そんなところに何故自分は連れてこられたんだろうか?
(どういうことなんだ……)
「詳しい話は後ほどさせていただきますね。まずは私の世界に転生していただけないでしょうか?」
俺が困惑して黙り込むと目の前の銀髪の少女は俺に向かってそう尋ねてきた。そして続けて俺に話しかけてくる。
その口調はとても優しく丁寧で、こちらのことを気遣ってくれているということがよく伝わって来た。だからだろう……つい彼女に言われるままに了承してしまった。それはもう反射的にである。俺は目の前の女性に対して何か安心できるようなものを感じていたからだ。だから自然とうっかり了承してしまった。それが間違いだったとも知らずに…… すると銀髪の女神(らしき女性)はその返事を聞くと嬉しそうな顔をすると同時に魔法を使ったみたいだ。次の瞬間、俺の周りの風景が真っ白になるとともに体が宙に浮かび始めたのだ!そしてそのまま俺は吸い込まれるように彼女の方に引き寄せられたのだ。そして気が付けば…………こうして俺――桐島和也はこの日から異世界へと転生することとなったのだ。そして、後に自分が巻き込まれた事件の数々について思い知ることとなっていくのだが、この時点では全く予想すらしていなかったのだ。……これから先の人生が大きく変化するとは……この時の俺はまだ全く思ってもいなかったのだ…… (うわあああぁぁぁ!!!?)
俺は謎の光に引き寄せられるようにして引き込まれた。まるでブラックホールに飛び込んでいくかのような錯覚を覚えながら……
***
そして数秒経った頃だった。俺の周囲は再び眩しいほどの白い光が覆っていたのである。それと同時に浮遊感も消えていた。一体ここはどこなんだろうと不安になりながら辺りを見回すとそこには広大な森が広がっていたのだ。しかも周りに生えている木々の高さは明らかに異常であった。
(これは木なのか?いや、でも普通の植物とは違うよな……だって見たことのない形だし)
周囲の景色を見ながら俺は呆然とした。目の前にある大木たちは、地球の常識を超えた異常なまでの成長を遂げておりとても現実離れした姿をしていた。例えば、高さ数十メートルの樹木から枝分かれしたかのように、その枝先には何十倍もの大きさをした実のようなものが生っているのが見えるからだ。
まるでファンタジー小説に出てくるような巨大樹の森だと思ったその時、ふいに頭の中に声が響いた。そして俺はこの世界で生きるためにこの世界についての情報を詳しく知ることになるのである。
(おめでとうございます!元気な男の子ですよ!!)
(よく頑張ったな、これでこの子は俺たちの家族だぜ!名前はなんていうんだろうな~)
それは生まれて初めて聞く両親の声であった。とても懐かしい感じのする声ですごく落ち着く感じがした。だが、その直後のことだった――……俺の視界は完全にブラックアウトしたのである。
(えっ……何が起こったんだ……まさかこの世界って、そういうところなの!?マジかよ……でもなんかやけに落ち着かなきゃいけないような予感がしてきたぞ……とりあえず状況を整理しないと……まずはステータス確認からだろ)
目の前には相変わらず巨大な木々が立ち並んでいる光景が見えた。この空間が何処なのかはわからないがどう見ても地球上の生物がいるとは思えない場所であることは確かだった。そして何故か俺はこの場所にいるだけで妙に落ち着いた気分になっていたのだ。それはなぜか……自分でもよく分からない。とにかくこの空間にいることが心地いい感じがしたのだ。まるで心が休まる場所みたいな感覚だったのだ。……それにしても、この体は何なんだろうと思った俺は早速調べてみることにした。その結果、とんでもないことがわかった。まず、俺は転生してから数日しか経っていないことが分かったのだ。生まれたばかりなのに自分の意志で行動ができる理由はおそらく女神の力で成長が促進されているからだと思う。
しかし、まだ未熟なので完全に制御できてはいないらしく、意識が途切れそうになった時は決まって赤ん坊のように泣くことで意思を伝えたのだ。すると両親はそれを理解してくれて俺を抱っこしてくれる。俺はそれが嬉しくてまた泣いた。……それにしても驚いた。まず、ステータスを確認した時に表示された文字化けの文字の意味を理解できたからである。
【名】『キリュウ・リク』
【種族】人間族 【性別】男性/0歳(幼児期生後5か月~6カ月)
レベル1(0/1000000)
体力 10億/10億/10億 魔力 1兆2000万/11京8000兆 攻撃力 99999兆 物理耐性力 9999兆9999億9999万9895 魔力量 100000/12京 精神力 8500億 素早さ 7600億 状態 普通 【能力値】『神能』
筋力 900億 魔力 5100万 体力 4800 知恵 700万 魅力 6000 幸運 5000
(何なんだ、これは……?)
これが自分という存在の情報なのだと理解するまで時間がかかった。というのも俺自身が自分の能力を全く把握していない上に、ステータスの数字の桁がおかしかったからだろう。……正直に言って俺はこの時パニックに陥っていた。それもそうだ。自分のステータスを見た途端に、こんなありえない数値が並んでいれば誰でも戸惑うはずだ。
そもそも俺のレベルと魔力があまりにも規格外すぎる。俺自身でさえ未だに実感が湧いていないのだ。
「うー、あうぅ」
(あれ?言葉って喋れるんだ?)……試しに俺は喋ってみた。
しかし、口から出てくるのは自分の耳に聞こえる声であって、まるで赤子の鳴き声にしか聞こえないのである。それなら、どうして会話は成立しているのか不思議でならなかった。そのことに少し疑問を抱いた時、突然頭の中に直接語り掛けられるような感じで女性の声のような物が頭に響く。
(はい。今あなたがおっしゃった言葉はすべて私の脳内に伝わりました。あなたの脳が私の言葉を認識しています。つまり私は、この世界の『管理者』であり『管理人』でもあるため、直接相手の考えていることを理解することが可能なのです。だから、私が念じることによりあなたの脳内に言葉を届けることが可能なのです。……まあ、簡単に言うとこんな感じですね)(へぇ~そうなんですか。それで、貴方は一体どっちの立場の人なんですか?)
(どちら側?と申しますと……)
(つまり神様とか女神とかの側の人なのかって話だよ)
この世界を管理しているということは、神様みたいなものなのか?と思ったのだ。そう考えた方が納得できると思ったから聞いてみたのだ。
(はい、その通りです。貴方の言っていることは正しいですよ。正確には『女神アリスティア・フォンティーヌ』と『女神リディア』と『大女神アリア』の3人で世界を運営しています)
やっぱりそうなのか……と、俺は理解した。……それにしても、すごい数の神様の名前がポンポンと出てきたなぁ……。しかもそのすべてが女性の神様だったし……いやいや、そもそも異世界に召喚されたって何の話なんだ…… 俺がまだ困惑して黙り込むと目の前の美女はこう告げてきた。
(あらら、混乱してしまってるみたいですね。とりあえず私の自己紹介をしておきましょうか。初めまして桐島さん。私の名前は『アリエスティア・ファムニルト・ルミナリア・アースガルズ(長いので略してアティスと呼んで下さいね)と言います。年齢は215歳で見た目年齢が20代後半ぐらいに見えると思います。実は、私が地球にいた頃からあなたが死ぬ直前に私が担当していたのです。そして私の役目は貴方の転生後の人生のサポートをするためにここにいるということなのです。つまりこれから貴方が生きて行けるようお手伝いさせてもらうのが私の役目になります。ちなみにこの世界には現在、『勇者』と呼ばれる存在が二人と、あと一人存在していました。……それが何者かの手によって殺されてしまったせいで再びバランスが乱れてしまい大変なことになっているんですよえっ!?どういうこと!?この世界には『勇者』『賢者』そして『魔王』が存在するのです。そして本来なら三人の候補者の中で、もっとも素質が高い者がそれぞれ選ばれるのですが、その前に一人の人物が殺されてしまい候補がいなくなってしまったことで、この世界では現在新たな人材が生まれるまでのバランス調整が行われています。そのために異世界の人間から適性の高い人物を選出しこちらの世界に転生させることにしているんです)
(……もしかして……もしかしなくても、俺は選ばれちゃった系?)
(もしかしなくて、そうです!この世界は今、大変危険な状態になっています。このタイミングで桐島さんが死んでしまいこの異世界に転移するはずだった『主人公』がいなくなったことが大きな原因となっているのかもしれません)
俺は衝撃を受けた。この目の前の女性……いや女神様はこの俺にこの先何かとんでもない事態が待ち受けていることを予見していたのだ。
でもなんでだ……?なんの理由もなくそんな重大な役割の奴がこの世から消え去るなんてありえないだろう。それに『主人公』だって別に悪いことしたわけじゃないだろ…… それにこの世界の危機って一体…… 俺はこの先の展開についていろいろ考えてみるが、全く思い当たる節がなかった。
「あっ……」俺は思い出した。自分があの日死んだ時の状況についてだ。確か、学校帰りに横断歩道で青信号だったのに渡ろうとした時にいきなりトラックが突っ込んできたような気がするが……………………もしかしてこれって俺が主人公だったのか?……いやいや、待てよ……俺はそんなこと言われたら困ってしまうんだが……俺にチート的な力を与えてくれたのもこの自称『女神様』の人だった。俺の人生が滅茶苦茶になったのはこいつのせ……って違う!俺は確かに死にたかったんだよ。
この世界に来てからは俺にも希望の光が差したように思えた。だけど、それでも俺はまだ生きていたかったんだ。なのに、それなのに……!
(ああああああああああ!!!!!ふざけんなよこいつ!勝手に人の人生を狂わせやがって!!)
怒りのあまり我を忘れそうになるがなんとか堪えた。まだ赤ん坊なので感情をコントロールするのは容易ではなかった。だから今は大人しくすることにした。それにこの体の持ち主がこの女性に対してどんな態度を取るかも気になっていたからだ。だが、この体の持ち主は何故か平然としたまま、何も気にした様子を見せずにただ黙っていたのだ。
(あらら……随分落ちついていますね。普通の人間なら泣き叫ぶなりなんなりの反応をすると思うんですけどねぇ……それに……なんかこの方からは不思議な力を感じる……それに、どこか私に似たような感じが……う~んどうしたらいいんでしょう……とりあえず事情を説明したほうがよさそうな感じですね。……とりあえず、まずはこれを読んでもらいましょうか)
(うぉっ……なんか本が飛んできたぞ……何々……『マニュアル本 初めての方向け!』って……この体の元の人格は初心者だったのか?)
(ええ……まあ、そうですね……というより、今の私は一応『女神アリスティア・フォンティーヌ・エルフェンティーナ・シルヴァニア(略して女神Aと呼んでください。この方は『管理者』であり『管理人』であるために私の名前を知っていてくださると話が早いと思います。……まあ、とにかくその『勇者候補』である貴方にはこの世界を救ってほしいと思っているのです。もちろん見返りとして相応しいものを与えるつもりなので安心してください))
いやまあそれは分かった。要は俺が転生させられた理由についてはよくわかった。……それで、結局どうして俺は『主人公』に選ばれてこうして異世界に来たんだ?そもそも俺が選ばれた理由はいったい? その理由を教えてほしい。俺はそのことを尋ねてみると(はい、わかりました)と返事が返ってきたので質問をぶつけたのだ。すると……
(……この世界の均衡が崩れた原因は私の責任なのです)……この世界のバランスを乱している原因は自分が作り出したのだという。
(私は地球の時代からずっとこの世界を見てきました。……いえ、見守ってきたといった方が適切ですね。私はこの世界に住まう者たちのことが好きですから)
そしてこの世界のバランスは、本来は俺がこの世界の主人公となってこの世界を救うべく運命に導かれるように、主人公の器を持った者が『勇者』となり『魔王』を倒すべきという流れになるはずなのだという
(……え?ちょっと……待ってくれ。その話を整理させてもらっていいか?)
(はい、分かりましたわ。では順番に説明しますね)……彼女はそう言うと丁寧に語り出したのである
(……今言った通り、本来ならばこの世界には、桐島さんと同じく主人公である桐島和也さん(以下カズヤと省略いたします)が主人公となるはずでした。彼は『勇者候補』の中でも、最も優れた存在であると認められた人間で、かつ私の管理している異世界に干渉できる存在なのです)
(……つまり、俺は『主人公』ではないってことか?)
(ええ、そういうことになります)……どうも、彼女によると『女神アリスティア・フォンティーヌ・ルミリア(略称女神アリア)』がこの世界に召喚されるときに手違いが生じて、『主人公』は『主人公候補であるはずの者』を選んでこの世界に連れてくる予定になっていたらしい。だから『主人公』は異世界にいるはずだと…… そして実際に異世界にやってきたのは桐島さんだけで、残りの2人……いや3人かもしれない…… とになくその人たちも同じようにこちらの世界に来ているのではないかとのことだった。しかし彼女たちも既に『管理者』たちによって別の異世界へ飛ばされているということだった。(でも、桐島さんはそのおかげで助かったのですよ。普通であれば貴方の魂は肉体から離れ、転生するために消滅してしまいます。でも私の加護により、貴方の意識を保存できたのが幸いしました)
(……そうなのか?じゃあなんで『主人公』と他の2人は俺とは違う場所に送られてるんだ?)
そこで彼女が答えてくれる(はい、貴方の場合は私がその世界へ転送するために貴方だけ特別扱いさせていただいているのです)……そしてここから先は話がややこしくなるのだがと断っておいてからこう続けた
(実はその桐島さんと同じ日にもう一人この世界に送り込む予定だった人間がいたので、桐島さんは、その子の代わりに選ばれて送られたということなんです。だからあなただけがこの世界に来てしまったんです)……どうやら俺は、本当は『主人公』になれるはずの人材だったというのだ……しかし運悪くこの異世界で死ぬ前に俺が死んだので、その代わりにこの体になったというのが事の真相らしい。
しかも彼女の話では俺以外の『主人公』候補は全員、すでにこの異世界で冒険を繰り広げており、『勇者』となっているそうだ。しかも、それぞれ強力な仲間もいるとのことで、まさに勇者パーティという状態になっているのだとか。そんなところに突然現れた主人公がこの俺だという…… しかも俺がこれから行く場所は、彼女たち勇者のいる国とは敵対関係にある隣国の領地なのだと……つまり、これから勇者と敵対する羽目になってしまうらしい……
(えっ……それマジで?勇者に敵対とか絶対に無理じゃん!てか、いきなりゲームオーバーになっちゃったよ俺!!)俺は、いきなりこの先の人生が終わったことを悟った。もう俺の目の前に光が差し込むことなど二度とないと確信できてしまった……だが、そんな絶望感に打ちひしがれていた俺に彼女はある言葉を投げかけた。……それは俺にとって希望とも言えるものだった。俺には想像を絶するような『才能』があったらしく、俺がその気になればこの世界でも無双して生きられる可能性を秘めていると言うのだ。そしてそのためにはまず、俺自身の強化が必要でその方法を教えるためにここにやってきたということだ。そして、俺の強化に必要なスキルを与えるということだった。
(よし、決めたぞ。……この俺に力を授けてくれたんだからお前は神みたいな存在だと思って接していくから覚悟しろ!そして俺はこの世界で必ず成り上がって見せるぞ!!)(はい、頑張ってください。でもくれぐれも無茶だけはしないでください。……あっ、ちなみにこの体は今の状態でも普通の人間よりもはるかに強くなっていますの。それと魔法に関しても、今のままの年齢の体では魔力の放出量はそこまで高くならないのです。でも心配いりません。この世界に来てから数日の間に魔力の総量を増やしたり魔法の威力を高める方法を伝授するつもりです。なのでそれまでは基礎的な身体能力を鍛えることに専念してください。まずは自分の身の安全を確保し、この世界のことについて理解しなくていけませんね。それからこの世界を救いましょう!さあまずはこの本をどうそ)……そう言って本を手渡された。そして次の瞬間、またしても体が吸い寄せられ始めたのだ!
(ちょっ……おい!?いきなり何を……ってああー!!俺はまだあんたの名前すら聞いてねえんだぞ!!!待てこらああぁあー!?)俺の絶叫が木霊するが無視されてしまい、俺の視界が白くなり意識が途切れた。
次に目が覚めた時にはまた真っ白い空間にいたのだ。今度は赤ん坊ではなくちゃんとした人間の姿で。
俺はこの日、自分が生まれ変わったことを自覚するのであった…… 俺の名前は桐島和也(きりしま かずや)。どこにでもよくいそうな平凡な男である。趣味は漫画を読んだり、アニメを見たりすること、特に最近はスマホアプリで遊べるオンラインゲームにはまっている。
俺は高校一年生で17歳のごくありふれた男子学生だった。だけどつい先ほど、学校帰りに俺は車に轢かれそうな猫を助けようとして死んだはずだったんだが……
(……なんだここは?どこだここ?)
俺の意識はまだはっきりしない感じだったが、徐々に覚醒し始めていく。俺は気が付くと真っ暗な闇の中に一人で横たわっていた。だが、すぐに周りが明るいことに気付くと、自分が誰かの部屋の中にいることに気が付いた。
(えっと確か俺……車に撥ねられて死んで……あれ?てことは……ここってまさか天国?)
(あはは……まっさか……俺がそんなところに行くわけがないって。……だってあの後まだ何も食べてないし、そもそも死んじゃってるなら何か食べ物を口に入れて感じる感覚なんて味があるはずがないもんね)
そう思いながら起き上がると自分の部屋よりも明らかに広い部屋に寝かされていたことが分かった。それにこの豪華な装飾が施された家具たち……まるで高級ホテルのロイヤルスイートルームのような場所なのだ……とそこでふとある考えが頭に浮かんだ。
(もしかして俺……異世界転生したのか?うぉぉぉおおおっ!!!きたきたこれこそラノベの王道展開!!異世界に来たからチート能力ゲットしたんだろうけど、その辺のところを確かめなければ!!)
俺が興奮を抑えられずにいると、どこかからか女性の声で「きゃあ」と悲鳴が上がった。どうも部屋の外に誰かいたようで俺が起きた音を聞いて驚いていたようだ。俺はとりあえず外に出てみることにしたのだが……
(お……女の子?え?なんでこんなところに?てかなんでメイド服を着てるの?……コスプレ?)
そこには銀髪の美少女が驚いた表情をして立っていた。彼女はどうやら俺のことを覗き見していたみたいで、「あ……あわわ……」と狼に見つかってしまった子兎のように固まってしまっている。そして俺と視線が合うと、そのまま顔を青ざめさせて震えているではないか…… 俺もどうしていいか分からず困惑してしまう。
(やばいやばいやばい!!何この状況……てかさっきの声はこの子のだよな……ということは……もしかしなくても……)
俺はその先の結論を予測して恐ろしくなってしまった。そして予想は的中してしまった。
(ご……御機嫌麗しゅうございます、カズヤ様……ってあれ?)
(やっぱりこの娘……)
俺はその少女が『女神』であることに気づいたのだ。なぜなら彼女は、桐島和也が『主人公』になったときに出会うはずのメインヒロインの一人で『勇者』である『勇者候補』の一人で名前は『女神アリア・リリスティア』だったからだ。
そして彼女が言うにはどうも『主人公』ではない俺を間違えて連れてきてしまい、そして俺が目を開けたと同時に思わず悲鳴を上げてしまったのだということらしい。
(うわぁ……どうしよう……俺もかなり動揺してて状況把握するのに手間取ったんだけどさ、俺どうやら異世界転移したみたい……まぁ……やはり……ですか)
(うん、そうよね。そんな気がすると思ったわ)……なんとこの女、人の思考を読んでいるらしい。しかもどうやら心を読めるというわけではなくて俺の心の中を直接読み取っているようだ……
(……ええ……その、大変申し訳ないのですが貴方が異世界に来てしまって本当に困っているようなのでこうして助けに来て差し上げたんです。そして私はあなたの『サポート役』になります。よろしくお願いしますね。桐島さん)
(は、はい!分かりました!よろしく!ってちょっと待てぇ!!いきなり呼び捨てかよ!?)……俺が抗議をしようとした時……
(あら、すみません。桐島さんのことがどうしても他人とは思えないものですから……私のことも同じ名前で呼んでいただいて構いませんよ)
(はい?どういう意味でしょうか……えっ……てか、なにそれ?……俺のことを呼びやすい呼び方で呼べばいいということ?いや、そうじゃなくてですね)……そして、俺の混乱はますますひどくなっていった……
(あの……それでは改めて自己紹介をしましょう。私の名前は『アリエスティア・ファムニルト・ルミナリア・アースガルズ』……長いので略してアティスと気軽にお呼びくださいね。年齢は215歳で見た目年齢が20代後半ぐらいに見えると思います。……で……あなたも『主人公』になりたいという気持ちは変わりありませんか?)
(え……そりゃまぁなりたいのは変わらないですけど……ていうか……この体……どう見ても日本人じゃないし、顔も外国人そのものだからこの世界って異世界ですよね。なのになぜに日本語を話せるのでしょう?)
(はい、それはあなたがいた世界の言葉ではなくて、こちらの世界の言語を話していますからね。そしてあなたに言語習得の能力を与えておいたので、あなたもこの世界にある言語はすべて理解することができるようになったんです。だからもう普通に喋れますよ。それではこれからの事を説明しましょうか)……そういうと彼女の方からいろいろ教えてくれたのだった。そして彼女の話を聞くうちにだんだん俺の頭の整理がついて来たのだ。
(えっ!?この体はもう強化されている状態なんですか!?それどころかこの国の最高戦力レベルの戦士並みの力を持っているだと?それって最強レベルじゃん!)
(いえいえ……そんなに褒めても何も出ませんよ。この世界の一般的な戦士の平均で大したことないですし、そんなに強いというわけでもないんですよ)
(そ、そうなんだ……てかその強さの基準ってどのくらいの強さなんだ?てかそもそも俺にはチート的な能力は授けられないんじゃなかったの?それに……)俺は、疑問に思っていたことを全てぶつけてみたのだった。すると彼女は丁寧に答えてくれた。
どうやらこの世界での一般的な力というのは一般人で100人分の戦闘能力があるらしい。そして俺の場合はその一般兵の100倍もの力を持つらしく、その上俺に付与された能力の中には魔法を強化する能力もあるらしい。だがこれは、俺の持つ固有スキルという奴で俺しか使えないとのことだ…… だが……
(あ……でもさ……俺に魔法が使えるのか?魔法とかよく分かんないし使い方もよく分からないんだけど)
(はい、心配はいりません。私がちゃんと説明すれば理解してくれるはずですからね)
(いや、でも魔法に関しては実際に見せてもらった方がわかりやすいと思うんだよな)
(そうですね……でもここで使うわけにもいきませんから少し外に行きましょうか)……そして俺たちは城を出て町の外に出たのだ。
そこで見た光景を一言で言うなら『ファンタジー映画に出てくるみたいな町の風景』というのがピッタリだろう。石造りの建物や木造の建築物などが混在している感じだった。俺は、まず彼女に質問をすることにする。
俺は彼女からもらった能力を試すことにした。俺はまず目の前の岩に狙いを定める。
(う~ん、やっぱりこういうので威力を確かめるしかないよね……えっと、確かこう唱えるんだよな……ええーと、【火弾】!!うぉおおおお!!なんか出てきたぁあああっ!!!)
俺の手の平からは炎の玉が出現させ岩に向かって一直線に飛んでいったのである。
(これが魔法なのか……マジで異世界なんだなぁ……ってこれ結構強くないか?)
(ふふふふ、すごいでしょ。ちなみにその魔法の熟練度を上げればその属性系の上位魔獣ですら簡単に倒せるようになると思いますから頑張ってくださいね。ただ魔力の消費量も多いので使いすぎに注意するといいかも知れません)
(おぉ……これぞ異世界だ……やべえ……俺今テンション上がっちゃっていますね)
(それで……ええと、次は何を試せば……あれ?……体が光って……ってこれってもしかして?)
(あはは……そういえばすっかり忘れてましたね……ええと、ステータス画面を確認してもらえますか?)
(ああ……ええと、これかな?って……なんじゃこりゃぁっ!!)俺は驚いて思わず叫んでしまった。なぜならそこには、 筋力 5500億 魔力 4800万 体力 3600 知恵 7700 魅力 6000 幸運 20000 という数字が書かれていたからである。
(ふふふ、驚いているようですね。ちなみに今の数字は平均的なもので、その5倍近くになるんですけどその力はあなたにしか使えず他の人はどんなに強くなっても1~3割ほどしか発揮できないんですけどね)(へぇ~そうなんだ、てかさ……こんなことしたら、俺ヤバいんじゃ……だってチート能力の塊だよ?これって絶対ヤバイ能力持ってるはずだよね?ヤバいな……もしこれで『魔王』なんて呼ばれたりしたら目も当てられないことになるよ……あぁあ、失敗したぁ!!)
(あぁあ……気にしているのはそこですか……まぁ、大丈夫ですよ。あなたの能力はそんなことでバレたりしないはずです。それとさっき言ったとおり、あなた以外にこの数値を見た人がいなかったら誰もあなたが異常な能力を持ってるとは思わないので問題なしです)
(そっか……良かったぁ……って、この身体能力が異常じゃないのか?)
俺が安心する一方で俺のチート能力にビビッてしまう。
(まぁその辺の話は後でいいでしょう。今はそれよりももっと大事な話をしないといけないことがあるんです。それは『主人公』になることを諦めていないということでいいんですか?)
(え……ええと……その……はい、諦めたくないと思っています。せっかくこうして新しい命を手に入れたのですから)
(……そうですか、それはとても素晴らしい考えだと思いすよ。……では……私と一緒に戦ってくれますか?)
(え……戦う?い、いや、戦うっていうと、その戦いは俺が『主人公』になれるように手を貸してくれるってことですか?)(違いますよ。……『主人公』はあくまでも自分で見つけないとダメなので、私があなたにできることと言えばサポートぐらいですね。でも『勇者候補』である私たちにできないこともたくさんあるのです。あなたにはそれを一緒に成し遂げて欲しいと思っているのです)
彼女が言っていることがいまいち理解できなかったが、彼女が真剣にそう考えていることは何となく分かったのである。そして彼女が『勇者候補』の一人であるということは何となくわかっていた。
(俺なんかで役に立てるかどうか分からないけど頑張ります!)
(ありがとうございます。あなたならそう言ってくれると信じていました。これからは二人で頑張ろうじゃありませんか)……そんなわけで俺は彼女のサポートを受けることになったのだった。……だが俺は、この後とんでもないことに気がついてしまった。なんとこの世界の人たちは『固有スキル』というものを持っていないということなのだ。だから俺が使える『火弾』『土柱』などの攻撃系魔法の呪文は全て無詠唱ということになる。
さらに魔法は属性系統ごとにランクが存在していて初級魔法はレベル3、中級は4、上級は6、最上級は9と決まっているようだ。そしてこの世界に暮らす人間の多くは1〜2種類程度しか適性を持たないらしいのだ。
(そうだったんですか。……でも俺に魔法を習ったので使えるようになったりするんですかね?)……そんなことを思ったのだがどうやらそれは無理らしい。どうもこの世界の人々は元々持っている適性以外の属性魔法を習得しようと試みることはめったにないらしい。
(そうなんだ……じゃあ俺の『固有スキル』も使えないんだな……)そう思って少し残念に思う。……が、次の言葉でそれが覆されることになるとはこのときは想像すらしなかったのだ。
(ううん……それは違うと思います。だって桐島さんが手に入れた固有スキルはどれも強力な物ばかりですからきっと魔法も同じように覚えられるはずです)
彼女は断言して見せた。(本当!?)
(ええ、間違いないです。ですが……それでも桐島さんの体はかなり特殊ですので普通とは違う方法で魔法を覚えてもらうことになりそうですけどね。まずはその魔法を練習しましょうか)
(はい!……ところで俺ってどうやって魔法を覚えるの?)
(まぁ、簡単な話ですよ。まずは魔力を感知することに慣れてください。魔法を使うための魔力を感じ取れればすぐにでも使えるようになりますからね)
(分かりました)俺は、彼女に言われて早速やってみることにした。
(魔力を……感知……ってどうすればいいんだろう?)……そして、俺が困っている時、
(……ああ、それなら私の方からアドバイスしましょうか?)とアティスは親切に教えてくれたのだった。どうやら俺が魔力を探りにくいのはこの体に原因があるらしい。この世界に住む人々のほとんどは、自分の体の中を流れる"魔力"を感じることができるらしくその感覚を頼りに発動させるらしいのだ。
(なるほど……そうなんだ。ならまずはそれをやっていけばいんだよね)俺はまず、体内にある魔力を感じ取ろうと集中することにしたのだった。
俺は、意識を自分の内側に向ける。すると今まで全く気づかなかったのが不思議に思えるほど大きな何かが存在していることが分かった。
(おおっ!これかな?これが魔法を発動させるための核になるんだよな)……俺は、自分の内に存在する不思議な力をゆっくりと動かし始める。すると次第に大きくなっていくその力はだんだん手に収まり切れないほどの力へと成長していくのが分かる。
(うぉおおおおお!!これヤバくないか!?どんどん大きくなっているぞ!でもなんか気持ちよくなってきた!なんかもう何でもできる気分になってくる!!これが魔力なんだ!!……よし!もっと大きくなるんだ!!……お……おおおおお!!なんだこれっ!?)その時、突如として魔力の動きが激しくなり、それに比例したかのように体が熱を帯び始めたのである。そして次の瞬間、爆発的な力によって周囲の空間が歪んで見えると、そこからまるでマグマのように激しく燃える炎が出現したのだった。
そしてその炎は俺の意思に関係なく辺りに放たれて行ったのである。
(……ん?……へ?ちょっ、ちょっと待てええぇえっ!!……うわああああああっ!!!!!……ああああああ!!や、やめろっ!!……な、なんだよこれええぇっ!!やめてくれ!!……なにぃいっ!!こ、こっちくんなあぁぁ!!うわああっ!!……こ、こいつぅ!!あ、あつい……あぁあ……やめて……やめてくれええぇぇ!!……ううっ……な、なんて奴だ……や、やるなこ、こ、こんちくしょう……ぐすっ……こんな目に合うために生まれてきたのか?……なに?……そ、そうだ……これは悪い夢なんだ……っておい!!……お前の仕業だろ!!何とかしろぉぉぉ!!!)
俺がそう叫ぶとその現象はすぐに終わった。そして目の前には驚いた顔の女性が立っていたのである。……その女性こそが俺のサポート役をしてくれることになった人だと気づいたのはしばらくしてからのことであった…… 俺が異世界に飛ばされてから二週間が過ぎた。その間に色々な事があった。例えば、俺の魔法があまりにも強力だったため、訓練のために近くの山や森などに被害を出してしまった。そのため、あの時の女性の人から怒られたのだった。そして次に魔法のコントロールを完璧にするべく特訓に励んだ。そのおかげなのか俺の『火弾』や『土柱』といった属性系統の攻撃魔法の威力は日に日に強くなっていた。……だけど俺はそのことで逆に悩んでいた。
(俺は本当に主人公になれるような人間なのだろうか?正直なところ不安でしょうがない。この世界に来るまでの人生は散々なものであったからな……もしこの世界で生きていくことになっても主人公になることは果たして出来るのであろうか? まぁとりあえず今は自分にできる事を精一杯やって行くしか道はないけどね)……そう思っていたある日のこと、この国の王城にてパーティーが開かれるという話を聞いたのだった。なんでもそのパーティーに参加する者は『勇者候補』に選ばれる可能性の高い者たちだけで行われるらしい。(そんなに期待されてるのにどうして誰も勇者候補になれないでいるのかな?)そんな疑問が浮かんだが特に興味がなかったので気にしなかった。それよりも今は魔法の練習をしておきたかったからだ。……そんなわけで魔法が自由に使えるようになってからずっと練習していたのだが一向に上手くならなかった。
(一体なぜだろう?……なんでこの世界の人々はみんなこんなに凄まじい破壊力を持った攻撃系の呪文を自由に使えるようになっているんだろう?)そう、この世界の人々はなぜかこの世界でもトップクラスの強さを誇る種族の人達でさえ中級魔法以上を使うとなればかなり消耗するらしいのだ。だから俺が魔法を使い続けても疲れたりしないということは異常だというのだ。……俺はそのことをとても不思議に思った。
(でもこの世界に来てからは前よりも遥かに調子が良いんだよな。この世界にはまだ俺の知らないことがたくさんあるはずだから色々と調べたほうが良さそうだ)……そんなことを思いつつその日もひたすら修行に励んでいた。……だがこの日は少し違った出来事が起きたのだ。
(そういえば今日って、王様から勇者候補として召喚された者だけが参加できるパーティーが開かれてるんじゃないのか?しかも今日の参加者は全員『勇者候補』に選ばれやすい者達だって話だしな……そんなことを聞いてしまったからつい好奇心が沸いて来たな……俺にも『主人公』になれる機会があれば良いんだけど……そんなわけないよな)
俺の能力は『主人公補正』とか『運命を変える程度の能力』と呼ばれているらしくてこの世界の人々には未知のものらしいのだ。……俺としてはむしろチート能力が欲しかったので『主人公』になるべく努力しているつもりだったのだが、それでもやっぱり『主人公』には程遠いみたいだったのだ。そんな俺が、この国の王が主催する『勇者候補』だけの豪華な食事会に呼ばれているのだった。俺としてもこの世界に来てから初めての外の世界の料理には興味があったが、それと同時に面倒なことに巻き込まれないか心配でもあった。しかしそんな心配はする必要はなかった。何故なら俺は『固有スキル』を使えて普通の攻撃系魔法ならば無詠唱かつノーリスクで使用することが可能だからだった。
そうして俺の異世界での二度目の冒険が始まったのだ。だが俺はまだ知らなかったのだ。この先に俺に降りかかる数々の事件が待ち受けていたことを……そしてその最初の事件が起きようとしていることをこの時の俺はまだ知る由もなかったのだ。
(あれは誰だろう?……でも、すごく可愛い子がいるなぁ。俺と同じぐらいの子か?でも……なんだろ、彼女からはどこか他の子とは雰囲気が違うっていうか、オーラが半端ないんだよなぁ。なんか近寄り難い感じがするような……って、何で見とれてるんだ!俺もそろそろ挨拶に行かないとダメだよね。よし、行くぞ!……)
俺がその少女とすれ違う直前、突然声が聞こえた。
「桐島さん、あなたも招待されていたんですね。良かったら私達と一緒に参加しませんか?」
振り返るとそこには俺が見惚れていた少女がいたのだ。俺はこの時、彼女と会う前に自分が何をしに来たのかを思い出していた。そうして俺はその女の子――神条 美鈴さんに連れられて、一緒に食事を摂ることになったのだった。……そして俺はこの時初めて彼女の名前を知ることができたのである。
(綺麗な人だったな……)そんなことを考えながらも俺は緊張のあまりまともに食べることが出来なかった。
(う〜ん、美味しそうな物がいっぱい並んでるけど味がほとんど分かんなかったな。俺、全然会話出来なかったから気まずいだけだったな……はぁ)
そして俺はその部屋を退室した後、あてもなく会場をうろつくことになったのだった。
(それにしてもすごい数だったな。あんなのが全部『勇者候補』って言うんだから恐れ入る。それにしてもなんだろう?俺の予想が当たっていたなら多分彼女は『ヒロイン枠』って奴だよな?……でもなんか俺とはレベル差があり過ぎて恋愛対象にはならないような気がしてきたな)……そんな風に思っている時だった。急に声をかけられて驚く羽目になったのだ。……ちなみにそれは美少女であった。
(ふーむ……なんともまぁ見事な胸の発育具合だなぁ……この子は、確か……ええと……あぁそうだった!)俺はそこで思い出すことに成功するとすぐに話しかけたのだった。
俺は、自分の目の前にいる女の子がクラスメイトであることを思い出すとすぐに自分の目的を果たそうと話しかけることにした。だが…… その途中俺は、この子の胸に目を奪われてしまい、そのことに気付かれてしまったのだった。そして、それから数分後……なぜか俺はその子によって説教される羽目になってしまっていたのである。……何故かその女の子の話を聞いていたら俺が悪いように言われてしまっていたのは謎であったが……どうやらその女の子は自分と同い年くらいの子が、この場に呼ばれたにもかかわらず、まるで大人のような態度だったのが気に入らない様子だったのだ。そして、そのことを指摘され、恥ずかしくなって、その感情のやりどころがなくなったという感じである。……そしてその後、結局この子は自分の部屋に俺を連れ込むことになるとそのまま俺の泊まっている宿まで来ることになるのだった。……こうして、俺のこの世界で初めてできた友達?が出来たのだった。そして次の日、俺は『魔法剣技』というものが存在することを知りそれをマスターすることに決めたのである。
俺はその日、『魔法剣技』について学ぶためにその習得が可能な場所へと足を運ぶことにした。そして辿り着いたその場所で俺はある光景を目にすることになる。そこでは複数の騎士と兵士が戦闘訓練をしているところだったがその中に明らかに一際存在感を放っている者がいたのである。……俺は、その圧倒的な強さとカリスマ性を放つ女性に見とれていたが、不意に彼女がこちらに向かってくることに気づいたのだった。
「お前は何者だ!ここは子供の来るところではないぞ!」
「おい、止めとけ。彼は昨日、陛下によってここに招待された少年だ」
すると、女性は驚いた顔をしていたが直ぐに元の真剣な表情に戻ったのだった。
「そうか、お前があの時の小僧か……」
俺は何も言わずにただ黙ってうなずいていた。
そして……この瞬間から……物語は始まることになるのだった……
(……ん?……ああ……そう言えばそうだったな……すっかり忘れていたぜ……それじゃあやるか。さっさと終わらせないと色々と不都合な事態になるからな……って、なんで俺がこんな事考えてるんだ?)
「……それで、君の目的は何なのかな?まさかとは思うけど僕の暗殺とかじゃないよね?……まあいいや、それより僕と戦ってみたくない?もし勝てたら君の要望通り僕は何でもするよ?例えば……君の奴隷になるとかね」……なんという提案だろう?正直に言って俺は今、この人が言っていることを信用していないのだが。この人にはそんなことをしなくても人を従わせるような雰囲気が確かに存在しているのだ。そして、俺はそんなことより気になっていることがあった。
それは、目の前の女性の外見が先程までとは別人のようになっているからである。……おそらくこれがこの人の本性なのではないだろうだろうか?だとすれば、やはり侮れない相手なのかもしれないな。そんなことを思いつつ、俺の目の前にはその見た目からは考えられないほどに強いであろう人物が現れたのだった。
そんな状況に俺は少し焦っていた。なぜなら相手がその力を十全に発揮できる環境を整えつつあるからだ。
そんな状況の中、俺はどうにかしようと考えていたが、この人は魔法を使うつもりはないらしい。
(はぁ……仕方ないな……少しだけ本気にさせてもらうか……この人と本気で戦えるいい機会だし、試したい事もあるからな……『主人公補正』がどれだけ使えるのか確かめる絶好の機会だ。とりあえずは『主人公補正』の発動条件を確認しておく必要があるから、そのことについてはこれからの課題にしていこう)……そう考えつつも俺は目の前の状況に集中するべく集中力を高めていく。
そして、お互いに準備が整ったことを確認した俺は相手に手加減抜きで攻撃することにした。
(俺の『固有スキル』の一つに、俺の身体能力を飛躍的に向上させる『固有スキル』『身体強化(フルバースト)』があるが……これは俺自身の魔力をかなり消費する上に、この状態が長時間続けば確実に死に至るだろうな。だけど今の俺にとっては、そこまで大きな問題にはならないだろう。だから今回はその二つの能力を『固有スキル』の力を借りることで同時に使用することを決めたのだった。そうすることで俺の能力値が大幅に上昇していられる時間も格段に長くなるからな)
俺はまず最初に『固有スキル』の力で自分自身を強化し、相手の攻撃を難なく回避することに成功した。しかし、それだけでは相手を倒すには至らなかった。だから、今度は武器を使った攻撃に移行することにする。
だが、いくら強力な『魔法剣技』といえども生身の肉体だけで戦い続けることは不可能だと判断した俺は、『勇者の加護』の『魔法剣技・勇者式魔法剣』を使うことで、その効果範囲を広げていくことに決める。そしてこの作戦を実行に移す前にまずは相手から距離を取ることにする。
そうして、ある程度の間合いを取ったところで俺は『勇者の加護』の効果範囲内にある自分の体に魔法をかけたのだった。……その結果俺は一時的に『身体魔補助』を発動させることで、更に能力値を底上げすることになった。そして、そんな状態の俺を見て向こうの方からも動きがあったようだ。
そうしてお互いの動き出しはほぼ同時だった。しかし……俺は既に『固有スキル』を連続使用していることでかなりの疲労感に襲われ始めていた。
(まずいな……このままいくと俺が負ける可能性が高いな……だからそろそろ終わりにするべきだよな)
そして俺は『固有スキル』の効果が切れると同時に行動を開始した。まずは相手が持っている『魔法剣』を無力化するための準備をする。そのためには相手が持っている杖を奪えば良いと考えた。
(しかし……本当に速いし強いなこの人……やっぱり普通に強いな。それに『魔法』が凄まじく多彩だったし。この世界にはあんな化け物みたいな奴がまだまだいるんだろうなぁ。まあそんなことを考えるのは後回しにするか。今は目の前の敵に勝つ方が大事だな)
俺が自分の『魔法剣』を使おうと思ったその時、相手が俺に向かって攻撃を仕掛けてきた。そして、俺の意識はそちらの方に向いたがために自分の『魔法剣』の使用が遅れてしまうことになった。
だが、俺はこの時すでに相手の懐に入り込んでいた。俺と敵の距離は殆ど無く、俺の攻撃の方が早く届く状態にあったのだ。
そして俺が繰り出した攻撃は……相手の防御が間に合わなかったようで直撃させることに成功する。そしてその一撃により、相手を戦闘不能の状態にまで追い込むことに成功したのだった。……それから数分後に目を覚ました敵は俺を見るなり怯えていたようだったが俺としてはむしろこっちに非があることは分かっているつもりだったのである。そして、この一連の出来事によって、俺に戦いを挑んできた相手はこの国の王様の娘さんだったことが分かった。その後、この人は、この国に伝わる伝説の『聖女』と呼ばれる存在であることが判明して俺は困惑することになる。……ちなみにその後この人からは謝罪を受けることになったのである。
「私はなんて恐ろしい奴を怒らせてしまったのだろう……この私でさえあいつにだけは勝てる気がしないんだ……それほどまでに奴の戦闘に対するセンスは高いんだよ……まぁそれは置いといてだ……君はどうしてこの城にいたんだ?」……そんな質問に対して俺は正直に答えることにしたのだった。
そういえばこの子はこの城に呼ばれて来たんだっけ?でもなんでなんだろうか?……まぁどうでもいいや。この子の話を聞き終わったら僕はすぐに帰るとしよう。……そんなことを考えながら目の前の少女に目を向けた俺は少女の話に耳を傾けることにしたのだった。
それからしばらく俺は彼女の話を聞いていたのだが、途中から彼女は泣き始めて、そのことに戸惑ってしまったのである。
どうやら彼女は、俺のことが気に入ったらしいが……それが何故だかは俺にも分からなかった。……いや、正確には分かってはいたのだがその理由を口に出すことが恥ずかしくて出来なかったのだ。そんな感じだったのだ。そして……この瞬間に彼女は俺にとんでもない約束を持ちかけてくるのである。その内容は……
「君がこの私の師匠になるのだ!この国に住めるように私がなんとか説得しておくから!君もこの国に住むことになるはずだから!これからよろしく頼む!」……そう言った後俺の顔を見た彼女に、その言葉を聞いた俺の反応を待っていたような様子が見られたため、俺は断ることも出来ず、この子について行くしか無いんだろうなと思ってしまうのだった。
そして、この日の内に俺は王城から出ることになりその足で街を歩いて回ることになった。その途中でこの世界のことや『勇者召喚』のことなどについて色々と知ることが出来た。この世界には大きく分けて四つの国が存在していて、今現在俺が滞在している国はその中でもかなり大きな部類に入るらしいのだ。この国の名前はアルストリア公国と言い、この世界に数ある小国の中でも特に優秀な国なのだそうだ。この国には大きな特徴があり、この国で生まれ育った者は皆『特殊スキル』を所持している者が多いということだ。そのことは俺が今最も欲していたもので、是非俺も手に入れたかったのだが、この国で暮らしていく以上いつかは習得出来るかもしれないということだったので俺は我慢したのだった。ちなみに『特殊スキル』と言うのは特殊な技能を持った人間が発現しやすい『固有スキル』とは違うもののことを言うらしい。……そして俺は今街の大通りで屋台の商品を食べ歩いているところだ。その最中、俺は目の前に現れた女の子によって、突然俺の手を引っ張られて路地裏に連れていかれたのだ。
「なぁ!あのさ!……ちょっといいか?……いや、全然大したことじゃないんだが……」
「……」
そんなことを言ってきたこの子に、少しイラつきを覚えたが俺はまだ子供だしそんな事をしても意味がないと考え無視して歩き出そうとしたが……。その俺の考えを見透かされたのか腕を強く握られたことによりそれは叶わなかった。
「はっ……なに?もしかして僕に何か用があるの?じゃあさっきの話は嘘ってわけ?」……なんかすごく嫌な気分だな……それに少し面倒くさいし……。はぁ……こんな事ならもう少し大人しくしていてくれば良かったかなぁ。まぁ今更遅いか……それともまだ引き返すことができるかもしれないな。よし、聞いてみることとするか……もしかしたら……この子を納得させることが出来るかもな……。……そう思った俺は試すつもりでこの子の誘いに乗ってみることにする。
それから少しの間俺はこの子と雑談のような会話をしていたのだが、そこでようやく本題に入ることになった。そしてその話の中身は…… どうやら俺に稽古をつけてほしいらしい。それも、とても厳しくしてほしいらしいのだが、この子が言うには俺は既にその実力を持っているらしいので俺は断ろうとした。しかし、その時俺の中でこの子はこの国から出る時に役に立つのではないかという考えが頭に浮かんだのだ。だから俺は仕方なく承諾することにしたのだった。
そうして俺達は修行を開始するために森の中に移動することにした。だが移動の最中俺は、この世界での『ステータス』について確認しておきたかったことがあったので、早速俺は『固有スキル』を使うことにした。……しかし、俺は『固有スキル』を使ってみて、あまり驚かされることは無かった。……何故かといえば、このスキルは今までの俺が努力してきた結果だったからだろうと思うからだ。
この『身体魔補助』というのは元々俺が持っていなかった能力値を大幅に上昇させる効果を持っていたので、このスキルがあれば俺はかなり強くなれるのではないかと思ったのだ。だが俺の予想は間違ってはいなかったがかなり甘い考えだったようである。この能力は使用者が使用していない時に比べて身体能力が大幅に落ちるのだ。しかも、使用中の体力消耗が半端ないのだ。そのため、使い続けるのは非常に危険なのである。……そして俺は改めて自分のステータスを確認すると『勇者の加護』の『固有スキル』の『魔法剣技・勇者式魔法剣』のレベルが上がっていたことに気がついた。この『固有スキル』はレベルが5上がるごとに新しい『固有スキル』を覚えることが出来、今の『魔法剣技』には新しく、『魔法剣士技』というものを習得することが出来るようになった。俺は早速使ってみようとしたが……残念ながら俺はこの魔法を使えないことが判明した。
それからしばらく歩くと俺達の周りは深い森に包まれた。
そして、俺は目の前にいる少女に、自分の今の『固有魔法』が『魔法剣』と呼ばれるものだということと、『固有魔法』の使い方などを教えることに決めたのだった。
それからしばらくすると目の前にいたはずのその子が俺の視界から忽然と消えていた。だがその事に気づいたのは俺が『身体魔補助』の効果範囲から出ていたため、体中を襲う強烈な疲労感に襲われた後のことだった。
(なんだこれ!?急に凄まじく身体に力が入らなくなったぞ!これはまるで俺の体が限界を迎えたような……って……まさか……)
そのことに気づいた時には既に遅く、俺は力尽き地面に倒れる。
それからしばらくして目が覚めた俺の前に立っていた人物がいた。俺は最初それが誰か分からなかったが、よく見るとそれがあの子の顔をしていることが分かり驚いたのである。
その後俺は彼女に助けてもらったことでお礼を言うと共にこの子と一緒にいることになってしまった。そしてその後俺達は、この場所を拠点として修行することになったのだ。ちなみに俺が目覚めた場所は、どうやら俺達が拠点にしようとしている場所だったようで俺はホッとしたのだった。……そしてその日の夜に彼女はとんでもないことを言い出すのである。そして……彼女はとんでもない約束を取り付けてきたのだ。……俺が彼女の弟子になるということを了承してしまったのだ。そのことに俺は少し戸惑いを覚えながらも仕方がないかと諦める。そして俺はこれからこの世界での生き方を考えなければいけなくなり、どうしたら良いのか頭を悩ませるのだった。
俺の前には巨大な壁が広がっている。だが俺はそんな壁に怯えることは無いのだ。……何故ならば、これから俺が行うのは、ただの『魔法剣』の訓練だからである。俺は今『固有スキル』『勇者の祝福』『英雄王の威光』『聖者の祈り』を発動させた状態でその二つの武器に魔力を注ぎ込む練習を行っていたのだ。この『魔法剣』と言うものは、発動時の威力を上げるのに使うと効果的であることがわかったのだ。そしてこの魔法の発動に必要な魔力量は少ないのだがそれをコントロールするのにかなり神経を使うことになりかなりの集中力が要求されることになる。この訓練を行う前にアリエスに聞いたところでは、普通の人間の場合は、その人が『才能』を持っている場合はその人に『聖者スキル』などの『特別系称号』が与えられていれば、その系統のスキルを取得できるのだが『固有スキル』を持っていない人はその系統が一切習得できないということらしい。またそのことから考えるに、この世界での『勇者の加護』というのを持っていても、俺は『勇者の加護』と相性の悪い系統の『勇者の試練』を受けない限りは俺自身が持つ特別なスキルを手に入れることは出来ないのだ。
つまり俺の持つ『勇者の恩恵』にはこの系統のスキルは覚えられないということである。ちなみに『聖女の呪い』とやらは『回復の祝福』や『浄化の波動』などが該当するらしい。『聖女』と言うからには『聖女』特有のスキルもあるはずだとは思うのだがそれが何かは全くわからないし、俺にはまだ『聖女の祈り』も『女神の聖典』も使えたためしが無いため俺にはそのことは分からない。……そんなことより俺は早く強くなりたいと思っているため俺はこの魔法について研究を重ねることにしたのだった。そう言えば俺はまだあの子に俺の『魔法剣技』の実力をまだ見せていないんだったよな……。そして俺はまだあの子に見せていなかったもう一つの『魔法剣』を見せることを決めたのだった。俺はあの子の目をしっかりと見据えるとこう告げたのである。
『聖魔』の力を開放しろ。
次の瞬間、その空間を支配していた重圧感は霧散する。
そしてそこにいたのはこの世界の誰よりも強い存在である『魔王神:アスモダイ(別名は『悪魔帝』と呼ばれているが……『悪魔王』ではないらしい)であった。
そして彼は、この場にいる全員を圧倒的な強さでねじ伏せた後、この世界における自分の立ち位置について語り始める。
この世界では俺の存在は余りにも異質でこの世界には存在しない『魔王神』として俺のことは呼ばれているらしく、俺は『七大天使』と呼ばれる7人の上位存在の中でも別格の存在で、その力は他の六人を合わせたとしても全く及ばないらしい。……それに加えて、俺は全ての系統を極めているらしい。そのせいか『七属性』と言うものを全て扱うことができるようになっているみたいだ。だがその分デメリットもあり、それぞれの属性を扱うことによって、それらの耐性を失っているそうだ。……だがそんなことを気にしている暇はないのでとりあえずは保留にする。
そしてその話が終わった後、何故か俺は『創造主』と対面することに決まっていたようだ。そして『七属性』のどれか1つを選んで『魔法』や『スキル』を作る許可もくれた。その時に俺は、俺が一番扱いやすいのが何かと聞かれたので俺は『炎』と答えた。
すると『火の神:プロミネンス』の称号を与えられたので早速試してみる。
俺はそのスキルを使って、『魔法』や『魔術』を扱えるようになる『術者』、『精霊召喚』を使うことができるようになる『精霊契約』などを習得しておいた。
その次に俺は俺のことを呼び出したあの子の名前を聞くと彼女は、 私の名前はアリスと言います!これから宜しくお願いします!と言って来た。なので俺も、こちらこそよろしく頼む。と挨拶をして、彼女から差し出された手を握るとその途端、体が光に包まれていくのを感じたので、俺も自己紹介をする。……そういえば俺はこの子に名前を教えていなかったんだよな……。俺は少し焦ったがもう遅いと思い諦めることにした。
そうやってしばらく経った後、突然視界が真っ白になると、俺達は再びこの場所に来ていた。俺はそこでようやく元の世界に戻ることが出来たのだと確信したのだった。……そうして、俺達の新たな生活が始まることになった。だが俺達はまだまだこれから先、苦難に見舞われることになる。そう俺はこの時にはまだ知る由もなかったのだ。これから俺達に起こる本当の災厄の事を……
『固有能力』
・身体強化・・・肉体を強化し身体能力を大幅に上げる
・剣術・・・剣の扱いを上手くなり剣の切れ味などが上昇する。熟練度が上がれば剣を振るう速さも上昇する。
・槍術・・・剣と同じ要領だが更に剣技が上手になる。槍の使い方もある程度わかる
・格闘・・・己の拳を使って闘う方法を学ぶ事ができる
・短刀術・・・ナイフの使い方などを詳しく学び戦闘で有利になるようにする。短剣の使い方についても詳しくなる。
・暗器操作
・投擲
「…………あれ?ここは一体……俺達って今まで何をしていたんだっけ?」
俺が最初に思い出したのは、自分の置かれている状況がよく分からず戸惑っているような感覚である。そしてその戸惑いはどんどん大きくなり……そして完全に俺の記憶は蘇った。……俺はあの少女……いや、少女と呼ぶには大人び過ぎていて美女と表現するしかないほどの美人と、修行を始めてそれから……それから……それから……それからそれからそれから……それからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそれからそこから……
そして俺はあることに気づく……俺はさっきまで『身体魔補助』のスキルを発動させてからずっと森の中を歩いていたはずなのだ。だが今は何故か森から離れた場所にいる。それに辺りの風景も明らかに違っていて俺は自分が今、どこのどんな場所にいるのかすら分かっていない状態である。俺は慌てて自分の装備を確認してみると……特に何も問題は無さそうであるが……俺の『聖剣:エクスカリバー』だけは無くなっていた。
(おいおい……これはどういうことだ!?なんで俺の武器が無くなっているんだ?)
そのことに俺は思わず困惑してしまう。……そして少し考えた後に一つの仮説を立ててみた。……俺のスキルの『鑑定』を使えば何かが分かるのではないかと思って実行し、その検証を行ってみると、やはりその仮説は正しかったらしく、どうやら俺は『勇者スキル』の派生系の『賢者スキル』を覚えていたので、それで俺は俺がこの世界に来た時に与えられた『勇者の恩恵』の詳細を見ることが可能になっていた。
『勇者の加護』詳細一覧
固有技能:『固有才能』、『特別スキル』を覚えることができる。その系統に応じて『才能』、『スキル』、『奥義』などの種類が増えて行くことがある。
効果範囲と威力と効果は本人の力量によって上下する。この能力は『固有才能』に分類される
特殊技能:
『魔法』や『魔術』などを扱うことができ『魔術』の場合は『魔法陣』『魔法言語』などの知識を得る事が出来るようになり、威力なども『スキル』の時より向上するがその使用回数は『固有才能』ほど多いわけではない。『固有魔法』も『固有スキル』と同じく覚えることが出来る。また、このスキルには『スキル』の時よりも強力な効果があるものもある。
『精霊使い』『精霊神との契約』『聖者』『女神の愛』がこの『聖者の試練』に含まれており、『魔法』系統のスキルを覚えたり行使したりすることが可能になる他、『聖魔』の力を行使する際に必要となる『精霊神』と契約をする事が可能になる(『固有能力』の時はこの『契約』が必要無いため『精霊』などの使役も可能になっている。この契約は自動的に結ばれるため破棄することは不可。ただし一度でも裏切った場合はその時点で契約は完全に断ち切られる)。
『スキル』、『魔術』などの系統のスキルは全ての系統の『スキル』、『魔術』の適性を持つようになる。その系統のスキルを使用する場合は消費魔力が大幅に軽減され、発動スピードも上昇される。またこのスキルは、その系統以外のスキルを使用することは無い。
これらの『才能』には『固有才能』も含まれ、全ての『魔法系統』の『魔法』を扱うことが可能になるがその『魔法』の使用回数に限度がある。
『固有スキル』
『魔法』の習得速度と効力が上昇し、さらに『魔法』の熟練度が上がりやすくなる。
これらのスキルにも『スキル』、『魔法』と同様にそのスキルごとに『固有魔法』が存在する。
そして、それらのスキルの他にも『固有能力』というものが存在している。これらは本人の意思とは関係無く自動で発現するため本人がその能力を自在に使うことは不可能であるが、本人が使う意思を持てば使える。しかしそれらの力は『固有魔法』や『スキル』とは桁違いの効果を発揮する。そして『固有能力』にもいくつかの系統が存在しその系統は、『スキル』の時に存在していた物よりも強力で様々な種類のものがある。
俺はそれを見て、自分のステータスをもう一度確認してみると、確かに俺がこの世界に呼ばれた理由である『勇者の試練』とやらの達成のために必要な項目は一通り揃っていることを確認できる。……俺はそのことにとりあえず安心し、このことについてはひとまず置いておくことにした。そして俺は再び歩き出す。俺はこの世界に召喚された時に貰ったこの世界についての情報を出来る限り集め、それをまとめていった。
俺達はその後しばらくの間森の中にある小さな小屋で暮らしていたが俺はそこで生活しながら自分の身を守るための修行を開始した。俺は俺の持つ『聖剣』である『エクスカリバー』の扱いにも慣れておきたかったからだ。そしてその時に俺は俺の中に眠る力について気がついたことがあった。それは、 俺が『七属性』と言う魔法を扱えるようになったことで俺は新たに1つの属性を得たようだ。それが何なのか最初は良く分からなかったが、どうやら『火』という分類に入るらしい。なので俺は早速その能力の確認をすることにした。その結果判明したことは、俺がこの力を制御すれば『魔法』や『魔術』を扱うことが出来きること、そして『スキル』、『魔術』などを使う時には俺が元々持っている属性から選択することが必要なようで、『水』から『氷』のような感じで俺は使い分けができることが分かった。
それと、新しく俺が得たスキルの中で一番重要な能力はこれだな。
『剣術・極』、『格闘術・超一流』、『暗器術・超級』、『格闘術・一級』がそれに当たる。俺は元々、剣を使った接近戦を得意とする剣士タイプだったが、これのおかげでより剣での戦闘が得意になったと言える。
だが俺が一番凄いと思う点はそこではなく、新しい技だ。これは今まで使っていた剣術の型には存在しないものなのだ。……そうして俺が新たに手に入れたスキルの説明を始める前に俺は俺の中にあるもう二つの『固有能力』についても説明しなければならない。俺はその二つが合わさって生まれた特殊な能力を持っていたのだ。
それは『全耐性』と『物理攻撃無効化』である。
『全耐性』……すべての『物理現象』に対して完全な耐性を得られる能力。また精神作用する『状態異常』の全てに耐性を得ることができる。
『物理攻撃無効化』……『固有能力』の一種であり『物理現象』によるダメージを完全に防ぐことのできる『スキル』である。
そして俺はその二つの『能力』を同時に持つことができた。これにより、俺は物理現象に対する完全防御を可能としたのだ。……だがこの能力は欠点もいくつかあった。まず、物理攻撃にしか通用しないこと、それから物理的衝撃しか無効化できないことだ。
なので、例えば相手を吹き飛ばすような攻撃をしても俺を地面に転がすことも出来ないのであまり有効活用できてはいないが、それでもかなりの威力の攻撃も防げるようになるので俺がこれから先戦いを続けて行く中でかなり役に立つことだろう。
俺はこのスキルを使って俺の師匠の剣の腕を上げていたのだが、俺と剣を交えることによってその人の剣術の実力が上がるようなことはなかったので俺の能力についてはそこまで信頼することはできなかったが、俺自身も剣の扱いはかなり上達してきた。……ちなみに俺はこの2年間で、 レベルが3上がっていて、ステータスの方は大幅に上昇していた。
『ステータス』
名前:月宮勇也
性別:男性
年齢:16歳
種族:人間
職業:聖剣使い
筋力:5500
体力:5800
敏捷:5000
知力:6600
耐久:7300
運:9999
(……まあ、これはこれで良しとしよう。だけど問題は、まだこの能力のレベルがまだ上がらないことだ。それに……なんだか最近体が怠いし……何だかなあ……。)
俺にはこの世界で目覚めた直後に突然俺が得た『スキル』や『固有才能』の詳細を見ることが出来たのと同じように、『固有技能』と『特別技能』も見ることができる。それでこの世界の人達を見てみるとこの世界には『固有才能』を持っている人が殆どいないことが確認できた。この世界でも『才能』というのはとても貴重なもので、ほとんどの人が一生をかけて努力することで得られるものだかららしい。だからこの世界の人達はこの世界独自の技術でその技術を進化させながら文明を築いて来たみたいだった。……ただ俺の場合は少し特殊かもしれない。なぜなら、 俺が覚えることが出来るスキルの『魔法』の種類はその系統によって異なるだけで基本的に同じものだったからだ。俺が今持っているのは、 火系統のスキル『火弾』『炎熱矢』『灼弾』の三つの『固有魔法』だ。その他にも回復魔法とか色々覚えている。……正直、今となっては俺は自分のスキルがなんであれ大した問題ではないと思っている。俺の中には、今までに見たことも聞いたこともないような凄い力が眠っていると感じるのだ。
そしてそんな俺だからこそ分かるのが、この『聖剣』と呼ばれる武器が本来俺に与えられるべき物だったということだった。
俺はその『固有技能』の欄を指で触ると、詳細が表示されるのを確認してから再び考える。……おそらく、これが俺が選ばれた理由だと分かる。だが俺に与えられた使命が何なのかは分からない。それに、どうしてこの世界に来たはずの『異世界人』がいないのかもよくわからない。俺は、その謎を解き明かさなければならない。……そのためにもまずこの世界のことを知って行かないと。そう考えて俺は再びこの世界を旅することにしたのであった。
*********
「さすがです勇者様!!私達が長年探し求めてきた存在を見つけるなんて!!」
彼女は感心するようにそう言って、私を称賛する言葉を並べるので私はつい調子に乗ってしまった。だがそのせいで彼女に不審な行動が見つかってしまったのだ。それは私の『スキル』の誤作動が原因だった。私が見つけた少年は、あの時はまだ『固有スキル』すら持っていない状態だったはずなのに私のスキルはそれを正確に感知していた。……それはありえないことだ。なぜなら、『固有スキル』は一人につき1つしか所持していないからである。そしてそのことはこの国の誰も知らないはずだ。
しかし私の『固有能力』は彼が勇者であることを証明してしまった。私は焦った、このまま彼をこの国に連れて帰ったところで確実に処刑されてしまう。
そこで私は、彼の身を守るために自分の『固有能力』で彼にスキルを与えたのである。だが彼は、その『スキル』の発動の仕方を知らない様子で困惑しているようだった。そこで、私は咄嵯に自分が使える最強のスキルを使うことで、彼に自分のスキルを使わせることに成功し、この世界には存在しなかった魔法系統スキルの呪文を唱えることができるようになることに成功した。そしてそのまま彼はこの国から姿を消すことになるのであった…… 私はその時、自分の身の安全のためにやった事だがまさかこんなことになるとは思っていなかった。だから後悔する羽目になった。それは私にとって最悪と言ってもいい出来事だった。……だが私はここで諦めていいのだろうか?彼を救うには、それしかない。この国に、彼を守れる者はいないのだから……なら、この国がやるべき事は決まっているだろう。ならば私はどんなことをしてでもこの事態の収拾に努めるのみだ。たとえそれがこの国の王としての誇りを傷つけることになるとしてもだ!そしてこの日を境に彼女の人生が変わっていったのは言うまでもないことであった……。
〜第一章終了〜 ここは魔王の住む城だと言われている『暗黒魔都』である。そこはその名の通り暗く不気味な雰囲気を放っている場所であるが、今日に限っては賑やかな笑い声に包まれていた。……何故なら今日は月に一回開かれる『闇闘技大会』の日だからである。
ここでは、毎日のように魔物同士が戦っている。
この世界の常識では人間の方が強いというが実際の所、そうでもない。中には弱いながらも強者に挑んでいく猛者もいるし、そういった者達こそが真の戦士と言えるだろう。
そしてこの『闇の力場』で戦われるこのイベントに参加できる権利は限られた選ばれし者しか与えられていないのである。その戦いの激しさは、まるで戦争であると錯覚してしまうほどであるが、実際に行われているものは、その比ではないほど凄まじいものである。……それ故、その優勝者に与えられる称号を授かる栄誉を求める参加者達の気迫が凄い。だが、それは当然であるとも言える。
なぜって、その資格を得た者の次の挑戦者を決める権利を得ることができ、その者は『称号持ち』となり、更には世界の頂点である魔王と戦う権利を得ることができるからだ。この世界において、魔王を倒すという夢を叶えることはとても難しいことだからだ。そして、ここ最近では新たにその機会が与えられたのはこの『闇』という領域の中でたったの二人だけであった。
だがこの二人は既にこの世界の『最強』の座を決定させる戦いを繰り広げ、お互いを潰すために戦ってきたが、とうとう決着の時を迎えることになったのだ。この世界では珍しくもない、戦いの結果で決まった勝敗の行方……。その二人の結末を見届けようと大勢の人々がこの『闇闘技場』に集まってきていた。
彼らは皆一様にその表情に緊張の色を浮かべていた。それもそのはずである。
今まで彼らが見て来た中でここまで圧倒的な力を両者共に持った人間は今まで存在しなかったからだ。
片方の人間の戦いぶりを見ただけでも他の追随を許さない強さであることが理解できるだろう。だがもう一方の強さもまた異常であった。その力には一切の妥協がないことが分かる。つまりその男もまたこの世界に君臨するに足る実力を有していることが一目でわかるということである。
だがこの勝負の結末は既に決まっているも同然であると思われた、がそれは違った。勝者であるはずの男の体はもうボロ雑巾といっても差し支えないぐらい傷ついているのだ。一方の男は、息一つ乱れていなかったのだ。だが……両者の力は互角に見えるがその差はすでに大きくなっていたのだった。なぜなら……男が纏う『固有能力』が明らかに弱体化されていたからだ。そうしてこの戦いを制した方の勝利が決まったかと思ったその時であった。男は一瞬にして姿を消したかと思うといつの間にか少女の首を掴み地面に押し付けていたのだ。その姿からは先程までの余裕そうな面影などどこにもなく無様な姿をさらしていた……。
***
「ふぅ……なんとか勝ったけど流石は『闇の支配者・四天王筆頭代理兼黒帝将軍アティス』さんってところかなぁ……。……だけどこの人ほんとに強いんだよな。それにしても……今回はかなり危なかった。あと一歩遅かったら本当に殺されてたと思う」
そう呟いた俺の顔は今頃引きつっているだろう……。だってさっき戦った相手、この世界最強の『称号持ち』でめちゃくちゃ強かったからな。……俺はあの人が本気で攻撃してきたら一撃で倒される自信があった。俺も『固有技能』を使えば勝てるかもと思ってたんだけど、結局使わなかったからね。だって使ったところでどうなるのか全く分からんからさ……それに……『固有スキル』が弱くなっている状態では正直あまり役に立たなかったのだ。だから今回の戦いで俺が使った『スキル』は次の3つである。……そして俺はあの人に勝って得たこの力でこの世界での運命を変えることを決意したのだった。……俺は、あの人と約束したんだ……必ずあの人を生き返らせて見せると……。
そしてその日の夜、あの人は俺の前に姿を見せることはなかった。……俺はこの日、新たな決意とともに眠りについたのであった。……俺はいつも通りに目を覚ますと、この異世界での暮らしのスタートダッシュを切るためにある人物の所に挨拶に向かうことにした。……そのある人物は、この城の中にいた。だからすぐに見つかるだろうとたかを括っていたのが運の尽きだったのだ。……まさか、あんな事になるなんて思いもしなかったのだ……だから、これは仕方のないことだったのだ……。
俺が城の中庭に出るとその人の姿は見えなかったが声だけははっきりと聞こえる。……俺はとりあえず近づいてみた。そしてそこにはこの国の王様がいることに気づいた俺は思わず身を潜める。
なんとなくバレている気はする……俺は仕方なく隠れるのをやめると王様の方に歩き始めたのである。
すると王様は、俺が近づくと驚いた顔をしたが、その後で少し笑みをこぼしながらこちらに向かってくる。
俺もその姿を見て微笑む。……やはりこの人のことは嫌いになれないのだと実感させられたのだ。
俺はそのまま王の目の前に行くまで近寄ると軽く会釈をして話しかける。
「お久しぶりです。……王様。相変わらず、凄い格好ですよね……」
俺のその言葉に苦笑いを浮かべるその人は『エルファスト国王陛下』である。……ちなみに俺はまだ『勇者候補』として正式に召喚された訳ではなくただの偶然でここへ来ることができたので、その事に関して少し申し訳ない気持ちもあったのだが、俺がそんなことを考えていることはおくびにも出さずに軽い世間話をした。それから俺は早速本題に入ることにする。……この人は意外に話が分かるので俺もやりやすい。
「実はですね……俺、ちょっと旅に出てみたいんですよ」
俺はそう切り出すと王様は笑顔になって言った。
「おお、それは良い考えじゃな!……確かにそなたがいればこの国にとってこれほど心強い存在はいないであろう。……もちろんわしは賛成じゃぞ!」
そう言う王の言葉を聞いてホッとしたのも束の間……突然の爆弾発言によって俺はその日、寝込む羽目になってしまった。……あの時の出来事を思い出しながら俺は頭を抱えてしまうのである。……ああ〜〜〜……そう言えば、この世界の人間には『勇者』という概念はなかったのだった……。そのことに気がつけなかった俺がバカだった。そして俺がその事を話している間中ずっとニヤけ顔になっていたこの王様をぶん殴りたいと思ったのだった。だが、この人も一応この国の『王』なのだからそのくらいの事で殴るのは良くないよな……うん。……でもまあこの世界の人間が俺のことを知っているはずはないと思っていたので油断して普通に話しすぎた自分が悪かったのだろう。……これからはあまり軽々しくこの世界に関わっていくのは控えるべきかもしれない。……でもこの王様は、結構俺に優しくしてくれているし、この国に対して悪い印象を与えないようにしないとだよな……だからここは、この王様のためにこの世界を見て回って、いずれはこの国に戻って来ることを約束しようと思うのだった。……それで勘弁してくれるだろうか?……いやきっとこの国の王ならばわかってくれることだろう……。……この国の王はこの人しか知らないけど多分いい奴だろ?…………多分。
俺は王城から外に出ようとするとそこにいた執事長のセバスチャンさん(見た目年齢が60代後半ぐらいの渋いダンディなおじさん)に声をかけられる。
「桐島様……どちらへ行かれるのですかな?」
この城に来て日は浅いもののそれなりに会話を交わす間柄となったこの人のことは信頼していた。なので素直に行き先を告げることにする。
「いえ、その……ちょっと外の様子を見に行こうと思いまして……」
だが俺の答えを聞いた彼は眉根を寄せ怪しそうな目でこちらを見てくる。その様子は明らかに何かを疑っているような態度である。……そこでこの人が何を思ったのか分からないが急に手を差し伸べてこう言ってきた。
「それは素晴らしい! その若さと体力を持て余されているのは実に羨ましいことです。よろしければ私めがそのご指導をさせていただきたいのですが、いかがでしょう」
俺は内心、しまったと思ったがもう既に遅かった。この人はかなり強引に誘ってくるのである。この人ってかなり強引なところがあるんだよな……。そして俺は、この人を断る理由を思いつかずに、結局なし崩し的に外に出る流れになってしまったのだ。……俺の馬鹿……。
**
* * *
俺は、何故か城の外に訓練をすると言って出てきたのは良かったが、この国の兵士達に捕まりこの国の兵士の精鋭達にひたすら鍛えられていたのだ。……だが、この人たちが本気で手加減なしで相手をしてくれるお陰なのかは分からないが俺が、自分の体の限界を超えた動きができそうになってきたのも事実だった。そして俺はこの人達に教えてもらいながらも必死にこの世界を生き抜く術を学んでいったのであった。……この日、俺は『称号』を手に入れることが決定したのであった。そして俺はこの日から称号を得る為に『魔獣領域』に入り込んだ魔物を倒しまくることになる。そしてそれと並行して俺はこの世界を旅し始めるのであった……。
そして、この『勇者候補・特別推薦者・第一試験合格者』という名誉と特権を持つ者として、この世界での俺の名前は『カナデ』という名前に変わることになった。
俺は『称号』を得るという目的を果たした後、『闇闘技場』というところで俺が殺した相手を殺した『闇』の者達の頂点に立つ『闇の支配者・四魔王の一人・黒帝将軍アティス』を倒したことで俺は正式にこの国、つまりは王国・『アースガ―ルズ』に仕えることになるのであった。
* * *
* * *
*
『闇の支配者』アティスと俺との戦いの後、しばらくするとこの『闇闘技場』では今までになかった異変が起きたのだ。なんとアティスの死体が消失したのである。そしてこの『闇の力の結晶化現象』が起きてからはこの空間に『魔力の渦』が発生し始めていたのだ。そしてその魔力の『波動』は次第に強くなっていきついにその『魔力』を吸収・変換することに成功するのだった。そうして『魔力をエネルギーに変換し、物質として生成する』ことに成功した『闇の力の結晶』から『暗黒結晶』というものが誕生したのだった。
そして俺はその『暗黒結晶』を手にすることが出来たおかげで俺は『固有能力』のレベルが上がり新しい『固有能力』を獲得することに成功したのだ。この新たな『固有能力』が後に大きな出来事に繋がることになるのだが、この時の俺は全く知る由もなかったのである……。そして……この世界に存在する全ての人間達はこの『黒水晶』のことを『聖戦』と呼ぶようになるのである。……それはともかく、その後俺はアティの遺体をこの世界の神々に任せた後、王様に呼ばれ、そして王城に戻ってきた。そして王様の前で王様に言われたことがこれである。
(実は、あの日あの時の勇者召喚は間違っていたみたいなんじゃ……。あの召喚の儀式で呼んだ者はあの日あの時、あの部屋で召喚されるべき存在ではなかった。だからあの勇者は勇者ではない……だが勇者と同等以上の存在であることに変わりはないと思う……それにその力はあの勇者よりも上じゃからな。だからこそあの者の『称号』もそれに準じておったんじゃろう。あの者にあの日召喚されてしまったあの『異界の勇者』は哀れとしか言いようがないがな……だから今更元の世界に帰れるかどうかはわからなかったが一応念のためあの勇者に頼んで送還できる魔法をあの時に使ったのだ。じゃが……あの異世界から来た者はどうやら元の場所に戻ることが出来なかったようだの……。それはそうと……そなたには感謝してもしきれんわい……。この国を守ってくれた英雄であるそなたに対して……あの時この国を守ると約束してくれて嬉しかった。本当に……ありがとう……。これでわしもこの先、思い残すことなく死ねる。こんなにも素晴らしい褒美を授けてくれるとは、やはりわしの判断は正しかった!これからもよろしく頼むぞ我が盟友よ!!︎)……王様の言葉に感動しかけた俺だがその後の言葉を聞いて俺の心が急激に冷めた。この人のこのノリにはついていけないと心の底から思ったのだ。だが一応俺も笑顔を作って答える。……一応この人は王様だしね……。
(いやまあ別にいいですけどね。俺は王様に頼まれてやっただけですよ)……そんな感じに言っておけばいいかな?……いや……多分これは本当の事だろうからそう言った方がいいだろう。……この人が嘘をつくなんて考えられないからな……多分。……こうして俺は勇者候補としてではなく、正式に『アースガ―ルズ国王陛下専属兵士兼、国王護衛軍隊長・桐島和也(きりしま かずや)』となった。
そういえば俺に新しくついたこの肩書きだが……なんか俺が思っていたのと違うような気がするのは気のせいか?いや絶対に俺が想像していたものとは違ったものになっていると思うんだが……。でもまあ俺は気にしないことにした。なぜなら、もうこの世界では俺は自由に生きることができるからである。だからまあいっか。
俺が王様に挨拶をして城から出て行くと、そこにいたメイドの人から『お待ちしておりました』と言われ、王城の中の部屋に通され豪華な服に着替えさせられる。そしてそのまま城を出て王都の街中まで連れてこられた。その街はとても綺麗な街並みで王城ほどではないが、この王都の街も相当に栄えていたのである。その王城の前に来ると王城の衛兵さんに話しかけられ王城の中に入るように言われる。俺が城に入るとその門の中には王様がいた。そして俺に向かってこう言ってきた。
「これからそなたが仕える王だ。しっかりその身をもって忠誠を尽くすといい」
王様がそう言うと周りの人たちがみんなこちらを見ている。その中には、俺が最初に戦った『炎帝の使い手』や『風の使い手』などもいたのである。その人たちはこちらを見ながら王様と同じようなセリフを俺に向けて言っているが、それはもうすでに聞いた言葉だった。だから俺は適当に返事をしたのであった。……だってめんどくさいし。……そうして俺は王様に謁見の間へ案内された。俺はそこで改めて王様と対面したのだ。
そこで俺は王に対して『称号』の説明をし、この国に仕えることを了承し、そして王様は俺に対してあるお願いをしてきた。……それは『アースガ―ルズ王・国王専用武器製造師長・桐島 雅(キリシマ ミヤビ)』になると言うことである。……俺は一瞬、この世界に来て初めてこの国で『固有能力』が発動したときの事を思い出し、俺の顔は青ざめる。しかし俺はすぐに顔を引き締めてこの『称号』を受けようとしたのである。何故なら俺はこの称号を『勇者』と同じ意味で捉えていたからだ。つまりこの『称号』を持つということは、事実上、この国のトップクラスの戦士と同等の立場であると言えるわけだ。だからここでこの称号を受けることで、俺はこの国のナンバー2の位置に立つことが出来る。そうなれば、何かしらの事件があったときにこの称号を利用して動くことで、自分の身を護ることも出来ると思ったのである。それに俺は個人的にこの『称号』という物がかなり気に入ったのだ。だから、これを拒否することは有り得なかった。俺は迷わずこの『称号』を受けることに決めたのであった。……まあ元々断ることはほぼ出来ないんだけどね……。……そして王様との話が終わった後、俺は自分の家に行く前に王城の図書館に向かうことになったのであった。
俺は今現在とても困っていた……。というのもこの国・アースガ―ルズの歴史に関する本があまりにも少ない上に俺にとって全く役に立たないようなことばかりが書いてあったのである。なのでこの国に伝わっている歴史の中で俺の知りたい情報を見つける事が出来なかったのだ。そのため俺は一度城に戻って歴史書を読ませて欲しいと言ったところその願いは叶えられたが、その内容を見て俺は再びこの国が抱えている深刻な問題について知ってしまったのだった。
そう、それがこの国が抱える大きな問題だったのだ。この国・『アースガ―ルズ』は、もともと人間達が作り出した国家であり、そしてその人間は、元々は自分達こそが一番強い生物だと思い込んでいて、この世界を侵略しようとしたのだというのだ。そして他の生き物たちを殺し続けていきどんどん増えていく人類は、とうとう一つの壁に当たることになるのである。
そう……魔獣の領域である。そしてその領域に住む魔獣たちはその人間たちに恐怖を感じ取ったのだろう……次々と襲いかかり虐殺していったのだ。だがそれでも人間達は諦めず戦争を続けた。その結果人間達は負けてしまうのである。そして人間達が住んでいた領域は魔獣たちの縄張りになり、そこから人間が入ってくるのを魔獣が防いでいたのである……。つまり、ここから先はこの国の歴史書は詳しい事は分からないらしい。そして魔獣達は人間に負けたあとも魔獣領域の奥地に逃げ込んだのでそれからは平和になったということだったのだ。だから魔獣と人間の戦争が終わった理由は定かではないそうだ。ただ言えるのはこの国でその時代のことが伝わっていないことは間違いない。この国でこの国を作った者達・そして魔王について調べようとすると、それ関連の本はなぜか見つからなかったのだ。……この国は意図的に隠されている……としか言いようがないのであった。
その後、結局何も分からないまま俺は家に帰ってきてしまった。ちなみにこの世界で俺が暮らしているこの家は普通の一軒家のようだ。この世界にはマンションなどの集合住宅というものはないみたいである。その理由としてはこの世界にはダンジョンというものがないからだと思われるのだった。それとどうやらこの世界の文明はかなり発達しているようで電気の代わりに魔力を使って様々な機械を使っているようだからなのだが、それも全て魔法のおかげで実現できているという。
例えば、冷蔵庫や洗濯機といった生活家電は全て魔法を使ったものだし、その他にもエアコンやオーブン、ガスコンロのような魔法を使うと便利なものがあるが、それらは全部魔力が込められた宝石が内蔵されていて、その魔力が切れたら交換しなければいけないらしいのである。だがそんなものはあまり使わないため魔力は自然回復して、普通に使うだけなら特に消費することはないのだ。また、その魔力が込められている石は高価らしく一般人が持っているようなものは滅多に無いのだ。だから俺の家にはそれらの家電製品は存在していないのだ。……そして次の日の朝俺は昨日の件で王様に呼び出されて再び城に来ていた。そして王からこの王城の中にある『王の書庫室』を自由に使う許可が出た。この王城には色々な資料や書物が保存されていたのだがそのほとんどが禁書を指定され閲覧不可となっていた。だからこの城の中でも『王の書庫室』は一部の関係者以外には存在すら知らされていなかった場所だそうである。そんな場所に出入りできるようになったからと言っても何が出来るかは分からなかったが。まあ、でもこの『王の書庫室』がどういう風に使われていたのかを知るだけでも、俺は十分に満足だった。
そういえば今日この国にいる間は『称号』の力によって自動的に俺の体は『固有スキル』・【身体操作術】が勝手に働いて常に最適な行動をとってくれるというおまけつきの『特別任務』を与えれていることになっているのである。だが俺自身は自由に動けるようになったのである。俺は自由に動かせる体を手に入れたことで今までできなかったことも試せるようになったのである。
例えば今朝は王様の命令で訓練場に行き兵士の人達に指導をするように言われたのだ。だが俺はこの兵士達にあまりいい印象は持っていなかったので素直に従う気にはなれなかった。だがそんな時に王様から連絡が来た。
「今すぐ来い。お前が指導すれば、兵士たちの実力も格段に上がるであろう。……わしの命令じゃ!さっさと来るのじゃ!……じゃが無理に強制したりはせぬ。わしからのお願いということじゃ。……そちにとっても有益になることであろう」
そこで俺の考えが変わったのである。そういえば王様とは一応俺が勇者候補に勝った後に謁見の間で会ったっきりだったんだよな……。俺はあの時の事を思い出しながら王様の言葉を考えてみた。すると王様がなぜ俺を呼び出したのか理由が分かった気がしたのである。
(……そう言えば王様は俺に期待していたよな……それに王様は勇者に負ける俺の姿も見ているはずだ。その勇者候補よりも俺の方が弱いと判断されたとしてもおかしくはないかもしれない)俺はその事を王様に伝えた上で俺は兵士の訓練に参加することにしたのだった。
(俺が教えることによって兵士が強くなればそれはそれで良いだろうし、それに俺は『勇者』に勝つという目的を達成するために役立つことがあるかも知れない)
こうして俺は兵士の指導を行うことになったのである。だが兵士の中には俺のことを馬鹿にする者もいるし、『王の書庫』の文献を読みふけって一日を終えようとしていた。
俺の名前は『アースガ―ルズ兵士長』・【剣帝】の力を持つ兵士・エイン・ザラフォード・エル・アーガルズ。この国の王都に一番近い町『イール』にある『イール守備隊』に所属している者だ。この世界では成人は15歳からだとされているから俺はもう20歳になっていたりする。俺はこの世界で一番の兵士になるために努力を重ねて、ついに兵士の選抜試験を合格することができたのである。そして今、この『王城守護隊』の入隊式に参加していたのであった。この『王城守護隊』に入隊するためにはまず、一般兵から始めて実績を積んで隊長になれるかならないかを決める試験を受ける必要があるのだ。
俺はまだ17歳の若輩者である。だが俺にはとても夢があった。それはいつか『王城』を守る『王城近衛軍』に所属することを目標にしているからである。そして『城外衛兵部隊』に入り、いずれはこの『王城守護隊』に正式に入隊したいという野望を抱いていたのである。
この『王城守護隊』に配属させる条件というのは実は簡単だったのだ。それは『剣聖』という職業を持った者が隊長になるという条件を満たしていれば誰でも入れるというルールだったのである。つまり俺のようにまだレベル1で職業を授かる前に『剣豪』の称号を得た俺にとってはチャンスがあるのだ。この王城の守りを護るのは『騎士』やそれ相応の強さを持っている者でなければ勤まらないという暗黙のルールがあるため俺が入隊することは可能だったのである。そう、俺はその条件で見事に入隊したのだ。
俺は、この王城の警備をしながら日々の鍛練を続けていきこの日を迎えたのだ。俺がこの王城の『剣聖』として任命されたときは正直かなり驚いたが、俺は嬉しかった。『勇者』という存在が現れてからはその座を奪われてしまって、今となってはその地位を取り戻すことは難しい状況だと思っていたのだ。……だから、俺は心の中で『剣聖』を『英雄』だと勘違いしていたのだ。だが俺は『勇者』と戦う機会があってその時初めて理解させられたのである。……自分がまだまだ未熟だという事に……。俺は今『王』を護衛する役目に就いている。『王』・・・つまりこの国のトップ・『国王陛下』のことだ。
この国の『王』であるこの方こそ本当の『最強戦士・英雄』と呼ばれるに相応しい人物なのだ。だから俺なんかが憧れていい人じゃない。だから俺は俺なりの方法でこの方の力になりたいと心に誓ったのだ。この人の命を守れるように俺は強くなりたいと切実に思う。そのためにまずは今の自分の力を試すところから始めるべきだろうと思ったのだ。そしてこの王城に来たのは『特別任務』の任に就いた『王の書庫室使用権限を持つ』者の『王』の護衛を任されたのだ。その『王の書庫室』は限られた者たちにしかその存在を知らない特別な部屋であるのだ。そんな場所で何をしろと言われているかと言うと、この『アースガ―ルズ』という世界について書かれている文献や記録を探し出せというものである。そしてその文献はおそらく禁書指定を受けているものであるという推測だった。
この世界・『アースガ―ルズ』について知るには、その当時のことを記した書物を見つけ出すことが一番早いとされているのだ。そうすれば歴史を知ることが出来るのだ。そして俺にはそれが簡単に出来てしまうのだ。なぜなら俺はこの世界の歴史について書かれた本を見つけることが出来たからであった。だがその内容はどれも信じ難いものばかりだった。そして俺が読み終わったときに王様はやってきたのである。
そう、俺は王様と一緒に『特別任務の完了報告と今後の指示を受けにきたのだ。俺は『王の書を預かっている者・通称:本の管理者』という役職を与えられたのだ。そしてこの『特別任務』の『特殊事項』の欄には、
・勇者・またはその候補者に関する情報・・・・達成 となっているらしい。これはどう見ても怪しいのだが……でも、俺の【真実の目】でステータスを確認する限り本当だということが分かってしまったのだ。ちなみにこの世界の勇者が持っている称号も一緒に記載されていた。……『神から勇者として認められたもの・【真勇者】』……?なんだこのふざけた称号は……。俺はそう思いながらも『王の書庫室』で見た歴史書の内容を思い出す。それによるとどうやら、この世界の人間達には昔、この世界の『魔王』と名乗る存在がいたらしいのだ。だがその当時この世界を支配しようと企んでいた人間たちは魔王を倒すことができなかったらしい。そのため魔王はこの世界の人間たちを恐怖で縛り付け支配しようとしたのだったそうだ。
その話を聞いたとき思ったのが「そんなことするから恐れられて誰も相手にされなくなるんじゃねえのか?」と思ってしまった。俺も前世の世界にいた時に似たような経験をしたことがあるから、少しだけ気持ちは分かる気がする。俺が前世の世界で通っていた高校は進学校だったので勉強できる人間が優遇されてしまい俺は落ちこぼれになってしまったんだ。俺はそれでも諦めずに頑張ろうとしたのだが周りからは白い目で見られるようになっていたのだ。俺は結局そこから逃げてしまったのだが、もし逃げることなく頑張っていたとしても結果は変わらんかったかもしれんな。
まあそういうことで俺もこの世界の住人と同じように魔王に恐れられていたようだが……そもそも俺が召喚された理由を考えるなら、俺はこの世界に何か脅威を及ぼすようなことをしていたということになってしまうから、俺としてはそのことがどうしても気になって仕方がないのだが、そんなことを考えていてもしょうがないだろうからやめておこうと思うのだった。だが今は『神の使徒』としての使命・『【勇者】と戦えるまでに強くなってくれ』という任務を果たすことに集中しよう。俺の任務はこれからも続いていくから……! だが、そう思っていたのになんと俺は今、王から呼び出されてしまって城に来ていたのである。俺は王様に呼ばれた要件を聞いてみると、俺は今日からこの王城内に泊まるように指示を出されたのである。俺は当然断ろうと思った。こんな得体のしれない奴を信用できないのは当然だと思うからだ。だが王様の命令ということで俺の拒否権はないとはっきり言われたため渋々了承したのだ。そして俺には王様の部屋で待っていてくれと言われていたため大人しくそこで待つことにした。
(王様は俺のことを一体何だと思っているのか分からないけど一応俺は王様の命を奪おうとした男だぞ……そんな危険分子をそばに置くってのもおかしな話だろ。もしかしたら監視の意味合いがあるのかもしれないが。それに俺は勇者が怖くて逃げ出した卑怯者だって言われても反論できねえ立場だしな。それにあの『女神』が言っていた勇者の強さってどれくらいの強さなのかも正直不安になってきたなぁ……。
あの時の勇者の強さは本当に異常なほどだったし……。しかもあの『勇者』はまだ職業を手に入れていない状態だったはずなのにあんな強さを持っていたからな……。それに比べて今のこの世界の『剣聖』っていう職業のレベルの平均値は確か50レベル前後だった気がするが……。それと比べて俺は職業レベル1で平均値よりも下回ってしまっているし……レベル10ぐらいだったはずだ)俺は改めて自分が弱いと感じていたのである。俺はこの国の王である人物・王城守護隊長の『アーガルズ・エイン・ザラフォード・エル・アーガルズ』様からある『命令』を受けたのであった。それは俺をこの王城の敷地内に作った兵士の訓練場に連れていき俺が直属の兵士の指導を行うことである。
(はあっ!?いきなり俺のところに部下を向かわせてくるとかどんだけ鬼畜なんだよあいつは。こっちはさっきまで訓練をしていて疲労困ぱいの状態だというのに……いやいや文句ばっかり言ってる場合じゃねえ。この国の兵士たちが強くなれば俺にとっても都合が良いことに違いないから、とりあえず俺はその『王城近衛隊』ってのに入隊させてもらうためにこれから頑張るか…… 俺はそれからしばらく自分の能力値の測定などを行っていたのだ。その結果、俺のレベルは2になっていたのである。そして職業のレベルも4に上がっていたのであった。そしてこの王都にいる『特別職持ち』たちのデータなども確認することができたのである。この国には現在100名以上の『特別職』の者たちが存在していることが判明したのだ。
俺の場合は、『剣聖』と『騎士』、『魔道士』『僧侶』とその他諸々の職業を持つことができるみたいだが、レベルが低いので使える職業の数は5つまでだった。職業によっては習得条件というものが存在するものがあるがレベルが高いほうがより優れた能力を獲得できるのでなるべく早くレベルを上げる必要があったのだ。そしてレベル上げをする方法として最も効率の良いのが職業レベルを上昇させることなので、とにかく戦闘をして経験を積んでレベルを上げなければいけないということである。
そうすれば俺はこの国の精鋭たちと戦えることができるというわけなのだ。俺が目指すところはこの国を守ること。そのためには『王城近衛隊』に入隊しなくてはならないのでそのレベルに達する必要があるというわけである。俺はそうやって考えながら王様が来るのを待っていたのだ。
するとしばらくして王城守護隊長である王様がやってきた。そう、俺がさっきから気にかけていたのは実はこの人だったのだ。なぜならこの人こそ、俺が目指している『王』という座に相応しい存在だと俺は思っているからである。その王は俺の目の前に立つと開口一番にとんでもない提案を口にしたのである。その発言は、
・俺に王城を警備してもらう
・その代わり俺には『勇者』と戦い勝つだけの力を必ず身に着けてもらう という二つである。……え?ちょっとどういうことですか?俺はこの国の『勇者』の相手になれと言われたのか?俺に?……いや、意味がわかんねえんだけど……。王様は何を考えて俺にそのような無理難題を押し付けようとしているんだ?俺が疑問を抱いている中王様は淡々とその理由を説明を始めるのであった。その話の内容は俺にとってとても衝撃的な内容だったのだ。……まず、この王都の『勇者』として選ばれたのが俺と同年代であり性別が男であるという。
・『アースガ―ルズ』は今現在この『剣聖』が守ってきた王城以外に存在している都市はたった3か所しか存在しないというのだ。そのどれも『王』という位に就いている人間は一人だけである。その三か所は、東にある王都『エルドリスティア城』。北の王都『アーススヴァルト』。西の王城『リゼルフ城』。……という感じであるらしい。その『剣聖』とはこの王城『エルガレスト』の先代の王が決めた『剣の聖騎士』の称号のことである。『勇者』はこの称号を代々受け継いでいるらしくその実力も相当なものだと噂になっているのだ。だから俺は『王城近衛兵』という称号を手に入れたのであった。
その話から俺はさらに予想されるこの国が置かれている状況についても王様に聞いてみたのである。……俺の考えでは、この国が『魔王軍の脅威』に襲われているということから『魔王』が復活でもしたのではないかと疑っていたのだが王様はそのように考えたことは一度たりともないと断言したのだ。だが、その話を聞いて俺は納得する部分もあった。
その『勇者』の年齢についてなのだが……。この国は他国に比べて少しばかり子供が多い傾向にあるような気がしていたのだが、どうもその原因はそこにあったらしいのだ。……この世界に存在する全ての生物にはそれぞれ種族ごとに特性や弱点を持っていることが多いらしいのだ。たとえば人間にも魔法や物理攻撃に対する耐性というものがあり、『エルフ』のように弓の扱いに長けた者や、逆に『ゴブリン』のような身体能力に秀でた者も、人間には少ないがいるのだ。そういうことらしいのだ。だがそういった者達には基本的に『称号』という存在があり、この称号を持っていないものは人間には必ず一つ持っている『称号』がないという。
例えば『称号』とは・『戦士』は剣を使うものに与えられる・『魔法使い』は魔力を操り魔法を行使する者、といった具合に称号が存在を現すようなもので持っているのは珍しいが確かに存在するのだ。だが、称号を持っていても称号の効果を生かすためにはそれなりの訓練が必要で普通ならすぐには手に入らない代物らしいのだ。つまり俺の場合でいうなら俺は剣の使い方を知っているし、ある程度の魔法も使うことができるがどちらも中途半端だといえるだろう。
そんな俺を『王城近衛兵』に抜擢するというのは……いくらなんでもおかしいと思うのだが……そんなにこの世界には人材不足な状態に陥っているということなのだろうか。……俺はそう考えることにしたのである。
(俺は、その『勇者』に勝てるような力を身につけなければならないってことだよな……?ということは俺も職業を手に入れなくちゃいけないってことだ。まずは自分のステータスを見てみよう。俺の今の能力は一体どんなものになっているのかな?)そう思った俺は早速自分のステータスを確認したのだった。そしてそこに表示されている数字を確認すると……そこには驚くべき数値が表示されていたのである。
(俺のレベルって……たった1だったはずなのにどうしてこんなにレベルが高いんだよ……?それに職業のレベルまで全部1ってどうなってるんだ……?)そう思っていたら王様は俺に対してとんでもない命令を下すのであった。
それは『王城警備の件に関しては俺が直接指導する』という王様の申し出であった。その命令に俺は思わず戸惑ってしまう。だってこの人は王なのだ。そんな人を兵士の指導役に任命してしまうなど正気の沙汰とは思えない行動である。それに『勇者』が襲ってくるのが分かっているのにそんな無茶な命令は聞き入れることはできない。
俺は王様に向かってはっきりと断りを入れることにしたのだ。その返事を聞いた王様はなぜか微笑む。
そして……その言葉の意味を説明し始めたのであった…… 【第8章】新しい勇者候補たち(1)~新たな『剣聖』誕生の兆し~
俺たちが『王都のギルドマスター』と『聖女』と再会した翌日……。俺たちはついに『王都の迷宮』に挑むこととなった……。
俺たちの現在の装備だが、武器屋に新しく新調したものを装備している。防具は俺の場合は『白の甲冑(改)』『銀の軽鎧(改)』『黒の長外套(真)』である。これは全て昨日の夜に『鍛冶屋・鉄人』が作ってくれたものばかりである。防具の方は全て『王級品』で作られておりその防御力はかなり高いものとなっている。『鍛冶師・職人の神童』の称号スキルのおかげでかなり良い仕上がりとなっていた。俺の防具はこの世界において最高クラスの出来上がりとなっており他の冒険者からの注目度が凄かった……。
『剣聖』が使うに相応しい装備品として注目されているからだ。
また防具だけではなく、その他の道具や食料などなどの準備を念入りに行った。俺以外の全員の分の道具や食事などを『収納ボックス』に入れ、それをアイテムバックの中に入れてから出発することにしていた。ちなみにこの世界のアイテムバッグという魔導具は結構高額であるため、ほとんどの冒険者はこういった方法で必要な物資を運ぶのだ。ちなみにこの世界での冒険者の主な活動場所としては・街から街への旅のルート上にあるダンジョンの制覇と、その周辺に出現する『フィールド・ボス』と呼ばれる魔物の撃破、及び討伐である。
他には・遺跡探索や洞窟内の鉱石の採掘などがある。……他にも様々な職業が存在しているようだ。
「いよいよですね!タクミさん!!」
俺の腕にくっつきっぱなしのリリィが嬉しそうに俺に話しかけてくる。俺は苦笑いを浮かべると、
「ああ、そうだな」と短く答えてからリリスに声をかけた。
「リリスもしっかり頑張れよ?」
リリスは緊張気味にコクリと首を振った。リリスはまだこの王都の『聖樹騎士団』の見習いであり、今回の試験に参加するのは初めてのことであった。
リリスは見た目は大人っぽい少女なのだが実は15歳でまだまだ経験が足りず実戦での戦いの経験がない。そこでリリスは王都にある『エルフェンティーナ聖樹王国』直属の『王城守護騎士隊』の入団を希望しているらしくその訓練に参加しているのだ。その目的は……自分の実力を磨いて、将来は騎士となり『王城聖樹城』を守る騎士となることであるらしい。
その騎士を目指す理由は・『聖樹城』に住む人たちを守りたい。・この世界を救おうとしている王様のお手伝いがしたい。というものらしい。そのためにもまずは自分自身を鍛えておきたいとのことで今回初めて王城の外に出ることになったのである。この王城は『聖獣王エルガレスト』が守っていた王城『エルガレスト城』を改築して造られているのである。そのため王城の敷地はかなり広くなっているのだ。その敷地には王都に暮らす一般市民が自由に出入りすることができる。王都内の店や住宅、施設も利用することが可能であるのだ。ただし入場料を支払わなければならないのである。
「う、うん。でも、私は戦うことがまだ苦手で……」
リリスはそう言って俯いた。俺は優しく声をかける。
「心配ないさ。リリスも頑張っていればそのうち慣れていくさ」俺はそう言いながら、 リリスの頭をポンッと叩いた。
その感触がとても柔らかく心地よくてずっと撫でていたくなる気持ちになる。その感覚に浸りつつもなんとか理性で踏みとどまった。リリスは恥ずかしそうに頬を赤らめながら小さくコクりと首を縦に振った。
「そ、それで今日行く王都の迷宮というのは……王城のすぐそばに存在するらしいんだが、その場所まではどうやっていくつもりなんだ?確か『エルドリスの森』というところを通って王都まで来たんだったか……それだとまた同じように魔物が出てくると思うんだけど……」と俺が質問した。するとそれに対してリリスではなく、『剣聖』である王様が返答をしてくれる。……王様は基本的に俺たちのことを名前では呼ばず、『剣士様』とか、『お館様』などと俺の呼び方を変えてくれるのだ。まぁ……それはいいのだが……。俺も王様に様付けで呼ばれたときは、ちょっと落ち着かない感じになっていた。王様もそんな感じの俺の雰囲気を感じ取ったのか、『剣士様』と呼ぶように変えてくれたのだった。
「その点については問題はないですよ。私も今回は王都まで同行させていただくつもりでしたから。……もちろん私の力が必要になることはほとんど無いと思いますが。一応は念のためですので……」と笑顔で言う王様。
その王様の言葉に俺は、心の中で
(王様が王都を出るってこと!?そんなことしていいのかな……。それに王様を危険な目に合わせるなんてできないし……)
そんな風に考えていたのだ。
俺の心の中を王様は読んでいるはずだが、そのことについては何も言わなかった。
そして、王様のその言葉で『王城聖騎士隊』の副隊長である女性騎士が口を開いた。その女性は『アリエスティア・フォン・ファムニルト・ルミナリア・アースガルズ』という名前である。年齢は20代後半ぐらいで、金髪で碧眼の美女だ。彼女は王様が幼い時から付き従っている『剣姫』である。そんな彼女の容姿を見た時俺は、どこかで見たような覚えがある気がしたのだ。だが……そのことは深く考えずにその記憶を忘れてしまう。なぜなら……この国には珍しい銀髪の少女がいたのだ。しかもその子の見た目はリリィと同じくらい幼くて10歳前後の子供に見えるのである。だがその子の耳は長く尖っていて、エルフの特徴が表れていることから彼女がエルフであるということはすぐにわかった。そのエルフの子も俺たちに付いてきていたのだ。名前は『アリア・アルベルティーナ』という名前で、王様の姪にあたるらしいのだ。そのことから、王様はこの子を『王城近衛兵』として採用し連れてきたのである。
そんな二人を俺たちは見比べる。
そのエルフは、身長130cm程度で、胸の大きさも、背丈に比べて控えめに感じる。そして、その見た目からは考えられないほどの力の持ち主であるということを知っているのでその可愛さに思わず手を出しそうになる衝動に駆られる。その子は今現在…… 俺の腰にしがみついて離れようとしないのである。
(……どうしてこんなことに……。どうして俺が『聖剣』を手に入れたという情報をどこから仕入れたのか知らないけど……。どうして俺についてくるんだよぉ〜。俺……この子と会ったこともないんだよ……?俺の『鑑定』スキルが反応していないんだよ。それにこんな小さい子に『剣聖』の称号を持つこの俺が勝てるはずもないんだよなぁ……。……でも王様の命令だから断ることができない。王様がこの子を引き取って育てているみたいだし、それを俺が邪魔をするわけにもいかないしな……はぁ……)
俺は、王様に対して視線を送ると、その意図を読み取った王様は、微笑みを浮かべたまま黙って小さく首を横に振ったのである。どうやら、王様としても、引き取ることを決めたようである。……つまり……俺にはどうすることもできなかったということだ。……はぁ……本当にどうしよう。
俺は深いため息をつくと、俺の膝の上に座らせて後ろから抱きしめるようにしてあげていたリリィが、俺の顔を見て何かを訴えかけていることに気づいた。俺は首を傾げつつ問いかけた。
「リリィ。一体何が伝えたいんだ?」と。するとリリィは……
「あのね……。あそこにいる女の子も一緒に連れて行って欲しいの!」と言ってリリィはその『エルフの女の子』に指をさす。
その光景を眺めていた周りの人達が一斉にリリィの方に視線を向ける。リリィに言われた女の子は、リリィを見上げて「なんじゃと?」と一言漏らすとそのままリリィの前まで歩いてきて話しかけた。
「妾に何をさせようとしているのじゃ。このちびっ子が……。お前も『剣聖』と一緒に迷宮に入るために王都に来たんではないのかや……。」
その女の子は見た目の割に口調が古風であった。その言葉を聞いたリリィは……少しだけイラっとしたようで……その表情の変化に気付いた王様とリリスはすぐにリリィの前に立つと両手を広げた。その動きに合わせて俺は反射的に二人の前に出たのである。
二人は「大丈夫です」と言った様子でこちらを振り向いたので、俺もゆっくりとうなずいたのである。
するとその様子を見届けてからその女の子は再びリリィの方を向いて話を続けるのだった。
「妾を甘く見てもらってはいかんぞ!小娘!貴様のような子供が冒険者になどなれるものか!そんなこともわからないとは、まだ子供な証拠なのではないか!のう?」……その女の子の言葉を聞いてリリイがピクッと眉を動かしたのが分かったのだ。そしてその後すぐに『剣聖』がリリィに向かって……
「リリス!リリス!抑えろ!!相手は『剣聖』なのだ!!」と叫ぶ。しかし……遅かった……。『リリィ』と呼ばれたその小さな『聖樹騎士団見習い剣士』の体の周りに膨大な魔力が集まり始めたのだ。
その異変に気づいた王様が慌ててリリィの前に出てリリスを守るように腕を広げると……
「このお方を誰だと思っているのですかっ!!」……王様の怒鳴り声と同時にリリスは王様に背中を押された形で『リリィ』のところに突進していった。
「ちょ、ちょっと!え?う、うわーっ!?」……突然目の前に飛び込んできたリリスをリリィは抱きかかえるようにして支えるのだった。そのリリスはリリィの首筋に手刀を叩き込むとその衝撃でリリィはそのまま意識を失ってしまった。
それを確認した『剣聖』は安堵の笑みを漏らしたのだった。俺はその瞬間……自分の体に力がみなぎってくるのを感じた。そして同時に頭の中に響くアナウンスが……。
<固有スキル……『絶対領域』『無限回復力』『全属性魔法適正』『神速』を獲得しました>……俺の脳内でそう響いた。そして次の瞬間俺の体は勝手に動いていたのだ。俺の体が勝手に動いている間に俺は、その体の主導権が奪われていることに気づくがもう遅かったのだ。……俺は、気がつくと『エルフの女の子』の手を引いていたのである。
そしてその光景を見た王様たちは、驚き固まってしまった。なぜなら王様の姪でもあるエルフの少女が、先ほどまで会話をしていた『剣士さま(仮)』にいきなり手を引かれていたからだ。
その状況に『王城近衛兵』達は、即座に武器を抜こうとしたのだが、その行動を止めた人物がいた。王様その人である。その王様に制止されれば誰も動けない。そのためその空間に一瞬の静寂が生まれたのだった。そしてその隙に俺の姿を見た他の人々は一斉にその場から離れようとする。だが俺は……すでに動いてしまっており、リリスを抱えたままの『剣聖』の横を通り過ぎると『エルフの少女』を抱きかかえていたのだ……。
俺はそのまま出口へと向かう……そして部屋を出た後に俺は立ち止まると…… リリスを抱いたまま、エルフの子を下ろすとリリィと同じように首の後ろにチョップを入れるとエルフの子もまたその場に倒れたのだ……。…………………… そんな騒動が起こっている間、王様と『アリエスティア・フォン・ファムニルト・ルミナリア・アースガルズ』さん。それからその側近の二人。王様の側近は三人がいてその全員が王様と同じく『王都の聖騎士隊』に所属し、それぞれ役職についている人たちで『副隊長』を務めているらしい。……この人は『アリエスティア・フォン・ファムニルト・ルミナリア・アースガルズ』さんより一つ年上の24歳で名前は……『アリエスタ』だそうだ。
この人も金髪の美人でスタイルもとても良く、その髪は肩ぐらいの長さで、ウェーブのかかった髪でお尻の辺りまで伸びているロングヘアーである。この人の役職もやはり『王城近衛兵』で、『アリエスティア・フォン・ファムニルト・ルミナリア・アースガルズ』さんの直属の部下にあたるらしい。……つまり『剣聖』と同じだ。……そのことから、この国の騎士団の中でこの二人が特に強いことが伺えたのだ。……もう一人の『剣聖』の名前は『アリス』という名前の女性である。年齢は18歳の俺と同年代である。その見た目はとても幼く、身長は120cm程度で年齢は10歳ぐらいに見える美少女だが、見た目に似合わない大人びた口調の女の子で見た目に反して中身はかなり子供っぽいところがある。髪の色は銀色で腰のあたりまでの長さで毛先が外巻きになっているのだ。そんな見た目の割には力持ちの女の子だ……。見た目の割にはね……。この子はなぜか……俺の後についてきた……。その理由については全く心当たりがなかった……。
そんな感じで『剣姫』と『エルフの騎士』の女の子を引き連れる形で俺とリリィは『聖都グランツバッハ』を出発したのである。そんな時だった……『エルフの剣士』が、俺たちを追いかけてくる姿が目に入った。俺は、そんな姿を見てため息をつくのだった。そして、その光景を見て……
(もしかして俺ってとんでもない人に喧嘩を売っちゃったんじゃないか?これ……?今さらになって後悔してきたよ……本当に。……うぅ……どうすればいいんだよ……。でも王様の命令だから断れないし……。……仕方がない……ここは、リリィを守れるくらいの力を手に入れないと!!よし……頑張るぞ!!!)……そう心に誓ったのである。
俺が決意を新たにしていると後ろの方から『聖都グランドハザート王都守護隊 第二大隊所属 アルフォード=アフィラス 二等位神官 17歳』という声とともに、その女の子が追いついてきていて話しかけてきた。
「待ってください。貴方は本当に『剣姫』なのですか?私は信じられません!」……その言葉を聞いたリリィは……
「はぁ……。」
ため息をつきながら振り返ると、その子の顔を見て再び深い溜息をついた。
その表情をみたその女の子が……
「も、申し訳ありません!!そ、その『剣聖』様には失礼な態度をとってしまいまして……。どうか私を許……」と言い終わる前にリリィの右手から凄まじい勢いの水柱が立ち昇った。そしてそのまま女の子にぶち当たったのであった。
その水を浴びた女の子は「ひゃああああっ!?なにをするのですっ!!?」と叫び……リリィの方に目をやった。そして次の瞬間、その瞳に驚愕の色を浮かべて固まった。
なぜならそこには……今まで見慣れていた『剣聖』の面影を微塵も残していない……まるで別人格のように変わっていたからだ。その変化は、先ほどとは比較にならないほどの魔力が彼女の体の周りに渦巻いているのを感じ取れるほどだったのだ。
リリィの外見的な変化といえばその髪型だろう。ポニーテールの髪が解かれ、長い髪が全て後ろに流れているのと……着ている巫女装束が真っ黒になっていた。それに肌の色が白く透き通っている。まさに日本人とはまったく異なる見た目となっていた。
俺はその光景を見ながら思わず「うわ……別人になったみたい……。」……と呟いていた。……だってあのリリィがこんなに変わるなんて……誰が想像できるんだよって……。
すると『リリィ』は……『エルフ』の女の子に顔を向けたまま、少し恥ずかしそうに微笑むのだった。そして「さっき言ったでしょう?私はリリィです。」と言った。その言葉を聞いて……
「も……申し訳ありませんでした。まさかリリィ様だとはつゆ知らず……。大変な無礼をしてしまいました……。どうか私の命をもって罪を償いますので、せめてもの御慈悲をいただけないでしょうか……。お願いいたします!!」と言って……その少女はその場で地面に膝を付き頭を深く下げ、額も地面にあてて必死に懇願するのだった。……そしてその様子を見た俺とリリィは困っていたのだ。リリィも同じような経験があったのか、すごく嫌そうな顔で……
「はぁ……わかりました……。今回だけは見逃してあげます。今後は二度としないで下さいね?」と告げ、その言葉を待っていたかのように、その『エルフ』の少女はその美しい顔を輝かせるのであった。……そしてその『エルフ』の少女はすぐにリリィの前でひざまずいたまま深々とお辞儀をして感謝の言葉を述べた後、俺に向かって話しかけた。それは……この場で初めての会話でもあった。
「お名前を聞かせていただいてもよろしいですか?」
「え?えーっと……『リリィ』ですけど……どうしてですか?」
俺がそういうと……そのエルフの女の子は笑顔で……
「ありがとうございます!お名前を教えていただけるなんて光栄で……とても嬉しいことです!『聖女リリィ様』は……その、お友達になりたいと思う人の名前を聞くことはございません!それだけで幸せなんです!それで、その……『リリィ』ちゃん?は……その『聖樹の森』の出身なのかな?もしかしたら私の家の近くかもしれないのだけれども……。」
と興奮気味で早口で喋りだすのだった。俺は『リリィ』が『エルフの王女』だということを伝えたが……全然信じてくれなかった。俺が「本当なんだが……」と呟くように伝えるとやっと分かってくれたようだが、その時には俺はもうその話に興味を失っていた。その話が『聖都グランツバッハ』の近くにあるということだけがわかったからだ。俺は『リリィ』とこの『聖騎士隊』に所属しているこの子を連れて『王都』に戻ることにしたのだった。
(なんか変なことに巻き込んでしまったが仕方がないか……。でもこの子とは今後とも会う機会があるかもだし仲良くなれればいいかな……。俺にはリリィを守る力がいるから協力してくれればとても助かるのだが……無理に巻き込むのも良くないし……今回は諦めよう……。)と思っていたのである。…………そして現在……。俺は……『剣聖』こと……『剣聖 アルフォード=アフィラス』と共に、王城に戻って来ていた。その王城の中には『聖騎士団』と呼ばれている騎士団があって、その中の第二大隊長を務めている女性らしい。この人の名前は『アリスティア・フォン・ファムニルト・ルミナリア・アースガルズ 第一皇女 15歳』らしい。
金髪の美人さんだが見た目は15歳には見えない程大人びており……なんと!胸が大きい!!身長も170センチぐらいあってスタイルもかなり良かった……。
この人がこの国の『王都グランドハザート』の第二皇女であり、『王城近衛兵 第二大隊 隊長兼第1小隊小隊長』なのだそうだ。年齢は『聖騎士』の中で一番若いらしいが実力はこの中で最強らしい。『聖騎士隊』の中ではこの人だけ役職を持っているとのことで、他の『聖騎士』さんは皆役職無しでこの人は唯一役職を持ってるんだそうだ。この人の武器はレイピアと双剣を使うらしくて……二つ名は『閃光剣姫』と言うんだそうだ。……二つ名がとてもかっこいいと思った。そのせいでこの人を見る目が若干変わり始めたような気がした。
この人も『剣聖』のことをずっと『剣姫』と呼び続けてたんだけど……本人に何度も否定されてしまい……最終的には本人が……
「リリィでいいですよ。みんなそう呼びますし。……というより私が『剣姫』と呼ばれるのが嫌なのは……そうですね。この格好を見られると恥ずかしいからなんですよ。できればあまり言わないで欲しいのです。だから私を『剣姫』と呼ぶならリリィで良いですよ?」……と言って『剣姫』の了承を得ることができたのである。この人に会えただけでもここに戻ってきた価値があったというものだ。俺の気分はかなり良くなっていたのである。……そんな感じでこの日、俺とリリィとこの二人を引き合わせた。俺が王都に来た時以来久しぶりに再会した『剣姫 リリィ』だった。俺とリリィとアリスティアは『剣姫 リリィ』が手配していた馬車で帰ることにした。そしてその道中で俺とリリィは話をしたのである。その話の話題の中心はもちろん俺の異世界転移についての話だったのだ。俺の話を聞いた『リリィ』はとても驚いた顔をしていたが、同時に嬉しそうにも見えた。その反応が俺は気になって「どうして喜んでるんですか?もしかして知り合いの転生者だったとか……?」と聞いたのだが、首を横に振って違うと答えた後にその理由を告げたのである。
「私は貴方と同じ世界から来た人間です。貴方とは面識はないのですが『リリィ様』は知っていましたので、もしやと思って尋ねたところ正解だったので驚きました。しかも同じ学校の生徒だというではないですか!!これは偶然ではありません!!神様のお導きに違いありませんよ!」……その答えを聞いた時にリリィの顔は少し複雑そうな表情をしていた。俺はその様子に気づくことはなかった。
その後リリィとアリスティアと色々な話をしながら馬車を走らせていたのであった。そしてようやく王宮にたどり着いた俺とリリィと『剣姫』は『王都』に戻ったのだった。ちなみに帰り際に……
「あの、リリィちゃん……私に剣を習わせてください!!」と言って来た『エルフ』の子がいたのは言うまでもない。……どうなるんだろ?この子?
―――時は『神聖国 聖教国家 王都 聖教会本部』……教皇の間での出来事から遡ること数日前……。
『王都 王城』のとある部屋にて……。そこにいる二人の女性は真剣な眼差しで水晶に写っている映像を凝視していた……。片方の女が口を開く。彼女は『聖騎士隊 第三大隊長 ミリアム』という名前の人物である。
そして、その彼女に向けて話し掛けているもう一人の女性が『聖騎士隊 第二大隊長 アリスティア』という女性だ。彼女の年齢は『聖女 リリィ』と同じく15歳でこの『グランドル王国』の第一皇女である。
この部屋に居る二人はそれぞれ別の任務に就いていたが、つい先ほど合流したばかりであった。お互いの得た情報を共有し合い、今後の対策を話し合うためである。そんな中……先に口を開いたのはアリスティアだった。その内容は、ここ最近『剣聖』の身に起き始めている異変についての報告だった。
「……以上が報告の内容となります。そして最後に……。『聖女 リリィ様』との面会が無事に終了し……王都にお連れする運びになりました。」と報告を終えた後、少しの間沈黙が流れた……。それを壊したのはやはり『ミリアム』の方だった。その口調は少し重たい感じだったが……。
「そう……。あの子が無事でよかったわ……。」と安堵のため息をつくように話すのであった。そして次に口を開いて「あの子は元気でやっていたのかしら?あちらの世界での生活のほうは……。」……と呟いた後、「『リリィ』は『聖樹の森』の出身です。ですのであの子との面会は可能ですが……。今はそれよりも……。」……と『聖騎士』である彼女にしては珍しく言葉を濁しているのを見て……。「……もしかして……まだ何もわからないままなの?」と尋ね、その問いに対して『ミリアム』が首肯したことで……。またしばらく沈黙が続いた……。その長い静寂の中、再び言葉を発したのは『アリスティア』だった。その声色は悲壮感に満ちていて……今にも泣き出しそうなくらいの悲しみが伝わってくるようであった。「もう嫌……。一体なんでこうなるの?私の家族だけじゃなくて……『剣姫』も『聖樹の森』も、皆どうしてあんな目に合わなければならないの?どうしてこんなことが起きるの?ねぇ……。教えて欲しいの……。どうしてこんなことが……。どうして私たちの身近な人たちが苦しまないといけないのよ!……『神 バロール』様……。私たちは何か間違ってしまったのでしょうか? なぜこの世界に来てはいけない存在を呼び覚まして…… さらにその『邪神 イビルロード』までも呼び出してしまったのでしょう?本当に……。何のためにこの世界を創造したというのですか? この世界には……『神 バロール』様しかいないはずなのに……。
何故このようなことになるのですか?……。」
その問いかけに対する回答は……誰も持ち合わせていないものだった。ただ……その質問をしたアリスティア自身もその答えを知り得ていないことも事実だった。その答えを知ることができるのはこの場には存在しなかったのだ。そして、その『神聖王都グランハザート』で一人の男が『邪神 イビルロード』に戦いを挑んでいた頃……。『グランドハザート』の外れにある洞窟の奥底で『聖魔石』と呼ばれる特殊な石を採掘していた男がいるのだった……。彼は自分の名を名乗った後に、『聖騎士隊』のメンバーであることを明かすのだった。彼の名前は『ロイド』といい……歳はまだ若く25歳だったが既に30人以上の部下を抱え、更にこの『聖騎士団』の中でも最強と言われている『剣聖』ことアルフォード=アフィラスの弟子として剣の腕を高めてきた人物でもあった。彼の剣の才能は非凡であり、師であるアルフォードも才能を認めていたほどである。その彼でもアルフォードが認める『聖騎士団』の中では二番目に腕が立つとのことだった。彼が持つ『聖騎士団』の中では『剣姫』と呼ばれている第一王女アリスティアがアルフォードと親しい関係であるということは、『ロイド』はアリスティアから聞いて知っているのであった。そのこともあって『ロイド』もアリスティアと顔見知りの仲ではあった。その『ロイド』は、今回の仕事の件を受けて、『グランドハザート』に戻ることになっていたのだった。そこで、『聖騎士 第二大隊長 剣姫』である『リリィ』と出会うことになっていく。
その日、『グランドハザート』で事件が起きる前の日、彼らはある依頼を完了させるために、その依頼を受けたギルドに向かって、仕事をしていたのだが、たまたま通り掛かった時にこの洞窟を発見し、その中を調べた結果……。奥から邪悪な魔力が溢れ出しているのを感じ取った『ロイド』と部下たちはその発生源を探るため洞窟の調査を開始した。そしてついに発見したのだが……『聖騎士 剣姫 リリィ』がその邪気に充てられ、気を失って倒れてしまう。そして、その邪気の出所を突き止めるためにこの『聖騎士 リリィ』を抱き抱えたまま調査を続けていた時……突如洞窟内から強烈な閃光が発生し、同時に爆発音が響き渡ったのである。その直後に……何者かによる襲撃が始まったのである。『ロイド』達は必死になって戦ったが敵の数があまりにも多く、徐々に劣勢に追い込まれてしまい全滅寸前まで追い込まれた。そんな時に……謎の集団が現れ助けてくれた。それがのちにこの世界で伝説となって語り継がれることになる『白銀の剣士 リオンズテイル社』だったのである。その『白銀』が彼らの命を助けてその場から去って行った。その後『ロイド』達は、意識を取り戻した『リリィ』と話をし、その日はそのまま別れた。その翌日、昨日起こった出来事を話し合うことになった。だが『リリィ』の様子がおかしくなったのである。そしてその話の内容とは……。
「その……。私がこの世界で目が覚めたのが、その日なのです。その日に見た光景は今でも鮮明に覚えています。その景色はとても幻想的で、そして……その空を覆い尽くす程の巨体を持つドラゴン達と……。とても美しかったんです……。だから……その……私……あの竜たちと戦いたいんです!!あの美しい姿をもう一度見てみたい!!……その気持ちを抑えることができませんでした。そしてその次の日から『冒険者』になるために『王都』に行こうと思いました。それで、その道中で偶然にもあなたと出会ったんです……。その時私は……。『ロイドさん』って素敵な男性だな……。って思いました。そして……私の『心の声』も……貴方と一緒に行動するように促してきたのです。私は……その指示に従い、同行することにしました。そして、今日に至りました。」と……。その話を聞きながら『リリィ』はどこか辛そうな表情を浮かべていた。その話の中に……どうしても聞き流せない内容が混ざっていたからだ。
(えっ!?……待って!!その『ロイド』っていう名前……まさか……。いや、そんな……ありえない……。……だけど……。)
(その話の内容だと……。あの人……やっぱり……。うぅ……。)……『聖女』と『聖騎士団』の隊長二人の話は終わりを告げようとしていた。そして最後に『リリィ』の方から『ミリアム』に尋ねる。それは……。「あ……あの……、そろそろ……『聖樹の森』に戻らないとダメなんじゃないかな……と思って。あの人達がきっと心配してるだろうから……。あの……お願いがあるんだけど……。いいかな?『聖騎士 第三大隊長 リリィ』」と少し躊躇いながら尋ねたのだ。
すると……「あっ……、そうね……。私もそろそろ……。『聖騎士隊』が戻って来ないと……。あの子が……。……うん……。……ごめんなさい……。本当はすぐにでも……。」……と、最後は消え入りそうなくらい小さな声で呟いたのである。そして、しばらく黙り込んだ後に……「そういえば……貴女の名前は確か……アリスティアよね?」と確認したのだ。それに答えたのは『ミリアム』の方だった。
彼女の本名は『聖女アリシヤ=アルストロメリア』であり『剣姫』と呼ばれている第二皇女であった。『ロイド』や彼女を含めた三人で行動を共にしていたのだが、途中別行動を取ったことがあったのだ……。そしてその際に……。彼女は攫われた。それを知った二人は全力を挙げて捜索を行った。その結果、無事救出することが出来たが……。その過程で仲間の一人を失い……『リリィ』自身も重症を負ってしまう事態にまで陥ってしまったのだ。そのことをアリスティアに尋ねているのである。それに対して『リリィ』は、申し訳なさそうな顔をした後、「そのことは大丈夫だよ。今はこうして元気で生きているから……。」と答えたのである。『リリィ』の言葉を聞いて『ミリアム』がホッと安堵のため息をつくと、「良かった……。あの出来事があった後、みんなバラバラになっちゃったけど……。今はどうしているんだろう?」……と呟いたのだ。その質問に対して、『リリィ』も『ミリアム』と同様に安堵のため息をつく。その反応を見て……アリスティアが口を開く。
「……もしかして……みんなに会えたの?よかった……。みんなは無事に保護できたの?」……とその質問に、『ミリアム』は首を横に振ることで答えたのである。その仕草を見たアリスティアの顔が青ざめていく。
「じゃ……じゃあ……、まさか……。もう……」と言うので、『ミリアム』が「ううん……。実は……全員無事に救えるかもしれない手段を手に入れたんだよ。まだ完全に成功したわけじゃないんだけど……。これから、試すところだったの。」と言った瞬間、『ミリアム』は何かを覚悟するような真剣な表情になり、『聖騎士団』のメンバー達に振り返ると……そこには、部下の一人である『剣鬼 剣神』の異名を持つ男がいた。その男が前に出て来て剣を抜き放った直後、刀身が激しく発光し始めると……。それと同時に男の体に異変が起こり始めた。その姿はもはや人間と呼べるものではなくなり始めていたのである。
その姿を見ても誰も驚くことはなかったのである。
むしろ納得してしまったのだ……。
そして、変化が終わると、その姿はまさに剣神と呼ばれるにふさわしい風貌となっていたのだ。
全身が白銀の鎧で覆われており手には長柄武器であるハルバードを持っているがその外見は明らかに人とは大きく異なっていた。
背中には大きな両翼を持ち腰の後ろ辺りからは先端部分が蛇になっている尻尾が生えていてまるで……『聖騎士隊』のメンバーが所持している大剣『天叢雲剣』から召喚されたとされる『草薙の狼』を連想させる姿だったのだ。その男は剣を構えてからアリスティアに向かって言う。
「お初に御目にかかります。姫様。この度は、このような無礼をお許し下さい。そしてどうか我々と共に『グランドハザート』に帰還するために力を貸して欲しいのです。我々だけでは……敵う相手ではない。姫様の力が必要なんです。……姫様。我々は……姫様を絶対に死なせるようなことは致しません!ですので、我々に力を……。どうか……。姫様の大切な方々を……そして『聖騎士団』を守るためにも……どうか!!」と言い放つと、今度は剣先を地面に向けて片膝をつき頭を深く下げたのである。その言葉を聞いたアリスティアも決意を決めたのか……「わかったわ。貴方達の気持ちはよくわかりました。必ず成功させて見せましょう!」と力強く宣言したのである。その様子を見て、『剣神』が立ち上がると剣を構えると再び輝きを放ち……その姿が一瞬にして変化する。その姿を見て……その場にいる全員が驚いたのである。なんと……剣の勇者と剣聖は同時に姿を変えた。しかも二人とも……伝説の聖剣の所有者となったのである。そして、二人が持っているのは……。
『魔石 白き聖騎士の聖剣』という聖騎士が持つ聖剣の中でも最高位に位置する物であった。だが……。それだけではこの剣を真の姿にすることは出来なかった。そこで……。『剣姫 リリィ』が……あることを提案する。
その提案というのは……。その聖石を二つに分割して……片方を『リリィ』が使い、そしてもう片方を『ロイド』に渡そうとしたのだ。だが、その申し出を断ったのである。そして……。ロイドの身体を覆っている鎧に変化が生じたのだった。その色は白銀ではなく黄金に輝く眩い光を放ったのだ。更に剣にも大きな変化が起き、白銀だったはずの刀身に黄金の紋様に彩られていき……。その剣も金色に変わっていったのである。それを見つめていた『リリィ』が感嘆とした様子で呟く。
「ああ……。やっぱりそうなったのね……。その『聖樹の森』にあった巨大な魔力溜まりの中心核が……。貴女のお姉さんの遺体だったのよ。」その話を聞いた『ロイド』達は衝撃を受け……絶句する。『ロイド』も『ミリアム』も『リリィ』でさえ……。その話は知らなかったのである。
だが、アリスティアはその事実を知っていても特に驚かなかった。何故なら、既に知っていたからだ。アリスティア達は『ロイド』達と出会う前に一度ここに訪れて調査をしていた。その時にこの場所の奥に倒れて絶命していた人物の遺体を発見している。その遺体が誰なのかまでは知らないが、おそらくは……ロイドの肉親だろうとは推測できていたが……、まさかロイド本人だなどとは思っていなかったのである。
そして、アリスティアは続けて言う。「『リリィ』、そして『ミリアム』。私もこの儀式に参加させてもらうことにします。私も……。皆と一緒に行きたい!!だからお願い。私も一緒に連れていって!!あの竜たちと戦う為に!!そして……あの人を助けるために!!」と……。
「あの人……?助ける……?」その話を聞いて、思わず『ミリアム』が呟いた。すると……。その疑問に対する答えがアリスティアから告げられたのである。
アリスティアの姉が瀕死の重傷を負った原因が判明した。『リリィ』が見つけた魔力溜まりの中心部にある棺の中にあった遺体はアリスティアの兄であった。つまりアリスティアの双子の兄である『第一皇子 ジークフリード=フォン=ハーフェン=アルスター=ラクスティア=アルストロメリア』だったのである。そして、この『アルストメリア王国』において最も優れた聖剣『魔剣グラムス』の持ち主であり、『魔王』を討伐したとされる勇者でもある人物であった。
そして、この国にはもう一つ別の顔があった。それは、アリスティアの父『国王 アルフレッド=アルストロメリア』こそが、『聖騎士団』を率いる『剣聖』であり『英雄王』と呼ばれた人物であることだ。そして……。この二人はとても仲が良かったと言われている。それ故に、その事実を知る者達にとっては『聖騎士団』の面々と共に、アリスティア達が生きていて欲しかったと切実に願う存在なのだ。だが……。その願いとは裏腹に、今、アリスティアの双肩に重い責任が課せられようとしていた。
そして、アリスティアは二人のことを心から信頼していて二人のことが大好きだったのだ。だからこそ……彼女達を見殺しに出来なかったのだ。
「お願い。あの人の為に私は戦う!!例え……命を捨てることになったとしても構わない。」そう言って『聖女』は再び聖女としての顔に戻ったのだ。『ロイド』、『ミリアム』がお互いにアイコンタクトを交わした後、『ロイド』が一歩進み出て口を開く。そして、聖女の前に立つとその手を取り、優しく語り掛けるように言ったのだ。
「安心していい……。君は必ず俺が守る……。俺の命に代えてでもな。そして……『リリィ』と『ミリアム』。この儀式の成功は、アリスティア様にとって最後の希望になるんだろう。」
『ミリアム』が答える。「ええ、そうなの。それにね。その儀式を行う為の触媒を用意したの。」と……。その話を聞いていた『リリィ』が『ミリアム』に対して聞く。「どんなのを使ったんだ?」と……。その質問に対して『ミリアム』が説明すると、『リリィ』は顔をしかめるが……仕方がないと言った表情をして、「わかった。だけど……無理だけはしないで……」と『ミリアム』の身体を心配しているのがよくわかる口調で言うと、『ミリアム』が笑顔で答える。
「大丈夫だよ。これぐらい平気だって……。『リリィ』は相変わらず心配性なんだから……。本当に大丈夫だよ。」と言って笑う。『ミリアム』はいつも明るく振舞っていたのだ。だが……この時だけ見せた彼女の本当の姿を三人の勇者たちは見抜いていたのである。本当は不安で仕方がないことや……。自分がこれから行おうとしていることに迷いを持っているということを。
「うん……。そうだよね。うん。わかったよ。私がみんなを守るよ!」と『剣姫リリス』は微笑みながら言ったのであった。
「じゃあ始めるね……。準備はいいわね?」と言うと『剣姫リリス』が地面に両手をつけて何か呪文のような言葉を唱え始めると、辺り一面に凄まじい閃光が発生したのだ。そして、それが止むとそこには……大きな木が現れていたのである。
(……あれ?なんか……思ったより……普通だぞ……?)と思ったのだが……。その木が動き出したのを見て……『ロイド』は目を疑った。その大きな幹の中に、誰かがいるのを発見したからである。その人物は眠っているかのように目を瞑っていたが……。突然に、目が開き、上半身を起こすとこちらに振り向くと……そのままゆっくりと歩いて近づいてきたのである。その女性は、長い金髪と青い瞳をした美しい人だった。そして、その姿は『勇者の服(白)』を着込んでいた。その女性に視線が釘付けになっていると『リリアム』がその女性の傍に行き……。
「お母さま……会いたかったです。やっと……。またお目にかかれて嬉しいですよ。」と泣き出しそうになりながらも笑顔で話すと……その女性が反応する。そして、自分の姿を見ると……。驚いた様子だったが、その目元からは涙が流れ始めていた。
「あら……。どうして……。貴方達は一体……何者なの?ここは……どこなのですか?私は死んだはずなのに……なんで……。」
『リリィ』はその問いに答えてあげると……。『ロイド』達のことを紹介してあげていた。『剣神 シン・リューシェン』『魔剣士 リリス』『剣聖 リリィ』『剣聖 ミリアム』の紹介を終えた後に……。最後に、アリスティアが紹介すると……。
アリスティアの自己紹介が終わると……女性は驚いた顔をしながら……アリスティアを見つめていたのである。それから……しばらくすると……彼女は落ち着いたのか、アリスティアに礼を言うと……「私のことを助けていただきありがとうございます。」と頭を下げた。アリスティアはその行動が予想外だったので慌てていたが……。
その光景を見た他の者達も動揺したのだった。なんせ今まで自分達以外に誰もいないと思い込んでいたのだから……。しかもその人は……『リリアム』が知っている人で、その人も『リリアム』のことを覚えていて、その人のことを知っている『リリアム』はとても嬉しそうな顔をしていたが……。アリスティアの表情を見るなり……。その人を紹介する。『リリィ』はアリスティアの手を引き……そしてその人をアリスティアの前に立たせて……その人にこう言った。
「ほらっ……。この方は『リリアム』のお母様よ……。『剣姫リリィ』じゃないんだよ……。だからね……。アリスティアも……。そんなに寂しい顔をする必要ないよ?」と……。その言葉を聞いていたアリスティアは自分の頬を触り……泣いていることに気づいた。それを見ていたその女性はアリスティアに近づき抱きしめると……。頭を撫でていた。その瞬間に、アリスティアの目から涙が止まらなかったのである。その様子を見た『リリアム』も一緒になって泣いた。そして、『リリィ』達も一緒に涙を流したのである。
こうして……『聖騎士の花嫁候補 アリスティア・フォンティーヌ・エルフェンティーナ・シルヴァニア』の運命は大きく変わることになったのだった……。
アリスティアの運命を変える出会いから……一週間後……。アリスティア達はこの国の城下町である町『アルストメリア城』に戻ってきていた。この国は『魔族』からの脅威に晒されていた。『勇者の剣』を持つ者はアリスティアしかいないのである。アリスティアが行方不明になっていた間に起きたことを『剣姫リリィ』が報告すると……国王アルフレッドは衝撃を受けた顔になったが……すぐに落ち着きを取り戻し……アリスティアの帰還を喜んだのであった。その後……。アルフレッドはこの世界の情勢を知る為に……。そして、残された僅かな時間で少しでも力を付けていくために……。『リリィ』達と一緒に訓練を開始することに決めたのである。そして、アリスティアは……。その話を聞くと自分も参加することを決めたのであった。『ミリアム』と『リリィ』もアリスティアの意見を尊重することにしたのである。『ミリアム』もアリスティアの実力が気になって仕方がなかったのだ。だが……その日から……。
「…………」と黙り込んだままだったのだ。アリスティアが『リリィ』の様子が変だと感じた次の日のことだった。『ミリアム』から『聖女』の儀式の準備を始めると告げられたのだ。そして、『剣姫リリス』が触媒を用意すると言っていたことをアリスティアに伝えると……。
「うん。わかった。私からもリリスちゃんに頼んでみるよ。」と言って、その日の内にリリスとリリィを呼び出すと……。早速、アリスティアはリリィとリリスに儀式の準備を手伝って欲しいと告げる。リリィはすぐに「わかりました」と言って、リリスの方を見て、アリスティアの提案を受け入れてくれるかの確認を取ると……。リリスは無言のまま静かに首を立てに振ったのだった。リリィはリリスの顔色を見て……リリィに尋ねると……その問いに対してリリスは何も言わずにアリスティアと向き合う。そのリリスの表情を見て……リリィは察していたのだ。『剣聖』は……もう長くないことを……。そして……。『リリィ』の問いかけに対して、リリスが答えることはなかった。だが、その表情はどこか満足げな感じに見えていたのである。
それから、『聖女の儀』を行う場所としてリリスから提供されたのは……。なんと、王宮の地下だったのである。だが……そこには地下があるなんて知らなかったのだが……そもそも王宮のどこにどんな建物が存在するかなんて、一般の人達が知るはずもないことだった。ましてや、『聖騎士団』や一部の王族しか立ち入り禁止の場所だったのである。
そして……リリスが案内したのは『王宮図書館』だった。そこは……『剣聖』ですら、限られた人物しか入れない場所であり……そこに存在する『固有結界 魔窟大迷宮』に繋がっているのだそうだ。
この世界で、魔獣と呼ばれる生物達がこの国を襲ってきた時に……。アリスティアが作り出したらしいのだが……。その力は凄まじく……瞬く間に殲滅させてしまったのだとか……。その事実を知っていたリリィがそのことを話すと、さすがのリリスもこの事については驚いていたようだが……アリスティアの力を信じると言い……儀式が行われる日までそこで待機することになったのである。もちろん、『勇者ロイド』、『リリィ』、そして『リリアナ』の三名もだ……。そして、それから……数日の間。準備に時間が掛かり……ついに今日……。『聖騎士団 特別班 副団長』のアリエスと『ミリアム』の二人が……王宮の地下室の入口までやってきたのだ。『ロイド』が先に入り、その後を続くようにリリィとリリスも入って行く。そこには大きな空間が広がり……その奥には階段が存在していた。リリィは不思議に思い……。なぜこんな場所に隠し扉が存在したのかを考えていた。だが……リリスが……「『聖剣』を扱える者だけがこの場に現れると言われている」と呟いていたのである。そして、この場所から感じる異様な雰囲気にリリスもリリィもその感覚を感じていたのだ。リリスが言うには……。
「ここには……おそらく強力な封印が施されている。しかも……。複数の強大な魔力を感じる。それにこれは……。かなり複雑なものだな。リリスでも……解呪するのに……時間がかかるかも……しれない」と……。リリスは……アリスティアの為に、どうしてもこの『魔導書庫』に辿り着きたかったのだが……。その願いも空しく……。『魔素の霧』の濃度が上昇したことで、アリスティア達は……『魔王城跡地』に戻らなくてはならなくなってしまったのである。
『魔道兵器 グランガリウス・グランザリオ・ガルフォード』との戦いの後。アリスティア達は、『聖都 サンクトベール』に転移した。『ミリアム』も一緒に戻ってきたことに……アリスティアはとても喜んでいた。『リリアム』もリリ姉と一緒にいると楽しいみたいだねと微笑みながらアリスティアに語りかける。その言葉にアリスティアも「ええ。リリちゃんはとても優しくて頼りになるからね。」と言うと……嬉しそうな顔で「へぇ~……。そうなんだぁ。ふぅーん。リリねぇって意外と優しい人だったのね。」と言う。そんな様子を近くで見ていたリリアムもとても嬉しそうな顔をして「よかったわね。アリスティア。リリアムも、二人のような素敵な人を見つけられるといいね。」と言うと、それを聞いた『ロイド』が……リリィとアリスティアに近づき……二人の手を掴む。そして……。三人の手を合わせるようにすると……。こう言ったのである。
(これからの未来……俺達四人は一緒に過ごしていくことになるけど……いつまでも一緒だよね?だから……お互いが困っていたら助け合っていこうね?)
アリスティア達もそれを聞いて笑っているのであった。それから……それから……。
それからしばらくしてから……リリスは目を覚ますと……。目の前には……。
リリアムがいた。リリスの体を支えるようにしてリリアムがいるのだ……。リリスはすぐに起き上がろうとしたが……。体に力が入らない。さらに言えば、自分の体は血だらけなのだ……。この状態は一体どういうことなのか?リリアムから話を聞いたリリスは信じられなかった。自分が死んだと思ったが……生きているという事実に。リリアムに聞いた話によると、どうも自分は死んでいないらしい。しかも、リリアムの力で蘇生したという。リリアムはリリスに事情を説明するが……あまり覚えていないのだとリリスは困惑するのであった。それでもリリスは……。『聖女アリスティア』と『聖騎士リリアム』の力のおかげで助かったのだということは分かったという……。
こうして……。この世界を救う旅は……この日……この日をもって……ようやく始まったばかりである。まだ……物語は始まったばかりだ。
それから……。時は流れ……。『魔剣の使い手』と呼ばれる『聖女』の少年と……。
聖剣を持つ少女と。
伝説の剣を持つ少女と。
聖剣を鍛えた『鍛冶職人』の『リリアム・ルブラン・ド・オルトルート』。
聖女と勇者と『魔道剣士』は、『アルストメリア』へと帰還した。
それから……数か月の時が流れ……。
「……そういえば……。そろそろ……。『リリアム・ルブラン・ド・オルトルート』が帰ってくるころじゃないか?」と、『聖騎士団団長』は部下達に問いかけると、「ああ……。もうそんな時期か……」とその問いかけに『剣聖リリィ・ルブラン・ラ・オルフェア・エルフェンティーナ』が返事をした。「……まあ……。帰ってきたところで何も変わりはしないけどな……。奴は……いや……あいつは……」と『剣姫リリィ』は苦虫を潰したような表情を浮かべる。『リリアナ』もまた同様に複雑な表情で……。その表情を見た他の者達が心配になって話しかけようとすると……。その時だった。部屋のドアが開かれ……そこから現れた『剣聖リリィ』にそっくりな人物が部屋の中に入ってきたのである。その人物は……。
その顔を見て、『聖騎士リリィ』が思わず「お父様……。」と言ってしまうと……。「うむ。久しいな。我が娘よ。」と言って『剣聖リリィ』と抱き合い……そして、二人は泣き始めるのである。
その様子を見た者達は驚くのである。
それから……。しばらく時が流れる……。そして……この国の新たな『国王陛下』として……リリィの父親であり……そして……。かつて『剣聖』と呼ばれた男……。
『剣聖王』『オルテバ』は、再び……『聖剣』を手にしたのである。
それからまた……月日の流れる日々が始まったのである……。そして、そんなある日の出来事だった……。
「さあて……と……。」『聖騎士団団長 剣聖リリィ』は……いつものように訓練をしている兵士達の訓練を見ている。すると、そこへ、見慣れない女性が現れたのである。
「あら。こんにちは。貴方達が、あの子達が話していた人達ですね。はじめまして。私は『ミレイユ=リシャール』と言います。」と言って、自己紹介を始めたのである。その人物の顔を見て……リリィとアリスティア達は……。まさかと思う。なぜなら……その人物は、『ロイド・リシェール・ルヴァンノートル』、『ミリアム』とよく似た面影を持っていたからだ。だが……。ミリアムに聞いてみると……。やはりその人物とは面識がなかったようだ。その女性は続けて言う。「皆さんの事は知っていますよ。なんせ……。『ロイド・リシェール』、『リリアナ』、『ミリアム』、『リリアム』がお世話になったのですから。特にリリ姉は大変だったでしょう?いろいろとお話を聞かせてもらいましたからね。」と言って笑う。その人物の話に一同は驚きの声を上げると……。それから、しばらく談笑した後にその場を離れようとした時……。
「あ……そうだ。せっかくですから……今からお茶会をするので、参加してくれませんか?」と言われてしまい……。結局断ることもできず……。全員、一緒にお茶会をする事になったのである。
『聖騎士団 副団長 リリィ・ルブラ・ドオル・アルストレア』は『リリアムの妹 リリィ・ラトゥール・オルク・アメリアドール』に案内されてとある場所に辿り着く。その場所に辿り着いてすぐに……その場所の雰囲気に驚いたのはリリィだ。その光景に見惚れていたリリィにその人物は声をかける。「あれ?……リリィじゃない?リリアナと一緒じゃないのね。」と声をかけたのだ。そして、それを聞いたアリスティア達もその人物が誰か分かってしまい……そして……。その場にいた者全てが、この世界では誰もが知っている人物であった。なぜなら……『ロイド』と同じ顔をしているからだ。しかし、『ロイド』よりも……若干大人っぽい雰囲気であるのだ。その人物は言う。「初めまして……ではないけれど、挨拶がまだでしたね。改めて、はじめまして。私の名は……。」と、そこで突然……。アリスティアの頭の中で警告音が鳴った。そして、その人物が言うはずだった言葉を途中で遮ってしまうのである。
(待ってください!!……あなたの名前は言わなくてもいいはずですよ。だって……『ロイド』は……この世界から消えてしまったんだから……。)
(……それは違います。確かに『ロイド』さんはこの世界にはいませんでした。……でも……今も生きていらっしゃいます。だから……。その名前だけは……。言わない方がいいと思います。……この世界が崩壊するかもしれないんです。それに……今の『リリアム』さんの気持ちを考えてください。『ロイド』さんが……もう二度と帰ってこないと……そう思って悲しんでいたところに……。同じ名前を名乗る人間が……現れたんですよ?その人が、自分にとってかけがえのない人だとしたら……。『ロイド』さんの心の中はどうなるのか……分かるはずなのに……。どうして……この人は……。自分の命を犠牲にしてまで……そんな事をいうんだろう?)
『リリアナ』の言葉を聞いたその人物が目を大きくして驚くと……それから静かに笑い始めるのである。「フフッ……。本当に面白いね。この子は……。」と言うとその人物はこう続けたのである。
「私も……貴方と同じ考えよ。私は……この世界を崩壊させたくない。だからこそ……。」とそこまで言って言葉を切ると、真剣な表情で……こう言葉を続けたのである。
「『魔剣使いの魔王』は死んだわけではありません。今は……一時的に……『魔素の霧』が弱まっていますが……それも時間の問題でしょう。おそらく『聖魔導書庫』から膨大な『魔素』が流れ出ていますから……。それが原因なのです。いずれ『魔王』が復活してしまう……。」と言うのである。それを聞いてアリスティアが慌てて反論する。
(そんな馬鹿なことありえないわ!!『魔王 グラトニー・エンペラー』の力はあまりにも強力すぎて……いくら貴方達の『魔剣』の力を持ってしても、太刀打ちなんてできないって……。『魔剣』は……『魔王』を封じるための剣だから……。封印されている『魔剣 グラトニル・リ・デリスフル』の力を解放するには、『魔王 魔道兵器グランガリウス・グランザリオ・ガルフォードス』の力を開放する必要があるんじゃなかったの!?それができるのが……その『剣』だけ……。それなら……『聖剣 神剣エクスキャリバー』の力でも……勝てるはずだから……。…………あっ!!!!そういうことなの?まさか……『魔剣 グラトリシルノ』で……。『聖魔剣 エクカリバー』の力と融合させたのね?そうなんでしょ?……リリアムさん……。)
アリスティアは、リリアムの方を見ると……。
「ふっ……。流石は我が娘の力を借りただけのことはある……。そうか……この世界にはまだ希望が残されているということだね。」と言った後……続けて言うのである。「私がこれからしようとしていることを伝えておく。この国の未来は君達に託されたと思っている。『ロイド』やこの国の『剣聖 ロイド=ルヴァンノートル』、『聖剣 ロイド』や……その他の勇者の力を持つ者たちの力は大きすぎて危険だ。彼らは、きっと……『この世界の為ならば……自分の身など顧みない存在だ。そして……。何度、世界の危機が訪れても……。絶対にあきらめずに……何度も立ち上がるような連中ばかりだろうからね。だが、それだけの力があっても、限界があるということだ……。このままでは、この国は確実に破滅するだろう。だから……今こそ、『剣聖 ロイド』が遺してくれた……もう一つの剣が必要になる……。」と……。それからしばらくして……。『聖騎士団長 剣聖リリィ』と『剣聖王 剣聖オルテバ』は二人で話をしていたのである。すると……そこに一人の人物が現れた。「おや?ここにいたのかい?まったく……探したんだよ?」と言って現れた人物は『リリアナ・リシャール』だった。「あら。リリ姉じゃない。」と『リリィ』が答えると、「ああ……お前だったのか。……リリナはいるか?」と尋ねるのである。『リリアナ』が答えると……。「ちょうど良かった……。少し話がしたかったところなんだ。一緒に来てくれないか?」と頼むのであった。そして二人は……どこかへ出かけるのだった。
リリアナが連れて行かれたのは、大きな屋敷のような建物だった。その建物の門番は二人とも剣を抜いており……物々しい空気を纏っていたのである。だが……。二人の内の一人の顔を見て……『リリアナ』が驚きの声を上げたのだ。
その声に反応したリリィとオルテバが振り向くと、そのリリとそっくりな少女が、オルタの胸に飛び込んでいったのである。その人物の名はリリアナ・ドオル・ルヴァーヌ。ド=シュプール侯爵の長女である。彼女は泣きながら言う。「う……嬉しい……。お父様……リリアナのこと覚えていてくれたのですね……。」そして……涙を流すのだった。「……当たり前だろ。忘れるものか……。それに、もう泣くんじゃない。……ほら……おいで?」と優しくリリアナを抱き寄せる。
そして……そのリリアナを見てリリアナの顔色が変わるとリリアナは「……嘘よ……。お父様に娘はいないはずよ……。」と、そう言ったのだ。リリアナの問いにリリィとオルテバは互いに視線を合わせると、「そう言えば、君は知らないのかな?」と、オルテバは言い始めたのである。
「君のお父さんとはね……。『リリアム』が亡くなって以来……。一度しか会ったことはないんだ。だけど……あの人の子供であることに間違いはないよ。」と言い出したのである。
リリアナが信じられないという顔を浮かべると「お父様……。リリアナが……分かりませんか?リリアナですよ?あなたの実の娘の……」と言いかけると、リリアナの父親が「違う!!リリアナは……そんな事を言わない!!」と言って否定したのだ。それを見たオルタナはため息を吐きだすと「仕方ないか……。どうやらこの子にリリアムの真実を話す必要があるようだね……。いいかリリィ?よく聞いておくんだぞ?この子の父親は……リリアムの双子の弟『リリアム・ル・デリスフル』なんだ。彼は……『魔素』に取り憑かれて……魔人化してしまったが、リリアナのお父さんに倒されたはずだった……。だが……。実は……リリアムは死んではいなかったんだ。……そして……。私達も……『ロイド』も……。彼の本当の名前を知らないんだよ……。だって……リリアナがそう呼ぶからね……。」
リリアムの父親と妹であるリリアナはその話を聞いていたのだ。そして……その話の真偽を確かめるように見つめ合うのである。そして……お互いの瞳を見つめていると……やがてリリアムが言う。「……信じてくれるかい?僕の妹よ……。」と言うのである。その言葉を聞いた瞬間……。リリィが「あなたが……。私の……お兄ちゃん……。」と震え声でつぶやく。それから……。「ええ……。ええ……。もちろん信じるわ。お兄ちゃん……。私は……もう二度と……お兄ちゃんを失いたくないもの……。それに……私……お兄ちゃんのお嫁さんになるって……決めてるから……。だから……お父様……。リリアナが大きくなった時……。その時は……リリアナとお母さまのことを認めてください……。」と言ったのである。
そしてリリィの父は「リリアナの願いならば……。喜んで聞こう。ただし、私は……リリアムのことを許しているわけでもなければ……。君を息子と認めたわけでもない。ただ、君たちがリリアムの子供だということだけは認めてやる。リリアムのことは……。私が決着をつける。……リリアムと約束したことでもあるからな……。必ず倒して見せる。それがたとえ命を奪うことになったとしてもな……。」と言うのである。
それを聞いたオルタが怒り出して言う。「馬鹿野郎が……。」とそう言ってオルタナを見る。その言葉を聞いたリリィとリリアムとオルティナの三人が驚いて「オルタ!?どういうことなの?」と言うのである。リリアムの質問に対してオルタが答え始める。
「こいつは……オルテバは……『聖剣』の呪いのせいで死ねないんだよ……。だから……俺が殺さなくちゃならない……。そうじゃねえと……俺が死ぬことができないからだ……。」と……言うのである。それから……。オルタは自分のことを話すのである。それは、リリィにとっては驚愕の話であった……。なんとその男は、『神剣 エクスキャリバー』の勇者として選ばれた男だったのだ。オルタの正体は……『剣王 神剣 エクスキャリバー』であった。リリはそれを聞いて納得すると、「それなら、話は早いわ。『魔王 グラトニル・グランザリオ・ガルフォリエル』の討伐は、リリアムの力が絶対に必要だわ。なぜなら……。『魔王 魔道兵器グランガリウス・グランザリオ・ガルフォードス』の『魔素』の供給元になっているのが、『魔王 グラトニル・グランザリオ・ガルフォードス』なんだから、リリアナの持つ剣の力が必要なんだから。」と言ったのである。
それからすぐに『リリアナ』達はリリアナの家に戻っていくと……。そこにはリリィの家族が集まっていたのである。そして……。そこにいたのは……。リリアナの父とリリアナとそっくりの少女とオルタとリリィの五人であった。
その部屋に入るとリリィは言う。「みんな、今日は話したいことがあるの……。大事な話だから聞いて欲しいの……。まず最初に紹介するわね?この人は……リリアナ・ドオル・ルヴァーヌ。お兄ちゃんと……リリアナのお父様の娘であり……リリアナがずっと捜していた家族でもあるの……。」と紹介した。すると、彼女の両親は驚き、妹のオルタは知っていたのか、無表情であった。そして、その後に続くようにしてオルタが話し始めるのである。「俺は……『神剣オルタ オリジン』。この国にある『剣聖剣 エクセリア・オルティネス』に宿っている剣なんだが……。リリアムと約束を交わした……。この剣の力で『魔族 魔王 グランゼ・グラガスト』と戦おうと思っている。その前にどうしてもお前たち兄妹と話をしたかったからな。」と……。
オルタリは続けて言う。「『聖剣』の呪いを受けたのはこの私なのだよ。私は『魔道王 魔王 グランギガス・グリュクオン・グランセリオン』が使っていた『神器 魔導王 グラムレイ・レガリア』の持ち主として選ばれてしまったんだ。『魔導具』というのは使用者を選ぶ物らしいが……。なぜ私だったのか……。」と自嘲気味に笑ったのだ。そして、彼は言う。
「私の呪いを解く方法はあるよ。……だが……それは……とても危険なものだ。……それでも聞きたいかい?今ならまだ間に合うと思うよ?」と。だが……オルターリは首を横に振って、「もう覚悟は出来ている。どんな危険であっても……。『リリアム』が生きているのであれば……それでいいんだ。だから教えて欲しい……。リリアムは……本当に死んだのか?もし生きていたとしたら……。彼はどこにいる?」と言って……。彼は……涙を流し始めた。そして……。
オルタが涙ながら語る。
「リリアムは……お前たちの父親である『リリアム・ルデリスフル』は『魔導士団 魔王 アヴァロン グランド・ゼロ』に戦いを挑み、その代償によって『魔導士』になったのさ……。」と。
その言葉を聞いていたオルタの両親は驚いて「まさか……。そんな事が有り得るというのか?リリアムは……あの後……リリアムは……私には何も言わずに行ってしまった。それが……『神剣』による『固有スキル』によるものだというのか?」と言い出すと……。「そうだよ……。お父さん……。リリアナに『聖剣 エクスカリヴァーン』が使えるようになったのと同じように……彼は『聖魔道師 大賢者 グランキリアス アルセイアス』になったんだ……。つまり……リリアムは既に人間じゃないんだ。」と言い出したのだ。その話を聞いていた父親はショックを受けて倒れてしまう。
それを心配そうに母親が寄り添うが、彼はショックを隠しきれない様子で言ったのだ。「なんてことだ……そんなことが有っていいはずがない。リリアムは……私が育てた大切な子供だ……。それに……私がリリアムのためにしてあげられることはもうない……。だから、せめて……。リリアムを殺したあいつを倒す事ぐらいはしないと……。それに、このままリリアナとリリアナの母親を置いていけない。だが……。私が『魔王』と戦っても勝てるはずなどないだろう。ならばどうすればいい?私が……いや……リリアナと二人で生き残るためには……。リリアムが残してくれた……。リリアナだけが頼りなんだ。」と言ってオルタとリリィのほうを見て言う。
リリアナは真剣な顔つきになると、「私は戦う。リリアムとの再会を果たすまでは諦めたくないから……。リリアナにはお兄ちゃんがいるし……。私にはお母さんもオルタリもお父さんもいるから……。私は一人ぼっちではないのだから……。」と言うのだった。それから……彼女は続ける。「私は……『聖剣 聖剣 エクスカリヴァーン・エクスプローラー』がなくても、魔法を使う事ができる。私が持つのは『剣聖の資質』。この能力は剣の扱いをマスターすることができる力。つまり……。私が持っているのは『聖剣』の能力なんかじゃなくて、私の努力で得たものなのよ……。そして……。これからの戦いに必要な力は……剣だけじゃない。私はリリアムに会うために……。この世界の平和を乱す者と戦い続けなければならないから……。そのためなら……。私は何でもする。そして……。いつかリリアムに会いに行く。そして言うのよ……。リリアナが大きくなった時……お嫁さんにしてねって……。そしたらきっと……。」と言ったのだ。
そしてリリアムの父親と妹であるリリアナとそっくりの顔立ちをしている女の子と、銀髪の少女が言う。「そうか……。それなら……私たちが協力できることもあるだろう……。」と。その言葉を聞いて、リリアナが驚いた顔をすると同時に言うのだ。「どうしてあなたたちは……私を助けてくれるんですか?こんな得体の知れない女に対してどうして……。」と尋ねるのだった。
それからしばらくして……。彼らはリリアムの父親に言われるままにある場所へと向かうことになるのだが……。そこには……オルタナ・グランザリオが立っていたのだった。
リリアムが目を覚ます。目の前では、『聖剣使い 勇者候補』が三人の美少女に囲まれてイチャイチャとしている。俺もその様子を見ていたのだが、なんだかなあと思っていたら突然……俺に向かってリリアムの奴が殴りかかってきた。しかも俺と同じような感じの動き方だったのですぐに避けることが出来た。……だけど。それを見たリリアナが俺のことを止める。そして、俺の『能力 ステータス・オープン』を見るように促されたので確認すると……そこにはとんでもない数値が表示されていたのである。
【リリアナ・ドオル・ルヴァーヌ・ガルフォリエル 種族】
【神剣エクスキャリバーの継承者(神剣使い)
固有スキル 剣聖剣 エクセリア オリジン】…… 神剣『聖剣 聖剣エクスカリヴァーン』の力の一部を引き出せる存在となる
聖属性・火属性・水・雷属性・地属性の攻撃魔法を習得する 【リリアム・ルデリスフル・グランザリオ・グランセリオン 神剣『聖剣 魔導王 グラムレイ・レガリア』の所有者になる 魔王の器(神格レベル:100億~1兆)』
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※ リリアムの魂の中に存在する『リリアム・グラン・アルセイアス・リ・グランギガスス』
『リリアナ・グラン・ドルファリオ』は魔王の力を封印しているために、魔王化することは無い。
(しかし魔王化する可能性があるため『勇者』である桐島綾人との接触を避けるべき。尚、リリアム・ガルフォリーに関しては、桐島綾人の前以外では魔王化しない可能性が高いと思われる。魔王の力を解放しても自我を保つことが出来る可能性はある。また魔王化しない限り、この世界に影響を及ぼすことは無いと思われる。)
そしてリリアムに抱き着いている少女がいた。その少女は……「えへへ、やっと起きたー。おはよーリリィ!!」と言ったのだ。リリィと呼ばれた女性は言う。「うん。おはよう。アリアちゃん!!ふぁあああ~……。眠いよ……。まだ寝たいよぉ……。」と言いながら、あくびをしたのであった。それをみたオルタは言う。「まったく……。仕方ないな……。今日はもう遅いし……ここで一晩過ごさないかい?『魔王の城』に君たちを連れて帰るわけにもいかないしさ。それに……オルタ・オルタに話したいことがあるんだよね。だからもう少し……ここに居ようと思うんだけど……いいかい?」と……。
それに対して、俺と、俺の嫁たちと一緒に行動している、リリィの仲間たちの全員がうなずいた。そして、オルタにリリアムの妹である『リリアナ』という子が話しかけてきたのである。「ねえ……。オルタさん?貴方のお父様は元気にしていたかしら?お父様とは……もうずっと会っていないから。」「リリアムのお父さんか……。そうだな……。彼は魔王になった時に『神』に反旗を翻したからな……。でも……。彼は今……とても幸せだよ……。だってさ……彼の息子に娘が生まれたらしいからさ。リリアムはもう、死んでしまっているけれど、彼は今……。幸せなんだよ……。だから心配はいらないよ。……それに……。リリアムの魂の『聖剣』が『聖騎士』になって戻ってきたんだ。『魔道王』として、彼は今もこの世界を平和に導く為に戦っている。そして彼の娘であるリリアナもね。……だから……。リリアムが帰ってくるまでは、リリアナが頑張らないといけないんだよ……。」と言うと、リリアナは真剣な表情でうなずくのだった。そしてオルタが「リリアムはさ……。リリアナとリリアムのお父さんは似ていると思うよ。リリアナのように真っ直ぐで優しくて……。」と言って、「だからさ……きっと……大丈夫だ……。リリアムの娘なら……。リリアムみたいに強くて優しい子に育ってくれると信じている。そしてきっと……。私の呪いを解くために頑張ってくれるはず。……私はそう信じている。」と言って、「さて……と……。そろそろ、行こうかな……。私の用事も済ませたいし……。あと、オルタの呪いの件は……私が何とか出来ると思うからさ……。私を信じて欲しいな。それと、私がいない間は『勇者』をリリアムだとでも思って、接して欲しいかな?」と言った。その言葉に俺とオルターシャが反応する。「どういうことだ!?」と言うと、オルターナは説明をする。「実は……オルタが言う『聖剣』の持ち主って言うのは……この私なんですよ。そして私は『大賢者 グランキリアス・アルセイアス』なのです。」と言って「リリアナには言ってなかったですけど、私は大魔王を倒して世界を救ったのは『リリアム・グラン・アルセイアス』だと思っています。だから……。私は彼が帰ってきたときには、きっと……喜んで迎えると思います。」と言ったのである。
それからしばらく経って……。俺は……俺の嫁の一人である……銀髪の女性とキスをしている。その女性の名前はリリアム。彼女は言う。「本当に……。リリアムが『聖剣』を手に入れてしまったなんてね……。信じられないわ……。」と、俺のことを見つめてくる。俺は照れくさそうにしていると、俺が召喚されてから今までに起きた出来事について話し合うことになった。オルタやリリアムの父親が生きているかもしれないということ。それからオルタの母親や、オルタの妹や弟の行方や、他の家族や友人たちの行方などなど……。色々な事を聞きだすことが出来た。リリアムによると……。『勇者』にやられた『神』たちは全員、オルタの呪いにかかっていたためにオルタによって復活させられたらしいのだが……。その後どうなったかまでは分からないと言う。
「リリアムさんは、これからどうするの?俺の仲間になんかなりたくない?いや……。俺たちに協力してくれないかな?」と聞くが、彼女は首を横に振ると「私もそうしたいのは山々なのだが……。どうも私とリリアムの『勇者』に対する認識が違うようでな……。まあ……仕方ないのだが……。私はこの世界でやりたい事がある。だが、君たちと行動を共にすれば何か変わるのではないかと思っている。だから私は……リリアム・グラン・アルセイアスの生まれ変わりと言われている、リリアムと一緒にいることにしたよ。リリアナが、私に会いに来たら、その時は……一緒に居てくれないか?」と言われてしまう。俺は言う。「分かった。約束するよ。絶対に君たちを探し出す。」と……。そう言うとリリアムが嬉しそうな顔をした。すると……オルタ・オルタが言う。「あのー、ちょっとだけお邪魔します。リリアムちゃん……。お願いがあるのですが……。聞いてくれますか?まずは私の名前の後に……私をちゃん付けで呼ぶことを禁止にしてほしいのです。それから、私にちゃんを付けるような口調で喋らないで欲しいのです。オルタさん……。」と言うと、リリアムは「え?そんなことか?全然構わないよ。だってさ、君はまだ子供なんだから、大人扱いされても迷惑だと思うんだけどなあ……。それに君は、まだ、幼いじゃないか。私にとっては妹みたいなものなんだけどなあ……。それとも……。やっぱり年上に見られていたほうがいいのかしら……困ったものだなあ……。う~ん。それじゃあ、これでいいのかな?」と言ったのだった。オルタは少し考えると……「はい!!それで構いません。よろしくね。オル太お姉ちゃん。大好きですよー!!」と言ったのだった。すると、オルタは「うっ……。お……おおお……。うん!!ありがとうね!!」と恥ずかしいそうに言った。その光景を見て俺が笑みを浮かべると、それをみたオルタは、少し怒った表情になると、すぐに真面目顔に戻ると、「ところで桐島さん、いや桐島くん、貴方は何歳になっているのですか?確か、17歳でしょう?見た目的には……16~18歳ぐらいな感じですし、もう立派な大人でしょう?貴方も、私をお姉さまとかお兄様って呼んでもいいのよ?というより……。呼びなさい。今すぐ呼びなさい。」と言ってききた。俺は答える。「嫌だよ。どうしてだよ?」と……。オルタ・オルタは真剣な眼差しで答えたのだった。「それはね……。私が貴方よりも『年齢』を遥かに上回っていて、貴方のような可愛い男の子にお世話されながらお話してもらって、甘えてもらいたい願望があるのよね。だから私とお友達になりましょうね?うむぅ……。」と言って、抱き着こうとしてきた。それを見ていたリリアム・リリィ・リリィの三人に止められる。そのせいなのか……俺のハーレムメンバーに怒られてしまい、お仕置されてしまうことになるのであった。そして……リリアムは言う。「桐島くんは、私の恋人だから……そういうことはダメよ!!桐島さんは、みんなのものでしょ?」とリリアム・リリィ・リリィの三人は、同時に同じことを言う。リリアムのその言葉に対して、オルタは微笑むと、「そうよ……。桐島くんは私たちみんなの恋人なの。誰にも渡さないの!!それにね……。今は違うけど、昔は『女神アリア』にも桐島くんを渡すわけにはいかないからね。リリアムは『大賢者 グランキリアス・アルセイアス』として、オルタは、『大魔王 ルシファー』としてね。『魔王』同士が付き合うっていうのも、不思議な話だけど……。私はそれでもいいと思う。私はオルタも、オルタも大好きだから……。」と言って、「リリアムもオルタの事が好きだから……二人に幸せになってほしいんだよね……。オルタも本当は優しい子なのに、素直になれなくて、不器用なだけで……。私は二人のことが大好きなんだよ……。でも……だからこそ私は二人の『保護者』として……。」と寂しげに語るのだった。すると……『魔族領』の『王都アガルティア』に、オルタの配下である『大悪魔』がやってきたと報告が入った。「オルタ様!!緊急事態が発生したようです。すぐに戻ってきていただきたいと……」と言われた。オルタはそれを聞くと、すぐに立ち上がり、仲間たちに別れを告げてから……。転移装置を使い、オルターシャの元に戻って行くのである。オルタ・リリアム姉妹を見送った後、俺が仲間たちにこれからのことを提案するとリリアム・リリアナ・リリアナの3人はうなずいて賛成してくれたのである。こうして俺の新たな冒険が始まるのである。
『勇者』
それは『女神アリス』によって召喚される異能力を持った人間の総称である。しかし、その数は限られているのである。その理由として……。この世界には『魔物』が存在しているためである。そのため『聖剣』の力を持たない人間は、魔物たちに対抗できないのである。そしてこの『聖剣』の所有者を決める方法は単純明快なものである。それは、最も『強い』存在を選ぶというものである。これは非常にシンプルな方法であるが、その反面……選ばれた者しか『勇者』にはなれないためである。この世界では、この『聖戦』により『勇者』に選ばれて、この世界にやって来た者は皆が尊敬と敬意をもって扱われる。
そんな世界で俺は、魔王である『ルシファー』の討伐のために選ばれた『聖剣』の持ち主の『リリアム』と一緒に『魔王軍四天王 暗黒騎士 バルサリオン』と戦う事になった。
そして戦いの最中で…… 俺は『リリアム』が何者かによって洗脳されてしまったことを知ったのである。リリアムは自分の意識を保ったまま、『大賢者 グランキリアス・アルセイアス』であるオルターシャに自分の魂の一部を憑依させて肉体を操ることで何とかその場はしのぐことができた。俺はそんなリリアムが無事だったことを心の底から喜んだのだった。だが、リリアムの様子がおかしい事に気づく……。リリアムはオルタと出会ってからずっと何か悩んでいるように見えたのだ。俺は思い切って聞いてみることにする。「あの……、俺なんかでよかったら相談にのるよ?何でも言ってみて?」と言った。するとリリアムが「本当に何からなにまですいません……。でもこんなこと誰にも相談出来ないから……。実は私……最近まで『勇者』として生きていたんだけど、『勇者』であることに疑問を持ち始めていたんです……。それで……。私の『本当の願い』ってなんだろうと思ってしまったの……。それに私の使命ってなんなんだろうと……。」と言い始めた。リリアムは俺に今までの話をしてくれた。どうやら彼女は自分が『勇者』であることに不満があったようだ。彼女は、自分の意思とは関係なく強制的にこの世界の人たちに英雄視されていたのだから……。その事が原因で彼女は、自分の人生について悩むことになったのだという……。俺が彼女の話を聞いて思うことがあって質問した。
「あのさ、リリアムさん……。もしかしたら俺も同じ状況になるかもしれない……。いや……すでになっているのかもな……。だって……俺は元の世界に帰るために、色々と旅をしていて……。仲間だと思っていた人達からは……裏切られているかもしれない……。」と言うと、リリアムは俺のことを心配そうに見つめてきた。どうもリリアムも『勇者』としての俺が信用出来なくなってしまったらしい。俺のその言葉を聞いたとき……リリアムの目から光が消えるのを見た。どうしようもない気持ちになりながらも俺は続けて言う……。「俺……元の世界で……家族が死んでしまって……その悲しみを忘れるためもあって、何かに熱中したいと思ったらゲームを作る仕事につきたいと思うようになって……。それから専門学校に行くことにしたんだ……。それで……専門学校に通いながら……小説も書くようになった……。最初は、誰かに読まれる訳でもないし……誰も読んでくれないだろうし、下手くそだしで……。全然上手く書けなかったんだけど……、それでも毎日少しずつ書いて……気が付けば小説家になろうと決意した時のように……。いや……それ以上に沢山の小説を書いていた……。そんな時に……。」と言って、リリアムを見ると言う。
「もしかしたらリリアムさんと同じように『自分のやりたいことがないから……仕方なく』で、小説を書いている人もいるかもしれない……。いやいるはずなんだ……。だけどね……。『自分なりに一生懸命やったけど結果に繋がらなかったから仕方ない』なんて割り切れないと思う……。だからね……。『リリアムさんの悩み』に答えを出せたりはできないと思う……。ただ……。今の話を聞いて思ったんだ。リリアムさんはまだ諦めちゃダメだよ!!きっと……リリアムさんのその悩みに答えを出すヒントは見つかるはずだよ。」と言った。
それを聞いたリリアムは「ありがとう。私にできることがあったら教えてね。」と言って微笑んだのである。その日の夜のことだった。俺が風呂に入っている最中、扉越しに……『魔人族 魔獣使いの少女』である『オルタ』の声が聞こえたのである。そして『大賢者 グランキリアス・アルセイアス』である『オルターシャ』とオルタ・リリィ・リリィの姉妹たちが俺に近づいてくると耳元で俺の耳に囁いてきたのだった。その内容は、「私達の国で、あなたにとても会いたいと思っている『女神アリア』という女性がいるのですが……。今、私達はその人の保護をしています。ですが、彼女はそのことにあまり乗り気ではないので、このままでは……彼女を殺してしまうかもしれません……。ですので……貴方に私達に協力してもらいたいことがあるんです。協力してもらえるなら、私は貴女を無事に元の世界に帰してあげましょう。そして『勇者』に頼らない新しい『異世界』への転生先を用意してあげますよ。どうかお願いしますね。私達が望むことは、たった一つです……。私達に力を貸してくださいね……。『勇者 桐島光』くん。」という内容だったのである。
(桐島光……それは、前世の……地球で生きた『男だった頃の俺』の名前だったのだ……。)
俺とリリアムが出会った日から二日後……。
『聖剣 聖剣 エクスカリバー』を持つ少女のリリアムが『暗黒騎士 バルサリオン』を倒して『勇者』の使命を全うしたことで、『勇者』は誕生したのであった。しかし……。俺にとっては『魔王』であり『魔王』の配下であったオルタ・リリィ・リリィは、俺に対して恩義を感じていたのである。そして『大魔王 ルシファー』となった『大賢者 ルシファー』である『オルタ』に操られた『大魔導師 オルタ・リリィ・リリィ』の三人が俺の元にやってきた。その三人は俺に対して頭を下げながら言うのである。
リリアムがオルタを倒した事で、オルタ・リリィ・リリィは『大魔王 ルシファー』を裏切り、この世界を守ることを決めたのだと……。リリアムには、これからこの世界を守るために戦いに身を投じることになるであろう俺たちに協力してほしいと言っていたのだ。そのことについて、オルタは、「そう……リリアムにはその道しかないわ……。だから私たちは……。『女神アリア』の保護をやめて……。桐島くんをこの世界に連れてこようとしている……。私たち三人のこの世界に生きるすべての者達にとって大切な存在なの……。それに彼は、異世界から召喚された存在……。この世界を救う希望でもある……。だからこそ……リリアムにも協力して欲しい……。でも無理強いは絶対にしないでほしいの……。」と言った。そして「だから……。私たち三人ともこの世界で生きて行くことになったら……。『聖戦 ルシファーの討伐』が終わった後に、私たち四人で、一緒に暮らすための家に引っ越してほしいの……。その方が、お互いのためになると思うのよ。だから、それまで待っててくれる?」と言ったのだ。
俺はリリアムの事を思って、『暗黒騎士 バルサリオン』との戦いが終わったあとの彼女の身の安全のために、『魔王軍四天王 暗黒騎士 バルサリオン 』の『闇属性の魔法陣』によって洗脳されているかもしれない『リリアムの仲間だった者』である、『聖剣 聖剣 エクスカリバー 所有者 騎士 ルミア・エルスフォード』、『騎士 アリエル・アーネット』『魔法使い アルフレット・アルフィード』の3人と、リリアムとの4人を『聖剣 聖剣 デュランダル』の加護による転移を使って元の世界に帰還させた。そして俺は、俺の家族が生きているか確認することにした。俺は……両親や妹の美久がどうなったのかが不安で堪らなかったからである。しかし、調べたところ……両親は『大災害』に巻き込まれることなく無事なようだったが……。妹と美久は行方不明になっていた。そこで俺は『神眼の千里眼能力』を使用して、2人がどうなっているのかを確認することにする。
するとどうも、美久は……行方不明になっているようで……しかも、なぜか『魔獣の森』の中にいて、『魔獣使いの少女 オルタ・リリィ・リリィ 』たちに守られているらしいのである……。
そして美月もどうも『魔獣の森』に飛ばされていたようなのだが、何故か美月だけ森の外に出されていたようだ。一体なぜなのだろうか……。俺はそのことを不思議に思ったが、今はとにかく二人を助けるために『魔獣使いの少女 オルタ・リリィ・リリィ』の『大賢姫(アーク・メイガスプリンセス)』であるリリアムを仲間に加えることにした。こうしてリリアムと俺の二人で『魔人族』と戦うための旅が始まったのである。
(※リリアムと桐島の出会いの話はこれで終わりだが、ここからリリアムと桐島は長い年月をかけて愛を深めていくことになるのである。リリアムはこの物語の主人公なのでここでリリアムの紹介を終えるが、次回からは主人公の親友として『神崎光輝』が登場するのである。しかし……主人公にはまだ秘密があるようである……。それが分かるのはだいぶ後のことなのだ。それについてはまた今度話すとするが……実はこの話は『プロローグ』に過ぎないのだから……。)
***『神聖教会 勇者育成学園 理事長室』
俺こと『大勇者
神崎 明彦』は『勇者 リリアム』を弟子として育てることにしていた。そのため『リリアムの教育係』として彼女に『聖剣術 極み 技の型 五式』(別名:奥義)と『大魔術の叡智 応用編』の二つを教え込んでいた。するとどうやらリリアムは、その二つの技能を習得することに成功した。それで俺も一安心したその時である。俺のもとに『女神アリア』と名乗る人物がやってきたのだ。俺はその女性を見たとき、一目見てその女性のことが好きになってしまった。まるで『天界にいる女神さまのような人だ。美しいだけではなくて、優しさが溢れ出ているような素敵な人だ』と思ってしまったのだ。その女性は、この神聖教会の学園長にして『聖女』と呼ばれている『マリアベル・ホーリー』様のお母様だそうで、なんでも、マリアベル様とは、親子ではなくて、従姉妹の関係だそうだ……。しかし……。まさか、あのお転婆娘が母親譲りだったなんて……。そう思うと思わず笑ってしまった。そして彼女は、俺のことを息子にしたいと言ってくれた。それはもう、嬉しいことだった。しかし……残念ながら彼女は既婚者で、すでに子供もいるとのことだったので……諦めるしかなかった。それでも彼女とは仲良くしてもらった。彼女は、娘の話ばかりをする人だった。しかし……そんな時……彼女の娘である『マリア』という子が行方不明になったという知らせが、入ってきたのだ……。それから俺は必死になってマリアを探した。しかし……見つからない。そんなある時である……。マリアの行方の手掛かりを掴んだのだ。しかし……俺には時間がなかった……。それは、『魔人族 四天王』の一人『大賢者 ルシファー』に奪われた聖杯を取り戻すための『聖なる儀式』に参加することになっていたからだ。そしてその儀式が終わるまでは俺は、『神聖教会』から動くことが出来ないのだ。そして俺の代わりに『魔剣 魔剣 ラグナロク』を持つ少女のリリアムを『神聖教国』に派遣したのだった。彼女は……とても優秀であった。だから俺は……安心して儀式に参加出来ると思ったのだった。
****
『聖勇者 光』が、『勇者リリアム』と共に『魔王軍四天王 暗黒騎士 バルサリオン』を倒して、無事にこの世界を救ったのである。そして、俺は、自分の国に戻ることになる。そう……。俺には、妻を待たせているのである。だから、すぐに妻と子供を幸せにする為に、帰らないといけなかったのである。しかし……。『大魔王 ルシファー』の『大賢者 ルシファー』に操られていた俺の仲間たちは、『大災害』の被害者で……みんな記憶を失っており、さらに、『大魔導師 オルタ・リリィ・リリィ』たちの力で保護されていたが……保護されてからしばらく経つのにまだ記憶を取り戻していない。そのことは俺としても気がかりで、彼女たちの記憶を取り戻せるように努力していたが……。未だに彼女達の記憶は戻っていない。
そして……。俺は……家族がどうなっているのか心配になり……調べたところ……美久は『魔獣の森』にいた。それも俺の娘なのに、なんでか俺の妹と一緒に……。どうしてなのか?疑問が募った。
しかし、俺の知らないところで何かがあったのだろうと察することができたのである。だから……俺は……『聖戦 魔王ルシファーの討伐』が終わったら、まず美久を迎えに行くことを心に誓ったのだった。
(ちなみに、美月はなぜかこの『魔境の森』の近くの街『カリスト』にいたようだ……。しかも俺の嫁さんである『美鈴』と仲良さそうにしている姿を見つけた……。一体どうなってんだ……。それにしても……なんなんだ……。この状況は……それに……俺は……この世界の魔王を倒しに来たはずなのに……なんか変なことが起きていて頭が痛い……。とりあえずこの世界で俺は何をすればいいのか分からない……)
***
***
***
ここは『神聖帝国 聖城』……。そこには一人の男が歩いていた。男は『神聖騎士団 総団長 アルス・セイクリット』であり、この世界最強と言われる人物だ。その男の表情にはどこか憂愁を漂わせていた……。しかし……。次の瞬間、彼の前に『女神アリア』が現れたのだ。
そしてアリアがアルス・セイクリットに言う。
「あなたをここに呼び出したのはほかでもありません。『勇者 リリアム』と『聖勇者 光』を、私の世界に転移させたのです……。これから、彼らの旅が始まります。そして彼らは、『魔王 オルタ・リリィ・リリィ』、『大賢姫 リリアム・ホーリー』、『暗黒騎士 バルサリオン 』、『大魔道士 ルシア・ミティレア』、『聖女 リリアム』と行動を共にし、最後にはこの私を倒すことに成功して、私は消滅する運命にあります……。」とアリアが言った。
それを聞いたセイクは、こう答える。
「『聖戦 ルシファー』と、お前が戦うことになったということは、どうやら『魔人族』どもは、お前を殺すつもりはないようだな。あいつらは俺の大切な友人だ……。だからこそ……俺も『聖王陛下』の力を借りようと思っている。そして、その時に俺と共闘することを約束してくれると約束してくれるか?」と言った。
それに対して女神のアリアが答えようとすると……。アルスは急に、真剣な眼差しになった。
「まあ……。返事をするのはもう少しだけ待ってくれないか。俺はこの世界を『勇者 リリアム』に救ってほしいと考えている……。だから俺の力を貸すことにしたんだ。だが……俺の本当の目的は、『魔剣使い キリト』に勝つための方法を見つけ出すことにある。そのために……『大魔王 ルシファー』との闘いに勝ち抜いてみせるぜ!」
そして、アルスがそう言い終えたと同時に『神聖皇帝 アルセリウス』がやってきて彼に言う。
「我が息子の力を貸してくれるのであれば……。もちろん大歓迎だ!それでこそ『聖勇者 光』の盟友にして、『勇者 リリアム』の父よ!! それと……我にできる限りの援助もしよう!!」と……。そして彼は続けて、「『魔剣使い キリト』の攻略方法は『大賢姫(アーク・メイガスプリンセス)』たちが見つけたと言っていたが……。本当に大丈夫なのだろうか……。心配でしょうがないのだ……。あの子は天才だけどまだまだ子どもだから……。あの子にもしものことがあればと思うと……。」
と言いかけた……。
しかし……。それを聞いていたセイクが、『神聖教皇』に対して質問をしたのだ。そして彼が質問をしている間に、ある人物の声が聞こえる。『神聖教皇』の頭の中に直接響くような不思議な声だった……。
***『神聖教会』では謎の『声の主 謎の存在は誰なのか』
***
俺は……アルスさんの話を聞いて少し考え込んだ……。確かに俺は……。今まで色々とあったし……大変だったがなんとかやってこれたから問題ないだろう……。と、その時……。ふと頭に『大賢者(アーク・ウィザード)』である『リリアム・ホーリー』ちゃんの顔を思い浮かぶ。すると……。突然頭の中が痛み始めたのだ……。
(くっ……。いったい何が起きたんだ!?まさか……これは……俺の記憶の一部が戻ったってことなのか?)俺は心の中で呟き、頭痛の理由を考えていた。すると……。
その時……。
目の前がいきなり眩しい光に包まれたかと思えば、俺はいつの間にか、『魔獣の森』に来ていたのである。すると……。俺の隣には、俺と同じ顔をした少年がいたのだ。
すると……その俺にそっくりな奴は、こんなことを口走る。
「えっ……ここはどこなんだ?俺の名前は……桐島明彦っていうらしいぞ。そして……どうやら、君は俺に瓜二つだな……。もしかして……俺たち二人は、この世界に来てしまう前は、同一人物だったんじゃないのか……?いや……。きっとそうに違いないだろう……?」と言う。
しかし……。よくわからない俺は……、とりあえず俺の名前を言ってみることにする。俺には……なぜか、その名前しか覚えていないし……。それ以外には思い出せなかったからね……。
すると……。隣にいる俺によく似た人は……。
「えっと……君の名前以外を覚えていないのか……。どうしたものかな……俺の方は、なんとなく……自分のことがわかってきたのだが……。どうするべきか……」と困り顔で言っていた。
そこで俺は、俺に話しかけた人に……この世界の状況を聞き出す為に、俺に似通った人の話を聞くことにした。しかし……俺が話を切り出そうにも、その人から先に、話し始めてしまわれたのである。
*
***
*
***
ここは、『神聖国 神聖都』。
そこには『神聖騎士団 総団長 アルス・セイクリット』と『神聖騎士団 副団長 リリアム・ホーリー』がいる。彼らは二人で『神聖教国 聖城』に向かうところであった。しかし……。二人の会話の中には、『大魔導師 オルタ・リリィ・リリィ』、『聖女 リリアム』の名前が出てこない。それは……なぜなのか?二人には、まだ記憶が戻っていないということなのか? ***『神聖教会』で謎の『光の神性』
***
『光の騎士 リリアム』たちは……ついに、この世界の女神アリア様と出会うことに成功したのである……。アリア様は私たちを見てとても嬉しかったようで涙をこぼしていた。それは、私たちのことが心配で心配でたまらなかったからなのだという。アリア様は私達に優しく語りかけてくれた後に、私達の現状について説明してくれたのである。
そして……私たちは、これからこの『聖戦 魔王ルシファー討伐の旅が始まる。そして私はその旅に出る前に、私の力を分け与えるために……。『聖勇者 光』『魔剣士 キリト』、『大賢者 リリアム』、『大魔導師 オルタ・リリィ・リリィ』、『大魔道士 ルシア・ミティレア』、『聖女 リリアム』の五人とアリア様が出会うことができたのだ。
その後……みんなで仲良くお茶を飲みながら楽しいひと時を過ごすのだった。そして……この世界で魔王軍四天王と呼ばれる四人組のうちの三人は、もうこの世界を救うことは諦めている。なぜならば……残りの一人……つまり、残りの一人が……。『大魔王 ルシファー』の配下だからである。だから……『大魔道士 オルタ・リリィ・リリィ』と『聖女 リリアム』がこの世界に来るまで……。この世界を救える人物は現れなかったからである。
だからこそ……。これからの私の旅はとても危険なのかもしれない。でも……。私達はこれからこの『聖戦 魔王ルシファー討伐の戦い』に参加することを決めたのである。私も……この『世界』を守りたいから……それに、私の愛する夫……。『聖勇者 光』と、共に戦いたいという願いもあるのだ。私は……。私の使命のために、この旅を成功させなくてはならない……。
それから、私はアリア様に『魔法袋』のアイテムをもらったのでその中に、様々な物資を入れていったのだった。食料はもちろんのこと……。衣類などの日用品をいっぱい入れた。でも、その入れ終わった後、アリア様からある重大な事実を告げられる。実は、私達の仲間となるべき存在を、これからこの世界に呼び寄せようとしているのだという。そして、今すぐに……その仲間がこの世界に来なければ……私達には希望がなくなってしまうということを告げられた。
だから……一刻を争う状況だということがわかったのだ。だから、早くしなければいけなかった。なので、『魔道通信装置』を使って、急いで仲間たちと連絡を取ることにしたのである。すると……。私は仲間の『リリアム・ホーリー』に連絡することができたのであった……。すると……彼女は、私の話を黙って聞いてくれたのだ。私が話すことを遮ることなく最後まで……。
しかし、そこで……私に衝撃の一言が聞こえてきたのである……。
***『聖王陛下』の真実
『魔剣使い キリト』と『聖女 リリアム』の関係 ***
(……はあ?何が起きているんだよ!?……どうして『魔剣使い キリト』のことが、こんなところで出てくるわけなの?)
俺の名前は……桐島明彦だ。今は……。どうやら、俺は俺自身の記憶を思い出すことができないらしい……。だけど……。なぜか俺が、『神聖教皇 アルセリウス』の息子だってことや、『聖戦 魔王ルシファー』を倒す為の秘策を持っているということなど……いくつかの記憶が戻ってきたのだ。俺は……この俺に似ている奴と出会って、この世界に来れたことで記憶を取り戻したのだろうか……それともこの俺によく似た奴に記憶を取り戻してもらうきっかけがあったのか?それはまだわからないが……。そんなことを考えてもしょうがないよね……。それよりも……。俺は、『勇者候補 リリアム』のことをもっと知りたかった。この世界に来てしまった以上……何かをしなければならないんだろう……。
だから俺は、目の前の人にいろいろ聞き出すことにする。
* * *
***
* * *
***
私は……『大賢者(アーク・ウィザード)
リリアム・ホーリー』です。この子は『大魔導師 オルタ・リリィ・リリィ』ちゃんといいます。この子は私の妹分であり親友でもあるのです。ちなみに……私の本名は、『リリアム・メイガスプリンセス』と申します。
***『神聖皇国 神聖都にて』
俺は……『聖魔大魔導士 リリアム』ちゃんに色々と話を聞いたのだ。すると……俺の質問に答えてくれる。
俺は彼女に……「じゃあ……まず、君がここにいる理由が気になるんだけど……。どういう理由で君はここに来たんだい?」と言うと……「私は……。もともとはこの『聖戦 魔族領』にいたんですけど……。『聖王国 神聖教皇 アルセリウス』が、私を助けてくれたんですよ。『魔王軍 四大将軍 魔王 サタンロード』との最終決戦に負けてしまいそうなときにね……。そして彼は、私と一緒に『魔王城』に行きました……。その時に彼は……。魔王に囚われていたんです。それで、魔王の弱点を見つけることに成功し、私は魔王を倒したんですよ。」と言った。すると……。リリアムちゃんの隣に座る……『大賢者(アーク・ウィザード)オルタ・リリィ・リリィ』ちゃんが……、「そういえば……お姉ちゃんは……その『魔王』に負けたんだよね……。その時の相手は……『暗黒魔導士 ベルフェゴール』って人だったっけ……。そして……。『暗黒皇帝 ダークネスカイザー サタンロード』がいて……『神聖魔導士 エルデリオン』がいたんでしょ?
『聖女 リリアム』ちゃんが、『大魔道士 オルタ・リリィ・リリィ』が、『大魔導士 リリアム』がいなかったらきっと……その『四大将魔将軍』には勝てないもん……」と言ってきた。
(……ん?『暗黒魔導士 ベルフェゴール』に、『神聖魔導士 エルデリオン』って何者だ?まぁ、とりあえず、この二人は『大魔王』の幹部クラスの存在なんだろうな……。しかも魔王軍のナンバー3くらいのレベルだろうな……。だが……。リリアムの実力を考えるなら、四天王の中では一番弱い方だと思うし……そこまで苦戦するほどの強敵ではないはずだ。おそらく、こいつらは、幹部の中でも強いほうの『六将鬼将』クラスの力があるんじゃないだろうか……そして……この子たちこそが、俺の仲間となるはずのメンバーなんだろう……。でも……。その話の中で出てきた……。『聖魔大魔導士 リリアム・ホーリー』の過去はあまりにも悲しい話ばかりだった……。そして……。この世界の本当の歴史を知ることとなる。この話は俺にとってはかなり重要なことなのだ……。
* * *
* * *
* * *
***
* * *
* * *
* * *
***
「そろそろいいでしょう……。あなたたちがこの世界に来る前の記憶について話しますよ……。その方が、お互いの事をよく理解できると思いますからね……」というと……。
リリアムは俺達に、俺たちの世界で起きた事と、なぜ俺達がこの世界に来てしまったかという理由について語り始めるのであった……。
***『光と闇の運命の戦い』と光の神性『光の騎士 リリアム・ホーリー』
***
私が……『神聖騎士団総団長 アルス・セイクリット』として、光の神性を授かったのはこの世界を救う為の救世主となるためだった。私が光の属性を持ったのには意味がある。
なぜならば……私がこの世界を救うためには……『魔王ルシファー』を倒すことが必要不可欠だからである。
そもそも……『魔王ルシファー』は、『魔剣 エクスカリバー』を所持した状態で、私の前に現れたのである。だから……私と魔王との戦いは避けられない宿命なのである。なぜならば……。私の力では……。『魔王ルシファー』には勝つことができないからである。そして……この世界を破滅へと導いてしまう可能性があるからだ。私は自分の身を犠牲にしても世界を救いたいと強く願った……。そして……。ついに私は……。魔王を打ち滅ぼすことに成功する。だが……そこで私の意識が途絶えることになったのだった。そして次に目が覚めた時には……私は、光と闇……二つの力を持つようになっていたのだ。つまりは、私の力は二つに分かれているということである。それが意味することは、私には……魔王を滅ぼすことのできる力はあるが……。この世界を守れる力は無いということを表しているのだ。だから……この世界を救える人物が必要だった。私の子供である『光の聖女 マリアージュ』と、『魔剣士 キリト』の二人が。だから私は、彼ら二人に希望を託すことにしたのである。この『魔道通信機』を通して、私が彼らの旅をサポートできる環境を作ることに成功した。しかし……私の体が、もうボロボロになり、私は……私の体を保つことができなくなってしまったのである。そこで、私達は……私の体を『魔道生命体 ルシア・ミティレア』に変えることにしたのである。しかし……この方法は失敗してしまった。私が『魔道人形(ドールマスター)』に頼んでいたのだ。この世界で……魔王ルシファーを倒し得る存在を作り出す為に……。そしてその副産物として生まれることになるであろう……。その者たちをサポートするための新たな力を作り出したのである。それは……。魔王ルシファーを倒すために必要となる……。『聖剣エクス』と『聖魔剣デュランダル』と……。この二種類の武器と、それに見合うだけの強い魂を持つ人間の器が必要であったのだ。そして……それらの素材は全て……。この世に存在しないものばかりであったのだ。だから私達は……それらを召喚することが不可能だったのだ。でも、諦めずに私は研究を続けていった。私は『聖剣エク』や、『聖魔剣デュランダル』のような特殊な力のある特別な魔鉱石や聖水、聖魔水などを人工的に作り出すことに成功させたのだ。そして……。それを合成させることにも成功させることができたのだ。そうすることによって……。強力な聖と魔の力を兼ね備える武器を誕生させることにしたのである。その実験を私は繰り返し行い、成功したものが……この『魔道戦士』であるのだ。
これが、私がこの子を作った経緯である……。
***
リリアムちゃんが語ってくれたのは、かなり凄惨な出来事の話だった。しかし……。この話が真実ならば……。もしかしたら……。俺が、この世界にやってきたことは必然的なものだったのではないか?
『神聖皇帝アルセリウス』の息子であるこの俺こそが……。『神聖騎士』であり、『聖魔大魔導士 リリアム』の生まれ変わりの彼女を助ける為に来たんじゃないか? そんなことを考えると……。なぜか、心が落ち着く感じがした。まるで俺はこの世界の人間じゃなくて、元々この世界に存在していたような気がするんだよね……。もしかすると、記憶が戻ってないだけで……。俺は俺自身であって、この体の元の持ち主が、『勇者アキナヒト』だったとしても、違和感なく生活出来ていたと思う。そして……記憶を取り戻すことも……そんなに時間はかからないと思うんだよね……。
俺がそんなことを思ってリリアムちゃんに視線を向けると、彼女はこちらをじっと見つめて、俺のことを待っていたようだ。
「……なるほどね……。だいたいわかった。ありがとう。俺のことについて詳しく話してくれる?」俺は、そう言うのであった。
***『勇者候補 リリアム』の視点 ***……どうやら、彼は私の過去の話を信じることが出来たみたいです。私は彼が『私達の敵』にならないようにと願いながら話していたのですが……どうやら……大丈夫そうですね。
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「俺の……。前世についての話をしてくれないかな? 俺自身のことで知っておくべきことがあるからさ……」と言うと……。俺の前世の記憶が戻った……。いや、正確には……俺の体に残っていた記憶を思い出したって言ったほうが近いだろうな……。『神聖皇国 神聖教皇アルス・セイクリット』として生きていた俺の思い出が……。俺はその記憶を思い浮かべながら、目の前の女の子の話を聞いていた。その話はあまりにも残酷な話で……とても聞くに耐えられないようなもので……俺は思わず泣いてしまった……。その話の内容が……。
この世界には……魔王を倒すために存在するとされる、特別な能力を持つ者が五人いるということだ。まず……『大魔道士オルタ』と『大賢者オルタ・リリィ・リリィ』は『大魔王サタンロード』を倒したことにより得た力でこの世界の全ての魔導師の頂点に立つことになったのだという。この世界の人々は『オルタ』と『リリィ』の名前を崇め、尊敬し、そして感謝の気持ちを伝えるために建てられた『聖城』の中に住んでいるのだと……。そしてこの二人の名前は……。『大魔王サタンロード』に殺されたはずの四大将『暗黒魔導士 ベルフェゴール』の転生体の名前でもあるという……。
また、俺が今いる場所は『光の大森林』のすぐ近くの村の『神聖皇国の外れの田舎村』だという。この村にリリアムという名前の娘は存在するはずなのだが……。その娘の顔と名前が全く出てこないのだ……。この娘とは、いったいどういう関係なんだろうか? そして俺は、そのリリアムさんと会う為に、神聖都『聖皇』に向かうことにする。
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リリアム・ホーリーの視点で物語が進むとこうなります…… 私はその事実を聞いて驚く。まさか、『大魔道士』様のお子様に……。『魔剣士』の称号を与えられていた方がいらっしゃったなんて……。
それに……この方のお名前は聞いたことがありました。リリアムさんの話では……その方は……。この世界に来る前は……普通の大学生だったということです……。その人が……。この世界の平和と秩序の為に……。自らを犠牲にしながら戦ってきたなんて……想像もしませんでした。…………リリアムの話から考えると……。おそらくその人は……。自分の家族よりも……他の人々を優先しなければならない理由があったのだと思います。でも……。私にはその人に会わなければならないと思った。私のせいで死んでしまってごめんなさいと言いたくなっていた。だけど……今はそれどころじゃないんです……。その方の記憶が戻りさえすれば、この世界を救うために協力してくれそうな気がしましたからね……。
私はその思いを強く持ちつつ、その人を探すことにしたのである……。
「俺と……俺と一緒にいた人たちについては……まだ分からないのか?」と俺がリリアムに質問をしたが、 その答えが帰ってくることはなかった。なぜならば……『神聖皇帝アルス・セイクリット』の娘である『聖女マリアージュ』と『魔剣士 キリト』は、もうこの世界にはいないからなのだ……。そして……二人は……別の異世界へと転移してしまったのだそうだ。そして二人を見つけるのはかなり難しいだろうと、その『魔剣士 キリト』の知り合いだと名乗る女性が教えてくれた。なんでも……その人は……。魔族の領域にある島にいるらしく……。その魔族達と共存をしている種族の人達の所に行くと……二人の情報を得ることができるかもしれないらしい……。……え? ちょっと待って!!!!
『魔剣エクス』が『神聖騎士』になったということは……。あの『魔剣エクス』を持っている奴がこの世界に来たっていうこと!??? 俺はそんなことに驚いたのだが……よく考えたら、そんなことを言っている暇がなかった。なぜならば……。突然……地面が揺れ始めたからだ。地震かと思って慌てて外に出たら、外には……。見たことのない化け物たちが暴れ回っていたのである。しかもそれは、俺がいた場所だけでなく……。この辺り一帯にいた人々はみんなパニックになっていた。だから俺はその光景を見て……すぐに思ったんだ……。『魔剣士 キリト』は『聖魔剣士 リリアム』を守るために『聖騎士の卵』となったのではないかと……。なぜならば……『聖魔剣デュランダル』と『魔剣エクスカリバー』の力を解放した状態なら……あのようなモンスター達は簡単に倒せてしまうからだ。俺はリリアムを守る為にその化け物の群れに立ち向かったのだ。……だけど……結果は無残なもので……あっけなく俺は死にかけたのだ。そこで俺は……。自分が持っている特別な力を使うことによってなんとか生き延びることができたのだった。しかし……。『魔剣士 キリト』の力を完全に制御することはできなくて、この『光の大森林』の一部を焦土に変えてしまうほどの破壊力を見せてしまったのである。その結果、『魔剣士リリアム』と、『魔道戦士』の『ルシア・ミティレア』の体に大きなダメージを与えてしまっのである。だから俺は……意識を失う直前に、『神聖皇国 神聖教皇アルス・セイクリット』に頼んで、『ルシア・ミティレア』を生き返らせることにしたのだ……。俺は、自分の記憶を思い出すと同時に……。この世界で何をすべきかを瞬時に理解したのだ……。そして……。この世界を救う為に……俺はこの世界を後にすることにしたのだ……。
俺は『聖騎士』となり、『魔道戦士』と共に魔王を倒す旅に出ることになるのだが……それについての説明はこのくらいにしておいて……。この世界にやって来た『魔剣士 リリアム』の話をしていこうと思う。彼女は……リリアム・ミティーリアと、ミティアナという名前でこの世界にやってきて、最初は冒険者をしていたのだという。そして……。俺と同じように……『魔道戦士 ルシア』の体に宿ることになったのだという。そして……リリアムは俺と出会うことになり……。一緒に旅をすることになったのだ……。それからの俺は、その女の子が語る話を真剣に聞いていた。そしてその話はあまりに凄惨な内容だった為、涙を流すのも仕方がない事だと思う。俺は、その女の子が語ってくれる話が本当なのかを確かめようと、ステータスを確認する魔法を使って確認した。……やっぱり……俺が『勇者候補』だったんだな……。それにしても……どうして『勇者』が『魔道剣士』と……そして俺の幼馴染みの名前が、リリアムとミティアに変わってたんだろう? そう言えば、この女の子の容姿は、俺がよく知っている女性に似ているんだよ……。その人はリリアムと同じような銀色の髪の毛をしていて……。顔もよく似ている。俺は、その女性の名前を呼ぼうとしたけど、俺はまだ名前を知らなかったので、その名前を聞くことにしたんだ……。そうしたら、目の前のリリアムの体が光り始めて、そして目の前に『聖魔導士 リミアーナ』が現れて、そしてリリアムを庇うように立ちふさがり……。リリアムを安全なところに連れて行くと言って姿を消した。そして俺は、この目の前に現れた『聖魔導士 リリムア・フォン・シルヴァニア(略してリリィと読んでください。この方の前世の名前は『神聖騎士 リリアム』というそうです。)は、自分のことを『管理人』だと名乗りました。
リリアムさんの前世の名前ってリリィさんだったんですね……。私も、初めて知りました。リリアムさんの前世の名前は、リリアム・エルフェンティーナ・フォン・アルス・セイクリットさんというのだけれど……。この人は『聖教皇』様の娘であり、聖騎士団の副団長を務めていたのだと言う。その人は……。『魔道戦士』であるリリィ・フォン・エルフェ・セイクリットと一緒に『魔王軍』と戦い続けていたのである。『魔王軍』との戦いにおいて……。多くの仲間を失ってしまいましたが、その中でも……。とても勇敢な女の子がいましてね。彼女こそ……私の命よりも大切な人だったのよ。私は彼女に恋をしていましたからね。彼女のことが心配でたまらなかったわ……。その女の子の名前は……『魔剣士 キリト』と言うのですが、彼はある日を境に行方知れずになってしまいました……。そしてその日以降から私は彼を探し続けているのです。……どうやら、この人の記憶は戻ったみたいですね……。
『勇者 リリアム』は目を覚ましたようだ。そしてその瞬間に何かを決意したかのように行動を開始していたのだ。……だがそれは、今の俺に出来ることではないと判断したので……。俺はとりあえずは様子見をすることにし……。リリアムに付いていくことにしたのだった。
俺が目覚めると、そこは森の中だった……。
周りに誰もいない……。
俺は……リリアム・ミティーリアとしてこの世界に生まれ変わり……そして俺の幼馴染みの体に入り込んでいるのである。だけど……俺には全くその自覚がなく、そのことに対して違和感を感じることもなく過ごしているのだ。だけど……。この体の持ち主が『魔剣士 キリト』だというのは間違いないらしいのだ。俺の固有スキルである『鑑定』を使うと……。俺が『魔剣士 キリト』だって事がわかるんだよね……。それで……『聖剣エクスカリバー』を手にする資格があるみたいなんだ……。
まぁ……。『聖魔剣士 ミティーリア』っていう名前は嫌いじゃなかったので、名前を変えるのには抵抗があったんだけど……。でも……。これからこの世界の人達を助ける為に戦うことになると思うので、いつまでも『魔剣士キリト』では格好悪いから……俺は自分の名前が嫌だったこともあって……俺はこの世界を救うためだけに『勇者』になることを決めたのであった。
まず最初に俺のステータスを詳しく確認しようと思い……そして驚いた。俺の職業が変わっていることに気づいたからだ。しかも……職業だけではなくて……能力値やレベル、スキルなどの項目が初期化されていたのである。だから俺は……。俺の『聖騎士』の能力と、リリアムの体に入ったことによって得たであろうリリアムの能力とレベルを引き継いでいたんだ……。それに……リリアムの記憶と知識と経験を受け継いでいるようでもあるし……。この体は……俺が想像した通りに動けるような気さえしてくる。だけど……。そんなことは後回しだ……。俺は、リリアムと一緒にこの森を抜けて次の街へと向かい、そこで『冒険者ギルド』に登録をするつもりだった。この世界でも俺と一緒だとわかったリリアムを危険な目に遭わせるわけにもいかないので俺は一人で行こうと思ったのだが……。この体の本当の所有者の許可もなく、そんなことをしたら、俺はリリアムの事を信用できなくなって、最悪殺されかねないと思い直し、仕方なくリリアムと行動をともにすることにして、『神聖皇国 神聖教皇アルス・セイクリット』に、許可を取ることに決めたのである。……しかし、この体には俺の意思がしっかりと反映されるようになっているみたいだ……。それに……『魔道剣士 ルシア・ミティレア』の知識と経験があるおかげで……。この世界に来ているという幼馴染みを探せるような気がしたのだ。俺には……幼馴染みが3人いるが……。その三人の中で……一番強いのは『勇者 リリアム』だから……。その記憶を頼りに探し出してあげたいんだ。そして俺のことを待っているはずなんだ。そんな予感がしてならないんだよ……。
俺はそんなことを感じながらも、リリアムと一緒に行動する為にリリアムと共に行動を開始したのである。しかし……。いきなり襲われるなんて……予想外だよ。俺が『聖魔道戦士 ルシア・ミティレア』の体を手に入れて……。この世界で生きていくことになって数日たった時のことである。リリアムと一緒に行動を始めたのだが……。俺達は『魔物の大群』に襲われていたのだ。その『魔物』は、俺達が暮らしていた『神聖国』のある『光の大森林』に生息するモンスターとは比べものにならないくらいに強い奴ばかりだったんだ……。そんな『強敵』がたくさん現れる中で、俺は、そのモンスター達を蹴散らしていくことができたので……少し安心をしていたのだ。リリアムの方も……問題なさそうだし……このまま何事もなく終わるかなと思っていた矢先に……。突然……。モンスターが現れたのである。しかも、今までに戦ってきたモンスターよりも格段に強かったのだった。それに加えて……。リリアムを襲おうとしたのだ。……もちろん……その攻撃を防いだが……。俺の攻撃はあっさりと跳ね返された上に、リリアムがダメージを受けてしまったのだ。……リリアムに傷を付けた『そいつ』を俺は許せなかった……。だから……俺は……。リリアムを守るためにリリアムを庇いながら戦い続けたのだ……。しかし……。いくら倒しても次から次にモンスターが現れてきて、倒すどころかどんどん体力を奪われていってる始末だったのだ。だから俺はリリアムを守りながら逃げ出そうと思ったのだが……。それを遮るように、今度は『聖魔剣士 ミティレア』の方にモンスターがやってきたのである。そして……。リリアムを守る為に俺はリリアムから離れざるを得なかったのだ……。俺は必死に逃げたのだが……。すぐに追いつかれてしまい、そして……俺は死にかけてしまったのだ……。だけど……。ここで死んだとしても、また『魔王神』が復活して新たな『魔王候補』を生み出すだけで何も意味がないと思えたのだ……。だからこそ……今度こそ俺は、この世界の為に生きなければならないと感じて……。そして死ぬなら……俺がこの世界で救うべきだった『光の神教国の人たちをこの手で守りたかった……。俺のこの力があれば……守れるかもしれないのに……。こんなところで……諦めたら駄目だ。最後まで諦めずに頑張ってやる!! リリィの事は……リリムアに任せればいいか……あいつはリリィの親友みたいだし……。リリムアならきっと俺の代わりにこの世界を救ってくれるだろう……それにしてもリリムア……なんで女になってるんだろう?……あの男勝りな性格だったら絶対男の人だと思うんだけどな……。……って! 俺が死んでどうするんだ!?)俺は自分の愚かさに呆れかえった……。俺は……リリアムがリリムアに変わったことにショックを受けたのか……それともリリムアの姿が見えたことが衝撃的だったのだろうか……それはよくわからなかったけど……。とにかく自分の弱さを痛感させられた。
そして俺は意識を失ったのだった。……目が覚めると俺は白いコントラストをバックにした女神さまの前にいた。その女性は『七属性』を操ることができるらしく……その中でも特別な存在だと言う。
俺が目を覚ますとそこには女神さまがいた。
『こんにちは。私の名前はアリア・リリスティアといいまして、この世界ではあなたたちで言ったところの女神のような仕事をしているのよ。』
「俺の名前は……えっと……」
俺は名前を言おうとして、思い出せなくなっていたのだ。……それになぜか頭が混乱していた。なぜ俺の名前を忘れてしまっていたのかわからなかった。ただ、この目の前にいる女神の名前だけが何故か思い浮かぶのだ……。だから、俺はこの人が言っていることが真実なのかどうか確かめるために……。目の前の女性の事を『鑑定眼』を使ったんだ。すると……。確かに目の前の人物の名前が判明したんだ……。そして俺は……自分が『聖剣エクスカリバー』の勇者で『聖魔剣士 ルシア・ミティレア』という名前だということを思い出したのである。……そしてそれと同時に俺はこの体が元々の持ち主ではないことも理解してしまった。……だけど、この体の持ち主がどんな人なのかがとても気になってしまったのだ。なぜなら……その人物は、俺の幼馴染みの女の子にとても似ていたからである。……そしてその名前が『桐島和奈』だったことに俺は驚愕したのである。俺は、彼女がこの世界に来ていることを知り……そして彼女と再開するためにも、俺は『魔王軍』と戦って……『魔王候補』を倒してこの世界に平穏を取り戻すために行動を開始しようと思ったのである。だけど……この世界に魔王軍が存在していないことを知らなかったのだ。
私はリリアムの体を乗っ取って、そしてその体に転生してきました。……私は『リリアム・ミティーリア』という少女でした。『リリアム・ミティーリア』は聖都の教会で『聖騎士 ミティリア』として育てられた『勇者 リリアム』の生まれ変わりで、リリアム・ミティーリアに生まれ変わった私は『魔剣士 キリト・ディムレスティン』となっています。だから私の本名は『リリアム・キリト=ディムレステッド・ミティーリア』になると思いますが、正直言うと『魔剣士 キリト』の方がカッコいいと思うのでそのままにしておくつもりです。
私がこの世界にやってきてまだ1週間も経っていないのですが、それでも『魔剣士 キリト』の体の中に入っていた時よりも遥かに強い気がします。そして何よりこの世界に来るときに神様がくれた能力のおかげで、『神聖皇国 神聖教皇アルス・セイクリット』の中でも最強の剣士になっていたのです。……だからでしょうか、さっきから『魔剣士 キリト』を恨んでいたと思われる人達が襲いかかってくるのですが、その人達は全て返り討ち……というか一瞬で終わらせてあげています。そして……。私はリリアムの体を手に入れたのに、この世界の人たちは『リリアム・キリト』の存在を認めてくれないみたいなんです。それに……『リリアム』は『聖魔剣士 ルシア・ミティレア』っていう名前みたいで、リリアムはその記憶を失っているようです。……リリアムがかわいそうなので早く元の体に戻してあげたいと思ってしまいますが、今のこの世界で『魔剣士ルシア・ミティレア』が最強だと言われているのなら……。それにこの世界でのリリアムと会える可能性も高くなりますし……。この世界でリリアムに会う為にもこの体は必要になってくると思ったので私はこの体の本当の持ち主に返すことを諦めることにしたのです。
それからしばらくして、この世界の人たちを『神聖教皇アルス・セイクリット』に残して……私は一人でこの国を出た後に、この国で起きた『魔王軍の侵攻』のことを詳しく調べようと旅をすることになりました。その途中で色々な国や村などを回ってみたんですが……。どの国にいってもリリアムのことを誰も認めてくれなくて……『魔剣士 ルシア・ミティレア』のことを知らないって言われちゃいました。だけど……『魔剣士 ルシア・ミティレア』がこの世界にいることを知っている人もいて……。この国では有名だったようで……『聖魔剣士 ルシア・ミティレア』が『魔族四天王』を倒す為に『勇者 リリアム』と別れたあとは行方不明になっていると噂されていて、リリアムが『勇者 リリアム』に倒されたのではないか……ってみんなが話してたみたいです。だから、リリアムに悪いことをしてしまったなって思ったんです。それに、リリアムの知り合いには何人か会いに行くことが出来たんです。
でも……みんなリリアムの事なんて知らなそうな顔をしていて、本当に嫌になってしまいました。……それにみんな『勇者』である『聖魔剣士 ルシア・ミティレア』をリリアムだと思っているみたいで……。私は……そんなんじゃなくて……『魔剣士 キリト』なんだから……。もう、どうすれば良いのかさっぱりわかんなくなっちゃいました。それに……このまま『聖魔剣士 キリト』として生きていたら、また同じことが繰り返されるような気がしたので、私はこれからのことを考えながら……。今はとにかくリリアムに会おうと思ったんです。そして私は『神聖皇国 神聖教皇アルス・セイクリット』から離れて……。
私はまず、聖都の近くにある森に来ていたのだ。この辺りの魔獣達は『聖属性』の力によって浄化されていっていて、ほとんど魔獣はいなかったのだ。だからここにいても何もすることがなく、暇だった。そして森の中を散策していると、少し離れたところにある泉がとても綺麗だった。……そこでしばらく休憩をしていると……急に泉が輝きだしたのだ。その瞬間……。目の前が光で見えなくなった……。
そして光が収まるとそこには……銀髪で青目の美少女がいたのだった。彼女は私を見るといきなり……。『こんにちは。あなたは誰ですか?』と言い出したのである。……その言葉に私は驚きを隠しきれずにいた。なぜなら、私は彼女の顔を見てすぐに『女神』なのだとわかったからだ。
だけど……。どうして女神である彼女が私の顔を見たことがあるのだろうかと疑問に思って聞いた。すると、女神は私の名前を聞いただけで『魔剣士 リリアム・ディムレステニアさんですよね』と言ってきたので、私は驚いた。だって、私の名前を知っていた人はリリアムの家族以外いないと思っていたから……。
「はい。そうですよ」
私は戸惑いながらも答えたのである。だけど女神の表情はとても険しいものになっていたのだ。だから、私は何かあったのかもしれないと思い聞いてみることにした。だけどその時女神は……とんでもない話をし始めたのである。……『この世界には今、6人の『聖属性』を持つ人がいます。そしてその中には、聖属性を持たない人が一人だけ混じっていたのよ。それがあなたのことで、この世界に来た時から、ずっと探していたのよ……。』
「あの、どういう意味でしょうか?」
「つまり……。私が……『聖魔剣士 ルシア・ミティレア』だということですか?そして、聖属性を持っていない私は『勇者』ではないので、『聖騎士 ミティリア』ではないから、リリアムとして扱わないで欲しいということなのですか……?」
『えっと……。そうじゃなくて……。……あなたはこの世界に来る前に神様と出会って……力をもらったのよ。……それであなたは自分の本来の体に意識を移し替えることができたみたいなのよ。……それで……。『勇者』という称号を持っていた者は聖属性を宿しているけど、この世界の人たちが思っているように聖属性を持っていない『ルシア・ミティレア』は存在しないから……この世界の人たちにとっては……あなたのことは、ただの『魔剣士 キリト』にしか見えないらしいの。だから……本当の名前を名乗る必要はないの。それと、聖騎士ミティリアではないあなたは『聖女』になることができると思うわ』
私はその説明に驚いてしまい、開いた口が塞がらなかった。そしてそれと同時に私はこの目の前にいる女性がこの世界の管理神だと知ったのであった。
(ねぇねぇ……この人の名前はアリアっていうんだけど……なんと『女神』でした!!なんか……凄くびっくりしてるんだけれど……。しかもこの子……この世界の管理者みたいだから色々この世界のこととか教えてくれたの。それで私はこの子が言っていた通りこの世界の管理神様であるアリア様にお願いをした。……だけど……アリア様の話では私はこの世界に元々存在しているはずのない存在らしく、私の体が元の世界に戻ることは出来ないみたいです。
でも私は、自分の元の体を取り戻せるまではリリアムの体で生活をしていこうと思ったの。だから私は……私の体を探したいと思っているの)
そう言って俺は女神アリアさんに俺の元の体を探すために手伝ってほしいと頼んでみる。
(あーうん、それは問題ないかな。一応私の方でもリリアムちゃんの元の体の捜索をする為に部下の天使達に命令を出しておいたし……。リリアムさんの元になった体は『勇者』っていう特殊な体質を持った人間だから……多分、その世界ならまだ死んでないと思うのよね……。まぁ、『神聖皇帝 神聖王 アリウス』も私の部下達をこの世界に派遣するだろうし……。とりあえず私の方の問題は解決したわけだしさ、この世界を一緒に見て回りましょう?)
こうして俺達は旅を始めることになった。そしてアリアが案内してくれたのは『聖都 ホーリーロード』と呼ばれる大きな町の近くの森の中にある湖と神殿のような建物がある不思議な場所だ。そしてこの場所で……
『女神 アリアンロッド』の配下で、『大神官 アリッサ・ディグナテッド』の魂と融合したアリアの部下である。『大天使長 セラフィムエンジェル』である。名前は、『アリアージュ・イクスフォリア・ルウ』というらしい。ちなみに…… 【種族】半精霊・天使族・『大天使 熾天使』・個体名 アリアージュ・ディズダレル・ルゥ そして……その部下の『小悪魔 インキュバス・ナイトメアサキュバス』で…… 【種族】半霊体・魔物・下級魔獣種・悪魔 名前は……『リリアム・キリト』の体の時はリリアムの心の中に入っていたこともあって名前を呼ぶことがなかったのだが……。俺は彼女達との旅の間に『キリト』と名前で呼んでいたので『リリアム』と呼ぶのに抵抗がなくなっていたので、今では自然と名前を言えるようになっていたのである。……『アリア』『アリッサ』『ユイ』の3人と仲良くなっていた。特に『アリッサ』とは『リリアム・キリト』としての時よりも打ち解けて……お互い気を許して接することが出来るようになっている。そんな感じで俺達が森の奥へ進んでいくと……そこには、泉があり、そこからさらに先に進むとある洞窟の中で、小さな光を見つける。そしてその光が少しずつ大きくなっていくのを目にした。そしてその光のそばに近づくと……そこには一人の幼女の女の子が立っていた。
その女の子が……その世界を管理する神様だということを知った俺達は、驚きが隠せなかった。だけどその子の口から出てきた言葉を聞いて、更に驚いたのだ……。なんとその少女は……『この世界の管理者』と名乗ったからである。
(私は……この世界の『聖属性』を司っている管理者のアリアだよ♪みんなよろしくねっ!それで、あなたは一体……リリアムちゃんなのかな?それとも、その体の持ち主さんの意識が入っているとか?もしくは……リリアムちゃんが乗り移った別の人の可能性もあるよね?……でもその様子だと、あなた……記憶喪失みたいだね?う〜ん、どうしようか迷ってたんだけど……ちょっと提案なんだけど……その体を貸してくれないかな?)
突然の提案に戸惑ったが……。どうやら俺はこの子の力になれるかもしれないと思い、協力することにしたのだ。
そして、その瞬間……俺は目を覚ましたのだ……。
俺はゆっくりと瞳を開く……。そこには心配そうな表情を浮かべている三人の少女の顔があった……。その光景に俺は驚く。
「あれ!?……どうして……ここにいるんですか?」
すると三人のうちの一人の……銀髪で青色の目を持つ美少女が……話しかけてきたのだ。
(よかった……。目が覚めたのね……。あなたが倒れてしまった時に、私は必死になって呼びかけたんだよ?……本当に死んじゃうかと思った……。だけど……良かった。)
「……あっ……。あの時の子なんだね。助けてくれてありがとうございます。」
そしてその後、もう一人の金髪碧眼で白い修道服を着ている少女が話し掛けて来た。
「もう、本当に驚いたんですよ?だって、いきなり倒れてしまうのですから……。あの……。大丈夫なのですか?」
「あっ……。えっと……」
その時……。今まで話していなかった。黒髪をポニーテールにした赤目の女性が、俺を抱きしめてくる……。そして、その女性からは微かに血の匂いがしたのだ。そのことに俺は……少し警戒心を抱いたのだが……。何故か安心してしまった。
それからしばらくして、銀髪で青い目を持つ美少女に……。自己紹介をしてもらって……。名前を聞いたところ……。彼女は、俺のことを『勇者 キリト』だと思わない方が良いと言ってきた。そして、『魔剣士 リリアム』という名前を使って欲しいと頼まれたのである。だが彼女は……『魔剣士 キリト』のことが嫌いだからその名前は絶対に使いたくないと、そう言って拒否していたのである。そこで俺は『キリト』という名前は使わないことにしたのである。……『リリアム』と名乗るのにも最初は違和感を感じていて……。だけど……。今はすっかり慣れてしまっていた。
そして次に金髪で青い目の美人である少女に話しかけられて……。その子は俺のことを心配しているということもわかったのである。そしてその子が『聖女』であることに驚いていたのだ。だけど……。この子から聞いた話はもっと驚きの内容だったのである。……そして俺は、この世界の管理者が目の前の女の子であり……。しかもこの子は、俺と同じ『転生者』だと言うことを教えてもらったのだ……。
そしてこの子も、自分の元の名前と今の姿が結びつかなくて、悩んでいたということを知り……。俺が知っている情報を教える代わりに……彼女に協力してもらおうと思い……。そして俺は自分が『聖女』だということを伝えたのだった。
そして俺は……自分のことを話す……。まずはこの世界に元々存在していたはずの無い存在であることと、『勇者』であるはずなのに『勇者』ではない存在だということ。そして『聖魔剣士 リリアム』として生きているということだ。
『聖女 ミティリア』として生きていけたらいいと思っていた俺に……。俺は自分の正体を明かそうと決意したのである。だけど……それを言うと俺を仲間外れにしようとしてくる人たちがいることを思い出した。だから俺は自分の本当の名前を明かすことができなかったのである。
だけど……この二人には俺が隠していたことを話しても大丈夫かもしれないと思い始めていたのであった。
そして……。この世界が今大変なことになっているということを聞いて……俺がなんとかしたいと思っていることを伝える。すると、二人が俺に協力してくれることになり……。
こうして俺は……。『女神 アリア』の配下である『大神官 アリッサ・ディグナテッド』と融合して……。この世界を管理する神になった。
『聖女 ミティリア』と『勇者 キリー・ミティリア』の人格が俺の中に同時に存在することで……。この世界の『固有スキル』を使うことが出来るようになった。……だけど、『聖属性魔法』だけは使うことが出来なかった。そして、『大天使 セラフィムエンジェル』であるアリッサの肉体を借りて……『神聖皇帝 神聖王 アリウス』と戦うことを決意する。だけどその前に俺は自分の体がどこにいるのかを調べることにするのであった。……この体の中には『聖女キリト』の魂が入ってきているが……。本来の俺である『勇者 キリト』はまだ死んではいないような気がするのであった。そして俺達の前には『大神官 アリッサ・ディグナテッド』が使っていた天使達が現れた。その姿を見て……。『大魔王』の力を開放することに決めたのである。
そして俺は……『勇者 キリト』と『聖女 キリト』の力を融合させた。そして新たな姿となる……。その名は……。
「我は、『大魔王』……。『魔王 ルシファー』…………!」
その瞬間、凄まじいオーラと魔力を放ち……。辺りの木々を枯らす。そして……。この場にいる全ての敵に向けて攻撃をしかける。俺に戦いを挑んできた天使達は……。その一瞬の攻撃だけで全て灰になるのであった。そして……この世界の管理権限を手に入れた俺は、自分の居場所を知る為に『天界 オリエンス』へ向かおうとする。すると『大悪魔 サタン』である俺に、『小悪魔 インキュバス・ナイトメアサキュバス』であるアリアが同行してついてくると言ったのだ。そのことについてアリアと話していた時に……アリアが自分の『体』を探していたということを思い出したのである。そして……。アリアが探している体の持ち主の名前は『聖帝 アルフリード・エルフィアス・ルウ』という。……つまり俺の妹だそうだ……。俺はその話を聞いたときに驚いたのだ。まさか、妹である彼女が俺と同じように別の世界で生きていたことに驚いたのだ。それに『聖属性』を司る神様でもあるみたいだし……。そんな感じで彼女と色々話しながら歩いていくと、森を抜けて町が見えてきた。そこで……。アリアが、この世界に『魔族 デヴィル』を召喚して暴れさせると言っていた。その理由は……この世界を支配しようとしている。『神聖帝国 ホーリーロード アリウス』を倒すためらしい。俺は、その計画について聞くことにした。
すると……彼女の計画では……。この世界の住人に自分達の存在を認知させてから……。この世界を完全に支配するために……。『悪魔族 デーモン』や『竜人族 ドラゴノイド』などの『下級悪魔』たちを呼び出して、住民達を殺していくというものだったのだ。……俺もその計画を了承することにしたのである。……そして、町の広場に着くと、既にたくさんの人が殺されていて……。その惨状に俺は愕然とした。俺は怒りを露わにする。そして……『魔神 デビル』に変身する。そして……。その瞬間、この場を支配していた悪魔が消滅したのである。俺が倒したのでは無いが、おそらく……。他の場所でも同じ様なことが起こったと思うのだ。そして……俺が町の住民を助けている時に、ある少女と出会ったのである。それが……この国の皇女様であり、王女である。
「私は、この国を治めている……現聖女を務めている。アルフリーダと言います……!貴方の名前を聞かせてもらえませんか?そして……お礼を言わせてください!助けてくれてありがとうございます!!」……彼女は……『聖女キリト 』の姉なのだという……。そして、この世界を救いたいのだという話をしてくれた後に……。
「私は……。『勇者 キリト 』とは戦いたくはありません!なので、お願いします!!私と一緒に戦ってくださいっ!!!」
その願いを聞き入れた俺は、彼女に協力することを誓う。……そして、俺は『魔皇』となり……。その『固有能力』を使って……『堕ちたる魔の神々 デスゴッド』の加護を受けて……。圧倒的な力で『暗黒神殿』と『神聖帝国 ホーリーロード アリウス』を滅ぼそうと考えていたのであった。……しかし……俺は、ここで予想外の事が起きてしまうのであった。
俺は今の状況に困惑していた。なぜなら目の前に『大神官 アリッサ・ディグナテッド』の姿があったからである。
「うっ、あぁ……。なんなんだこれ……」
(ふむ……。やはり……。これはどうなっているのですか?どう見ても……『キリト 』さんですよね?どうして『大神官 アリッサ』さんの肉体がこの中にいるのでしょうか?もしかすると……。『キリト 』さんは、『キリト 』ではなくて……。この子の体を乗っとっているとか?でも……『リリアム 』と名乗っていたようですけど……。どうなのでしょう?)
『大天使 セラフィムエンジェル』のアリアと会話をする。
「えっと……どういうことなんだ?……俺が、この子に乗り移ったっていう意味だよな?」
そして……。彼女は自分の推測を語ってくれたのだ。その話を聞いている途中で……。『キリト』と名乗る女の子から話しかけられる。
「えっと……。ちょっと待って下さい。まずは自己紹介からさせて欲しいんですが……」
俺は、『リリアム 』と名乗る女の子に自分の正体を伝えようとするが……彼女はそれを止めようとしてきたのである。
そして俺は……『リリアム』と名乗る女の子に、自分の名前を明かすことができなかったのであった。
だが……。その前に俺達は自己紹介を行うことにした。まずはこの少女からだ。俺に話し掛けて来たこの女の子は『リリアム』と名乗る女の子だった。そして、俺は自分の名前を名乗ろうとしたのだが……。それは出来なかった。そして俺に自己紹介を促してきたこの女の子は『リリアム』と名乗った。俺はその事に驚くが……。目の前の少女の話を聞くことにしたのである。そして俺はこの子に協力を申し出ることにしたのだ。だが、目の前にいる少女には俺の名前を伝えることは出来なかったのである。そこで俺は目の前の女の子が、自分の本当の名前を言いたいというなら俺も本当の名前を言う。だから俺も自分の本名を教えると言ってしまったのである。その結果、俺はこの子が本当の名前を明かしてくれたら俺も自分の本当の名前を告げると約束をしたのであった。……すると、俺達の会話が聞こえていたのか、この子の姉だという聖女が……。そのことについて聞いてきたのである。……そして俺は、この子を信用することに決める。この子に嘘をつく理由が見当たらなかったというのもあるが……。この子が俺に危害を加えることがないと直感的にわかったのだ。そして俺は自分の名前を名乗り、俺が別世界から来たことや『勇者 キリト』だということを明かすことにするのであった。
俺が正体を明かすとこの子は驚いた顔をしていた。そして……。聖女である姉にそのことを話し始めたのだ。
すると……姉が何かに取り憑かれたような状態になり……そして……急に動き始めたのである。そして……姉であるこの子は、妹である『聖女 リリアム』ちゃんに襲い掛かってきたのである……。だけど、なぜか俺には一切手を出そうとはしなかった。……いや、出せないような感じになっていたのだと思う……。そして、この聖女であるはずの少女に俺は剣を向けることになる。俺を殺そうとしてきていたので俺は反撃に出る。そして俺は『魔王』となったのである。
『大魔王 魔王 ルシファー』として覚醒し……。俺はこの世界に顕現させたのだ。するとこの辺り一帯は地獄と化したのである。だけど……。俺は攻撃の構えをやめることにする。すると『大悪魔 サタン』の力を使うのに抵抗があることに気づいたのだ。そこで……自分の力を解放して……。
この世界を俺の支配下に置き直す。そして……。聖女であるアルフリーダが召喚したという『悪魔族 デーモン』と『竜人族 ドラゴノイド』を全て倒して消滅させる。俺はその後……。この世界の管理権限を手に入れた。……だけど俺はすぐにそれをするつもりはなかった。
俺はこの世界の現状を知りたいと思っていたのだ。だから……。聖女の姉で俺と同じ異世界転移者であるこのアルフリーダと相談することにする。
アルフリーダと俺は、お互いのことを話しながら情報を共有し合ったのである。そして俺は……この世界の管理者権限を手に入れようとした時に現れた。このアルフリーダの魂を持つ『小悪魔 インキュバス・ナイトメアサキュバス』と融合したこの『神聖皇帝 神聖王 アリウス』という神と話をすることにしたのであった。
俺は、目の前にいるこの世界の支配者の神を名乗る『神聖皇帝 神聖王 アリウス』と対話を始めた。そして俺は……。自分の目的を伝えたのである。すると……『大魔王 魔王ルシファー』の力と……『堕ちたる魔王の神々 デスゴッド』の力でこの世界に顕現し、『神聖帝国 ホーリーロード アリウス』という組織をこの世から完全に抹消したいのだと言う事を告げたのだ。……そして、俺はこの世界で何をしたらいいのかをこの神様と相談をしようとしたのである。……すると、アルフリーダが……。俺に協力してくれることを言ってくれたのだ。そして……。アルフリーダは……アルフリーダの体に憑依していた『神聖教皇 神聖王 アリウス様』と話し始めたようである。……それからしばらく話していたアルフリーダだったが、俺の方へ振り向いて話をしようと言ってきたのだ。……そこで、俺達2人は、神聖帝城へと移動した。そこで……俺はこの世界を管理していこうと思うんだということをアルフリーダに伝え……そして……アルフリーダが協力することになって、話し合いが終わったのである。そして、俺達は『神聖帝国 ホーリーロード アリウス』の本拠地である『神聖帝国 ホーリーロード アリウス宮殿』へと向かうのであった。……だが……俺達が神聖帝城に到着するとそこには『神聖皇帝 神聖王 アリウス』の姿がなかったのだ。俺達は……その事について考え始めていたのだ。
(うーん……どこに行っちゃったんでしょうね……。『神聖皇家 神聖姫』である私にもわかりませんよ……。)……そうなのだ。俺は『大悪魔 サタン』と『魔神 デビル』に力の一部を開放しているのだ。それで俺達は、この世界の住人や魔物の思考を読み取り、その意思や記憶を見ることができるのだ。その事で……『神聖皇国 セイント王国』の王都にある教会から……何者かが『神聖皇国 神聖皇国 ホーリーロード アリウス』の拠点でもあるこの神聖帝の城に向かっていることが分かったのである。
そこで……俺の視界内に表示されているこの城の周辺の地図を見てみると……。……なんと、既にこの城に近づいている者がいることがわかったのだ。しかも、それは聖女であり王女でこの国の聖女であるはずのアルフリーダと瓜二つの容姿を持った少女だった。……つまりは、このアルフリーダと同じような存在だということだ。……だが、俺は、なぜだか分からないが……そんな少女を敵とは思えなかった。俺は……この子から話を聞いてみたかったのだ。
俺がアルフリードに提案をしたのは、彼女が持っているというスキルの『女神の加護』を使ってこの場にいた兵士達を治療してもらうことだった。そして……俺と『大天使 セラフィムエンジェル』であるアリアは……俺が新しく獲得したスキルの『堕ちたる神の神々の祝福 ゴッドブレス 』を使用してこの城内の人達に加護を与えることにしたのである。だが……『大悪魔 サタ・・ン』の力が封印されているせいなのか……上手く効果を発揮できないようだ。そして……。なぜか、アリアも同じように使えなかった。そこで……俺も一緒に『大天使 セラフィムエンジェル』のアリアも使えるように改良することを俺は決意したのである。そして俺は、この世界に来て新たに覚えたスキルの1つである『魔剣 ソードオブブラックドラゴン』に力を込め始めたのだ。その行動を見た『魔竜王 ダークネスエンペラー ルシファー 』と融合しているアルフリードが驚いていたようだった。
俺が自分の体の中に『魔剣 ソードオブホワイトエンジェル』と『魔槍 エンジェルファング』をしまうと、目の前の『神聖皇帝 神聖王 アリウス』の本体と思われる女性が現れたのだ。
俺が目の前の女性に自分の名前を告げると、彼女は驚いたような表情を見せたのである。俺はこの世界の管理者になりたいということを伝え……。彼女に協力してもらえないかを聞いてみた。……その結果は俺の思い描いていた通りになったのだ。
そして俺は……この世界をどうすれば平和な世界に出来るのか?という事を彼女に聞いてみることにするのであった。
すると……。彼女は俺に対してこの世界の未来についての質問をしてきたのである。そこで、俺は自分がこの世界に来るまでに起こった出来事などを簡潔にまとめて伝えた。その結果……。俺の言葉に心動かされた様子を見せていたこの世界の創造主を名乗る女性は、協力してくれることになったのである。……だが、彼女はまだこの世界の管理者になることに抵抗を感じているみたいだった。俺は、自分の力でこの世界を完全に支配下に置くことに成功した。そのことで……俺は『堕天使王 デミゴッド・ルシフェル 』の力を解放することに成功したのである。そして俺は……。自分の持つ『堕ちたる神族の力 堕ちたる魔王の力』を全てこの世界の住民達に開放することに決め……。この世界に顕現させたのである。すると……この世界は闇に包まれ……。そしてこの世界を支配することに成功したのであった。そして、その瞬間。俺の前に『神聖皇帝 神聖王 アリウス』と『聖女 リリアム』と名乗る2人の少女が現れ……。俺の行動を邪魔しようとする。そして……その少女は、何故か『大魔王 魔王 サタン』の力と……『魔王 デス キング』と融合した『邪気の大魔王 邪王サタン』の姿になるのであった。……すると、少女達は戦闘態勢に入る。そして……。俺に攻撃を仕掛けて来たのだ。俺もこの子達と戦うことにしたのである。
そして……俺は目の前にいる聖女の姉妹の片割れの少女『聖女 リリアム』の攻撃をかわすことに成功する。しかし……。もう1人の妹らしい少女『聖女 アルフリーダ』は攻撃を回避しきれなかったようである。そして……俺の放った魔法が『聖女 アルフリーダ』に当たる直前に俺とこの姉妹の間に割り込んできたこの世界の女神を名乗る少女の攻撃を受け止めてしまったのだ。すると……。この聖女アルフリーダが、女神に向けて攻撃を放ってきた。そこで……。俺は咄嵯の判断で聖女であるはずのアルフリーダに反撃してしまったのだ。
すると……聖女アルフリーダはその反撃を受けてしまい、聖女の証である法衣と装備が砕け散ってしまうのであった。俺はそれを目の当たりにしても……。この子を攻撃できなくなってしまったのである。なぜならば、俺は今……。聖女を殺めるという行為に忌避感を覚えていたのだ。そして……。俺は聖女アルフリーダを連れてこの世界の管理を任せる為に、『神聖帝国 ホーリーロード アリウス』が根城にしていた聖帝の城へ向かおうとしたのだが……。それを阻止されてしまったのである。
その時……俺は、聖女であるはずの妹の方と対峙する。
そして……聖女は妹と共に……俺のことを倒そうとしていたのであった。だが、俺はこの子の攻撃を全て回避する。すると……妹の方が怒りをあらわにして……。そして……聖女なのに聖属性のスキルを使い、俺のことを拘束するべく俺の周りに聖なる波動を放ち続ける。そして……俺は動きが取れなくなる。すると……そこに、姉の聖女である方が攻撃を仕掛けてきたのである。だが……俺はなんとか防御に成功する。
すると……。姉の聖女は……。その手に持っていた杖を投げ捨てて俺の目の前に立ったのだ。そして……。姉と聖女の方は同時に自分の胸に手を当てて呪文を唱えた。
すると……俺の意識は徐々に遠ざかり……。気がつけば俺と融合している『大悪魔 サタン』に何かをされそうになった。俺は自分の中に入っている『大悪魔 サタン』の力と『大魔王 魔王 サタン』の力を無理やり解放したのだ。そうすると……『大魔王 魔王サタン』と『神聖魔王 ホーリーロード アリウス』の力が完全に融合した『暗黒王 ダークネスエンペラー アリウス』となったのである。すると……俺の中にいる『暗黒王 ダークネスエンペラー アリウス』はこう言うのであった。
(ふっ……。まさかこのタイミングで貴様が私と完全に融合できるほどの存在に進化を遂げるなど誰が想像できたと思う?)
(そういえば……。『堕天聖姫 ホーリープリンセス・ヴァルキリー ルシファー』を吸収させてやった時に、俺の中で融合していたんだったな……。だが……それがお前と完全な一体化を果たすなんて誰も思わなかったよ……。だが……これなら俺と融合していた時の力がそのまま残っているんじゃないのか?)
(あぁ……。私の中に残っていた魔力のほとんどを使って、今の私が融合している状態になっているから……。私と完全に融合した状態になるのは、もう少し時間がかかりそうだ。……だから……。)
(なにをするつもりなんだ!?)
(この世界で、あの『堕ちたる神の神々』を封印していた結界を破壊して……。私の中にある残りの全魔力を使って、私自身を消滅させ、この世界から消え去るつもりだ……。だが……。それはあくまで時間稼ぎにしか過ぎないだろうから、その間に……。)
(それはさせない!絶対に俺の力でお前を救う方法を見つける。それまで……。いや……俺がこの世界の管理を引き継ぐまで……。俺の中から出ていかないでもらおう……。)
(……いいだろう……。私の命を預けておく。……それと……。この体は完全に消滅するから……後は頼んだぞ……。そして……。またいつか……。私は再びお前に会いに行く……。そのときは、お互いが真の姿で再会できるように祈っているから……。さらばだ……我が愛しの友よ……。最後にもう一度会えてよかった。感謝する……。……それから、この体を返しておこう……。……この世界と私を頼む…….)
『堕天使王 ダークネスエンペラー ルシファー』と『神聖皇帝 神聖王 アリウス』との融合は成功しているようだった。だが、『堕ちたる神の神々』との戦いによって……俺は『堕ちたる神の神々』を倒すために必要な最後の手段を手に入れることが出来たのだ。だが、その代償はあまりにも大きかった。……そして、俺はこれからこの世界の未来を救わなければいけなくなったのだ。俺が『暗黒王 ダークネスエンペラー アリウス』になったことで、俺の中の『堕ちたる神の神々』の一部を完全に掌握することができたのだ。その結果……。俺の中には……まだ見ぬ強大な敵と戦うことが出来るほどの力が宿っていたのである。……これで……。やっとこの世界の脅威に対抗できるようになったのだ。
そして……。俺はこの世界を支配するためにこの世界の各地にいた兵士達に自分の眷属となるように指示を出したのであった。すると……『魔竜騎士団長 レッド・ドラゴン ドラゴン・ナイト・エンペラー』のガラード将軍は俺に協力すると言ってくれ、この城の兵士達を率いて戦ってくれることになったのである。すると……俺は『魔竜王 ダークネスエンペラー ルシファー』の姿になった影響で『神聖皇帝 神聖王 アリウス』の持つ全ての能力が使用可能となっていた。しかも、この世界の管理者の特権としてこの世界のありとあらゆる場所に自分の分身を作り出すことが可能となり、さらに……。俺の能力が強化されたのである。俺はまず、俺の本体に何かがあった場合に備えての緊急避難用としてこの世界の各地に、分身を100体ずつ配置することにした。その後、俺は俺自身にも『神聖王の加護』を与えることにしたのである。この『神聖王の力』には、俺に様々な補助効果があるようで……。これによって俺の能力は更に強化されたのだ。だが……俺が新しく手に入れた『堕ちたる神族の力 堕ちたる魔王の力』を全て使うことで……俺は新たに2つの『固有スキル』を覚えることに成功したのである。そして、俺はこの『堕ちた神族の力 堕ちた魔王の力』を使いこなし……。俺に挑んで来たこの世界の住人である姉妹達と戦い始めたのであった。
すると……。妹の聖女アルフリーダは……姉の聖女であるリリアムの隙を突いて攻撃をしかけた。その攻撃が……リリアムにヒットするかと思われたその時、リリアムと融合をしている『聖帝 セイントロード リリアム』の防御結界がアルフリーダの攻撃を防いでくれたのだ。しかし……リリアムに攻撃が命中するのと同時にリリアムが反撃をしてきていた。その反撃を受けて……妹の聖女アルフリードの服の一部が砕け散る。だが、聖女は攻撃を喰らいながらもすぐに反撃をするのであった。だが、そんな聖女をリリアムも聖女と同様に攻撃を回避しながら聖女の攻撃を防ぎ続けていたのである。そして……お互いに相手のことを倒そうと攻撃を仕掛けるが当たらないのであった。だが、その時リリアムの聖女としての法衣にアルフリーダの攻撃の余波であるダメージが入っていた。リリアムは聖女としてアルフリーダが放つ攻撃を回避し続けるのだが、このまま攻撃を続ければいずれ自分が負けてしまうことはわかっていた。そこで……リリアムは勝負に出ることにする。だが、聖女であるリリアムがなぜこのような行動をとろうとしたのかはリリアムの思考が読めるようになっていた俺だからわかったのだ。その答えとは……聖女の力を限界突破させることだった。聖女であるアルフリーダが、自分の持つ最強の技を発動しようとしたのだ。それを見たアルフリーダの姉である聖女は……。
「……っ!!」
一瞬で自分の中に秘められていた膨大な魔力を解放する。その魔力の量はこの世界において最強といっても過言ではないほど強力なものだったのだ。だが……俺もただそれを眺めてはいなかった。俺は、俺と融合している『堕ちたる神の神々 ルシファー 魔王 サタン』が使っていた『闇の波動』の魔法を『暗黒魔法 暗黒王の一撃』に進化させた魔法を放ち……。アルフリーダとリリアムの周囲に巨大な漆黒の球体を発生させたのである。俺はその闇魔法の球体に……俺の魔法に『堕ちたる神の神々』である『大悪魔 サタン』が融合されていた力を注ぐ。すると、闇の球はより黒く、邪悪な色に染まっていく。そして、それを確認した後、俺はその魔法に命令を下す。すると……俺の目の前にあった巨大な闇が収縮していく。俺はそれに手応えを感じる。そして……。俺はその魔法をこの世界に向かって放ったのである。そして……次の瞬間、俺は俺の目の前に現れた『大聖城 キャッスル・オブ・ライト』という建物の中で気を失っているのだった。そして……目を覚ますと、そこには俺と一緒に『堕ちたる神の神々 ルシファー 魔王 サタン』を吸収させてしまった少女達が立っていたのである。俺が起き上がったのを見て、最初に口を開いたのは聖女の服を着ている妹の方だった。彼女は俺のことを睨みつけると俺に対してこういったのだ。
「お前は何者だ?どうしてここにいる?」……その問いかけに対し、俺はこう答えるしかなかった。なぜならば……。今この世界に起こっている危機的状況を説明しなければならないからだ。そして……説明をしたところで彼女達は信用しないだろうと俺は考えていた。だが……俺の話を聞いても、妹の聖女である方の態度に変化はなかった。どうやらこの子は見た目通り、性格の方は姉であるリリアムよりも大人しいようだな……。まぁ……姉であるリリアムはあれだけの大暴れをしたんだからな。仕方がないといえばそれまでなんだが……。俺はそんなことを考えながら、姉である方に視線を向けた。……そういえば、こっちの子のほうはさっきの俺の説明では納得できなかったらしく、俺のことを攻撃してこようとしていたが……。それはそれで困りものだな……。この子に『堕ちた神族』の力を与えるわけにはいかないからな……。俺がこの子の力をコントロールできるまでは……。この子とは一緒に生活することになるかもしれないから……。なんとかして機嫌を取らないといけないな……。……と俺はそんなことを考えていた。そして……俺はこの子の妹でもある『勇者:アルフィーナ』が目覚めるとこの世界のことについての話をすることに決めたのだった。だが……。その前に……俺はどうしてもしなければならないことがあった。
そして……俺はまず、この世界の脅威についてこの世界に住む人間達に話すことにした。俺が今までこの世界で見た光景と『大魔導王 マジック・キング・エンペラー』が見せてくれたこの世界の風景はまるで違っていることに気がついていたからである。俺の記憶にあるこの世界とは全く異なっているこの世界の現状に危機感を抱いていた。だが……それを伝えるための言葉だけではこの世界の人たちが俺の言葉を信じてくれるかどうかがわからない。そこで……俺はある作戦を実行することにした。それは……『暗黒の楽園 ダークネスエデン』と呼ばれる空間を作り上げるというものである。俺は俺の分身である100体の配下を『堕ちたる神族の力 堕ちた天使族の力』を使って召喚した。それから俺はこの世界の危機とこの世界を救うために必要な方法を話すと、その方法を俺の仲間達と協力して行って欲しいということをこの世界の人達に伝えた。……俺がそういうと……妹の方が急に泣き出したのである。一体何故なんだろうかと俺は思っていたのだが、どうやらこの世界の人間が『魔竜騎士団長レッド・ドラゴン』のガラード将軍と『神聖皇帝 神聖王 アリウス』に変身して俺のところに来たのは自分の意思ではなかったらしい。俺はそれを聞いて少し安心したが、この世界の人々は自分の意思で『魔竜王 ダークネスエンペラー ルシファー』に戦いを挑もうとしていたようなので……。俺はそれを止めるべく説得を行った。……そのあとで……。俺は俺の配下の者達全員を一旦集めると俺の考えを伝えた。
そして……。俺はこれからの俺の方針を話し始める。俺がまず始めにやることは……『神聖皇帝 神聖王 アリウス』の力を完全に使いこなすことだった。そして、俺にはまだ他にも『堕ちた神族の力 堕ちた魔王の力』がある。この2つを使いこなし、俺がこの世界を支配するために……俺に協力して欲しいと伝えたのである。俺がこの世界の管理権限を持っているのは事実なのだが……今の俺はまだ完全に俺の意思に従うものにしか力を貸し与えることはできないのである。だから、これからの俺は……自分の力を高めることに集中することにした。そのために俺の眷属になったばかりの者たちに試練を与え……力を身につけさせることにする。……すると俺は、自分の周りにいる『堕ちた神族の力 堕ちた魔王の力』の『眷属達を召喚し』……その者達に指示を出していったのであった。すると、その中に一人の少女が紛れていた。その少女こそ……先程まで泣いていた『アルフ』という名を持つこの世界の人間の『勇者』であった。そして……アルフは俺の眷属になることを決意するとその力でこの世界を救いたいと言ってきたのである。その話を聞いた時……アルフの姉の『アルフ』もアルフィスもこの場にいなかったのだが……。何故かアルフィスはアルフリードにそっくりだったため……一瞬俺はアルフリードが二人いることに疑問を感じていた。だが……この世界の管理者の特権である『全知の眼アイリス』を使えばアルフリードの居場所はすぐに分かったのである。だからアルフリードは……恐らく俺達の話を聞いていたはずだ。だが……アルフリードがどういう気持ちになっているのかはわからなかったので……。その確認は後にしようと思った。だから俺はその話はひとまず後回しにしてアルフの力の覚醒を始めることにする。だが、その前にアルフリードに頼んで……アルフリードが持っている聖剣『ホーリーレイピア』を渡してもらうことにする。するとアルフリーダも『セイントリング』を渡そうとしてくれたが……。それはアルフリーダが自分で持っていて欲しいと告げると、素直にそれを承諾していた。そして俺は……。俺が今できることを全てアルフリーダに託した後で、俺はこの世界から消えてこの世界に新たな拠点を作り出す作業を開始したのである。
そして……俺と融合するはずだった100体のうち1体をこの世界に残した後……。残り99体の俺の分身と俺の力の一部を残した状態で、この世界の各地に移動させるのだった。
そして……俺が作り出した拠点が……。『暗黒郷 デスダークシティ アンダーロード アンダーグラウンド』『聖天城 キャッスルオブヘブン』という二ヶ所で完成すると……。そこで俺がやれることはなくなったのだった。
そして……次の日になって……『堕ちたる神の神々』を吸収させたアルフィーナが目を覚ます。その後……。妹の方……『勇者:アルフ』の方にも目を覚ましたのだ。それを見た俺は、まずアルフに声をかけることに決めた。そこで俺が最初にやったことは、『勇者:アルフ』の心を読めるようにするというものだった。これは……俺の力を分けてあげないと出来なかったことである。
俺は……この世界の人を助けたいというこの子の純粋な思いを感じ取ることが出来た。そのため俺は、この子になら自分の『聖女の祈り』や『浄化の波動』などの特別なスキルを使わなくても自分のことをある程度好き勝手に操作できるようにすることができるとわかっていたのである。そこで俺はこの子の心に働きかけて自分の心の中を見せるようにさせたのである。すると……アルフリーダは自分がなぜここに来たかの理由についても思い出してしまったようだったが……。
俺はこの子の『心』に語りかけるようにしてこの子を説得しようとしたのである。すると、アルフはその言葉を聞くうちに徐々に俺に対する嫌悪感が消えていって……俺の話を聞いてくれるようになっていった。そのことで俺とアルフリードの力がこの子の『聖女の力』を通して混ざっていく感覚があったのである。そして……。その途中で俺は『勇者』に進化することができたのである。
そして……俺の『勇者の力』をアルフリトに与え終わった後……アルフリータに俺はお願いをした。すると……。俺が『大聖城 キャッスル・オブ・ライト』を消滅させると、そこに残っていた俺の力の残滓は『大魔城 キャッスル・オブ・ジ・エンド』という大魔城と融合した巨大な建物に変化してそこが新しい拠点になったのである。俺はこの『大魔城 キャッスル・オブ・ジ・エンド』でアルフの修行を手伝うことに決めると……。この子に自分の『固有能力』と俺の力を与えることにした。その結果……俺は自分の持つ全ての力と……そしてアルフリータから貰った『大聖女の祝福』の力で俺の眷属の者達を全員強化することに成功したのである。……俺は自分の力を全てこの世界の人々のために使おうと思っていた。そして……俺達はこの世界に生きる人々を救うための準備を始めたのである。……こうして俺達は『暗黒大陸』へと向かうのであった。……俺は俺の目の前にいる少女……聖女である妹の方をチラッと見ると俺は彼女から目を離す。俺はその見た目だけで彼女が普通の人間ではなく……。その正体が……この世界を救った伝説の存在である『勇者』であることを見抜いてしまったからだ。だからこそ俺には彼女を責めることができないのである。彼女は俺の力を半分だけ受け取っている状態であるから……俺が知っている彼女ではないはずなのだが……。やはり……俺にはそれが同一人物だと思えてならなかったのであった。……そして俺は、彼女の話を聞き始めたのである。
そして……。彼女は、この世界の現状と『勇者』としてこの世界の平和を守りたいと俺に訴えかけた。そんな彼女に俺が何と答えたのか……。それは……俺はこの時はまだ答えることができずに沈黙を続けていたのである。すると、その様子に違和感を感じたのか……妹の方が泣き出し始めてしまった。そのせいで、俺と姉の方の距離が急速に近くなっていく。
俺はこのままではいけないと思いつつも、なかなか良い案が浮かばない状態に陥っていた。なぜなら……。俺は今、俺と融合した『勇者』の人格によって表に出てきている。だが、それはつまり、この世界ではまだ完全に俺が俺の肉体を自由に使えるということにならないのである。そんなわけなので……俺は俺と融合しているはずの妹が泣き出すまでは動けないでいたのだ。そして……。姉の方が俺に向かって『あなたは……私達が助けた……もう一人の私なんですよね?』そう尋ねてきたのである。その瞬間……俺の中に衝撃が走ると同時に……俺の中にある記憶がよみがえったのだ。その出来事がきっかけで俺の中には俺を俺足らしめていたある事実を思い出したのである。
その出来事とは……俺がまだこの世界の人間であった頃の記憶だ。俺はその昔、この世界のとある国の王子であった。……といっても、俺は自分の国が嫌いではなかった。ただ……。父上や母上の期待に応えられない自分に劣等感を抱き続けていただけである。だから、自分の力で何かをしてみたくて……それで俺はこの世界の外に出る旅に出てみたいと考えていた。だが……それは無理だった。俺が外へ出るための条件として俺の護衛に付けられた護衛があまりにも強かったためである。だから俺の旅に同行するのは不可能に近いと言われていたのだが……それでも、その人物に勝てるようにと努力を重ねたのである。
だが……結局、俺とこの国の兵士長の実力の差は大きく……その兵士長が相手であれば俺が戦っても負けることは無いだろうが、その部下達にはまったく歯が立たないほどにまで俺は力が落ちてしまっていたのである。だが、俺はこの国を離れるために、その男の部下になりすまし……この国から脱出することに成功したのである。……そのあと俺は自分の命を救ってくれた人物を探すために世界を巡ることになるが……。それから数年後……。その人物は見つかったのである。
その人物が俺が探していた人物であるとわかった俺はすぐに接触を図った。その人は……この世界を救いたいと思っている人だったのだ。そして、俺がその人物と話をすると……どうやら俺と彼は同じ考えだったらしい。そしてその人も俺と同じく……ある『夢』を追いかけていたのである。その『夢』というのが……この世界が救われたらその世界を旅してまわるというものだ。俺はそれを知った時にとても嬉しくて……その人に付いていくことにした。
そして……俺のその人の呼び名は『マスター』となり、俺は『この世界の魔王を倒すまで』という契約で彼に雇われることにしたのである。俺は『この世界の救世主 アースガ―ルズ・グランドウォーカー ロード・ザ・ブレイブ・サーガ』という称号を手に入れたが……それと同時に俺は『勇者』でもあった。だから、俺は『この世界の魔王』と戦う使命を持っていたのである。そして……。その勇者であるはずの俺がどうして……『暗黒界』の『堕ちたる神の神々』に体を乗っ取られているんだ?それにあの時の光景もおかしい。『勇者の力』を手に入れようとしていたアルフに対して俺は全力で止めに入ったはずだった。なのに何故……アルフはこの『暗黒大陸』に存在しているのかが理解できないのである。
俺の考えはどんどんまとまっていった。それはまるで俺の中の『暗黒界の堕ちたる神 ブラック・オブ・ダウンズ』の意思の影響を受けているようにも感じられたが……。それでも俺は、俺の意志で動いているはずである……。だから、俺は俺が本当に俺であるかを確かめるべく行動を始める。……だが、それを実行しようとしたところで俺は自分の意志で動き始めることができなかったのである。
だから俺は自分の意思で動けるまで待ち続けた。その間にも俺は俺の体を使って色々と行動をしてくれたようだが……。俺はそれを傍観することしか出来なかったのである。俺の体が動くようになるまでにかなり長い時間が必要だったようで……。その間俺の体はアルフ達と戦闘を繰り広げていたが……。その戦闘の全てが終わった頃に俺の体は自分の体に戻ってきた。
(俺は……やっと自分の身体に戻ることができた)……と、俺はそう思いながら周りを見渡して状況を確認することにしたのである。すると……俺の前にいたアルフはなぜか気絶していて、姉の方の聖女様だけが立っていたのであった。
(ん!?あれ……アルフちゃんがいない!!?)
そして……その後、姉の聖女様に聞いた話によると……俺とアルフが入れ替わっていたことに気付いたようだったが……彼女はそれについては何も言わずに黙っていてくれたようである。まぁ俺はその時の会話にあまり集中できなかったけどね。何故かと言うと……アルフリトはいつの間にか俺の後ろに移動していて俺のことを抱きしめていたからである。そのため……俺はこの子をどうにか引きはがすことに必死になっていたからだ。しかし、俺がアルフリーダを引きはがそうとするたびに……この子はもっと俺に抱きついてくるのである。そのおかげで俺達は密着して離れられなくなっていたのである。俺はアルフに何とか離して貰うために話しかけようとするが……。この子の胸の柔らかいものが俺の腕に当たるから……。そのことに気が散って仕方がないのである。だけど俺はそんなことで恥ずかしさを覚えるような年頃ではないはずなので我慢することにする。
俺は、その状態でしばらく話を聞いてみることにする。この子の話を聞いた限りだと……『勇者の力』を手に入れることは出来たものの……俺に負けたことがショックすぎてこの世界に来て以来初めて本気で泣いちゃったとか言っていた……。でも、俺はそんなことでショックを受けるほど弱い精神力はしていないはずだ。それに、そもそも『勇者の力』なんてものは持っていなかったはずなのだから、俺に負けてもそんなに泣くほどのことではないのである。……そんなわけで、とりあえずはアルフリトが泣いている理由は置いておいて……。その涙を止めた方法について尋ねることにした。
すると……。アルフリトの話によると……アルフリトの姉の聖女の力を借りて『暗黒界』の大神官にお願いして、アルフリトの心を一時的に休ませてもらったということがわかったのである。……そこでアルフリトが俺のことを見て急に怒り出したので……俺は何が起きたのかと思ったのだが……アルフリトの怒りはすぐに収まった。そして……俺の方を見ながらこの子は何も無かったかのように振舞おうとしていたので……。俺はこの子が何か隠していることだけはなんとなくだがわかってしまった。
俺は……アルフリトから何かを隠していることを感じ取りつつ……。彼女の方から話すのを待つことにする。そして……俺はこの世界に『暗黒界』から侵略してきた奴らをこの世界に二度と来ないようにするための準備を始めていた。この世界は今……暗黒族の力によって闇に支配されつつあるので、暗黒族を滅ぼすために俺達が戦う必要がある。
そのためにまず……俺は、俺が元々持っていた能力と『大聖女』の力で全ての魔族から信仰を集めなければならない。……これは簡単に出来ることだ。魔族から『魔王』として崇拝されればいいだけだからな。……そして……俺と聖女達が協力すればその作業は早く済むだろうから……俺達の目的のためにはかなり都合が良いと思う。
そう思った俺は、聖女二人と協力して全ての種族の王に挨拶回りを行う。その途中で、俺は聖女の姉妹と別れた。彼女達にもそれぞれやるべき仕事があったからだ。
聖女の妹の方が『魔王の剣』を使いこなして……人間側の指導者になってくれていたので……俺としては、彼女に俺の『力』の全てを授けることにした。その方が手っ取り早いからである。ちなみに……妹の名前はミウという名前である。そして、俺は俺の『力』を全てミウちゃんに託してから……再び旅に出ようとした時だった……。
「アース君!!!私をあなたの眷属にしてください!!あなたとずっと一緒にいたいし、私はあなたと一緒に世界を守りたいんです!!」
そう言って現れたのは俺と契約を交わしたことのある精霊王だった。俺はその言葉を聞き、俺の中に入っていたもう一人の『堕ちたる神の神々』の一人が消え去る気配を感じたのである。
俺の中にいたもう一人の俺の人格……それが『堕ちたる神の神々 ブラック・オブ・ダウンズ』だったようだ。俺の中に居た『堕ちたる神の神々』はその『ブラック・オブ・ダウンズ』が全てだったらしい。
俺の意識が表に出てきたのはあの時のあの瞬間だけだったらしい。あの時は俺も『堕ちたる神の神々』も完全に俺を支配していたわけではなく、お互いに自分の意志に従って動いていたようだ。俺の中に『堕ちたる神の神々』がいたのには驚きだったが……。
『俺が表に出たあの瞬間、あの時俺は俺がお前に取り込まれていると感じたんだが……そのあと俺の意識が無くなっても、まだ俺の中に残っていたのなら……そのまま好きにしろよ』
俺は『堕ちたる神の神々』に対してそういうことを言ったら……すぐに俺に襲いかかってくるかと思っていたのだが……予想外なことに何もしてこなかったのである。そればかりか……あの二人は何か相談をしていたようで……俺はその会話を聞くことができなかった。
どうやらあの時の『堕ちたる神の神々』は完全に消えたわけではなかったらしく、今でもこの『暗黒大陸』の奥底に封印されていたという……。だから、あいつらが俺の体を奪って表に出てくることはなかったみたいだ。
その『暗黒界の堕ちたる神 ブラック・オブ・ダウンズ』の消滅と同時に俺が持っていたはずの『勇者の剣』も消滅してしまっていた。俺はこの『勇者の剣』は『大聖女の指輪』の力と同じ力で生み出したものであるから『勇者の力』と同じように俺の一部でもあるのではないかと考えた。そのため、その『勇者の剣』の力を使えば『勇者』である俺に新たな力を授けることが出来るかもしれないと推測したのである。そして、俺は自分の体に眠る『勇者の証』を目覚めさせて、『勇者』の力が解放された。そして……それと同時に『勇者の鎧』を具現化させたのだ。
それから俺は……アルフのところに戻ってこの子と契約を行った。俺のこの世界での目的は終わったからな。
そして……俺達は元の世界に帰る前に一度『聖獣の祠』に立ち寄ることにしたのである。俺達の世界の魔王城にいる魔王を倒すために必要な鍵となるアイテムを手に入れなければならなかったからだ。しかし、そこで俺は予想外の光景を見ることになる。
それは、姉の方が『勇者の力』を手に入れて『勇者の力』を手に入れたアルフと戦っていたのである。だが、その光景を見て俺はすぐに理解した。おそらく姉の方が持っているのは……この世界の『初代勇者』の使っていたというスキルである『光』と『回復術』が合体した『神聖魔術』に違いないということを。
だが、俺はこの世界の勇者であるアルフに『この世界では誰も知らないであろうその知識を教えてしまったが……良いのだろうか?』と思ったが……。
だが……。俺はある事実を知ってしまった。アルフリトは、俺のことをアルフに教えたはずのない『神聖魔法 神聖なる一撃』を使ってアルフを倒したのである。俺はそれに驚くとともに疑問を抱く。この世界の住人であるはずのこのアルフリトが何故この世界の誰にも知られていないようなその技を使えるのかということに……。
俺は、アルフリードさんから色々と聞き出すことにしたのである。そして……その話は、俺にとっては衝撃的だったが……。俺はそれをしっかりと受け止めたのである。その話を聞いた俺は……この世界に長くいられるわけではない俺にとってアルフは大事な仲間になると確信したのである。
そして俺は、この世界に別れを告げることに……。俺の帰りを待っていてくれる人達がいるからだ。俺は……元の世界を懐かしく思う気持ちを抑え込んで、こちらで得たかけがえのない存在と離れることを決心する。なぜなら……俺が元の世界に戻らないと決めた以上……向こうに残っているみんなが俺を必要としてくれていても……俺が帰るべきじゃないと思ってしまうからだ。俺がいなければ……みんなは俺が帰ってくるまできっと待ってくれていただろうから。
だから……俺が今すべきなのはこの世界に残ることじゃなくて……元の世界に戻ることだ。そうしないと……。そう思って、最後にアルフリードさんの願いで……『聖なる神殿』に連れていってもらうことになった。俺のこの世界の記憶を封じることはアルフリードがしてくれることになったからだ。そして……俺はこの世界のことを覚えておくことに決めたのである。俺の仲間になったアルフとアルフが信頼を寄せていたアルフのお姉ちゃんの聖女様のこと……そしてこの国の王城近衛隊に所属していた双子の少女のことや、俺の元婚約者であった公爵令嬢のリリーナ・ルイーザ。それから……この世界に転移する前に知り合った勇者達の顔が俺の中で蘇っていく……。
(……俺って本当に最低だよな……。あんなに頑張ってくれた彼女たちのことよりも俺を救おうとしてくれていたみんなのことよりも……アルフリトのことを優先させてしまうなんて……。それにしても……俺がこの世界で手に入れた力……。なんか俺が元々持ってなかったような力ばかりのような気がするのは気のせいか?……でもまあそんなことよりも……俺は今やるべきことがある……。この子達を救うのが俺の仕事だ……。)
そう……俺がそう決意したその時だった……。突如として『勇者の剣』と俺の中の『暗黒界』の力の波動が強くなった。だが、俺の中にはその『暗黒界』の影響はないようだ。
「お……お前……一体何者だ!?どうしてこんなに強い力を持っているんだよ?」
アルフはそう叫ぶと、俺から距離を取った。すると、彼女は急に何かに怯えたようにその場から立ち去ろうとした。俺は、彼女に声をかけようとすると……。突然俺の体の中から膨大な魔力が流れてきたのである。俺の体が急激に変化していくのを感じると、アルフと同じような金色の髪の毛をした美少年の姿が俺の目の前に現れた。その容姿はとても見覚えのあるものだった。
俺はその姿を見て驚いていると、その男の子から声をかけてきたのである。
「……兄ちゃん、久しぶり……。僕を助けに来てくれたんだね……。やっぱり……僕は必要とされていたみたいで安心したよ……」
その男の子の姿を見ると……やはりというべきかなんというか……その姿はかつて俺がこの世界に転生してきたばかりの時に見た夢の中で出てきた俺が助けようとしていた男の子の姿をしていたのだった。そしてその男の子から発せられる言葉は俺の心に突き刺さるような感覚だった。
その言葉で俺は思い出したのである。俺は確かにこの子のことを知っていると……。俺はその事を思い出した俺はその事を彼に聞くことにする。そうしないと俺の目的が達成できないからだ。そう思い俺は彼の名を聞くことにした。
その瞬間、俺は自分の耳を疑う羽目になってしまった。なぜなら彼は自分の名前を言ったのだ。
その瞬間に俺の心の中にある感情が生まれた……。俺は思わず涙が出そうになって……必死になってこらえた……。俺は心の中にその思いを封じ込めて……。俺はこの場を離れようとしているアルフリトを追いかけることにしたのである。……俺はアルフリトを捕まえて事情を説明した後に、俺が知りたい情報を聞き出そうとしたが、彼女から答えを得ることはできなかった。その代わりに彼女が語ったことは、この国の王城にはかつて聖剣があったということだけであった。俺も知らなかったことである。どうやらアルフリードもそのことを知らなかったようでとても驚き戸惑っていた。しかし、この『聖なる神殿』にはまだその『勇者の剣』がある可能性があるということも判明したのである。
その後……俺達はその剣を手に入れるために向かう場所を決めるとそこに移動することにした。
俺とアルフリトが話をしている間も、ずっとあの子からの視線を感じていた。そしてその子は終始無言のまま俺に話しかけようともしてきていなかった。そして俺がアルフリトを拘束しようとした時もその子が止めてきて……。俺はアルフの解放を条件にその子と話すことを要求されたのである。
俺はその提案を受け入れると……。その子は笑顔を浮かべて……そしてなぜか俺のことを睨みつけるようにして見つめてくるのだった。
俺はその不思議な子から……俺が元の世界にいた頃の俺の名前を知ることができたのである。
俺は自分の名前を知ったその日から、この異世界の勇者アルフリトと行動を共にすることに決めて……。そしてこの世界のどこかにあるはずの伝説の『勇者の剣』を手に入れて……元の世界に帰ることを決断したのであった。
こうして、元の世界に帰るための道標を見つけることに成功した俺達はこの『暗黒魔都』を出ることを決めた。だが俺は、元の世界に戻るためにはあの子を救い出すためにどうしても必要な物があることに気付かされてしまった。それは……俺がまだ手に入れることができていない力であり、今の俺には到底手に入らないはずの代物であるはずだったのだが……。だが……この世界でならそれが手に入る可能性があったのである。
俺はそれをこの世界から持ち帰ることに決めると……。俺はそのために必要な道具を探しにこの国の宝物庫へと向かったのである。そして、俺がその探し物を探そうとしていたまさにその時に、アルフの姉のアルフリードさんから俺のことを呼んでいるとの知らせがきた。
俺は急いでアルフリードさんの部屋に行くとその部屋に入るとそこにはアルフの姉のアルフリードさんがいたのである。俺は彼女の顔を見たその瞬間にこの世界での記憶を取り戻していた。この人は俺のことを召喚した『大聖女の杖』の持ち主のアルフィーヌなのだ。俺達はそれからこの世界に戻ってくるまでの間にあった出来事を報告し合った。そして、それから少しだけ話をしていた。俺達はこの世界での記憶を取り戻したことにより、アルフは自分が今まで何をしようとしていたのかを理解したのだ。それから、俺はこれからアルフがしなければならないことも説明した。それを説明すると、俺の言葉を信じてくれて……それから二人で『大聖女の杖』を封印するための鍵になるものを揃えるため行動することを決意するのである。そして……俺は『闇闘技場』へと戻るのである。だがそこで俺とアルフは驚くべき人物に出会うことになる。それは、アルフの幼馴染みの女の子のアルフリーネだったのだ。
アルフはその子から俺とこの国であったことを話して欲しいと言われたので俺は素直に従うことにする。俺はその時にアルフリーネに対して、俺がこの世界に戻って来た経緯について簡単に説明をした。俺の話を聞き終わったその子はアルフに何かを話すと……。アルフはこの世界を救うために協力して欲しいと頭を下げて頼み込んだ。そのお願いをその女の子アルフリーナさんが受けると、アルフリトは凄く喜んでその二人から握手を交わしていた。
そしてアルフはその二人を連れて王城の方へ歩いていく。俺はアルフからアルフリードさんとアルフのお姉さんのアルフリドさんの二人が仲間になったことを聞いて驚いたのであった。
それから俺は、アルフリトと一緒にある場所に向かっていた。
その場所というのは、俺が元々いた場所で、今現在、魔王軍が支配しようとしている街でもあった『闇黒魔京・ダークゾーン』という街だ。俺とアルフリトはその場所で目的を果たすと、俺達はこの場所を離れることになった。俺とアルフリードさんの二人は『勇者の剣』を探す旅をする為にこの世界中を回りながら元の世界に戻る方法を模索するつもりなのである。だから……。俺はこの世界を去ろうとしているのである。そう思っていた。その時……。俺の前に一人の少年が現れたのである……。俺に何かを託すかのように……俺の方に何かを伝えようとしているようだった……。だけど、少年の姿は既になかった……。まるで俺に助けを求めているかのように見えた。その少年は、俺の師匠でもある『剣王』のアルフリードさんと同じ金髪の美少年の姿だった。俺はアルフリードに聞いてみる。この世界の王城に仕えていた聖騎士の双子の兄弟がいると……。そして、俺達と行動をともにしていたという双子の聖女の存在についても確認をとる。俺はその名前を聞いた時にアルフリードとアルフリードの知り合いだという聖女が俺の予想通りの人である可能性が出てきたと思った。俺はその人にこの『聖なる杖』を託したいと願った。
「ねえ……あなたがその双子の姉妹のどちらかに会ってこの『聖なる武器・エクスカリバー』を渡してほしいと頼むことができるなら私からも頼まれてもらえないでしょうか?……その方は今『闇の領域』にいるのよ。だから『勇者の剣』の回収のついでとしてでもいいので頼んでみてもらえると助かるわ」
そう言われて、俺はアルフから預かった剣を手に取り……そしてこの『暗黒魔剣・デスエンド』と共にその二人のいる所へ向かうことにする。その双子と『聖剣使い』はどんな戦いを繰り広げたのだろうか……俺は気になっていた。そして俺はアルフリトから渡された手紙を読み返す……。
(この子はどうしてこんなに必死になってこの子達を守ろうとしているんだろう……この子が本当に守るべき相手は自分の家族だっていうのに……)
俺はアルフリトが必死になっているのを見て疑問に思った……。その時に俺の中にまた不思議な感覚が生まれていた。俺の心の中にある何かに語りかけてきているようなそんな感覚がしたのだ。……俺にはまだ分からないが、どうやら俺は俺に話しかけてきた存在がどこにいるのか分かるようになっていたようだ。俺はこの感覚に従って俺は『暗黒界』に意識を向ける。すると、そこには……先程出会ったばかりのあの子の気配を感じたのである。そして俺とあの子が繋がっていることが理解できた。そして俺がこの世界でこの剣を使うべきタイミングはもう既に分かっているということが分かった。俺はこの不思議な力をこの世界に来た時と同じように制御することに成功した。そして……俺は、アルフからの手紙を読む。そこにはこう書かれていたのだ。
―僕は兄ちゃんみたいに立派な勇者になって……必ずこの国に平和をもたらすんだ!!僕はその約束を……絶対破ることはないと思う。それに……もし僕の願いが叶わない時は……その前に僕は命を絶つつもりでもいる……。僕が死ぬことは絶対に許さない。君もそう思っているはずなんだよね……アルフィード……いや、『剣姫』よ。そしてこの国を守って欲しい……。君の使命を全うして欲しいんだ。アルフィーネには僕から話をしておくよ。……あの子ともう一度話す機会が持てるといいね……。じゃあ、アルフ……頑張れ!!お前が約束を果たした時にはこの剣を使ってもらうから覚悟しとけ!!!!)
俺はその手紙を読んで涙を流す。アルフは自分が死んだ後のことを気にしていたのだと分かったからだ。アルフィーヌの本当の名前は……剣の乙女『剣聖』だった……。アルフィーナは……自分のお兄さんであるアルフリードが『聖女』の称号を持っていたため『聖剣使い』の資格を得ることができたのだ。アルフィーネは元々、剣の才能に秀でた子供であった。アルフの妹であり『聖女の杖』の持ち主だった彼女は『聖なる巫女』になるべく幼い頃から厳しい修行を積んできていたのである。アルフリードさんは妹のアルフィーネを守るためにこの国で剣を振るうことになったらしい。……だがアルフリードの父親はこの国を支配することに成功はしたが……結局はアルフの手によって殺められる結果になった。その結果、国を守る為には勇者となる資格を持っている『勇者の加護』を持った人間がその国の王にならなければならないという考えに至ったのである。だがアルフリーダはその考えに反対して……。そしてこの国から逃げ出すことを決めた。そして逃げ出した後……『闇闘技場』の中で偶然、アルフと出会ってしまうことになる。そして二人は一緒に行動するようになった。そしてその時に二人は恋に落ちたのである。
だが、その時に二人の前に現れたのは魔王軍の手下のモンスターであった。そして……アルフは妹であるアルフィーヌを助けようと一人で戦うのだが……。
アルフがアルフィ―を助けることができずに逃げろと言って、アルフは魔王軍の部下であるオーガに殺される。……アルフィーアはそのまま連れ去られてしまう。その後、勇者の力を手に入れる為に『闇闘技場』に入り込んだ際に、そこで奴隷にされているアルフと出会ったのだ。アルフィーと再会した時にアルフが持っていたものは、自分が殺された後に妹から貰ったものだったという。アルフはそれをずっと肌身離さず持っていていたそうだ。それからというもの、アルフリードは自分一人の力で『大魔導士』になることを決意したのである。それからしばらくしてアルフが勇者の資格を手に入れて、アルフリードとアルフリーネの姉妹は再び出会うことになる。アルフが勇者の資格を手に入れたということはつまりアルフリーネの持っている『聖杖』にも勇者として選ばれる可能性があるということである。そしてアルフはその時に、この国の未来をアルフリーナに任せると伝えた。だがアルフリーは、アルフとアルフィードはお互いがお互いに勇者に選ばれるのではないだろうかと考えていたのだ。だがアルフはアルフィーを逃がすためにこの国の魔王の手下を退治するため、自らこの国に戻ってきて、そしてアルフィーは連れて行かれてしまったのだ。
それから……アルフが死んでしまったことを知ったアルフィードは生きる意味を見失っていたのだろう。それに加えて……元々アルフィーは剣の扱いについては天才的な力を持っており、『剣聖』になれる可能性が高かったのだ。だが……剣の道を諦めることにしたのだ。アルフが死んだ今となっては全ての望みがなくなったからである。アルフリドがアルフリーに『勇者の杖』を託したかった理由は、その『聖剣使い』の役目を代わりに引き受けて貰う為に渡したのではないかと思われるのだ。
それから……俺は二人の行方を探そうとする。
そして、二人の行き先がこの世界に存在する『闇』と関係があるのではないかと考える。俺の師匠でもある剣の師匠である『聖剣使い』がこの世界に来るまでに使っていたという杖と聖女だけが扱うことができる『聖なる杖』が存在すると言われている場所こそが『暗黒魔京・ダークゾーン・ダークサイド』と呼ばれる場所であるということが俺の師匠でもあるアルフリードから聞いていたのだ。その場所について俺は師匠から聞かされていた。そして、俺はその場所に向かって歩き出すのである。
『暗黒魔京・ダークゾーン』という街がある場所はここより遠く離れた場所にある。
そこはこの世界の中でも、特に魔族が多く住む土地として有名だ。そしてこの世界は人間族の他にも、多くの種族が共存している。その中でも特に人間の敵とされている存在が、魔人と言われる存在であった。そして俺がこれから向かおうとしている『暗黒魔京・ダークゾーン』は『暗黒大陸』という島国にある場所なのである。この世界は、他の国に比べて魔王に支配されている領土の方が多いのでこの国は別の名前で呼ばれていたのである。『聖都』『帝都』そしてこの『帝国』だ。ちなみに、この『聖』と『帝国』という名前は同じ国を表している言葉である。この2つの国名は同じ『聖剣』を所有している人物の名前が『アルフリード』だったからだと伝えられている。
俺がこの『暗黒界』にやってきた時にこの世界に戻ってきたのが『闇の領域』と呼ばれ、そこから離れた場所に位置する場所に『聖女が住んでいるとされる聖地』と俺が呼んでいた『聖光神殿』が存在していたのである。この二つの名が同じ意味を持つのも実は俺がここに戻ってくる前に、師匠である『剣王』が残した書を読んで知っていたことでもあるのだ。
師匠の書によると……。かつてこの世界を統べようとした悪の王がいた。その王は自らの力でこの世界の支配者となったのである。そして、自分の力を見せつけるように世界を支配しようとしてこの世界の各地に魔物やモンスターを大量に出現させた。そして人々を蹂躙して行ったのだ。だがそんなことをすれば人々は混乱してしまうだけである。そのため、人々が安心できるようにその王の配下達は人々を苦しめて言うように見せかけて自分達の存在をアピールしていたのである。だがその王が本当に支配したいと思った存在がたった1人だけ存在していた。その王の名は『暗黒魔皇帝・ロード・デトワール・ダークネス』。その人物は『闇の魔剣士・デス・ブレイド・オブ・デス・エンペラー』という最強の称号を持つ者であったのだ。彼は、圧倒的な力で人々を恐怖で震え上がらせていたのである。
そしてこの王は『暗黒騎士軍団』を組織して世界中にいる魔物たちを統率し続けていたのであった。そんな彼を止めるべく、当時最も信頼の置ける人物として『剣神』と呼ばれていた者が彼の部下である四天王と共に立ち向かっていった。その『剣聖』である女性こそ……『剣聖・剣王』の称号を持ちし『聖剣使い・剣の乙女・剣聖剣姫アルフィード』であったのだ。『剣の姫巫女』という称号を持っている彼女は『聖女』の称号も有していたのだ。彼女は元々はアルフリードの妹であったが……。アルフが亡くなった際にアルフリーは剣を封印することを誓った。だが……。『聖女の杖』は彼女が死ぬ際にアルフに渡し、それをアルフが受け継いでいたという。アルフリードはアルフが死ねば自分も命を絶とうと思っていたらしいが……。それは叶わなかったようだ。そしてアルフィーもアルフも……お互いを愛していたということが理解できたのである。そして、アルフリードはアルフの意思を継ぐことを決意したのである。そしてその証であるアルフから託された大切な形見でもあったのが『アルフリードが持っていた剣とアルフリードが作った剣』だったのである。その『剣』こそが『勇者の聖剣』と呼ばれているものであり、それが勇者の加護を持った者にしか使うことができない『勇者』の資格を持っていた剣だった。この剣は所有者が死亡すると自動的に持ち主の元に戻って来るという不思議な能力を持っているのであったのだ。これは『聖なる杖』も同様である。だからこの世界で剣を扱えるものは限られているし、そもそもアルフリーのように杖を使うような存在はいないので……『聖なる剣』がどんな武器であるのかを知るのはこの世に存在しないはずだったのである。……まぁ俺はこの剣のことをよく知っているけどね……。だって……アルフから聞いていたから……。この剣が伝説の『聖なる杖』だということを……。だからこそ、俺はそれを使って戦う必要があったのだ……。そうしないと……あの『剣の乙女』を倒すことが出来ないと考えたからだった。
そして……俺がこの国に戻る時に持ってきた剣こそがその『勇者の聖剣』と呼ばれる『光の剣・ホーリーライトソード』とアルフリードが作ってくれた『光の杖・シャインステッガー』の二つであったのだ。『勇者』の力を持っている人間しか使えないと言われていた『勇者の加護』だが、この世界には存在しないはずのアイテムがあれば……誰でもその力を使うことができるのだ。その力は凄まじく……俺が持つ最強の攻撃手段である技……【閃光】を発動しても……俺の方が吹き飛ばされてしまうほどだったのだ。
「はぁ……はあ……はあ……。」
(……さすがに強い……だがこれで分かった……。俺は勝てる……!奴よりも遥かにレベルが高いんだ……。このまま押し切れば必ず俺の勝ちだ!!)
「どうしたのです?もう息切れですか?あなたのような雑魚を相手にするのは時間の無駄です。早く死になさい。私には時間がないんです……。それに、この国での戦いも終わっていますので……私は今……急いで戻らなければならないのですよ!」
俺は『聖剣』を地面に刺しながら、なんとか立っていたのだった。……俺は師匠と旅をしている時も何度も戦ったことがあるが、その時でもここまでの強さではなかった。俺は、剣に意識を集中する。俺の中にある力を全て剣に集めていった。
そして……アルフの『勇者の力』を開放するために俺はこう叫んだのである。
「うぉおおおおおー!!!勇者の力と『聖剣』の力の解放を許可する!!」
その言葉を発した瞬間に剣に俺の力が全て吸い取られていく感覚に陥るが、それでも俺は必死に耐えることにした。するとその瞬間、俺は身体の奥底から熱いものが込み上げてくるのを感じた。
その熱はやがて全身へと駆け巡って行き俺の身体能力が劇的に上がっていく。これが師匠の言っていたことだとすぐに理解することができた。そしてその時に俺の中に流れ込んできた情報により……『聖女』と『暗黒魔女』とアルフの本当の関係についても知ることになったのである。そしてその真実を知った時、俺は心の中で涙を流しながらこの場にいたのであった。
俺が見たアルフの記憶の映像には……俺の姿があった。……だがその姿は今の俺とは似てもいない別人であったのだ。つまりこのアルフが見ていた俺の姿は……『転生者』である俺ではなく……本来のアルフ自身が持っていた姿ということになる。だが……そんなことがありえるのか疑問にも感じたが……確かにその可能性は高いと思うのである。
俺はアルフがこの世界に現れた時から……この世界に存在する全ての『七属性』の力が使えるという特異体質だったのだ。そしてその時に俺は自分のステータスに『スキル』が新しく追加されたことに気がつくのである。俺は『聖剣使い』として生まれ変わったと同時に全ての能力を授かったのだが……俺の知らないところでも『固有技能』や『特殊技能』なども増えていっていることに気づいたのだ。
師匠が言うには、師匠の生きていた時代では『大賢者』という特別な称号を持っていなかったとしても全ての力を得ることが可能だったのだという。……そして師匠も俺と同じように……その『聖剣使い』としての素質が備わっていたらしい。
そして俺の場合は『勇者』の称号があるからこそ……全ての力を行使できるということなのである。そして俺はアルフの『暗黒魔皇帝』との戦いを見て思い出す……。アルフリーは『暗黒魔皇帝』の部下である4人の幹部の一人を倒したことがあるのである。俺が倒してきた相手は全て幹部クラスの魔族達だったが……。『魔王軍四天王』の四人のうち三人がすでに死亡していることも確認済みなのである。……残る一人の名前は……『闇魔将軍・デモンズロード・デトワール・ダークネス』だそうだ。この男は俺の師匠が『勇者』としてこの世界を救いたいと思い行動を開始した最初の時代に現れた魔王の配下の中の一人であった存在だ。
彼は元々この世界の住民だったと言われているが、ある日突然姿を消したとされているのだ。その時期と俺が生まれたのはちょうど一致する。そのことから俺とアルフリーが出会ったのはある意味で必然だったとも言えるかもしれないのだ。
だが……この『聖女』がこの国に来た時にアルフリーと何かの因縁があったという話を聞いた時は少し嫌なものを感じてしまったのである。それはこの『聖女』もアルフリーが倒したという幹部の一人でその幹部はアルフリーと深い関わりがあった人物であったのだ。
『暗黒魔女』と呼ばれていた女は元々この世界の人間であり……『勇者の幼馴染』という関係にあった人物なのだという。彼女は幼い頃からその特殊な魔法を扱う力を身につけており、その力で人々を救うために活動していたという。だがある時に彼女はこの国の『王城警備隊』に所属し、その才能を発揮していくことになるのである。そしてそんな彼女はある男に出会ったのだ。その男がこの国で最強の『剣の剣士』と言われていた人物であり、アルフリーの恋人であった存在でもある人物だという。その人物の名は……『暗黒騎士・ロード・オブ・ナイト・ダークネス』と言う。そしてそんな彼女は、『王都』を守るためにその身を挺して命を落としたのである。そして『聖女の杖』は彼女の意思を受け継ぎこの世界を守ることを選んだのである。その杖が『勇者の聖剣』と融合することにより新たなる存在が誕生したのだ。それは杖ではなく『聖なる杖・シャインステッガー』という武器になったのである。これは聖剣として誕生した『光の聖剣』を更に強化して『聖なる剣・ホーリーセイバー』と変化したものであったのだ。この杖が『聖女の杖』であったのならば、杖の先から光の刃を発生させて攻撃する武器となる。そして杖自体が強力な武器になり得るし、持ち主がダメージを受けるとそれを回復してくれる能力を持っているのだ。だが杖自体は『聖女の杖』と変わらないし……『聖なる剣』は剣の形状をしているためその効果を発揮することはできないのである。
この聖剣・シャインステッガーの能力は凄まじいものであり……杖から放たれる光弾の攻撃だけで『王都』を守っていた『王城の城壁』を破壊するほどなのだ。この『王都』は魔物たちに攻められた際に『王都』を囲む『王都の壁』が破壊されていたために魔物たちが『王都』に入り込んで来ていたのだが……その『王壁』を破壊しているのがこの『剣の聖女』であったらしい。
俺はその時……『聖女』がこの国にやって来てからの出来事を見続けていたのである。この王城にたどり着いた『勇者』とアルフリーは戦いを始めた。アルフリーとアルフはお互いに互角の強さを持っており、一進一退の攻防を繰り広げているうちにアルフが徐々に押され始めていたのだ。
「はぁああ!!」
「ふっ……。まだ弱いですね……。これぐらいで私と戦うなんて無謀です……。あなたは『勇者』という称号を持ちながらも……それに相応しいだけの実力を持っていないんですよ!」
「……それはどういう意味だ?」
「その剣を見ても分かりませんか?……あなたの持つ剣こそが『聖なる杖・シャインソード』……。つまりあなたの持っている力は……私の持つこの杖となんら変わりがないのですよ!」
アルフは自分の杖を見せながら『勇者の聖剣』に負けじと『聖なる剣』を構え直したのである。俺はその時に見たアルフリーの記憶に違和感を感じていたのだ。俺は今までに何度か師匠の『勇者の杖』を使った時の記憶を見ている。だからこそ『聖剣使い』として『聖剣』を振るうことができたのだ。だがその時に師匠は杖の先から魔力を放出したりしていた。だがアルフリーの使った『シャインステッガー』からそんな攻撃を見たことがなかったのである。
(……まさか!?あの剣から……あの光の粒子のような物を出現させてその力を使っているのか?)
俺はその光景を思い出していた。そしてそれと同時に俺はある仮説が頭に浮かんだのである。俺の考えは間違っていないと俺は思う。俺の見てきた過去の出来事と、俺が持つ情報と……今現在目の前で起こっていることが一致しているからである。俺はそう思いながら再び『勇者の剣・ホーリーブレイド』を構えるのであった。
「いくぞ!」
「はぁ……。何度見てもあなたは私の敵ではない……。『暗黒魔女の力」
「聖剣・聖女の杖」
俺が斬りかかる前にアルフの放った魔法の一撃によって俺は後方へ吹き飛ばされてしまった。その威力は『大迷宮』の階層にいたボスの魔族よりも強いものである。……俺のレベルも上がっており、レベル40前後であるのだが……その攻撃を耐えることができないのだ。
俺は自分の力が及ばないことを知りつつ……アルフに攻撃を仕掛けようとするのだが、その時に俺は気づいた。俺は自分が見たことがないような不思議な感覚に包まれていったのだった。
俺の中にある全ての力が解放された瞬間……俺は自分の中にある力が飛躍的に上がっていることを感じる。俺の中にある全ての力を使うために俺は『聖剣使い』としての本来の姿を取り戻すことになるのだ。俺がその状態になった瞬間……俺の中で何かが動き出す感覚を覚えたのである。そしてその感覚はやがて俺の心の奥深くから溢れ出し、身体全体を支配していった。
俺は身体中に力がみなぎっていくことを実感しながらその瞬間を待つ。そして……俺の中にある全ての力を一気に解き放つように……アルフに向かって叫んだのである。
『勇者解放!!!!!』
俺の叫び声とともに……この場にいる俺の仲間以外の者達が眩しいくらいの強い光が辺り一帯を支配していき……次第に消えていく。俺とアルフは激しい目映さを感じつつも互いに目を開けて相手を見ていた。すると……アルフが驚きの声を上げるのである。
「……そんな馬鹿な!!お前が……そんなはずが……」
俺はその時にアルフリーが驚いた理由を理解することになった。アルフが驚くわけである。何故ならそこには……本来の姿で『勇者』となった姿の俺が立っていたからだ。だが俺はこの状態でいると少し気分が悪くなってしまう。……なぜなら今の俺の髪は金髪ではなく銀色の輝きを放ち始めたのである。そしてその瞳の色も変わっていたのだ。
『勇者解放』をした時、俺の中には師匠から貰った全ての力が備わっている。つまり『聖女』と『勇者』としての力も備わった状態であり、その力を解放した場合に起こる副作用として髪と目が金色から銀に変化するのだ。そして……『聖剣使い』からさらに『勇者』へと変化したことで……全ての力を解放することに成功した。
そして俺はその状態から更に力を高めることにより……その姿を変えていくのだった。
「これが……本当の俺の姿だ!お前を倒し……俺達の願いを叶える。そしてこの国を救う!!」
俺の言葉に答えるかのように『勇者の聖剣・シャインステッガー』を構えたアルフリーはニヤリと笑うのであった。……そしてそのアルフを見て思ったのである。……アルフリーの顔つきが変わった気がした。アルフの目には今まで以上の覇気を感じたのである。その変化を見て俺は思わず笑みを浮かべてしまうのであった。
俺達は今……王城にある謁見の間でアルフと戦っていた。そして今は『勇者の聖剣・ホーリーセイバー』を手にした俺と、アルフの死闘が行われていたのである。
「『暗黒魔法』!!」
アルフリーが魔法を発動すると共に……俺の周りを取り囲むようにして黒い球体が出現したのである。それは俺が今まで経験してきた『固有能力』の一つである『闇魔法』が進化した『魔導闇魔法』だった。
俺も師匠から教えてもらって『闇魔法』を習得しているが、アルフリーの方が格段に上であった。だが……それでも俺がアルフリーとここまで渡り合えているのは師匠との特訓のお陰でもある。アルフリーも俺と初めて出会った頃とは比較にならないほどの力を身に付けている。アルフリーは魔法に関してかなりの才能を持っていたらしく、短期間でこの世界の魔法を極める程の力を手に入れて、更にはその力で新しい力まで身に付けていたのだ。
この世界で使える魔法は属性魔法と召喚系の二つだけと言われているが、その中でも『闇魔法』だけは特殊であった。他の魔法使いや魔女は呪文を唱えて魔法を使用するのに対して、アルフリーは念じるだけで発動できるのだ。この能力は『聖剣』を手に入れた後に、新たに手にしている『魔剣』の『闇の波動剣・ダークネスブレード』の能力でもあったのである。
『ダークネスソード』はこの『剣の聖女』であるアルフリーが使用していた『聖剣』であった。師匠から貰った聖剣と融合を果たしたことでその力は『暗黒騎士・ロード・オブ・ナイト・ダークネス』と同等に近い力を持つ『暗黒魔女』になったのである。アルフリーの使っていた『暗黒騎士・ロードオブナイト・ダークネス』の技を全て習得していたのだ。そして『ダークネスウェポン』と呼ばれる漆黒の武器を生み出すことの出来る能力を身に着けているのだ。この『ダークネスソード』は使用者が作り出したオリジナルの『暗黒魔女』だけが使用することが出来る剣であった。だがそれは『暗黒騎士・ロード・オブ・ナイト・ダークネス』の持つオリジナルより性能が高いのだ。
この剣の最大の特徴として持ち主であるアルフリー自身が暗黒魔女と同じ能力を持つという恐ろしいものであった。そしてアルフリーは暗黒魔女として新たな力を手に入れることに成功している。……それは自身の肉体に『ダークエナジー』と呼ばれる邪悪なるエネルギーを取り込むことにより『不死身の存在』へと進化することが可能になったのだ。これは『暗黒女神』が『冥王の鎧』と融合した時に手に入れた『聖盾の勇者』が使うことのできる能力なのだが……それをアルフリーが使いこなしているのだ。この能力は一度でも使用するとその力は永遠に続く。そのためこの剣はアルフリーに取って『最強』という言葉に相応しい力を発揮することができるようになっていたのである。だがその代償も大きく……使用回数の制限が付き……アルフリーがダメージを受けたりして、そのダメージが一定以上蓄積すると強制的に暗黒魔女から普通の女性に戻ってしまうのであった。
暗黒魔女の状態の時は『聖女』の力に加えて『勇者』の力をも併せ持つため無敵とも言える存在になっていたのだが、その状態を維持するには相当な魔力を消費するため連続での使用はできないようだ。アルフはそのことを分かった上で俺に戦いを挑んで来ており……何度も『勇者』と『暗黒魔女』の力の入れ替わりを行いながら戦っていたのである。
俺も負けていられないと思いながら……この戦いに終止符を打つべく……アルフリーとの戦いに集中するのだった。
俺はアルフリーと戦闘を続けているうちに、アルフリーはやはり凄いと感じた。アルフは『勇者の聖剣・シャインステッガー』と『聖女の杖』を同時に扱いながら俺に対して善戦をし続けていたのである。『聖剣使い』と『勇者』では俺の方が強いのは間違いなかった。だが俺はその力の差を感じさせない程の戦いを繰り広げていたのである。……正直に言うと戦い始めの頃よりも俺は強くなっているのを感じていた。だが俺の力がどれだけ強くなってもアルフリーはそれ以上の強さを持っていることには変わりがなかったのである。俺はアルフの強さを認めていた。
俺は戦いの中でアルフのことを『勇者』として認めながら戦うのだが……それと同時に俺はアルフが本当に『勇者の素質がある』人間なのかと疑問を抱くことになる。
確かに俺達『勇者のパーティー』にいたメンバーよりも……このアルフリーのほうが『光の力』が強いように思えた。しかし俺はその『光の力』というものがどういうものなのか分からず……俺はまだこの『勇者の聖剣』の力を完全には理解していなかったのだ。そしてそのことが俺にとって……ある意味致命傷になってしまったのである。
「はぁあああ!!『聖なる杖・シャインステッガー』!」
「『聖剣・勇者の聖剣』!」
俺の振り下ろした一撃と、アルフの突き上げた一撃がぶつかり合った時に……アルフリーの手にした『勇者の聖剣・ホーリーブレイド』が真っ二つに折れてしまったのである。俺が持っている『勇者の聖剣』は伝説の聖剣で『ホーリーセイバー』の次に強い聖剣である。その剣を容易く折ってしまうということは……やはりアルフリーが言ったとおりに、俺は『勇者』ではないのではないかと思うようになる。俺がその思いで戸惑っている時、
「ふっ……。私を倒すために『勇者の証』の力を解放しても無駄なことだ」
「『勇者の証』?なんだ……それ?」
俺は初めて聞いた言葉に疑問を抱いたのである。するとアルフリーはニヤリと笑う。
「その様子だと……知らなかったみたいだな。『勇者』の称号を持つものに授けられる特殊なスキルのことだ。それは全ての勇者に受け継がれていく力であり……それが『勇者』と他の称号との大きな違いだ。……つまりお前にはその資格はないということになるな。お前が『勇者解放』を使ったときに……既に分かっている。……だからお前は……偽物だ!!」
「何を言っているんだ!!俺は……『勇者』……そうだ……『聖剣・勇者の聖剣』!!」
俺はその言葉に反応してアルフリーに向けて『聖剣・勇者の聖剣』を振るうが、アルフリーはあっさりとそれを回避すると再び俺に向かって攻撃をしてくるのだ。俺はその攻撃を防ぐのに手一杯になるくらいだった。そしてそんな状態の俺に対しアルフリーは笑い出すのである。その態度が……さらに腹立たしく感じてしまう。だが今は我慢しながら戦いを続けるしかないのであった。
そしてその後も激しい攻防が続き、ついに俺の攻撃によって、俺が持っていた聖剣の刀身部分の半分ほどが粉々に砕け散った。そのことに俺自身動揺を隠しきれなかったのである。そして俺もアルフリーも肩を大きく上下させながらも呼吸を乱していた。
アルフリーは俺から少し離れると俺の様子を伺っているようであった。俺の体はアルフリーの暗黒魔女化の影響でダメージを受けてボロボロの状態になっている。俺自身も体中が痛かったが……これ以上戦えないわけではなかった。だが俺はこの状況をどう打開するか考えようとしたその時に、アルフリーは突然笑みを浮かべて何かに語りかけたのである。そして俺は驚いた。なんと……俺以外の人達がいるはずの玉座の間から凄まじい爆発音が鳴り響き、大きな揺れが城全体を襲うのであった。
その衝撃と振動を受けて俺はすぐに玉座の方に視線を向けたのである。そしてそこに映っていた映像を見て愕然としてしまう。
それは……国王陛下の姿であった。その体が炎に包まれ、今にも焼け死のうとしていた。
「陛下!!!!!」
その声と共に俺も走り出したのだった。だが俺が到着した頃には既に手遅れになっていたのである。
アルフリーの目の前まで来ると、アルフリーの口元は笑っていて、アルフリーは両手を広げていた。そのアルフリーが浮かべている表情がとても嬉しそうにしている顔を見た瞬間、俺の怒りが爆発しそうになるがなんとか抑え込みながら問いかける。
「なぜこんなことをする……」
「ふん……お前に答える必要があるのか……?それに見て分かるだろう。私の勝ちだという事が……。私はついに『暗黒騎士』を超える力を手に入れたのだ。これでもう……誰も私が『勇者』を名乗ることなど出来ないはずだ。そしてこの世界にいる『聖女』は私がもらう!貴様らのような偽りの『勇者』が手に出来る存在ではないことをここで証明してやろう!!」
「ふざけるな!!誰が『勇者』などという紛い者を認めるものか!!その汚らしい顔をさっさと消し去るといいわよ」
「……リリィ!?……大丈夫……なのか……ってその怪我!?……まさか……暗黒魔女化して……」
リリィの体を覆っていた暗黒粒子が次第に薄くなっていく。その光景にアルフリーはとても残念そうな目つきをしていた。
「暗黒魔女……だと……馬鹿め……まだいたのなら、先に殺しておけばよかった。……せっかく暗黒魔女から普通の女の子に戻れると思ったのに……お前も消え去れぇえええ!!!!」
そしてアルフリーの体に黒い闇がまとわりつくと同時にその姿が大きく変わっていく。全身に鎧のように纏っていくとそれはまさに……俺と同じ暗黒騎士のように見えたのである。しかも俺よりも遥かに上回っているように思えた。アルフリーの見た目の変化が終わると……そこには俺と同じような黒髪ロングヘアーをした女性が姿を現したのである。俺は驚いていると暗黒魔女化したアルフリーはこちらを見つめて不敵な微笑みを浮かべたのだ。そして彼女は俺に指差す。
「『暗黒魔女・ナイトメアダークネス・ダークウィッチ』……暗黒魔女の最上位形態である『暗黒魔女』に進化することに成功したのだ。もはや私を止められる者はいないぞ!!覚悟しておくんだな……この偽物の偽物が……偽物に『聖剣使い』は務まらないと教えてやる!!!」
「くそぉおおおおお!!」アルフリーが動き出すのとほぼ同時に俺は『勇者の聖剣・勇者の聖剣』を手に持ち斬りかかった。しかし俺が振り下ろしてきた剣をアルフリーは軽々と回避したのである。アルフリーは空中で体勢を整えると着地をして剣を構えていた。俺はそのアルフリーの行動に驚きながら話しかけた。
「今のを回避できるほどの実力とは……正直に言って驚かされるぜ。でも……お前には『聖剣』を使うことはできないはず……なのに……どうやって……暗黒魔女化している状態でも……扱えるというんだ!?……ん?……待て……お前……今なんて言った?」
「何を言っているんだ偽物は?……そんなことどうでもいいんだよ。お前は……ただ黙って倒されればいいんだよ!!!……偽物の分際で『聖剣』を……『聖剣使い』を気取るんじゃねえよ!!」
俺が話している途中でアルフリーが怒りを露にして剣を振ってくる。俺は咄嵯にその攻撃を剣で防ぐがあまりの力強さに弾き飛ばされた。
「なっ!!……なるほどな……そういう事だったのか。……アルフ……お前の正体がやっと分かったぞ」
「はぁ?何を訳の分からない事を言っている?私は……正真正銘本物の……暗黒魔女だ!!その程度の力の差にようやく気づいたようだな。だがもう遅い!!」
「いや、遅すぎるな。なぜなら俺はもうとっくに気づいてたからだ」
「なにぃいいい?……ふふふ、ははははは、はーはっはっはっはっ!!!……何が遅かっただ。この期に及んで虚勢を張っても何も変わるわけないだろ」
アルフリーが大声で笑うのを俺は聞きながら自分の体の痛みを気にしないようにしていた。するとアルフリーは俺に指を指しながら笑っていたのである。俺は笑い終えたアルフリーに対してある事実を告げる。
「……俺は最初から気づいていた。俺の予想通りお前には俺を殺すことができないということに……だってお前の体は傷ついてなんかいないんだもんな」
「はぁ?一体何を言っているんだ?」「とぼけてもらっても構わないが、俺は最初からお前の体には傷一つ負わせてないことぐらい分かっているからな。そして俺がお前に負けることもない」
俺はアルフリーに向けてはっきりと伝える。そして俺は右手に持つ『勇者の聖剣・勇者の聖剣』に意識を集中させると……聖剣に秘められている聖属性の力を俺の体全体に流していくのである。その事に気づいたのか、アルフリーは少し焦り始めたのだ。
「おい!!なんだその力は……。なぜお前が『聖剣』を持っているんだ……なんで……お前ごとき偽物がそれを使えるんだ!?」
アルフリーの問いかけに俺はニヤリと笑みを浮かべると聖剣の刃部分を消滅させるのである。それを見たアルフリーは驚く。俺はそのアルフリーに言葉をぶつける。
「なぜ使えないと思っている?俺はお前より『聖剣』の扱い方が上手いからだよ。俺はお前と違ってずっと……『勇者の証』の力で戦い続けていたから、この武器に対する理解を深めてきた。そのおかげてこの力を自由に扱うことができる。つまり……この俺にお前は勝てない」「そんなことが……。……なら試してみるか。どうせこのまま戦っても私が勝つのが目に見えているからな!!」
「それはどうかな……?」
アルフリーの言葉に対して俺は不敵に笑って見せると、聖剣を再び出現させてからアルフリーの方へと駆け出していった。そして俺は再び聖剣に聖属性の力を宿すとアルフリーに攻撃を繰り出していく。だが俺の攻撃を軽々と回避してみせるアルフリーである。アルフリーは反撃するために聖剣を振るうが俺はそれを全て聖剣をうまく使って防いで見せた。その光景を見ているアルフリーは悔しそうな表情をしていたのである。そして俺も内心では驚きを隠せなかった。俺の攻撃を受け止めるだけでなく、攻撃を返してくる余裕があったのだから。俺はその事実が信じられなかったのである。その事で俺はアルフリーがどれだけ強くなっているのかを思い知らされたのである。
そして俺はアルフリーに話し掛けたのであった。
「さっきまでの威勢の良さはどうした……まさか俺の攻撃を防ぎきる事が出来ないとか言うなよ……」「……この程度だとでも思っているのか?これなら『勇者』を名乗っていた頃の『聖剣使い』の方がまだましだったな……」
俺の挑発をアルフリーは軽くあしらうと、攻撃してきた。俺はその一撃に対処するが、その重さに俺は驚いてしまう。
「こ、こいつは……なんというパワーだ……」俺はその攻撃力の高さに驚いた。だがそのアルフリーの動きにも注意しなければいけない。そして俺は隙を見て聖剣に纏っていた聖属性の力を発動させたのである。
「今の攻撃にお前が反応できたということは……俺とお前との実力差がそれほど無いということだろう……なら……俺が全力を出したところで、死ぬ心配はないってことだ!!」「……そう思いたいならば勝手にしろ……私には貴様がどんな攻撃を仕掛けようと関係ないのだからな!!」
そして俺はさらに速度を上げ、剣撃に重みを乗せ、連続で繰り出されるアルフリーの剣撃を完璧に防御し続けたのである。その様子にアルフリーの表情は徐々に険しいものに変わっていった。俺はそれでも容赦なく剣を振り続ける。俺の連撃に、アルフリーの表情は更に険しくなっていったのである。
俺は『聖剣使い』になって日が浅い。それに暗黒魔女化してしまったことで本来の力を発揮できていない。だが俺には聖剣を扱う上で必要な力の使いかたを知っていたのである。それに俺と『勇者』とのレベル差があるとはいえ互角以上に戦えていることは間違いないと思う。だがそれはあくまでレベルが上というだけであって……技術面においては完全に負けていると思った。なぜなら、今の俺の剣技の速さと切れ味……それと重さは完全に同等になっていたからである。
「くっ!……なんてやつ……だ……」
俺は聖剣で斬りかかるのと同時にアルフ—ルに向かって拳を放つ。すると俺は拳で放つと同時に聖剣に纏わせた聖なる魔力を放出してアルフリーに叩き込んだのである。
「くぅっ!!くそがぁあああ!!」
「まだこんなもんじゃないぞ!!」「調子に乗るんじゃねぇええ!!」
そして俺は聖剣でアルフリーを切りつけた。同時に俺は右手をアルフリーの顔面にぶつける。その強烈な攻撃にアルフリーは大きく吹っ飛ばされてしまったのである。そして聖剣を地面に突き刺してから俺は息を切らしながらアルフリーに声をかけた。
「はぁ……はぁ……お前は本当に強敵だな。お前ほどの相手は暗黒魔女化したリリィでも相手にできないかもしれない。リリィは『聖女』になった今でも、暗黒魔女の力を完全に制御することはできなかったはずだからな」
「はあはあ……暗黒魔女の力を完全に制御できてたら……この世界は『暗黒魔女』に支配されていたかもしれませんね……まあ、そうなったとしても私と……あの方と『勇者』がいたら問題ありませんけど」
「その自信はどこから来るんだか……。お前の師匠の魔王は死んだはずじゃ……ん?……『勇者』? ちょっと待て……『勇者』だって……? お前は……もしかして『勇者の証』を使えるっていうのは……そういうことなのか?」
俺の質問に対してアルフリーは答えない。俺は聖剣を引き抜くとそのまま地面から引き抜いていた聖剣を右手に握るとアルフリーを睨む。その眼差しを受けたアルフリーの全身から冷や汗が流れたのである。俺は聖剣に込められた力を開放すると、再び剣を構えたのである。アルフリーは俺の様子を見ると、構えるのを止めてため息を吐いてからこう話したのである。
「……私の敗北です。認めましょう」……それから暫くして俺はリリィ達と合流すると、『王城近衛兵 第二大隊長』であり、『勇者の弟子ロイド=グランハルト(25歳)』である『ロイド』と名乗る男との戦いは終わったのであった。そして戦いが終わり一息ついている俺達に一人の女の子がこちらに向かって走って来ながら話しかけて来たのだ。
その子の名は『アリスティア』といって俺の第二王女でもありこの国の第一王女でもある子だ。年齢は14歳で、俺と同じ年だ。彼女は金髪で青い瞳をした美しい容姿をしているのだけれど、とても可愛らしい性格をしておられるのだ。そんな彼女だが……何故か今は少し怒ったような顔つきをしていた。そして彼女はその顔を崩さずに、口を開いたのである。
(この子がどうして怒っているんだ?いやそれよりもまずはこの子を落ち着かせなければ……このまま放っておいたら何が起きるか分からない!!なんとかしないと……)と思いつつ俺は笑顔を浮かべながら声をかけたのだった。
「や、やあ……久しぶりだね……今日は一体何の用事かな?俺に何かあった……の……っ!?!!!?!!!!!?」俺の言葉に全く反応を見せなかったその美少女……アリスティアは俺の声を聞いた瞬間いきなり目を大きく見開くと、物凄い形相を浮かべて俺に飛びかかって来たのである。そんな彼女の行動に驚き、咄嵯の事で俺は何も対応できなかったのであった。俺の首に腕を回すとそのまま俺を押し倒して、押し倒された俺は抵抗することもできずに倒れ込んでしまう。俺の上に乗っかり覆いかぶさるようにしてくる。そしてそんな体勢にされた俺に……彼女は涙を浮かべた顔をしながら怒鳴ってきたのだ。
「う、う、うううう!!わ、私は……心配して……心配していたんですよ!!リリアムさんが……『聖剣』を使えなくなったと聞いて!!だから、もしかしたら……リリアナさんの病気を治す事が……できなくなるんじゃないかと思って……。……リリアムさんが死んだんじゃないかと……不安でした……怖かったんです!!私……リリアナさんの事を友達と思っていたから!!それなのに……どうしてあなたはあんなに強い『聖剣使い』になれたんですか!? それに比べて私は……。私……ずっとずっとリリアムさんの事が好きだったので!!だからずっとずっと会いたかったんです!!会えてうれしいです!!ずっとずっと好きだったんです!!ずっとずっと……愛しています!!」
俺に跨がり泣きながらも告白してきたのは俺の第二王女のアリスティアである。この子はいつも元気よく俺に接してくれる可愛い俺の妹のような存在だった。だがそんなアリスティアの突然の行動に俺は戸惑ってしまうのだった。
(えぇー……え、い、今なんて……え!?……な、な、なんで……ど、どういう意味なの?)「そ、その話はあとにしてくれないかい?と、とりあえず、その手を離してくれないか?」
俺の言葉に首を横に振ると、再び俺に話し掛けてきた。そして……俺が言葉を続けようとした時、突如後ろから声をかけられたのである。それは……今俺の上で馬乗りになっている女の子の姉にあたる、俺の第一王女のクロエ=リシャール姫がそこにいたのであった。
「私もよ……お姉ちゃんも貴方の事を愛しています。私だって本当は心配だった。貴女の力になりたいとも思っていた。だけど……私には何もできなくて……貴女の力になりたくてもなれない自分が歯痒くて、悲しかった……辛かった。……でも……こうして再会できた。貴女はもう大丈夫そうですね……よかった……」そう言い残してから、俺とアリスティアの方に歩いてくる。
その歩き方は、まるで俺を労るような、優しく包んでくれているような感じだった。俺は二人の様子に戸惑ってしまい何も言うことが出来なかった。その様子に、俺に馬乗りになった状態の二人は微笑んでいたのである。その光景に俺の頭の中は混乱し、そして、なぜか嬉しさと恥ずかしさを感じて、俺は照れてしまっていたのである。
俺とアルフリーとの激戦が終わりしばらく時間が経過した後。俺達はアルフ—ルドに連れられ城の中に通されていた。
俺が戦った相手の名だが、アルフリーと名乗っていた男はどうも偽名で、本名はアルフリート=アーデルというそうで、年齢は現在19歳の若者で、剣の腕が超一流で、剣の扱いだけでなく魔法の力も高いそうだ。それに……剣の腕前に関してなのだが……なんとその腕前はリリィを遥かに超えているというから、驚くしかなかった。リリィも剣を扱えないわけではないのだが、俺と一緒に修行を始めてからはあまり真剣に剣を扱っていないのだ。その理由は……やはり剣を上手く扱うことが難しくなってきたのが一番の原因だと思うが……それ以上に、聖剣の力を扱えるようになってきたことで『魔法剣』が使えるようになったことが理由だと思える。つまり『魔法剣』を使い始めたリリィにとって、もはや聖属性の剣を練習することが必要なくなってきていたからであると思うのだ。
それに『剣聖リリス』が触媒を用意してくれたという話もあるから……恐らくだが、聖剣『リリス・オブ・バハムート』を使うための『鍵』は聖剣をある程度操ることができる人ならば誰にだって使うことが出来るという可能性が高いと思った。それに触媒に関しても聖剣の力が扱える人が使えるように作られた武器ならどんなものにだって使えるだろうからね。
そして……アルフ—ルの本名がアルフリート=アーデルであることを知った俺たちは、彼に名前で呼ばれることに少し慣れていなかったので……アルフリーと呼ぶことにしたのである。その方が親しみがあって良いと思ったからね。そして……アルフリーはというと……リリィのことも知っているようで……
「聖剣リリス……確かにあのお方から伺っていた。だがまさか本当に聖女様になっていたとは……。しかもあの『黒翼の聖剣』をここまで使いこなすようになっていたなんて……。それにしても『聖女』と『聖騎士』か……本当に君たちは凄いな……。本当に信じられない」などと、驚き半分呆れ混じりに呟いていたのであった。
「ふぅ……疲れました……でも久しぶりにリリィと会えたので嬉しいです」と言ってアリスティアはリリィにもたれ掛かってきた。俺はリリイの方を横目でチラッと見る。その視線に気づいたのか、俺と目が合うと、小さくため息をつく。その仕草がとてもかわいらしく思えた。
リリィはアリスティアのことをとても気に入っている。そのことは傍から見ていても明らかである。そして、アリスティアはリリアナのことを実の姉妹のように思って接しており……俺も二人を見守りたいと思っている。だが、アリスティアが時々見せるこの甘えん坊の態度は俺を困惑させてしまうことがあるのも確かである。そして、俺はこの状態になると身動きが取れなくなってしまうのである。
俺には前世で付き合っていた彼女がいたんだが……その子は俺よりもかなり年下の子だったので、俺は彼女に年上である自分なりにいろいろしてあげたいという気持ちがあったんだ。しかし、この子はアリスティアと同い年であり、俺にとっては妹に近い存在なので、そういう感覚が芽生えにくいのである。だからアリスティアは……リリィの事をリリィお姉さまと呼び慕っており、俺はそんな二人が仲良くしている姿を見るたびに嬉しく思う。
そんなことを考えつつ俺はため息を吐くと、先ほどの戦いを思い出していた。あの時は、正直やばいと思ったんだが、何とか勝つことができたのは良かった。しかし俺は、最後の一撃を決めることができなかった。『リリアナを救うこと』に集中しすぎていて攻撃するのを忘れていた。
まあ、そんなこんなで無事に『勇者ロイド』と戦えて勝ったので……これから『勇者ロイド(20歳)』と話をしなければならないのだ。『勇者ロイド』との戦いに負けた場合……この国の王様が持っている聖剣を俺に渡して、そのかわりに俺の大切な人を生き返らせることができる『聖剣』との交換という条件を提示してた。
それって……リリアナを救えなかった時に……この国の人たちに殺されかねないということだよね?それなのにこの国の王や貴族たちの殆どの連中がこの条件に承諾してしまったんだ。そのせいか……この国の王族は……俺が聖剣を手に入れても手に入れることが出来なければこの国を滅ぼしても良いと考えているみたいなんだよなぁ……。この国はリシア王国のことを格下だと思って下に見ているらしい。この考えのせいで……俺や俺の大事な人は苦労させられてばかりで……いい加減に頭にきてたんだけど……。だから……今回俺と勝負をして俺を負かすことができればその聖剣と交換してやるということになったんだが……。正直……俺が勝って、その要求を通す事ができる自信がなかったんだ……。だからさ……俺、さっきの勝負では本気を出せなかったのかもしれない……。
それに……『リリアス=アリウス=インフェリアルト』さんと初めて会った時の事なんだが、彼女は聖女の事をすごく心配していた。そして聖剣の事を聞いてきたりしていたけど、どうも聖剣『リリアス』の事が気になってしょうがないみたいだったし……。でも……リリアスさんの事は今は考える必要はなかった……。なぜなら俺が聖剣を手に入れることができればいいのだから……。だから聖剣を手にいれるまではリリアスさんに会うことは出来ないと思うから。だけど……『聖女』が聖剣の『所有者』になるなんてありえないことなんだと……俺はこの国の人を信じることができなくなってしまった。そして……この国がリリィに酷い扱いをしていた事も許せなくなってきた……。俺は今すぐここから出て行ってこの国に一泡吹かせてやりたいと思ったくらいだ。
そしてそんな状況の中、アルフリーからあるお願いがあると申し出られたのである。その内容は、俺がリリアン王女を助けてくれればこの国の姫であるリリアーナ=アリスト=イリス様とアリスティリーナ王女を俺の妻にしてくれないかと頼まれてしまった。その言葉に……リリィもリリアナも驚き、言葉を失っていた。そして俺は……
(はぁ!?何を言っているの?この人……頭大丈夫かな?何言ってんの?)と思ってしまう。だが俺が驚いた顔を見せると……
「すまない!!実はリリアーナ姫は君の恋人だということは知っている。だが頼む!!このままだとリリリアーナ姫は処刑されてしまうんだ!!それだけは絶対に阻止したい!!だから助ける為に協力してもらえないか?私はもう二度とあんな悲劇を起こしたくないのだ!!」と真剣な表情で訴えてくるのだった。どうもこの国の姫は、聖女と同じように『黒翼族』の奴隷として長い間扱われていて、聖剣を手に入れたとしても殺される可能性が非常に高いという事を聞かされて俺は、さらにリリアナ達に対する扱いの酷さに怒りを覚えてしまい…… 俺はリリアナの方を見てうなずいた後、「分かりました。必ずリリアナさんを救い出します。ですから協力をします。ただし……もしも約束を破ったら俺は……この世界を滅ぼすつもりでいます。そのことを肝に銘じておいてくださいね」と言った後に俺の後ろでリリアナは震えていた。
俺の返事を聞いたアルフリーは「ありがとう!!これでこの国からリリアー……姫を救い出せる。それにしても君は本当に変わった人間なのだね……。だが、その強さは素晴らしいものがある。だが一つ気になったのだが……『勇者』の力は使わないのかね?」と言われ、俺がどう答えようか迷っていると……。
リリィは俺をチラッと見ると、俺に「ここは話を合わせるべきだと思います。リリィも『リリア』がどういった人物かを知りませんし……」と言ってくれた。リリアの本名が『リリア』であることをリリィは知らなかったのである。だから俺はリリィに向かって微笑みながら小さく頭を縦に動かした後、再びアルフリーと向き合うと「えっと……俺は……『勇者』の力は使わず、自分の力だけで戦わせてもらいたいのです」と答えたのであった。
するとアルフリーは少し考えたような顔をした後に、納得したようにうなずくと「わかった。ならばそれでよい。だが、『勇者』に勝てる実力を持っているなら……私と戦うこともできるはずだから覚悟はしておいて欲しい」と言われたのである。……なんか嫌味に聞こえてきたぞ……と思いながらも……そのあとに、俺達は王様が用意してくれた馬車に乗って城に向かったのであった。
そして城にたどり着いた俺たちだったが……そこには……この王都を治める王が待ち構えていたのである。そして俺たちの乗った馬は、そのまま玉座の前に誘導された。
そこにいたのはこの国の王『レイガスト王国国王・ガルベルト・レイン・オルム・リシア・レイガストール6世』であった。俺には彼が何を考えているのか全く理解できないでいたが、彼は俺に握手を求めてきたので俺は彼の手を軽く握ったのであった。そして俺は彼に「『勇者』様とお見受けするが……いかがかのう?」と言われてしまう。それに対して俺は「そう呼ばれていますが……勇者ではありません」と答える。その答えに王は、
「ほう……『聖騎士』殿から話は聞いておったが本当におぬしがそうなのか……。それにお主……わしの事を信用していないであろう。無理もないがのう……。おぬしには色々と悪いことをしてきたから当然じゃろう。だが……それでもわしは信じてほしいと思っている」と言い出したのだ。俺は「それは一体どういう意味ですか?」と聞く。
すると王が言ったことは驚くべきことであった。まず俺の目の前にいる男は、『勇者ロイド』を『黒翼族』の姫を生贄にして殺した本人である。しかし俺は、この人が『ロイド』を倒した張本人だという事が分からなかったので、少し疑問を感じていたんだ。しかし、俺はその後すぐに思い知ることになる。この男がとんでもない悪党であるという事に……。
「そうだな……わしがなぜリリスの聖剣を奪うことができたのかについて教えてやるか……。まあ、簡単に言えば、リリスの偽物を造り上げて本物だと言ってリリアスに売らせたということだよ」というとんでもないことを言われてしまうのであった。
俺は「それでは貴方がリリィのお姉さまを騙したというのですね」と睨む。だが、俺の怒りに反応するかのようにリリアナの瞳から魔力が溢れだす。そしてその威圧に耐えきれなくなった王が気絶してしまう。俺は慌てて回復魔法をかける。しかし俺は王の容態よりも、リリアナのことを怒らせないようにしなければと冷や汗を流しつつリリィに目を向けるとリリィも俺のことを見ていてくれていたようで、目が合ってしまうとお互いに笑ってしまったのだった。しかし、そんな俺たちの様子をリリアナがじっと見つめていることに気づいてしまい……。
(うぅ……。リリィはともかく……リリアナまで怖くなってきてしまったよ……。それに、今のリリアナは聖剣の影響でかなりパワーアップしてるからね。しかも今の状態でリリアスさんの事を話すのはまずいよね……。だから今はこの話題に触れないでおこう……。でもリリアナはやっぱりまだ怒ってるようなんだよなぁ……。それに……リリィがすごく嬉しそうなんだけど……。この二人の関係はどうなっちゃってるの!?)
俺が困ってると……王様は起き上がりリリアナを見る。その瞬間に俺は、
(あっ……王様死んだな……これ)と思ってしまうが……。
「おぉ……美しい……女神がおられましたか……。やはり聖剣の力が暴走していますか……?しかしリリア……?あの時とは随分雰囲気が変わってしまっているみたいだが……。そ、それよりリリィが生きて帰ってきてくれたことのほうが大事だ。よくぞ戻ってきてくれた!!感謝しかない!!この国を代表して……心より……この国の為に……死んでくれることに……感謝をしよう」と言うのだった。……俺が思っていたリリアナと違ったせいか、この王様はどうしてしまったのだろうと思ったのと同時に……。俺は、今までに見たことのないほどに……リリィに対して優しい目をしている事に気付いた。そして俺の中で、あることが浮かんできてしまう……。もしかするとこの人は……リリアナの事を愛していたのかもしれないと……。だからリリアナをリリスの奴隷商人に騙されたのにも関わらずリリアスさんを救うために奔走していたのではないかと……。それにしてもこの人のリリアナを見ている時の表情を見ると本当に好きだったんじゃないかと思うくらいの優しすぎる顔になっている……。
俺は思わず苦笑いを浮かべてしまい……。
俺の様子を見たリリィが、俺と王の顔を見て、なぜか俺の服を引っ張ってくる。
俺はリリアナは大丈夫だと言って安心させると……王様と向かい合い「ところで、あなたが先程言ったことについて説明をしてもらいたいんですけど……」と俺が言うと……リリィが「リリィはリリィです。もう『リリアス』という名前じゃないです!!」と叫ぶのであった。
俺の言葉に……リリィも怒りを覚えてしまったようだ……。俺は……どうすればいいんだ?と本気で思ってしまい焦っていると……。俺の頭の中に、ある映像が流れてきたのであった。
その記憶によると、目の前の老人の頭の中から、俺の頭に情報が入り込んでいるような気がしたのである。その情報から俺が分かった事は……。このリリィの姉は、『聖剣の勇者』の婚約者であり……『聖女』の称号を持つ人らしい。名前はリリアーナ・エルスター。リリアの本当の持ち主の人だと……。そしてリリアとリリアの姉妹のような関係になっていたらしい。リリアーナ・エルスターは……。
リリアと同じ聖女であり、聖剣『神剣リリアナ・ディライト』を扱うことができる女性であった。しかしある日、彼女の住む街を『勇者ロイド』が突如として攻めて来たのである。
その時に……『勇者ロイド』は、リリアを人質にとり彼女を脅し始めた。その結果……リリアは『勇者ロイド』を倒せばリリアを解放してくれるという条件を受け入れてしまい……。
『勇者ロイド』に戦いを挑んでいったのである。
そして、戦いが始まったのだが……結果は無残にも惨敗をしてしまい……瀕死の重傷を負い命の危険に陥ったという……。リリアは自分の力不足を感じ取り、『勇者ロイド』が要求する通りにリリアは自らの魂の半分を生贄として差し出してしまう。そしてその代償に手に入れた『聖女』の力を宿すことになった。
だが……。『勇者ロイド』は……リリアを殺すことはなかった……。そのリリアは……。リリアの意識だけが残っている状態だった。リリアはその状態で自分の体の傷が癒えていく様子を自分の体を通して見ることしかできなかったのである。自分の体が勝手に治り始めているという光景を……自分の目で確認しながら……。自分の意識がある中で……。ただ……。『勇者ロイド』が……。
『俺の女になれ!!』と、言い続けているのを……。ずっと……聞き続けていた。
そして、自分の体を操っている奴に無理やり唇を奪われてキスをしているところを見せつけられていたのだ。その様子を見せられ続けていて……彼女は狂っていく。そしてとうとう耐えきれなくなり……自らその肉体を捨ててしまう……。その体は……。リリアのものになってしまったのである。その後……。『勇者ロイド』が……。聖女の体に憑依したことで聖剣の力は失われてしまう。リリアーナと入れ替わったことで……。リリアスの意識だけが残ったままの状態になってしまう。そして……。
「『勇者ロイド』にリリアの体を渡すわけにはいきません……」と言い放ち。聖剣の力を取り戻したのである。だが……。リリアは聖剣を使いこなせなかった。なぜならば……。聖剣の力を取り戻すために、自分の意識のほとんどを……捨て去ってしまったからである。つまり……リリアの精神が消え去り、完全に『リリア』が『リリアス』となってしまったということだった。そして『勇者ロイド』との闘いの末、ついに倒すことに成功したが、リリィの心は壊れてしまっていたのである。
それから……何百年もの時が経つ。その時代にはリリアスの記憶は封印されていた……。『リリアス』という名前は、『リリア』から取ってつけた名前であり、『勇者ロイド』を倒すための作戦でもあったのである。しかし結局……『勇者』を倒した後も……『勇者ロイド』は復活し続けてしまう。そして……。また数百年の月日が流れる……。リリィは、この長い時間をかけてやっと……リリアの記憶を思い出し始めるのだった。リリアとリリアリーゼが一つになって初めて聖女リリアが誕生したのだった。そして今、目の前にリリアが居る……。そして俺は気付いてしまう。俺が感じたあの『情報』は……『リリア』の記憶なのだと……。そして俺は確信する……。リリアがリリアーナ・エルスターだったのだと……。
リリアとリリアは……同じ人物であり別人だったのである。だが俺はリリアがリリアであることは理解できたのである。リリアには俺の考えを理解できているらしく……。リリアは俺のことを見て……嬉しそうに笑う。
(まさかリリアも記憶を失っているとは……。それにリリアもリリアで大変だったことが分かってしまった……。俺の想像だけど……。おそらく、リリアスさんは……。この国の王族の娘なんだな。しかも、王位継承権を受け継いでいたということだよね。……だから王様とリリィが血が繋がっていたとしても、不思議ではないのか……。そして、リリィも王様の血を引いてるから似ていて当たり前だよ……。リリアとリリアリーゼさんの二人の魂を受け継いだんだもん……。でも……もしかして……あの王様が言っていたリリィのお姉さまというのは……。リリィが王様のことを慕っている理由がよくわかるよ。だって……。こんなにも可愛く育ってくれて嬉しいって思ってるんだもん。)
俺とリリアが笑い合っているところを見ていると……。王が涙目になっていることに気がつき……
(やばい……このままじゃまたリリィの怒りを買ってしまうかも)と思ったが……。そんな心配は要らなかったようで……。「ふぅ~。リリィもお姉ちゃんに似てきちゃったのね……」と言って笑みを浮かべる。そして、王は俺に向かって言うのだった。「私は、このリリィが……本当の妹だったらいいなと思っていたんだけどね……。それにリリィのお母様のことも大好きだから……」と……。それを聞いて俺は……。
「えっと……それはどういうことなんですか?」と聞くと、リリィの母親が……。『リリアス』という名前で、この国で聖剣を振るい、『聖騎士王』と呼ばれた人だったらしい。『聖女』の力と聖騎士の力が融合したことで最強クラスの『戦乙女の聖騎士王』と呼ばれ……この世界で彼女に逆らえる者はいなかったらしい。しかしある日……『勇者ロイド』によって国を攻め落とされてしまう。しかし……。その『リリアス』という人は諦めていなかった。まだ幼いリリィを残して、彼女は単身、勇者に挑んでいったのである。その戦いの最中に……。彼女は聖剣に飲み込まれてしまった。
そして……『勇者ロイド』を倒し……。国を救うことが出来たが、その代償に……自分が命を懸けて国を守った英雄として歴史に名を残すことになったのだった。だがしかし……彼女の人生はここで終わってしまう。聖剣が、自分を使ってくれた人のことを忘れないために……。自らを犠牲にした女性を忘れないようにするために……。彼女の人格と力を保存し記憶として聖剣に取り込んでしまったからだった……。だから……『勇者ロイド』を倒してからも……この国は続いてきたのである。その後この聖女のリリアが……リリアスさんが亡くなってしまっていた事実を知ってしまい、悲しみに打ちひしがれていたが……。リリアのおかげで立ち直ることができたと言っていた……。その話を聞き終わった後に、王の顔を見ると先ほどとは違いとても悲痛に満ちた表情をしていたのである。俺はリリィに、「そのリリアスさんはどこに行ったの?もう亡くなっているんじゃないの?……もし生きていれば……会えたら……謝りたい……」と呟いていたのだ。
するとリリアが……。俺に対して言ったのである。リリアが教えてくれた話では……。
この聖剣を抜いた勇者が『勇者ロイド』であり……。その勇者が魔王を倒す前に、魔王の側近である大魔将軍が世界征服を企んでいた。そして、聖女である『リリアス』は、聖剣を使い勇者とともに世界を平和にすることを決意して、聖剣の力を使ったのである。だがしかし……リリィが産まれたことにより、その計画は失敗に終わったのであった。聖剣を抜いた勇者と、リリアが同時に力を発現させて、聖剣と融合を果たしたのである。それにより、本来、勇者が得るはずだった『聖剣エクスカリバー』と、リリアが使うはずだった聖剣の二本を手に入れたことになるのだが……。聖剣の力に耐えられなかったリリアは……。『勇者』を道連れにして死を選ぼうとしていた……。だが、それを見た『勇者ロイド』は、それを阻止するため、聖剣とリリアの意識だけを封印することにしたのである。そして、『勇者ロイド』自身も封印されてしまった。
「ということになっているみたいですけど……」
俺はリリアにそう説明してもらうと……。その話を聞いた後、アリスティア達は黙り込んでしまった。そして……沈黙を破るように……アリッサが口を開いたのである。
「それで……。これからどうするの?」と……。
リリスとリリィに手伝ってもらい『リリア』の儀式を執り行う準備を整えている最中に……。アリッサは俺に尋ねてきたのである。その問いかけに……
「まずは……。儀式を行ってみるしか方法はないかな」と俺は答えるが……。
(まぁ……。そうだよね。リリスも言ってたしな。でも本当に成功するか分からないんだよな……。それに失敗したら……『リリア』の命が……危険に晒されることになるだろうし……。とりあえずはやってみるしかないんだけど……リリィをどうやって納得させればいいのか……悩むよな……。俺が考え事をしながら歩いていると……いつの間にかに祭壇のところに着いていた。そして……『リリア』の姿を見つけた。『リリアス』さんに似ているのはもちろんのこと……。髪の長さや、目元など、どことなく雰囲気が似ているな……。『勇者ロイド』が、リリアスさんを愛していた理由もよく分かるよ……。)俺には『聖女神 リリアント』がリリアを見守ってくれているようなそんな感じがしたのである。
俺達が、『リリア』を囲み、魔法陣の中に立つ。俺はみんなの様子を確認しながら、『リリア』が封印されているクリスタルの前に立つ。俺は、『神眼』の力でリリアが封印されて眠っている『白龍玉石』に手を触れる。
俺は『情報解析』を行い、『情報』を読み取る……。
俺は、『情報』にアクセスを試みるが、なかなか接続することができないでいた。やはり、聖剣に意識を取り込まれているリリアが妨害しているようだ。『聖女リリアス・ナターシア』の意識はまだ完全には消え去っていないらしく、聖剣を通してこちらの状況を覗いているようだった。そのため、『聖女』としての意思とリリアとしての意識の二つの意志がある状態で……。しかも、リリアの肉体にリリアの精神が入り込み……。意識は一つになっている状態だった。これでは……いくら頑張っても『聖女』の力は使えそうもないなと……思い始めていたときだった。
俺は一つの疑問が生まれたのだった……。そもそもの話なのだけれど……。なぜ……聖女になった時に、リリアの精神を消し去ってしまったんだろうってことを不思議に思っていたのだ……。そこで思い出したのが、『情報開示』スキルだ……。俺の中にインストールされていたはずのそのスキルがなかったからである……。
俺はすぐにそのことを尋ねるために『神声(カミココロヨミ)
を発動させたのだ。
(あの女神が何かしたに違いない!!あいつめ!何を考えている?)
すると俺の心の中で聞き慣れたあの忌々しいやつの声が聞こえてくるのだ……。俺は心の底から嫌だったが、仕方がないので聞いてみた。
(はーい♪やっと私の力を思い出したかしらね。これで分かったでしょう。私に逆らうことは無意味だとね。私は、あなたが大好きで大好きで堪らないのだからね。さて……。あなたの疑問に答えてあげるわね。聖剣と聖女の力が統合されることによって発生する膨大なエネルギーによって、世界の理を変えようとしている者がいます。それが大魔王の正体ですよ。でも大丈夫。私がそれを食い止めますから……。だから安心してください。でもね……。『勇者』の魂を持つあなただけは……その世界に留まって欲しいの。だから……。このリリアと『リリアス』の二人の魂を受け継ぐ存在がいることで世界が変わるの……。つまり……あなたがいてくれるだけで、世界は救われるのですから……お願いしますね♪リリアちゃんとリリアスさんの二人分だけなら……魂のエネルギーを解放すれば……。きっと……この世界と、あの世界……両方の世界を守れると思いますから。』と言ってきたのだ。
その言葉に思わずため息が出てしまったのだ……。なぜなら……あの時、俺のことを見捨てたのは間違いない事実であるからだ。しかも、その理由というのが……。あの大災害を引き起こし、世界のバランスが崩れたため……その原因を俺が作ったと思っているみたいなのだ……。そんなの勝手すぎるじゃないかと、そう言いたかったのだ。そして俺の気持ちなんてまったく気にしないで勝手に話を終わらせようとする。
(はーい♪また会いましょうね。私の愛しい子達……。)と言い残して『聖女神 リリアンナ・レイ・ルクス』の気配は完全に消えたのだった。
すると……今までに聞いたことのない美しい女性の声で「あら?私の声が聞こえるのですか?」と聞こえたのである。
俺の心の中だからなのか?なぜか、普通に会話ができるようになっていたのである。
俺はその女性の声に対して、「誰ですか?どこにいるんですか?姿を現してください!!」と叫んでいたが……。その女性は何も言わず……ただ笑みを浮かべていただけだった。
すると……今度は頭の中に声が響く。それは……あの『聖女神 リリアンヌ』の笑い声だった。
そして……『リリア』『リリアス』との融合の儀式が始まった。
俺は、『聖女リリア』の儀式を執り行う前に、リリィのお母さんが、リリアスが使っていたという『戦乙女の聖騎士王』の称号について説明をしてくれてた。『聖騎士王』とは……。簡単に言えば聖剣使いの王である。『聖剣』は『勇者』と共に行動することが運命づけられているが故に、必然的に聖剣使いが王になっていくらしい。『勇者』がいないときには、他の聖剣が自動的に『勇者』の代わりに『聖騎士王』になるそうだ。ちなみに『聖剣 戦乙女の騎士王 アルフォンス』の所有者であるアリスティアが……その聖剣の力を解放したことで……。『戦姫王』と呼ばれることになったらしいのである。その称号の意味は、聖剣使いの女王のことだそうだ。聖女のリリアが、聖女の頂点にいるとすれば……。聖女のリリィが女王として君臨しているわけである。
そして今まさに……リリィの身体にその力が発現しようとしていた。俺達の目線の先に……淡い光が浮かび上がる。リリアと融合した『リリアの肉体』が反応し始めた。すると……。リリィは、まるで人形のように動かずに立っていたのである。そして俺の『情報』にはこんな表示が現れていたのだ。
【名称】
『勇者ロイド』と『聖女リリアス』が使用していた伝説の『聖剣エクスカリバー』のレプリカ 所有者
『勇者ロイド』の生まれ変わり 聖女リリィ 所持者権限は、『聖女神 リリアンナ・レイ・ルクセリア』により剥奪されています。
※聖剣は所有者が死亡しない限り、他の者に譲渡することはできない。
『リリア』の力を継承したリリィが……。
そして……俺はリリアが言っていたことを思い出す。
(『聖魔大戦』が起きるときに、私の肉体を使って、『勇者ロイド』様の生まれ変わりを探すようにと……。そして……。見つけ出したらその方に聖剣を託すようにと……。『聖女神 リリアンナ・レイ・ルクス』からそう指示を受けていました……。でも、私は……勇者様を見つけ出すことが出来なかったのです。だから私は……『リリアス』を救いたくて……。それであの子のためにできることを考えたら……。それしか方法がなかった……。)と言っていた言葉を……。そして……俺は理解したのである。おそらく、『聖女』と『勇者』の力を継承できるのは『ロイド』しかいないはずなのではないかと……。
『聖女神 リリアンヌ』と、大神官『アリシヤ=マルデドニア』に聞けばわかるかもしれないが……俺にはそこまでの情報がない……。でも……もしかして……。リリィなら……何かを知っているのではないだろうかと……。そう思ったのだった。
「リリィ……。君は……。リリアスさんのことを覚えてるかい?君の母親なんだが……」
俺は『リリア』と『リリアの魂』が融合したリリィに尋ねていたのだった。
(母上のことは……。覚えております……。ですが……。)
(今は、このリリィがリリアさんよ……。そしてリリアスよ。)
俺はリリアとリリアの魂に話しかけられたのであった。
そして……『情報解析』スキルを使うがやはりリリアの記憶はないようだ……。
ただ……。リリアと『リリアの魂』が、一つになった影響か……。その口調にリリアらしさが出始めていた。
俺はそのことに気がつき……。もしかするとと思い質問したのだ。
(リリアさん……。俺に聞きたいことがあるんだが……。リリアはなぜリリアという名前なの?)
俺がそういうと、リリアが答える。
(ああ……。『リリア』と言うのはですね……。私の名前だったのですよ。でもね……。その名前は『勇者』様から頂いたもので……。私の本当の名前じゃないんです……。だから、『リリス』として生きていくことにしてたんです。でも……『リリス』というのは……私の元の名前で……。リリスのままだったのよね……。私って本当に馬鹿だったわ……。どうしてこの名前が私の名前だと勘違いしちゃったのかしらね……。だからね……。私の名前はリリア……。リリアスは私のお姉ちゃん……。そして……私のもう一人の妹の名前は……『リリアス』……私の大好きな妹の名前なんですよ……。でも……私が死んじゃったせいで……。あの子は……もうこの世にいない……。私がもっとしっかりしていれば……あの子をあんな風にせずに済んだかもしれなかった……。私が弱かったから……あの悲劇が起きたの……。そしてあの子の死をきっかけにね……。世界が崩壊しかけたんだよ……。そして……『神魔竜 ドラゴニアドラゴン』を暴走させてしまい……世界中を巻き込んでしまい……。世界を壊してしまったの……そして私が最後に見た光景は何一つない……ただ暗い闇が広がっていただけだった……。)と……。
そして……リリアは涙を流しながら……。
そして再び話し始めていく……。
私は……大魔王から『神声(カミココロヨミ)』の能力を奪いました。それはなぜかというと……大魔王から『情報』を聞き出していたのですよ。そうしないと……私は大魔王の力を吸収しないといけなくなりましたので……。『大魔王 グランドハザート ダークロード ルシファー・ブラッドロード・リリス』が言うには、大魔王の力を手に入れれば……『神』にだってなれると……。だから、私は『神の声』で『魔王の力を吸収する能力』と……『大魔王 グランドハザート ダークロード ルシファー・ブラッドロード・リリス』の持つ能力を吸い取り……。自分のものとしたんです。その結果……私が大魔王から奪い取った力は……。この『リリアナの身体』、『聖女の力』・『戦乙女の戦乙女王の称号』・『剣聖の力』・『聖剣 戦乙女の騎士王アルフォンス≫の五つだけとなったわけなのですが……。その後すぐに『聖女神 リリアンヌ・レイ・ルクス』が来てね……。私の『記憶』と『感情』を奪っていきやがりましてね。『記憶喪失』になり、更に『心を失った』状態になった私は……。そのまま大神殿へと連れて行かれてね……。そこで……私の中の『大女神の欠片』を抜き取るためだけに……『リリアンナ』に利用されたのさ。
そして……その時、リリアンナから奪った『神声』の能力は、『聖女神の祝福の種』という特別な聖石を身体の中へ埋め込まれたことで、私は『聖女』という新しい力を開花して……。そして『聖女リリアーナ・ルクルス・セフィア・レイクル』となり……リリアンナの操る人形になってしまったんです。
そのおかげで……私の身体は完全に乗っ取られてしまうはずだったんだけど……奇跡的に『聖女』の力の一部を手に入れたままでいられて……。なんとか自我を保つことができていたのです。だけど……私の記憶を取り戻すことは出来ずにいたんです。そうすれば……。『勇者ロイド』様を助けに行くことができたんですけど……。」
そういって涙を浮かべながらも笑みを浮かべていたリリアを見て俺は胸が痛くなった。だがその時にふと気がつくと、頭の中に表示が現れたのだ。
【名称】
勇者ロイドの生まれ変わりの桐島綾人。所持者権限により。
リリアと融合していますが、権限を発動させることが出来ます。実行しますか? →YES NO Yesを選択しようとするが俺の目の前には表示された画面が消えることはなく残っていた。俺は念じると……リリアとの繋がりが強くなった気がすると同時に……リリアの人格が少し変わったような気がしたが俺は気にせず『イエスタクト!!』を選択した。すると俺が今まで持っていたリリアの記憶の一部が戻ってくる。その瞬間……俺は眩しさを感じると、リリアは俺に向かって話し始めるのである。
「ロイドさん……。思い出しました。そうですね……。あなたにならきっと……大丈夫ですね……。あの人の願いも叶うでしょう。どうかお願いします。『ロイドさん』。私達の仲間を救ってください。あの子だけは幸せになって欲しいのです……。そして私を救い出してください……。お願いします。貴方にしかできないことなのです……。」
そういうと……光となって消えたのである。
俺は今の出来事について考える。まず、俺はリリアの記憶を取り戻したのはいいことだと思うのだが……。リリアの話からだとリリアの魂はすでに消滅しているはずだよな……。つまり……これはどういうことだ……。もしかして……リリアンナの奴……俺に嘘をついているということなのか? わからない。
もしかして俺を油断させて隙をついて俺を殺し、魂を奪おうとしているのではないかと思うとゾッとした。でもリリアスさんの話が真実ならば……。大魔竜王を封印したのは、この俺なのだ。
俺とリリアが融合したことによりリリアの記憶の一部が戻ってきたことで、俺はリリアの本当の名前を思い出すことが出来たのだ。俺の名は、リリアンス=ルクス。リリアと同じ名前であることに違和感を覚えたが俺はそのことを深く追求はしなかった。なぜなら……。リリアが生きていたのなら……俺はリリアのことを必ず探すと心に決めていたからである。それがたとえ何百年かかったとしてもだ。リリアの魂を消滅させることなく転生させている時点で……。何かしらの意図があるはずなのではないかと考えたのだ。それにリリアが生きているかもしれないと思っていたのだから……。リリアに会える可能性がわずかでもあったら……俺はその可能性にかけてみたかったのだから……。
(リリア……。俺は君を何があっても絶対に見つけ出すと誓っているんだ……。俺と一緒に生きてくれるよね?)
俺はそう自分に言い聞かせて心を落ち着かせることにしたのだった。
そして……リリアの言っていたことが正しければ……。
もしかして……リリアもリリアスと同じように俺に助けを求めている可能性があると思ったのだ。だからこそ……リリィに尋ねる。
「ねぇリリィ……。俺と君は出会ったことがないんだよな?」
(はい。会ったことはないと思いますが……)
「そうだよな……。俺達はどこかであったことがあるんじゃないかって思ったんだ。俺は君を見たとき……何か引っかかるものがあったんだ。でも今は……それを考える余裕はないんだよ……。俺の大事な仲間たちの命に関わる問題なんだから。それで……俺はリリアスに命を救われたことがあって……。リリアとリリアスを同一人物と仮定するとだ……。もしかするとリリアはリリアースっていう名前が本名なのではないかとも思うんだが……どうだろう? 」
(ああ。そうですね……。リリアは本名は……リリアスなんです。私は、勇者様と大神官様に本当のことを告げていましたが……。私の口から本当の名前を教えることは出来なかったんです。だって、本当の名前を言うことは……。勇者様の迷惑になるかもしれなかったですから……。)
やっぱりそうだったのかと思いつつ……。リリアンスに質問した。
「それで……君の身体に埋め込まれた聖石というのを取り出せば、その身体の所有権を奪い返すことはできるんだろ?」
(えっ!?それは……。出来るのですか?)
「うん……。でも、そんなことをしたら、君の魂は再び消滅する可能性が高いけどね……。それでも良いのかい?本当に……俺を信じて全てを任せられるというのであれば……。俺は君を助けることが出来ると思う。」
リリアから聞いていた『大魔竜王』の力があれば……。多分何とかなるはずなのだ……。リリアはそういってたしな……。それに『リリアス』のこともどうにかしたかったのだ。『神魔竜 ドラゴニアドラゴン』になったのが……『大魔王 グランドハザート ダークロード ルシファー・ブラッドロード・リリス』だとすればだ。この世界を闇で覆った原因の人物に違いないのだ。その人物はおそらく……俺の『前世』の師匠である『魔王 ルシファー・ブラッドロード』で……。『大魔王 グラン サタン・ブラッドロード』でもあると思われるのだ。
リリアは『神魔竜 ドラゴニアドラゴン』になったことで……。俺の中にいたはずのリリアの存在を感じ取れなくなっていたらしい。リリアは、完全に消滅したと思っていたみたいなので……。『聖女神 リリアンナ』の思惑通りになりそうになっていたのかもしれないと俺は考えた。だが、『大魔王』と融合していることは……。俺にとっては有利になることは間違いない。俺のスキルで吸収できる対象が増えることになるからね……。ただその力をコントロールできないと危険だが……。『魔王の力』がどの程度の力かは、正直よくわかっていないのだ。『魔王の力』がどれ程のものか把握できていない状態で……。リリアスにこの力を使うのはかなり危険なのである。だが、リリアを救うには……。この方法しかないのだから……。俺はリリアを救うためにも全力を出す覚悟を決めているのだった。
ただリリアの言うように『勇者ロイド』に助けを求めることが一番の方法だということは、わかっていた。だが、俺一人でも……やれなければ……。みんなを護ることができないからだ。だから俺は、一刻も早くリリアスに埋められた聖石を取出し、この世界に存在するであろうリリアを探すために旅に出たいと考えているのだ。そして……俺の大事な仲間と……。大切な人を救わなければならない。そのためにはまず……リリアに埋まった聖石を俺の力で消滅させなければならない。リリアスが俺の中に入ったときにリリアはリリアとして覚醒できたようだが……。聖女と聖騎士はリリアスによって記憶を奪われてしまっている状態になっているはずだ……。その二人の記憶を取り戻し、更に……聖女の『神声』の能力を手に入れなくてはならないのだ。
(リリア……。君の身体は俺が責任をもって助けてあげる。だけど、その聖石を取り出すのは俺の役目だよ……。そして……俺の力を使いこなすには時間がかかりそうだけど……。それでも大丈夫かな?)
俺は念話を飛ばしてリリアの意思を確認しながら話を進めることにしたのである。
(えっ!?聖石を取り除くことは出来るんですか?)
驚いた顔をしてリリアが念話で返してきた。
「もちろん……。俺に任せて欲しい……。」
俺は真剣な表情をして話を続ける。
『聖女神 リリアンナ・ルクルス・セフィア・レイクル』に騙されていたのは……俺だけじゃないみたいだし……。それに……リリアは、リリアのことを忘れてしまっていたとはいえ……その身に封印されていた大魔王の力を使って……自分の両親を殺した仇を討つことに成功したんだよな……。その事実だけでも……。リリアの気持ちを考えれば、その恨みの大きさは計り知れないものがある。そして……俺と大魔竜王との戦いで……。リリアが命懸けて俺を庇ってくれたことを思い出す。その時は、リリアの気持ちがわからず、リリアの言葉の意味を理解していなかった。今考えればわかる。リリアは……。俺と融合する前の『リリア・シルフィード』の記憶を完全には失っていないようなのだ。でなければ……。あんな無茶な行動はしないはずだ。俺にリリアの記憶の一部が戻ってきたことを伝えてくれた時に話してくれた。リリアと融合した『ロイド』の身体を護るためなら……自分が死んでもいいと思ったこと……。そして……。最後の瞬間に俺の事を好きになってしまったことを後悔しているとも語ってくれた。俺のことを好きなってしまったからこそ……。リリアはリリアとしての意識を失うわけにいかなかったと言っていた。つまり、今の俺ならばリリアを助けられるということなのだ……。リリアは、俺を信頼してくれるかどうかを悩んでいたのだ。俺はリリィがなぜ俺を信じてくれたのか思い出していたのだ……。
【私の命を救ってくださってありがとうございます。私の心からの感謝をあなたに送ります。あなたになら……私は命をかけて仕えることができると確信しました。私の命はこの世界の為に使うつもりなのです。私の魂は全てあなたに託して捧げたいと思います。どうか私に力を貸してください。あなたと私はきっと……。同じ道を辿ることになると私達は信じています。】
あぁ。そうだ……。この言葉を思い出せば思い出すほどに、俺は……。このリリィを助けたくて仕方がなかった。あの時のリリアが俺を好きだと言ってくれた理由が今わかった。俺はリリアスを助けることで、間接的に……リリアを幸せにしたいと考えていたのだと思う。
俺は『大賢者 ユミル・リリィ・リリアス』との再会を果たしたが、この世界で起きていることについて詳しく聞いてみたのだ。まずは、俺の想像通り……大魔竜王は『魔王 ルシファー・ブラッドロード リリス』と融合した大魔王ルシファーが封印された肉体に宿っているということだ。『魔王 グラン サタン』も肉体は残っているのかもしれないとのことだ。
その魔王二人が融合することにより生まれた大魔王の力というのが、『神魔竜 ドラゴン・グランドハザート』という存在であると教えてもらった。その力がどれだけのものかはまだ不明だが、その力を制御できるまでは絶対に安易に手を出してはならなかったのだということも教えてもらえた。そして……。リリスは大魔竜王を倒す前に、勇者達の心を揺るがせて隙を作った後に……勇者達を殺し、その後に世界を闇で覆い尽くそうとしたのではないかということも……。勇者の力を奪った後は……そのまま大魔竜王の力を吸収してしまうのではないかとリリアスは言っていたのだ。そしてリリスはその後『魔人族』の味方についてしまい……魔族の王『魔王 ルシファー』となったのではという話も聞かされたのである。
ただ『大魔剣 グラトリアル・リリウス』を持つ少女は、リリスではないらしい。なぜなら……大剣から発せられる波動は『魔王 ルシファー』とは比べ物にならない程、弱いからだそうだ。
「じゃあさ……。大剣を持っている少女は、一体なんなんだ?それに……『神聖魔獣 ガルム グリフォン』や……魔人の王はどこに行ったんだ?大魔王の身体はどこに消えたんだ?」
俺の質問に答えたのは、『聖女神 リリアンナ』だったのだ。
(大魔竜は……魔王が融合したことにより生まれる新たな存在だったはずです……。しかし、その力を恐れたリリスが大魔竜の誕生を阻もうとしていたのは事実のようですね……。そして、この世界を滅ぼすつもりだった可能性も高いと思われます……。大魔竜王が復活する前に大魔竜を殺せば……世界は再び闇の力に覆われてしまうでしょう……。)
俺は大魔竜王を殺すのではなく……リリアスを助けるために聖石を取り除く方法を模索することにしたのである。ただ……俺の中にいる『大魔王 グラン サタン』の魂を浄化しなくてはならないのだが……。俺はリリアスの体内にいる聖石を取り除けないか?と相談してみたのである。
「聖石か……。うーん。どうすればいいのかな?とりあえず……俺の魔力を全て解放しよう。それでリリアから聖石を分離できるかもしれない……。」
俺がそう答えると……リリアは、少し不安そうな顔をして……。俺に念話で話し出したのだ。
(そんなに上手く行くでしょうか?確かに……。大魔竜王から解放されたリリスは……。私達に協力して世界を救うために協力してくれましたが……。それでも……。彼女の目的のためには手段を選ばなかった……。彼女は大魔王と融合することを望んでいるようでした。『魔人族』と魔人と手を組んでまで……この世界に復讐するつもりでしたからね……。『大魔王 グラン サタン』の力を利用するためだけに……。だから私は……聖石がリリスと一体化してしまったとしても、聖石の力を使えば取り除き、大魔王を復活させることも可能だと考えていました。大魔王が復活したら……。『大魔王軍』の者達が……必ず『大魔城 デスバレー』に戻って来ると考えています。『魔王軍』の幹部クラスならば……。『聖魔王神リリム』の力を受け継ぐ私の力で滅することはできるかもしれませんが……。それ以外の者が現れた時は……恐らく負けることはないと思っています。『聖女神 リリアンナ・ルクルス・セフィア・レイクル』様と私がいれば……。『聖女騎士団 リリアム・シルフィード』の力を受け継いだロイドも戻ってくれば勝機はあるでしょう……。『神聖皇国 シルフィード・アイシア』の『シルフィード・ライン』の使い手が、ロイド以外にいたのです。『聖騎士隊 隊長 ロイド・ラバーソウル』の力を継承した青年も現れました。彼ならきっとロイドの代わりに『聖女騎士団 リリアム・シルフィード』を率いることができるでしょう……。)
その話を黙って聞いていたリリアの母親が口を開いた。
(リリアスさん。あなたの言い分も理解できます。でもね……。私は……『大魔王 グラン サタン』をこのまま復活させるわけにはいかないのよ……。だって……。この世界の破滅を望んでしまった……。私達の娘が大魔竜に取り込まれているのだからね……。私達の愛した娘はもう帰ってこないの……。だけど……そのせいで……。リリアスさんが大魔王を蘇らせるわけに行かないと言っていることはよくわかるわ。リリスが大魔王を利用してこの世界に戦いを挑んできたことを思うだけで腹立たしい思いは私にもあります。私は、あなたが『リリスの魂』を解放する為に……私の力を使いたいと願ってくれていることを本当に嬉しく思っています。でも……今は無理です……。申し訳ありません……。それに……。あなたは忘れてしまっているみたいですが……。あなたの中には、大魔王の魂の一部が眠っているんですよ。その力をあなたが完全に目覚めさせてしまった場合、再び……あなたが命の危険に晒されることになります。私は……リリアスの願いならなんでも叶えてあげたいと思いますが……。あなたが危険な目に遭っては本末転倒なんです。)
その話を聞いたリリアが反論をした。
リリアがリリアの記憶を思い出していることを伝えると、二人は驚いていたが……。それでも、リリアの記憶が完全に戻ったわけではないことも話す。
するとリリアの母親は、そのことについては気にしていないと言ってくれた。
(リリアスさん。リリアスが私達を助けようとしてくれていたことはわかっています。ありがとうございます。だからこそ……リリアスさんは、自分の身を犠牲にするような真似だけはしないで欲しい……。もし……この世界を救おうとして、大魔王に力を与えていただけば、また大魔竜王が生まれてくるだけなのですよ。お願い……。それだけはやめて……。リリアを助けてくれるなら……。ロイドに聖石を取り除かせて欲しいの。それがダメだというのであれば……。リリスを倒して……。リリスの体ごと大魔竜王の魂を取り出してもらいたい。そうしないと……。大魔王の復活を止めることができない。リリスは『魔人族』と結託して、この世界を再び滅亡させようとする可能性があるの……。大魔竜王が復活した後だと……。『大魔王軍』を倒せたとしても、世界中を闇の力で覆われてしまえば終わりになるかもしれない……。)
(わかりました……。)リリアはしぶしぶだが、リリスと戦うことに同意した。しかし、その戦い方はあくまでも、リリアスが戦わずに……『リリムア』が代わりに戦うことになるようだ。ただ……リリアスも『魔導剣 グラム エクス カリバーン』の封印を解くことによって、大魔剣を使うこともできるはずだが、それでもリリアスは『リリア・ルナリーフ・ラ・ユリィ』のままでありたいという希望があった。だから、もし大魔竜王の魂を取り出すことになった時には、『魔剣 グラム ソード』ではなく、『大剣 グラディアトール エクスカリバー』の方を使ってもらうように頼むのだった。
大魔竜王を封印した大剣の力は……聖石の力によって引き出されているのだという説明を受けた俺は……『大魔王グラン サタン』をこの世に召喚しなくてはならないと考えていた。『聖石』を取り外したらどうなるのか?俺にもよくわからないが……俺の中の大魔王の魂と『聖石』の魂が融合するのではないだろうか?と俺は推測したのである。
(じゃあ……。俺は一度、大魔竜と戦い、その力を確かめるしかないかもしれない。そして……。俺の中にいるグランの力を解放できるかどうかも試す必要もあるかもしれない……。俺は大魔竜と戦ってみることにした。)
俺の言葉を聞いて、大魔竜は……自分が相手をすると言う。
(僕と……大魔竜王が戦っている間に……。リリスと……聖石を分離する方法を考えてください……。)と『リリアス』は俺に言ったのである。俺は……それを承諾し、『神聖皇帝 アルス』の肉体を借りて『魔都 グランゼスト』に向かうのであった。………… その頃……『魔族連合帝国 帝都』では、『勇者王 ユウト・ライセイ・シンジ』率いる軍勢が、帝都に迫ってきていたのだ。『魔族連合帝国 宰相 バラムツ公爵』が……自ら兵を率いて迎え撃とうとした時、そこに現れた一人の少年に驚かされるのである。
「お父様。どうか……私達の戦いをお許しください……。私が必ず、あの『魔王 リリアナ』達と大魔竜王の魂を取り戻してご覧に入れますから……。」と『聖魔剣士 リリア』と名乗る美少女が頭を下げたのである。その少女が……大魔王を宿しているとは思わなかったが……。その少女に頼まれては断ることはできなかったので……少女の提案を受け入れたのである。そして……少女が仲間を集め始めた時に、その正体を知ってしまう。それは……。魔王を宿している者達を味方に引き入れるためであることに気が付き驚愕してしまう。そして、少女の実力が本物であることを悟った。
(わかった。お前に任せる……。しかし……絶対に死ぬような無茶なことはしないでくれ……。私を悲しませる様なことはしないでくれ……。いいな。)
「もちろんです。心配しないで下さい。私は大丈夫ですから……。」と微笑みを浮かべると……。彼女は『聖騎士 聖戦士 聖魔法師 神官』たちを引き連れて、帝国軍に向かって進軍を開始したのだった。『魔獣将軍 デモンロード』と『魔獣大将軍 ベヒモス』が、彼女の後に続く。
(『聖魔道姫 リリア』様……。大魔竜王と『魔族連合軍 魔王』と戦わせて良いものなのか?)『魔王の巫女姫』が呟く……。
(私は……。この世界を救いたいと思っています……。大魔王を倒すことが私の使命だと思っています……。だから……私は行きます。私がこの世界を救ったとき……。きっと私に感謝することになると思いますよ?まぁ……私は……。世界なんてどうでもいいのですがね……。私にとって大切なものは、ロイドさんだけですから……。ロイドさんが幸せになってくれるなら……他の世界が救われても問題ないです……。だって……。私は、ロイドさんが大好きだから……。ロイドさんの為なら……。なんでもできると思っています……。)と聖女の如き笑顔で言い放ったのだった。
(そうか……。それならいいだろう……。だが、これだけは守れ!ロイド殿を守る為には、この国も救わねばならないということを……ロイド・ラバーソウルは理解できているのか……。それと……『神聖皇国 シルフィード』は救わなくても構わない。)と、『魔王の巫女姫』は答えたのだった。
『聖騎士団 団長 アリスティア・アイシクル・アイシア・セフィーロ』も『魔獣使い セフィーナ・エルシアル』と一緒に出陣をすると言い張ったが、結局は『神聖教会』の最高責任者として、その役目を全うしなければならないと言われてしまう。そして、『神聖皇帝』アルス・イ・マギニスが『聖騎士隊』を率いて戦うようにと命じられて、仕方なく『魔導隊』を率い出陣をしたのだった。しかし、彼女は納得できなかった。愛する人を守りたいと願い、自分の力で彼を助けたかったからだ。でも……彼には……。既に守るべきものが増えてしまっていたことを知らなかった。そして……。『魔都 グランゼスト』に到着した時には……。すでに遅かったことを知るのである。なぜならば……。そこには……愛していた人の姿が無かったからである。しかも……リリスという女性が……愛する人と大魔竜王を取り込む儀式を始めようとしていたところを目撃したのであった。その光景を見て怒りを覚えた彼女は、リリスを殺そうと決意したのだった。しかし……そんな彼女の前に現れたのは、彼女が心を許している女性……リリアス・メイベルその人であった。そして……その人は、『聖女 アリスティナ』を名乗り、この世界の救世主となると宣言した。そして……。大魔竜王の力をその身に取り込み……リリアを助けるために行動を開始するのである。
(リリアス……。あなたのことは、誰よりも信じています。だけど……お願い……。死なないで……。)
「えぇ……。リリアスさんには死んで欲しくありませんから……。私の為に、命を投げ出さないで欲しいんです。私はもうすぐ『リリア』に戻ることができます……。リリアに戻ってきた時には……。ロイドさんのことをよろしくお願いします。ロイドさんのことを大切にしてくれそうな人がいてくれたら安心できますし……。それに……。ロイドさんのことも……好きになってしまいました……。私と……ロイドは、お互いのことを愛し合うことができた唯一の相手なのです。だからこそ……ロイドをあなたにお願いしたいと思っているんですよ……。」
「わかりました……。リリスがロイド様と結ばれた暁には……。『リリアス』も、この世界を救う手伝いをしましょう……。ただ……『リリア』に戻った時に覚えていてくださいね。私とロイドとの約束を破ったことだけは、絶対に許さないって……。それだけは言っておきます……。」と言って、『聖剣グラム』の『真聖剣技 真覇極滅波動』を繰り出すのだった。『聖石 大魔結晶』と『聖剣 聖剣グラム』の力によって生み出された最強の一撃であり究極の攻撃でもあった。
リリアスが放つ必殺の『魔弾 聖槍螺旋波動』と…… 聖魔竜王の力によって作り出された……破壊の光を放つ最強の光線『聖魔光線』
それがぶつかり合った時……二つの力が反発しあい……
『魔道要塞グランハザード』は跡形もなく消し飛び……。『魔都 グランゼスト』の上空に浮かんでいたはずの巨大な飛行船が一瞬にして消え去ってしまったのであった。
※……しかし、『魔都 グランゼスト』の地上に激突することはなかった。なぜなら……大魔竜王の力を借りた大魔竜王の肉体を持った『聖魔剣 グラム エクスカリバー』を握り締めた……『大魔王グラン サタン』の力によって、空に浮かぶ巨大な戦艦が移動を始めたからだ。
そう……この瞬間…… この星が……一つになりかけていた……宇宙全体が……この一点に集約されようとしているのだった。それは、つまりこの星の全ての生き物を呑み込み消滅させようとしていた。それは、宇宙の法則が変わってしまうほどのエネルギーを内包していたのである。それを感知した『魔王軍』の幹部たちは……。その恐るべき現象を止めるために行動をする。しかし……彼らの力は……『魔族連合帝国』の力でも敵わないほどの強さを誇る。その幹部たちでさえも止めることができなかった。
そして……『神聖皇国 セイクリッドヴァイユ』『聖王国 エリュシオン』と『暗黒帝国 デスゲート』の3か国も異変を感じて、『魔族連合軍』と手を組み行動を開始しようとしていた。しかしその前に、一人の男が……。立ち塞がったのである。それは……大魔王の側近であり、魔王を統べる存在。『魔王王 リリス・シン・ライア』が生み出した魔王軍の最強部隊の筆頭……最強の存在である『十二天将』が一人…… 魔王直属配下 最高指揮官……最強の戦士
『魔道騎士 ゼノギア ロード=ゼロナイトメア ロードレイピアダークネスナイトメアー』(魔王の近衛兵長を務める最強の闇の精鋭軍団「ダークシャドウナイツ」の中でも、最強部隊と呼ばれる五つの師団の頂点に立つ者)が5人いたのだ。彼らは、『神聖王国軍』『魔族連合帝国』の軍勢の前に立ちふさがり戦いを挑むのであった……。
(ここは……俺に任せてくれないか?)
俺はみんなにそう頼んだのだ。
(わかりました。私は……ロイド様を信じてみます!きっと、ロイド様ならこの場を切り抜けられると思っていますから……。それに……私達は……これから大魔王リリアを助けに行きます。大魔竜王の力を取り込んだリリアの相手をするのは大変なことだと思っていますから……。それに……あのリリアを……助けてあげて……。)
リリィの言葉を聞いて俺は……『聖剣 グラム エクスカリバー』を片手に持ち……。大魔竜王の体を持つ少女と対峙して……戦い始めるのである。大魔王リリアは……その体に魔王を宿してはいたが……。その少女は、その力をうまくコントロール出来てはいなかった……。だから……。俺は少女を殺さず……。力だけを引き出す為に戦うことを決意するのだった。しかし……その時だった……。『聖剣 グラム エクスカリバー』からの声が響いたのである。(主よ……。そ奴には魔王の力を制御する器はないぞ……。だから、我の『聖魔剣技 真神解放』の一撃を与えるがいい。そうすれば、奴の体は耐え切れず崩壊するはずだ。)と……。そう言うことだった。そして……。リリアの中にいる魔王を解放するには、その方法が確実だと俺は判断すると……。『魔道機装 聖機師リリアム』と一体化して戦うことを決めた。そして、大魔王との戦いが始まるのだった。
大魔王と大勇者の戦いは激しさを増すばかりだった。しかし……。大魔王は大魔竜王に体を乗っ取られているが故に本来の力を発揮することができない。しかし……そんな大魔王を相手に……リリアムと一体化をして戦っている俺の方にも問題が起きていた。俺の持つ……すべての武器と魔法を使いこなし戦う俺の実力も大幅にパワーアップしたせいで……。大魔王が繰り出してきた攻撃をまともに受けてしまった。だが……俺は……その攻撃を受けた時に、違和感を感じていた。なぜならば……痛みも何も感じなかったからだ。そこで……すぐに回復薬を口に入れながら考える……。これは……。もしかしたら……と思いつつ俺は試しに大魔王の一撃を受けた時に、大魔王が操る闇属性の力を利用して……。相手の動きを読み取ることで……相手の動きのリズムを変える技で大魔王の攻撃の軌道を変えてみる。
そうすることによって……徐々にであるが……ダメージを与えられるようになっていたのである。
(よし!この調子でやれば倒せる!)そう思いながらも、油断することなく気を引き締めると……。
(あはは!なかなかやるじゃないのさ!あんた!私の攻撃を全てかわすとはね……。でも残念だったわね……。私の方が少し上手みたいだわね!)と言って……彼女は……さらに強力な攻撃を仕掛けてくるが……。俺は全て避けることに成功していた。
(うふふ!どう?すごいでしょ!私!私は、『大魔竜帝』の娘なの!私にかなうかしら!)
(え!?『大魔竜帝』って言ったら、この星の全てのドラゴンの王様だよな……。じゃぁ……もしかして……。こいつ……大魔竜王の意識を閉じ込められて支配されているのか?)と、疑問に思うのである。なぜならば……。目の前にいるのは大魔竜王であって、本物の大魔竜王ではなさそうだと感じたからである。その証拠としては……。俺も知らない『魔石』を持っているということ。それに大魔竜王ならば持っているであろう『真魔結晶』を持っていないからである。そして何よりも……。俺を圧倒しようとして……。大魔竜王の力を使った『真魔結晶』を使用しないからである。だからこそ……彼女の行動パターンを分析できた。
(よし……これだったらいける!)そう思った時であった。リリアの姿になったリリスの口から……衝撃的な事実を聞かされてしまう。それは……
(あなた……本当に面白いですね……。私とロイドとの絆に嫉妬しているんですか……。それなのに……。私とロイドとの子供を作りたいという気持ちもあるとは……本当におかしな話ですよね……。ロイドとあなたとの子供を作るために……ロイドは『聖女 アリスティナ』という偽物の女を妻にすることを決めています……。ロイドとあなたとの子供を作れなくなれば……。もう私に勝ち目はありません……。ですから……。あなたは、ロイドに愛されるような女になってもらいますね……。あなたにロイドと子作りをする資格なんてないのです。そんなことは絶対にさせないし……私がロイドを幸せにしてあげます……。)と言われてしまう。
俺はこの時初めて理解したのである。俺は……。大魔王の策に乗せられていたことを……そして……。俺は……。大魔王に心を掌握されてしまっていることを……
※……………………。俺は大魔王リリスの心に支配されていたのだ。しかし……その時であった。俺を正気に戻そうと……俺の仲間が全力で戦ってくれたおかげで俺は元に戻りかけていた。その瞬間に、リリスが俺に話しかけてきて……心に入り込んできたのだった。
(ふふふ……やっぱり……。私は天才よね……。あなたの心をこんな風にできるのですから……。これで……あなたの全てを奪える……。)と言って……彼女は自分の唇を重ねてきたのだった。それは……。俺がリリアを愛するが故の……大魔王の誘惑であった……。しかし……リリアムに融合したことにより俺は、その口づけを跳ね返してしまう。
大魔王は驚き……
(まさか……キスすら通用しないっていうのですか……そんな馬鹿な!!ありえない!!!だって……。私の力の波動は、全て吸い込まれて……あなたに……取り込まれたはずなのに……。なぜなんでしょう……)
「それは……。リリアを愛しているからだ……。俺が、リリア以外の人間を好きになるわけないじゃないか……。俺のリリアに対する愛情はその程度ではないからな……。リリアムは……俺の妻であるリリアを好きなだけだから、俺を惑わすことは出来ないんだよ……。それに、俺は……俺を信頼してくれる仲間の為に戦うんだ!お前なんかに負けるつもりはない!!」
(くっ!私は大魔王なのよ!それが……この程度で……)そう言って再びリリスは自分の唇を俺の唇に触れさせようとしたが……。俺は……。『リリアム・ミティレア』の力を解放して……。その攻撃をかわしながら……。リリアからもらった『聖魔眼』の能力を使うと……。俺が大魔王が使った攻撃を見切り、カウンターの技を決めることに成功する。すると……大魔王リリスは苦しみ始めたのである。その瞬間……俺はチャンスだと思い……。彼女の体に触れた。すると……。大魔王が使っていた力を俺は自分の物にすることができたのである。それを俺は『リリス・シン・ライア』から奪い取った力で相殺して打ち消すのだった。
(ぐぅ……。よくも……よくもやってくれたわね……。もう許さないわ!絶対殺す!覚悟しなさい!!!!)
「はは……。何を言っているんだよ……。お前の方こそ……。何を偉そうなこと言っているんだよ……。いいか……。本当の戦いはこれからだぜ!」
そう言った後、すぐに決着をつける為の一撃を与える為に動く。『魔剣 エクスカリバー』から教えてもらった『魔導騎士 ゼノギア ロード=ゼロナイトメア』の力と、リリスの力を同時に発動させた。それにより……『魔剣聖』の力で相手の防御や魔法障壁などの一切を打ち消してから攻撃する技を発動させる。
(リリアムよ……。お主の力はこの世で最も優れた力のひとつだ。今こそ……この技をお主に託そう!)『グラム エクスカリバー』からそんな声が聞こえた。その次の瞬間に……。俺の体に激痛が起きる……。
俺の全身から血が流れる……。そして……俺の命までも消えてしまいそうになった……。だが……俺には仲間がいるんだ!こんなところで死ぬ気など全くないのだ。それに……。俺は『グラム エクスカリバー』の技を完璧に使えるようになったのだ。つまり……大魔王と互角に渡り合える力を手にいれたことになるのだから……。
「ははは……。さすがは、『魔剣聖 リリアム・シン・ライア』様だ。これなら……いける!いくぞ!はぁぁあああーー!!!」
『グラム エクスカリバー』は……。俺に力を貸してくれるだけではなく……。俺が、技を放つための手助けまでしてくれたのである。そして……俺は……『魔剣 グラム エクスカリバー』の力を使い、目の前にいる大魔王を倒す為に最後の一撃を与える。その力は、まさに一撃必殺とも言えるほどの攻撃だ。この一撃を食らった相手は必ず死に至る。それだけの大威力の攻撃を……大魔王に向かって繰り出す。その技の名前は……俺の持つ全ての属性を合わせた最強の一撃。その攻撃を大魔王リリスに向けて放つと……
「これが……俺の力なんだぁあああああ!くらえ!究極破壊魔法!!!!」
(あぁ……私の負けなのですね……。わかりました……。この身が滅びようとも……。ロイドに私の想いを伝えましょう……。ロイド……。愛しています……。どうか幸せになってください……。私の分も幸せに生きて下さい……。)と言って彼女は光となって消えたのだった。
こうして……大魔王を倒したのだが、それと同時に俺も力尽き倒れてしまうのだった。その瞬間……俺の意識はなくなる……。だが……。意識が無くなった後も俺の心の中で……
(ははは!本当に面白かったぜ!リリアム・ミティレア……。本当に感謝している……。お前のお陰で、リリアと結ばれて……ロイドとリリアの子どもを作ることができて……。私は……ロイドと結ばれることができた……。本当にありがとな!それと……私の力を全部やる!これは、この世界が救われた証として受け取れ……。私の大魔竜帝の力をお前が使えば……大魔王クラスとは戦えるようになるはずだ……。)と聞こえてくる。
それからしばらくして、俺は目覚めたが、俺の力の全てが消えていることを理解するのだった。だけど……。『大魔王』との戦いが終わり平和が訪れたことは理解できていた。なぜならば……目の前にいる大聖魔竜王が……涙を流していたからである。大聖魔竜王は俺を見て、涙を零していた。
(まさか……大魔王リリス様に勝利するとはな……。正直驚いた。しかし……まさか……リリアに惚れていたとは思わなかった。大魔竜王様も大聖魔竜王も、リリアムのことを気に入ったらしいから、安心したよ……。)と、『勇者ロイド』が言っていたので、どうなっているのか確認することにした。
「あはは……。まぁ……いろいろとあってな……。でも俺は、『魔剣聖』になったみたいだ……。それでさ……。リリィとオルテバの2人が結婚することになってさ……。それに、リリィに娘ができたんだ……。リリアムという子でさ。その子に大魔竜王の力を分け与えてしまったんだよ。リリアを好きすぎるあまりに……ごめん。本当に……悪かった……。」と言うと……リリスが笑顔で言うのだった。
(謝ることじゃないわ……。私はリリアムに感謝しているもの……。だってリリアムがいなかったら……。ロイドと私は出会えなかったかもしれないから……。)
(そうだな……。俺は、リリアム君に感謝している。彼はリリアが好きすぎて、本当にすごい奴だよ。大魔王の力が覚醒しかけていた私を助けてくれて……私とリリアが一緒になるきっかけをくれてありがとうな。)
その言葉を聞いた時……俺は恥ずかしくなった。しかし……。
(リリアムよ。そろそろ時間だな……。私達とお前との別れの時が来たようだ……。)と大聖魔竜王が言うので、「そんな……。そんなこと言わないでくれよ!これからじゃないか……。俺たちの旅はこれからだと言うのに……。俺の仲間たちを一緒に探すんじゃなかったのかよ……。頼むよ……行かないでくれ……。」と泣き叫ぶように言った。すると、ロイドが言う。
(大丈夫ですよ。私たちがいなくても……。この世界に生きる人たちに託すことにしますから……。)
(うむ。リリアムは、この世界を救い続けたのだ。それは間違いなく歴史に刻まれる偉業なのだ。だから……心配することはない……。それに……私たちはいつでもお前と繋がっている。また……会う機会もあるさ……。その時までは……少しだけ……さよなら……だ……。」そう言った直後……リリスは消える……。俺の仲間達は悲しく思いつつも……。新しい人生を歩むために前に進むことにした。それから俺はリリアムが残した手紙を読むことにするのだった。その内容を見ると、どうもリリアム・ミティレア・グラン・アルセイアスは大魔王の力を手に入れた後に、死んでしまったらしいのだ。それから、魂の状態だった時にリリアに助け出されたらしいが……。その際に『リリス・シン・ライア』の魔力を受け継いで、リリムとして生まれ変わったと書いてあった。
「ははは……。そういうことか……。そうすると……俺は大魔王の力を持つ『聖魔騎士』になったというわけか……。なんかかっこいいような気もするが……。なんとも複雑な気持ちになるな……。だけど……これで、リリアを守ることができると思う。リリアムに頼らない生き方をしないといけないけど……。頑張るしかないな。」と独り言をつぶやくのである。すると……そこに、仲間達が集まる。
「なぁ……。ロイドさんや、オルタちゃん、大聖魔竜王は、どこに行ったんでしょうか?」とアリッサが言ったのである。それに対してロイドが答える。
「はい……。皆さんが眠っている間に、私はリリスのところに行ってきました。そして……。リリスに、リリスの魂がリリアム・ミティレアに乗り移ったことを伝えて、大魔王リリスの力を受け継ぐことを認めてもらって来ました。それから……リリスに頼み事をしました。大魔王リリスの力を受け継ぎし者の元へ向かうように指示を出しましたので、おそらくですが……。彼の所にたどり着くことでしょう。それについてはリリアムに任せてあるので安心してくださいね。」
「なるほどな……。そうするとリリスは死んだのか……。でも……。本当に……残念だったな……。俺のせいで……あいつが死ななくていいはずなのに……俺は……なんてバカなことをしたんだろうな……。俺はリリアムのためにも、必ずリリスを救って見せる!約束したんだからな!」そう言って……俺は立ち上がるのである。それからすぐに出発しようとしたら……。リリイが止めに入る。「ダメだ!今の状態では大魔王の力に耐えられない!せめて数日は休むべきなんだ!」と強く言われるが、それでも「そんなことは関係ねぇ!すぐに行く!リリスのためなんだ!早くしないと手遅れになってしまう!だから……お願いだ……。行かせてほしい!リリスを助けるんだ!」と言った。その必死の想いが通じたのか、渋々ではあるが……リリスの元へ行くことを了承してくれた。
それから、俺は仲間を連れて……リリアムのところに向うことになるのであった。
大魔王との戦いで傷つき……『大魔王リリス』を倒した俺は、リリアムが眠る墓に向かっていた。そこでリリィと出会った。リリィは……『大魔王』リリスの力を受け継いだ俺を見て、驚くのだった。
俺は『魔剣聖』となり……リリスの力を継承できることになった。そのため、『リリス』が死ぬ前にリリアの元に行けと助言されたので、俺の師匠でもある『剣聖 アリア』の住む城へとやってきたのだが……。リリスの死を聞いてしまう……。リリアムを救うために急いで、リリアムが封印されていた場所に向かったが、すでに遅く……彼は息を引き取っていたのである。リリスを救う為に俺は大魔王との戦いに身を投じることを決意する。
俺にはリリスの力を使うことができるので……リリアを守るためなら何を犠牲にしてもいいと思い、俺の命すら捧げてもよかったのだが……。それを仲間達が止める……。
『魔導王』であり、リリアムの父であるリリアムと『勇者ロイド』が大魔王の討伐に向かうと言い出したのである。その話を聞くと同時にリリスを救いに行くのだと理解した俺は、「わかった!父さんたちが大魔王と戦うなら俺がサポートをする!それに、大魔王を倒して、みんな無事に帰ってくるぞ!それが条件だ!リリカを悲しませるなよ!もし……リリアが死んだりした時は、俺は大魔王を倒すまで戦うのを止めるつもりはないからな!リリアもリリィも大切な存在なんだから!それだけは覚悟してくれよ!俺にとって大事な人を失うのが一番怖いんだ!もう誰も失うのは嫌なんだよ……。」と大声で言うのだった。
その言葉でロイドは笑顔を浮かべた。それから大魔王を倒しに行く準備をすることになる。ロイドたちはリリスを救いに行きたかったらしくて……。俺は、大魔王と戦えるのかどうか試したいと思っていた。
リリィの話では、大魔王の力は強大過ぎて俺が持つリリアムの『力』だけでは倒すことはできないという結論に達したのだった。
俺は『大魔王の力を継承した聖魔騎士』だが、あくまで『魔』の属性を持つ『大魔王の力』なのだから、リリアが使える魔法は、リリィが使った方がいいとロイドからアドバイスを貰い、それから……ロイドが俺に『リリアム・ミティレア・グラン・アルセイアス』としての技を伝授してもらうことになる。それは……。俺が持っているリリアムが使うはずだった技をロイドに覚えてもらうというものだった。リリアムの使っていた必殺技の数々を習得する為の訓練を、俺は受けることになったのである。
それから、俺の装備は……今まで通りで、聖剣は、リリアからもらった『魔』の力を吸収して『聖』の力に変える『聖魔騎士剣 セイリュウセイバー』を使用する。さらに……新たに手に入れた魔剣を装備することにしていた。この魔剣の名前は……大魔剣・リリィソードである。見た目は大きな赤い薔薇の模様が描かれており、とても綺麗な鞘に入っている刀だった。魔剣・リリィソードの能力は以下の通りだった。
(魔剣・リリィソード)【効果】1、あらゆるものを吸収することができます。ただし……『吸収したエネルギーの半分』を消費することになります。2、魔力を刃に変換して、相手にダメージを与えることもできます。また……魔剣の柄のボタンを押せば……。いつでも解放することが可能になります。3、『リリアム・ミティレア・グラン・アルセイアス』のみが使用することができ、相手の魔法や能力などの威力の70%を吸収することが可能です。しかし……消費される魔力も半分です。4、魔剣の能力を開放している時に、敵に触れるだけで……体力を奪うことも可能になるのです。また……。『リリアム・ミティレア・グラン・アルセイアス』以外のものが扱うと……。その者は即死してしまいます。5、『セイリュウセイバー』の能力は100%発揮されません。(魔剣の性能が違いすぎるので……)6、魔石を使用することで、無限に使用することが可能ですが……。リリアムが許可しない人が持とうとすると……命を失い、魂を魔素に分解されて消滅することになります。7、所有者が死亡すると、自動で回収する仕組みになっております。
(この剣で……リリアムの代わりにリリアを守る……。)
(リリアはリリアムを愛しているから、リリアムに生きてほしいと思うはずだから……この魔剣を託したのだと思うわ。リリアム……。あなたは生きている……。でも……リリアは悲しんだままだ……。だから……私達がいる……。リリアのことを幸せにしてあげなさいよ。そして、絶対にリリアムに会わせると約束するから……それまでは私達があなたの代わりになって……リリアを守ると誓うわ。だから……。安心しなさい。)とリリスは言う。
(ありがとう……。母さん……。)
(お兄ちゃんは……生きて……。お願いだから……。)とリリイが言うので……。俺の胸は締め付けられる思いがしたが……。俺にはやるべきことがあると……。自分に言い聞かせるようにしながら……『リリアム・ミティレア・グラン・アルセイアス』の剣を手にして、『大魔王』の元へと向かうことにするのだった。
リリスは……聖都にある墓地に眠っていた。俺がリリアムの体に入った時に初めて来た場所である。リリアムが封印されていた場所は、この国の城の地下にあり、そこにはリリアムの家族が埋葬されていたのだ。その日……たまたまリリアムが家族と一緒に眠りたいと思ったのかわからないが……地下への入り口の所にやってきて……そこで倒れていたのである。リリアムの記憶によると……リリスとの戦いの前に……リリアムの両親と妹の墓参りに来ていたのだという。それで戦いが始まる前までの時間を使い、自分の家族に会いに来てくれたのだろう……。そんな風に俺は思ったのであった。リリスが眠る墓に行くと、俺達は驚きの声をあげることになる。なんとリリスの死体が無くなっていたからである。リリスの体は『闇の空間』に閉じ込められて、その死体を保存するために……リリスが所持する武器は、リリスが保管していたらしい。そして、俺が大魔王の『魂』を吸収したことで『大魔王の力』を使用できるようになり……それを確認したリリスは……『大魔王リリス』の力を使って『リリアム』を倒そうとしていたと……。そういう経緯があって、大魔王の体をリリスは自分の手元に置いていたというわけである。リリスが俺を殺すつもりで大魔王の力を継承させようとしていたが……大魔王になった俺は自我を保つことが出来てしまい、大魔王として君臨することを拒否したため、リリスも殺すことが出来なかったそうだ。リリスも俺が意識を取り戻すまで……俺がどうなるのか見守っていたということだ。俺は大魔王になったことに対して複雑な気持ちであったが……リリアムは……そんな感情は一切なかったようで、むしろ……俺が大魔王になれたことを喜んでくれていたので……俺の心の負担は軽くなるのだった。それから俺は……。俺が大魔王になってしまったことで、これから先……大変なことが起きることを予想したので、すぐにでも行動に出るべきだと思い、俺と『魔王』となったリリィで『魔王の島』に向かい『大魔王』を倒すことに決めたのである。『魔王』リリィにも同行してもらうことにしたのだった。リリィが『魔獣の森』にいる俺の娘『大魔道師 リリィ』を連れてくるために旅に出たいというので、しばらくリリアのことを任せることにした。その間に……俺は『魔王の島』に行き、『大魔王』を倒すことを決意する。しかし、魔王たちが動き出したのである。
『大魔王ルシファー』が目覚めてしまった。しかも……。ルシファーには俺が持っている『魔王』の力の一部を持っているみたいだった。リリスが持っていたはずの力をどうして彼が使うことができるのかという疑問が残ったが、今は考えている暇はなかった。なぜならば……俺は『魔王』の力を継承したばかりで……力の制御ができていない状態だ。そのため、大魔王との戦いが終われば、俺は死んでしまう可能性があった。しかし、このままでは大魔王が復活する可能性があるので、俺はすぐに動くことにしたのである。
まずは、『魔剣』を手に入れないといけないので……リリアムの記憶を探る。俺に力を託してくれた魔族の少女が……今現在……どこにいるのか探し始めたのである。その少女の名は……。『魔王四天王 紅魔 スカーレット』の四女の『大魔王リリス』の一人娘であり、『魔剣 レーヴァテイン』を持つ者でもあった。俺はすぐにその娘を『魔剣 レーヴァテイン』があるという場所に向かわせることにする。リリスの記憶を辿ると、その場所はすぐに特定できたので、俺はそこに向かうようにした。
(大魔王を倒すのに必要な『魔剣』って一体どんな剣なんだ……。俺が持つ聖剣は、魔剣じゃないし……。魔族の少女が持っている剣か……。まさかな……。リリアから託されたあの『聖剣 アスカロン』ではないと思うんだけど……。)
リリアムの体の『大魔王の力』をある程度把握していた俺は……ある可能性を考えていたのだが……それが現実にならないことを祈るのだった。それからしばらくして……『魔王』の力を継承してからずっと続いていた頭痛は、いつの間に消えていて……体調も良くなってきた気がした。それから俺達がたどり着いたのは……とある場所。それは、小さな村だった。『魔剣』を手に入れたいと思っていたのは……大魔王と戦う時なので、先に……この村の村長に会いに行った。その人は、見た目が人間に近い姿だったので、魔族だということに気づくまでに時間がかかってしまった。俺は……この世界が魔族に支配されていることを実感する。人間のような見た目をした魔族は……この世界にはいないということを知っているからだ。『大魔道士 リリィ』の話だと……。『大魔法使い』という種族がいたような話があったが……。この世界ではあまり確認できないらしく……。この世界を支配する種族は『魔人』なのだと教えられたのだ。その『魔人』と人間は敵対関係にはあるが、互いに共存しようと頑張っているのだという。しかし……一部の過激な連中は『魔導士協会』を作ってしまい……。この世界の均衡が壊れてしまわないよう、この世界を魔人たちの住みやすい環境に変えようと企んでいたというのだ。
(この世界は……人間のものではないという感じがしてきたな……。『大魔王』を討伐したあと……俺に何ができるんだろう……。俺が元の世界に戻るためには……。俺にはもう時間がないのかもしれないな……。)
俺は不安な気持ちを抱えながら、リリアムに案内されるがままに、『大魔王』が眠っている場所へと足を進めるのであった。その道中……俺は、魔族がどうやって『魔剣』を生み出していたのかを知ることができた。魔素が凝縮されると魔剣になるそうで……それを利用して魔剣を作り出すのが『大魔王』の仕事になっていたようだ。つまり……俺の力で作り出すことが可能ではないかと考え……俺も早速試すことにする。
(俺には、魔剣が作れないのか?リリスの持っていた能力だから、俺でも扱えると思ったんだけどなぁ。やっぱりリリスに聞いてからにするか。とりあえず……今は大魔王を倒しに行かないとな。この体じゃあ無理だしな。なんとかしないと……。それにしても……俺と会話しているリリアムの記憶を見る度に……なんか不思議な気分になっていくよな……。でも……。なんだろう……。俺が体験したことなんだよな。この感覚は何なんだろうか……。まあいいか……。)
俺達は、リリスの言っていた通り、リリスが暮らしていた家にたどり着き……そこで、大魔王と対峙することになった。俺は『大魔王』の目の前に立つと、「大魔王!俺はお前を倒したらこの世界の平和を守ってみせる!」と宣言したのである。それに対して……。
「面白いことを言う小僧だ……。俺に勝てると思っているのか?」
大魔王ルシファーの言葉を聞いて、大魔王の強さを理解する。俺は、自分が強いという自覚があり、自分の力で大魔王に対抗できると考えていた。しかし……実際に対面すると、今まで自分が考えていたことは甘いと理解してしまう。大魔道師の『リリイ』と、賢者であるリリアが二人掛りで攻撃をしてもほとんどダメージを与えることができなかったので、リリスの力を受け継いだばかりの今の俺では……絶対に敵わないことがすぐに分かったのである。だが、諦めたくはないと、俺は思い……。必死で大魔王に立ち向かった。その結果、俺は、『魔剣 レーヴァテイン』によって、一矢報いることに成功したのだった。
(これはチャンスだ!!これで少しはダメージを与えられたんじゃないか!?)
俺は、自分に自信がなかったが、リリスに力を引き継いだことで、『大魔王の力』を完全に引き出せるようになったことに気がつき、俺が思った通りに体を動かすことが出来るようになっていた。大魔王ルシファーは……傷つけられた箇所を撫でて、笑みを浮かべると……。すぐに大魔王の力を解放するのだった。
『大魔王の力が解放されるのを感じる……!!』俺はすぐにリリスの記憶の中にある知識を思い出していた。それは『大魔王の力』を使うための条件のようなもので、リリスのお父さんは……自分の力を制御できなくて暴走していたという話があった。大魔王が目覚めてしまえば、世界中の国々が滅ぼされてしまう……。そんな危機感を覚えた俺は、すぐさまリリアムに『リリィを連れてくるように』と命令するのだった。リリアムが俺の元を離れて、数年が経つと……リリィが『大魔道師 リリイ』として帰ってきたのである。彼女は……俺達を手助けするためだけに旅に出てくれたのだが、俺達が困っている時にすぐに戻ってきてくれたのだった。それからすぐに……リリは『魔王四天王』である長女『魔王 スカーレット』の妹である『魔獣の森』に住む次女『大魔王 リリス』にリリィと『魔王四天王』たちを呼び寄せるように伝えたのである。俺は、その間に大魔王ルシファーの動きを観察した。大魔王が動き始めるのに、さほど時間はかからなかった。そして……『魔剣 レーヴァテイン』を持つリリスの姿を確認すると、すぐに攻撃を仕掛けてくる。リリスが剣を抜くと、彼女の持つ剣が赤く光ると同時に……俺が握る剣からも炎が吹き荒れるのである。
(これは……。大魔王が放つ力と俺の持っている剣の力を融合させているんだな……。リリィや大魔王に負けないぐらい……。俺も強くなるんだ!!俺は……こいつを倒して……この世界を……。)
俺が考えているうちにも戦闘が始まってしまう。俺が持っている『大魔剣 アスカロン』から衝撃波が放たれ、リリスはレーヴァテインの力を解放していたのである。しかし、それでもリリアムが苦戦するほどの大魔王の力に対抗することができないのは分かっていた。なぜなら……俺は、『大魔王』が放つ魔力を……リリスが使う技と同じものを使えるようになっていて……。そのおかげなのか……。俺はリリスの攻撃よりも強力な攻撃を繰り出していた。それは『大魔剣 レーヴァテイン』の力を最大限に発揮することができるからだった。大魔王は、俺の持つレーヴァテインに目を奪われる……。そして……。大魔王もレーヴァテインで反撃をするのであった。大魔王は俺を侮っていて……。大魔王の方が俺に有利な状況になっているはずだった。
リリアムは、その圧倒的な強さを目の当たりにしていて……。リリアム自身も戦いに参加しようとするが、俺は、彼女に手を貸してほしいとは言わずに……。大魔王と戦い続けていた。リリスと俺の戦いが続く中で……ついにその時が訪れる。リリスは大魔王と互角に戦うことが出来ていたのであるが……大魔王の本気を開放されてしまうと状況は一転した。リリスと俺とのコンビネーションにより、何とか隙を作ることに成功したのだが……。大魔王はリリスとの戦いの最中にレーヴァテインを使って……『魔王城』と呼ばれる空間に移動させられてしまうのである。俺は……『大魔剣 アスカロン』の能力を使い……。リリスと一緒にリリスの生まれ育った場所に移動する。そこには……リリィがいたので、大魔王を追い詰めるための策を考えるのだった。しかし……そんな暇はなかった……。
俺は大魔王と戦うことになったが……。大魔王の実力が予想を遥かに超えていたので、俺の体力と集中力は……徐々に削られていく……。リリアムは大魔王が使った『魔王城』の能力を解除する方法を探してくれていたが……。その方法を見つけることはできなかった……。
(このままだとまずい……。この状態は俺が経験したことがない……。どうすればいいんだ……。この世界を救う為には……。大魔王を殺すしか方法はなさそうだ……。だが……今の大魔王に……。俺一人で立ち向かって勝てるのか?)
俺が不安な気持ちになっていたときに、あることを思い出す。それは、大魔王が作り出したという魔素を利用して作られた『魔剣 ダークネスセイバー』の存在だった。俺がそれを使うことで……一時的にでも、大魔王の『闇』に対抗できるようになるのではないかと考えたのだ。俺のその考えが当たっていれば……。俺は大魔王と戦うことが出来るはずである。
(あの剣は……リリスの記憶の中でみたけど……あれがあれば戦えるはずだ。試してみるしかない!!)
俺達は大魔王と再び向かい合うことになるが……。俺達は……魔剣を作り出すことに成功したのである。リリィが『魔導士協会』に保管していた『聖勇者の鎧』と、『聖勇者の兜』、『聖勇者の聖衣』を俺に貸してくれた。これで、俺の防御力を上げることができ……、大魔王の攻撃力を下げることも可能だと判断した。さらに……。俺は大魔王と剣をぶつけ合いながら……『魔剣 レーヴァテイン』を消滅させていったのである。俺は……リリィのおかげで魔剣を作ることに成功して……。その力を使うことができるようになる。俺は『魔剣 レーヴァテイン』の力を発動させて、大魔王に襲わせるが……それはあっさりと回避されてしまった。しかし……。俺は大魔王に攻撃を繰り出そうとしたときだった。大魔王はレーヴァテインによって生み出された炎に焼かれることになる。しかし……俺は、魔剣によって生み出した攻撃が大魔王にダメージを与えることができたことに驚くのだった。
(大魔王に……レーヴァテインが通用するぞ……。これはチャンスかもしれない……。俺にできることはこれくらいだから……。大魔王とリリスの援護をしないと……。)
俺はリリスと協力して、大魔王を追い詰める。大魔王とリリスと俺で……三人で協力して大魔王に立ち向かうのだが……。それでも……なかなか決定打を与えることが出来ないでいた。
俺達は……三人とも疲弊しきっており……。大魔王に有効な一撃を与えようとしても……俺達が想像していないような攻撃を受けることになり……。何度も命の危機を感じるほど追い込まれる。リリィも、回復系の魔法を使いまくっていた為か……。かなり弱っていた。そんなときに……。『リリアム』が現れたのである。『魔獣の森』で別れた『リリアム』ではなく……『リリィ』だった。彼女は……俺が大魔王とリリスに殺されそうになっていた時に助けてくれた『リリアム』の妹だったのである。
彼女は……。大魔王と戦っていたが、大魔王の攻撃を回避することができずに吹き飛ばされてしまう。大魔王とリリアムの戦いが激しさを増していき……。リリアムは大魔道師のリリィが持っていた全ての能力を使うことが出来たので、今までの俺では大魔王に勝てないと判断して……、大魔王を倒すことを優先させたのである。俺がリリアムから大魔道師のリリィと賢者のリリアの姉妹と、『魔獣使い マホ』の四人を『魔王四天王』たちの住む国である『暗黒魔境』まで呼び出すことに成功して……。大魔王が『魔王城』で魔獣たちと戦っている間に作戦会議を始めるのだった。
俺が考えた作戦を伝えるが……。リリィや大魔王の賛同を得ることができなかった。リリスだけは賛成してくれたのだが……。それでも大魔王は反対してきたのだった。それでも……俺の意見が通り、俺達『魔剣使い』チームは大魔王の相手と……他のチームの援護に分かれて戦うことになっていた。俺は大魔王を相手にすることになったのである。俺とリリスは……お互いに大魔王に戦いを挑んだ。
俺はリリィやリリアムたちが来る前に大魔王の注意を引き付けておくことにした。大魔王の圧倒的な強さはリリスが体験したことであり、彼女の父親である大魔王の強さを知っている俺だからこそできる仕事だと考えていたからだ。俺はリリスと一緒に行動している時のように大魔王に挑んだのである。俺は……大魔王が使うレーヴァテインの『魔剣 レーヴァテイン』の力に対抗しようとしたのだった。しかし……俺は……『魔剣 レーヴァテイン』が発動するまえに大魔王が放った『炎の息吹』をまともに食らってしまい、そのまま吹き飛ばされる。
リリスは大魔王に向かって、俺に攻撃が当たらないように大魔王の攻撃を防ぎ続けてくれたのである。
俺の意識はまだ残っており、俺は自分の体を癒すために『魔剣 アスカロン』の能力である『自己再生』を使う。『魔剣 アスカロン』の力で俺は少しずつではあるが傷を回復する。
『リリアム』がリリィを連れてきたときに、すぐにリリスと『魔剣 アスカロン』の能力を使って大魔王の動きを止めることに成功する。『リリアム』が魔剣 アスカロンの特殊能力である『空間転移』を使おうとするが……。『魔剣 アスカロン』は大魔王に破壊されてしまい……。リリアムが使える武器がなくなる。大魔王に追い詰められていたときに……突然……。大魔王が苦しみ始める。リリアムが大魔王から『闇属性』を吸収し始めた。しかし……。それはリリアムの命を削っていく。リリアムは自分の持っている『魔族の血』で自分の身体を強化することで何とか耐えていたが……。俺とリリスはそんなこと知らずにいた。
俺はリリアムから『闇属性』を奪い取ると、俺は『神聖教皇』から受け継いだ力を発動させる……。すると、俺の身体に纏うように力が湧き上がってくるのを感じたのだった。俺は……この瞬間に、俺自身の『魔剣 デュランダル』の加護も使用できるようになっているので、リリアムを救いだす。
そして……俺は大魔王に対してレーヴァテインの力を使用したのであった。しかし……その時だった……
「なっ!?なんだ?これは……」
俺は自分の体の中に何か得体の知れない存在がいるような感覚に襲われてしまったのだ
「くそったれ!!!!!」
俺は自分に対する怒りを抑えきれない感情になりながら叫んでいた なぜこうなったのか分からないし意味もわからないがこの世界の神である奴の仕業だろう……絶対に許せない……!! ***《……ふぅ……なんとかなりましたね……》 俺の心の中で声がした……えっと誰だよ……こいつ 俺はその不思議な現象に戸惑っていた 俺は目の前にいる大魔王を見つめるとその違和感に気付く
「あれ?なんか小さくなってるような」
そう言うとその男は答える 〈私は、あなたの心の中の者……ですかね〉 そう言って笑みを浮かべていた 何笑ってんだよ…… なんとも不気味な笑い方に不気味さが溢れ出ている 俺はこいつが信用できない……いや信用してはならないと直感が言っている……俺は警戒を解くことは無い……それに、今こいつは、私とか言っていたがどういうことだ? この世界に来ているのは……俺だけではない……そういうことなのか……?でも……まさかこの俺に精神攻撃を仕掛けてくるとは……侮れないな…… 俺はこの男が何者かを探るためにこの男のステータスを見てみることにする…… 名前 ルシファー 種族 堕天使(魔王)
Lv 100 HP 25000/25000 MP 13000/12000 攻撃 3500 守備 1000 魔攻 7000 魔防 1500 速さ 4000 知力 3800 運 20000 魅力 7500 【固有スキル】
全属性耐性 状態異常無効 魔力強化(中)物理強化(強)
超加速(弱)
光輪剣舞 黒炎弾・爆 聖炎柱 破滅光線 【ユニークスキル】
傲慢の悪魔化 憤怒の暴君 無限進化……これは……ヤバいな……ステータスの数値がおかしいことになっている……これじゃあ……本当に勝てるか怪しいぞ……どうすればいい……俺は頭を抱えながら悩んでいた 〈貴方ならきっと勝てますよ、だって私の愛しい子だからね……フッ……ハハハッ……ハハハハッ…………さぁ始めましょうか、私の可愛い下僕さん♪私が貴方に力を貸せるのはここまでですよ……あとは、貴女の心の思いのままに進むといい……それこそが……運命だからね……ハハッ……アハァ……アッーハッハー!!!!ハハッ、……さて……そろそろ終わりにしませんか……これ以上長引かせると……こちらが困るのでね〉 そう言われ俺は改めて覚悟を決めた 俺がここで勝たなければ全てが終わってしまうかもしれないからだ それに俺は……この世界に来てまだ二日しか経っていないんだぞ……このまま終わる訳にはいかない……そう俺は思って大魔王に立ち向かうことにしたのである……俺に残された選択肢は戦うことしかないからだ そう思うと俺の体に異変が起こる……急に視界が暗転する まるで俺自身が闇の中に吸い込まれていくような感じになっていく……俺は……もう戻れないところにまで行ってしまったのだと悟った だが……そんな状況なのに不思議と怖くはない、むしろ心地よくもある、そんな気分だ…… その感覚に身を任していたときだった、いきなり俺は真っ暗闇から解き放たれることになる……
「うぉおおお!!!?」
俺は……なぜか空から落下している、地面まで残り50メートルはあるんじゃないだろうか……って……こんなところで落ちている暇はねぇ!! 俺はどうにか体勢を整えようとしたが……無理だった……そのまま俺が地上に向かって墜落していった時だった 俺の前に巨大な光の塊が現れる……そして俺はその光の塊に包まれるようにして衝撃を和らげることができたのだ……そして……その光の塊は俺の前から消えると今度は俺の近くに現れたのである その瞬間に俺は意識を失った……
***
俺が起きたときには辺りは夜になっていて……俺達はリリアムたちに助けられたのだと理解できた……俺は起き上がるとリリアムと目が合う……彼女は俺の側に近づいてきたのだ……そして俺の顔を見ながら涙を流し始める……俺と彼女の周りにみんなが集まってきて泣き出してしまう……どうして俺は泣かれてしまっているんだ……俺は一体何をしたというんだ……俺は全く分からなかった……俺はただ困惑することしか出来なかったのである 俺は、その後の記憶がないが……。リリアムに聞いた話では……大魔王との戦いが終わった直後、俺は意識を失い地面に倒れてしまうとすぐにその場から消えてしまったという。しかも俺の身体がボロボロになっていたそうだ……。
そして俺は……『魔剣 デュランダル』の力で大魔王の魂を封印することに成功した。俺達の役目はこれで終わり……俺達の戦いも幕を閉じたのである。俺達はそのまま『ホーリーロード アリウス』に戻ると……俺達の活躍は国中に知れ渡っていて、大歓迎を受けた。俺は『暗黒神殿』から『神聖皇帝 アルウス=リリィス』を連れ出して『神聖皇国 ホーリーロード アリウネ』の城に向かったのである。
***
リリアム視点 私たちはリリィ姉さんの案内で城に向かうと『ホーリーロード アリウネ』の城の前には『勇者』リリアムが待っていたのである。リリィ姉の話によれば、私に会わせたい人がいると言っていたらしく……リリィお兄ちゃんはその人に呼ばれて来たみたいで私はリリィお姉ちゃんと一緒に城に入城すると、玉座の間に通される そこには私を救ってくれて……お父さんの敵だったリリアムがいて……私に向かって優しく微笑んでくれていたのである。私は、この人となら仲良く出来ると思った。この人は……優しい人の目をしている。この人もまた自分の大切な人を守るために命をかけたのだろうとすぐにわかった。その優しさがとても心に響くものを感じることができたからである。
その日から私たち『勇者パーティー』と『暗黒魔導士 ダークネスウィザード』リリス、そして謎の少女の4人で冒険の旅に出ることにしたのです。
これからもリリィお兄ちゃんとの楽しい旅が待っていると思います。私は楽しみです。
「リリス!!お前のことは俺が一番わかっている!!だから安心しろよ。俺は必ず美久を取り戻す!!」
「ありがとうリリアム。私は、絶対にあなたを見捨てないわ。あなたの心は私が守るから……」
こうして、『魔王軍』を倒した後、リリアムたちとの合流を果たしたリリィとリリアムは新たなる『勇者』としての歩みを進める。しかし……。彼女たちの旅はまだまだ続くことになる……。
***
『リリアム・ミティーリア 女 14歳』
***
名前:リリアム・ミティーリア年齢:14歳
身長:162cm
体重:50kg スリーサイズ(推定)
B85 W58 H86
* * *
* * *
* * *
誕生日 11月3日 誕生花 ヒガンバナ・シオン・コガクソウ・ラベンダー・ライラック
『ステータス』
レベル 10/70 ランク D 職業 大魔道師Lv6/100 体力 80 魔力 4400 攻撃力 20+5 防御力 150 魔攻 200+10 魔防 110 速さ 90 知力 600 幸運 120 +1000/1000
(固有スキル)全属性魔法耐性・全属性耐性・状態異常無効・物理攻撃耐性(中)
(エクストラスキル)神眼・大賢術(強)・大剣術(弱)・大盾術(弱)・神速思考・神炎の巫女・聖炎柱・聖水柱(弱)
加護 聖神(アルテナ)の加護・魔神アルテナ(母なる女神)の加護 称号 聖剣に選ばれし者・聖神の器
***
俺と『聖魔王 ルシファー』との激しい戦いが終わり、なんとか勝利を収めることができて俺は一安心することができた……だけどまだこの世界での使命がある俺は気を抜いていられないと思っていたのだが……。それからしばらくして俺は『大迷宮』攻略のために動き出したのである ***
『大魔王 リリアム』の魂と俺の力を融合させた俺に『神聖魔王 ルシファレス』の力が融合し、俺は新しくなったステータスを見てみると今までにない変化が起こっていたのであった……それは……
***
***
名前 リリアム・ミーティア Lv 100 ランク C 種族 人族(新魔王種)
Lv100 HP 25000/25000 MP 13000/13000 攻撃 3500 守備 1000 魔攻7000 魔防 1500 速さ 4000 知力 3800 運 20000 魅力 7500 【固有スキル】
全属性耐性 状態異常無効 魔力強化(中)物理強化(強)
超加速(弱)
聖剣解放・剣舞乱舞 【ユニークスキル】
全言語翻訳 【固有スキル】全属性耐性は聖剣を開放することによって使用可能になるらしい 状態異常無効は状態異常を完全に無効することができる能力らしい。俺の場合は状態異常にならなければどんなに強力な攻撃が来てもダメージが入らなくなるってことだな……それに、俺の場合ステータス数値が高いのは大魔王の力を継承しているからだと思うんだよな……だから俺は、このステータスがこの世界ではどう評価されるのか全くわからないのが不安なんだよね。
そして俺は、このステータスを見たときにふと思ったんだ……これは俺の『ステータス画面』の能力とほとんど一緒じゃないかって……それで俺は自分のステータスの横に新しい文字が表示されないか期待しながらステータス画面を出してみることにしたのだ するとそこには予想していたとおりのことが表示されていた…… 《特殊条件を満たしました。
『ステータス隠蔽』『スキル偽装』を獲得します》 やっぱりか……俺の予想通り、これは特殊な条件を満たすと取得することが出来るみたいだ……この世界の人達の常識に合わせて行動するためにはどうしても隠す必要がある……それにスキルに関しては自分で考えたり覚えたりして手に入れたものを偽ったりすることは普通にあるのである……つまり俺の場合ステータスの数値と自分の強さや特技を完璧に隠しつつ行動するというかなり難しいことを要求されることになるわけだが……。まぁどうにかなるか! ちなみに今表示している状態では……こうなっていた…… == 〈名前〉リリアム・ミーティア Lv.99(限界突破値99999)
職業:魔王?(新魔王種 ランクSSS Sランク以上Aランク未満 SSランク以下Bランク未満)
性別:女
誕生日:8月31日 A型獅子座(RH+AB型)
14歳 O型魚座 152cm
54.5kg±0.0cm
53.5kg±0.1cm *誤差範囲 +-0.00cm〜+0.05cm 〈ステータス詳細〉 筋力 5040(7700/1000000)
→ 9450+300(+1000×12)→ 13750
(+960×2→ 12250+125)→ 18000
(↑2000+1200×10)+1300
(↑200+124)×2+900(36000+1100)→ 37500+1600→ 45850(上限突破により上昇率アップ)
生命力 42500 → 63000 +1800(+1500×2→ 39000+115)
→ 16500
(↑2600+1600×1→ 14800+15000)
← 17300 +1800×2→ 21350 +1900→ 23550
(上限到達によるボーナスポイント加算後)
魔力 44000 → 71000 +1700
(+1500×3 → 21000 +1620×2+1400×2+1000)
→ 15000
(↑16000+160×2→ 17000+15000)
攻撃力 3580(↑1100+1620×2→ 210000 +15000)→ 16000
(↑11000 +1620×2)×2(+1600→15000)
攻撃力 3085 → 3240
(↑1150+1681/2→ 26600+1628上限超えにより増加率向上)
防御力 2055(→2400+1320×1下限に届いたため減少率ダウン、上昇率はそのまま継続される上限突破に伴ない上昇量に補正がかかる。上限値は変わらない)
※上限に達すればするだけ基礎能力が上がる 〈固有技能〉(レベル最大時に習得可能なもののみ記載)
・神速思考
・神炎柱
・聖炎柱
・聖水柱
・魔炎弾
・神炎流剣術
・神氷剣術
・神水剣術
・神雷剣術・神光魔法
・大盾術
・盾術
・剣術・剣術派生技完全理解
・剣術奥義完全修得(+α)・武術
・格闘術・棒術・槍術・体術・短刀術
・弓術
・投擲術・大槌術・斧術
・双剣・大剣
・剣術・剣術応用技・魔導・聖剣召喚・聖魔道 〈装備詳細一覧〉 武器 剣聖の大剣(Lv.3)攻撃力(23000)耐久(∞)必要ステータス(筋力・敏捷・器用・知性)・特殊効果(斬撃剣聖剣聖・武神・全能力成長促進)・スキル熟練度超強化・進化(聖剣覚醒・限定使用聖炎柱・聖水柱・聖炎柱聖剣・真)・全耐性効果増大・身体能力向上・魔攻上昇・体力持続回復・自動再生・魔力供給・聖水柱
・聖炎剣・聖水剣・聖炎柱剣・聖水柱
・炎の指輪・聖のペンダント 身体(上半身)
女神の聖衣・女神の加護(聖属性耐性)・女神の癒し・聖炎柱(Lv.2)
※レベルに応じて効果増大・女神の神気・聖気・治癒力強化・聖魔防壁展開(Lv.2)・自動防御(Lv.2)・自動体力変換(Lv.1)・状態異常無効化・全能力常時微UP(Lv.1)・魔力上昇(中)・攻撃力・守備力常時微量UP(Lv1)・魔法攻撃力常時微小UP(Lv.1)・速度常時微細UP(Lv.5・10・MAX時)・物理耐性・魔法耐性・聖耐性・魔耐性・闇耐性(Lv.4)
下半身(下半身全体)
(鎧)
神速の脚甲(神速の靴・改)防御力(3000)
聖のパンツ(神聖の羽衣聖属性耐性)
・聖炎剣 攻撃力
(13400)3(640004300032400)5(48500725005400)7(76500125005400)8(88500625056400)9(92000728057400)10(106500827777040)
・炎の柱 《特殊技能》(レベルアップ時に獲得できる。レベルアップごとにスキル取得)
『炎属性適性』
『聖炎属性適性』
『火属性魔法』
『水属性魔法』
『風属性魔法』
『地属性魔法』
『無属性魔法』
(エクストラスキレベル最大で覚えることができる。その人の素質・才能・努力・経験によって得られる可能性・獲得数が変化するスキル)
《オリジナルスキル》(その人に合ったオリジナルのスキル)
『絶対切断』《レベルMaxで取得可能。ただし条件が厳しい。このスキルのレベルは上限が存在しないためスキルレベルは無限に上がる》
『創造主』【スキルレベルが1から3までの時は、1分間で3個のアイテムを作り出すことが出来る。4以上の場合は、作ることのできる個数が増える(作成スピードが速くなり1分で1個作れるようになる)】【レベル3以上になるとスキルの発動時間が無くなりずっと使用できる(但し1日2回のみ使用制限あり)】【このスキルはコピーして使うことができない】
〈ユニークスキル〉(固有条件を満たせば取得できるスキル。このスキルも上限は存在しないが、スキルの難易度は非常に高い)《固有名称》 《限界突破(リミットブレイク)》(ユニークレア度はレジェンド)
〈名前〉限界突破(限界を突破する)
【ユニークスキル LV.1】
《このスキルを使用するには以下の条件を満たすことが必要です。1つ 限界を超えるために自分の限界を超えようと思う強い意志。2つ 自分以外の誰かのために命をかけて戦おうとする覚悟。3つ 自分の限界を自分で超えるために今までの自分より強くなることを想像することができる。
4つの条件でスキルを使用できます。スキルレベルが上昇するほど、スキルの能力が向上します。またレベル上限に達すると、新たな効果が開放されます》 《このスキルを発動する時は心の中にいる『本当のあなた』に許可を取りなさい》
※リリアムの心の中に住む謎の声の主の声である == ステータスを確認した俺だったが、そのステータスに俺は驚いていた……まず、ステータスの一番下のところ……つまりは俺の限界突破(リミットブレイク)のところが表示されている場所には……
「なっ……!?」
俺はそこに表示されているステータスの数字を見たときに思わず驚愕してしまった……なぜなら限界突破という文字の上には《?》という表記があり、その下には数値やスキルの説明が書かれている……だが俺にとってそこが一番の問題だったのだ……なぜかというとその限界突破の文字の下の《限界突破 》という単語の隣には、なんの表示もないただの数値しか載っていないのだ。普通ならそこにはスキルの名前とか説明とかが表示されているはずなのにだ……。
そこでもう一度確認のためステータス画面を見てみたら、やはり俺の称号欄に表示された『限界突破者』の後に表記されていた《?』マークの下には何も書かれていなかった……。
(どういうことだ……。)
と思いながら俺は、さっき聞こえてきた女性の言葉を思い出していた。すると俺の中で、ある言葉が引っかかっていたことに気づいたのである。
それは……あの女性が発した最後の言葉である。"今はまだわからないだろうけれど貴方は自分の運命を変えることができる唯一の人なんだ!だから頑張って生きてほしいんだ!!!"という言葉が頭から離れなかった。なぜあのような意味深な言葉を告げてきたのか不思議だったからだ。だけどその時の彼女からは何か強い思いのようなものを感じたのであった。
そうしているうちにいつの間にかアリアさんの話しが始まっており、俺の方を見ながら話をしていたのである。
そして、彼女は自分が何者で何をするために現れたのかということやどうしてこうなったかを詳しく教えてくれた。彼女が話してくれた内容は衝撃的なものだった……。
どうやら俺たちの世界では、世界樹の女神として崇められていたアリアさんだったが、『大魔王サタン』の復活により世界樹の加護を受けられるように世界の各地に散りばめられていた神力が徐々に失われてしまったそうだ……。それで彼女の女神としての役割にも支障が出始めてしまい加護を受けられなくなったことで加護を与えれなくなった人間がいたらしい……。そんな時、加護の力を失ってしまった神たちが、自分たちの力で何とかできないだろうかと考えた結果……。自分たちにできることはないか考え出したようだ……そこで思いついたのが彼女たちの持つ固有技能を使って異世界の人間の魂を集めようと計画を始めたそうなのだが、なかなかうまくいかなかったらしい。そしてある時一人の人間が言い出した。『私たちの固有技能を使えばいいのではないか?』という話しになったらしく、すぐに実行に移された。その結果が『固有能力 輪廻転生』を使うことにしたそうだ。しかしここで大きな問題が発生する。そもそも固有能力 輪廻転生自体を使うことができない状況だったようで何度も試行錯誤を繰り返していたある日の事。ついに『勇者候補召喚魔法 システムプログラムver1.2.00000000001239』が完成されてその魔法を実行することになったのだという。
(勇者候補ってことはやっぱりここはそういう事なのか……?)
「その勇者候補として呼ばれちゃったのかな……」
俺が自分の予想を口に出して言う前に隣の女の子が口を開いて言ってしまったので驚き少し焦ってしまった。それにしても本当に勇者候補になっちゃうなんて信じられない……。まさか勇者になるなんてなぁ〜。なんか緊張するよなぁ……。でもこんなところで立ち止まっているわけにはいかない。俺は前に進み続けなくてはいけない。
俺は決心を決めてからアリアに向かって言った。
「俺は行くぜ!」
「ありがとう。私は君が来てくれると信じているぞ。これからよろしく頼む!!」
「ああ、よろしく頼む。俺の名前は天月優真だ。俺が必ずお前を助け出す!」
こうして俺は新たな仲間と一緒に旅を始める事になった。
(ここからが本当の冒険が始まる)
〜 第8章終 〈後書き〉 いつもお読みいただきまして誠にありがとうございます。今後とも是非よろしくお願いしますm(_ _)m♡ 皆さまの応援のおかげでここまでたどり着くことができました。ほんとうに有難く思っています。
これを読んで下さる方が増えていくのを見るととても励みになります(^O^)/ 今後も更新は頑張りますので温かい目で見守っていてください。よろしくお願いしますm(__)m♪ それから俺達はお互いに自己紹介をした。俺は改めて名前を告げた後はお互いの境遇などを教え合ったりした。もちろんアリアの話していたことが全て真実であるということを確認した上で俺は行動を開始した。俺は早速目の前に現れた魔法陣に乗ってこの世界に来てから起きた出来事を説明したのである。
「えっとまずは、いきなり見知らぬ世界に転移させられました」
そう言ってから俺は、アリアさんから貰った『アイテムボックス』から俺が最初にこの世界で目覚めた場所について詳しく説明することにした。
その場所については、俺は記憶喪失という設定にして話をしたのだ。まあ本当のことを言う必要はないと思ったのもあるが、この世界で俺を知っている人間は皆無に等しいからだ。
(とりあえずこの場所がどこで、この部屋にあるものはどんなものなのかを説明しよう。この世界の常識とかさっぱりわかんねぇーからな)
「この場所はですね……森の中にあって大きな建物の中にありました」
「なるほど……この建物が君の家ということになるんだね。わかった、この事は一応報告しておきたいと思う。私の仲間に信頼出来る人物がいる。私のほうからもその人に手紙を送っておこう。あと君はここにずっと住んでいるのか?」
俺はその質問に答えた。すると今度はこの国の事を色々と説明されたのだ。
俺はこの世界が一体どのようなところになっているのかということを全く理解していなかったので、そのことについてしっかりと聞くことができたのはとても良かった。その国とは……《ラクシス王国》というらしい。この世界には6つの大国が存在して、それぞれが6人の国王と6人の姫君達によって治められているのだと……。
《ラクシス》とは、『剣』という意味を持っている名前であり、その名が表すとおりこの国では《剣》という特殊な武器を用いて戦うことが一般的な戦闘スタイルとなっているらしい。ちなみにその6人の姫とは第一王女 アリスティア 第二王女 ステラリア 第三王女 カレンシア 第四王女 サーシャ 第五王女 セレナのことであるようだ。俺はそこまで聞いて思ったことがあった。
(確か俺が暮らしていた世界でもこの手の物語がたくさんあった気がするな。これは……あれか?俺の前世である神様の言っていた通りこの世界に召喚されたのがこの俺でよかったかもな……他の奴らじゃなくて。この世界に放り出されて一人で生き抜いていく自信はないから……多分俺には向いていない世界だと思うし……)
「なあ、俺にはこの世界で暮らすにあたって一番大切なことがあると思っているんだ。この世界のルールや習慣をある程度覚えるまでは気をつけて生活しようと思う。それと俺のことをあまり知られないようにしたい」
俺がそういうとなぜか隣にいる女の子に変なものを見るような目つきで見つめられていた。俺は何か変なことを言い出してしまったのだろうかと思って彼女に聞いてみたのだ。
すると彼女は自分の胸に指を指したのだ。
するとそこには……『アリア・レイアルド』という胸についた名前が書いてあるプレートがあったのだ。それを俺は不思議に思っていたのだ。なぜならばそのネームプレー卜は彼女の首の部分にぶら下がっているのである。
(んっ?どういうことだ……。どうして自分の名前が入ったものを肌身離さず持っていなくちゃいけないんだ……。普通は身につけるものといえばネックレスとかブレスレットだろ。それなのに何でだ……)
「その……名前が書かれたやつは……その、なんだ。どうして持っているんだ?」
俺はそう問いかけると彼女は驚いた顔をしたのちに、悲しげな表情になってこう言ったのである。
「それは……私にとってはすごく大切ものです……。だけど……貴方が言うのであれば仕方ありません。捨てましょう……」
と言って、彼女はプレートを持って俺から背を向けた。俺は何か地雷を踏む発言をしてしまったのではないかと心配していた。
だけど俺は、そのプレートを見てふと思い出したのだ。俺には彼女が着ていた白の鎧に刻まれていた文字と同じものが同じように書かれていることに気付いたのだった。
そこで俺は思い出したのである。それは彼女がこの世界の文字ではなく、俺たちが元いた世界の日本語が書かれていたのだ。
(そうだ……あの文字が書かれていなければ、俺が彼女の言っていることを信じることができなかったはずだ。俺だって信じなかったかもしれない。つまり……彼女の言うことが本当だったという証明になったってことだ。これでやっと確信が持てることができた。)
「ごめん……別にそういう意味で言ったんじゃないんだ……。だからさ……そんなに落ち込まないでほしいんだ……。俺が悪かったよ……許してくれ。それでさ、ちょっと俺に見せてもらってもいいか?」
と俺は言ってから彼女に近づいたのである。その言葉を聞いて安心した様子の彼女だったがすぐに何か思い詰めた表情へと変わりそしてプレートを外そうとした瞬間、俺はその行動をやめさせるように手で静止させた。彼女は不思議そうな顔で俺のことを見てきた。
「いや、やっぱり見せてもらわないでおくよ。もし、君がどうしても見せたいのなら……後で見せてほしい……」
そう俺が言うとその女の子が泣き出しそうになった。どうしたらいいかわからずあたふたしていると彼女が涙目で言ってきたのだった。
「あ、貴方にだけは見られたくなかったのです。私にとっての唯一の宝物だったんです……。それがなくなったら私……」
「ご、ごめん!!本当にすまないことを言ってしまったな……俺が悪い……だけど……これだけは約束してほしい。俺は、そのプレートがなんなのか知りたいだけなんだ。決して君を傷つけたりしない……信じてほしい……」
「そ、そうなのですか……私は……本当に捨てられてしまったかと思ったんですよ……。もう……そんなこと言われたら……何も言い返せないじゃない……です。……はぁー、いいですよ、お好きに見てください……その代わり後でちゃんと説明してくれないと怒りますよ。それで、私がいいって言ってるのに勝手に見たことは怒っているんですからね!でも今回は特別に許しますけどね!」
俺はその言葉を聞いて安堵してから、彼女に謝った後にプレートを見させてもらおうとしたのだが何故かプレートを見せてもらえることはなかったのである。
その後、俺がプレートの中身について尋ねるたびに彼女は不機嫌になっていったのであった。そして俺は、プレートの中に入っている情報を見たいと伝える度にその事を隠すために俺に対して怒ったふりをしていた。だが最後には「絶対に嫌!」の一点張りだった。
結局俺は最後まで見ることはできなかったのだった。俺にはそのことが少し残念だったのだが、それ以上にも俺にはやることがあるので今はそちらを優先することにした。そしてこの世界で生きていく為に何をすべきかを相談することにしたのである。
〜
「とりあえずは君の仲間と合流しようと思うんだが……」
俺は仲間と合流する為の場所について話をした。俺はその仲間がいる場所に一緒に来て欲しいというのを伝えた。
すると、アリアが仲間のことについて色々と話をしてくれたのだった。
(アリアさんの仲間たちはこの世界で最強の六人パーティと言われているみたいだ。アリアさんはその中でも一位二位の実力をもっていると誇らし気に自慢していたが、正直言って全然実感がなかった。)
俺はアリアさんの話を聞いて、仲間に合流するために向かう前にやることがあるのを思い出したのである。それは……まずはこの世界のお金を得るということと仲間に会うまでの間に装備を整える必要があるのだ。
まずは……冒険者として生活する為にお金が必要だろうということになり、俺は早速アリアさんから金貨を貰ったのだ。しかしここで問題が発生したのだ。
俺はアリアさんに言われた通りに、その金貨でまずは武器を購入することになったのだ。そして……アリアさんがお勧めのお店を紹介してくれるとのことだったのだ。そのお店の中に入ってみると中はかなり賑わっていた。客の中には冒険者らしき格好をしている人間が多く見受けられたのだ。
それから俺はアリアさんと一緒に奥にある受付へと向かった。その時にカウンターにいた従業員の女性から俺は質問をされていた。
(う〜ん……これじゃ俺の考えている作戦に支障をきたしかねないぞ……。まずいなぁ……どうすればいいんだ?)
俺が困り果てているとその女性が話しかけてきたのである。するとその女性はこう言ってくれたのだ。
「えっとですね、お客様のその剣なんですが……かなり珍しい物ではないのでしょうか?私も今まで多くの商品を扱ってきましたがそのようなものを見たことがないのですが……どこで手に入れられたのでしょう?できれば私どもが購入して、今後の仕入れの参考にしておきたいと考えておりまして……よろしかったら売っていただけませんか?」
(うわっ!いきなりこの人……核心的な質問してきたな……。俺がこの世界に転生したことに感づいているのだろうか……いや、ただの勘でしかないかもしれない。この剣についてはアリアさんに聞いたほうが早そうだな。よし、任せよう)
「実は俺もよくわかっていないんだよ。その剣を手に取った瞬間に何か声が聞こえたんだ。その剣が欲しいのなら……力を貸してくれみたいな感じの事を……。それを聞いた俺は自然と手が伸びて、この剣を手の中に握りしめていたんだ」
「そうなんですか……それでどのような力が使えたのでしょう?その力をぜひ教えていただきたくて」
俺はアリアさんの顔を見ると笑顔で俺に向かってウィンクをしたのだった。俺のその行為によってこの女性の誤解を解くことに成功したのである。
(な、なるほど……そういうことか。この人は俺のスキルを知っているのか……?まあ、知らないわけないか。俺のことを勇者と言っていたくらいだから……それにしても、まさかこんなところで前世の俺の能力である『鑑定』を使う時が来るとはな……)
「俺のこの能力なんだけど、俺の目で見える範囲内のものを全て知ることができるんだ。例えば、その人が嘘をついているかどうかとか……その人の職業だとかも全てわかってしまう」
俺はこの女性に俺の本当の能力を告げた後でその女性が俺に言ってきた。
「そうなのですか……その能力は確かにとても強力です。使い方を間違われなければとても強力な能力だと思います。ですが……使い道を誤れば大変なことになるかもしれないということをしっかりと覚えておくようにしてください。」
と真面目に言われてしまったのである。
「そうですね……確かにそうかもしれません。俺もこの世界に来るまではそんなことは考えたこともありませんでした。俺はまだこの世界では新人なので……先輩であるあなたに助言していただいて助かりましたよ。それじゃあそろそろ俺たちは失礼させてもらいますね。ありがとうございました。今後ともご贔屓にしていただくと幸いです。」
俺はその言葉を言い終わるとすぐにその場を後にしたのだった。そして俺たちは出口に向かおうとしている時に俺はアリアさんから呼び止められていた。
「リリアム君、君に伝えなくちゃいけないことがあるんだ。さっき私と別れようとしたときに私の名前を言ったよね?あの時は特に気に留めていなかったけど……よく考えてみるとおかしいことに気づいたんだ……。私は君のことを初めて会ったときから知っているような気がしていたんだ……。君と出会ってからずっと違和感を感じている。君の名前は『キリト』でしょ?」
「いや、違うよ。俺の名前は……『アルフ』って言う名前だよ。」
俺は彼女の言っていることを適当にはぐらかす事にしたのである。
「……やっぱりそうなのかな?いや、別に私だって確信があるわけではないから……。でもなんでその名前を名乗っているの?」
と、不思議そうな顔で聞いてきたのである。そこで俺は彼女に伝えることにしてしまった。自分がこの世界でどんな存在であるのか……。
彼女は俺がこの世界に来てしまったことをあまり快く思っていない様子だった。そして……彼女はなぜか俺に怒ってこなかったのだ。俺はそのことが少し疑問に思っていたのだった。だが、今はそんなことを考えても意味がないと思い、これからどうするかを考えることにしたのだ。そして……彼女にはしばらくここに滞在する予定であることを伝えてあるので俺は、冒険者ギルドの宿舎でしばらくの間お世話になろうと考えていたのである。だが、彼女は俺が行くところに一緒に着いていきたいと言ったので一緒に来る事になった。
「ねえ、君が行く場所に僕たちも一緒に行っていいかい?」
突然後ろから声を掛けられてびっくりしたが俺はその人物を確認した。そこにはアリアさんと同じパーティメンバーと思われる男性が三人もいたのだ。俺が驚いていると彼が再び話し掛けてきた。
「驚かせてしまってごめん。実は……僕らはアリアさんに君がこの街に来た時からずっと後をつけさせていたんだよ。そして、この店のところに入ったのを見て慌てて後を追いかけたんだ。だけど君は店から出たと思ったらまたすぐどこかに行ってしまったみたいだし……。君たち二人のやり取りを見させてもらっていたけどなかなか面白い話が聞けたと思っている。」
「あのー、すいません。私は……というより私たちは君が誰かを確かめたいと思ってついてきているんですよ。私たちの質問に答えてくれたら君の目的も教えてほしいんだ」
「わかった。質問に答えるよ。だけど俺の目的については内緒にさせてもらえるとありがたい。俺が君たちに危害を加えることはないよ……。絶対に。だから、俺の事を調べようなんて考えないでくれるとすごくありがたいんだけど……。それで、何を聞きたいの?」
俺はこの質問に対して少し警戒しながらも返答した。
(アリアさんのパーティメンバーの二人か……正直に言って俺は彼女たちに不信感を抱いてしまっている。アリアさんは俺を疑う事はなかったけど……他の人はそうじゃないってことだ。俺のことがばれたら厄介になりかねないから慎重にいかなくては……。)
「じゃあまず、どうしてアリアさんと知り合ったんですか?それとこの店での買い物の内容を教えてもらえますか?このお店はこの国でも有数の品物を取り扱ってる有名な場所です。しかも、ここに置いてあるものは基本的に高価なものが多く置かれています。つまりはお金がたくさんあるからこそ、ここで商品を購入することができてるんです。でもこの店に入れる人間は限られているはずなんです。それがどういう理由なのか教えて欲しいんだ。」
彼は俺がこの世界でどのように生活しているかを聞いていたのである。俺は、お金についてどうしているかを質問された時について考えていた。お金に関してはこの世界の貨幣について説明してあったのだ。すると彼らはこの世界でのお金の仕組みを全く理解していなかったのだ。俺は少し困惑しながら、彼らにもわかるように簡単に話した。そして彼らが納得したところで質問に回答した。
「俺がアリアさんと知り合いになれたのはたまたまだよ。それに、俺もまだ自分の目的がわかっていないから……アリアさんに協力を頼んでたんだよ。この店で買ったものについて教えて欲しいんだけど……。俺は……冒険者として生計を立てようと考えて武器を買っただけだよ。あと……これは俺からの頼みでもあるんだけど、アリアさんは信頼できる仲間として接して欲しいんだけど……お願いできるかな?」
俺は彼らの目をしっかりと見ながら伝えた。すると……彼らは了承してくれた。それから俺達は彼らからこの国の歴史などについて色々と話を聞いたのだった。
「なぁ……一つだけ聞きたかったんだけど……君がさっき使っていた力って……なんなの?さっきアリアさんからそのことについて話を聞こうと思っていたんだが……。もしかしてその力を僕も使うことが出来るってことで合ってるのか?」
「あ〜うん。その力についてはちょっと待って。とりあえず今は質問に全部答えることはできないから、とりあえず質問内容を変更するけど……。君はどうやって俺たちのことを見分けることができたの?」
俺は質問を変えた。この能力がこの世界でも有効だということが分かったからだ。
「それについても今話すよ。君の力は確かにこの世界では特殊なものだ……。普通に考えてみろよ。いきなり何も知らないところから現れてきて、この国のことや文化や習慣や魔法などについての基本的な知識が頭に入ってくるんだぜ。それに……ステータスの数値まで変わるとか……。こんなこと普通ならありえないだろ。それに俺の予想だと君たちは転生者だと思うんだ。だから俺達にもその不思議な力で俺たちのことがわかるはずだ。」
「ふむ……その推測が本当かどうかを確かめるために俺の能力を使わせてもらったよ。俺の能力の一つに相手の能力を鑑定することができる能力を持っている。その能力を応用すれば俺の仲間たちの事も詳しく知ることができるんだ。」
「なっ!?そんな能力もあるんだな。俺の予想だと、君たちって転生者としか考えられないと思うんだよ。俺の予想では……この世界に転生してくる者は何かしらの能力を持ってこの世界に来てるんだ。だから君たちの中にそういう能力を持っている奴がいるんじゃないのかなって思ってたんだよ」
俺の言葉を聞いた二人は俺のことを凝視し始めた。
「な、なんだよ。なんか……気持ち悪いな……」
俺は、目の前の男性の視線がなんだか不気味で少し身震いをしたのであった。
(こいつらは何を考えているんだ?この能力を使えば俺たちの正体を知る事ができるとか言っていたが……。本当にそんなことができるなら俺が転生者かどうかを確認することは簡単なことなのかもしれない。だけど、それを確認しても俺にはデメリットがないように思えるな……。)
(この少年が転生者だということで確定だな。俺達の事を『この世界には存在しないはずの人間』だと認識していているからな……。この世界の人族でこんなことを言うやつはまずいないだろう……。それに……鑑定ができる能力なんてこの国に存在しているわけがないし、ましてやこんな年齢の子供が持つこと自体が異常だ……。こいつがこの世界に転生者だと仮定するならこの少年の本当の能力は何なんだろうか……。まあ、その話はいずれまた聞かせてもらうとしよう。)
とお互いに思っているとは知らずに俺は二人の男性と情報交換を行ったのである。そして……ある程度この世界についての情報を整理した後に、この国の冒険者の階級についての話を聞かされることになった。
俺は二人に連れられるままにある場所に向かっていたのである。そして……その場所にたどり着いたとき、そこには多くの冒険者たちの姿があり……みんな忙しそうに仕事をしていたのである。そして、俺たちはその建物に入っていくことになったのだが……。そこは冒険者ギルドの受付だったのだ。俺はその光景を見たときに違和感を覚えたのだった。
(おい、こっちの人たちは俺が知っているギルドの人たちよりも圧倒的に仕事が早いぞ!そして、効率もいい気がしたんだ。だけど……そのおかげで早く俺が登録したランクであるB−に昇格できるかもしれないな。それに、アリアさんもこのギルドの職員でギルド長でもあったんだね……。)
俺が考え事をしながら建物の中を見回していると……。突然後ろから話しかけられたのだ。
「あれ、君はアリアさんのところに来た新人さんでしょ?私はこのギルドの副ギルド長をしているミルっていうの。よろしくね!」
「はい、私はアルフって言います。副ギルド長様ですか……。これからよろしくお願いします。ところで私は……なぜここにつれて来られたのでしょうか?」
「えっと……。君はまだこのギルドに登録してなかったよね?それじゃあ今のうちにこの用紙に記入してくれるかな?」
「あの……すいません。私は今日この国から出ようとしていたのですが……なぜかこの国に滞在しなければならないという義務ができてしまったみたいなんです。なので私にも出来る範囲で依頼があれば受けようと思ってここに来たんですが……。」
俺はそう言うと副ギルド長は俺のことを心配し始めたのだった。俺はその心配に答えるように自分が冒険者になってみたいということを伝えたのである。だが……その返答を聞いた途端に困った顔をされたのだ。そして、なぜか俺はギルドカードを作ることになってしまったのである。俺の話を真剣に聞いてくれたアリアさんがすぐに行動を起こしてくれたみたいで、なんとかギルドカードを作ることが出来たのだった。
そして……そのカードは特別なもので、通常のカードとは違って俺の情報だけが記載されていたのだ。そのことに驚いた俺は副ギルド長に聞いたのだ。
「これってもしかして……私が持っているギルドカードとは違うものなんじゃないんですか?」
俺は少し焦っていたのだ。だってギルドカードを勝手に作られてしまったのだから……少しは怒られてしまうんじゃないかと思ったのだ。だが、この答えは意外なものだったのだ。
「いいや……これは君専用のギルドカードだぜ?その証拠にほら……。君のランクが表示されているはずだよ。それはこの国でしか使用できない特別製になっていて、他国へ行っても通用する優れもののギルドカードなんだぜ。しかもそのギルドカードはかなり高性能なものだから偽造は不可能な仕組みにできている。それに紛失したとしても本人以外は使用することができないから悪用されることも一切ない代物さ。君の場合は身分を証明するものとして必要だから持っていてくれるとすごくありがたいんだけど……受け取ってくれるかい?」
「はい、もちろん受け取りますよ。ありがとうございます」
俺はその言葉を聞くと笑顔で返事をしたのだった。そして、この話が終わった後に俺達は依頼を受けることにしたのである。そして……その時、初めて気づいたのだが……。俺は……この世界でまだ何も冒険者として依頼を受けていなかったのである。
(そういえば、冒険者としての依頼を受けたことがなかったんだ……。だけど……俺って、アリアさんとパーティを組んでるから、彼女についていけば大丈夫なのかな?……まあ、まだ時間もあるし少しは暇つぶしもできるからやってみるしかないのかも……。とりあえずどんな感じのものがあるのかを確認しないとな。)
と俺が思っているとアリアさんは……。俺が受けてみようと提案すると喜んで賛成してくれた。俺はまずアリアさんと一緒にF級の討伐依頼を受けることにしたのである。この世界の冒険者はE級から始まって、最高はS級までありSSが最高のクラスになる。
「アリアさん……とりあえず最初は討伐系の依頼を一緒にやってもらってもいいですか?」
「はい。でもどうして最初に討伐系を?」
「あぁ〜実は俺達二人で討伐してみようかなと思いまして。それと……ちょっとした練習をしておこうと思ったんです。」
「なるほど、そういうことだったのですね。分かりました。じゃあさっそく依頼を受注してくるので、その間に準備していてくださいね」
俺はアリアさんが依頼の受注をしに受付に向かったあとに、武器を装備をしておく。
俺達が受付に行くと……そこには先程までカウンターにいた女性がアリアさんのほうを見て声をかけてきた。どうやらこの人もアリアさんと知り合いだったようだ。それから彼女はアリアさんに声をかけると、俺の事をちらりと見た後にアリアさんに説明を始めた。
「あら、珍しい組み合わせね。あなた達がこのギルドで一緒にいるのを見るのは初めてかもしれないわ。まあ、今はその話は置いておいて……。ちょうどいい機会だし……。あなた達の初仕事として『グリーンタートル』10匹の討伐をお願いできないかしら?この辺りにいる魔物の中では結構強い部類なんだけど……あなた達二人なら簡単に倒せるはずよ」
(この受付の女性はこの国の騎士団に顔見知りがいると言っていたけど……まさかこの国のギルド職員まで知り合いだなんてすごい人なのかもしれない……。俺がもし仮に勇者として呼ばれたとしたらこの国の王様とかも知り合いになっていたのかもしれない……。とりあえず俺がここに来た時に対応してくれた受付嬢に名前を聞いておくことにするか……。)
と、そんなことを俺が考えていると……隣から視線を感じたのである。
(ん?隣の人が俺の方を凝視してきていたけど……。どうかしたのだろうか?)
俺がその人に話しかけようとする前に彼女が話し掛けて来た。俺のことを見続けていた彼女の名前は『リーシャ・ラローズ』と言うらしい……。この人は女性騎士なんだそうだ。
(ふむふむ、俺と同じような身長だけど……なんか俺よりも背が高くて凛々しいな……。そして俺と似たような黒髪のポニーテールで美人でかわいいな……。)
俺は彼女の見た目を観察した。
(うん……めっちゃ好みのタイプの女の子だけど……俺ってロリコンとかそういう趣味はないんだよね……。ただ……なんていうんだろうな。この人とはなんか波長的なものを感じているんだよな。それにこの人と話すと……なぜか落ち着くような気がするんだよね……。まあ、それは後回しにして……。今は目の前の仕事をしっかりと終わらせていこうか。)
俺は受付の女性の人からグリーンタートルの生息情報や特徴などを教えてもらうと、その話を頭に入れて戦闘に備えたのである。そして……アリアさんにこの依頼を受けることを相談したら、俺が戦うことに賛成してもらったので俺の初仕事はこれで決まったのだった。
「アリアさん、それでは行きましょうか。」
「わかりました!では行きましょう」
(俺が前を歩く形でこの広いフィールドの中へと進んでいく。この国に来て初めての外の世界だ……。やっぱり……外の空気がおいしいし……。なんだろう……。すごく懐かしく思える。……そしてこの世界に召喚されてもう2週間以上も経過している……。俺はこの世界の人達の役に立ちたいと頑張ってきた……。その結果が今の現状なのだ……。これから俺はどうするべきなんだろうか……。このままこの国で生きていくにしても俺は魔王を倒してこの世界を救わなければならない……。だが……俺は魔王を倒したくないと思ってしまっている……。この世界に来るまでは俺もこの世界を救うために行動したいと思っていたが……。いざ来てみると……こんなにも素晴らしい世界があったのかと思うくらい楽しかった。……それに……みんなが幸せそうに暮らしているのを見ると……俺にはそれができなかった世界を知っているからどうしても……この国のために命を懸けて戦いたくなくなってしまった……。本当に……こんなにも平和なのに……それでも……戦おうとしている自分が馬鹿らしくなってしまって……。俺の中で……自分の本当の意思がわからなくなっている。だけど、一つだけはっきりとわかることがある……。俺はこの国にずっと滞在することはできない。いつかまた元の場所に戻らなければならない。だからこそ、俺のやりたいように行動して後悔しないように生きていきたい。そうしないと俺の気持ちが納得しないんだ……。だけど……その決意とは裏腹に……みんなとの別れが辛くなりそうなのが怖い……。)
俺が少し俯いていると……急にアリアさんが立ち止まって話しかけてくれた。
「アルフさん……もしかして……何か不安なことでもあって悩んでいるんじゃないですか?」
「え?あ……えっと……」
「……私でよかったらなんでも話して下さいね?悩みというのは一人で抱え込んでいたら……心がどんどん沈んでしまうんです。私はいつでもアルフさんの味方です。……それに、アルフさんがこれからしようとしていることも知っています。だから私は……その手伝いをさせてもらいたいんです。」
「俺が……これからしようと……していること?」
「そうですよ。アルフさんは私を助けてくれたじゃないですか……。あの時……私はアルフさんの言葉に助けられたんです。私は……私を必要としてくれる仲間が必要なんです……。私もそうです。だから私にも協力させて貰えませんか?」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると……とても助かります。でも俺がこれからしようと思っていることは……アリアさんにも……いや……リリィにさえも迷惑をかけてしまう可能性があるんですよ……。」
俺はそう言いながら苦笑いをした。そして……その後、俺は自分がこの世界に迷い込んでしまった経緯についてアリアさんに説明をした。その話を聞いたアリアさんは真剣に俺の話を聞き入れてくれて、俺のやろうとしていることを手伝ってくれると言っのだ。
そして、俺は改めてアリアさんに感謝をしたのだった。だが……アリアさんは自分が俺の力になれなかったから……俺と一緒にいることができないというのだ。
「いえ、私だって同じです……。結局は私がもっと早くに行動を起こしていれば、お姉様やリーシャに頼らなくても良かったかもしれない……。私の不注意でアルフさんを困らせてしまった……。だから今度は私が……アルフさんを助ける番なんです!」
「そっか……でもアリアさんが謝ることじゃないよ……。悪いのは……この俺なんだからさ……。だからアリアさんもあまり気に病まないで欲しい……。俺は大丈夫だから……。それに俺はね……アリアさんがいなかったら、きっとこの世界を楽しむこともできずに死んでいたよ……。アリアさんのおかげで、俺はこの世界で楽しく生活することができたんだ。俺にとっては……アリアさんこそが……一番大切な存在なんだよ……。俺の勝手なわがままでアリアさんを振り回してしまったけど……アリアさんにだけは……この俺のやろうとしていることを知って欲しくない。これは俺と……この国の人にしか解決できないことだから……。アリアさんを巻き込むわけにはいかないんだ。俺のせいで危険な目にあうような真似は絶対にしちゃダメだよ。わかったかな?……アリアさんはいつものように笑っているほうが可愛いから……。」
俺は少し冗談を混ぜながらもアリアさんのことを心配して伝えた。そしてアリアさんは俺の言葉を嬉しく思ってくれて……俺の手を繋いできたのである。
「分かりました。でも……約束は守ってくださいね。」
「あぁ〜もちろんだ。でも、この話は誰にも内緒だからな?」
「はい。秘密ですね。じゃあとりあえず、この話は終わりにして討伐に行きましょうか。もうグリーンタートルはこの先みたいですよ。……あれがそうですね。」
アリアさんに教えてもらった方向に目を向けると……そこには緑色のカメが歩いていたのである。
「確かにグリーンタートルですね。よし!討伐開始しますか。」
俺が剣を抜くと同時にグリーンタートルは甲羅の中に潜っていったのであった。
俺達がしばらく待っていると、突然大きな地震が起き始める。そして……地面から亀型の魔物が出てきたのであった。
「あれが……グリーンタートル……。初めて見るタイプの敵ですね。動き自体は遅いようだけど……。とにかくまず一撃当てて様子を見てみようと思います。それでは……『炎刃!』
」
俺はグリーンタートルに向かって斬撃を放つが……。俺の攻撃は見事に外れてしまい……。地面に当たり爆発したのだった。
(おっと……思っていたよりも全然攻撃のスピードが速い……。それに……威力もかなり高いな……。だけど、俺の魔法を外させるなんてなかなか厄介な魔物だな……。)
俺はもう一度攻撃の準備を始めたのだった。だがその時だった……。グリーンタートルが大きく息を吸い込み始め……。
『グリーンブレス』
と、グリーンタートルが叫んだ瞬間に……グリーンタートルの口から強力な風の衝撃波が発生したのである。
「うわあああっ!?︎」
俺とアリアさんはなんとか避けたが……。風圧がすごすぎて俺達は吹っ飛ばされそうになった。
「きゃーー!!」
そしてアリアさんが悲鳴を上げたと思ったらそのまま勢いよく吹っ飛んでいったのだった。
俺はすぐに『浄化』を発動させてアリアさんのところに向かった。
『光盾』
そして俺は、吹き飛んでいるアリアさんを包み込んだ。
「ふぅ……。大丈夫かい?ごめん……。俺が不甲斐ないせいで君を傷つけてしまって……。怪我はないか?」俺は必死に謝ったのだが……アリアさんからの返事がない……。まさか……死んでしまったのかと思い……。俺は青ざめていると……。急に背中に強い衝撃が走ったのであった。俺はその反動で前のめりになってしまう。そして……俺が振り返ると、なぜかそこには……なぜか笑顔になっている……聖女姿になったアリアさんがいた。俺は状況が理解できずにいたのだったが、どうやら……俺の予想とは裏腹に、彼女はピンピンしているようだ。その証拠に……アリアさんが俺に抱きついてきたのである。
俺は驚きで声が出なかった……。すると……。アリアさんは自分の方から離れてこう言ったのだった。
「ありがとうございます。助かりました……。私ならこのくらい平気ですから……それよりもあのタートルを倒すことに集中して下さい。あの技はおそらく連続使用はできないはずなので……。今の隙をついて私達で倒してしまえばいいんです。」
「あ、あぁそうだな……。」
「それと、私はあの技を受けて少し痛かったので……アルフさんが私の身体を治してください……。お願いしますね。……あと私も頑張りますから……。お互い全力を出し切りましょう!」
そう言い残してアリアさんは再び戦闘に戻ったのだった。俺は自分の力を信じていなかったわけではなかったが……。今の俺は本当に強いのだろうかと少しだけ自信をなくしてしまっていた。そして俺は再び集中し直して戦いを再開したのである。
(俺がさっきまでとは見違えるほどの動きをし始めたことに自分自身が一番驚いてしまっている。この調子だとグリーンタートルは俺達のコンビネーションだけであっさりと討伐できてしまうかもしれない。まあでも、それはそれで楽だし良いんだけどな……。だがしかし……まだだ。あの魔物からは……嫌な予感がするんだ……。俺の第六感のようなものがあの魔物はヤバいと警告している……。だからこそ俺は油断せずに立ち向かっていくんだ……。)
俺とアリアさんはすぐに作戦を立てた。そのおかげでグリーンタートルにダメージを与え続けていき……。ついにグリーンタートルを倒すことができたのであった。
「やばいぞ……。アリアさん……早くここを離れよう。なんか嫌な気配を感じる……。」
「そうですか……。じゃあその前に、この辺りにあるグリーンタートルの素材を集めませんか?」
「そんな時間は無いって!!俺が感じた嫌な気配の正体がわからない以上、一刻を争う事態なんだってば……。俺と一緒に来てくれればアリアさんには被害は出ないはずだから……」
「わかりました……。」
アリアさんが渋々納得してくれたので俺はアリアさんを連れてその場から離れたのだった。
そして俺たちはその足でリリアがいると思われる神殿へと向かう。そして神殿に辿り着くと……案の定リリィもいたので、リリィも連れ出して一緒にリリアの所へと向かった。
リリィには事情を話したら快く引き受けてくれたので……今は俺と一緒に移動中である。そしてしばらく走っていると……目の前に大きな湖が見えてきた。その水を見て……アリアさんがとても喜んでいて、この湖の水が飲めることを確認してくれていた。その姿を見て俺もとても嬉しかったので……俺もこの水を味わえるようにアイテムポーチに入れておくことにした。その時にリリィと話をしていたので……リリィにこの湖について詳しく聞くと……。この湖の水はとても美味しいらしく、飲むだけでも体力が回復したり傷や呪いを治癒することができるみたいだった。しかも、毒なども全て解呪してくれるという優れものだ。
「お姉様が喜ぶと思って私も持ってきていました。」と、リリィが言ってたのを聞いたリリィのお母さんもすごく喜んでいた。そして俺は改めて……アリアさんにこの水の効果を説明してからみんなでこの湖の水の恩恵を受けたのだった。そしてその後……リリスにも連絡を取って合流することにした。そしてリリイと別れた後、リリスの待つ場所に向かって移動すると……。
俺達が着いた先には巨大な竜がいたのである。
「こいつは何者だ?この辺一帯の雰囲気が……さっきのグリーンタートルが現れたときと同じような感覚がある。」
「そ、そうなのか?俺はまだこの世界に疎いものでな。すまないな……。」
そう言って竜と話をしているのはリリイであった。どうやら……この竜がリリイの仲間ということならしい。
(ん……ちょっと待てよ……。この世界に来て……リシアやレイアとも会ったことがあるけど……あいつらはこの世界には居ないんだよな……。じゃあこいつはどこから現れたんだ?まさか……。俺が召喚されてからこの世界に現れている……とかそういうパターンなんじゃないだろうな?)
「なぁお前はどうやってこの世界に現れたんだ?」
俺はとりあえず聞いてみたが……。この質問に対する答えはなかったのだった。
「おい!ちゃんと人の話は聞けよ……。俺は一応お前の先輩なんだよ……。もう少し敬ってくれてもいいんじゃないか?」
「ふっ。悪いが私は先輩であろうと関係ない。私の方が強いのだ。それに……私はリリンより……もっと前からここに存在しているのだ。」
「うーむ……。そうなのね……。わかったよ……。でも、それだったら……なぜ俺と会わないで隠れていたんだ?俺の記憶ではお前みたいな竜族は見かけたことないぞ。」
「私は今まで誰にも存在を悟られてはいけないと思っていたのだ。だから、他の種族のいる前に出て行って変に騒がれたくはないからだ。」
「そうだったのか……。なんか色々と大変そうだな……。それで?リリンは一体どこに居るんだよ?」
俺は竜族にリリスのことを尋ねたのだが……。この場にその本人はいないのだった。
俺は仕方なく竜族の方に近づこうとすると……急に地面が盛り上がり始めたのである。
「おっと……。これはまさか……。あの時と全く同じ光景だな……。ということは……。また……敵か?」
俺がそう言った瞬間に地割れが酷くなり、地中から魔物が飛び出してきたのである。そして……その魔物は俺達に攻撃を仕掛けてきたが……俺が一瞬で討伐したのだった。
(この敵の強さはあの時より遥かに強い……。やはり……俺の力はかなり強くなっているようだな……。それにこの敵があの時のグリーンタートルと同じ種類の奴だとすると……。この世界のどこかに……『聖女』の力を持つものがもうひとりいるということになるな……。だが、この魔物の魔力の波動から考えると……。どうやらこの世界にはあと3体ほど……グリーンタートルが生息していて、そのうちの2体はさっき俺が倒したのと、もう一体の方はあの時の個体で間違いなさそうだな……。残り1体がどんなものかは不明だが、おそらく相当に強いはずだ……。だけど今の俺達なら大丈夫だと思う……。俺の直感だけど、おそらく……あのグリーンタートルよりも俺達は強いと思うからね。それに……。リリィもリリアも俺達と一緒に戦えるレベルまで成長してきている。アリアさんもかなりの強者に育っているしね……。後は残りの一人だけだね……。この三人で連携を取りながら頑張って行けば……なんとかなるはずだ。そして……必ず俺達はあの男に勝つ。)
「リリイ、今の戦いは見てたか?」
「あぁ。しっかり見ていたぞ。相変わらず見事な戦いだった。それと……お前に頼みがあるのだが……。その前にまずはリリア様に挨拶をしておかないと……。あそこに……おられる方こそが……我のご主人様なのである。私の名前は……『神竜王』と申します。これからよろしくお願い致します。そしてリリア様……お会い出来て光栄でございます。そしてこの度は我らが『堕ちたる神の神々』の復活を止めて頂きましてありがとうございました。心から感謝をいたします。リリィからあなた達のことを聞きました。どうやらこの世界の管理権限を持っている方たちだと……。それで私も……リリンと同じようにこの世界に滞在する許可を与えては貰えないでしょうか?」
「別に構わないぞ。というかこちらからお願いしたいくらいなんだ。だってリリスを救えたのは君たちが助けに来てくれたおかげでもあるからな。それと、リリスとは面識はあるのかい?」
「いえ、リリア様は直接見たことはないのですが……話だけは聞かされています。なんでも私達ドラゴンは……リリアス教というものを信仰しておりますので……。」
「あぁそうだったのか……。」
(あれ?でも俺の知る限り……俺達がリリアのところに転生してきたときにはそんな話は全くしていなかったような気がしたが……。リリィは俺の知らないところであの宗教に入っていたということだろうか?でもリリィのお父さんであるリリスは……あの時は普通に俺のことも受け入れてくれていたみたいだしな……。まあそんな細かい事はいいか……。とにかくこの世界をリリィに頼んでおく必要はありそうだな。俺はあくまでもサポート役だしな。)
「それならば良かった。リリもリリアも俺にとっては大切な仲間だからな。」
「はい。わかりました。私の主様……。それでこの世界の管理者として、私も少しだけ協力をさせて頂けないでしょうか?私には『龍眼』という能力があるのですが……それで、リリア様がどこに隠れているかを探し当てることが出来るかもしれません。そして私も……リリア様のことは心配なので……。私もこの世界に留まりたいと思います。ですから……。その……私の力を……どうかリリのために使ってくださいませんか?」
「ああ分かったよ。リリイがこの世界に残ると言うのなら……俺は全力でサポートをする。ただ……無理はしないでくれよ?」
「はい!わかりました!」
俺はリリイとそんな約束をしている間に……アリアさんがこの竜族と話しをしていたのである。そして竜族の方を俺が紹介すると……アリアさんはこの竜族のことを知っていたらしく、リリアとリリィが昔住んでいたところの主だということを知ったみたいだった。俺はそのことをアリアさんに伝えてから……。とりあえずアリアさんと竜族の二人でこの周辺を調べてもらうことにしたのである。
(よし!とりあえずはこれで良さそうだな……。あと……残る問題は……あのグリーンタートルのことだよな……。俺が戦った奴よりは弱かったけど……それでも結構な強さを持っていた……。多分あの竜族の実力では倒すことは難しいと思う。それに、俺やアリアさんもあのグリーンタートルにはまだ完全には力を見せていない。リリィもまだ自分の本当の力は隠したままのはずだ……。だから、あの竜族の人が単独で倒すことは不可能だと思う。もし倒せる可能性があるとすれば……。やっぱりこの世界でリリスと一緒に暮らしていて、しかも一番強くなっているであろうリリイがこの場に残ってくれたのはかなり大きいかもしれない。だからリリィの頑張り次第というところもあるんだよな……。それにリリにはまだ……この竜の力が眠っている可能性もある……。それに……あのグリーンタートルも何か隠し球のようなものがあったように思う。でも、それは俺も同じだろう……。今は……俺もこの辺りの探索を始めようかな……。でも……この辺りは……俺の気配探知では何も見つからないんだよね……。リリイがいればもう少し早く分かるんだろうけどね……。リリイには俺の代わりにこの辺の索敵をしてもらうとするか……。さて……それじゃ俺は、湖の方に移動してみるか……。なんか嫌な予感がするんだ……。)
「おい、ちょっとこっちへ来てくれないか?」
俺はそう言って竜族を呼んだのである。その瞬間に竜族の足元から大きな音が響き渡ったのだ。そして地中から巨大な生物が現れた。その姿を見て……。リリイやアリアさんが驚いた表情を見せたのである。
「えっ!?こいつはまさか……グリーンタートルなのか?確かに見た目はほとんどグリーンタートルと同じように見える……。だがこいつはあの時の個体とは違う。それに……魔力の大きさが全く違う。」
俺はそう言いながら……。『魔剣 エンジェルソード アンド エンジェルファング』を手に取ったのだった。そしてそのまま戦闘態勢に入った。だが俺が戦う必要はないのだ。何故なら……。もう既にグリーンタートルを倒した人物が目の前にいるのだから。だがその人物はグリーンタートルが倒れても何もしようとしなかった。
俺は疑問に思ったので竜族を見ると、竜族の方は驚いていて、言葉を失っていた。
「お、お前……。この個体の強さを知っているのか?一体何者だ?」
「うーん……。俺にもよくわからないんだ。実はな……。」
「なっ……なんだと……。そ、それならばお前も戦えるはずだ。私が援護するからお前が攻撃してくれ。」
「わ、わかった……。でも……俺の攻撃をまともに受けて大丈夫なんですかね?一応手加減しますが……それでもかなりのダメージを受けることになると思うのです。」
「大丈夫だ。私に考えがある……。さっきの戦闘を見ていてもわかったが……。この魔物を倒す手段はそれしかないようだからな。それに……あの時もそうだったから……。あの魔物の再生速度は異常なのだ。それならお前のその剣の力で消滅させた方が効率が良いはずだからな。頼むぞ!」
(俺の力を使うって……。なにか特殊な魔法を発動させてくれるということだろうか?とりあえずは俺がなんとかしよう……。それでなんとかならない場合は俺がなんとかすればいいだけだしな。それに……グリーンタートルにどんな秘密が隠されているかも気になるしな……。それに……あの時のリリアの感じだと……グリーンタートルにもリリスのような状態が訪れている可能性が高いからね……。それにしてもあの竜族の方は何を考えていらっしゃるのだろうか……。)
「はぁ〜……。しょうがないですね……。それじゃいきますよ。」
俺はそういうとすぐに行動に移していた。グリーンタートルは地面から飛び出して攻撃をしてきていたのだが、そんなものは今の俺にとってはスローモーションに見えるので簡単に避けることができたのであった。だが次の瞬間……。グリーンタートルの攻撃によって地面が崩れ始めていったので、俺は咄嵯の判断で飛び上がった。すると俺がいた場所が大きな音と共に陥没したので冷や汗が出たのだった。しかし俺はそんなことにもめげずに上空から攻撃を仕掛けたのだったが、やはり今の一撃ではあまり効いていなかったようである。そしてまた同じ方法で地面に叩きつけようとしたときのことだったのだが、なぜかそのタイミングで再び地震が起きたため俺はバランスを崩してしまったのだった。
「ちぃ!まずい!これは不味い!このまま落ちたら流石に俺も無事ではすまないぞ!くぅ!仕方ない!」
「お、おい!お、おいっ!あぁぁぁ!」
(この男……。まさか……。私を盾にするつもりか!こんな時に何を考えているんだ。あのまま落ちていたとしても大した問題ではないはずだぞ……。なのになぜこの男は私を守ろうとしている?私達を助けに来たということは……。私達の正体に気づいているということだろうか……。)
そして……竜族は覚悟を決めたかのように目を閉じてグリーンタートルに背中を向けた。そしてその攻撃が当たる直前に……俺は何とか竜族を掴むことに成功し……そして空中に飛び上がり事なきを得たのだった…………のだが……。
(ま、待て……よ……これってやばくないか?俺……この竜族の方にもの凄い力で捕まれてるんだけど……。こ、このままじゃ落ちる……ぞ……。)
そして俺はその竜族の方に必死に声を上げて訴えたのだった。その言葉で我に帰ったのか……。竜族の方は少しだけ力を抜いてくれたので、そのおかげで少しだけ余裕ができたので俺は地上に降り立つことに成功した。だが、それでも竜族の方は俺の体をしっかりと掴んでいる状態だった。
(こ、この人は……。どれだけこの俺のことを警戒しているというんだ……。でも……多分この人は俺の敵じゃないと思う。だから俺のことは警戒しないでくれ!俺のこの力を制御するために……俺のことを信頼してほしい!だからこの人を離さないでほしい……。)
俺が強く思っていると竜族の女性は手を少しだけ放してくれたので俺は急いでその場から離れようとしたが、それでも竜族の女性に腕を握られていたのである。そんな状態で……俺はなんとかグリーンタートルを倒してしまう。すると竜族の女性が驚きの声を上げていた。そして……竜族の女性がグリーンタートルを見て呟いた。
「そ、それはいったいどういうことだ?私は確かに見たぞ。あの緑色の巨体が真っ二つに割れるところを見たのだ。それが一瞬にして消滅したように見えた……。ま、間違いなかった……。その光景はこの目に焼き付いているからな……。でも……あれが……あの巨体の魔獣を一刀両断してしまうような力を……その剣を持っているお前も相当な実力だということだけは分かる。だがそのお前もあの緑の魔物に負ける程に実力がなかったわけではないはず……。つまり……この魔物が特別強いか……それともその剣が特別強かったということになるのではないか?」
「えっと……俺は普通の剣で普通に斬っただけですけと……。それでこのグリーンタートルも特別な力を持ち合わせている魔物とかですか?」
「いや……。そんなことはないはずだ……。このグリーンタートルの特殊スキルである超高速回復が使えるのはこの周辺一帯でここしかいなかったはずだ……。そしてそんな強力な魔物をたった一人倒しただけでもとんでもない実力なのだとわかる。だがそのお前よりもこのグリーンタートルの方が格上のはずだ……。それならばその可能性はかなり低いだろう。だが、私の勘違いでないとしたなら……。」
「えっと……。もしかして俺のことを高く評価してくれているということですか?多分あなたは俺のことを買いかぶっていると思います。ただ、あなたの言っているようにこのグリーンタートルもかなり強敵でした。それは認めましょう。ただ、俺もこの剣の能力を最大限に発揮できるほどのレベルには到達していないのです。」「そうなのか……。ならばあの剣の力を引き出すことが出来れば……。あの魔物も倒すことが出来るというわけか……。よし……。わかった。ならあの剣について私が知っていることを全て話そう。だから頼む。どうか……この世界を救ってくれないか?そしてあの化け物を倒してくれ!」
「うーん……。正直その話は聞きたいですけどね……。そのグリーンタートルって奴もまだ生きているみたいだし、今は俺達はこの辺りの調査をしている途中なんですよ。この辺りを調査してからでも遅くはないでしょう?だから、グリーンタートルについてはその後ということで……。」
「お、おぉ……。それもそうだな……。すまない。お前にはお前の予定もあるだろうにな……。それにお前が倒してしまえば早いと思ったのだが、まだ倒せないということもわかった。お前が倒せるまで待つことにしよう……。それじゃこの辺をもう少し調べるとするか。お前の手伝いをするぞ?」
「いえ、一人で十分ですよ。それに俺の本来の役目は、ここに調査をしにきたのですから……。それじゃちょっと俺は行きます。この近くに他の生物がいないかどうか探してみようと思っているので……。何か見つけたら連絡するのでお願いします。あと……。」
「わ、わかった……。」
「もし何か異変を感じたり危険を感じ取ったりしたらすぐに向かってください。絶対に危険な行動は避けてくださいよ。いいですね。約束できますか?」
「わ、分かった……。」
俺は念のために竜族に注意をしたがそれでも竜族の方から心配そうな表情は消えなかったのだった。そして俺は竜族に軽く会釈をしてからこの湖を調べようと歩き始めた。だが……その時……湖のほうで爆発音が響き渡り俺は驚いてその場所に向かった。
そしてその場所では巨大なドラゴンと戦っている竜族の姿があったのだった。
(なんでだ!?どうしてあの竜族の女がいるんだよ!?あいつらは仲間同士じゃなかったのか!?しかも、もう一人も見覚えのある顔だな……。リリアムと一緒の時に戦っていた……アルフリード……だっけ?でも、確かリリムの方も聖女が仲間になっていたんじゃなかったっけ?それともあれは嘘の情報だったのか?でもそれならなぜ二人は敵対しているんだ?)
「くっ!流石に二人を同時に相手にするのはきついですね……。リリイ!リリスは大丈夫か?リリスに援護魔法を!」
「はっ!はい!任せてください!!」
そう言うとリリイは、すぐにリリスの元へ移動をして魔法を唱えた。その補助を受けたリリスはすぐに戦闘に復帰したのだった。
「ふむ……。なかなか良い連携ですね……。私の仲間達をあっさり退けるほどの力を持っているのに、まだまだ余裕そうに見えましたから油断していましたが……これでは私も手加減する必要はないということですね。リリアは私のサポートを!リリアは隙があれば攻撃を仕掛けるように!そして、アルフィーさん。私達の目的を邪魔するというのであればここで倒してしまいましょう。私達は私達の仕事をすればいいだけですから。ではいきますよ。はぁぁぁぁぁぁ!!!」
その掛け声と共に竜族の女性は、先ほどまでの速度と威力が数倍に膨れ上がった攻撃を開始したのである。そしてそんな攻撃を竜族の男性も同じように繰り広げていったのであった……。
「ちぃ!なんていう攻撃をしてくるんですか!でもそんな攻撃じゃ僕は止めれませんよ。『神速』!からのぉぉ!!喰らえぇ!!!この一撃で決めさせてもらうぞ!!」
そしてその攻撃をなんとか回避していた男性のスピードはさらに加速していったのだった。だがその動きにも竜族の女性はついてきていたのである。
「ちぃぃ!さっきの僕の攻撃を回避してすぐにこんな反撃を繰り出してくるとは……中々やりにくい人ですね……。」
そしてその竜族の男性は一旦大きく後ろへと下がった。だがすぐに竜族の女性の鋭い蹴りによって吹っ飛ばされてしまったのだった。そして地面に倒れたその男性に追い打ちをかけようとすると、その横からもう一人の女性が攻撃を仕掛けていたのだった。その攻撃を受けきろうとした瞬間にまたも竜族の女性は吹き飛ばされてしまうのである。だが……すぐに体制を立て直してまた攻撃を仕掛けていた。そして竜族の女性は何度も同じ場所に攻撃を仕掛けていたが……その攻撃が全て避けられてしまっていたのである。そして竜族の女性は再びその男性の方を向いた瞬間……竜族の女性の腕を掴み、そのまま地面に向かって思いっきり投げ飛ばしたのである。竜族の女性はその衝撃を逃がすことが出来ず……まともにダメージを受けていたのだった。そして、その竜族の女性が動かなくなる前に男性が近づきそして……その剣を振り下ろしたのだった。だが、竜族の女性はなんとか剣でその攻撃を防いだが……そのあまりの衝撃に、その剣は折れ……そして腕からはかなりの出血をしていた。だが……竜族の女性の目はまだ死んでいなかったのである。
「へぇ……この僕にここまでダメージを与えることができるとは……。本当に恐ろしい相手だよ。君達は……。でも……残念ながら時間切れのようだね……。どうやら……援軍が来たらしい……。今回はこれで引くことにするよ……。まぁ、いずれまた会う機会があると思うからその時までに対策を練っておくことだね。じゃあ……今度こそおさらばです!では失礼!」
「くっ!待て!逃げるな!」
そう言い残して……竜族の男とその女性と竜族の子供と思われる女性はその場から消えたのである。
そして残された竜族の女性はそのまま気絶してしまった。そしてその様子を確認した俺がその場に現れる。そしてその倒れている女性に近づいていく。すると……リリイとリアリス、それに竜族の子供達が現れた。
「この人達が……今回の異変に関係がありそうですね……。もしかしたらこの森に住んでいる魔獣を暴れさせている犯人なのかもしれません……。でもその割には……かなり疲弊していますね……。」
「うーん……。確かに……。でも……なんで竜族の方も怪我をしているんだろう?魔獣にでも襲われたんでしょうか?それに……この人が着ている服……。これは魔獣の素材でできているみたいですね……。でも……あの魔獣にはそんな力はないはずなんだけど……。でもこの人は……この辺りにしかいないはずの魔物に襲われてるみたいです……。」
「そうなの?でもこの辺りにいるようなレベルの魔物ではないはずだよね……。でもこの感じだと、多分だけどこの子達は関係ないかもしれない。でも一応聞いてみるけど……。」
俺は少し警戒しながらもその竜族の女性に話しかける。
「おい……。お前……。起きろ!」
俺は意識がないであろうその人に容赦なく大きな声を浴びせる。そしてその大声でやっと目を覚ましたようだった。
「くっ!い、今のは!?」
そして俺はこの人の顔を見て驚いたのである。それは俺が倒したグリーンタートルと同じ顔をした竜族がそこに立っていたからである。
(え!?ど、どういうことだ?グリーンタートルと全く同じような姿をした竜族?えっと……。ちょっと冷静になれ俺……。グリーンタートルは確か緑色の肌をした甲羅を持つカメのような見た目で……。で、こいつは……。この女は……。えっと……緑の髪をしていて……。えっと……あれ?グリーンタートルの時の記憶が曖昧になっているのか?)
俺が目の前に立っている女の特徴を覚えていなかったことに俺は戸惑っていたのであった……。だが……次の瞬間……俺はあることを思い出したのだ……。
「あ、あんた……もしかしてあの時に俺の剣で首を斬り落とした女か!?どうしてこんなところにいるんだよ!?そしてその腕の傷……なんなんだよ?」
俺は動揺しながらもその女に声をかけると、彼女は自分の体に何が起きたのか把握できていない様子だった。そして俺の声を聞き……周りに俺以外の人間がいるのを確認して慌てている様子が伺えた。そして……彼女は俺達の質問に対して答え始める。
「え、えっと……。そ、その前に聞きたいことがあります……。も、もしかしてあなた様はこの辺りを荒らし回っていた化け物を倒されたのですか?」
「あぁ……。それがどうかしたのか?」
「ほ、本当なのか……。ということは、もう私は解放されるということか……。良かった……。この世界の脅威が一つ消え去るのか……。それならば……。それでは……。わ、私を殺してくれないか?この化け物の力の所為で……。私の心は壊れかけていた……。このままではこの世界に悪影響を及ぼす……。」
その女の言葉を聞いてリリスは激怒していた。その女を睨みつけながら怒りをぶつけたのである。
「ふ、ふざけないでください!!あなたのやった行為は許されることではありません!!それなのに命を助けてほしいだなんて都合が良すぎますよ!!」
リリスはそう言い放つと、リリイがその女を宥める。だが、それでもリリイの怒りが収まることはなかった。
「り、リリス……。落ちついて……。」
「わ、私だって怒ってますよ……。でも、その人……死を望んでいるんですよ?そんなのおかしいじゃないですか!?」
リリスはリリイに説得されるが、それでもリリスの表情は優れなかったのである。そして……リリアがリリスの前に移動してリリスの頭を撫でていた。
「大丈夫……。落ち着いて……。でもこの人も可哀想……。今までずっと苦しんでいた。きっと誰かに助けて欲しかったんだと思う。」
「リ、リリア姉さま……。ごめんなさい……。でも……。私には何もできない……。でも、せめて一緒にいてあげたい……。」
リリイは悲し気な表情をしながらリリスを見つめる。リリイの気持ちはよくわかる。なぜならリリイはリリスを実の妹のように思っているから。
「そうだね……。せめて……。せめて側にいさせてあげようか……。」
リリイも悲しみのこもった目をしてリリスに語り掛けている。リリスはリリイの提案に黙ってコクりと小さく頭を下げていた。
「ねぇ……アルフリード……。私達にあなたを助けることはできない……。あなたがこれから生きるために私達に協力して欲しいの……。」
「協力……だと?一体何をさせるつもりなんだ?まさか私に復讐でもするつもりか!?そんなものは必要ない!!早く殺してくれ……。これ以上苦しい思いをしたくないんだ……。頼む……殺してくれ……。」
その竜族の女性は目に涙を浮かべながら必死に懇願してきたのである。
「そんなことはしない……。でも……。」
だが……そこで言葉が詰まる。俺にはどうしてもその竜族の女性の姿がグリーンタートルの最期の姿と一致してしまい、その女性を殺してしまうことができなかった。だが、ここで見逃せばこの女性がこの先もっと恐ろしい行動を起こしかねないことも理解している。
だが……この女性を殺したくはないが生かすわけにもいかない……。そんな葛藤を繰り返している間にリリスは覚悟を決めたようだ。
「わかりました……。そこまで言うのであれば……。仕方ありません……。なら……私が……。私達が終わらせましょう……。この女性の命を!!」
「やめてくれぇぇ!!」
だがその言葉を聞いていたリシアも俺と同じように悩んでいたようだ。だが……ここで躊躇してしまえば犠牲者が出てしまうと思ったのだろう。だからと言って無抵抗の女性を殺すなんて真似をするなんて許せるものではなかった。だから……俺とリシアは決断を下したのである。俺はすぐに刀を抜き、その女性の首を切断した。そして俺は女性の遺体に近づく。
(うぅ……気分が悪い……。吐き気がするぜ……ちくしょう!)
だが俺よりもリリスの方がより一層ショックを受けてしまったようだった。俺とリシアはその遺体の前で膝を落として手を合わせて祈っていたのである。
(俺にこんな綺麗事を言える権利はない……。でも……俺にできる償いだと思ってやっておかなければ……。)
俺はこの女性が安らかに眠れるように祈りを捧げていた。
「ありがとう……。こんな酷い姿の私の為に手を合わせてくれて……。でもこれでやっと……。この世界で死ぬことができて嬉しいです……。本当に……。」
その女は最後に優しい笑顔を見せてその瞳を閉じる。だが、その瞬間に……その女性は急に苦しみだし再び暴れ始めたのである。俺はその女性が息を引き取る前に『固有能力』を与えたはずだった。それなのになぜまだ生きているのかわからない。しかもこの女性の力はどんどん強まっているような感覚を覚える。その女性はまるでグリーンタートルやブルータートルと同様に、甲羅から棘を生やしたような見た目に変化していたのであった。
「なっ!?どうなってやがる?確かに殺したはずなのに……生きてやがる……。そして力がどんどん強くなっているように感じる。どうやら……グリーンタートルの時と同じ感じのようですね……。この女性は完全に操られている。そういえばあの男……何か変な術を使ってたな……。あれが原因なのか?とにかく……この女性を倒すしかないってことですね……。」
「あぁ……。でもさっきの感じだと……俺とアルシアの攻撃が通用していなかった……。それにグリーンタートルを倒した時の攻撃も……。多分だけど……。こいつの再生能力を遥かに超える破壊力のある攻撃じゃないと倒すことができないんじゃないか?それに、あの竜族の女は死んでしまったはずだろ?だとしたらこの女には俺が与えたこの女を拘束しておくための魔力を込めたアクセサリーしか効力を持たないはずだろ?」
「え?そ、そうなんですか?じゃあなんで……。」
「わからん……。とりあえず今はこの女に勝たないことには何も始まらないぞ?」
「そ、そうですよね……。わかりました!まずは相手の情報を確認しておきます!私は今この人を拘束するために使えるものを探します!」「了解!俺達は俺達の仕事をするとするか!」
俺はそういうとグリーンタートルが使っていた『土魔法・ロックウォール!』を発動し目の前にある大きな石の壁を作り出したのだ。
そしてリリスは俺の作った壁に隠れながら『固有能力』の一つである空間収納ボックスの中をあさっていたのだった。その間に俺とアルフリードは武器を構え直し戦いの準備をしていた。
「ふむ……。やはりこの女には普通の剣技は効かないみたいですね……。」
俺はグリーンタートルの時のように剣を振りかざしたが、甲羅に当たった途端に剣が弾き返されてしまったのを見て、剣が効かなかったことを察したのだった。そして俺は剣を捨てると拳で戦うことに決めたのだった。
「はぁああああ!!!」
「ぐぎゃぁあああ!!」
そして、俺の一撃をもろに受けた女は甲高い悲鳴を上げている。その様子を確認したリリスは空間からあるものを取り出したのである。
「お待たせしました!これはグリーンタートルの体から出た針金みたいな糸を束ねて輪にしたようなものを、さらに強度を高めるために魔獣の皮に巻き付けたものです!これを首のあたりに括り付ければなんとかならないかと……思って……。」
「なるほどな……ナイスアイデアだ!試してみる価値はあるかもしれないな。でも……どうやって固定する?」
俺はそういいながらも女の体に何度も拳を当てていくが、俺の攻撃を喰らい続けてもまったく怯んでいない様子を見て少し焦りを感じる。そのせいでなかなかうまくいくことができなかった。
(やっぱり硬いな……。これならどうだ!!……ん?なんだ……?)
「うぉおおりぁあ!!!」
俺は大きく振りかぶり渾身の力を込めて殴りつけたのだが、その瞬間……突然俺の体が宙に浮き、俺の意識が遠くなっていく……。そして次の瞬間……目の前に緑色の光が広がったのであった。
リリスが出した緑の鎖はグリーンタートルの時に使ったものだったが、今回使うのは初めてだったためかあまり上手く扱えなかったので、俺が念のために用意をしておいた頑丈で太い木の杭を、女を拘束できるように改造したものだったのである。その効果はすぐに表れたようで、女を拘束することには成功したが、俺はそのまま気絶してしまったのである。だがその時……リリスはグリーンタートルを拘束できたのと似たような状態になっていなければいいがと不安になり急いで女の元へと向かっていた。そして……案の定、女は自分の体を激しく締め付けられているにもかかわらず平然と立ち尽くしている様子だった。
「え!?……こ、こっちはもう効果がなくなってますよ!?どういうことですか!?」
その光景を目にして驚き戸惑っていると……リシアが声をかけてきたのである。
「恐らくだけど……。アースさんの力では、完全に倒すことはできないけど動きを鈍くしたり、力を弱体化させることはできるんじゃないのかな……と思うんだけど……どうかな?」
リシアは俺が気を失ったことに驚いているのか……少し慌てていたが、リリスに冷静に説明してあげると、その言葉を聞いていたリリスはリシアの言葉が正しいことを理解し……大きく目を見開いて驚愕している。
「ま、まさか……それでは……。」
「うん。きっと……。そのグリーンタートルの力の根源を断つには……。私達全員で協力する必要があるんだと思う……。」
「私達で協力すれば……。って……そんなことはできません!!私達がやらないと意味がないじゃないですか!!」
リリスは大きな声で叫ぶがリシアはリリスの手を取り真剣な表情をしながら語り掛ける。
「リリス。でも、ここで私達がこの女性の相手をしなかったら、リシア様の言う通りきっとリシア姉さまが言っていたように、この女性がまたどこかの町で同じようなことを起こしてしまうと思います。それは絶対に防がなくてはいけないことだと思う。」
「で、でも……この女性は操られていて自我がなくなっているのよ!?それにリリアも……。そんな相手にどうして戦えるっていうの!?」
「でも、この女性にも大切な人や仲間がいたはず……。それに……。この女性はずっと苦しんでいたんだよ。誰かに救いを求めていたのに……その相手を殺してまで生き長らえようとするなんて間違っていると私は思うの……。」
「そんなのわからないじゃない!!本当はこの女性も心の奥底では殺して欲しいなんて思ってないかもしれ……」
「それでも!この女性が救われるためにはそれしかないはず!もしこの女性がリリイちゃんや私を傷付けるつもりなら私が止めればいい!リリスはこの人を傷つけたくないんでしょ?ならこの女性をこれ以上苦しめられないように終わらせよう!!」
「うっ……わ、わかったわ……。それじゃあリシア姉様にも協力して貰いましょう!それで、この女性をどうするつもりなの?まさかこのままここに放置していくわけにもいかないでしょ?」
リリスはその話を聞いて納得してくれたが、リシアのことは諦めていなかったようだ。だが……そこで俺とアルフリードがいつの間にか消えていることに気付き周囲を見渡していた。だがリシアが答えを出す前にアルフは姿を消しており、俺とアルフリードだけがこの森の中に取り残されてしまったのである。
そしてアルフリトがいなくなったと思ったら今度は急に空に光の亀裂が入ったのだった。
「ん?何が起こっているのでしょうか?」
俺はアルフリードの言うように、空にいきなり現れた光を見て……嫌な予感を感じずにはいられなかった。すると……上空に突然巨大なドラゴンが出現したのである。
そのドラコンの姿を見た瞬間にリアリスの体が激しく震え始めた。
(あれは……一体……。この感じだとただ者ではないということはわかります……。)
「はぁはぁ……。な、なんで……。あいつがいるのよ……。」
俺は急に怯え始めたリリスを見て、その視線を追うとそこには巨大な翼竜の背中に乗る二人の男女の姿を目撃する。その姿を見てすぐにその二人が誰なのかわかってしまった。俺はその二人の顔を見ると、どうしても思い出してしまうのだ。
(なっ!?嘘だろ……。なんであんな場所に……。)
だが、アルフリードもその二人を見るなり俺と同じように驚いた表情をしていた。
「リリス……もしかしてあの人達を知っているのかい?」
「し、知っているというか……。私の両親だった人たちです……。」
「え!?そ、それって……。」
「えぇ……。リリスの姉夫婦と弟だよ……。な、なにをしているの?なにが目的なのか知らないけど、リシアを狙ってきたの?あの子はまだあの男に操られているっていうのに……どうしてあの男を……。あの男が……お父さんとお母さんを……。リシアの大事な人を……。リ、リリス……。」「はぁはぁ……。そ、そうなんですか……。そ、それよりリリス落ち着いて下さい。大丈夫ですよ。リシアにはリリスが付いているんですから。」
「そうだけど……。」
「それよりも……。この場にいる皆で協力してなんとかしないといけませんね……。リシアは今頃一人でこの女と戦っていることでしょう……。それにしても……なぜ……このタイミングで……。もしかするとこの森に何かあったから出てきたのかも……。とにかくまずは私達だけでも……。」
俺はアルフがリリスのことを必死に落ち着かせようとしている姿を確認すると、俺はこの場の全員に声をかける。
「よし!みんな!ここはまずこの女をどうにかしないといけない!!グリーンタートルの時にやった方法を試すぞ!!とりあえず……グリーンタートルの時は、魔核が取り出されないまま拘束し続けていたはずだ!俺達はグリーンタートルの時にした方法と同じことをやって女を弱らせ続ける!!リリスとリシアはその間に女の体を何とか拘束してくれ!!そして俺達はその間……全力で防御を固めて耐え抜くぞ!!」
「え、アース様はどちらに行かれるのですか?まだ目が覚めないようでしたらリシア姉さまを一人にしては行けません!」
俺はそういうとリリスに腕を引っ張られる。俺は自分の体がふわりと浮かぶ感覚を覚えるとリリスと二人で空中に放り出されたような状態だった。その時にリシアの方へと目を向けると……そこには見たこともない緑色の光が広がっていて……一瞬だが……そこに……アルフとリリスの姿が見えていたのであった。
(な、なんだよこれ……。どういうことだ……!?いや……そんなことは後回しだな。それよりも……この状況……。なんとかしないければ……俺だけじゃ……。くっ……やっぱり……。この女の魔力の強さ……。桁違いだな……。リリィがいなかったら俺は……。リリスもいない……。くぅ……。俺にはやっぱり……。リリアが……リシアがいないとダメなんだ……。そうだ……。俺の本当の力は……リリアと一緒だから……。なら、やるしかない!!)
そして、リリスと一緒に落ちていく中で、俺の中でなにかが目覚めたかのように意識を取り戻していく。そして俺の中にはリリスとの絆が強く結ばれていくのを感じたのであった。その瞬間、俺の頭の中にリリスの思いが流れ込んでくる。
【リリスの視点】
「アースさん!!アースさん!!!お願い!!目を開けて!!」
私は泣き叫びながら何度もアースさんに呼びかけていると……アースさんはうっすら目を開ける。
『うぐ……。は、早くこの拘束を解くぞ!!』
「はい!!……ん?アースさん……その声は……。」
私はその声を聞いてアースさんが意識を取り戻したことが嬉しくて涙を流したが、次の瞬間、なぜか頭に響き渡ってきた聞いたことのないはずの女性の声に疑問を感じていた。
『おいリリス!!ぼーっとしている場合じゃないぞ!?さっきよりも体が重い……。』
その言葉を聞いてすぐに周りを確認してみると、グリーンタートルの時のように緑の鎖がグリーンタートルの甲羅の部分に大量に絡まっていたのだが……グリーンタートルのときとは違いグリーンタートルは全く動き出す様子がなかったのである。その理由を考えると……この女性は私達に何もできないまま封印されているということに気が付いたのだった。
『な、なんだよこれは!?この重さ……。こ、このままだと俺が押し潰される!?は、速く外れないかな……。でも俺の力はこんなものなのか……くそ……どうすればいいんだよ……リリス!』
私もどうすることもできなかったが、その声は悲痛なものに感じ、そしてこの人は絶対に死なせたくないと思い始める。そこで……あることを思いついたのである。
「えっと……じゃあ私に任せてもらえますか?」
私が恐る恐るそう尋ねると、私の頭の中のその人が返事をしてくれた。
『ああ……。じゃあ……頼んだぞ?』
その言葉を聞いた私は心の中で喜びを感じてしまう。だが私はすぐに頭を振って、その人の期待に応えるために行動を起こすことにする。
「うん。」
それから私は右手をかざすと手の中に一つの大きな槍が出現した。
『リリス……お前のそれはいったい……。』
「わからない……。だけど……今はこれが精一杯みたい。これでどうにかなると思う……。後は……任せたよ……。」
その瞬間、目の前が光輝き始め私はその光に呑み込まれてしまい、そしてその女性の姿と……私のよく知る男の人との会話を聞くことになる。
「はぁはぁ……。アース!!もうちょっと我慢して!!あともう少しだけ!!今から助けるよ!!」
(あれ?リシア……ちゃん?それにアース……も……。どうして……ここに……。それに……。私は……。あれ?)
「わ、わかった……。で、でも……リリアはどこに行った?俺の側にいたはずなのに……。リリア?どこに行った?まさかリリアも操られて……。」
私は何も見えない暗闇の中でその二人の話しをただ黙って聞いているしかなかった。その二人がどんな話をしているかも聞こえない状態でただ二人の会話だけが頭に入ってくる。その二人が何を話しているのかわからないけど、それでも二人の力になれないのはとても辛かった。でも……。私が二人の邪魔をしてはいけない。その気持ちでなんとか心を奮い立たせていた。
「リシア!!そっちにリシアがいるのか!?俺にも教えてくれ!リシア!!頼む……返事をしてくれ……。」
その時、私のすぐ側で誰かの声が聞こえる。私がすぐに返事をしたくてもなぜかうまく話せない。
「はいはい。少し待ってね……。」
リシアがそんなことを言っている。私が話そうとしても上手く話せない状況なので……この二人を信じるしか他に道はなかった。そして……リシアは、アースと思念で会話を始めた。
「はぁはぁ……。アース。多分、大丈夫だと思うけど……。そっちに行っても平気なの?」
「リシア?俺は問題ないが……。それより……その前にリリアが見当たらない。もしかしたら近くにはいないのかもしれない……。」
その二人の様子を私は遠くから眺めている気分で……見ていることしかできずにいた。そして、二人はその暗闇の中で会話を続けていく。そして……突然私のすぐ側からリリスが現れたのである。リリスは急に現れたため私と同じように驚いており、私を見てからリシアの方を見るなり……また驚くような顔をしていたのだ。
「り、リリス?ど、どうして?」
その質問は……私も聞きたいと思ったのであった。
(どうして二人が同じ空間にいるのかが不思議だよ……本当に不思議な感覚だよね。それに私の知らない人がいるし……この女の人だよね?私の両親の仇は……。なんか私のことを知っているようだし、この人に操られているということはないはずだよね?だったら一体何者なのかしら?)
そして、リシアは私の方を見ながら私の考えを察したのか説明をしてくれる。
「リリス。とりあえずこの女の人の拘束を解くね?リリスはこの女の人から逃げてきたのでしょう?とりあえず……アースの所に戻ろう?」
私は一瞬、リシアが何のことを言っているのかが理解出来なかったが、すぐにグリーンタートルのことだと思い至りすぐにその通りだと答える。
「そっか。とりあえずこの女の人も解放してから色々と話を聞きましょう。アースは心配だけど……大丈夫だろうし、この人達と一緒に行動するから、まずは……グリーンタートルの所に行きましょうか。」
リシアはリリスの手を取るとそう言った。私はリシアの行動の意味がわからず戸惑っていると、リシアがすぐに行動に移った。まずは女の人の方に手をかざしてなにかを唱え始めていた。
「えっと……これくらいかな?まぁいっか……。それじゃ……リリス!!お願いします!!」
リシアがそういった瞬間、リリスはその手に持っていた緑色の大きな槍を思いっきり地面に叩きつけると……リシアが拘束魔法を解除する。すると、リシアとリリスはすぐに私のところに駆けつけてきてくれたのである。そのことに驚きつつもリシアは、グリーンタートルに巻き付いているグリーンタートルを縛っていた鎖を取り外した。するとグリーンタートルの体はどんどん崩れ落ちていったのだった。そして、それと同時に私の意識は徐々に遠のいていき、最後には完全に意識を失ってしまったのである。
私は意識を失う寸前……自分の中の何かが完全に解放された気がした。そして気がつくと自分の部屋の中で寝ており、ベッドの上で目を覚ましたのであった。
俺は目を覚まして一番最初に視界に入って来た光景を見て一瞬思考停止してしまいそうになった。なぜなら……そこには、俺の体を抱きしめながら眠っている少女が俺の目の前で俺の体をしっかりと抱きかかえて、スヤスヤと可愛い顔をしながら眠っており……俺は、なぜかこの少女に見覚えがあるような……ないような感じになりながらも……俺の意識がハッキリとしてきて徐々に思い出す。
(この子……俺の『お世話役』とか言っていなかったけ……?えっと……名前は確か……。)
俺は記憶を整理しようと必死になっていた。そして……俺がこの子の『名前』を口にしようとした時にふと気がついたのである。俺は今までに一度も『この世界の人物の名前』を間違えたことなどないということを。それは俺にとっての『誇り』でもあったのである。だが……今、この子が俺の事を「アース様」と呼んでいる。それが気になった俺は改めて、その女の子をよく見ると……その女の子の顔がとても可愛らしいということに気付き、その瞬間、完全に目が覚めたのである。そして、その少女の名前を口に出してしまった。その途端、その少女は驚いた様子を見せ、目をパチクリさせていた。
「はわ!?い、いきなり何を言っているのですか?あ……も、もしかしてアースさんってやっぱりロリコンさんなのですね!?うぅ……。そ、そういう趣味がおありなら先に言ってくだされば良かったですのに……。あ、わ、私はアースさんの『従者候補の1番』の……」
「あ……あのな?君は勘違いしているよ。えっと……。君のその『役職』は……今は忘れてくれ……。今はとにかく君が無事でよかったよ。それで……ここは俺の部屋だよな?」
「うっ……そ、その……。はい……。」
彼女はなぜか頬を赤めらせていたが、俺の言葉に対して素直にうなづいてくれた。
「ありがとう。そしてごめん……。」
「えっ……アース……さま?……えっと……。なぜ謝られるのでしょうか?私はアース様が目覚められただけで嬉しいのですよ?それに……この度は私を助けてください……いえ……救ってくれたんですよね?アース様が私達の救世主だということが……わかりましたから……そ、その……私はアース様に忠誠を誓いますのでよろしくお願いいたします。」
俺がその彼女の態度の変化に疑問を感じながらも「うん。」とだけ答えておいた。そうすると彼女は満面の笑みで喜んでくれたのだ。その笑顔を見ていて何故か……昔の『ある女性達』を思い出してしまい胸が苦しくなった。俺がまだ小さい頃のことだ。その当時の俺はある理由から一人の女性達からいじめられていたのである。その女性の容姿は今の俺よりも幼く見えるほどに若く……その当時俺の住んでいた場所の近くにあった村の『小さな村のお姫様』という感じの子だった。だが、その村は……その女性の手によって壊滅させられてしまったのである。理由はよくわからないのだが……。ただ一つ言えることは、この女性は『人ではない者の力を借りた悪魔』だという事だ。
そして俺はそんな彼女を目の前にしてただ怯えるしかなかった。だが……そんな恐怖もすぐに終わることになる。その『お姉ちゃん』が俺の前に現れてからすぐに……。だがその時にその人は、幼いながらの俺にこんな言葉をかけて来てくれたのを覚えている。
「もう大丈夫だよ。貴方は私が絶対に守ってあげるから……。もう安心して……。」
(なんだろう……。今思えば俺は……その人のことが好きなんだな……。初恋だったのかもしれないな……。そして今頃は……どうなっているんだろうか……。)
「あ、あ、アース様!!その……ぼーとされていましたけど……その……わ、私をそんな目で見られても困ります!!」
「あ……いや……悪い。」
俺は少し考え込んでしまっていたようで彼女が恥ずかしそうな表情で訴えてくるまで……何も気付かずに見つめていたようである。
(って!!今……何考えていたんだよ……。こ、これじゃあ俺がまるで……その人のことが好きみたいじゃないか……。ち、違うぞ……。い、今のはただ……。)
「そ、それよりさ……君はどうしてこの世界にやって来たの?」
「わ、私もどうしてなのかわからないのです……。わ、私もその……。勇者が召喚される時に巻き込まれた一人みたいなもので……。私はその儀式の時に、他の人とは違って……『聖剣』に選ばれたんです……。その聖剣が光輝いたと思ったら私の手にいつの間にか……。そして私は気づいたらこの世界にいた……そんな状態で……。」
その話を聞いた俺は心底驚くしかなかった。なぜならその聖剣というのはリリスが持っているはずの武器であり、リシアの話では『勇者の剣』のはずなのだが……なぜか別の人が所持していたようなのだ。その話を彼女も理解したのか少し動揺した顔をしていたがすぐに冷静になり俺の質問に対して丁寧に教えてくれた。まずはこの世界についてから説明してくれたのである。
俺はこの世界を『レイガスト王国・アルフヘイム大陸・アウルゲルミル帝国』と呼ぶ国であること、その国は4つの大陸に分かれていて、『アースティア』・『シルキーナ島』・『エルステリア諸島』があり『シルフィード海』『シルフィー山脈』に囲まれるようにして存在しており、リシアはそのうちの一つの『シルキーナ』の王族の血筋の人だと教えてくれる。そして俺は、俺の知る情報と照らし合わせてみるが特に変わった部分はなく、俺の記憶は正しいものだと確信することが出来た。次に『聖なる武具シリーズ』についても教えてもらった。
この世界で確認されている武器は全て『伝説級』のものしか存在しないらしく、さらに言えばそのどれもが、特殊な能力を持つものであることを教えてもらう。リリスはその説明をする際に自分のことを「この世界で最も有名な大商人で世界一の鍛冶屋であります。その知識と腕前は世界一と言っても過言ではありません。」と説明してた後に、「その……まぁ色々と複雑な家庭事情があるから詳しくは話せないのですが……」と小声で話してくれ、俺は深く聞かないことにした。
リリスの両親には色々とお世話になっていたこともあり俺は色々と感謝の気持ちもあったのであるが……俺のことをあまり好きではなかったと思う……。そしてリリスとリシアとリリスの父親との関係も色々と複雑らしい。だからリリスの事は極力、気にしないようにすることにしたのである。
最後にこの世界のことについて色々と聞くと、リリスは色々と話してはくれるが俺が聞いたこともない単語がたくさん出て来て俺は、リリスの話が理解できなかったが、それでもこの世界は俺の世界で言うところのファンタジー世界そのものということだけは理解できたのである。そしてこのリリスの説明を聞きながら俺が一番疑問に思っていたのが『ステータス画面』のことだった。それはゲームなんかに出てくるものとは違い『俺だけの特別なもの』のような気がしており、このリリスにも見せたものの全く理解出来ないと首を傾げられたのである。その反応を見て俺のこの『能力』をこのリリスは知らなかったのだろうと判断する。そしてリリスが俺に聞いてきた内容としては「私のことはどのように説明されていましのた?」とのことだったので俺は正直に話すことにする。
「私の記憶では『従者候補の一人に聖剣を渡そうとしていてたまたま巻き込まれた人を助けただけだと伝えろ』と言われたが……。その人物のことも知らない……。そもそも君の言う聖剣とやらがどこにあるかも俺は知らんのだ。まぁ、リリスと俺とを間違えている可能性もないわけではないが……。」
「うぅ……。それでは私のこの武器が『聖なる杖』ではなくて、ただの聖剣だった場合は、私は『従者候補の1番』ではないってことになっちゃうじゃないですか!?ど、どうにかならないんですか!?アース様!!」
俺はそう言われて改めて『鑑定スキル』を発動させると、目の前に『名前』と詳細が表示されたのである。その表示されていた名前と詳細にはこう書かれていた。
(うーん……。これは……この子は……確かに……この『聖なる杖』の持ち主であるリリスの妹の可能性が高いよな……。それに……間違いないだろう……。)
俺は目の前にいる『女の子』の顔を見つめる……。すると女の子は恥ずかしい様子で頬を赤めらせながらも笑顔を見せて来るので、とりあえず頭を撫でておく。するとその子は俺に体をすり寄せてきて可愛らしい仕草をするのである。
その女の子の名前は「アルスフィール」と言うそうだ。年齢的には15歳で俺と同じ年ということが分かり少しだけ嬉しかった。身長に関しては俺の方が10センチ以上も大きいので俺が見下ろす形になるので少し不思議な気分でもある。
「ねぇ……。君はどうして……俺のこと『お兄ちゃん』と呼んでくれないんだ?一応……俺が君のお義兄さんということになるんだよね?もしかして……お、俺の事嫌いなのかな?」
俺がそう言うと女の子の表情はとても明るくなったのである。そして少しの間を置いてからその子が口を開いたのだ。
「ううん。違うよ?私はお兄ちゃん大好きだよ?えへっ♪でもね……。アース様って……『お兄ちゃん』というより……。なんていうのかな……。私にとってはやっぱりお兄様……という感覚に近いのです。なのでおに……い、おに……い……ちゃんとはちょっと言いにくいんですよ……。ごめんなさい。あっ!!別に嫌とかそういう事じゃなくて……。そのぉ……。」
「そっか……。うん。分かった……。それでいいなら俺は何も言わないよ。たださ……。その……君も『勇者』の資格を手にいれて俺の仲間になった訳だし、これからはもっと普通に接して欲しいと思っているんだけど……。駄目だろうか……。あと、敬語じゃなくても構わないから……。」
俺はそんな事を言いながら少しだけ照れ臭くなりながらそうお願いすると……アルスは満面の笑みを見せてくれるのであった。その顔はまるで天使のようにも見え、今までに見たことのない笑顔だった。そんなアルスを見ていると俺の方も自然と笑顔になってしまいお互い笑顔で見つめ合うという不思議な時間が続く。だがアルスは笑顔から急に暗い表情になり、少し悲しそうな表情を浮かべると俺に質問をして来たのである。
「お、お兄ちゃんは……。『シルフィード』に行くんです……。だ、だから……わ、私もついて行っても良いですよね?」
俺は一瞬、この子が何を意図してそんなことを言って来ているのかよく分からなかった。だが、俺はこの子に聞き返してしまうのだった。「俺に許可を求めるってことは……君は俺について来たいってことでいいんだよね?」と。その問いにアルスはコクりと無言のまま小さく首を振るのである。そして俺は少し考えてから、この子がこの世界でどういった生活をしていたかを思い出そうとする。
(あれ……おかしいな……。俺の知っている限り……確かこの子の家族は両親ともに亡くなっており、この世界にはもういないはずだ……。それに……。)
俺はそこでふとある事を思いだす。
(俺の記憶の中では……『シルフィー』はこの『レイガスト』の同盟国であり、そしてシルフィード島を治めていた王家の人間は全員死んでいるはずだったんだよな……。そして今思えば……この子の両親を殺したあの時の暗殺者達もおそらくはこの国の人間で俺が殺した連中とも繋がっていた可能性があるんだよな……。ということは……やはりシルフィも敵なのか……?)
「その……私を連れて行けばきっとお役に立てます!だって『聖剣』に選ばれた私ですし……。私はこれといった魔法も使えませんけど……。でも私って……『癒しの魔力』だけは……何故か持っているみたいで……。」
「あぁ……。うん。そうだな……。君は間違いなく『聖剣』に選ばれたんだろう。俺の知る限りでも聖剣に選ばれるのは基本的に女性と聞くから間違いないと俺も思う。それと……俺の記憶違いでなければ……。君は両親が亡くなった後は一人で暮らしていたんじゃないのか……?なんなら親戚筋と連絡をとって一緒に暮らすこともできるかもしれないが……どうするんだ……?」
俺はそんな事を問いかけるとアルスが少し驚いたような顔をしたのだがその後、真剣な眼差しで俺の顔を見上げてくるのである。
「そ、それはダメなの……。い、今の私の家はここですから。お父様も、そしてお母様もここにいます。」
アルスの答えは予想していたものであったため特に驚きはしなかった。アルスの話によると彼女の両親は生きているという話である。ただその両親というのがアルスの本当の親ではないため彼女は両親と呼ぶことに少し違和感があると寂しげに笑いながら言ってきたのである。
俺はアルスの言葉を聞くと彼女がどんな扱いを受けていたのが大体想像ができた。
(この子は奴隷として育てられていたと言っていたが……それは恐らくこの子の力を隠すためのもので実際は王族の血を引く高貴な家柄の娘が普通の人として生きて行くために、この子を人身売買の商品にしたのだと思われる。そしてこの子の両親が殺された後に、この子を保護した人がこの子を引き取り育てたのだろう。)
「アルス……。君の気持ちはよく分かるよ。だが今は無理をせずにもう少し休んで体力を戻してからにしよう。まずは自分のことをしっかりと出来るようにしないとな……。」
「う、うん。分かりました……。お、お兄ちゃん……。」
アルスの声はかなりか細く聞こえた。そして俺のことをじっと見上げる瞳を見ると、不安と悲しみの混ざった目で俺のことを見ており俺に助けを求めるように手を伸ばして来たのである。
俺はそんなアルスを見て胸が締め付けられる思いをしてしまい思わず抱き寄せてあげたのだ。俺は優しく頭を撫でてあげる。するとアルスは涙ぐんでいたのである。
(まだこんなにも幼いのにこの世界に来てしまったばかりなのに辛いことが多すぎたんだな……。この子は一体どれだけの心労を抱えていたのだろうか……。俺がしっかりしてあげないと……。それにこの子のことも守らないとな……。)
俺がアルスの髪を撫でながら心の中でそう呟いていると、アルスの体が小刻みに震えていることに気がつく。俺は慌てて離れようとするとその時にアルスはぎゅっと抱きしめてきたのだった。俺もそれに応えるように優しく包むようにしてあげ、そのまま少しの間抱っこをしてあげたのである。
俺もまさか妹が出来るなんて思っていなかったので内心とても嬉しかったのだ。俺はこの時だけは素直に喜んでもいいのではないかとも思い笑顔を見せる。するとその事に気がついて笑顔を見せてくれたアルスと目が合う。するとお互いにクスッとなり、なんだか可笑しくて2人でしばらく笑っていたのである。
こうして俺は『勇者候補』である少女とこの先ずっと一緒に暮らしていくことになる。それが『運命の導きなのか?』と疑問に感じてしまうのであるが、この時の俺はそれを考えることもなく目の前にいる小さな命の温もりを感じ続けるのであった。
『レイガスト』王国での『試練』を終えた俺たちは無事に『シルフィード』に到着することができた。ちなみに、その帰り道の途中では、リリィがまた例によって新しいスキルを身に付けたりしていた。そしてリリィの新しいスキルだが、その名は「瞬間移動」と言うそうで、これはリリィが新たに開発した「光属性魔法」の一つである「テレポート」の上位互換であるらしい。つまり「瞬間的に移動するスキル」なのだそうだが……この技を使う時は常に詠唱が必要らしく、その魔法の発動には非常に時間がかかってしまうらしい。その時間を短縮する方法も開発したいと言っていて頑張って練習を始めていたのだった。そんな事がありながらも、なんとか『シルフィード』に到着していたのである。
そして俺は今現在、『シルフィード城』の中にある俺に与えられた一室でベッドの上でくつろいでいた。というのも、今、俺はある人と面会するための準備をしているところであったからである。
コン、コン。
「失礼します。お飲み物をお持ちしました。アースさん……。大丈夫ですか?」
「あぁ……。ありがとう。うん……。準備はできているよ。入ってきてくれ……。」
俺は部屋の外から声をかけてきたのは、この城のメイドさんの一人「ニーナ」という名前の女性だ。年齢的には15歳ぐらいだと思うが……正確な年齢までは分からないし本人もよく分かっていないそうなのであえて聞くような事はしない。そして彼女は部屋に入ると扉の前にいる衛兵達に軽く頭を下げてから俺に近づいてきたのである。そして、テーブルの上にお茶の入ったティーカップを置き椅子に腰掛けて俺のことを見る。そして少し心配そうな表情で俺の顔色を見ながら口を開いた。その表情から俺は察したのである。恐らくは『試練』から帰って来たばかりで疲労が残っていると思ったんだろう。
「疲れは……抜けていないようですね……。少し横になりますか?あっ!!でも、その前にお飲みになった方が良さそうですね。ではこちらの飲みやすい物をどうぞ。」
俺はそんな優しい気遣いに感動しながら、「はい」と答えてその差し出された物を手に取るとゆっくりと口に含み喉へと流し込んだのだった。その紅茶はほんのりと甘味のある果物のような風味を感じることができ……そして後から少しだけスッキリとする後味があった。俺はこの美味しい茶の味を堪能した後に笑顔を見せ「おいしい……」とつぶやくと……その言葉を聞いた女性は少し驚いた表情をしたのだが、次の瞬間には笑顔でお辞儀をしてくれたのである。
「お気に召して良かったです。これは私がいつも飲用している『魔水薬』なんですよ。これを飲むだけで体力回復効果も期待できますし風邪を引いた時にも効くんです。お医者様に作って頂いたものなんですが……私も良く飲んでるんです。この世界にはこういったお薬がないみたいなので凄く重宝しています。あと、これを作る時は結構魔力を使いますので、魔力の補充も兼ねて飲むといいかもしれませんね。」
「そうなんだね……。魔力が尽きそうになった時には使わせてもらうことにするよ。それにしても君はすごいね……。」
(この世界の人って基本的にあまり薬草とかそういう物に頼ろうとはしていないのか……。確かに、そういった物があれば便利なんだが……。まぁ……それは俺が考えなくてもそのうち何とかしてくれる人が現れるだろう……。)
「いえ、それほどでも……。でも、この世界にもお役に立ててよかったです。あの……それよりアースさんの体調の方はいかがでしょうか?何か変わった所はございませんか?」
その問いに俺は自分の体に特に異常はない事を伝える。『試練』をこなした後の体の疲れはほとんど残っていない。この『魔の水薬』のおかげで体力が回復しているのは確かであるのだが……そのおかげというよりかは、元々俺が元々持っていた能力のお陰で、この世界に来る前の俺は相当体が鍛えられていたので体力も人並み以上に備わっていたのである。
「問題ありません……。でも……本当に助かりました。」
俺はそう言いながら『ニーナ』に視線を向ける。
「それはよかったです。でも、くれぐれも『無茶』をなさらないように……。私達はアースさんのためにこの城に残って護衛させて頂いているのですから……。私達にとってあなたを失うことは、国そのものを崩壊させることに繋がりかねない重要な方なんですから……。どうかお体には十分お気をつけ下さい。私はあなたが元気になられるまでお側に居続けさせてもらいますから。」
そんな風に真剣な目つきで見つめながら俺に話しかけてくれる彼女に俺は微笑み返していた。彼女の言う通り俺が倒れれば国が大変なことになってしまう可能性が高くなってしまう。俺もそれは十分に理解しているため無理をしすぎるような事もしないと誓っている。そのため今は体を休めながら彼女の厚意に甘えることにしたのであった。そんな事を思っていた俺に対して、彼女がさらに質問をしてきた。その事で彼女はどうやら『試練』の内容を知りたいと思っているようだと分かると俺は簡単にではあるが説明するのである。その話を真剣に聞いていた彼女は俺の説明が終わった後に少し考えて、そして口を開く。
「ふむぅ……。『大魔王 ダークネスマスターロード ルシフェル』ですか……。なるほど……『大勇者』であるアルフリードが倒されるわけですね……。しかし、アルフリードが大魔王になる前に『リリア』を倒したということは『大魔王 リリアンヌ・レイ・ルクス』は既に大神殿にいるということですね……。となると、もうこの世界に『勇者』がいないことになり、実質『勇者候補』と呼ばれる者はいないことになるわけですよね……。『聖女 セイリュウ』がいるので完全に勇者が存在していない訳ではないのでしょうけど……。それに『勇者候補』であるアルス様もまだ『勇者』ではありませんので……。うーん……。これから一体どうなっていくんでしょうかね……。そしてその先に待ち受けているものは何なんだろう……。『神』が創り出した世界とは一体どんな形になっているんでしょうねぇ……。この世界は……。それに、アルスちゃんと出会って、そして旅に出ていた時にも気になっていましたが、『光属性魔法』、『雷属性魔法』と、今までに見たこともないような強力な魔法を使っていたようですし……。この子は……ひょっとしてこの先……伝説に謳われるような存在になるかもしれないわね……。」
彼女はそう言って俺の顔を見て笑ったのであった。俺もつられて笑っていたのだ。
『光属性魔法』については彼女も詳しくは分かっていないらしいのだ。俺自身、『光属性魔法』について詳しく知ることができる機会が来た時に改めて話を聞いてみることにしよう。そして『雷属性魔法』に関しては俺も驚いてしまった。どうもこの世界でも珍しいらしく、この国の歴史上で初めて使う人物が現れたみたいで、俺も興味を持ったので教えて欲しいと言ったら、なぜかアルス本人じゃなくてアルフリードさんの方が興奮した感じで色々と熱弁してくれたのだ。正直に言っちゃえばちょっと引くレベルだったのであまり深く聞かなかったのだが、この先この世界に存在するであろう伝説の勇者の何人かはこの力を使えたのではないかという内容だった。まぁその話が真実かどうかはともかく、俺は今現在、リリィの持っている「スキル」に、新しくこの二つの魔法が追加されたことが分かり嬉しかったのである。
「アースさん……その……」
「あぁ……分かってるよ……君には助けてもらって感謝しかないから……。ありがとう……ニーナ。」
「あっ……いえ、そんな……。」
俺は少し顔を赤く染めてモジモジとしている彼女に手を差し出すと優しく握手をしてあげたのだった。すると突然ノックする音が聞こえてきてニーナは慌てふためくように扉の前に立つ。そして衛兵達が「大丈夫だよ」と伝えると彼女は「あっ……。失礼しました……。その……つい……。すみません……。」と、謝ってきたのだった。すると、部屋の扉がゆっくりと開きその向こう側にはこの城のメイド長でもある人が姿を現したのである。その姿を見て俺は少し驚いた表情を浮かべてしまった。なぜなら、その人物は俺の知る女性であり……『シルフィード』では有名な人だったからだ。
「久しいですね……。お兄さん。」
そう……彼女は以前……『暗黒魔女化事件』で戦った『暗黒騎士 ブラックウィッチナイト マリサ=スーズ』の妹なのだ。彼女は『シルフィード城』に仕えており……城の中の全ての管理を任せられている人物であると以前に聞いたことがあったので……ここに居る事自体はそこまで不思議ではないのだが……なぜここに来たのだろうか?と疑問を感じてしまったのである。彼女はニーナとは違い大人の雰囲気を持つ20歳前後の美女であるのだが、ニーナと同様に俺にとっては懐かしい相手なのだ。俺の記憶の中では……この二人は仲が良くいつも二人で楽し気に笑い合っていた。だから俺にとっても大切な人達なのである。
「あぁ……。そうだね……。久しぶりだね……。でも、どうしてここに?」
俺のその言葉を聞いた彼女は笑顔を見せる。だがすぐにニーナと同じように心配そうな表情になり口を開いた。
「実は私……お兄さんが無事に戻って来れたと知っていてもたってもいられなくなりまして……心配になりお城のメイド達を集めて捜索していたんですよ。」
「そうだったんだ……。ごめん……。俺の力が及ばないばかりに……。」
「いえいえ……。こうして帰って来て下さって私は安心しています……。本当に……。」
俺の言葉を聞いた後に、安堵の息を漏らす。それから少し間を置いた後……少し真剣な面持ちになりこちらを見つめると……口を開いて来たのである。
「その件なのですが……『試練』の内容が『暗黒騎士』が相手だと知り……私はある決意をしたんです。そしてお聞きしたいのですが……お姉さまは今どちらにいるのでしょうか?私の……大事な家族であるお姉さまが、お姉さまの魂がどこにいるのかを教えて頂きたいんです。お母様の時のような後悔は二度としたくないんです。ですから……どうかお姉さまの行方を私にお伝えください……。お願い致します。」
そう懇願してきたのだ。それ程までにこの妹さんにとってリリアが大切だということがよく分かった。彼女の想いに応えようと俺は必死に考える。リリアがどこに行ったのかは知らないが、きっとこの世界で生きているのは間違いないと思う。
「そっか……。君は……やっぱり今でもリリアの事が……。」
「えぇ……。大好きです。お姉様がいなければ私はこの世に生まれてはこなかったと思いますから……。あの時の絶望的な気持ちも、お姉様が私を助けてくれた事で救われましたから……。」
俺は彼女の言葉に何も返せなかった……。俺だって同じ気持ちなのである。俺だってもしもこの世界のリリィと出会う事がなければ俺は今頃どうなっていたのだろうか……。そんな事は考えたくもない事であった。だから……だからこそ俺は、そんな辛い状況を乗り越えて来た彼女の願いを聞き届けたいと思ったのである。そして俺の心の中は決まっており迷うことはなかった。
「そうか……。君の力になれればいいんだけど……ごめん……。分からない……。でも、多分どこかにリリアはまだ生きていると思う。ただ、リリアの居場所については……俺にも分からなくなっているんだよ……。だから……ごめん。今は……それだけしか答えられない。それに……俺に出来る限りの力になる事を誓う。約束するよ……。リリアを見つけ出して連れてくる……。だからそれまでリリアの事をよろしく頼む。俺は君達の為ならばいくらでも協力をするからね……。それに……この世界を『勇者ロイド』と共に救うって決めたし……。必ずこの国を平和にしてみせる。そのために俺に協力させてくれ……。頼む……。」
彼女は一瞬驚き、その後、微笑むような顔になると深々と頭を下げたのである。俺がそう言った時も、その言葉には何か覚悟のようなものを感じた気がした。その表情を見ただけでも彼女の真剣さが伝わってきた。俺も同じ気持ちである。そして彼女達はお互いの目をじっと見つめながら真剣な表情でしばらく動かずにいたのだ……。俺も彼女に真剣な眼差しを向けると彼女の心の中に問いかけた……。
((この世界にリリィがいるかどうか……俺も確認をする必要がある。)
)
俺は心の中で呟いていた。するとその声が届いたのかどうかは定かになっていないが、俺の言葉に応えるように彼女はゆっくりと瞼を閉じる。
「はい……。分かりました。この国の為になるのであれば私は喜んでアルスさんの協力者にならせていただきます。これからはあなた様に全てを捧げましょう……。それが私の意思であり、使命となるでしょうから……。そして、私もあなたの役に立てるように精進していきたいと考えています。これからよろしくお願い致しますね……。」
彼女は笑みを見せてくれると、再びお辞儀をしたのであった。
リリアの行方に関しては俺は本当に何の情報もなかった。この国の周辺を探し回ったのだが……リリアの姿を見つけることは出来なかったのである。そしてリリアの事を心配している二人のために協力することを決めたのだ。それにしても『暗黒騎士』という相手が誰かは予想も出来なかった。そして俺は彼女から情報を得るためにリリアの行方を知るであろう人を探す事にしたのである。まず俺は最初にリリアにこの国に呼ばれた時からずっと仕えている執事に聞くことにした。この人は俺が知る限り、いつも無表情だった。でもこの人にだけは何故か感情というものを感じる事ができたので不思議と怖くはない人物であった。
この執事にはこの城に使える人達の名前と能力について聞いているので俺の知っている範囲ではあるが……教えても問題ないだろうと考えたので、リリアの事を知っていたかどうかを聞いてみたのだ。
「……おや?アース様ではありませんか。ようこそ『シルフィード』へ……。私はここでメイド長を務めております……。以後お見知りおき下さいませ。」……とだけ言うと、軽く会釈をしてきてその場を去って行ったのだ。そのあまりにも冷めた態度と、あまり感情を感じ取れない姿には流石に驚いたが俺は気にする事なくリリィの居場所を知っていそうな人はいないかと尋ねたのである。だが彼は表情を変えることなく、首を傾げるだけであった。どうもこの人も俺と同じような感じで記憶を封じられていたらしく……俺と同じようにこの世界に来て以来……名前以外の事を思い出すことができないでいたようだ。しかし……彼については少しだけ違和感を覚えることがあった。それは、リリィに対して他の者達より思い入れがあるのではないかと思われる点があったのである。
「リリィ殿ですか……申し訳ありませんが私がこの城に仕える前からのお知り合いなのは存じております。そしてリリィ殿が、『暗黒魔女』であるということは存じておるつもりです。ですが……私自身には、その事に関する詳細までは分からないというのが正直な所ですね……。」
彼のこの返答を聞いた後に俺も正直に、この世界に来る以前のリリアとどのような関係にあった人物なのか聞いたのだ。
すると意外な答えが返ってきた。
「私にそのようなことを言われましても困ります……。確かに、リリィ様が幼い時は一緒に遊んだこともございますし……。」
そう言って思い出に浸っている様子であった。俺はそれなら話が早いと考え彼には「また来るかもしれないから待っていてほしい……」と言って立ち去ったのである。だがやはりリリアの詳しいことは何も知らなさそうだったしこれ以上話せることはなさそうだった。次に思い浮かべたのは『聖女ニーナ=ランスロット』と『聖騎士ユージリオ=デリウス=アークライド』であったが、ニーナはこの城の衛兵達によって保護されていたみたいだったので、すぐに話を聞かせてもらえると思いすぐに会いに行った。すると彼女は部屋の中にいたが一人で椅子に座ると俯き黙ったまま何も言わずにいて俺の方を見ようとはしなかったのだ。俺が話しかけようとした瞬間、突然立ち上がり口を開く
「……私はこの城に仕えさせてもらっていますが……リリアナ王女の行方をご主人様であるあなた様はお探しになられるおつもりなんでしょうか?」
と俺に言ってきたのである。俺はニーナの質問の意味を考えるよりも前に、その言葉はまるで拒絶しているような言葉に聞こえたので思わず「当たり前だ」と言いそうになるのをぐっと堪えた。
「どうして俺がその事を探らないと思っているんだい?もちろんすぐにでも捜索隊を出して見つけ出すさ!それで、ニーナはどうしてそこまで心配をしているんだい?もしかしてリリィが行方知らずになったのを君は知らないのか……?それとも……もう既にその情報を君は持っているのか……どちらなんだ?」
俺がその言葉を発すると同時にニーナは少し悲しげな顔をすると、口を開いた。
「私の知っている事実を申し上げますが……、ご安心ください。あなた様は私の命の恩人でありますのでお話ししようと思います。私は今から約二ヶ月ほど前の出来事です。リリアナ様は私達の制止を聞かずにこの城を飛び出して行ったのです。そしてリリア様の行方が分からなくなってしまいました……。」
彼女は涙をこらえながらそう言い切った後、「お願いします……リリアちゃんを助けてください……。リリアナ様がいなくなってしまった事を知り……とても……辛いのです。そして私にはもう何もできません。私はご主人様である貴方様の命令に従わせていただく事しかできないんです。ですからどうか……どうか……リリアナ様をお救いください……。」
そう言う彼女の目からは大粒の涙を流しながら懇願してきたのだ。それ程までに彼女の中にとってリリアの存在は大きいのだと知った俺は……リリアを助け出そうと決意を固め、彼女の想いに応える事にしたのである。だが……俺の心の中ではある考えが過っていたのだ。それは……もしかしたら、彼女は自分の主の事を本当は愛していないのではないかと……
「俺には分からないが……。君の主の事を好きじゃないのかと思ってしまうんだよ……。」と言うとその事を聞いた途端、彼女は驚いた表情で動揺していた。そして慌てて否定をする。
俺は……もしかしたら何かしら理由があってこの城に来たんじゃないかと考えてしまったのだ。そして、リリィも何かあったのではないかと思う。もしかしてリリアも……『勇者ロイド 』と似たような状況になって……『魔人族』達に攫われたのではないだろうか?もし……そうだとしたら……。俺はその可能性を信じ、彼女の居場所を探すべく行動をしたのだ。
(そういえば……あの時、私達がこの城に辿り着いた時、すでにリリアさんの姿がなかった気がする。そして……この国の王様も何か様子がおかしかった。一体何が起こっているんだろうか……それにリリアの事も気になっていた……。あの子は……大丈夫かな……。私と別れてからかなり経っているから、無事だといいんだけど……。あの子がこの城に居る事は分かっていたけど、今は……どうなっているかはわからない……。それにしてもこの国に何が起きているの……?)
私はそう心の中で呟くと辺りの様子を伺う。周りではこの国の人達と勇者ロイドや、リリィの部下たちが戦っており、激しい戦闘が行われていた。だけど私にはそんな光景をただ見ている事しか出来なかったのである。なぜなら私は足がすくんでしまいその場から一歩も動けなくなっていたのだ。そしてこの国の人々は、この世界を守るために戦う覚悟を持っている人たちであり、私なんかとは覚悟の重さも覚悟の度合いも違う事を改めて思い知らされたのだ。私はその事を考えながら……この世界に来る前の自分と今の自分があまりに違い過ぎていて愕然とした。この世界の平和を守るためなら、たとえ死ぬことがわかっていても……どんなに辛くてもやり遂げようと考えていた。だが……実際は、目の前で行われているこの国と『魔王軍』の戦いを見て恐怖を感じてしまっていたのだ。
「はぁ……。情けないな……私は……。この国を守りたいって……決めたはずなのに……。こんな事で怯えてしまうなんて……。」
(やっぱり怖いよ……。)
そして……私はそう心で呟きながらもなんとか立ち上がる。
(それでも、私には力がある……。だから頑張るんだ!!)
そして私は勇気を振り絞るように、震えている手をギュッと握りしめて、剣を構えるとこの戦場の中で誰よりも勇敢に立ち向かったのである……
「ハァー!!!!!」
ザシュッ!!ザッシュッ!!ザクッ! 私が剣を一振りするたびに、『聖女神 リリアンヌ』の魂が入っているはずの肉体を傷つけているはずだったのだが……この国の人々の『神の力』は強力だったようで……なかなか決定打を与えることが叶わなかった。私は一旦、この兵士達から離れて様子を窺うことにすると……一人の女の子に視線がいった。その子は可愛らしい見た目をしており、『王都近衛兵第一大隊長』であるリリィと、リリィが信頼を寄せて仕えている少女であり『暗黒騎士 アルフリード』である私の妹だった。私は妹のリリィが『神器 魔槍ブリュンヒルデ』を手にして果敢にもこの敵に立ち向かっている姿を見たのであった。彼女は『神弓 アーニャ』で遠距離攻撃をして敵を倒そうとしたがあまり効いているようには見えず……『神杖 グリュプス』で殴りつけて倒す戦法で対抗しようとしていた。
しかし相手の数が圧倒的で……苦戦していたのである。私はその様子を確認すると急いでリリィに駆け寄り加勢する事にした。そして敵の隙を突いて攻撃を与え、二人を守るように行動していく。しばらくすると、リリィが私の事に気づいて近づいてきたのである。するとリリィは、私を心配そうな顔で見つめると話しかけてきた。
「……リリア、ごめんね。まさか私が不在にしている間にここまで攻め込まれる事になるなんて……本当に申し訳ないわ。そして助けに来てくれてありがとう。」
彼女はそういうと頭を下げたのである。
「……うん。リリィ、いいの……。リリィは気にしないで。私が来なかった方がよかったかもしれないけど……。」
私がそう言うと、リリィは慌てた様子を見せたのである。
「えっ!?どうして……。もしかして私に気を使って……。」リリィは少し悲しそうにしながら私を見つめたのであった。だが私にはリリィがどうして悲しそうなのかがよくわからなかった。なので正直にこう言ったのである。
「ごめんなさい。よくわからない……。」
そう答えると、なぜかリリィは私の事をじっと見つめ始めたのだ。私はなぜそんな風にこちらの事をじっくり見て何を考えているんだろうと、不思議な気持ちになると同時に恥ずかしくなり俯いた。だが、その瞬間……リリィは何か決心を固めた表情になると、私の手を握ってきたのである。
私はいきなり手を握られて驚くが、「ど、どうしたの……?」と、そう聞くとリリィは私に笑顔で語り掛けて来た。
「私達はこの世界に生きる者達を守らなくてはいけない。例えそれがどれほど辛いことだとしても……。」リリィはそう言って私に笑いかける。
「うん……。リリィの言う通りだよ……。私だって……リリィと一緒にこの世界で生きていきたかったから……。でも……この世界には私達の知らない恐ろしい事が待っている……。だから私は……リリィのために戦いたいと願ったの。私は……あなたのためだけに生きて行きたいから……。」
私は本心を彼女に話したのである。私はリリアとして生きていた時も……ずっとリリィのそばにいたいと願っていた。リリアという存在を忘れていた時は……彼女がいないことに対して悲しみを覚えていたほどなのだ。私は……リリアとしての感情を取り戻し、リリィの事を愛しいと感じるようになった時に……もう離れられないほど彼女を想ってしまったのである。そして、私達がお互いの想いを告げた後……二人は自然に手を重ね合っていた。その事を確認するためにリリィは私の顔を見ると、彼女は優しく微笑みかけてくれたのだ。
その優しい表情を見るだけで……胸の中にあった苦しみがスゥっと消えて行く気がする。
「リリア、あなたのお陰で私は……もう迷わないと決意出来たんだと思う。そして……もう私は絶対にあなたを放さない……。あなたは私のもの……。これからは二人で支え合いながらこの世界を生きていこうね……。」
彼女はそう言いながら、私をそっと抱き寄せてくれる。
そして、お互いに愛している事を確認した後……私達は互いの顔を近づかせて唇を合わせたのである。そして……キスが終わるとリリィはとても嬉しそうにはしゃいでいたのであった。私はそんなリリィを愛おしいなと思い、彼女を見つめながら笑みを浮かべる。そして私達の幸せな時間を過ごしていた時、私はある違和感を感じ取る。なぜならば、今まで戦っていたはずのこの国の兵士達や、『魔王軍』の人たちも、私達の事を祝福してくれていたからだ。
それだけでなく、皆がリリィが無事だった事を喜んでくれていたのである。私は……その理由がわからなかったが……なんとなくわからされてしまったのである。おそらく……この国の人々はこの世界の人々を心の底から愛していた。この国の人々がこの世界を守ろうとしていたのも……きっと自分達と同じ想いを持っていたのだろう。だからこそ……私達のような異世界人であっても……温かく受け入れて守ってくれているのではないかと思えたのだった。だが、それでも……このまま『魔素』によって強化されたこの国の住民と戦い続けていても、勝ち目はなさそうだと判断した私は、リリィを連れてその場から離れようとしたのだが、その時……私とリリィは謎の女性の声を聞いていた。その声の人物は若い女性の声で……この世界を救う為に力を貸して欲しいと懇願してきたのであった。そして女性はその力について詳しく説明し始める。その内容は、その力が手に入る事の利点を説明し、私達に力を与えて、その力で世界を守って欲しいというものだった。私はその話を信用したわけではないが……リリィがどうしてもその女性が嘘つきには見えないと言って聞かなかったので、とりあえず話だけでも聞こうと思ったのだ。そしてその女性が『聖女』であると名乗った事に驚いた。
私とリリィはリリアが『聖女神 リリアント』になった経緯を知っているため驚いていたのである。だが、私にはそれよりも気になっていたことがあったので、そのことを聞いてみることにする。リリアが『勇者ロイド』の力を取り込むために、体から魂が引き離された後に、この女性はどこからか現われたような気がしていた。そして私はこの世界の人々に何かが起きているのではないか?と考え始めていたのである。すると……リリィも私と同様に、どこかからこの世界に降り立った『暗黒女神』と呼ばれる人物が現れており……しかもこの王都の近くに降り立っていると言っていたのである。
(もしかしてこの世界にいる『暗黒神リリア』と……私を操っている『神 リリアス・ナターシア』は同一人物なのかな……。だけど『暗黒女神』って……この世界には存在しない神様だし……)
そのことを考え始めると……私の頭の中はさらに混乱してしまったのであった。しかしリリィはこの女性のことを信用しても良いと考えていたらしく……彼女は私に問いかけてきた。そして、彼女は私がこの世界で生きていることを喜びながらも心配してくれた。リリィは私がいなくなったあとのことを教えてくれたのだが……リリィがいなくなってしまってから『リリア』として私が『神器 聖剣 エクセリオル』に飲み込まれたことは知っているようだが……リリアがどのような末路を遂げたのかは知らず……不安に思っていたようだった。
だが……リリアンスがこの世界に現れる少し前に……『暗黒女神 ダークネス』が現れたとリリィは言った。
(……『暗黒の女神』……『大暗黒神 リリア』は一体何の為に……この世界にやって来たの?)
リリアが『大暗黒神 リリア』となってからはこの世界に何かをしたことはなかったはず……。もしかしたらこの『暗黒神 リリア』が『魔帝』となり……何かをしようとしているのかもしれない。
そう思った私は、急いでこの場所を離れる必要があるとそう考えた。そして私とリリィはすぐにこの戦場を脱出するために行動を開始しようとしていたのだが、そこに現れた謎の男性によって邪魔をされ、逃げるのが遅くなってしまっていたのである。そして、謎の男に追い詰められた時に、私達は謎の光に包まれた。だが、それは一瞬のことであり、気が付くと私達は見たこともない場所にいたのであった。
私は周りを確認して状況を理解しようと努力してみたが、あまりにも理解不能すぎて戸惑ってしまうのであった。だが、そんな中で私の横で何かを考えていたリリィが、何かを決心すると行動を開始する。そして私に向かってこう話しかけてきたのである。
「リリア、私はあなたと一緒にいたいと思っている……。だから一緒にいてほしい。あなたがいない生活は考えられないから……お願い!」
「うん……。リリィ、私も同じ気持ちだよ……。でも、これからどうしたらいいのかな?」
私がリリィに話しかけると彼女は笑顔でこちらを振り向いて話しかけてきたのである。
「リリア……あなたとなら……私はどんな事でも乗り越えていけると思う。」
「リリィ……。」
「さぁ!リリィ様とリリアちゃん!!まずは自己紹介をしようよ!!」
私がリリィに見惚れて惚けてしまっていると突然目の前の女の子が元気よく話し掛けてきて、私に微笑んでくる。そしてその後……少女は「あっ!?申し訳ありません。私ったら……まだ名前を言ってませんでしたね……。」と言い……少し慌てていたが、その様子はまるで小動物のようで可愛らしい。そんな様子に微笑んでいると……彼女は自分の事を話し始めた。
「私の名前は『聖騎士アリスティア シルス ミルフィ ルミネ メイ』です。えへへ~。なんか私だけ長かったよね?」
私は彼女に対してどう答えれば良いかわからずにいると、なぜか彼女は私の顔を見て顔を真っ赤にしている。なぜ彼女が私の顔をみて顔が赤くなっていたのかという理由はすぐに分かった。なぜなら私は彼女の胸元を凝視していたからだ。
(この娘……大きい。それにこの服の胸のあたりから大きな膨らみが見えていてすごく……目のやり場に困る……)
そう思ってチラチラ見ていると、「あれ?あなたは……」と言われてしまったのであった。だが……私はまだこの子の事が分からない。なので質問しようとしたところ……。いきなり後ろから誰かが抱き着いて来て、その事で私の思考が完全に停止してしまう。
私は抱き着かれてびっくりしてしまい……声を出すこともできず、身体を動かすこともできなくなっていた。そして私はその相手を見ると、その相手とは私の親友の女の子だったのである。その親友の子は笑顔を見せてくれていた。そんな親友の様子にホッとしていると……さらに背後から声が聞こえてきていた。
「おい!おまえ達……いつまで俺を待たせるつもりだ。早く名前を言い始めろ……うぐっ……い、痛いじゃないか……。お前は……なんで……こんなに強く抱きしめているんだよ……。あががが……わ、わかった……わ、私の名前は……。」
私達がその人物を見ると……なんとその人は先ほど戦ったばかりの……あの少年だったのである。私達3人の美少女達に囲まれて、とても羨ましい状態である。彼は私達の目線に気が付き顔を真っ赤にして慌て始めた。
「こ、これは……違うんだ……その、君達の美しさに……見惚れてしまって……。い、いや……。俺は決して変な意味で見ていたわけではなく……。」
彼がそういうと私はなんとなくわかってしまった。
(きっとこの子も私と同じでリリィの魅力に取りつかれてしまい……リリィの事が好きになってしまったのだろう。だから、きっと私のリリィを奪おうとしたから、怒りが抑えられなくなってしまったのかもしれないね。ふふ……本当に可愛い男の子なんだね。ちょっと嫉妬深いけど、こういうのも悪くないかもね。だけど、今はリリィを助け出さないと……。リリィも……彼のことを気にかけているようだけど、今の彼にはまだ私の方が勝っているみたいだしね。リリィはもうしばらく私達の傍で待っていてもらうしかないわね。ふぅ……これでようやく、本当の再会を果たすことができるわ。だけど……この『魔族 リリアス・ナターシア』の記憶にある『暗黒女神』がこの世界で何を起こす気でいるのか気になってしまう。そして……リリィはどうしてあんな奴に騙されているのだろうか……許せないわ……。必ずリリィと……それからこの世界も救って見せるわ……。この世界の人々を絶対に助け出す為に……まずはこの世界の事をもっと調べる必要があるわね。『勇者ロイド』が持っている力を手に入れることができれば……きっと何かわかるはず……。そのためにも、この世界にいるはずの『暗黒女神 ダークネス』をどうにかしないとね。)
そして……私がリリアンナの方を向いていると、リリィに優しく話しかけられていたのであった。その様子を見ていた私と、その『聖女』である少女の二人は、なぜか心の中で激しい葛藤を起こしていた。
(うぐっ……。まぶしい……。リリィとリリアが楽しそうに話をしているだけで、なぜか心の奥底が焼けるような熱を感じてしまう。そして……リリアは私と同じなのに……。この二人には近づけてはいけないと感じさせる……。まさか……これが……。そ、そうなのか……。これが……恋なのか!?……う、嘘だろう!?だって私は今まで恋なんてしたことないし、興味もなかったのだぞ……。この私が恋をするだと?……ありえない……。)
私はそんな風に考えていたが、リリアの幸せそうな表情を見ていると、自然と口元が緩んでしまうのを感じていた。
(リリアのこの笑顔は……。リリアに恋をしているこの男のおかげなのだろうな。)
そして私は二人の邪魔にならないようにと思いその場から離れようとしたが、それを邪魔された。私の腕が何者かによって掴まれて振り向くとそこには私の親友の姿があり、私の手を掴んだのがこの親友であることを確認することができた。私は彼女に話しかけた。
「久しぶりですね……。あなたもこの世界に来ているのですか……。リリィがこの世界で無事に過ごしているということがわかり……良かった……。」
私は嬉しくて涙が出そうになっていたが、なんとか堪えると親友に問いかけてみた。すると親友は私の言葉を聞くと驚いた表情をして、そして……泣き出してしまった。そして、私の胸に飛び込んできた彼女は私を強く強く抱きしめてくれた。
「会いたかった……。ずっとあなたを探していた……。あなたのことが心配で……。心配で……心配で……夜も眠れないくらいだった……。私はリリア……あなたがいなくなった後に……あなたを探すためだけに生きてきた。だけどあなたを見つけることはできなかった……。それが今……こうして会うことが出来て、やっと安心することができたの。ありがとう……。リリア……。あなたは私の命の恩人よ……。本当にありがとう。あなたに出会えたことは私の人生最大の奇跡……。本当にあなたは最高の友達だよ……。私はあなたのおかげで、これからは『リリア』と名乗ろうと思う。私をリリアにしてくれて……。本当に感謝する。リリア……。」
そう言いながら、私の顔を見る親友の目はとても綺麗だった。その目には、私だけが写り込んでいる。
私はこの時から彼女の事を大切に思うようになっていた。そして親友が離れるとリリィがリリアに「お帰り……。リリア……」と、笑顔を見せてくれた。私はその時、この親友のことを……心の中の友人として大切にしたいと思っていた。そして私は親友に対して「ただいま……」と言って微笑んでいたのであった。そして……リリィはリリアに私を紹介してくれるのであった。
私はリリス様に話しかけた。だが……リリアが私に話しかけてきてくれているのでそちらに視線を向けてしまった。私は、リリアがこの世界に戻れた事をとても嬉しく思っていた。だから私自身も彼女と話がしたいと思ったので……彼女の方へ振り返ったが、その時に見たリリアの表情は私に衝撃を与えるものであった。
(あれは……どういうことなのだろうか……。私はなぜ……。あんな悲しそうにしているのだろうか……。私が離れている間に……いったい何があったのだろう。リリアの笑顔を見たかったのに……なぜ……こんなことになったんだ……。わからない……。なぜリリアは私と目が合うと顔を赤くして……私から顔を背けてしまうのだろう……。もしかして私が何かリリアの機嫌を損ねるような事でもしたのだろうか? いや……そんな事はないはずだ……。私は……リリアの事が大好きなんだから……。
そんなわけがない。)
そんな事を考えていると……目の前にいたリリアが急にリリアに向かって駆け出した。その行動に私達は驚いていたが、そんなことをまったく気にせずに私の親友である『聖騎士アリスティア シルス ミルフィ ルミネ メイ』の胸に飛び込み抱きしめてあげていた。
「えっ!?あ……あの……えっと……その……あの……あの……。ちょっ、ちょっと待ってください。えっ……あっ……あぅ~……。」
私はリリス様のその姿を見て……自分の胸が締め付けられるような感覚に陥ってしまった。
(うっ……。なんで私は……自分の気持ちがうまく伝えられなかったんだ……。私にとって彼女は大切な存在で……。彼女がいなかったらとっくの昔に死んでいたかもしれないんだ。彼女がいなければ私は自分の生きる目的すら見失っていただろう。彼女だけは失いたくない。この想いは……。私が彼女を愛しているという証になるはずだったのに……。私も彼女に抱擁を返したかったのに……できなかった……。私は彼女の傍に行きたいのに……なぜ足が動かないんだ……。私はどうして……。どうしてなんだよ……。なぜこんなにも……。)
私はその場で膝をつくと……涙を流しながら下を向いていた。そしてそんな私の頭上から突然聞き慣れた声が聞こえてくる。その言葉を聞いた瞬間、私の身体は震えてしまい……。私に近づいてきた親友の声に耳を傾けることもできずにいたのである。そして親友はリリス様に私を託すと私を連れてここから移動しようとしていた。だけど……親友であるリリアは私を引き留めようとしていた。そして親友である『聖女』は、親友を説得するように頼んでいる様子であった。だけど親友は首を横に振っている。その光景を見て私はさらに絶望してしまい、その場に立ち尽くすしかなかった。
私は動けず……。そのままリリアの言葉を待っていたが、私の目には……親友が私の方を振り向いてくれている姿は見えるが……なぜか親友が泣いていることに気が付いてしまい、さらに混乱していた。
(リリアが……リリィの前で……私に背中を見せているのに……。リリアが私に気が付いているはずなのに……。な、なんで……。どうして……リリアが泣くの?……どうして私の前では見せてくれていなかったのに……。なんで今頃になって……。こんな形で見せられることになるなんて……。うっ……。どうして涙が溢れ出るのだろう……。もうこれ以上は見ていられない……。お願いだ……。早く終わってほしい……。もう私には無理なのかもしれない……。)
私が涙を浮かべて立っていると……ついにその時が訪れてしまったのである。リリアから私の名前を聞かされた途端に、私の中で何かが壊れていく音が鳴り響いていた。もう我慢ができなくなって、その場から逃げ出してしまったのであった。
(私は……。もうここにいることはできない……。ごめんね……。)
そんなことを考えていると……背後から親友の気配を感じて、そして私は親友によって拘束されていたのである。
(……?どうして?どうして……?どうしてそんな顔で……私を見つめるの?ねぇ、なんで?どうしてなの?)
そして、私の瞳に写った彼女の表情は……。とても優しい笑みを浮かべていた。そして……。私に向けて、はっきりと「ありがとう」という言葉を親友が発してきたのだった。私はその言葉を理解できていなかったが……その表情を見ているだけで、私の中にあるすべての悲しみが取り除かれたかのように感じてしまっていた。
(なにを……。何を言おうとしているのかは分からない……。だけど……親友のこの表情だけで、すべてが救われたと思わせてくれる。これが彼女の本当の魅力なのだろうか。それにしてもこの笑顔が本当に素敵だと思う……。私の大好きな親友の笑顔がそこにはある。この笑顔を私は守らなければならない……。そして私はリリィと親友を救わなければならない……。この世界を救うのはこの世界で生まれた私と、そして『聖女神 リリアント』しかいないだろう。絶対にこの世界を守る!!)
俺は……リリィがこちらの方を見ながら俺の名を呼ぶのだが、リリィが何かを伝えようとしているので、その会話を聞いていてあげることにした。だが……。その内容は衝撃的なもので……。どう考えても、リリアスさんの身に良くない出来事が起こったのだと予想がついていた。だから俺は、まず最初にリリアの方に近づき「リリスさんのことを助けよう!」と言ったのだが、なぜかリリアに拒否されてしまったのであった。
そして俺はリリアの腕を掴み、リリアの事を抱きしめた。そして彼女の目を見つめると、「大丈夫!必ず君を助けるから!!」と言ってあげたのだ。その時のリリアの目を見たとき、俺はなぜか……この女性を離してはいけないと思ってしまう……。そして、なぜかこの女性がリリアではないと感じてしまっているのだ。だけど……この女性はリリアにとても似ている……。まるで姉妹のようなほどに……この二人には共通点が多すぎるのだ。だから余計に、リリアのことをこのままにしておけないと思っていた。そしてリリアはリリスさんを救ってくれる人がいるということに驚き、そして涙を目に溜めると、涙声で感謝の言葉を述べてくれたのであった。
私はリリス様に話しかけた。
私は……この世界の人たちにリリアがどれだけ優しくしてくれたかを必死に伝えたが……リリス様は私の言葉を聞くことはなかったのであった。それどころか私の話に耳を傾けてくれないリリス様は、なぜか私を睨むようにして私に言葉を投げかけてくる。その声が耳に入ってくるたびに私の心の奥底に眠らせていた『闇 暗黒竜リヴァディス』の感情がどんどん強くなってきてしまう。
(この人は一体……誰なのだろう……。私はリリス様にこんな顔をさせたくない。リリス様を悲しませたくない……。私がなんとかしなければ……。私は……私はリリアを救いたいだけなのに……。リリィ……。どうして私を邪魔するの?リリス様まで傷つけるの?そんなことしないでよ……。お願い……。お願いします。リリィ……私を導いてください……。)
そう思って私は、リリィに声をかけようと視線をリリィに向けると、親友のリリィはなぜか……私に対して怒りの目線を向けてきた。そして、私がリリィと親友になった後によく見た……『闇魔法』で作り出されたと思われる漆黒の魔力球を生み出し、それを私に向かって投げつけて来たのである。
私はリリス様に駆け寄りながら『ホーリーシールド!!』という技を発動させるが、私の意思に反して『聖女騎士団 リリアム・シルフィード』の力を宿した盾はリリィの黒い球体を弾き返せなかった。
(なんで?どうして弾かないの?リリアを悲しませる人がこの世界に存在しているから?でも……。私はリリアを助けたいだけなのに……なんで邪魔をするの?リリア……。私はただ……貴女の事が大好きだから……。それだけの理由じゃいけないんですか?私にとってこの世界にいる人間はリリアと、あとは私達を守ってくれる勇者様たちだけだと思っている。だって……私とずっと一緒にいてくれるのは……貴方なんだから……。)
私がそう思いながらも、それでもどうにかしないとと考えてしまうが……。その時に私の後ろにいる存在に気が付き振り返ると、そこにいたはずの親友はおらず、代わりにいたのは……親友と同じ髪の色と瞳を持った女性の笑顔だったのである。
「初めまして……。そしてさようならです。あなたがこれから死ぬ運命なのは変わりありませんから。安心してください。あなたのことは大切にしてあげますから。私の傍にいた方がきっといいでしょうからね。」
彼女は、その笑顔のままに私に向かって言葉を発し、私はそんな彼女を見てなぜか恐怖感を抱いてしまったのである。
(こいつは何者なのだろうか……。リリィの知り合いだろうか……。それともまさかとは思うけど……魔王の手下なんじゃ……。そうだとしたら……。私はリリアの為に戦うしかない……。ここで逃げたりしたら……。リリアはもっと苦しんでしまうだろう。なら私は……。たとえ……あの人と敵対する事になっても……。私は戦ってやるんだ!!あの人に嫌われる事になっても構わない……。リリアを……私の大切な人をこれ以上悲しませない為にも、あの人を倒してやるんだ!!)
私がそんなことを思っていると……私の足元に大きな影が生まれ……そして私の身体は地面にめり込んでいったのである。そして目の前の女性は私の頭を踏みつけて私の事を嘲笑っていた。そして私の顔のすぐ近くからその女性の声が聞こえると……私の意識は遠くなり始めていったのであった。
「ねぇ……教えてくれませんか?」
俺はリリアに、俺が今考えたリリアスを救う為の策を伝えたのだが、リリアはその案に反対のようだ。だが……俺は諦めずに説得をすると、俺の説得を聞いてくれたのか……。俺の話を聞き終えたリリアは「わかりました……。ではお願いします。私に力を貸してください……。」と俺に伝えてくる。俺は嬉しくて思わず、すぐにリリアに抱きついてキスをしていた。リリアも俺に微笑み返してくれた後、自分の唇をそっと近づけて来て……お互いを求め合うように熱い口づけを交わす。
(このリリアが……。リリアの本当の気持ちなのかもしれない……。それに……やっぱり……リリィじゃないとダメみたいだな……。リリアが……俺が愛しているリリアが帰って来てくれて嬉しいよ。だから俺はもう絶対にリリアの事を失いたくはない……。もうあんな経験をしたくない……。このリリアも本当に可愛らしいが……。リリアはやはりこの姿の方が魅力的に思える……。この子は、リリアに似ているのは容姿と雰囲気だけだ。内面的なところは……リリアとは別物のように感じられてしまう……。それにしても……。どうしてこのリリアには俺の心の中に封印されていた『大魔竜グラン』が入ってこれなかったのだろうか……。)
私は今……大魔族の一人である『邪 王リリアント』と戦っています。私の剣と、リリアントの攻撃が激しくぶつかり合っている。私は、今……この世界に生まれ落ちたときに、『聖女神 リリアント』からもらった『聖具』の一つである、白銀の輝きを持つ長剣を手にしていた。そして、その白銀に輝く刀身を……目の前の相手に向けて振り払うと、私の攻撃を避けることができずに直撃を受けて倒れてしまったのだが……。すぐに立ち上がり、私の方を睨むと私に対して何かを仕掛けようとしていたので、私はすぐさま、追撃をかけようとした時だったのだが……突如として私の周囲に光の渦が生まれる。
(これは……リリアスの使っていた技のはず……。一体……どういうことなの?)
そして光の渦が私を拘束していくと……私は動けなくなってしまう。そして、私の正面には先ほどまで私の攻撃をまともに受けていた相手が立っていたのだ。そして私の顔をみると……不気味に笑みを浮かべながら話しかけてくる。私は、なぜ……私の技が使えるのかが不思議でならない。だけど……私に考える時間を与えてくれないのか、その者は……私の胸を両手で握り潰すように掴んできたのである。そして私はその者の手を引き剥がそうとするが……。私の身体を纏っている聖なる力が反発するように……私の腕を押し返してきた。だがその者が、さらに強く握ってくると……私の肉体と精神が崩壊し始める。そしてその者は私の肉体を完全に支配することに成功する。
「ふむ……。このリリアの体はなかなかに素晴らしいものを持っているじゃないか……。俺も気に入ったぜ……。」
そう言って私の顔を見る……。私の目に映った人物は間違いなくリリアントなのだが、その中身は完全に別物のようであった。
「おぉ……良い面をしているな……。俺はお前が気に入ったぞ?どうせ……俺のものになるんだからな。だが……。俺はまだ完全にこの体を掌握出来ていない。どうすればこの肉体を支配しきれるんだ?おい……。何かわかることはねえのかよ?なぁ?」
そう言うと……私の髪の毛を掴み無理やり私の顔を引き寄せて……私にキスをしようとする。私は、何とか抵抗するが……。その者の力の方が強く……。その者に舌まで入れられてしまっていたのだ。そして私と、その者はお互いに舌を絡ませ合っていたのである。そして……私は……私の魂ごと吸い取られるような錯覚に陥ってしまう。その者と私が交わらせた唾液から魔力のようなものが私に入って来る。
(やばい!!このままだと……。このまま魔力を流し込まれ続けたら私は負けてしまう……。それだけは絶対に防がないければ……。)
そう思った私は……私はその者から離れようともがく。すると私の髪を鷲づかんでいた手に痛みが走りその手を離した。私はチャンスだと思い……即座にその場を離れようとする。しかし、その者は、私の足を掴むとその私を持ち上げて投げ飛ばしたのであった。私は地面に向かって飛ばされてしまうが、すぐに体制を立て直した私は反撃に出る。
『光聖魔法 聖雷球!』
私は聖魔法を発動させ、無数の電撃を目の前にいる者に打ち込むが……それは相手の体に触れると同時に消滅してしまう。
(この力は!?まさか……。『闇神の力』を使っている?そんなわけない……。でも、今のは間違い無く『闇魔法 闇空間』を使ったと思うんだけど……。どうして?でも、そんな事は関係無い!リリアの為……この世界に生きている人達の為に戦うって決めたんだから。)
そう思って再び私は、魔法で作り出した雷撃を打ち込もうとしたとき……私の周囲に闇の結界が張られた。そして私が発動させていた『聖雷球体』が全て消滅していってしまい私は動揺する。そんな隙を見逃さずに、その者によって……私は首を捕まれ、持ちあげられていた。
「なあ……いい加減教えろよ。俺に勝てる方法が分かるんだろうが?それとも……。その程度の実力じゃ俺様には勝てないと分かってるってか?」
そう言って……私の事を持ち上げている手が締め付けられていく……。私は苦しくなりながらも、必死にもがき……どうにかしてその者から逃げる。
(この男……やっぱりおかしい……。明らかに人間の力を超えている……。この男の本気を見たら……。多分だけど……。リリアは負けてしまう。でも、この男がリリアを殺そうと思えば……一瞬で終わるはずなのに、それをしていないということは……まだ……。でも、どうにかしないと……。私に残された手段はあと二つ……。いづれにせよ。リリアを逃がすことを優先しないといけない……。なら私がこの場でできる最善の行動をとるしかない……。)
そう思い……覚悟を決めた。私がリリアスの力を使えるのならば……。私は全力を出してリリアを助けなければいけない。
「貴方に私が殺される前に……。リリアに伝えて欲しいことがあるの……。だから……。私の話を聞いてくれる?」そう言い……リリアに視線を向けると、「リリアに伝えてくれますか?貴方は私と同じです。だから……これからは、一緒にいてください。私の事を守ってください。リリアは私にとって大事な親友だから……。私達は……ずっと一緒にいられるよね?」と言ってリリアを抱きしめていた。そして私はその言葉を伝えるために……目の前の男に向かっていったのである。
俺は……今、目の前にいるリリアに似た少女と話をしている。
そして俺の質問に対して彼女はこう答える。
(うん……。そうだね……。この子はリリアであって、リリアじゃない……。でも……リリアの心が、この子の中に入っているのなら……私がやる行動は決まっている……。)
俺は彼女に近づいていくと……。彼女は怯えてしまって……。俺が近づくたびに、どんどん後ろに下がっていくが……。とうとう壁際まで追い詰めると……彼女の両頬に手を当てて……そのまま唇を重ねる。彼女は突然の出来事に驚いてしまい、目を大きく見開いていた。
俺から口を放すと彼女は真っ赤にしたまま俯いている……。そして俺は優しく声をかける。
「ごめんなさい……。怖がらせてしまいましたか?」
俺の言葉に驚いた表情をして顔を上げてくれたのだが……。その表情が少し寂しそうなものだったのである。そんな彼女が俺は可愛いと思い……微笑んでしまうと……。今度は彼女から口づけしてくれた。俺は嬉しくて何度も何度も求め合うと……。次第にリリアも自分から求めてきて……。お互いに愛を確かめ合い……。そして俺は彼女をベットに押し倒す。そしてお互いの身体を重ねて快楽に溺れていったのであった。※……リリアは……今……俺の膝の上に頭を乗せて、寝ている状態だ。
あの後はお互いの身体を求めあって……満足するまで愛を確かめ合った後……。リリアが急に眠くなってきたと言い出したので、俺は彼女を寝室まで連れていき、そしてお互い裸のまま……俺はリリアを抱きしめて眠りについていたのである。
(うーん……。なんか違和感があるな……。リリアのはずなんだが……何かが違う気がするのはなぜだろう?)そう思った俺は、起き上がりリリアの頭を撫でてから、ベッドから出て行くと……すぐに着替え始めたのである。そして俺が着替え終わる頃に、目を覚ましていたリリアに声をかけたのだ。
「おはようございます……。よく眠れましたか?」
「おはよぅ……ございましゅ……。はい……。」
(うん……。やっぱり変だ……。口調だけじゃない。俺に対する態度とか、接してくる仕草もリリアとは思えない……。俺と出会ってからのリリアなら……。こんな恥ずかしそうな態度を取らないし、こんなに甘えてこない。それに……。俺の事を見つめている時も……まるで別人のように感じる時があるんだよな……。どうしてなんだろうか?このリリアには何か秘密が隠されているのだろうか?)俺は疑問を抱きながらも、この世界にいる間はこのリリアの傍にいてあげたいと思ったので……。
「今日から、ここに住むんですよね?」と俺が言うと……。リリア(仮)は黙って小さくうなずき……「はい……。私は、ここでしばらく暮らしながら貴方の事を色々と観察することにします。まずはその……私が使っていたという魔剣を見せてもらいましょうかね?」と言ったので、俺が剣を取りに行く。剣を持って戻って来ると……その剣を手に取って確認する。そしてその魔剣が『大魔剣グラトリアル・リリウス』であることを確認し終えた後に……リリスに念話で連絡を入れることにしたのである。すると、すぐに念話が通じたのである。
『どうしましたか?マスター?』
(あぁ……実はちょっと相談があってな……。そのリリィに聞きたいんだけど……もしかして『聖女神 聖女 リリアス』の記憶や能力がそのまま受け継がれているんじゃないか?)
俺の言葉を聞いたリリアが動揺し始めたのだ。どうやら図星のようだな。
『その様子だと、本当に受け継いでいるみたいですね……。どうします?記憶や能力が継承されてしまっていますから……。今まで通りのリリアスとして接するわけにもいきませんから……。いっそ名前を変えるとかして……新しい人格を作ってしまった方がいいんじゃないですか?そうすれば、問題は無いと思いますよ?ただ……。今のこの子にリリアスの名を与えることで、この子の中に眠っている本来のリリアが消えて無くなる可能性もあるので注意してください。あくまで可能性の話ですよ。なので、リアリス様と話し合って決めてください。』
(わかった……。またあとでリリスに相談したい事があるから、その時には念話を入れるようにする。)
それから……朝食を食べた後、二人で出かけることにした。そして街に着くとすぐに服を買いに向かったのだ。
(えっと……。確か、聖女の格好をしても、俺以外に正体を気付かれることはないはずだけど……。聖女の姿では目立つから、普通の町娘のような服を着せることにするかな。さすがに俺と一緒にいるのが……『勇者ロイド』だってことが周りに見られるのはまずいだろう。もし俺の正体がばれるようなことになれば……。大変なことになるだろうし……。リリアの事も守りにくくなるかもしれない。だから……。目立たないような服を着てもらうようにした方がいいか……。)
そう思ってリリアに何の服を着るか聞くが……。なかなか答えてくれなかったので……俺が勝手に選んだのだが……。
(これなら……。きっと大丈夫だよな……。うん。よしっ!それじゃぁ……。次は武器屋に行きますか……。確か、聖属性の魔法を付与した聖槍が売っていたはずだよな……。あれを使えば……『光の聖石』を分離させることができるかもしれないし……。それじゃぁ……行こうかな。)
そんなことを考えながら……俺はリリアの手を引いて武器屋の店に向かうのであった。そして……店内に入り……店員に話しかける。すると奥から店の主人が出てくる。俺は『光の神剣』を見せた。
「これは……。『光神剣』じゃねぇか!?あんたが持ってきたのか?」
「いやいや……違います。たまたま手に入れたんです。これを聖属性に変換してもらえますか?」
「分かった。すぐにできると思うぞ!」と言って、早速作業をしてくれたのだ。
そして作業は数分で終わった。『聖属性付与』が完了し……リリアが試してみようと思う。俺はリリアに聖剣を渡して……構えさせた後……軽く振らせてみた。その時に俺の目にとんでもないものが見えたのである。俺は思わず叫んでしまう。
「リリア……。その剣に『聖女魔法』を使うと……聖属と闇属の複合スキルが発動して……聖闇剣になってしまうんだが……大丈夫か?」
俺の言葉を聞いて驚いてしまっていた。俺はその事を伝え……慌てていたリリアをなだめてあげる。俺は改めて店主のおじさんにお礼を行って店をあとにするのだった。そして……俺が、今から向かう所を説明していくと……リリアは首を横に振る……。
(私を逃がす気なんだね……。私が貴方に迷惑をかける前に私をどこかに逃がそうと思っているのね……。)
「違うよ……。君を逃がしたりなんてしない。俺はリリアに聞いておきたいことがあるんだ。それは……どうしてリリアの身体を奪ったのかということだ。俺はその事で少し気になっていることがあるんだよ。だから……教えて欲しいんだ。俺に出来る事があれば……何でもするからさ。」俺は真剣に話していた。彼女はその事については、話してくれる。その話は衝撃的な話であった……。リリスは自分の命が長くないと悟ると……その力の全てを『闇の空間』に残したまま死んでいくことにしたらしい。なぜなら……。自分が死ねば、『闇の空間』は消滅してしまい、二度と誰も使えなくなってしまうので、自分の命が続く限り『闇の空間』を作り続けることにしたらしい。リリスの魂と『闇の空間』が融合することで、その空間が作り出されたのである。つまり……。リリスはリリアムの中に転生したのはいいものの……。この先、リリアムが魔王を倒すことが出来なければ……。この世界にいる全ての人達は死ぬしかないのである。それを彼女は分かっていたのだ。彼女はリリアムがこの世界を救うと信じていて、そしてリリアの身体を借りて復活を果たす為の儀式を行い……リリスの復活に成功したのだが……そこで彼女は絶望することになる。なんとリリアの中に残されていた魔力は僅かしか残っていなかったのである。それで彼女は焦ったのだ。この世界を救うためには……残された僅かな時間で準備をする必要があると思ったからである。彼女は考えた末に……この世界にある『聖なる物』『邪な存在』を利用して新たな儀式を行う為に行動を始めたのである。そしてその『聖なる物』として選ばれたのが『光の玉』、『闇の球』、『水の球体』、『火の玉』、『風の球体』、『土の塊』そして最後に残っていたのが『聖女の肉体』であったのだと……彼女は言う。
(まさか……そんな理由があったとは……。リリアの肉体を使った理由はなんとなく予想できた。おそらく……。この世界を破滅に導く為に、この世界の人々を皆殺しにして……。リリスを復活させようとしているのかと思っていた。だが、それは違っていて……。この世界に散らばっている『聖なる玉』を使って……。新しい『大女神 リリス』を召喚しようと思っていたのだとしたら……。もしかして……。あの時のあの女は……。俺を挑発するような態度をとっていたのか?)俺はその事実を知りながら……俺の質問の答えを待っていると……リリアが泣き始めてしまう。そしてその涙を俺に見せたくないと思ったのか……。背中を向けるとそのまま何も言わなくなってしまったのである。(リリアは……一体誰なんだ?なぜ……泣いているのだろう?)と疑問を抱きながら……リリアを見つめていたが……やがて……。彼女は涙を流しながらこちらを振り向く。
そして……。彼女の顔を見ると、そこには見覚えのある少女がいたのだ。その少女は間違いなく『神聖皇国第一皇女 リリアンヌ=ディアーコ・ヴァルセーニ』だったのだ。俺が呆然としながらその姿を見つめていると……。
「久しぶりですね……。ロイドさん。いえ……。ここでは初めましてですね。リリアスと呼んで下さいね。」と彼女は言ってくれた。俺は戸惑いながらも彼女に事情を聞くことにし、俺の部屋に移動する。俺がベッドに腰掛けると、彼女も同じ様に隣に座った。そして俺が、この世界にいるリリアについて話す。
「この子の名は『リリアス』といい、この子の中には俺の妻である『リリアンナ・リリアス』と俺が愛している女性である『リリアス』の二つの人格が存在しているのですよ。そして……その二人の人格のどちらにもリリアスと言う名前がついていて……。俺としては混乱するだけですよ。まぁ……。二人の名前を合わせ『リリアス』と名乗ってもらってもいいのですが……なんか違和感があるので……。この世界での名前は『リリア』と呼ばせて頂いてます。それにしても……。どうして……貴女がリリスの姿になっていたんですか?そのことについて……俺に詳しく説明してくれませんか?」と俺がお願いすると……「分かりました……。私が知っていることなら……なんでも教えてあげましょう。私の事を知ってもらうことですし……。私としてもその方が良いかもしれませんから……。まず、私とリリアちゃんとの関係なんですけど……元々同一人物なんですよ。私がこの身体に入ったので、今のリリアという子が出来たのです。ですから、この子の中に残っているのは……。私の魂なの……。リリアが持っている『光の女神の証』の力を使えば……私を呼び出す事が出来るけど……。そんな事をして欲しくないの……。この子の中から消えるという事は……もう二度と会うことは出来ないからね……。だから……そんなことは絶対にさせないわ……。リリスはこの子の中に残るつもりだけど……。そんな事をすれば……この子に何が起こるか分からないもの……。リリスに言われたの……。もし……私がこの子と一つになれば……永遠に生き続けられるって……。リリアがリリアムと結婚しても……。私は一緒にいれるようになるから、リリアには何も影響はないのよ。」
リリアは悲しそうな顔をしていたが、俺の服を掴みながら、「ロイド……。私……。どうしたら良いか分からなくなって……。」と涙目になりながらも必死に訴えてきたので、頭を撫でて安心させる。「心配することは無い……。リリアは俺が幸せにしてやるからさ……。大丈夫だよ。リリアが困る事を俺がするわけないだろう?」俺が優しくリリアに声をかけると……
「本当?」と俺に甘えるようにして言ってきたので俺は抱き寄せて……唇を重ねるのであった。
しばらくして……俺から離れてくれると、恥ずかしそうに微笑んでくれるリリア。
(この笑顔は……。『リリアス』に間違い無いんだろうな。本当にこの子は可愛すぎる。こんな可愛い子を他の奴に渡せる訳がない……。)
俺の心の葛藤を知らない彼女は話を続けてくれて、リリアは聖女として『勇者パーティ』に所属していたので……俺の知らない情報が聞けるのではと思っていたのだが……彼女はその時のことを殆ど忘れていた……。いや……。思い出せないと言った方が正しいのか……その話をすると、とても嫌な記憶だと言っていたので、無理強いする気にはなれずに、リリアの話だけを聞かせてもらうことにした。それから……。俺達が話を続けている時に、『神聖皇国の姫巫女 ソフィア リーシェム』と『聖剣の管理者 ミリア・ヴァンス』と名乗る人物が現れたので……。その二人とも自己紹介をしてもらい、俺達の仲間に加わってもらった。
「これから、ロイドさんと一緒であれば、この世界が平和になると思って仲間にさせて頂きますよ。」と最初に言ったのは、ソフィアであった。彼女は俺の事が好きなような発言をしていたので俺は思わずドキドキしてしまったが……。その後、俺と一緒に行動することでこの世界を救いたいとまで言い出していたので、俺は少し戸惑っていたのだ。次に名乗りを上げたのは……。『魔剣の聖女』であるミリアの方であった。
「私はこの世界の『聖剣の守り人』なのです……。『闇の世界』の脅威を食い止める為に私は戦っていました……。そしてその脅威を断ち切った後、闇の空間が広がってしまい……私が闇の空間に取り込まれてしまいそうになっていたところ……ロイドさんのスキルによって助けられたのです……。私も『聖なる者』の力を持つ貴方の力になれると思い……この世界を守るためにお力になりたいと思うのです。よろしくお願いします。」と言ってきたのだ。俺はその言葉を聞いて……。嬉しさを感じてしまっていた。だが、俺達はその前にしなければならないことがあった。それは『闇の空間』にいるであろう……。リリスの捜索であったのだが……俺の勘でしかないので、とりあえずは情報収集を優先するように皆に伝えた。
俺には『聖属性付与』により手に入れた情報と、大魔王である『マスティエル』と会話したことにより分かったことを、皆に教えていったのである。俺が得た情報を伝えていると……「え!?あの女が『大女神 リリス』だというのか?」と驚いている者達もいたが、それは仕方がないことなのだ。なんせ……あの『光の球体』の正体がリリスだったなんて思わなかったから……。でも確かに言われてみると納得はできるのだ。あの球体から溢れ出る力を感じるとリリアに似ている感じはしていたのだ。俺はリリアを見つめているとある事に気づく……。
(あ……。この子の顔が少し幼くなっている?確か……俺が初めて会った時は……。今よりもう少し大人っぽい顔つきをしていたはずなんだが……。今は少し幼いな……。)と思っていると……リリアは自分の身体の変化に気がついてくれたようだ。そして彼女は申し訳なさそうな表情で……
「多分……。リリアスとしての記憶が残っている所為なのか……。この世界に戻ってきた時の影響で……肉体も変化してしまって……本来の姿になっているのだと思います……。それにしても……どうしてロイドは私だとすぐに分かってくれたのですか?」と聞いてきたのである。
(そんなこと……聞かれても……答えられないんだよ……。リリアにそっくりだとしか言えないんだけど……。まぁ……。この子はリリアだから……。それで十分かな?)と考えていると……「俺にはわかるのですよ……。なんとなくですが……。」としか答えることができなかった。それを聞いたリリアが、「うふふ……。ありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです……。ずっと不安だったので……。本当に良かった。ロイドに出会えて……」と言いながら俺に甘えてくる。俺はその仕草を見て……。やっぱりこの子が俺の最愛の人であるリリアだと確信することができたのだった。
※…… そして俺と仲間達の話し合いが終わった後……。
俺の従姉妹であるサーシャをリリアに引き合わせていく。
俺が今までの経緯を説明すると、最初は戸惑っていたサーシャだったが……次第にリリアに対して心を開いている様子に変わっていくのがわかった。
俺と二人でいた時には見せなかったような顔を見せていたのだ。
リリアに話しかけられて……楽しそうな顔を見せてくれる。その姿を見ていて……リリアと初めて会った時の事を思い出すと、なんだか懐かしくなってしまう。
俺達が出会ったのはリリアが8歳の時であり、その時はまだ、今のサーシャくらいの年齢だったはずだから……今の彼女と比べると別人のように見えた。
(あれだけ怖がられていたリリアが、ここまで変わるとはな……。リリアに心を開いた瞬間から……急に懐いていたからな……。)
そんな事を思い出していると、突然……
「パパ~!!この子、ママみたいでかわいいね!」とサーラが大きな声で叫び出したのである。
「ああ。俺も同じことを考えていたが……その通りかもしれないぞ。」と言う俺に、今度はリリアが……「うふふ。ロイドの子供さんはとてもいいこですね。ロイドは幸せ者でしょ?こんなに良い子に育ててくれて。私もこんな子に育てたいな……。ロイドの子供を産めるなら喜んで生むよ。私……。ロイドとの子供が早く欲しいから……子供を作るために……頑張って強くなるから!そしたら……毎日、抱いてもらえるもん!!」と言って俺の胸に頭を当ててきたので…… 俺は恥ずかしくなりつつも……(いやいや……。この子の言う意味ってそういう意味だよな……。)と考え込んでしまうと……。リリアは顔を真っ赤にしながら……「私……。変なこと言った?」と尋ねてきたので……俺はリリアを抱き寄せる……。
「俺はお前の事をいつも考えているよ。俺は……お前以外の人と一生を添い遂げるつもりはないんだからさ……。」という俺の言葉にリリアは頬を赤くしながらも……笑顔になってくれたので安心したのであった。そんな俺たちの様子を見つめていた他の人達は、なぜか微笑んでいたのだが……。その理由がわかって、さらに俺は照れてしまうのであった。
※…… それからしばらくして……。リリアがサーシャの面倒を見たいと言ってくれて……。
リリアとサーシャは一緒に行動することが多くなったので、二人の仲が良くなったのは嬉しかった。
サーシャは最初こそは俺と一緒に居たがったが……リリアが一緒に遊んでくれるようになってからは……徐々に二人と一緒にいることが増えていき、最終的にはリリアにベッタリとくっつくようになっていた。
サーヤとサーシャは本当によく似ているから……。もしかしたら本当に血の繋がった姉妹のように仲良くなるのではないかと思うほどに……。二人は俺達よりも年下だが、既に俺が知らないうちに本当の家族のような雰囲気が醸し出され始めていたのであった。
俺が二人を見ながら、その様子を微笑ましく思っていると……。サーリャから、
「リリアとサヤと3人で家族になろう?」と言われてしまった。俺はいきなりの提案に戸惑っていたが…… リリアは満面の笑みを浮かべて……「そうしましょう!私がお姉ちゃんになります。サーリャの事をよろしくお願いしますね!」と言ったので、俺もその意見に賛成することにした。俺達がこの世界で生きていくことを考えるとその方が良さそうだと思ったからだ。この世界に『大聖国』があるのであれば、そこに戻らなければならないと思っていた。そして……。そこで聖女と騎士を救出できたとしても、聖女の力が必要になる可能性がある以上は、この子達のことは守らなければと考えていた。
(そうすると……。俺の従姉弟達は俺の嫁候補ということなのかな……。)
なんてことを考えている俺がいたのである。だが、俺達は……その先まで進むことはできない。なぜなら、俺は……。俺の中のリリアを取り戻すことが最大の目的だからだ。そしてリリアと共に生きていけるように……この世界を変えるつもりで動いているのだが……。
正直、どう動けば世界が変わるのかわからない状態なのだ。まず、リリアスが『闇の世界』にいるのは間違い無いだろう。問題は『大魔王 マスティエル』である。奴がどんな人物なのかは俺にもまだはっきりとは分かっていないのだ。だが、リリスの件もあるし……おそらくは『闇堕ち』しているのだろうと予測はしていた。『魔剣』を使いこなしていることは、俺には分かる。それに……。奴はリリアのことを自分の女と言ったのだ。俺としては許せない言葉であったのだ。俺がそんな気持ちを表に出さないようにしていると、リリアが心配そうな顔になっていたので、彼女の頭を撫でて、笑顔を見せるのだった。
(俺は……この子と一緒に幸せになりたいだけだ……。そのためにできることをするしかないな……。)そう心に決めたのである。
俺とサーリアがこの世界の平和を考えて活動しているのと同様に……リリアとソフィアも何かをしているようだった。『聖女リリアス・セフィア・ルクルス』と、『聖女 ミリアティアナ・ルクル=リクルス』は、この世界の為に何かしようとしているのだ。そのことに気がついた俺は……。
俺はこの世界の状況が知りたかった。俺はこの世界に何が起きていて……。なぜこうなっているのかという原因を調べていく為にも……。『聖なる石』の力を手に入れる必要があり……。『聖なる大地』の近くにあるという、その『聖なる神殿』に向かう必要があると改めて考えるようになった。だが……その場所の情報も曖昧だし……。それにリリアスのことも気にかけていたのだ。
リリアスはリリアスとしての記憶を取り戻しているから、俺がリリアではないことには気がついてるのだが……。リリアとして振舞っている時は俺と夫婦だった時の話ばかりするようになっていたのだ。
それにリリアとして振舞うときは、以前のように甘えん坊になることが多くなってしまっていた。
(この子がこんな風に変わるとは思わなかった……。俺がいない時にリリスの姿になっていることが多いからかもしれないけど……。)そんな事を考えながら苦笑いをしていたのだった。
(でも、リリアとしての時間が楽しくなってきているようだな……。それは俺も同じで……。前よりリリアを身近に感じることができるようになってきた。でもこの子の行動は時々……過激になってしまう時があるんだよな……。)と思っていると……
「ロイド様!!リリア様の事をそんなに熱い目線で見つめるのはダメですよ。いくら愛し合っていても、他の人が見ていますから。」とソフィアに指摘されてしまい、周りの仲間達に見られていたので恥ずかしくなるのだった。
(まぁ……。確かにその通りだよな……。俺もこの子に振り回されているしな……。俺も人のことを言えないな……。それにこの子もリリアスと同じ顔をしていても……別人なんだから、俺の大事な人であるリリアじゃないからな……。俺はリリアを取り戻したいだけなんだ……。俺には……リリアしかいないから……。俺の心の中で……ずっと泣いていたリリアのことだけが心配で仕方がないんだ……。もうあの時のリリアの表情が忘れられない……。あの時の悲しみに満ちたような瞳で俺を見てきた時のことを思い出してしまうと……。心が落ち着かなくなる。早く見つけ出してやりたいが……どこにいるんだろう……。それに……どうしてこの子がリリアに変身できているかもわからないが……それでも俺がこの子とリリアを重ねてしまっていることに気づいているからか……、リリアは俺をからかっている節があって……。リリアの真似をするときも結構似ているんだよね……。ちょっと困ったものだ。でも……今はそんなに悪い感情を持ってはいないのかもしれない……。)と考えながら俺がそんな事を思い出していると……リリアは突然、「うふふふ……。今日はね……。リリアお母様に教えてもらったんだ……。パパとママのお話をいっぱい聞いてたから……それで……私にお話がありますって言ってね……。私、リリアに教えてもらいました!!って言ったんだ!!」と言い出したのだ。
(う~ん……。それってもしかしたら……。この子の魂に刻まれた『記憶の一部』とかってことはないかな?この子は生まれ変わって……俺と出会う前のリリアと過ごした日々を覚えているんじゃないかと思うんだけどな……。それが『夢の世界』や……『精神界』で見せてくれる『夢の欠片』の正体じゃないかって思ってね……。この子がリリアの事をお母さんのように慕うのは……。そういうところからきているような気がしてならないんだが……。俺が知らないリリアとの楽しい思い出があったりするのだろうか……。)と不思議に思いながらも、俺はリリアに微笑みかけてあげたのであった。
それからもリリアが、サーシャにリリアが知っている昔の話をしてくれるようになったので、リリアスの話を聞いてみると……
「えへへ……。私のお父さまとお兄ちゃんはとても優しくて……。私にとてもよくしてくれたのよ……。でも、私が小さい頃に……お仕事で遠い国に行ってしまったみたいなの……。私はお父様に会いたくて会いたいって言ったことがあるんだけど……。その時、ロイドさんみたいに優しい人だったらいいな。って言ったんです……。そうするとロイドさんが現れてくれたんですよ……。」と言ってきた。
(もしかして……その事がきっかけになったのだろうか?)と考えていると…… リリアが俺の顔を見て……。「うん。リリアが『リリアと約束をしてほしいの……。リリアのことを絶対に忘れないでください。お願いします。』と頭を下げてくれて……。そうやって……ロイドがこの世界に来てくれたから……。こうしてみんなと一緒に居られるのが嬉しくて……。それにね……。リリアが私に力を貸してくれたらきっとまた会えるって……。」と言った。
その言葉を聞いた俺はリリアの手をそっと握ると、俺達の様子に気がついたリリアが嬉しそうな顔をしながら、俺に抱きついてくるのであった。俺はリリアを抱き上げ、頬擦りをしてあげてから、抱きしめるのであった。
(やっぱり俺の考え過ぎなんだろうな……。リリアが『闇の精霊王』だとしても、今この世界に存在するリリアの身体は、リリスのものなのだ……。それにリリアの記憶はリリアとサーシャに宿っている。リリアの記憶を持っているわけではないのだから……。でも……サーリャにはリリアの事を教えていないから……。俺に抱きついているリリアのことを、羨ましそうに見ているのは少し複雑な気持ちではあるけどな……。)なんてことを考えながら、俺達は旅を続けるのであった。そして……この世界に起きている変化について俺は調べていたのだ。
(この世界で『魔獣の森』と呼ばれている場所の周辺に住む人々が魔物に殺されたっていう噂は聞いていた。『魔導王国』の王族の『魔法剣士 ミリアム サーリム スーリア ミリアティアナ ルクルス』が、魔物に殺されたという情報も入っているしな……。だが、それ以上の事は分からなかったんだよな……。だが……。この世界の各地で……謎の集団が目撃されていた……。だがその謎の一団の姿を見て、人々は震え上がっていたらしいのだ。
その者たちを見ただけで、体が動かなくなってしまう者がいたという話もあるくらいで……。しかもその者達は人間ではなかったと言われている……。その正体を知る者も、あまり多くないらしいのだが……。その者が身につけている装備などから、どこかの国の部隊ではないかと予想されているそうだ。だが……どの国の所属でもないとも言われているし……、その部隊は全員同じ格好をしているわけではなく、一人ひとり姿形が違っていたらしく、さらに顔まで隠しているという奇妙な状態だったそうなのだ。
だが、一番問題なのは……その者の中には……。『闇堕ち』してしまった『魔人』もいたという事なのだ。『魔人』は理性を失うだけではなく、『闇』に取り込まれると『闇の戦士』という恐ろしい存在になってしまうと言われているので……。その者たちを目にした者は……恐怖のあまりに発狂したり……死んだ者もいたほどだと聞く……。
俺は、この世界の事を調べていくうちに、『魔族領域 ダークゾーン帝国』、『暗黒の神殿』、『魔界』『闇の領域 ダークエデント公国』『魔王の城 デビルキャッスル』、『竜の巣 ドラゴンロード』、『聖都 ホーリーパレス 聖光教会本部 大聖堂』などがある大陸の周辺の国々の事を色々と調べていった。その結果、この辺りの国々が魔王に支配されていて、この世界の人々は苦しめられているということがわかったのだ。
『神聖教国 セイクリッド・ルーセント』と呼ばれる国は、『聖騎士 ミリアム サーリヤ サーシア ルクルス』によって平和に治められていたはずだったが、数年前に起こった大きな戦いにより、現在はその力を衰退させているようだ。
この世界の中心に位置すると言われる巨大な大陸があり、そこにはこの世界を支配しようと目論む魔王がいるらしい。だが、そこに辿り着いた勇者は誰もいないという。この世界の全ての民はこの世界には『六体の大魔竜 アークマロン アルゴルアゲート オルグガリオン ザウルスアンツ デウスマスト デネブゼスト』が存在しており、それに従うしかない状況にあると書いてあった。『神域の聖女』という称号を持ち……女神であるとされているリリスは、それらの大魔竜王の復活を目論んでいると書かれていた。そして……『邪神 リリアス ディザイア メアリナス バズドリアス ダゴニス』を信仰している大魔竜王もいるようで……。それに対抗するために……各国は手を取り合い……一致団結して立ち向かうべきだと言っている記事も見つけたのだ……。
しかしこの記事の情報源が不明なのだが……。信憑性が高いと書かれていた。俺はこの記事をリリアにも見せたが、やはりこの世界に起きる異変の原因は……。
リリアは「ふぅん……。まぁ……私は気にしていないから別にいいわよ!!それにしてもリリアが生きていたのは嬉しいわね……。これでまた……家族が一緒になれるんだもの……。でも……。」と言いかけて、言葉を止めたのだった。
(なんだ?なんか……嫌な予感しかしないな……。まさか……。あの子も……。『大賢者』に転生させられているとかじゃないだろうな?でもそんな感じもしないし……。)
そんな風に考え込んでいると、リリアは俺の手を引いて……俺の顔を覗き込むようにしながら俺の顔を見ていたのだった。俺は、そんなリリアを見て、リリアの頭を撫でてあげると、「大丈夫か?何か言いたいことがあったんじゃないのか?」と聞いてみたのだった。すると……リリアは首を横に振った後、「うん……。でも今は……リリアとの旅の方が楽しそうだし……それでいいや。それよりもさ……。ロイドは……私がリリアだってことに気付いてくれたから……。だから……。もうすぐ……。お母様やサーシャや……。他の皆とも再会できるはずだよ……。」と言ってきた。俺が、「それはどういう事なのか……説明してもらってもいいかな?」と聞き返すと……、リリアは……真剣な表情になって、「う~ん……。やっぱり……。ロイドに話しておくべきだと思うんだよね……。」と言うのであった。
(この子……。もしかして俺に……『リリアの秘密』を話そうとしてくれているんだろうか……。)と俺は思いながら……
「あぁ……頼むよ。俺は君の味方だ。信じて欲しい。リリアの口から……。君とリリアとの関係を詳しく知りたいんだ……。リリアとは『精神界』で……『リリアの心の中』で何度も出会っているから……。それに俺はこの世界にいるはずもない……。『魔剣』の力でここに来ただけの存在だからね……。リリアが俺のことを知らないわけだし……。俺の方こそリリアの話を聞かせてもらえるかい?」と聞いたのだった。すると……「うん……。ありがとう……。お兄ちゃん……。リリアが言うことを信じてくれて本当にありがとう……。リリアもロイドのこと信じるよ。ロイドは……『私の知っているロイドと違うから。』」と言われてしまった。
(リリアの知る俺って……どんな俺なんだろうな……。でも……リリアが言っている俺とは違うって事は間違いなさそうだな……。この世界に来る前の記憶があるってことだろ……。それに俺のことを……。お父様と呼んでくれてるみたいだけど……。一体何者なんだ……この子は?)と思っているとリリアが口を開いた。
「私の名前は『魔道姫 アリアティエール=フォーマルハウト リリアスティーナ=フォルスフォレーゼ セリスティア』。私達の種族には特別な力があって……。リリアがこの世に生を受けると……すぐにその命を奪おうとする『悪』が現れる。それがリリアを殺そうとする理由になるの。リリアが産まれて来るまでは……。リリアを守る為に生まれたような人達がいるんだけど……。その人たちですらその敵には太刀打ちできない……。リリアが殺されると思ったその時に……お兄さんが現れたの……。そうして……。ロイドが私を助けてくれたの。」と言っていたので俺は……「俺のことは……覚えていないということなのかな?」と確認してみることにしたのだ。するとリリアは首を横に振り、悲しそうな顔になり……涙を流し始める……その涙を見てしまうと……俺は何も言えないでいたのだ。
だが……ここで泣き止ませる為に抱きしめるわけにはいかないのだ……。だから……ただじっと見つめていた……。そしてしばらくしてリリアの涙は止まる。俺は、そんなリリアの顔を見ながらも……リリアに話しかけたのだ。
「リリアはどうして……泣いていたのだい?それに……。リリアは……なんで俺のことを知っていたんだい?」と聞いてみることにする。
(俺の知っているリリスの記憶を持っているなら、なんで俺の事を知っているのか分からない……。もしかすると俺の勘違いかもしれないけどな……。でも……。『魔王の巫女姫』に狙われていたって事だよな……。しかも……。その敵の狙いはこの世界を支配するために必要だということか……。)
俺が色々と考えている間にもリリアはゆっくりとだが話し続けていた。
『リリア達一族は……魔王がこの世界に降臨するための依り代として生まれてくると言われているの……。だからリリアが生まれた時は、一族の皆が喜んだの。魔王の復活の為に、この世界に生きる全ての生き物を犠牲にするつもりでいたのに……。なのに……その計画が水の泡になってしまう。魔王を復活させようと思っていたら……。なぜか『聖騎士 ミリアム サーリヤ ササーニャ ミシア』に先を越されてしまっていた。でも……まだ時間はあるし……、このままじゃまずいと分かっていても……私達は手を出すことが出来ないでいた。その状況の中で、お兄さんの事を私は知って、ずっと助けてもらえるようにお願いしていた。そして……やっとその願いが届いたのだと思って喜んでいたのに……。』と……。
(なるほどな……。俺に会えたことで……少しは気持ち的に安心したっていう感じなんだな……。)と俺は思いながらも、この子に言っておくべき事があると思い……。「えっと……。『リリア』。その『お姉さん』と俺が会った時には、『俺はもう……この世界の人ではない』って伝えたのは……。リリアだよね?でも、この世界を救うための手助けはしたいとも思っていたんだよ。この世界の異変を解決するには……。どうしたら良いか考えた時、俺は……。リリアのことが頭に浮かんできていた。そして……俺が今ここにいるということは、多分だけど、この世界を救う為に……。『大魔王を倒す』という使命を与えられたんじゃないかなって思った。俺の想像では……。『魔王の城 デビルキャッスル』という所に『魔王の魂』が封印されていて、それを消滅させなければならないんだろうな……。そして、大魔王の力を弱らせないと……。『暗黒領域』から『邪神』達が復活して、この世界を『暗黒領域』にしようとしてしまうからね……。それで……この世界で起き始めている現象は……『暗黒領域』が作り出しているものじゃないかと考えたんだ。だから……。『暗黒領域』を消すためには、『大魔王の力を弱めることが必要だ』と予想したんだ。だから『暗黒領域 ダークゾーン帝国』、『聖都 ホーリーパレス 聖光教会本部 大聖堂』というところには……。『闇堕ち 邪神の使徒 闇の戦士たち』がいるはずだから……。それを倒して『闇堕ち 大魔竜 魔竜王』を弱体化させないと……大魔竜王を倒さないと……。全ての大魔竜王を倒したとしても……『邪神』が復活するだけだからね……。だから『暗黒の領域を浄化し、大魔竜王の力が弱体化しなくても……』。それでも大魔竜王にダメージを与えられるくらいの大ダメージを与えるしかないだろうね。つまり……。今の現状を打開するためには、全ての大陸にいる……『六体の大魔竜王』を俺の力で全て倒すか、もしくは……。俺が大魔王ルシファーを倒して、この世界を完全に平和にしてあげるか……の2択だと思う。
俺はそう思うんだ。でも俺のやろうとしていることが上手くいくかどうかは分からないからね……。だから……。君が『聖騎士 サーシャ』になって、俺のそばにいて手伝って欲しい。サーシャになってくれないか?」と俺が言うと……『リリアは、一瞬何を言われているのか分からなかった様子だったが、その後しばらく黙っていた後、何かを考えていたようで、俺の言葉を理解し始めたのだろう……。次第に驚き、戸惑いながら、目に涙を浮かべ始めていたのだ。』
「うっ……。あっ……。ぐすん……。うぅぅ……。ひく……。ぐずん……。うぇ……。ひっく……。お……お……。」
と、リリアの瞳から流れ落ちる涙が……床に滴れ落ちていくのであった。すると……リリアは俺の胸に顔を埋めて、大きな声で泣き始めて……。
「うわぁーん!!あぁ~ん!!うぅ……。お……お父様……。あぁぁぁ~ん!!」と泣き叫んでいるのであった。俺が優しく抱きしめてあげると、「お父様ぁ~!!もう二度と離れないから……もう……もう離さないでくださいぃ~!!!」と俺にしがみつき泣き続けていて、そのまま眠ってしまったようだ。俺の身体は温もりに包まれていた。そして……。俺の心の中には懐かしい感覚があったのだ。そうして……リリアが眠っているベッドにそっと俺も横になり一緒に寝てあげた。リリアに抱きしめられながら俺は目を閉じて眠りにつくことにしたのだった。
(なんか凄い夢を見させられている気分になる。まるで走馬灯のように、記憶が流れ込んでくるな……。)
『ロイドと別れて、リリスは自分の『心の中』にある、リリムの家に来ていた。
(私はこの『リリアの記憶の世界』から抜け出して、この世界に来る必要があったからな。ロイドの事は信じているが、やはり心配でたまらない……。この世界に来てみて驚いたことがある。リリアは『精神界』で私のことをお父様と呼んでいたのが分かった。この世界には私も何度か訪れたことがあったが……。まさか私に子供がいてしかも、娘だと知った時は驚いたものだ。それに……『魔道士 ミシア』が『私の子孫 娘』だったことも驚いた。だが……私が知っているこの世界とは少し違っている気がするな……。私がいない間に色々と変化があるのかもしれない。まぁ……それはいいとして……。私の力の一部を受け継いで生まれたリリアだが……。あの子の持つ力は……。とんでもない力だな。リリアが産まれる前は……『聖女 セイリュウ教団代表 サーリヤ=セリス=セイリオス=ラスティニア』と私だけが、『勇者パーティーのメンバー』として共に行動していて……皆を支えていたが……。私は……自分の『使命』を全うするために皆とは別行動を取れば良かったと今でも思ってしまうほど、仲間思いの仲間だったのだ。しかし……あの子が産まれてからは、私とリリスがこの世界のために戦ってきた。その甲斐もあって今は……平和になったと思うが、まだ終わっていない……。そうして……今度この世界に異変が起きた時の為に、私達の血を受け継いでいる子孫たちが頑張ってくれているのは心強い。
だが……そんなリリアには私と同じ特別な能力を持ってしまったのだ。だから私は『リリアを救いに行く』と決めたのだが……私はこのリリアの意識の奥に潜り込み、大魔王の城を目指すことにした。そして、大魔王の城の近くまでは辿り着いたものの……。大魔王はリリスのことを認識していたのだ……。だが……リリスのことをリリアの肉体ごと奪おうとすることはなかった。そして……。大魔王の配下に捕まった際に……。私は大魔王と会話をすることが出来たのだ。そこで、この世界を滅ぼそうとしている者の名前を聞くことができたのだ。私はこの情報をリリアに教えるためにここに来た。だが……その前にまずはリリアの精神を解放してあげなければな……。)と、彼女は、そう思って、彼女の精神解放の準備を始める。そして……『聖なる力』で……彼女を拘束していた『闇の魔力』を解除して、彼女を自由にした。』
〜 その頃現実世界で…… 〜
『俺は目を覚ますと……なぜか知らない女の子が、俺の上に覆いかぶさるようにして抱きついていたので、慌てて彼女から離れようとするが……。「ぎゅぅ〜」っとさらに俺を締め付けるようにして、しがみつかれて……全く動けなくなっていた。』
「お兄さん……。もう離れないって言ったじゃない……。私は……お兄さんからずっと離れてあげられないし、これからずっと……お兄さんのお嫁さんにならなきゃいけないんだもん。」
『俺はその少女の瞳を見て気がついたのだ。その子の顔に見覚えがあるのである。そして……。俺はこの子にどこか似ている人物を思い浮かべた。それは……俺の元妻の『サーシャ』なのであった。』
「なっ!?なぁ!なんだよ……お前は!」
『俺がその事に驚くと、その子は微笑みながら、「リリアだよ?お母様の娘の『リリア』なんだからね。やっと会えたよ。お兄さん♪もう二度とお兄さんから離れることなんて出来ないから覚悟してよね。だって……お兄さんはもう……『聖騎士 リリアム』の身体の中に入ってるんだよ。だから……。『聖騎士 リリアム』として生きて行くことになるからね。そして……その『魔剣 カリバーン』が……。この世界を救うために必要なの。だから絶対にこの魔石は誰にも渡せないんだよ。だから……『聖剣 アスカロン』を『お返しします』って、言っても返さないからね。ふぅ〜やっと……。お父様に……『お父様の娘 聖騎士』になれました!!だからお礼を言いたいの。私を救ってくれてありがとう。」と言って俺に抱きついて来たのだ。
俺も……『聖騎士 サーシャ』から貰った『聖騎士 サーシャのマント』を着ていて、『大魔王討伐の旅』をしたときの格好をしている。』
『リリアと名乗るその美少女は、『大魔王ルシファーの生まれ変わり』だという。リリアムの妻で、大魔王の『魂の器 ルシファー』だったという。その『ルシファーの転生体』がリリアで……。大魔王の魂が、俺の中に入ってきたときに俺の魂の一部を奪い、自分の魂に取り込むことで、俺と一体化してしまい、その結果、俺を自分の身体の『主人格』とすることに成功したという。つまり……。俺と一体化したことにより、『魔剣 リヴァイアサン』の所有者になったということなのだ。そして……。大魔王は俺がリリアとキスをして『大魔竜・大魔竜の魂の共有化』をした瞬間に俺と一体化してしまったらしく……。それからは……リリアと大魔竜王を融合させることによって、『大魔竜王の力を得た存在』として、再び復活することができるのだという。
リリスから俺が聞いた話によると……。俺の中の『魔剣 カリバーン』は……元々は大魔王『サタン』が使用していたらしい。それが……『魔族 七勇者の一人』、『剣王』『魔導士』『拳豪』『僧侶』『賢士』などの7人により倒されて……。残った4本の聖剣の力を、魔王が使いこなせるようになるには時間がかかり、しばらく時間が必要だったのだ。その間に『魔王』が『四体の悪魔』を呼び出して……。人類と魔物が協力して戦った結果……どうにか撃退できたのだが……。その時に魔王は瀕死の重傷を負い、その際に、自らが持つ膨大な魔力を使い、自らを『不老不死』の存在へと変えると同時に……。『四匹の悪魔達』と、自身の魂を分け合うことによって、魔王は自分の身体を取り戻すことに成功する。だが……魔王自身も……力の殆どを失い。また、『悪魔の力』と同化することによって……徐々に魔王の肉体は侵食されていくことになり……。最終的には……『聖騎士 アリスティア』に命を奪われることになった。その後……。魔王と分離した四人の『悪魔の力』も消えて無くなり……それと同時に……その肉体と精神は完全に消滅してなくなってしまった……。だが……その四人の力は……『魔王の意思を継ぎし者』『魔導具』『精霊界』『魔界』の4つに分けられていた……。そして……。俺と融合したリリアの力もその一部となり……。この世界を救う為に俺の力と一つにしなければならないのだという。そうすることで……俺は『リリアの力の全てを取り込むことができる存在』となる。そして……。『リリアの願い』である……。
「この世界の人々と……私の家族を助けてほしい。お願いします。どうか私の『大切な人達』をお助け下さい……。」
「ああ……。約束するよ。俺はリリアのことも守ってやるからな。心配するな。任せておけ……。必ず……。皆を守るからな。この世界を『平和』にして見せるからな……。だから……もう少しだけ待っていてくれ……。」
「うぅ……。嬉しいです……。私の為にここまで来てくれて……そして……お父様が私の事を大切に想っている事が分かり……凄く嬉しいんです。それにお兄さんも凄いカッコいいです。こんなに優しくしてくれるなんて……凄く幸せ……。ねぇ……。私にもして?私ともっと……いっぱい……。んっ!!」
『リリアに突然キスをされてしまい、唇を何度も奪われてしまう。しかも……。いつの間にか裸になっているし……。』
『リリアは、その可愛らしい顔に、似合わないくらいに大きな乳房が目に入り、そして……。下半身が目に映り……』
『あれ……なんか変な光景が見えてきたな……。これ……まさか……『俺の記憶の中』の映像なのか!? 』
《そうよ……。私とお兄さんが合体すれば、いつでもお互いの『心と心』で繋がって、お互いに相手を思い出せるの。》 《あぁ〜そうだったのか……って!それだと俺にはリリムの気持ちが流れ込んで来るのかよ……。でも、それは俺にとってもリリアにとっても嬉しいな。それじゃあリリスとも繋がっていることになるな。》 《えぇ……そうですよ。私もリリアムと一緒にいたかったので……お母様と私の力で……。》
「おい……。お前ら!二人だけで盛り上がってないで……あたしと遊べ!!『大賢者』だかなんだかしらないけど……。」
《うるさいぞ……。このちんちくりんの『大魔王』さんよ……。リリスが黙らせてあげなさい……。お兄さんに嫌われたくないならな。ふっ……。》
「ちっ!なんであんたが偉そうなんだよ……。ムカつく女だな……。」
《私はリリアムの嫁だからな……。この世界の誰よりも強いのだよ。》
「なっ!リリス!それはズルいだろ!そういうことは先に言っとけっつーの!!よしっ!リリスは今度ぶっ飛ばす!覚悟しておきやがれよ!」
「おいっ!お前ら!!さっきから何を言っているんだよ!」
俺は、二人の会話に割って入るように言う。しかし……俺はなぜか『聖剣 アスカロン』に身体の自由を奪われるのである。そのせいで俺の口の動きに合わせて喋る感じになってしまう。
俺は必死になって抜け出そうと試みる。そして……リリスに助けを求めることにした。だが……。リリスはなぜか微笑んでいるだけである。』
(ふふふ……私は知っているわ……。お兄さんが私に対してドキドキしていることを……。)
「おぉ!!リリアム様!!ようやく目覚められたのですな。良かった……。本当に良かった……。」
俺の目の前に立っていた人物は、この王国の国王である『ザイン』その人であった。彼は、俺に近づき抱きしめてくるのである。』
「ぐへへ……リリアム様ぁ〜♡この私を……あなたの……愛人にしてくださいぃ〜」と……俺は……俺にキスをしてくる。』
『その人物の顔を見ると……俺は絶句してしまう。』
「はぁ……はっ!?なんだ……一体……。どうなっているんだよ……!?お前は……。何してるんだよ!? 」
その人物とは……王国『神聖皇国 ホーリーロード アリウネ』の第一皇女の『ソフィア姫』であり、リリアムの妻の一人でもある『ソフィア=『聖剣』』の姿だったのである。彼女は……『大聖魔竜 カリバーン』の力を秘めた魔石を持っていたはずなのだが……。どうして……こんなところに居るんだよ!!?』
俺の目の前に現れたのは、『大聖魔竜 カリバーン』の所有者であった第一皇女の『聖剣』であった。彼女は俺を見て微笑むと、そのままキスをしてきたのであった。そして……。舌を入れられ、激しい濃厚キスをされてしまう。
そのあまりの出来事に頭が真っ白になる……。そんなとき……後ろからリリスの声が聞こえた。俺は……声の方向を見る。そこには……いつも通りのリリスがいたのだ。リリアもそこにいて微笑んでくれるのである。』
「あははは……リリアム様が困っているではありませんか……。もうその辺にしないとダメですよ。ふふふ……。まったくリリアはおバカですね……。まぁ〜仕方がないかもしれませんね……。お父様と融合してからの初めての再会なのですから……。」
「なに言ってんのよ!!これからが面白いのでしょうが!まだまだいくぜ!!」
『二人は楽し気に俺に向かって話しかけてくれた。そして……俺は……二人に感謝したのだ。俺のために、二人がここまでやって来てくれた。そして……その力を使ってくれた。俺と融合することで、リリアも一緒になって、大魔竜王の力を手に入れたということなのだ……。大魔竜王が復活すれば……きっと皆を守っていけると思えたのだった。だが……大魔竜王が復活したら……リリアも……大魔竜王に取り込まれてしまうのだろうか……。
リリアが……大魔竜王に完全に取り憑かれれば……リリアは大魔竜王となってしまう。そうなってしまえば、リリアがリリアでなくなってしまうのかもしれない。それに……俺もリリスも……。大魔竜王が復活すれば、再び『魔族七勇者 聖騎士 アリスティア・グラン・アルセイアス』と戦う羽目になる。だが、俺は……。大魔竜王を完全な形で復活させても構わないと思っている……。だが……リリスと大魔竜王との共存関係が崩れなければ良いと俺は願うばかりである。それに……俺の中には、既に魔剣『魔槍 ロンギヌス』がある。ならば……。俺自身が大魔王となり、大魔王『ルシファー』を復活させて……。新たな大魔王として……この世界に君臨するのもいいかもしれない……。そんなことも考えてしまうのである。俺はこの世界で『平和』を築き上げていきたいのだ。だから……。』
『リリアムの心は……。すでに決まっている。この世界を……リリアム自身の手で……守りたいと決意していたのだった。だから……』
『大魔竜魔王 カオスキングドラゴンナイト 大魔王』
大魔王 混沌竜帝魔導神竜皇 混沌の魔王 魔王 悪魔皇帝 暗黒龍魔王(ダークドラゴナーイト デビルカイザー)
→????
(この俺が……。世界を守る存在になるんだ……。リリィをこの世界を救う為に戦おう……。そして俺は……。『大切な仲間達を守りたい。そして……この俺の事を想ってくれている人達を救い出す!!』俺は……リリスと融合した。このリリア・リリアムと共に歩んで行くと決めていた。俺とリリスで、この世界を平和にしていこうと思ったのだ。だから……俺とリリアで……。この世界を救うと誓った。だから俺は……。
「うっ……ここは……。いったい……なにが……?」
「あっ……お兄ちゃんが目を覚ましたみたい。よかった……。本当によかった……。うぅ……心配させちゃだめじゃない……。本当に馬鹿なお兄さん……。」
俺は目を開けると、心配して俺の顔を覗き込むようにして見つめてくれる可愛い妹と、その妹の背中におんぶされて寝てしまっているリリイがいたのである。どうやら、リリイも無事に助かったらしい。』
「おい……。そろそろリリスの力が弱まって来たぞ……。どうすんだよ……このままだと……お前は……消えちまうんだろうが!!どうしてくれるんだよ!?あたしの計画が狂ったじゃないかよ……。ふざけんなよ!!早くなんとかしろっての!!!」
『『魔剣 聖剣』の融合が解けてしまったリリスは、その大きな胸にリリアムの顔を押しつけながら抱きつき離れようしなかったのである。』
《あぁ……ごめんなさい。お兄さん……私、つい嬉しくって。ふふ……。》
「おいっ!さっさと離れろっての!いい加減にしやがれっての!!」
「なぁ……ちょっと聞きたかったのだが……。あの時……。なぜ……お前達は、『魔石化』されていたんだよ。そしてお前は……。なんで……俺の中に入ってきたんだ。教えてくれないか。」
「えっとね……。私が説明してあげるよ。」とリリアは、俺に事情を説明してくれたのである。リリムがこの場に現れなかったことについては疑問があったが、その事も含めてリリアが俺に解説をしてくれた。
『大魔王と『大賢者』であるアリアさんには、『魔王』という称号が与えられていた。それはつまり……。この世界でも、大魔王が魔王の上位に位置する存在であることを表していたのである。魔王にも色々と種類があるらしく……リリスの場合は、その中でも最上位である『真なる悪の大魔王』であるらしい。そんな上位者である『真大魔王』を倒せる人間はおらず……。大賢者である『リリア・リリアム』に『大聖勇者』の称号が与えられていて。リリスが唯一勝てる可能性のある存在とされていたのだという。
しかし……。俺が『勇者召喚』によって『聖女』となったことで……。その前提が変わってしまう。リリスは俺の体内にいた『大魔竜剣王 カリバーンロード』の『魔核』を吸収したことで、『聖剣』であるリリスの力も使えるようになっていたのだ。それにより……。俺がリリスの力を使うことができたため、俺の『聖剣』の力も使うことができてしまうようになる。その結果……。大魔竜剣王がリリアムに取り付くことに成功してしまい……。リリアムに意識が戻ったのと同時にリリスとリリアムが分離してしまうという事態を招いてしまったようだ。そのおかげで、リリスとリリアムが融合した状態で『魔剣 アスカロン』と融合して……。俺の中から出ていくことができなかったようである。
そんな状態になってしまった理由はわからない。ただ……。俺に憑依した『魔族七勇者 聖騎士 アリスティア・グラン・アルセイアス』に対抗できる力を手に入れるために必死になってリリスと『大魔聖剣 アスカロン』が融合することを選んだのかもしれない。そうすれば……。リリアを護ることができると考えたのではないだろうか。だが……結局のところ。その選択をしたのがリリスなのかリリアなのかはわからなく……。融合して俺の身体に同化してしまったのだと思われる。だが、リリスもリシアと同様に俺の中に存在することによって『魔王の加護』の能力が使うことができるようになっているはずだから。俺の力の一部を使えても不思議はないと思う。まぁ……今となってはどちらがどちらの能力を使って、どのように戦ったのかも不明だ。
俺の意識の中に入ったのは、大魔竜剣王の暴走を止めようとした際に……。大魔王の力で『闇属性』に侵されてしまったことが原因らしい。『大魔王の力』も大魔竜剣王の力を封印するために使った為。本来のリリスの力が失われてしまっていたようなのだ。そして、その力を俺が使ってしまってしまったために、俺の魔力も使用できなくなり。さらに『大賢者』であるアリアの力がなくなり、リリス自身も力を使えないという状況になったせいか……。リリスは、完全に俺の中で休眠状態になったのだという。
その話を聞いたリリアから『聖杖』を受け取る。すると、聖剣『聖魔剣 セイリュウセイバー』が俺に話しかけてくるのである。
【我は……主と共に生きることを決めたのだ……。リリアよ。もう、貴様にもわかっているであろう。我ら魔剣にとって『魔族』というのは天敵でもある。その力を得たリリアの力は……今のリリアでは使いこなすことができないであろう……。『神聖騎士』、『勇者』の二つを持っていようと……。まだ幼いリリアでは……この『大魔聖剣 セイリュウセイバー』を使いこなせまい。だが、安心せよ。いずれ……貴様もこの世界最強の剣士となり得ることになろう。そして……。『聖なる力』を手に入れたその時……再びリリアスの手に収まることになるのだろうな。】
『私は……お兄さんの力になれないんですね……。わかりました……。今は大人しく眠りにつきます。でも、また会えるんですよね……。』
【うむ……。だが、我が再び目覚めるときには……リリアよ。貴様は既に『大魔王』と化しているやもしれぬな……。だが、再びリリアがこの世に生を受ければ、きっとまた再び出会うこともできるであろう。それに……魔族は長寿で、長い年月をかけて『覚醒魔人』へと至ることも珍しくもない。だが……。『勇者の卵』として生まれ、しかも……。聖剣『聖魔剣 セイリュウセイバー』を持つ者が現れたのだ。おそらくだが……この世界の歴史上……これほどの強力な『魔剣持ちの聖剣所持勇者』は存在しないだろうな……。だから、きっと再会する時が必ず訪れるはずだ……。
それに……この少年は……。大魔王を宿しながらも『大魔王化』しないのだから……。この『大魔聖剣 セイリュウセイバー』の主に相応しいと言えるのかもしれん……。だから……『大賢者』であるお前には悪いとは思うが……。リリアがこの世界に産まれるまでは、この子と共にいてくれないだろうか。】
「そんなことは当たり前だよ!!私にとっては、リリスも大切なお姉ちゃんなんだもん。お兄ちゃんのそばにいるのは……このリリスだけじゃないよ。お兄ちゃんは……。『勇者』としての責務を果たしたいと言っていたんだよね……。だったら……今度は私が……お兄ちゃんを助けるよ!!お兄ちゃんと一緒に……お兄ちゃんが愛している人たちを救い出してみせる!!それが……『勇者』である私の務めであり……。『勇者』がこの世界に存在する意義だと私は考えているの。お兄ちゃんとなら……。絶対に世界を救ってみせるんだから!!」
【リリア……大きくなったな……。お前の成長に……。我は嬉しく思う……。ありがとうな。本当に感謝しておる。お前は本当に優しい子に育ってくれた……。これからも頼むぞ……。そして……気をつけよ。魔族の王と化したリリアを邪魔する者が現れて……お前が命を落とすことも十分にありうる。それだけ『魔素量エネルギー』の桁が違う。この子は普通の人間ではないのだ。『魔族七勇者 勇者 キリト・リクド』……。
そして……『勇者の器』を持っているお前だからこそ……この先の戦いにおいて重要になってくるだろう。お前に……新たな『大魔王 大魔道師 魔王 大勇者 聖勇者』の五人の魔王と魔王七人を託すことになってしまった。この子の力は計り知れないものがある。
どうか頼んだよ……。リリアのことをお願いします。
我はいつでもリリスと共に見守っているよ……。」
そう言うと……大魔竜剣王は、リリアの体内に戻ることになった。
俺はリリスの言葉を聞き、リリアムは俺に言葉をかけてきたのである。
「なぁ……あんたが『聖女』だって言っていたけどさぁ……それってどういうことだ? なんで……俺が……俺が……リリィの姉貴になるんだよ。なんで俺が……お前なんかの弟にならないといけないんだよ。」
《リリスは、私よりも後に産まれています。なので私の方がお姉さんということになりますね……。
ふふふふふ。あなたは、『大魔剣』に認められた勇者なのですよ。もっと自分に自信を持ってもいいと思いますよ。》
「あぁ……くそ……。マジで意味がわかんねぇ。
とりあえず……この俺の力を使ってみようと思うんだ。ちょっと……外に出てきてくれるか?」
《いいでしょう。》
「えっと……どうしたらいいのかな……。リリイは眠っているし……。俺の体も動かないぞ。」
『魔導士 魔王 大魔賢者 魔聖王 聖魔王』
リリス
『大魔王ルシファレス』の力が俺の中に入り込むと、俺のステータスに変化が生じた。俺の体に力が溢れ出していくのを感じることができたのである。それと同時に、リリスが持っていたはずの全ての能力も使うことができるようになったようだ。『聖剣アスカロン』『聖魔剣 セイリュウセイバー』が融合してから……なぜかわからないが、俺の『聖女 勇者』の力も使えなくなっていたはずなのに……。いつの間にか使えるようになっている。どうしてなのかはわからないが……今は、この力を使わせてもらうことにしたのである。(まずは……あのリリスという女だな。俺のスキルは全部使えるみたいだし……。とりあえずはあいつを殺してやるぜ。)
「うぉー!!いくぜぇ!!!!喰らえ、『黒雷魔法ダークボルト』!!」と俺は、『魔剣 魔王剣 デスサイズナイト』に力を込め、『魔剣』の黒い刃から大量の漆黒の稲妻を放ち、その一撃はリリスに命中してしまう。そして……俺の視界からリリスの姿が消えると……次の瞬間……目の前に姿を現す。そして……そのまま……リリスは、リリアムに向かって斬りかかったのだ!!しかし、俺の攻撃が命中したにもかかわらず……リリスの動きは全く止まることがなかったのである。
(はぁ!?こいつは……俺の技を喰らっているのに……。全然ダメージを受けていないじゃねえか……。何が起きたっていうんだよ。そんなに……このリリスと融合した俺の力はすごいのか?)
「へっ……中々強いじゃん。この俺様を相手にしても余裕そうだな。だけど……調子に乗るんじゃないぜ。この『勇者』リリアム様は、大魔剣を二振り持って初めて『勇者』の力を得ることができるんだ。この『魔剣 魔王剣 デビルスレイヤーソード』の力を使えば……お前みたいな奴なんて簡単に殺せるからよ……。覚悟するんだな……。
『魔剣 魔王剣 デビルズブレイド 闇属性』」と、リリスに向けて闇属性を帯びた魔剣を振り下ろす。そして……リリスも、その攻撃を魔剣『セイリュウセイバー』を使って受け止めたのである。だが、リリスの持つ『神聖剣』では闇属性の攻撃を受けたときに、光属性を帯びていなければダメージを受けることになるのだが……。俺の攻撃は、神聖騎士の防御力を超えてリリスにダメージを与えたのである。リリスの身に付けていた衣服に傷が入り……少し破れてしまう。その様子を見たリリアムは、「なっ……。なんだと……。この俺様の攻撃力を防御なしで防ぎやがった。一体どんな力を使ったんだ……。まぁいいや……今度はこれだ。」と言って今度は魔剣を地面に刺し……。その手の上に闇の力を集めるようにしていたのである。すると、その闇は徐々に大きくなり、そして……それは球体になると、一気に破裂したのである。だが……その中には何も存在せず……一瞬だがリリスは姿を消したかに見えたのである。だが、その隙に……リリスの後ろへと移動しており、背中へと斬りかかる。リリスは、それに気づくことなく……攻撃を受けてしまうのであった。「うぐぅ……。なんだ今の攻撃……。全く反応できなかった。こいつもまさか……。『魔剣使い』だと……。」「へぇ……。なかなかの反応だな。俺の『大魔拳闘術 極式』を受けて、生きているとはな。お前……。本当に只者じゃないんだな。」
《私は……『大魔王 魔王 大勇者 魔聖王 聖魔王』であるリリスさんと契約しているのです。『聖魔剣 セイリュウセイバー』によって……『勇者』の力を持つ私と契約したことで、この世界に存在するどの聖剣とも違う能力を手に入れたのかもしれませんね……。この力は……おそらく……『神聖剣』でも太刀打ちできないかもしれません。
『勇者の卵』のリリアさんが、まだ覚醒していなくてもこの強さなんです。
だから安心してください。この『大魔道師 勇者』である私がいますので。》
「あぁ……。頼りにしているよ……。リリィ……」
《はい。頑張りましょう!!》
(なんだこの声……。この女と会話をしているときだけ頭の中で聞こえてくる……。不思議な感覚だよ……。でも……。このリリィって女の子……。俺の心の奥底にいるような感じもするんだよな……もしかて、これがリリスとかいう女の言っていることなのか?だったら俺は一体なんなんだろう。)と考えていたが、俺は考えるのをやめることにする。リリスは、魔剣に闇の力を集めながら俺の方へと突っ込んできた。俺は、『魔刀 セイリュウブレード』を構える。魔素を流し込み……『魔素操作』により身体能力を向上させてリリスの魔剣を受け止めたのだった!! 《魔素の操作もうまくなりましたね。やはりリリアムさんが私の中にいた方が、より一層戦いやすくなったと思います。私との呼吸もピッタリ合っています。さすが『大魔王ルシファレス』ですね。》 【ふん……。そう言っても無駄だ。
リリス……。お前の好き勝手にさせてたまるか。
我も全力でお前を乗っとらせてもらうぞ……。】
《そういえば……。『勇者の卵』であるこの子は、あなたの妹さんなのですよね?どうして……リリアさんと名前をつけたのですか? 》 【ふん……。我に娘など存在しない。『勇者の器』を持っているお前が……その『勇者の魂』を持っているこの子の姉になってもらうためだ。我の妹にしてやれば……。我の力でこの子の『勇者の力』はさらに増すはずだからな……。】
(やっぱり……この人おかしいわ……。妹が勇者になったって聞いただけで自分の力を分ける気になったりするものかしら……。)
とリリスは思ったのだが、リリアムもいろいろあるのだろうと特に気にしないことにしたのだ。
俺は、魔剣に闇の力を集める。俺の持つ『魔剣 魔王剣 デスサイズナイト』に魔力が集まり……。その力をさらに高めていくと、黒い光が俺を包み込んでいったのである。その黒い力は……まるで俺を飲み込もうとするかのごとく襲いかかってくるが……『聖女』の聖なる力が俺に力を与えてくれる。リリスの力を使いこなし……。『魔道戦士』の俺が持つ力を増幅させていった。
リリアムは俺に向かって斬りかかってくるが……リリィのおかげで『勇者の技』は使うことができるようになっていた。リリィの力を借りて発動することができる『神聖剣』を使って、リリアムの攻撃を捌くことができた。
リリィはリリアムの技を完全に受け流しているため、リリィの身に着けている鎧は傷一つつかない状態になっている。リリィは、『魔導士』としての魔法だけでなく、『大魔賢者』としての力も同時に使えていたのだった。そのおかげで俺は、『大魔道師』と『魔聖騎士』の能力を同時に使うことができるようになり……。今まで以上に、様々な属性魔法の威力を高めることができたのである。
そして……魔剣から闇の刃が発射され……。リリスに向かって攻撃を放った。しかし……魔剣から放ったはずの刃は消えてしまい……そのかわり、俺の背後に突然現れると、リリアムに攻撃を仕掛けたのだ!!その攻撃はリリアムの肩に命中し、リリアムはその場に膝をつく。俺の使った攻撃の正体は……実は、先ほどから使っていた『黒雷』であり、その黒雷は、黒雷の矢に変化させていたのである。俺の体からは『聖剣アスカロン』の光の力が放出されていた。俺の体の中には、魔剣『魔剣アスカロン』も入っているためである。そのため、『聖剣アスカロン』の持つ浄化の力を使って『聖炎』を作り出すこともできるようになった。そして……その力で作り出した光でできた弓矢を使って、遠距離攻撃をすることができたのである。
そして……『魔剣士』としての特性も使うことができていた。その能力は……『魔剣術・極式』、『神速連斬撃(しんそくれんざんげき)』、『神龍斬撃(シェンロンザンゲキ)』の三つである。そして……俺は今リリィの力を借りることで使えるようになったばかりの新しいスキルを発動する!
「はぁーーーー!!!!」(これは……!?すごいです!!私と完全に一体化しています。このスキルがあれば、私は最強の力を手に入れられるかもしれない……。)
(なんだ!?こいつ……。いきなり雰囲気が変わった。この力の強さと……。存在感……。そして何よりも威圧感が半端ないぜ……。こいつは本当に人間なのか?)
(これが私の新たなスキル……。)「魔剣術奥義
『天星煌月閃(あませいこうげつせん)』!!!」
「はぁーーーー!!」と俺の攻撃は、魔剣から放つ闇を纏う衝撃波となってリリスに襲いかかる。その衝撃で……辺り一面を吹き飛ばしてしまう。
「なっ……なんだ……。今の攻撃……。俺様の攻撃が……消えただと……。いや……違う……。お前は、今の攻撃を放つ前に、魔剣の一撃を放ってきていた……。それで……あの威力だと……。そんなバカな……ありえないだろ……。」
「これでおわりだね……。リリス……君の力……。使わせてもらったよ。俺の体も少しダメージを受けたけど、君の攻撃を受ける瞬間……。俺は自分自身の力を全て防御能力にまわしたんだ。だから……。この程度の攻撃なら耐えることができたんだよ。」と、俺達は再び構え直していたのである。すると、リリアムの後ろにいた女性の一人が俺のところに近づいてきた。
《リリアムさん……。ここは私が相手しますので……。》 と俺に言ってきた。俺もそれは理解しているので、「わかった……。」と言って後ろへと下がったのである。
「へぇ〜……。リリスちゃんを追い詰めちゃったみたいだな。だが……。まだ終わってねぇんだ。俺には『勇者』の力がある。お前達みたいなガキに負けることなんて……ありえねぇよ。それに、俺の仲間がお前らを殺しに来るかもしれねえしな……。」
「それじゃあ、あなたを倒して……私は仲間を助けに行くわ!」
《そうはさせないよ!!》とリリィの声とともに、俺はリリアムに向かって斬りかかる。俺達の攻撃を受けたあと……すぐに立ち上がると、「へぇ……まだ立てるだけの力があったのかよ……。だが、もう限界なんじゃね?」と、俺に対して余裕を見せていた。だが、そのとき……。
「リリア!待たせたな。助けに来たぞ!!」とリリアの兄と思われる人がやってきたのであった。その姿を見て……。俺は、なぜか懐かしい気持ちになっていた。
(誰なんだ?なんなんだ?俺は……。こいつを見ると胸が苦しい……。)と考えていると…… 《大丈夫ですか?もしかて……また……何かあったのですか?》
(うん……。いや……。何でもないんだ。ありがとう。ちょっとだけ思い出せないことがあるんだけど……気にしないで。今はこの戦いに集中しないとね。この人は……『聖剣エクスカリバー』に選ばれた『勇者』だね。『聖剣』に選ばれるということは、かなりの実力を持っているんだと思う……。だけど……。俺は、もっと強くなっているんだ!!こいつも倒せるはずだ!!よし……。)
「あなたは……。リリアさんのお父さんですか?」とリリアムに質問をする。すると、リリアムは不機嫌な顔をしながら……。「お前……リリスだったか?どうして、このタイミングできたんだよ……。もう少しだったのに……。」と、ブツブツと文句を言いながら俺の方を睨んできたのだった。俺は、剣を構え直すとリリアムに向かって攻撃を仕掛けたのだった。
《あなたこそ……何を企んでいるの?もしかして……。この子の身体に乗り移ろうとしているとか?》と、リリィは言ったのだが、それに対してリリアムが反論する。
「は?そんな訳ないだろうが!!俺は、ただ『大魔王ルシファレス』の肉体を手に入れただけだ!!俺は『大魔王』になって世界を支配するんだよ。そうすれば……俺を邪魔する奴はいなくなるだろうが!!」
「そういえば……。あなたの名前は『リリアム』で合っていますよね?リリアさんから聞きました。どうしてあなたがリリアさんの名前を名乗って生きているんです?そして、どうしてリリアさんにあんな酷いことをできるのです?どうして、リリアさんのお兄さんを殺そうとするのですか?あなたに何の権利があってリリアさんを苦しめるようなことができるのですか?なぜ……リリアムと名乗って、リシア姫やレイア姫に近付いたりしたのですか?」と俺は、この男に向かって怒りをぶつけた。そして俺は剣を振り下ろす。それを軽々と受け止めると、俺の腹部に蹴りを入れる。そして、俺のことを見下すような目で見てくると、「ふん!答えてやってもいいが……。まあいいだろ?教えてやるよ。俺は『勇者』の力を使えるようにするために『聖剣 魔王剣 エクスカリバーン』を媒体にしたんだよ。そして……その媒体になった聖剣の力を使えば……。『大魔王の力』も使うことができるようになる。つまり……俺は『大魔王ルシファレス』そのものの力を得たことになる。そうなれば……もう『勇者の力』は必要なくなるだろうが。それがわかっているくせに、お前は邪魔してんじゃねぇよ。そして、俺の妹は……あの女の器にしてやろうと思っているんだよ。そのくらいわからないのか?だから……お前は何も知らないってわけだな。」と言い、剣で俺のことを攻撃して、さらに上空まで吹き飛ばすと、「俺は、リリアと一緒に暮らすためにここに戻ってきた。そして、妹がお前達と戦うと言うのなら、俺は妹の願いを聞き入れようと思った。だから……今回は見逃してやるよ。でも、今度は容赦しないからな!!」と言ったのだった。
「待ってくれ!!頼む……。俺はあんたと争う気はないんだ!!話を聞いてくれ!!」とリリアムは必死に訴えたが……。「俺は、この国の王族であるあいつらが憎い!!だから俺は復讐することにした!!それだけの話さ……。話は終わったようだから帰るぜ。俺にはまだまだやりたいことがたくさんあるんでな……。次は殺すぜ……。じゃあな……」と去って行った。その去り際……「俺と戦おうとしても無駄だって言っておくぜ……。『魔剣士 リリアム・シュヴァインフルーク』として、『勇者 リリアム・シュヴァインフルーク』と『大賢者 リリィ』を同時に相手にしても……絶対に負けるはずがない。じゃあな……バイバイ!!」と言い、去っていった。
(まずいですね……。このままでは……。あの男の言っていることも間違ってはいません……。確かに、私はリリアムさんがどんな方なのかは知りませんでしたから……。あの方の言うことは、もっともだと思ってしまいます……。どうしましょう……)と考えていたときだった。
リリアはリリアムに攻撃を放とうとしていた。俺はその光景を見て……。リリィの方に意識を向けた。リリアに攻撃が当たる寸前に……。俺は、リリアと入れ替わることに成功したのである。そして……俺は地面に着地すると……。「何をしているんだ!?やめろ……。お前の身体に傷をつけるつもりなのか?」
「ごめんなさい……。どうしても、リリアムの奴を許せなかった……。私達家族を見捨てて……リリアのお母さんを騙して殺したんだもの。だから……リリアムだけは……殺さないと気が済まない!!私にリリアムを倒す力があればいいのに……。」と言って、涙を流すのであった。そんな彼女を優しく抱きしめて、「ありがとう。」と伝えたのである。そして、彼女の頬に流れる雫は……。とても暖かかったのである。そして……俺たちは再び戦闘体制を取ると……。「いくわよ……。リリアム……。あなたのことなんて嫌いよ!!」
《私はあなたを許すことはできない!!ここで終わらせる!!》と、二人は同時に動いた。
俺は……リリアムの動きを観察をしていた。
(やっぱり……強いな……。だけど……今の俺は以前の俺とは違う!!リリィと一つになっている限り、俺が負ける要素はない!!)
「はぁーーーー!!」と剣を振るが、簡単に避けられてしまう。俺はすぐに体勢を整えると……。
「魔剣術奥義 魔天一閃(まくてんいっせん)!!」とリリアムの背中から肩に向かって斬りつけるが、ギリギリのところで剣が止まってしまったのであった。その隙を突かれてしまい、俺に強烈な拳を叩き込まれてしまうと、地面に向かって叩きつけられたのである。だが……俺は諦めずに立ち上がると、「うぉーー!!俺は……。お前なんかより……遥かに強くなってんだ!!!こんなことで……。俺の想いを潰されてたまるか!!」
「リリアムさん……。どうしてそこまで……。あなたがリリアさんを大切に思っている気持ちはよくわかりました……。だからこそ、これ以上戦うのはやめていただきたいです……。あなたもリリアさんもお互いを傷つけてばかりじゃないですか……。そんな戦いを見たリリアさんが……幸せになれるとは……私はとても思いません……。」とリリスは言うと……。リリアムの表情は一気に変わっていった。
(なんだ……。急に変わったけど……。何があったんだ?)
「リリス……君だったね。どうして……君のような人間が……。どうして……君みたいな人間が……『勇者』の力を手に入れることができなかったのだろうか?本当に不思議な子だよ……。リリス……君は『勇者』になるべき人だ!!俺が……君の『運命』を変えてみせる!!俺と一緒に来てはくれないか?」
「えっ……どうして……。私が……。リリアム……さん……。」
と困惑している様子のリリアだったのだが、次の瞬間……彼女は涙を流し始めたのであった。そして……「お断りします。私の心は変わりません。たとえ……あなたが何度誘ってきても……断るだけです。それに……私は、今の生活の方が好きなんです。仲間と楽しく過ごす生活が大好きなんんです!!そんな生活を壊そうとする人に、ついて行く気はありません!!」と叫ぶように言ったのであった。
(そうか……。そういうことだったんだ……。この男は、リリアに恋をしてしまったということか……。リリアも大変だな……。まさか、ここまで執着されるとは……。いや、違うかもしれない……。おそらく……。こいつは……リリアのお父さんを殺したリリアの母親のことが好きだったんじゃないのか?それならば……辻妻がつく。)
俺はリリアムに問いかけようとした時だった。彼は、リリアに襲いかかったのだ。そして……「邪魔をするなら、殺す!!リリスが俺のモノになれば、リリスは『勇者』として認められるだろう……。お前らは『大魔王』を倒して世界を救うんだろう?お前がリシア姫と結婚して王になることが、世界の平和につながるんだよ。リリア……リリスを連れて、早く消えてくれ……。」と言い放った。そして……俺の方を見ながら「俺がお前らを殺すか……。俺がお前を先に殺すかを勝負しようじゃないか……。さっき、お前は『魔剣士』と『大賢者』を相手にしてでも勝つと言っていたが……。俺はそんなことを言った覚えはないぞ……。さあ、決着をつけようぜ!!かかって来い!!リリアスの旦那候補は……この『大魔王 ルシファレス』が相手をしてやる!!」
俺は、再び剣を構えるのであった。そして、剣を振り上げるとリリアムに向かって振り下ろすのである。その攻撃を受け止めるが……。俺はさらに連撃を続けるのだった。そして、剣戟を続けているうちにリリアムの表情が変わったことに気がついたのである。
「ふぅ〜。やはりお前と戦っていてもつまらないな……。お前には失望した。だからもう終わりにするか……」
そう言うと……。一瞬でリリアムの姿は消えてしまったのだ。するとリリアの背後に現れたのである。そして……リリアに向かって攻撃を仕掛けるが、俺はリリアの前に出ると、攻撃を防ごうとした。しかし……リリアムの攻撃を防ぐことができず、そのまま俺はリリアムによって上空へと吹き飛ばされたのであった。俺は、空中で体勢を整えながら着地しようとするが……。俺の腹部に強い痛みを感じるのである。
俺は、腹部を押さえながら……リリアムを睨みつけた。「何をするんだ!?」
《私の後ろに……いるの……?あなたは一体誰なの……》と怯えるような声を出すと、「リリア姫……もう大丈夫だ……。あいつがリリアさんの身体から出て行った。これで、もう何も心配はいらない。」
リリアムは、俺のことを見て、「へぇーー。俺の攻撃を二度も受け止めるとは……中々やるな……。だけど……俺にはまだ敵わない。まぁ……今は……お前で我慢してやるよ。またな!!」と言い残すと、リリアムはどこかに去って行くのだった。
リリアムがいなくなると、俺が吹き飛ばしたはずのリリアは俺の元へ駆け寄ると……。
「ごめんなさい……。私のせいで……。私が油断さえしなければ……。ごめんなさい……。」
俺はそんな彼女を抱き寄せたのであった。「謝るのは俺のほうだよ……。もっと、早く助けていれば……こんな目に遭わずに済んだはずだ……。でも……無事でよかったよ。俺は少し疲れたから……この場で休むことにするよ……。ごめんな……。あとは、頼んでもいいかな……。俺の仲間の所に連れて行ってくれないか?」
俺はそう言うと……。眠りについてしまったのである。
(くそっ!!まだ身体に力が入らない……。俺はこんなところで寝てる場合じゃなかったのに……。俺がリリアムの動きをもう少し注意していれば、リリアは怪我を負うことはなかったはずなのに……。くっ……。身体が動かない……。どうして……こんなにも眠気が襲ってくるんだよ……。ダメだ……。ここで、眠るわけにはいかない……。リリィの所に……行かないと……。リリィが危ない!!だけど……俺の意思に反して……俺の目蓋は徐々に下がっていき……。意識を失ってしまうのだった。)
その頃……リリィはリリアムを追いかけていたが……なかなか追いつくことはできなかった。リリィと離れれば離すほどに……リリアムの力は増大していったからである。だが……その時だった。突然地面の中から巨大な何かが現れたかと思うと、そこから黒い煙のようなものが出て行きその光景を見てリリィは立ち止まった。そしてその光景を見た瞬間、リリィは膝を落としてしまい呆然としていたのである。そのリリィの瞳からは涙が流れ続けていた。
そして、その様子を見たルシファードはその異変に気づき、すぐさまその光景を見ると怒り狂ったような表情をして「てめえーー!!絶対にぶっ殺してや……」と言うと、「待ってください!!これは私の仕業ではありません!!私は……何も知りません!!本当です!!信じてください!!」と叫ぶ女性の声が聞こえたのである。
そしてそこには……リリアムを取り込んだリリスとリリアムを庇うように両手を広げているアリアがそこに立っていた。
「おいおい……。どうなってるんだ……。どうして、リリスが二人になってるんだ?いや、一人が二人になったというよりは……。まるで、一人の人間の中に別の人格が二つ入っているみたいな……。いかんせん……理解ができないな……。リリス……どうして……お前は、リリアムと一緒に行動していなかったんだ?」
《それは……。リリアム様が急におかしくなったと思ったら……。なぜか……急に現れた黒い影に取り込まれたかと思ったら……急に強くなってしまいました。それから、リリア姉さまが急に苦しみ出して……。あの人が近づいてきて……私に……リリアさんを取り込むように命じたんです……。》
「はぁ……。そういうことだったのか……。とりあえず、その黒い物体については調べておくとするが……その現象が起きたのはこの一回きりだったんだろう?つまり……次にこの現象が起こるとすれば……。次は、間違いなくお前の中に入っているもう一人のお前が現れるだろうな……。」とルシーダは呟くと、その出来事から数時間後、ルシファにその報告をしていた。「リリィさんから話は聞きました。なんでも……リリアムは何者かに取り憑かれていたと……。」
「そうか……。だがな……俺の考えではリリアムにその取り付いた悪魔は、かなり強そうだぞ。もしかすると……俺や魔王クラスの強さを持っている可能性もあるからな。まあ……今は……『聖女』の力を持つ少女の力を信じる他なさそうな状況になりつつあるからな……。それに……。今の状況を見る限り……おそらく……あの『大魔王』が絡んできているのは間違いないだろうしな……。だが……。リリアムの件も重要ではあるが、俺達の目的は、『大魔王』を消滅させるということだ。それには……おそらく『魔王』クラスの力が必要になるだろう……。今のリリアムは……。あの時よりも強くなっているが……まだまだ俺達が倒すレベルには程遠い……。『大魔王』の実力を考えれば……。正直俺でも一人で倒せるかどうかは怪しいところだからな……。それよりも、今は他のことに目を向ける必要がある……。なぜなら、魔王の力を手に入れられるのは今のところ……『勇者』だけということになる可能性が高いということなのだ……。そして……現時点で『勇者』になれる可能性がある者といえば……お前だ。だから、ルシファ!!これから、俺はお前のために全力のサポートをするつもりだ。まずは……お前を鍛えてやろう!!そして……この世界を守るために……共に戦うぞ!!」
《ありがとうございます。私は、必ずや世界を救います!!》と二人は会話をしていると、二人の目の前にリリアムが現れ「何を言っているのかわからないけど……あなたたちだけは、許さない!!僕とリリアの未来を壊したことを許しはしない!!リリアは僕のものだ!!だからお前たちは死んでくれ!!」と言って襲いかかってきたのである。
(ちっ……。リリアムが相手となると……。流石に厄介な敵になるだろうな……。俺の力でどうにかなるといいのだが……。とにかくやってみなければ始まらないか……。)とルシが思った次の瞬間だった。突如、どこからか飛んできた槍にリリアムは胸を貫かれるのだった。すると……ルシの前には『聖剣 エクスカリバー』を装備をした『聖騎士』姿の女性と、『魔王』の姿に変わったレイが姿を現すのだった。そして『魔王』のレイが口を開いたのである。「久しぶりですね。まさかとは思いましたが……。あなたの狙いは私だったのですね。」《どういうことなのですか!?》
「こいつは……以前……俺が殺したはずの……。俺がこの世界に来た時に、リリア姫の身体を奪い取ろうとした男だ。どうやら……。こいつはまだ完全に死んだわけではなかったようだな……。だが、何故こいつも一緒にいるのだろうか……。もしかして……。リリア姫はもしかして……リリアムのことが好きになってしまったのか?それと……リリアムと『大魔王』が接触している可能性が非常に高いのはわかっている……。」
「なっ!?なぜあなたはそのことを!?私には何が何だかさっぱりわからなくなってしまいましたよ……。あなたが何を考えているのか全くわかりません。」とリシアがルシファに向かって話しかけてきた。すると……。「なあ……。あんたがリリアの本当のお姉さんなんだろう。そして……リリアは俺の妻なんだ……。頼むから……妹を連れて行かないでくれないか?俺の頼みはそれだけさ……。まあ……。俺には、あんたと敵対しなければならない理由はないが……どうしても、戦わなければならないっていうなら……。俺は、リリアのため……仲間のため……そして、世界の平和のためにあんたと戦う覚悟はあるよ。」と『勇者 神威』に変身している状態のアルフはそう話すと、レイが口を開いてこう話してきた。「私も……リリア姉さんを守りたいと思っています。だけど……。私にも守りたいものが沢山あるのです。その者たちを見捨てて逃げるわけにはいかないんです。そして、私は……この世界を破滅させようとする悪の根源を許さない!!」とリシアに言うのだった。それを聞いたルシは、「ふっ……。やはり……そうだったのだな……。俺がお前たちをここに連れて来た理由は……この二人に会うことが目的だったからだよ。リリアの魂が、俺に教えてくれたのだよ。お前たちがリリアムと会っていることをね……。だから、俺はこの場にいるのさ……。」
そして、その言葉を聞いていたリリアムは「そんなはずはない。そんなことは絶対にありえないんだ……。リリアは僕のものだ。」と言うと、自分の胸に突き刺さっている光の矢を引き抜いた。そして傷口を一瞬にして塞ぐと、ルシの方を見て「お前だけは、生かしておかない……。」と言い放った。そして、リリアに近づこうとすると……ルシがリリアムに向けて魔法を発動した。
「悪いが……俺を相手にするのは……少し早いと思うぞ……。とりあえず……少しの間寝ていてもらうぞ。」と言うと、地面に吸い込まれるように姿を消した。だが、すぐに別の場所に現れると同時に、その瞬間、リリアの背後に現れたのであった。だが、それと同時に光の結界のような物が展開されてリリアを守ることに成功したのだ。
それを見ていたリリスは、「なっ!?いったいどうして私のリリア姉さまのところに転移してくることができたのですか!?あれは、光魔法の最上位に位置する禁術ではないですか!!しかも、どうしてあの方は私が使っていた技を使っているのですか?」とリリスが言うと……。《おそらく……あの男は……。空間系の能力をいくつか使える能力者なのではないかと思われます。もしくは、スキルの能力かもしれません。私達の持つ特殊能力に似たものをいくつも持つことができる者など、今まで聞いたこともありませんでしたから……。》とルシファは答えると、《私も同じ考えです。あの方は何者なのか気になりますね……。》と続けて言った。その瞬間に、今度はルシの身体を雷が襲うのだった。
そしてルシの視界の外から攻撃を放った者の正体を確認するために視線を動かすと、そこに一人の青年がいた。その瞬間にルシファとルシはお互いを庇いながら同時に叫んだ。
《危なかったな。だが、助かったぜ。ありがとう。ところで……リリアの婚約者殿よ。あんたもリリアムと因縁があるんだろ?ここは……協力するべきだと思うがどうだい?それに……。今は時間があまりなさそうだ。とりあえず、ここを離れないとやばそうだしな……。とりあえず、一旦移動しようじゃないか?》
「ええ。もちろんですよ。僕としても、あなたとは敵対する意志は持っていないので安心してくださいね。では行きましょう!!」と言った次の瞬間には……その場を立ち去るのだった。その様子を見たルシとリリスは驚きの声を上げたが……そのまま何も言わずに追いかけることにした。だが、リリスはすぐに二人を逃がさないために移動を始めようとするが、次の瞬間には……リリスの動きが止まる。
「くっ……!!動けん。これは……まさか……『魔眼』の一種なのか!?だとしたら……あの二人を追うのは危険だ……。まずは……。この場所に張られている結界を解くことが先決かもしれない。とりあえず、結界の解析を行い解除方法を見つけ出さなくては……この結界を解除したら、あいつらを全力で殺しに行ってやればいいだけの話だしな。そして……今度こそ、リリアは私が助け出してやる。そのためならば……私自身がこの命を散らすことになっても構わない!!」そう言い残すと、リリスはそのまま動きを止めるのだった。
《リリス!!一体何が起きたんだ?お前は大丈夫なのか!?》
「心配かけてごめんなさい。ちょっと動けなくなっただけで、別に何ともないから気にしないでいいよ。」
そしてリリアムとレイもその場から離れていくが、突然二人の前に現れた人影によって足止めを食らうことになるのだった。
「君達……ここで何をしているのかね……。こんな場所で……戦闘なんて行ったら……とんでもない被害が出て大変なことになってしまうではないか……。まあ、もう手遅れだが……。さっさと片付けさせてもらおうかな。」
するとリリアムはいきなり攻撃を仕掛けるが、目の前に現れた男が瞬時に消えて回避されてしまうのだった。すると男の背後からもう一人の男が出てきて、レイとリリアムを攻撃してくる。
そして二人は攻撃を受けてしまうが、どうにかギリギリで受け身を取りダメージを最小限にとどめることができた。すると目の前の男達に対してレイが「あなたたちは……何者なのですか!?あなた達はこの国では見かけていない人物だと思いますが……。まさか、他国の刺客ということなのですか!?それならそれで構いません。私は……あなた達に殺されようとも構わない!!私は、必ずリリアを取り戻す!!邪魔をする者は容赦しません!!」と言い放つと、『魔王』の姿に変わる。だが……。目の前にいた男達は……。「何を言っているのかわからないな……。俺たちが誰であろうとも……関係ないだろう。お前は今から殺される運命なのだ。大人しくしていろ!!」と叫ぶのだった。だが、次の瞬間に……。「俺が相手だ。この男たちは……。リリアムを知っているようだな……。つまり……俺が倒さなければならないということだな……。お前たちの狙いはリリアムなんだな?リリアじゃないんだよな?だったら、俺は戦う意味がないから……。さっさとこいつらは倒しに行くとするか……。そしてリリアムを倒すことにしようか。」と呟いた次の瞬間には、『聖剣 エクスカリバー』を装備した状態でレイと戦おうとしていたルシの身体を……光の矢が撃ち抜くのだった。そしてルシの姿が現れたと思った瞬間にはルシの全身を雷の攻撃が貫き、そのままルシを気絶させてしまった。その様子を見ながらレイはリリアムと対峙するが、レイが「私に何か御用でしょうか?」と尋ねると、その質問に答えたのはリリアムではなく……ルシファだった。《お前は……リリアによく似ているな……。どうだ?リリアの代わりに……私の花嫁になるつもりはないか?私は、お前のことをとても気に入っているのだよ……。》
「なっ!?ふざけないで下さい。誰が……あなたのような下品な方の花嫁になると思っているのですか?私にはリリアム姉さまだけしかいないのです。」
そして……しばらくの静寂が場を支配するが……再びリリアムがその言葉を発した。
「そんなことを言える状況ではないだろ。俺の敵は、あの方たちではない……。この俺なんだ。だからお前をこのまま見逃すわけにはいかないんだよ!!」
「なるほど……あなたはこの国の王女様のようですね。でも、なぜあなたほどの実力を持つ者が、こんなところにいるのでしょうか……。」
するとリリアはその問いに答えず無言で構えた。そして、「お前は……なぜここにいる……。どうして俺のリリアを奪った……。俺の……リリアを返せ……。」と言い放った。
だがレイにはその言葉が理解できない。そしてリリアが攻撃を仕掛けてきたタイミングを見計らって、レイも攻撃を仕掛けるのだった。そしてお互いに一歩も譲らない戦いが続く。リリスがリリアムに仕掛けようとした瞬間に……何者かがレイの横に出現し攻撃を阻止してきた。だが、リリスの『炎刃』がリリアムを襲ったため、一瞬だけだが隙が生まれたのだ。そのチャンスを見計らっていたリリアムは……一瞬にしてレイとの距離を詰めると『雷帝槍!!』と技を放つが、すぐにリリスに妨害されてしまい不発に終わる。その様子を確認したリリアムは再び距離をとるが……その時にはリリアムはリリアムではなくなっていた。
そして、リリアムが『魔人 リリアム』に変身したことでレイに攻撃の手段はなく……。そのリリアムの攻撃に対処することでいっぱいになってしまうのだった。「くっ……。さすがはリリアム姉さま。やはり強い……。だけど……私にもリリア姉さまのために……ここで負けるわけには行かないんです!!はぁー!!」と、レイもリリアと戦うために自分の力を全て開放する準備を行うと、自分の中の全ての魔力を使って『真の姿 神獣王 レイアースドラゴン』に変化する。だが、その姿になったところでリリアには遠く及ばないことも分かっている。だが……ここで引き下がることはできない。絶対に勝つんだ。と、心に誓うのだった。その思いが届いたかのように、突如リリアムはその場から離れると姿を消した。だが……。すぐにその姿を現すと、リリアムはなぜかレイの背後に立っていた。「えっ!?どういうこと?私が……移動したのは間違いなかったはず……。なのに、なぜ私の後ろを取っているの?」その疑問に対してルシが回答してくれた。《おそらくですが……おそらくあの男は……瞬間移動系の能力を持っている可能性がありますね……。そして……あなたの後ろに回った理由……。それは、リリアムさんから感じられた殺気のせいなのではないかと考えられます。おそらくですが、リリアムさんは自分の姿と能力を隠しているのではないかと推測できますね……。そして、あなたが油断した瞬間に姿を現してあなたを殺そうとしていたと思われます。》その言葉を告げられて、レイは納得してしまう。確かに……ルシファの言う通りかもしれない。そう思った次の瞬間に……再びレイにリリアムの蹴りが入るのであった。だが、今回はなんとか防ぐことができたのだった。しかし……そこからの戦い方は一方的だった。
いくら攻撃を行っても全く攻撃が当たらないどころか、相手の攻撃を避けることもできなくなってしまったのである。だが……次の瞬間には……。「どうやら……そろそろお別れの時間のようだな。これでお前は終わる……。」と言ってリリアムはレイの頭上へと跳躍し攻撃を仕掛けてくる。だがその時、レイがとった行動は意外なものだった。
「はい。あなたのおっしゃられる通りに終わってしまいます。ですが、最後に少しの間だけ待ってくれませんか?そしてお願いがあります。」
「ふむ。なんだ?一応言ってみるがいい……。」
そして……そのレイの問いかけに答えるためにリリアムがレイの前から立ち去ろうとする。その様子を確認するために、リリアムの視界の外に隠れて観察しているルシは驚きの声を上げるのだった。
「え!?ちょっと、何しているの!?なんでリリアムがレイの言うことをおとなしく聞いているの!?っていうかなんで、レイと普通に会話が成立しちゃっているわけ?」
するとリリスも同じような感想を抱くのだった。
「うん。私もリリアムが誰かの指示を聞くとか聞いたことがない……。というより……この状況下で一体どうやって……。リリアちゃんを取り戻すためには、まずはリリアムを殺すことが優先事項のはずだから……。私達だって……。まあ、とりあえず……あいつらの会話を聞きながら待つしかないみたいだな……。一体どうなっているんだ?本当に……。」そして二人は黙って二人の話を聞くことにしたのだった。そして……次の瞬間にレイがとった行動をみて……リリアムだけではなくリリアムと戦っていたレイさえも驚く結果となる。なぜなら……リリアムの攻撃を受け止めただけでなく、そのまま反撃まで行ったからだ。しかも、今までのスピードとは桁違いに早くなっていた。その攻撃を受けたリリアムも驚いた表情をしていた。そして……さらに、今度はレイが攻撃を繰り出そうとしているのをリリアムは察知して回避しようとしたのだが、回避する前にリリアムにレイの拳が突き刺さり……吹き飛ばされてしまう。
だが、その瞬間にレイの背後で爆発が起きて、レイも巻き添えをくらいダメージを受けてしまうのだった。
「レイ!!!あなた!!私の仲間に対して何してくれてるわけ!?」
だが……その声を聞いたのはリリスとルシだけであり……レイは全く気が付いていなかった。そのためレイもリリスが話しかけてきた方向を確認すると、そこには見覚えのある少女の姿があることに気づいた。その少女の名前はリリアといい、この国で最強の剣士として知られている女性なのだが……彼女は普段ならとても優しい性格なのだ。
そんなリリアも今は怒っているらしく……レイに向けて怒鳴ってきたのである。「あんた……リリアのことを知っているのか?まあ……今さらそんなことは関係ないがな……。それより、俺の妹と仲間に手を出したお前を許すわけにはいかない……。俺はお前を絶対に許さないからな!!」と叫び、再びリリアとリリアムは戦いを始めるのだった。
その様子を見ていたルシが、「なっ!?これは……。まさか……こんなことが起きているなんて……あり得ないわよ……。」と言うと……リリスも、「そうだよね……。リリアムをレイアに任せるのは不安だけど……仕方ないから……私たちはレイの加勢にいくとしますか……。」と言った。
「はい。私はルシと一緒にリリアさんたちの方に合流させてもらいます。私は、この方々を拘束させていただきます。それでよろしいでしょうか?」
そして……リリアムをその場に放置してレイたちの戦闘場所に向かうことになったのである。
リリアの攻撃を避け続けているレイを見て、リリアがレイに向かって質問を投げかけた。
するとレイはその質問には答えず、ただこう答えたのだった。「俺は……大切な家族を傷つける奴を許さない……。だから……悪いがお前も倒させてもらうことにする……。俺の家族に手を出すお前だけは絶対に許せないんだよ!!お前を倒すのが最優先目標だと俺の心が教えてくれているんだよ!!」とレイが答えたのだった。だがリリアはすぐにその答えに違和感を覚えたためもう一度レイに聞き直そうとした時……。
「ふっ……。面白い男が現れたものだ……。」と……突然目の前にいたはずのリリアムの姿がレイの後ろに移動しており、攻撃を繰り出してくる。だが……すぐにその動きに対応し、反撃に移るとリリアもレイと似たような攻撃方法で攻撃する。すると、その様子を見つめていたリリスが……レイたちに声をかけた。
「ねぇ……ちょっと、二人とも何を遊んでいるわけ!?相手は明らかに格上の相手なんだから、もう少し慎重に戦わないと駄目でしょ!!」とリリスが忠告をするも……二人は「大丈夫です。心配はいらないですよ。」と答えてくる。すると……いつの間にかリリアも近くにやってきていたリリアムが「なるほど……俺の攻撃が読まれてしまっているようだな……。さすがはリリアと互角に渡り合えるだけの力の持ち主ということか……。」と言うと……。
「ふっ。さすがにお前の動きについていけるように俺もこの力を解放したんだが……俺の動きを完全に見切られるとは……。やはりお前は危険人物だということか……。ならば……全力を持って排除するまで!!『真姿解放!!』」と、叫ぶとリリアムは全身から殺気を発し始めた。その圧倒的な殺気にリリスとリリアはもちろん……離れたところで見守っているはずのルシとレイも寒気を感じ始めていたのだった。そしてリリアムはレイに攻撃を仕掛けようとした瞬間に……急に姿を消してしまう。その出来事にリリスとリリアムは驚くものの……すぐにレイの近くに移動していたリリアムは攻撃をしてくる。だが……。すぐにレイは反応しその攻撃を回避しながらリリアに話しかけようとした。
「おい……。ちょっと待ってくれないか?俺の話を聞いてほしい……。」とレイが言うと……そのレイのセリフにリリアも反応する。「あら?もしかして……あなたが私のお兄さまのおっしゃられていた新しい友達かしら?ごめんなさい。でも……。私の邪魔をしようとするなら、たとえ誰であっても倒すことにかわりはないわね。それに私とお姉さまがいれば、この国に敵などいないはずですもの……。だから大人しくしていてくれない?」と言うとリシアも同意するかのようにレイの方を見ると、「そのようですね。どうやらあなたでは私には勝つことはできない……。すぐに諦めて私たちの言うことを聞けばよかったものを……残念だったね……」とリリスに言い放つのだった。
そのリリアスの言葉を受けてリリスは何かを察したようで……。
「ああ……。やっぱりそうなったわけね……。そうか……あの子たちが……。それじゃ……しょうがないね。レイと私でどうにかしないといけないわけね……。全く……あの子のお陰で……厄介なことになってしまったみたいね。」と言ってレイとリリアムが戦闘を始めた時にできたクレーターをみつめているのだった。その光景を見ながらルシは《あの二人が本気で戦えばおそらく私達なんかよりも強いでしょうからね……。ここは私とレイ様で何とかしないといけませんが……。リリアムがリリアさんを狙ってきますから、私もそちらの対応にまわらないとなりませんから……。レイ様も相当にレベルを上げましたが……まだ、完全には私に及ばない状態なんですよね……。なんとかしてリリアムの注意を私に引いて……。リリアムがリリアさんを狙う前に決着をつけたいのですが……。どうしたものですか……。》と考えていた。だが、その時に突然……。「え?ええぇ!?嘘!?ちょっと待ってください!!なんなんですかねこれ……。どうなっているのでしょうか?なんなんでしょうか……。」とレイアが困惑しているような声を上げたのである。
レイアの声を聞いた三人は一斉にその方向をみると、なぜかレイアの隣には見たこともない女性がいたのだった。その女性がこちらに向かって手を振ってくると、突然リリアが……。「あぁ……そういうことだったのですね……。ようやく私達の運命の相手がこの世界に来ていたのですか……。やっと私達にも幸運が舞い降りてきたというわけですね。ふふっ。本当に楽しみだわ。これからの生活にどんな素敵なことが起こるのだろうと思うと胸が高まるばかりよ。もう……早く結婚したいわ!!あ~……早く会いたい。私と結ばれるために産まれてきた愛しの男性に早く出会いたい!!もう……我慢ができない!!」と、興奮し始めた。その発言を受けたルシは慌てて……。「ちょっと待ちましょうよ……。いきなりそんなことを言ったところで相手に警戒されるだけだと思うんですけど……とりあえず落ち着きましょう。私達がレイ様のためにも、そして、リリアムの計画を邪魔するために、まずはこの場にいる全員を倒さなければならないのだから……。そして、最終的には私達の目的は達成することができる。つまり、レイ様と結ばれることも……。だから落ち着こうかリリスちゃん。あとは、ルシさんお願いします。」と言った。だが……リリスはルシの発言を聞き流して、ずっとリリアムを睨んだままだった。
(なっ!?どうしてリリスがこんなことになっているんだ!?あいつは……本当に……何者だ!?そして……あの女もリリスがあんなことを言う理由が全くわからない!!)とレイは考えていると、レイのそばまでリリアがやってきた。
「レイ君。私は……レイ君のことは絶対に守るから……。だから……絶対に死なないでよね……。レイ君は……私の初めてを貰ってくれないと困るんだから……。」と顔を赤くしながらも恥ずかしがることなくはっきりとそう宣言した。その様子を見ていたリリアムは……。「お前……そんなに強いのか?見た目だけで言えば、俺の敵になる奴だとは思えなかったが……それは間違いだったのかもしれないな……。」と言いながら剣を構えるのだった。
その様子をみたレイは、すぐにリリアとルシにリリアムを任せると、一人でリリアが攻撃してきた方向にある大きな樹に向かうと、その木に向かって……。「俺はここにいるぞ……。お前の相手は、この俺が引き受けた。来い……。俺の力を思い知らせてやる。そして……二度とリリアたちに近寄ることができないようにしてやろう!!」と叫んだのだ。するとその言葉を耳にしていたルシは驚き……。「リリアムと戦うんじゃなかったのか!?なぜ今からリリアムと戦おうとしている?もしかして……。レイアがリリアムと出会ってしまったということなのか?一体どういうことだ……。いや……もしかしたらこれはリリアムにとっては都合の良い状況なのかもしれないな……。このまま、私がリリアムと戦い続ければ、いずれ私も疲れてくる……。そしてリリアムを足止めする存在がいなくなったら……リリアムはすぐにリリアのところに向かい、リリアと結ばれようとしてしまうに違いない……。ならば私は、私の仕事をしなければならない……。レイ様が負けてしまった場合、すぐにリリアたちの元に向かって……。レイ様の手助けをしなければ……。)」と考え、急いでレイのところに行こうとした時……。「おーっと……。あなたの相手をするのは私よ。リリアムさんの邪魔をされたくないの……。だから、ここでおとなしくしてもらわなければ……。」と言うとルシの背後からリリスが姿を現すのだった。
すると……急に姿を現したリリスに対して、すぐにルシは攻撃を仕掛けるのだったが、あっさりとその攻撃を避けられてしまい、反撃されてしまう。「くぅ!!まさか……。気配を完璧に消していたというのに、どうして私の位置を把握したの!?あなたは……もしかしなくても……。ただ者ではないようね……。仕方ありません……。リリアムがリリアさんのもとに向かった後にまた戦うとしましょう……。それじゃ……リリスさんでいいですよね。あなたには申し訳ないが……私の仕事のため、邪魔はしないでもらわないと……。それにあなたはレイ様をかなり怒らせている様子ですし……。覚悟をしておいた方がいいかもしれませんね……。レイ様を敵に回したことを後悔するといい……。」と、言うと、レイリアとリリスの戦闘を見つめ始めるのであった。
その頃、リリアムと対峙していたリリアは……そのあまりの圧力に耐えられず後ずさっていた。リリアムはその様子を見て「おいおい……。何を怖気付いているんだよ……。この程度の圧力ならまだまだ弱いくらいだよ……。」と言うと、続けて「もっと……殺気をぶつけても構わないんだぜ?」と言うとリリアはさらにプレッシャーを感じた。すると……今度は、リリアは突然自分の服をビリビリッ!!っと破いたのだった。すると……。突然現れたリリアの姿を見たリリアムは驚いたように「ほぉ……お前……。面白い格好をしているんだな……。その衣装を纏っているお前なら、それなりに強いということか……。よし……。それならお前から先に殺させてもらうことにするか……」と言うと……。リリア目掛けて一直線で駆け出してくる。
その様子を見つめながらリリアは……。《こいつを倒せば……。私を待っているのは……愛しの旦那様と一緒の時間。そして……あの子と私と三人で幸せになれる未来が訪れる……。それじゃ……始めましょうか……。》と、考えるとリリアムの動きに合わせて攻撃をしようとした瞬間……。目の前に突如現れた人物によってその攻撃を止められてしまう。
リリアムは突然の攻撃に驚き……。攻撃をやめようとしたが……。その人物があまりにも早すぎて避けることができなかったのである。その攻撃は、そのままリリアに襲いかかろうとしたが、リリアもギリギリ回避することができたのだった。
リシアの攻撃を受け止めたのは、リシアの双子の姉であり……レイの義理の姉でもある、リシア・ハーシェルだった。
リシアの攻撃を受けたリリアはそのまま後方に飛び距離を取ったのだが、すぐに体勢を整え再び攻撃を開始する。するとその攻撃に合わせるように、先程と同じ攻撃を再びリシアに繰り出そうとしたが……。その攻撃は再び別の女性の手によって阻まれることになる。「そこまでだ!これ以上の戦いは無駄に死者を増やすだけだ。お前達はいったい何をしたいんだ?リリアムと手を組んでレイ様を倒すための手引きをしたまではわかる。そして……その後は、レイ様と一緒に行動して、自分達の計画の妨げになりそうな者を消すつもりだったのか……。そんなにレイ様が大切な存在だったか?確かに……。あの方の実力であればリリアムと二人だけで国を落とすことができるほどの力を持っているだろう。
だがな……。あの方は……そんなことは望んではいないはずなのだ……。だから私は、お前達に手を貸すことができないのだ……。残念だが……ここで諦めてはくれないだろうか……。私はお前達が死ぬところなど見たくはない……。」と言って、レイアとリリアはお互いに見つめ合い……同時に首を縦に振った。そして……。リリアはレイの方をみると「レイ君は大丈夫なの?なんだかすごく強そうに見えるけど……。私……勝てるかな……。ちょっと不安だな……。」と言うとレイは笑顔を浮かべ「安心しろ……。リリスもついているんだから……。絶対にあいつはリリアを守ってくれるはずだ。だから、絶対に……あいつは勝つと信じろ。あいつを……信じるんだ。そして……あいつを信じてやれなくてどうするんだ?もし負けたらどうしようとか……そんなことを悩まなくていいだろ?そんなことを考えていても……意味がない。だったら、信じて待っていろよ。お前は俺が必ず守るから……。俺がお前のことを悲しませることなんて……絶対にない!!」そう力強く言うと……レイはリリアに手を差し出した。するとリリアは嬉しさが込み上げてきた。
(うわぁ〜嬉しいな……。私の事を心配してくれるのは、レイ君しかいないと思っていました……。私……レイ君のことを本気で好きになってもいいよね?)と考え、その差し出された手を掴むと……。その二人の姿を見てリリアムは……。
「まさか俺の前でいちゃつくとは……。舐められたものだな……。だが、これでようやく本気が出せる。」と言い……剣を構えると、「行くぞ……。お前達がどれだけの力があるのか見せてみろ……。そして……この国の王に相応しき力を持つ者の力を見せてくれ!!」と、言いながら、リリアムに向かって突進をしていく。
するとレイリアも「私も一緒に戦います!!」と声を上げるとリリアの隣にやってきて戦闘態勢に入るのだった。リリアとリリアムとの戦闘が始まり……。リリスとルシはその様子をじっと見つめていたが……。その時ルシはあることに気づくのであった。
(おかしいな?リリスはどうやってリリアの存在を知ったんだ?リリアはこの世界に転移してから一度もリリアムには接触していないはず……。
ならどうしてリリスがこの場所にいることが分かったんだ?そもそもあの魔物は、この世界ではほとんど生息をしていなかった存在。そしてリリアム自身もリリスの存在は知らなかった……。なのにどうして……。)と考えていたルシだったが……すぐにリリスの方を見るとリリスもこちらを見て微笑んでいることに気づきルシはすぐに考えを止めることになる。そして……二人は同じ結論に達したのだ。
(まさか……こいつらが裏切ったのか!?もしかしたら……リリスの目的は最初からリリアを殺すことだったのか?それならば全て納得ができる!!リリスの能力があれば簡単にこの世界を滅ぼすこともできるからな……。それを阻止するために、まずはこの世界の魔王をどうにかする必要があるな。とりあえず……私達だけでもレイ様に合流して援護を行う必要がありそうだ。そして……その後、この国に蔓延る悪を根絶やしにしなければ……この国が大変なことになってしまう。それはなんとしても避けなければならない!!リリスがこの国を狙っているならばなおさらこの場を離れる必要があるな……。
私がこの女を押さえている間に早くリリアムを倒してレイ様と合流するぞ!!)と心の中で呟くとリリスに対して攻撃を仕掛けた。リリスもそれに応じて攻撃を仕掛けるがお互いの攻撃が当たらない……。するとリリスの表情は少し歪むのだった。
(さすがは私の妹……。ここまで私についてくることができている。だが……そろそろ限界が近づいているのではないでしょうか……。それに……まだ私は全力を出してはいませんからね……。さあ、これからが本当の意味での戦いの始まりです。頑張ってくださいね……。私を失望させないでくださいよ?私はこんなところで負けるほどヤワではありませんからね……)と考えているのと同時に……「あなたでは、もう私に勝つことはできないと思いますよ……。だから今から降参をすると言う選択肢を選んでもいいですよ?」とルシに向かって話しかけるのだったが、その言葉を聞いたルシはすぐに怒り狂ったように叫び出すのだった。
「ふざけるな!!なぜ私がお前に敗北しなければならないんだ!?」と言うと、ルシはさらに攻撃を仕掛けようとしたのだが、なぜかその瞬間……。体が痺れて動くことができなくなっていたのである。その異変を察してルシは焦ったように叫ぶのだった。
(しまった!!こいつらの能力を忘れていた!!こいつの能力は自分の体の自由を封じるだけではなく、相手も同様に動けなくさせることができるんだった……。
このままでは私だけじゃない……。私と一緒に戦うはずだった仲間までもが動けない……。
それどころか、こいつらに攻撃を加えることもできないし……。これじゃ戦うことすらままならないじゃないか……。
でも……私は……ここで諦めることは許されない。レイ様はきっと……。私よりも遥かに上の強さを誇っているはず……。なら……この程度の逆境など、乗り越えられなければ、この世界を救えることなど不可能に近いだろう。だったら……ここで諦めずに、最後まで戦うしかないんだ……。私だってレイリアの姉だ!リリアムを倒すことができるかもしれないんだ。なら……せめて、レイリアのためにできる最後の仕事をしたい!!だから……。お願い!!動いて!!!!私の足よ!!私の腕!!私の仲間に手を出させてはいけない!!私は絶対に……諦めたりしないんだから!!!!」と、自分の意思とは裏腹に体は一向に言う事を聞かない状況の中……必死に戦い続けるのだが……。やはり徐々に追い詰められていってしまう……。その様子を目の当たりにしていたレイリアとリリアも、加勢しようとするのだが、全くといっていいほど動きが取れなかった。すると突然……ルシの近くに、誰かが現れ、ルシの体を触り始めた。そして「ご苦労様。あなたはよく頑張りましたよ……。後は……私に任せなさい。」と言うと、急にルシが大人しくなり……まるで別人のような顔つきになる。そして……。
「リリス……。お前が来てくれたのか?すまないが……もう少し待っていてくれないか?あいつは……私の手で始末をつけないといけないのだ……。それが……私のケジメなのだ。だから……もう少しだけでいい。時間稼ぎをしてもらえないか……。あいつは私の獲物なのだ……。だから、あとは……頼んだぞ……」と弱々しい声で言うので、その人物は笑顔で「わかった。任せておきな。あなたの分まで私は暴れてくるわ……」と言うと、そのままリリスに攻撃をし始める。そしてその人物が持っている武器を見る限り……。レイリアと同じ聖剣であることが確認できるのだった。
レイアはそんな光景を見ていることしかできなかったのだが、ふと視線を横にやるとリシアがいた。その目は、レイアのことだけを真っ直ぐ見つめており……すぐにリシアの考えを理解してしまう。レイアもリシアに視線を合わせ、お互いに強くうなずき合う。そうして、二人の女性が同時に動き出すと……。お互いに手を組みあい、力を合わせて……二人に向かってくる攻撃を止めようとしていたのだった。その様子を見つめている二人に、突然……後方から声をかけられたので二人は後ろを振り返る。そこには……リリィと、見知らぬ少女が二人立っていたのである。その少女たちを見た瞬間に、リリアは驚いた表情をして固まってしまい……その反応を見て、レイアとリリイは、何かを確信するとリリスの方を見ると、レイとリリアムは既に戦闘を開始していた。そして……。先程現れた女性はリリスと戦い始めていて、レイリア達もリリアと共に戦っていた。
「やっぱりリリアムさんは、この世界を滅ぼす気みたいだな……。そしてリリスは……おそらくはリリアムさんの邪魔をするものを排除に動いたと言うことか?だとしたら俺達も手伝わないとな。リリアは、あいつに傷一つ負わせることができないだろうから……あいつはリリスの相手に専念させるべきだな……。だから俺達はあのリリアムという男に集中すればいいはずだな。よし!!行こう!!リリスの相手をするのは大変だと思うけど、ここは協力しよう!!」と言って俺はリリアの手を引っ張り走り出したのだった。すると、リアリとレイリアも同時に俺達の方へ走って来たのだった。そうしているうちにリリアムは、剣を振りかざすと大きな衝撃波が飛んできて、その衝撃に耐えられずにレイアとリリアは地面に叩きつけられるとそのまま気を失ってしまうのだった。
リリスと対峙する人物。彼女はレイリア・グレイフォードであったのだ。その姿を確認してからレイスは驚きの声を上げていた。そして……。二人はお互いの姿を確認してから睨み合っていたのだ。その様子を見てルシは呆然と立ち尽くしてしまっていたのだ。
「あなたは誰ですか?なぜ私の妹の力を使えるのです?」
「まぁ〜色々と事情がありましてね。今はあなたをここから追い返すために協力しますよ……。それと私のことは『ルシ』とお呼びください」と言い放つとその瞬間に……リリスとリリアムは姿を消してしまった。
その頃、大神殿にて、ある女性と、そして……もう一人の女性とが、会話をしていたのである。それは、レイが倒したはずのアルフリードであった。そしてもう一人の女性の正体は……。『大魔王 ダークネスマスターロード ルシフェル』であり……リリムの妹である。その二人が、レイの目の前に現れたのであったのだ。そのことに驚くと同時に……この二人には逆らえないと思ったのかレイはすぐに頭を下げて謝罪を行う。その様子にアルフが微笑むと、「気にしなくていいですよ?それより、どうしてここに?」と言うとレイも慌てて話を始める。まずはルシの存在を説明しながら、自分が異世界人だという事実を伝えたのだった。その話を聞いた二人は、レイのことを優しく受け入れたのだ。だが……この世界に害を成す存在であると認識を改めることにしたルシは……。「それでは……まずはあなたから片付けないとですね……。」と言うと、一瞬でレイの前に移動してくる。それに気づいたレイが、身構えるのと同時にルシがレイに向かって攻撃を仕掛けるが……。それを難なく避ける。
(やはり……レイ様の能力はすごい……。身体能力だけでなく……。魔力の質も……。今まで見たことが無いくらいの……。この力は……危険すぎです。でも……今のこの方は……。本調子ではない。それならば……)と考えていると、レイは、リリアやリリスと同様に自分の体を動かすことができるようになり……。その隙を突いて攻撃を行うが……。簡単に回避されてしまうのだった。
(やはり……一筋縄ではいかないか……。でも……。この世界のためにも、リリスを倒すためにも、私は負けられないんだ……。この世界を……。私が守らなければ……。でも、どうしたら……)と考えながらリリアムの方を確認するが……。そのリリアムが、リリアとの戦いに苦戦をしている様子だったので、すぐに援護に向かおうとするのだが……。
「悪いが……君だけに構っている暇はないんでね。君はここで足止めさせてもらっておくからね……」とリリアムが、魔法を放つが、レイはそれを避けずに受け止める。だが、ダメージを受けることなくレイはその攻撃を受け止めた。そんな姿を見てリリアムは、驚愕の表情を浮かべているのだった。
「馬鹿な!?私の攻撃は……全て無効化されるのか!?くっ……。こうなったら……。これでどうだ!!《暗黒の十字架》」と言うと同時にリリアムの体が黒く染まり始め……そして黒い闇に包まれたのだった。その異変にレイも気づいて、すぐにレイの体は、白い光で輝き始めるとそのままルシのところまで向かっていき、攻撃を仕掛けようとする。だが、その行動すらも読まれていたかのようにルシに避けられてしまい、その瞬間にリリアムの一撃を受けて、吹き飛ばされてしまう。さらにリリアムの攻撃はそれだけに止まらず、闇の波動を飛ばす。それを見たレイも光の矢を放ち相殺しようと試みるのだが、リリアムの方が早く放たれていた攻撃のため……攻撃を防ぐことができなくなってしまう。そしてリリアムの攻撃を受ける前に、リリスがレイの元に駆けつけようと走ってくる。そしてレイも何とかしてその場を離れようとしたのだが、その時すでに目の前にまでリリアムが迫ってきており、防御することしかできずにそのまま押し切られる。その瞬間にリリスも、リリアムによって殴りつけられ、そのまま意識を失いかけていた。そしてその様子を確認したリリアムは……とどめを刺そうとするのだが、レイは咄嵯の判断で聖盾を発動させると……リリアムの攻撃を完全に防ぎきることに成功する。そしてその瞬間、上空にいたはずのリリアムの体を拘束して地面に向かって投げつける。
するとそのタイミングでレイも地面に着地するのだが、そんなレイに対して、リリアムが接近して攻撃を仕掛けてきた。レイはなんとか聖剣の力で、攻撃をガードするが……。リリアムの力は予想以上に強く反撃ができない状況に陥らせられてしまう。そんなレイの状況を見ていたリリスは、必死で打開策を考え始めていたのだが、その間もずっとレイアとリリィは気絶しているままで……レイアに呼びかけることぐらいでしか現状を変えられる方法が見つからなかったのである。その様子を見ていてルシは……。「仕方ない……。本当は使うつもりはなかったが……このままリリアムがやられれば計画も失敗だし……これ以上被害が拡大するなら……。あの子を使ってみるしかないかな……。リリアちゃんにも見せていなかった切り札だけどね……。あれだけは使いたくなかったけどね……。もう手段は選ばないか……。私も本気で行くよ」と真剣な表情をしながら言い放つと……。急にレイが苦しそうになり始めて……その場にうずくまると動かなくなってしまった。その様子を見ているだけだったレイリスは、心配になってレイの側に寄ろうとするが……。そんなレイリスの前にルシが立ち塞がる。その目は冷酷な目をしており、まるでゴミを見るかのような冷たい視線を浴びせてくるのだった。レイは苦しみ始めており……呼吸が乱れている状態になっていたのである。
その頃、リリアとリリィはというと……。未だに二人は気を失っており、動くことができない状態だった。
「おや……。まだ起き上がってこれないんですね?リリスの時のように……すぐに終わると思っていたのですが……少しやり過ぎてしまいましたかね?まぁいいです。それよりも……。あなたたち二人にはまだ用事があるんですよね。なので死んでもらいますね。《デストラクション ワールド オブ バフォメット アンド ゴーゴン》!!」と言うと、レイとレイリスがいる場所だけ……世界が崩壊していくのであった。
そして、レイとレイリスがいた場所に、リリアムが近づくとそこには血まみれで倒れている二人が倒れていたのである。そしてレイの方に近づいて、胸元に手を当てると、リリアムはニヤリと笑みをこぼす。そして……「この心臓が……リリスさんの……。さて……。次はリリスさんを殺しに行くとしますか……。ふふふ……あなたたちもすぐに……同じ所に送ってあげますよ……。」と言って立ち去ろうとした時だった。いきなり……リリアが動き出すと……そのまま立ち上がってくる。そして、「お前の相手はこのあたしだよ……。この野郎……」と言って、レイからリリアムを引き離そうと試みる。
するとリリアが攻撃を仕掛けると、その一撃は軽々と受け止められてしまって、逆にカウンター攻撃を受けてしまったのだ。そしてリリアムは……。「ふぅ〜ん……。なかなかいい攻撃力を持っているようだね。ただ……僕には効かないけどね……」と言いながら……。そのままリリアのことを攻撃し続ける。だが……。いくらリリアがダメージを与えられても……徐々に再生していく。そして完全に立ち上がることができた時には……。既に傷は全て癒えてしまっていたのだ。その様子を見ていたルシは、驚きながらも冷静に対応するように心がける。
「どういうことだ?この力は……リリアスのはずだろ?なのに……どうして……回復能力が備わっているんだよ……。」
そう言って動揺している間にも……。どんどん攻撃のスピードが増していき……。とうとうリリアが地面に倒されてしまう。それでもなお……。立ち上がろうするのだが……。立ち上がっては、また叩きのめされてを繰り返していた。だが……。いつの間にか……リリアムの攻撃の手数が減ってきていることに気が付き始めると……。リアリも立ち上がり、「ようやく、こっちを向いたね。あんたが……敵だってことも……全部分かってるから……。絶対に許さないから……。私の友達に……。手を出そうとした報いを受けてもらうから!!」と言い放つと……一気に形勢逆転して……リリアとリリアムがお互いに拳を交え始める。リリアムがリリアに殴りかかろうと腕を振ると……。それを軽く避けてそのまま回し蹴りをして、リリアムを吹き飛ばす。だがそのリリアムも空中に飛び上がると、「ダークスラッシュ」と言って攻撃してきた。その攻撃を難なく避けると……。すぐに今度はお互いの距離を縮める。そして至近距離で、パンチの連打を打ち合い……激しい戦闘が始まったのだった。だが、しばらく互角の状態が続く。
そしてリリアンとルシのところにまでその音が聞こえてきていたのだった……。そんな中……突然ルシが苦しみ始め……その場にうずくまると……。すぐにリリアムの体が黒く染まり始めたのである。その光景を目にしていたレイリスとレイは驚愕しながらルシを見つめている。そんなルシが黒いオーラに覆われ始めると、その黒いオーラーが体全体を包み込む。そして、黒い翼と白い光を帯びた髪色に変化する。そんな姿を目の当たりにすると、二人は警戒態勢を取るが……。その瞬間にルシは姿を消すと……。次の瞬間にリリアの後ろに回り込んでおり……背中を殴りつけようとしていた。それに気づいたリリアは咄嵯の防御をする。だがその攻撃の威力が強すぎてガードが意味をなさず、そのまま吹き飛ばされる。さらに吹き飛ばされたリリアに狙いを定めると……。連続で攻撃を繰り出してくる。その猛攻を防ぐことができずにダメージを受け続けると……ついに体力の限界に達してしまい……。その場に崩れ落ちてしまうのだった。
だがその時……リリスが目を覚まし……すぐに行動に移す。そしてルシに向けて「よくも私の親友を!!絶対に倒すんだから!!はあぁぁぁー!!はあっ!」と言って攻撃を開始するが……。リリスの攻撃はその体に一切当たることはなく避けられ続けてしまう。その間にもリリアが回復し、すぐに体勢を整えて攻撃に参加すると、それに合わせてレイも参戦する。リリスがリリアと協力してルシに攻撃を仕掛けるも全く当たらないでいると、そこにルシが現れた。だがその体はボロボロになっており……そのルシに向かって……。リリスが魔法陣を展開するとそこから無数の雷が発生して、それがルシに向かって降り注ぐ。すると……。流石のルシも直撃を受けて……。その体は激しく燃え盛るように光り輝いていた。
するとリリスの体が紫色の光を帯び始め……レイも緑色の光を帯びる……。その光を纏ったまま……。「私たちの力を合わせて……必ずルシを倒してみせる!いくよレイ……。一緒にルシを倒すよ!!」と言うと……同時にルシに攻撃を仕掛けたのであった。
その頃……その頃……。リリィの方はというと……。必死に戦ってはいるのだが……。中々ダメージを与えることができなかった。それもそのはずで、この場にいる全員が異常なほどの防御力を誇っていたからだ。それに加え、竜族も強力な力を秘めていたのである。
その状況を見ていたルシが……「くっそ……なんなんだこいつは!?僕の攻撃を受けているっていうのに、なぜこうも余裕そうにしているんだ……。」と、かなりイラつきながら言い放っていたのである。その様子に対して……。リリィが不気味そうな表情を浮かべる。
(おかしい……。こんなにも力のある相手に私は負けないはずだったのに……。まさか……私が弱まっているなんてことはないよね?そうだとしたら……本当に私は……ここで死ぬ運命になるかもしれない。)と、思い始めていた。そんなことを考えながらも必死に攻撃を続けていたのだが……。
すると……リリスはレイアに語りかける……。「ねぇ……レイア……。私たちは今まで何度もピンチに陥ったことがあったわよね?それでいつも……レイアが助けてくれてきたでしょ?レイアはさ……。本当はすごい人だと思うんだよ……。でも、あなたは自分が弱いと思っていない?」レイアは何も答えずに……無言のままであった。
「ふふふ……。やっぱりあなたは……。自分の実力が足りないと思っているようね。あなたの力は誰よりも秀れていて強いものなのよ。でもね……あなたは無意識に自分に制限をかけてしまっているみたいなの。それは……『勇者』の力があるということ。その力があなたを苦しめているのよ」そう言うとレイナは「何を言っているんですか……。あなたは『神』の使いでしょう……。『神』が『勇』者の『者』に『聖』剣を与えてくれるのは当然ではないですか。それと私の持つこの剣が一体どんな関係があるのですか……。」と真剣な眼差しで見つめていた。するとリリスが微笑みながら……。
「いい質問だね……。確かにあなたが思っている通りなのよ。ただね……この世界において……一番重要になってくるのはそこなのよ。そもそもの話だけど、どうしてレイは聖剣を持つことができてると思う?普通の人間は『勇者』じゃない限り持つことはできないはずなのに……。なぜかというと……。『魔』を宿していない存在だから……。その条件に当てはまったレイだけが持っている武器こそが、『魔剣エクスカリバー レプリカ』。その剣の効果は、魔力を吸収したり、魔力を流し込むことによって……一時的にステータスを増加させることができるといったものよ。でも……あなたはそんなこと知らなかったわけだし、実際にレイアは『勇』者であるにも関わらず……。自分の力を抑えるように制限しているの……。」そう説明された時、レイヤが「リリスさんは……このことを知ってたんですね……。」と言い出すと、レイが少し驚いていたが、冷静さを取り戻して、「だったらどうすれば良いのですか……。教えてくださいよ。」と懇願してくると、レイスはレイアのことを見て、それから再びリリスの顔を見ると……レイアは覚悟を決めて……リリスの方を向いた。
そしてレイアは……ゆっくりと深呼吸をして、「私は……。レイが羨ましいよ……。だってレイの持ってる剣の方が、本物だって知ってたんでしょ?そして……。この世界における本物の強さを証明できると思ったからこそ……。この世界のために戦いたいと言ったんじゃなかったの?なら……。本当の力を発揮してよ……。このままじゃ勝てない相手もいるし……。今ここで立ち止まってる暇はないはずだよ!!ほら早く行ってきなさい!!」と言って……リリアの元に行かせるのだった。そしてその様子を見つめていたリリスは「レイ……。あの子も相当悩んでたみたいね……。それに、リリアちゃんもね……。」と言って笑みを浮かべる。その言葉を耳にしていたレイは驚きながら……。
「どういう意味なんですか……。それにレイアさんは、この事を知っていそうでしたけど……。」そう聞くとリリスが「まぁ……それは後に話すとして……。今は目の前の敵に集中しないと……。この敵はかなりの厄介ね……。でも……倒さないと先には進めないしね……。」と冷静になり始める。
「とりあえずは……あの二人を倒さないとな……」とレイヤはつぶやく。
するとその時……。突然リリスの動きが悪くなる。「なに……これ……。急に……。体の調子が……。」と言い出すと、突然体が震え出し……。その場でうずくまってしまったのだ。その異変に気付いたレイヤとリリアとリリアムがリリスのところに駆け寄る。だが……レイナもルシの攻撃により動けなくなりつつあった。
その状況の中で……ルシが笑い出したのだった。
リリスとリリアの攻撃でなんとか動きを止めることに成功したが、そこでリリアの様子がおかしかった。苦しそうな表情をしながら地面に膝をつけてしまう。そのリリアの様子を見たリリアは……。心配して、すぐにリリスに「大丈夫?何か体調悪いとかあるの?」と問いかけると……。リリスが苦悶した表情を浮かべる。
そして……レイアはルシがこちらを見ていることに気づき……警戒して、ルシを見つめ返すと……。リリスの様子も気になったが、今はまず、ルシを倒さなければならないと考え直して……。ルシに向かって攻撃を仕掛けようとしたその時……。ルシの口が開いた。そこから聞こえてくる言葉が、その場の状況を大きく変えることになるとは誰も知る由がなかった。
リリアムとルシがお互いに殴り合いを始める。その攻撃の余波は、リリア達のもとにも届き始める。そしてお互いの体にダメージを蓄積させると……リリアムが「くそっ……。なんて硬い体なんだ……。全然歯が立たないじゃないか……。こんな奴は初めて見たぞ……。でも……お前も限界が近いようだな。俺ももう長くはもたないだろうが……。それでもお互い最後の一撃を放つしか道はなさそうだ。行くぜ!!」と言うと、二人は構えて同時に攻撃を仕掛けようとする。
リリアンがルシの背後に回る。その気配を感じたルシはリリアンの方を振り返ると、その顔には怒りの形相が浮かび上がっていた。その視線がリリアから一瞬離れると同時に……リリスは隙を狙って攻撃を行う。
ルシは攻撃に反応してリリスの方を見るが、そこには既にレイヤとレイがいた。ルシはその攻撃をガードするしかなかったが、その衝撃に負けて……後ろに弾き飛ばされてしまう。その反動で体勢が崩れてしまい……。ルシはリリスのことを目で追いながら攻撃に備えるが……いつまで経っても攻撃を仕掛けてこないので……後ろを振り向く。だがそこには何もなく……。周りを見渡すもその姿を確認することができないでいる。
その頃……。アリア達は周辺の調査を終えて、竜族のところに戻り……情報を交換をしていた。その中で竜族からは……リリイとリィのことが語られる。この二人が生きていたことや、この場所にいたことを聞かされたが……レイラだけは違った反応を見せる。それは、自分の知っていることと照らし合わせてみると……二人のことを詳しく知り過ぎていると思っていたからだ。そのことに違和感を感じ、ルシとの戦いで感じた違和感を思い出したのであった。
「おい!そろそろいいだろ?俺にも話させてくれよ」と、その話を遮り……。自分の仲間に話しかけたのは……『勇者』アルスであった。
そのアルスの声を聞いたアルスが振り向いて、少し驚いたような顔をするが……。その声に反応するのはルシだけで……。そのルシに他の者が警戒するように見据える。
「おや?アルス様ではありませんか。ご無沙汰しております。しかし……なぜあなたがこの者たちと一緒にいるのですか?」ルシのその発言を聞いて……。アルスも少し驚くも……「まぁいいだろう。実はな……。お前を倒すために色々と調べているんだ。」と、平然と答えると……。
その答えを聞くなり、ルシは呆れた表情になる。そして……。「はっはっはっはっ……。あなたがですか?冗談は程々にしてくださいよ……。私が知らないと思っているのですか?あなたが魔王を倒したことなどは……我々にとって当たり前の知識なんですよ?それが一体何を考えてそんな戯言を吐いているのかわからんが……これ以上くだらないことを言うなら……。殺すことも考えなくてはいけませんよ?」と、忠告すると、それを聞いた瞬間に、その場の雰囲気が変わる。だが、それもほんの僅かな間だけであった。すぐに元に戻るも……。その場にいた誰もがルシの強さを知っているため……迂闊に動くことはできなかった。そんな中……。レイラだけが一歩踏み出して、「ねぇ……あんたたちってさ……。そんなにも弱いの?」と言ってしまうのだった。
「ほう……。面白いことを言う小娘だな。私のことが強いとでも言うのか?」とルシがレイラの発言に突っかかると、それを見ていたアルスがレイヤに話しかけた。
「おい……どうしたんだあいつは……いきなり挑発を始めたが、なんかあったか?」「わかりかねるが……あの時リリスのことで、俺が怒ってしまったことがあってな……。多分そのことが原因で少し機嫌が悪くなっているだけだと思う。」「ああ……。それで怒ってたのか。でも今は落ち着いただろ?どうしてまだ少し苛立っているんだよ……」「わからねえけど……多分、今の状態でルシと戦えば負けると思って、どうにかしないといけないと思っているのかもしれないな……」「確かにそうかもしれねーな……。だが……このままだとまずいな……。リリスとレイリアのこともあるしな……。まぁ……それは後回しにするしかないとして……今はすぐにあいつを倒さないとな……」「そうだな……。だが……今の状態のリリスは危険すぎる……。下手したら……俺達まで殺される可能性もある……。なんとかリリスの動きを止められる方法を探らねーと……。」
「そうね……。このままじゃ本当に殺されちゃうしね……。でも……。」そう言いかけると……。レイリアは何かを思いついたかのように、レイヤに耳打ちをした。
レイヤはそれを聞くと……。「な、なんだって!?そんなことができるっていうのか……。まぁ……。やって見る価値はあるかもだけど……。失敗しても知らねーからな……。」と、不安そうにしているレイヤの姿を見て……。リリアとリリアムは、そのレイリアの言葉を聞いていた。
リリアムがレイナを担ぐと、「さてと……。とりあえずはリリスの元に向かわないと……。早くリリスの援護に行かないと……まずいわよね……。それにあの男の動きが少し鈍くなったのもあるんだけど……あの男……何か隠し持ってるみたいだし……。それにリリスの方にはまだ余裕は残しているみたいだし……あの子一人でも勝てる可能性は高いけど……。やっぱりリリアの実力を一度見ておいた方がいい気がしてきたし……。」と言うと……。
リリアムが走り出すと、レイナは驚いていたが、リリアのところに連れて行かれると……そこには既にレイムもいた。
「あ、あれ……。なんでここに?」と言って戸惑っているレイに対して「まぁ……ちょっとね……」と言って説明をする気はなかった。その様子を感じたレイだったが……今は聞くよりも目の前の戦いに集中すべきだと思ったのだった。そのレイの考えを感じ取った二人はすぐにルシに向かって攻撃を繰り出し始めるのだが、その動きを察知してか、ルシは全て避けるか弾くようにガードしていく。
(こいつ……。まさか、この状態でここまで動けるなんてな。これは相当厄介な敵になりそうだな。とりあえず今はこいつの体力を削ることに集中するべきかな?)と思いながら攻撃を続けている時に異変が起きた。突然リリスの動きが悪くなるも……すぐに立て直していたのだった。そしてその異変が起きる前にレイヤとレイは動き出していた。
レイはレイヤのところに近づくと……。「レイヤ。これからあの二人を止めるけど……。絶対に手を出すなよ!」と言うと、すぐにルシに攻撃を加えるが、簡単に防御される。だが、そのタイミングを狙っていたレイは……すぐに次の攻撃を仕掛ける。その隙を狙って……リリスはリリスの父親の背後に移動して……。リリスは剣を振りかざすと同時に、剣に雷を帯びさせて振り下ろす。その攻撃も防がれるものの……ルシの体は痺れ始めていく。
だが……その攻撃で、リリスの攻撃が終わると思われた瞬間……。レイリアとリリィがルシの後ろ側から攻撃をしようとしていたのだ。それに気づいたリシアがルシに声をかけて気づかせようとするも間に合わず……。レイアとリリィが攻撃を仕掛けるも、ルシは振り向き様に拳を放つ。その一撃を喰らうとリリィとレイリアは地面に叩きつけられるが……そのまま立ち上がり攻撃を繰り出す。だが……レイも一緒に攻撃を仕掛けて行った。ルシは攻撃を避けようとしないも、攻撃を全て受け流していったのだ。そして攻撃が終わった直後、ルシはリリスのことを殴り飛ばした。
そしてルシはリリアの方を見ると、「ほう……。あなたが私の相手ですか?ですが……いくらあなたが強くても私に勝つことはできないですよ?」とリリアに話すと、リリアはその言葉を聞いて、ニヤッと笑みを浮かべた。「それはどうかしら?やってみなければわからないじゃない?」と言い返してみせると、その言葉を聞いたルシも笑い始めて……。「それは楽しみですね……。なら……試してあげましょう。」と言って、戦闘態勢に入ったルシであったが……その隙を突いて……リリムは攻撃を放つも、その攻撃をあっさりと受け止めたルシは、そのリリムの腹を思いっきり蹴り上げると、リリスはルシの後ろに回り込み攻撃を試みるもルシはそれを予測しており、振り向くと同時に裏拳を放ち吹き飛ばすと、すぐに攻撃に転じてきたルシに対してレイはカウンターを決めることに成功する。だがルシもそれを耐えきり、今度は逆にルシが反撃すると、その攻撃を防いだリリアに攻撃が入るも……。それをリリアもガードをして見せたのである。
そしてその様子を見たリリアスは、「あれはどういうことですか?なぜ、あいつの攻撃を簡単にガードすることができるんですか?しかも完全にダメージを受けてない感じもしますが……。やはり何かあるようですね。」と、呟きながらも、ルシのことを観察しながら、攻撃を行っていた。
ルシは自分の攻撃を受けたリリスに違和感を感じていた。
(ほう……。先ほどより格段に速くなっていた……。これなら多少のダメージを与えても平気かもしれませんな……。しかし、油断はできないでしょう。)と思っていた時だった。急に動きが良くなったリアリのことを見てみると……。そこにいたのは今までと違う雰囲気を出している一人の女がいたのであった。その表情を見たルシは驚きながら「ほう……。」と声を出してしまう。その変化に一番驚いていたのはルシ本人でもあった。
「どうやら私の出番のようだな……。どうだ?この状態ならば少しくらいなら力を貸してやるぞ?」と、話しているのはリリスなのだが、その口調も違っており、性格もどこか大人びている。そして、その瞳には……赤い炎のような光りが宿っていた。そのことに驚いたルシはすぐに距離を離すと、「おや? あなたの実力を確かめたいのですが……。もう終わってしまいましたか?まぁいいでしょう。それで、その姿になった理由は何ですか?その答えによっては……本気でやらないといけなくなりますが……。まぁいいでしょう。それで……なぜあなたは本性を出したのですか? まぁ……答えられないとは思いますが……。答えて頂けますか?それとも答えられぬほどの事情でもあるというのか?それであれば……仕方ありませんが……。」
ルシの問い詰めるような言葉を聞くなり……リリスの口から放たれたのは意外な一言が発せられたのである。「それは……あなたが弱いからよ……。だからこうして……本気を出そうと思えば出せる状態にしておく必要があっただけ……。あなたをここで倒すためにね。それでは始めましょう……。私に殺される前に……せいぜいあがくことね!!」と言うと、一瞬で姿を消してしまう。
その行動についていけなかったルシはすぐに防御体制に入るが、いつの間にか背後に現れたリリスが攻撃を仕掛けると、その攻撃がルシに当たる。その攻撃を食らったルシは体勢を崩してしまう。さらに……その瞬間を狙ってか、次々とリリスは攻撃を仕掛けていった。ルシは何とか避けようとするのだが、その全てを完璧に防ぐことはできず、徐々に傷を負っていく。その光景を見ていて焦りを感じたレイラは、急いでリリスの元に駆けつけようとしたが、それをレイは止めて、「レイラ!!俺達が行っても意味がない!今は戦いの行方を見守るんだ!」と言うと、レイナのことも止めるが……そのレイナはレイの言うことを聞かず、「それでも行かなくちゃ……いけないの!」と言って飛び出していくと、「レイヤさん……今はあいつらがどうにかするのを待とう……。」と、言ってレイヤと一緒に様子を伺うことにした。
レイナの行動に気づいたのか、レイリアが駆け寄り、落ち着かせるように話し掛けてきた。
「レイナ。気持ちはわかるけど、今は待つしかないわ……。それに……あいつらのあの目を見てみて……。多分、何かをしようとしているのかもしれないわ……。それに……レイが言ったように今のままだと……あいつらまで危なくなるわ……。それは私達の役目ではないはずよ?」と優しく話すと、レイナの頭を撫でながら「今、この場にいる中で……多分あいつらが一番強いかもしれないわ……。その三人の勝負に手出しできるとしたら……。それは……魔王軍の人間ぐらいなものよ……。今は黙ってみていなさい……。」と言われたレイナは少し考えながら、「うん……。分かった……。でも……私は何もできないなんていや……。だから……祈るよ……。あの三人とも無事に戻って来れるって……。」と、真剣な表情で言うと、「ありがとう……。レイナは良い子よね。さすが……私が認めたレイの妹よね。レイもレイでレイナは可愛いと言っていたし、リリスはいつも自慢の娘だって言っていたからね……。それに……。アルスは大丈夫かしら……。やっぱり心配ね……。早く戻って様子を見に行かないとね……。だけど……それは……この戦いに決着をつけてからね……。それにしても……。リリスの様子がおかしかったのだけど……。やっぱり操られているのかしら……。でもそんなことってあり得るのかな……。何かがおかしいのは確かなんだけど……。もしかして、リリアにも何かあったの?」と疑問に思っていたのだった。
レイナはリリアムに担がれながら「ねぇ……どうしてここに来たの?」と質問を投げかけるのだが、リリアムはその言葉に対して……「レイナちゃん……あなたは自分がどれだけ重要な存在なのか自覚してる?あなたの身に何か起きた時にレイリス様や……あなたのお姉さんのレイリア様になんて説明したらいいの?」と言われるも、「私には何もないよ……。お姉さま達に説明する必要はないんじゃないかな?私なんかのために……お兄さまは戦わないと思う……。私の事はいいから、レイリアやリリスを守ってあげてほしいの……。私じゃ……足手まといにしかならないもん……。私のせいで……二人が危険な目にあうのは嫌なの……。お願い……。」と言うと、そのレイリアの言葉に納得したのか、「わかりました……。」と言うと、レイはその場を離れる。
リリアとリリスの戦いが始まってから、数分が経過していた。だが……。まだ、ルシの体力は半分以上残っているのに対し、リリスの方は……すでにボロボロになっていた。リリスの動きが悪くなっていくも、ルシは冷静に見極めていたのであった。そしてリリスは、ルシの体術で吹き飛ばされてしまい、そのまま地面に向かって倒れそうになってしまう。だが、ルシはすかさず、地面に衝突しないように受け止めた。
その光景を見ていたリシアが、「これは……。まさか、この二人は互角ということですか? いや……どちらかと言えば……リシアが優勢のはず……。なのになんでしょうか……。リリスの動きが悪くなる度にリシアが有利になってきてる気がするのは……。もしかすると、あのルシと呼ばれる男は……わざと力を抑えていたんじゃないんですか?」と思いながらも戦いの様子を見守っていると、急にルシはリリアの胸ぐらを掴むと、顔を近づけてくると、「あなたが本性を現してから……私もかなり苦戦してますからね……。そろそろ終わりにして差し上げましょうかね?覚悟してください。もう容赦などしないですからね?」と言い放つと、急に力を解放させたのであった。
その言葉を聞いたリリアは、「それはどうも……。私も同じ気持ちだよ。あんたはここで殺してあげる。これ以上好き勝手をさせないためにね……。」と言うと、リリスは自分の体に鞭を打って立ち上がる。そして再び攻撃を始める。リリアはその攻撃を捌いていたのだが、その時、突如、体が痺れ始めて……リリアは自分の体の異変に気づいてしまった。
(あれ?何これ? こんな時に……一体何が……起こったの?)と自分の体を触ろうとするも、その手さえも動かない……。
(えっ?嘘……何これ?もしかして……毒……みたいなもの?この森に入ってから……何かがおかしいとは感じてたけど……。何これ?意識……が……。)と思ってしまうと……。その場に膝をつく……。その様子を見て、ルシは笑い始めた。「おや?ようやく効いてきたようですね。やはりその様子では、まともに動けなさそうですね……。このまま、死んで頂きますか……。さようなら。私の獲物たち。これで私の地位は更に上がり、いずれは魔王になることも可能なのですからね。フハハッ。アハハ……。アッ……ガッ……。」
その瞬間、急にリリスの攻撃によって……ルシの口から大量の血が流れると、その反動で、ルシの体は空中に浮かび上がっていた。その光景を見たルシの部下達は……驚きを隠せないでいた。その行動に気づいたリリスが、急いでルシのところに駆け寄ろうと走り出すのだが、その行動を察していたリシアがリリスの前に現れると、「あなたの相手は……私よ。あなたのことはリリアとレイリスから聞いています……。ここで確実に始末させていただきます……。」と、言うと剣を構える。その姿を見て、リリスも仕方なく刀を構えたのだが、この時既に……リリスの頭の中ではリリアのことを考えていた。
その光景を見てレイナが「あぁ……レイヤお姉さま……。もうダメかもしれないよ……。この世界に来て……やっと会えたのに……このまま……死なせてしまうのは……。でも……。今の私は……。もう……。うぅ……。もう……何もできないんだね……。お兄さまと……レイお姉さまの役に立ちたかった……。お姉さまの手助けをしたかったのに……結局……。私はただ……守られるだけの存在だったんだね……。ごめんなさい……。」と言うと……涙を流しながら悔しさを堪えていた。その姿を見たレイリアがすぐに「そんなこと言わないの!大丈夫だから……。絶対に……なんとかできるはずだから……。信じているわ……。」と励ましていたのであった。その頃、レイラは……。レイナのそばに行くと、レイラはレイに「レイ。今すぐ、レイナの元に……。あの二人の邪魔になるだけだからね……。」と言うと、その言葉を聞いていたリリアは、「そうだ! 私がリリアを倒せばいいんだよ!」と思いついたかのように動き出そうとするのだが、リリアのその行動を止めたのはリリアムである。リリアはすぐに、「なんで止めたの!?私が行けば……みんなが救えるんだから……。行かせて!」と真剣な表情で話すも、リリアムが話し始めた内容を聞いて、思わず驚いてしまう。
その言葉はリリスがレイナに向けて話した言葉である。
「お姉ちゃん。私はね。今までずっと、私は『妹』としての立場で生きてきたの……。そしてこれからもずっとそう思って生きていこうと思っていた。だけど……今回のことで気がついたの。お姉ちゃんや……お母さんの本当の娘になれるように頑張るから……。今は……まだ無理だけど……。いつか必ず……家族に認めてもらえる存在になりたいの。だから……。私を信じて欲しい……。私は、もう昔の弱い私じゃない。強くなったの。今度は私がみんなのことを護ってあげる!私は負けないし、簡単には死んだりなんかしないから!!だから、心配しなくて大丈夫だから……。」
それを聞いたリリアムも話し出す。「レイナは……確かに弱くて、私に頼らないと、何もできなくて……。そんなレイナをいつも心配して……レイラ様やレイリア様がレイナのことをいつも助けてくれていて……。そんなあなた達が大好きで……幸せに過ごしてほしいと心の底から願ってました。私も……あなた達に認められるために……強くなることにしました……。私は……あなた達と一緒にいても良い人間なんですよね?私はレイリア様のことが好きなんです。この気持ちは誰にも負けたくありません。それに……私はあなた達の役に立つために生まれてきたと、今でも思っているので、どうか……。私に任せてください。」と言うとレイナは泣きながら抱きついていたのであった。その様子を見て、俺も涙が出そうになったので、二人を抱き寄せて抱きしめると、俺は二人に笑顔で言ったのだ。
その言葉を言った途端……二人が突然、大人しくなり、「えっ?お兄ちゃん……?」と、驚いた表情で、なぜか、二人は顔を見合わせる。
レイナは不思議そうな表情をして、首を傾げていたが、そんなことより俺は二人に、「レイナ……大丈夫だ……。レイナは強い女の子だってわかってるから……。きっと大丈夫さ……。安心して待っていよう。大丈夫……二人は無事に戻って来るさ……。」と言ってあげることにした。レイナの頭を優しく撫でているうちに、少しずつだが、落ち着いてきて……最後には「ありがとう……お兄ちゃん……。大丈夫だよ……。」と言っていたのだった。
その頃、ルシとの戦いを繰り広げている、リリアだったが……その状況にリシアの方が違和感を感じ取っていた。その瞬間、突然ルシの胸から剣が飛び出してきた。リリアがその光景を見て、動揺していると、リリスが、自分の背中から翼を出し、ルシを貫いていた。その行動にルシは驚きながらも、「あなたも……。裏切るというわけですか……。まぁいいでしょう。私の役目は果たした。あなた方だけでも殺しておきますかね。」と言い、再び力を解放させていくと、その反動によって……ルシの体は浮き上がっていた。リシアはリリスの方へと近づきながら、剣を構えて、「あなたには恨みはないけど……私の大切な人達を傷つけようとするなら容赦はしない!!」と言うと……ルシのところまで一気に飛んでいくと……リシアは剣を振るう。そしてその攻撃はルシの体を切り裂いたのであった。その攻撃を受けてしまったルシの体からは血が流れ出し、地面に落下していったのである。だがルシは笑みを浮かべた。すると、「クッ……ここまでか……。この私が……。勇者ではない者に殺されることになるとはな……。だが……ここで死ぬわけにもいかんのだよ……。フハハッ。さらばだ。我が主よ。」とルシが叫ぶと同時にその声に反応したかの如く地面が大きく揺れ出した。その直後、地面の中から大きな甲羅を持った巨大な亀が現れたのである。だが現れた時には、巨大亀は倒れそうになっており、地面に着地した衝撃で倒れてしまうとそのまま起き上がることが出来なかったのだった。
一方そのころリリス達は……レイナの元に来ていたレイリアから話を聞いていた。レイリアの話から察すると、あの女の正体をレイリア達は知っているようで、「やっぱり……。そういうことだったんですね?」とリリアが言うとリリアが続けて「なるほどね。そう言えばあの女の人が着ていた服に描かれていた模様は、確かにどこかの国の国旗と同じ感じの模様だった。」とレイナが答える。その後……少しの間静寂が訪れた。
その頃……リリアムはリリアの様子を見ており、「レイナ……。大丈夫ですか?レイリアさんから話は聞きましたが……。やはり辛いと思います……。私達は……。レイナにとって……。」と話しかける。その言葉を聞いたレイナがリリアのほうを見ていた。その時……突如、空に大きな亀裂が入るとその隙間から光のようなものが見え始めていたのである。そしてその光は徐々に地上に落ちてくる。リリアは、「この感じ……。これは……結界?この森全体に……何かしらの術式がかけられた?一体誰が?どうして?」と言った瞬間、突如、大声で叫び始める。
「まさか!リリアさん?一体何が起きたのです?この森は……危険です。急いでここから離れて避難しましょう!」その光景を見てレイリアもすぐにそう言い出すと、リリムと二人ですぐに動き出そうとするのだが……その光景を見た瞬間に……二人は立ち止まってしまった。
その理由とは、レイアの目の前に……リリスが現れていたからである。そのリリスの行動に驚いていたのだが……その姿を見てリリスの口から驚くべき内容が告げられる。その言葉に驚きを隠せないリリアス達。
「その反応……。やはり、そうなんですね……。でも、私の事は気にしなくていいので早く移動してくださいね……。リリアさんのことは、私がなんとかしますから……。」その一言にレイナとレイリアは驚きを隠せなかった。なぜならば、「リ、リリア……なのよね?あなたがどうしてこんな姿になっているのか……分からないけれど……。あなたを助けに来たから……もう大丈夫よ……。」と話しかけるが、「あはは……。お姉ちゃんは相変わらず騙されやすいな~。私ですよ?私は……『リリス』でございますよ?お姉さまは本当にお人好しで優しいお姉さまのままでしたよ。私がお姉さまの妹だとわかった瞬間にそんな態度をとるなんてね。私……悲しいわ。でも、今の状況ではそんなことしてる場合じゃないのでね。お姉さま……お願いがあるんだけど……聞いてもらえるかしら?」
レイリアとレイナはお互いに見合うとすぐに、「ええ。いいわよ。」と言うとレイリアは、この世界の地図を広げる。
「ここに書いてある場所は……どこなの?」レイリアはその地図を見るとすぐに答えていた。
その答えは……。「それは……この場所ね。そこは確か……エルフ族の集落と言われている場所のはずよ。そこの近くに私たちの家があったはずだけど……。それがどう関係するの?ってリリア?大丈夫なの?体が透けているけど……。それにその姿は……?あなたが消えちゃうような感覚なの……。そんな……嫌!そんなことないでしょ!?だって、まだ……何もしていないのに……どうしてなの!?まだ私はあなたのことを救えてないんだよ!?」レイリアが泣きそうな表情をしながらリリスに抱きついていた。そのレイナも「そうだ!そうよ!あなたは何も悪くなんか無いんだから……。あなたに何も落ち度はないんだから……だから消えるとかやめてよ……。お願いだから……。まだ私達には何ができるのかわかんないし、これから先どうすればいいかもわかってないし、まだこれからで……。なのになんでそんなことを言うの?ねえ……。やだよ……。そんなのってさ……。リリアムもレイラ様も、みんなも私にもっと教えて欲しいことだっていっぱいあったでしょ?それなのに……何も言わずに勝手に一人で解決しようとするし……。私も、もう覚悟できてるし、私のせいで皆が犠牲になるくらいなら、私が身代わりになった方が……まだマシで……。」と必死になって止めようとしている。
リリアも「ごめんなさい。私だってお二人の側にずっといたい。一緒にいたい……。私はまだ生きていたい。死にたくない。ずっと三人一緒でいたかった。私にはもうそんな願いを叶えることができない……。だから私は……最後に……。私の力を使って……皆さんに私の全てを託すから、私の意思を継いでください。お願いです。私はずっと……お姉様のこと大好きで……尊敬していて……。そして私はそんな二人に憧れていました。私にとってお二人に出会えたことが奇跡のような出来事で……。そして私はお二人といるだけで幸せでした。二人とも大好きです。だから……。私のこの力をお二人に託します。私の全ての力で……どうかこの世界を救うことができるように、頑張ってください。お二人は私にとってかけがいのない大切な存在で……私の全てなので……。だから……どうか……。お元気で……。」と笑顔で言うと二人は泣き出しそうな表情をしていたのである。だがその涙は……決してリリスのために流す涙ではなく……自分のために流す涙だった。
その後、レイナは、レイリアと一緒に、自分の家に戻ることになる。リリィ達はすでにこの世界に来る前にいた場所に飛ばされていたので無事に戻って来ることができたのだ。リシアの方はすぐに戻ってくることができた。
レイナ達の家の方へと戻ってみるとレイリアは急いで扉を開けるとそこには……既に誰もいなくなっていた。その光景を見て驚くが、慌てて家を出ようとするとリリアの部屋の方から声が聞こえてきた。リリスの声だ……。
そして、部屋に入ると……リリスの姿がはっきりと映り込む。その体は半分ほど透けて消えかけている状態だったのである。そして、リリスの体からリリアの顔が出てくると、涙を流してリリアのほうを見る。
その顔を見たリリアが、自分の体を無理やり引きずらせるようにして、リリスの元へ近づくと、リリスは優しくリリアのことを抱きしめていた。リリスの目からも大粒の涙がこぼれ落ちて、そのリリスの手はまるで氷のように冷たくなっていたのだった。
リリアが「リリス……大丈夫……?」と言うと、「はい。少し……疲れてしまいましたが……。なんとか生きて帰れそうです……。ですけど……。その……ちょっとだけ甘えさせて貰ってもいいですか?」と聞くと、リリアも、その問いかけに対し、静かに微笑みながらうなずくと、その言葉を待っていたかのように……ゆっくりとリリスは口を開く。
「お母さまぁ……。うっ……。お父様……。うぅ……。リリアぁ……。」とリリスの感情は爆発してしまい、リリアは、そのままリリスをそっと強く抱きしめてあげると……リリスは、「リリアの体……。すごく暖かいです……。それにリリアからはお花の香りがします。私はそのお花が好きでした。いつもお二人がそのお花を咲かせてくれるのが本当に楽しみだったんですよ。」と言うとリリアは自分の体に目を落とすと…… いつの間にかリリアも大量の汗をかいており、そして体も半透明になっていた。リリアはそれを見た時に悟っていた。
その現象が自分にも起きていると、つまり、自分がもう時間がないことを。
だが……そのことを理解してしまえば、その現実がとても怖くて……心が締め付けられそうになりながらも、必死に耐えていると、ふと、部屋の奥にあるクローゼットが気になり開けてみると、そこには、一着の大きな白い服が入っていたのである。そしてそれを手に取ると、リリスのところに近づき手渡す。リリスはその渡されたものを確認すると……「それは……。私が幼い頃にお父様に貰った大事な衣装です……。私がこれを着ると……まるで花嫁みたいだって、嬉しそうにしてました。その服を見ているとなぜか不思議ですね。少し寂しくなって……。そして、何故かリリアが近くにいないような感じになってしまい……。寂しいです。やっぱり、私はリリアと一緒に行きたかったんです……。」と言った時……急にその白い服を着た状態でリリスは倒れこんでしまう。
その光景に驚きを隠せないリリアであったが……、その瞬間……リリアの体が透け始める。「あっ……ああ。もう時間がないんですね。お別れのようです。」その一言に驚きのリリアであった。だがリリアも覚悟は決めていたのか……すぐにリリスを抱き抱えると……その白い服を着させる。「リリアの体はとても温かく……。気持ちが良いです。それにお花の匂いも……。リリア?どうしてそんな悲しい顔をしているのですか?私……何か悪いことしましたか?私のことで悲しいことがあったんですか?それなら謝らせてください……。でも、リリアがそんな顔しないでくださいね……。私はあなたとこうして一緒に居られただけでも嬉しいのですから……。それに私だってまだリリアとお話していたいし……もっと遊んでいたかった。でもね……。」とリリアに抱きつき「ありがとう……お姉ちゃん。私、お姉ちゃんのお姉さんになれてよかった……。リリアスになれたのが本当にうれしかったの……。」と言うと、「リリア……。あなたは私の自慢の妹です……。私のことを忘れたりはしませんよね?リリアなら忘れないと私信じていますから……。私はリリアスのこと絶対に忘れないからね。約束よ?絶対守ってよね?」と言うとリリスは泣きながら笑顔で、「うん!わかったよ!じゃあ、指切りしようよ!」と言って小指を出す。
リリアスはその言葉を聞いてリリスの右手に自身の左手を合わせる。するとリリスの右手の人差し指には青いリングが出現していて、リリアスの人差し指にも同じリングが出現する。
その指輪をリリムに渡そうとした瞬間に……リリスは完全に透けてしまうのである。
「リリス!リリス!消えないでよ!お願いだからさ……!一人にしないでよぉ……。嫌だよ……。」その光景を目の当たりにしてしまったリリアは泣き叫びそうになるが……それでも懸命に堪える……。そして……。自分の体の感覚が少しずつなくなってきていたことに…… 気が付く。「ごめんなさい。ごめんなさい……。私の力がまだ完全に制御できなくて……。このままでは私まで……。お母様。レイラ。今から私とリリアで、お母様の残した力で、封印魔法をかけます……。それでどうにか……。ごめんなさい……。」と言うとレイリアが部屋に入ってくるのだった。
レイリアはすぐに状況を理解したらしく「分かったわ……。早くやって頂戴!私にはまだできることがきっとあるはずだから……。」と言うとレイナは、リリスを抱え上げる。
そしてリリアの方へと運ぶと……その体もすでに半透明な状態に近づいており、この状態のままリリスがリリアの額に手を置くとその手の上に小さな紋章が出現。その瞬間、リリスがリリアのことを思い浮かべるようにしながら……詠唱を行う。
その瞬間、その部屋の空気が一瞬のうちに冷たくなっていき……それと同時に部屋が凍り始めていく……。だが不思議なことにこの場にいる者たちには一切影響はなかったのだ。だが……この場の空間そのものには影響を与えてしまっているようで、氷漬けとなった世界へと変貌していったのである。その光景を見ていた一同はあまりの変化の大きさで驚く。そして……次第にその部屋には亀裂が生じていき最後には割れて消滅していく。
リリスも「お母様、お姉様。今までありがとうございました。私にはまだやりたいことがありますから……。だから……先に向こうで待っていてください。また……会える日まで……。さようなら。お姉様。お母様……。大好きだよ……。」と言い残して、レイリスと共に……光の渦へと飲まれていったのだった……。その瞬間、その光が二人を飲み込むと……そこには、何も存在していない空間が存在していた。だがその空間が徐々に光に包まれ始める。その光景にレイナ達やリリアも驚いている。だがレイナは、その光が眩しく感じるのか手で目を覆いながらもその現象を確認すると、そこにはリリスの姿は存在していなかった。
「これは……。どうなっているんだ!?レイナ!あの現象について何か知っていることは……。いやまだこの世界のどこかにあいつはいるかもしれないぞ……。俺の予想が正しいならばな……。まずは……レイナの家に行こうか……。そしてその後、レイナと……そしてリシアのことも考えなければいけなさそうだな……。とりあえず俺は先に戻るからな……。レイリアも行くだろ?それとリシアはここで待っててくれるか?お前の体もそろそろ限界のようだからな……。今は無理はするんじゃない。あとでリリアと一緒に戻ってくればいいだろうし、それまでは休んでいろ。いいな?」
「わかりました。私は大丈夫なので、気にしないで下さいね?それと……その……気をつけてください。私のせいで……。申し訳ありません……。」と謝罪をするのだが、そんなリシアを見てリナは頭を優しく撫で始めると、優しい笑みを見せるのだった。「リシア。あなたのせいではないですよ?それよりもあなたもかなり無理をしているのは分かっていますので、そのことについては後ほど話しましょうか……。ですから今は少し休みましょうね。リリアさん、後は任せました。」とリリアに言い残すと、リリアと、リリスの姿が消えると同時にレイリアも「では、リリア。戻りましょ?」と言うと、リリアも、黙ってうなづくと二人は姿を消すのである。
残された三人はというと……しばらくその現象について話すことはなかった。リリスのことを思うだけで涙が止まらなかったからだ。「リリス・リーフェン……。」
「ええ……。まさか……リリスの本当のお母さんに会ったことになるとは思っていませんでした……。でも、これで、少しですけど疑問は解決したことになりますね。」と言うと……リディアは不思議そうな表情を浮かべて、首を傾げるのである。
そして、リデアも口を開く。「ええ。おそらくだけど……彼女は、本当に私達のいた世界にはいなかったのでしょうね……。そうでなければ……私達の世界に来て……しかもこんなにも短期間でここまでの力を身に付けられるはずがない……。それに、彼女の強さが尋常じゃなかったですからね……。ただでさえ強かったリリスがさらに強敵になっていたわけですから……彼女がどれほどの強さを持っているか想像しただけでも恐ろしかったですし……。何より、その実力を私たちの前で披露して見せたので、余計にそう感じてしまいましたね……。それに……私もまだまだ精進しなければなりませんね……。私は……もっと頑張らないとダメですね。そして……彼女から言われたことが気になるので……もっと努力して強くなりたいと思います……。そして……もっと強くなって必ず……。」と言って自分の手のひらを見つめているとリリアはその様子を見ていたのか……その手をぎゅっと握ってくるのである。
リリアは、無言ではあったが、手を握ってくれていることが何を意味しているのかはすぐにわかった。そして、リリアはその手を強く握り返してくる。そしてリディアは、その様子を見て、「本当に、お二人は仲がよろしいんですね……。」と言うと、「ふふふっ。当然ですよ?だって私はお姉さまのこと大好きですから!」と言い切るのであった その言葉を聞いたリティアは、「あーもう!ずるいなぁ……でも私の方がずっと好きかも!!」と言ってリリアに抱きつくのだった。そしてそれを見たリディアが微笑むのである。
それからすぐにリレアの家に行くことにした3人は転移を使いその場所へ向かう。そして扉の前に移動すると、そこにはすでにリナとリナの妹で、メイドとして働いてもらっているミシャがいるではないか。「あれれ?姉さんだけですか……。」「あっ!!お兄ちゃんと、お姉ちゃんと、リディア姉ちゃんじゃん!!それに、リリスちゃんもいないんだね……残念……。でもどうしてここに?私達に用事かな?お姉ちゃんは私とお話しようよぉ……。リリスちゃんとも仲良くしたいのぉ。」と言ってきていたのだった。
「ああ。俺達は、リリスから頼まれて……この世界について教えに来ただけだから……。詳しいことは……今、家の中に入れてもらった時に説明するからさ。悪いんだけど……。」と言って中に入らせてもらうことにする。
リディアも中に入るとリティアとリナとリリアの姉妹も一緒に入ってくる。
そして……なぜか……リシアはレイナの腕にしがみついてきている……。そしてそのままレイナの体に頬ずりし始めているのだ。レイナは困惑していたが……それを見ている姉妹たちはというと……リリアが羨ましそうな顔をしていたのだった。
「ん?なんでみんなも入ってきたんだ?別に中でもいいだろ?とりあえず俺の部屋まで行こうぜ?」と言って部屋に移動すると、全員が着席する。
レイナは紅茶をいれてから皆にカップを渡すと、早速、本題に入ることにしたのである。
「あー。リリアから話は聞いていると思うけどさ……、俺達がここの世界に来ているのは、ある事情があってなんだよ……。簡単に言えば『魔王』の復活を阻止する為に俺達の世界から呼ばれたみたいなものなんだ……。この世界を救いたいという願いを持った女性がこの世界にきてさ……。その人がリリスの『お母様』で間違いないだろうな……。それで今、この世界には魔族の『魔王』が存在するのは知っているよな?実は今この国には、『聖女』、『聖騎士王』と呼ばれている人物たちがいるらしくて……。彼女たちが、今戦っている相手らしいんだよ。それでさ……リリィがさっきからその人の名前を呼ぶもんでよくわからん状況になっていて困ってるんだよね……。それで一応、俺たちがこの国の人たちを助ける為にやってきたことだけは伝えておくから、何かあれば協力してやってほしい。まぁ……。この国が滅ぶようなことはないから心配しないでもいいからな?」と言うと、レイナはリリアの方に顔を向けるとリリアに確認してもらうように視線を送る。
「そうですね……。お兄様に説明してもらいますと色々とややこしくなりますので……ここは私が話をさせていただきます。まず最初に私から、この国の現状を説明します。私の見立てでは、この国は滅びに向かっています。その理由については後ほど……。それとリリアはリリアのお友達と一緒ですから大丈夫だとは思いますけど、万が一に、私達が不在になった時は、レイリアと一緒に行動するといいかもしれません。まず初めに……、『勇者ロイド』さんはご存知ですね?彼もこの城にやって来て『魔王軍幹部』と『四天王』と呼ばれる『四人の魔族』を倒しているようです。『魔王軍幹部』には『ヴァンパイア』と言われる『吸血鬼』がいます。『四天王』には『ドラゴン』がいて、その配下には『悪魔』がいます。」と言い出すと……リリスとレイリスとリナが驚いている様子に気づく。
リリアが不思議そうにしている三人のほうを見ると……「ええ。私達も知っている情報ばかりですので問題ないですわ。それより……あのリリアン様やリリアの母がこちらにいるということは……、リリスの姉もこっちにいますのね……。でも……。」と言うとリナも同じように「そうですね。この城の中が静かすぎます……。」と言うのだった。「そういや……。リリアの親はどこに行ったんだろうな?」と俺が質問をするのだが……、その問いに答えてくれたのはレイリスだった。「ええ。リリスさんの両親もいなくなってしまいましたからね……。」と言ってくるとリリアも続けて「はい……。」とだけ言うのだった。
(おい……。リリス……一体お前に何があったってんだ……。まさかリリスの母親が……。まさかな……。だがリリアがこんな反応しているってことは……その可能性もありそうだが……。それに……もしかしたらあいつならリリスの事を……。俺は……。)と俺は心の中で呟いていると……リリアの様子がおかしくなっていることに気づく。
「ううっ……。私のせいで……。お父様は……。私のせいで……ううっ……。私のせいで……」
その様子を見ていて俺は立ち上がるとすぐにリリアに駆け寄っていくと、リリアをぎゅっと抱きしめると「落ち着け。俺が付いている。大丈夫だから。俺が守るから安心しろ。絶対に守ってやるから。今は辛いだろうが……。少しだけ我慢してくれ……。リリア……。俺を信じてくれ。」と言うと、リリアの目元に涙を溜めながらも俺の方を向くと「ありがとうございます。お兄ちゃん。でも……。」と言うと……涙をポロっと流す。そしてすぐにレイリアも「リリアちゃん。辛かったら泣いていいんですよ?」と言って頭を優しく撫で始めるとリリアは、泣き出してしまうのだった。
そんなリリアの様子を見てリリスがリディアの手をギュッと握ってくる。そしてリディアも手を握り返すのだった。その様子を見たリリアもリリスの手を握っていたのだが、その時、リディアが、突然に声を上げる。
「ええっ!!ああっ!!!!そうですよ!どうして気がつかなかったんですかね……。私は……。リリアがこんなにも悲しい顔をしている理由もわかったはずなのに……。それどころか……なぜリリアの母親に会っていないはずのレイリアまであんなにも悲しげにリリアのお母さんについて触れているのか……気になってしかたなかったはずです……。」と言って考え込むのであった。そしてその言葉を聞いていたリナとリディアの姉妹も驚いた顔をすると、「えっ?どういう事なの?姉さん?リディアさんも……二人してどうしたの?」と言うのであった。「ああ。リリアのお母さんに会っていなかったはずのリリスまでリディアさんみたいに悲しそうな表情を浮かべていたんだ。しかもその前に、リリスがリリアと似たような発言をしていたし……。でも俺の勘違いかもしれないし、まだはっきりしていないことがあるからさ……。」と答えると……リナは首を傾げている。「うん。私達もわからないんだけど……何かおかしいよね……。」と言っていると……リナが突然に立ち上がってリリアの元へ向かうと、そっと手を差し出して……手招きするのである。リリアがゆっくりとリリアの元へ近づいていく。リリアが近くに来ると、リナがリリアを引き寄せてから強く抱き寄せると、頭を優しく撫でるのであった。その様子を見ているリディアとレイナだったが、レイナはリリアの様子を気にしながら「なぁ……。やっぱりさ……なんか変じゃないか?」と聞くと、「そうですよね……。レイナさんもそう感じましたよね……。これはもう本人に確認しなければわかりませんが……。リリアが言っていた言葉が嘘だったとは思えませんし……。もし仮にそれが本当だったとしても、レイナさんのようにリリアが本当にリリアの事を想ってくれる方がいなければ、今のこの状況はありえないですからね……。」と言ってレイナを見るのだった。
その会話を聞いているレイナの隣にいたリディアも同じ意見なのか「はい。それは言えるかも知れません。私が、リナさんのようになりたいとどれだけ願っても無理なことなのですから。きっと……。」というのだ。
「リディア……。」
その話を横で聞いているリリスは二人の会話をじっと聞きながら……考えていたのだった。
(リナ様ってばずるいですね……。でもリナ様なりの考えがあると思いますので……。)と考えているのだった。
そしてしばらくしてリリアは落ち着いたようでリナから離れると、自分のことを話し始めた。そしてレイナ達に説明していく。
「私とリリアちゃんのお母様がいなくなった経緯ですが……私がお母様の部屋に用があって行った時だったと思うのですけど……。お母様にいきなり……『お前もいずれは死ぬんだ。だから私の後を追ってこないでくれ……。私の分も幸せになるんだよ……。私が死んだ後のことは、あの男に任せてある。大丈夫。あいつは私の後を追うことはないよ。お前のことを一番大切に思ってる。リリアの事は頼む。それと、リリアを私の娘として育ててやっておくれないかい?』とお願いされていまし て……。それで私は……。リシアさんが『私の妹』ではなく『私の子供』として育てられてほしくて……。だからお母様に妹扱いされるのは本当は嫌だったのですが、我慢していました……。でもお母様は……亡くなってしまって……それでリリアは……『リリス=ランスロット』になったんです……。でも……。」と言うのでリリスが代わりに話すことにしてくれたのだった。
すると、急にドアの方からノックされる音が聞こえてきたのでリリア達は慌てて扉の前に行くと「すみませ~ん!ちょっといいですか!?緊急事態です!!」と言ってきていたので俺が「入ってもらって!」と言うとその人は入ってくるので、皆の視線がその人物に集中する。入ってきた人物は、身長190cmぐらいでがっちりした体型をした男性であり髪の色も金色なのだが、顔立ちはとても整っている美男子で、どこか高貴な雰囲気を感じさせてくる人物であった。服装はこの国の兵士の格好をして、銀色に煌びやかな装飾を施した兜を身に付けており、腰には剣を装備していたのである。この人物がリリアンの父でこの国の国王だった。名前は、アルフレッド=エセルダリア=アルフォード(35)といい、この世界の王族の中では、珍しく『平民出身』の王だった。そして彼は、『魔王軍四天王』を倒した後に、リリアの捜索隊の指揮を執ってリリアを救っていた人物である。ちなみにだがリリアと年齢は同じであり、俺と同世代で同じ学校に通っていた同級生でもあり親友同士でもあったのだった。そして彼はリリアに歩み寄ると手を取るのでリリアも嬉しそうに握り返していると俺を見てくるので俺もリリアに近づき手を繋いだのであった。そして俺達の様子を見ていると国王は、少し照れ臭そうにしていると「リリア……無事そうで良かった……。心配していたんだぞ?それに……リリアにそっくりな子がいるようだが……。」と言うとリリアが俺に紹介してくれる。
「はい。こちらは『ロイド・アーガレッド』です。私をずっと守って下さった恩人です。それに、今は私の大好きな方ですので安心して下さいね。お父様♪」と言うと、俺の手を握りながら俺の顔を見てニッコリ微笑んでくれるので、俺はつい顔を赤くしてしまう。それを見ていたリリスもニヤニヤしていた。その光景を見たアルフレッドは少し呆然とした後、なぜか俺に対して敵意を向けるような目つきになって「リリア!!お前がそこまで信頼を寄せている相手なのか!!だがしかし……お前はまだ15歳だろ!結婚できる年じゃない!!それなのに……。許さん!!絶対に!!リリアに手を出す奴など私は認めないからな!!」と言い始めるのだった。
そして俺はこの時になって気づくのだが……、リリアはリリアの父親と瓜二つな姿形をしており、おそらくリリスも母親に似てきていると思うのだが……俺としては、どことなくリリアと姉妹と言われても不思議ではないくらい似ていた。そしてそんな様子を俺は眺めているのだが……正直に言うと……なんでこうなったのだろうかと考えていたのだが、その理由がようやくわかったのだった。
(そうか……。そういうことなんだ……。)
そして俺が考えている間にリリアとリリスが俺に「「どうすればいいでしょうか?」」と言うので……俺は……どうしたものかな……と考えると、とりあえず……リリスを睨みつける。そしてリリスはビクッとすると「ええっ!?お兄ちゃん何?私何か悪い事しました?」と聞いてくるので、「そうだな……。リリスはもう少しリリアのお父さんとの付き合い方を勉強した方がいいんじゃないか?」というとリリアもリリスの様子を見て「私も……反省しないといけないですね……。でもリリスちゃんが私達の為に一生懸命に考えて下さるのは凄く嬉しいですよ?ありがとうございますね♪でも私は、お母様の事は忘れることはできませんが、リリスちゃんが側に居てくれるだけでも幸せですので、無理だけはしないで下さいね?」という。その言葉を聞いてリリアの言葉の意味を悟ったリリスは、涙を流してしまうと……「お姉さま!!私も!!絶対にリリアお嬢様にもお兄さんにも、迷惑を掛けないように努力しますから!!どうかお側で仕える事を許してください!」と言って頭を下げる。するとそんな二人のやり取りを、見つめているレイナとリナも微笑んでいた。その横では……なぜか俺にリリスは抱きついて来てスリスリし始め、リリアに抱きついているリリスも抱きつく力を強くしている。そんな様子を観察していた国王は、少し落ち着いたのか俺に声をかけてくる。
「まぁ、君なら、リリアを守ってくれただろうからな。私が言える事はないよ。それと……さっきはすまなかった。リリアは大切な娘だから、どうも、親バカが過ぎて、娘のことになると周りが見えなくなるのさ……。」と言うと俺を真剣に見つめてきて「それで……君の名前を聞いてもいいかね?」と尋ねてきたので、自己紹介すると、アルフレッドが、驚いた表情をする。
「君は確か、リディア=アルフォールと、リリア=ランスロットと一緒に旅をしていると聞いていたが……。リディアとはどういう関係なのじゃ? そして、もう一人の女の子は?」と聞かれたのでリディアに説明してもらう事にするとリディは、「リリスとは私のお世話になっていた村に住んでいた子です。リディアさんの幼馴染で、リリアのメイドとして、リリアに仕えていたんですよ。リディアさんの事が大好きでいつもリディアさんの事を気にしていて……とても素直でいい子ですから安心してくださいね。あと、リリアとレイナさんの三人で一緒にお買い物に行く予定があるらしいので、仲良くなりたいとおっしゃられていましたから……。」と言うと、リリスは、リディアに向かって深々と頭を下げながら「リディアお姉様。今まで黙っていてごめんなさい。本当はもっと早くに、言わなければならなかったんですけど……。私は……あなたの実の妹で……本当は、アルスさんと結婚する約束をしていまして……。でも、私が勝手にあなたを置いていってしまったために……こんな……ことに……。」と言うと泣き出しそうな顔になり震えるので、そっと抱きしめるとリリアも、レイナとリディアを連れてきてリリスの肩に優しく手を置き「いいんですよ。私がリリスの立場でもきっと同じことをすると思います。お母様の事を考えるとどうしても……辛いですもの……。リリスも私と同じ気持ちだったのでしょう?それに、私もリリスの事が大切だからこそ、私もあの場に残ったのです。あの時……お父様が私を庇ってくれていなければ間違いなく……死んでしまったと思います……。私だってリリスが……妹のように思っていた存在だから。
リリス……。リリスは私にとっての大事な友達であり……妹でもあるのです!だから、謝らないで下さい。そして私を、助けてくれて本当に感謝しています。これからは……姉妹二人三脚の人生が始まるのですから!」と言うのであった。
そしてその様子を見ていた国王が涙をためた状態で……「リディア、良かったのう……。この子のことを大切にしてくれよ!私はもう、何も言えないよ……。それと、アルフォードよ……。リリアが無事だったのならば……リリアも一緒に連れて帰ってくれるんじゃろうな? リリスもリリアも……家族全員揃っているからこその我が娘だ。私はお前と別れてからずっと、後悔していた。だが、今になってみればこれで良かったのかもしれないな……。アルフォードが、リリアを……リリアのことを幸せにしてあげてくれたことに感謝している。ありがとう。」と言ってくるので俺は照れくさくなるが、それでも俺にはまだ疑問が残っていたので聞いてみたのである。「それでさ……。一つ気になるんだけどさ。そもそもリシアは何のために『シルフィード』にやってきたんだ?その話を聞く限り、俺達の敵はリリスだけって訳じゃないんだろ?その辺りの説明を頼むよ……。」すると国王もリリアもその件については話す事を決めていたのかお互いにうなずき合うと、俺に話しかけてくる。
国王の話によれば……この国の王家には『予言』の能力があり、それは代々受け継がれているものであり、その力は未来を見る力なのだと言う。そして、今回現れたリリスがリリアの敵だと言っていることから『リリアスの民』という組織と手を組み、『魔王』復活を画策しているという事。さらに魔王復活と同時にリリス達が動き出すと告げられる。
そして俺達はその後……この国の騎士団の人達と、共にリリスと対峙することになったのであった。
リリス達とリリアの父親は……この城の地下にある一室で、会議を開いていたのである。そこで……国王は……「まさか……アルフォード殿が魔王を倒してくれるだけでなく……。『聖魔戦争』も終わりを告げ、さらには『魔王』まで倒してくれたのだ。
しかも彼は、勇者の称号をリリアと交換したと聞く。これは私達も覚悟しなければならないだろう。」と呟くように言いながら俺達の方をチラッと見る。すると俺の横にいたリリスも真剣な表情になると「確かに……。お兄様のお陰で平和が戻りましたが、まだ問題は残っています。まずはリディアお姉さまの存在ですね……。彼女は恐らく、私達の邪魔をして来るでしょうから。でも大丈夫だと思っておりますわ!お兄様が守ってくれるもの♪」と言うので、リリスに近寄って頭をポンポンとすると恥ずかしそうにしていたが嬉しそうに笑顔を浮かべていたのだった。
しかし……そんな雰囲気の中で一人の男が声を上げてくる。「リリアさんがいないとなると、我々の目的の一つ……リリスちゃんが言っていたリディアちゃんを連れ去ればいいという話が難しくなるな。まぁ……仕方がない。リリス君がリディアちゃんを連れて来れる可能性は低いと思うが……一応試してみるしかあるまいな……。」と言いだすので、俺がその話を止める。
俺は……「なぁ……その事なんだけどさ……。もしさ……。俺がこの国に来た理由を話さない方が都合が良いなら、俺があんたらに嘘をつこうかと思っているんだけどさ……。まぁ……どうするかは決めて欲しいな。」と話をすると全員が俺を見つめて考え込んでしまう。そんな中で唯一口を開けた人物が居て、その人物は、国王の方を見ながら口を開いたのだった。
「陛下……私としては彼が言っている事が……真実なのかを疑っておりまして……もしそれが本当ならば……彼をこのまま返すわけにはいきません……。リディアさんの居場所はわからないはずですが……、彼には我々が知らない情報を色々と持っている可能性がありますから……。
私も彼の言う事を信じようと思います。ですので、私の独断で判断させてもらいますが……彼に関しては拘束させていただきたいのですが、いかがでしょうか?」
と言うと……「そうだな。私は別にかまわない。だが、それで良いかな?」と聞かれると……俺が「問題ないよ。ただ、もしも俺の事を信用してくれるというのであれば……条件がある。俺に危害を加えた場合……例え俺の仲間や家族に攻撃をしたとしても、容赦するつもりはないからそのつもりでな!」と少し殺気を出しながら宣言をするのであった。
そしてその言葉を聞いた者達は……冷や汗を流しながら黙ってしまう。
そんな様子を見ているレイナとリナとリリィと俺に対して微笑んでいるリリスを見て、リリスは微笑みを返した後に真剣にリディアの事を考えて行動を起こす事に決める。そして俺の方に駆け寄ると、俺の腕を取り、抱きつき始めたのであった。そんな様子を見た国王と国王の側近達は「おいっ!!なにしてるんだ!!すぐに離れなさい!! そんなに私の娘を虐めて何がしたいんだ!!」と言うが……「私は、リリスはお兄様の事を愛しています!!リリスが愛するお兄様のお願いを聞いてあげる事が出来なくて、お兄様の傍を離れなければいけないなんて嫌です。だから……せめて私だけはお兄様と一緒に居るんです!!リディアお姉さまに迷惑を掛ける事もありませんから!!リディアお姉さまもリリスの大切なお姉様なんですから!!」と言うと俺の手を握る。すると俺はリリスと目線を合わせると「わかった。一緒にいような。でも無理はするなよ?お前はリディアの大切な家族なんだから。リディアを困らせるような事はしないでくれ。約束だぞ?リディの為に頑張ってくれるなら、お前の望み通り一緒にいてやる。」と言うと、リリスが俺に飛びついてきたので、受け止めて優しく頭を撫でながら「よしっ。リディアを守ってやってな?あと、約束も絶対に守るんだぞ。」と言うとリリスは「はい。リリスは頑張ります!なのでこれからずっと、ず~っと一緒ですからね!約束ですよ。」と言うと……国王とリリスの父親以外の人達が、驚きの顔で見てきて、「なにをしているんだ!?早く離れてくれないと……」と焦り出したところで、リリスの父親は、国王に声をかけて……「国王様。私はこの者のことを、信じられると確信しました。私の判断が正しければ……きっと大丈夫ですから。私はこの男と取引をする事で……私自身の目的を達成したいと考えます。」と言うと……リリスの父親は、国王の方に向きなおすと俺に質問してくる。「お主……名をなんと申す。私は、リリスの父であり……シルフィード王国の騎士を纏める立場にいる『大勇者 アゼルバード・レイ=オルフィデックス』という者だ。どうか名前を教えて貰えないだろうか?」と言ってきた。すると俺の隣にいたリリスは俺の袖を引っ張ると「この人は、この国の最強騎士と呼ばれている人で……。『光の大勇者』の称号を持っている人です……。だから、失礼な態度はとらないようにしないと駄目だよ……。怒られた時は、私も一緒に謝ってあげるけど……。
リリスは、この人と仲良くしたいの……。」と呟くので「あ~そういうことね。了解!俺の名前はアルフォードって名乗っておくよ。よろしく!」と言うとリリスは嬉しそうな顔になり……国王とアゼルバードに向かって「これから宜しく御願いします。お父様、それにアゼルバード様も。リリスはこれから、リディアを守る為に協力致しますので、これからは仲間として迎え入れてくださいませ。リリスはこの方と一緒に、リディアを守りますから!安心してください。」と言い始めるので国王もアゼルバートも驚いていたが、俺は特に驚くことなくその様子を見ている。
するとリリスの父親は国王の方を見ると「私はリリスをシルフィード王国の勇者パーティーの一員として正式に推薦しようと思うのだが、国王様に確認をとらせて頂いてもよろしいですか?私が認めた者が勇者になる資格を持つ事ができますので……。」と言うと国王は「ああ。構わないよ。リリアとリリスさえ良ければシルフィード王国の勇者になっても良いと思っているよ。」と言うと二人は喜び出す。そんな二人を見てリリスが嬉しそうにしていると、リリスの父親はリリスに近寄ってきて耳元で話しかける。「(リリス……。君にはリディアという妹がいるのかい?)」と聞くのである。するとリリスは少し涙を浮かべながらも必死に「はい。」と答えていた。するとリリスは……俺に何かを訴えかけるようにこちらを見るので俺は「俺からも頼むわ。」と言うと……国王がリリス達に声を掛けて「どうしたのだ。そんなに暗い顔をして、まさか……この男の事が好きなのか?」と言ったが、それに対してリリスは「いえ。違いますわ。私はリディアお姉さまが一番好きで、その次にアース様が好き。リリスは、勇者になって……この方の役に立ちたいと思っています。勇者になった時……一番初めにこの方に助けてもらった時に……一目惚れしたんですよ……。」と言うと、国王も国王の側近も皆驚いた表情をしていた。
俺は「おいおい……。それだと俺がリディアを助けた時に好きになったみたいな感じじゃないか?」と照れながら話すとリリスが「えぇ。だってあの時のお兄様格好良かったんですもの……。まるで物語の主人公のようでしたわ。リリスの理想な王子様みたいで……。」と言うので俺は恥ずかしくて何も答えられずに、頭を掻きながら目を背けていた。
するとリリスがリディアと俺の事を両親に説明し始める。
「この方が私達の命を助けてくれた恩人の『リザードマン』さんで、『聖獣王』でもあるんですの。リリスはそんなお兄様の事を心の底から愛しているの。リリアお姉さまの事も大好きだけど……リリアお姉さまのことは私と違う感情で大切に想ってくださってるような気がして……。
リリスの事を実の妹のように接してくれているから、とても嬉しいのですが……この気持ちは恋なのかどうかが、わからないんです……。でもリディアちゃんに負けないくらいに、この方を幸せにしたいと思うのは確かですね。だからリリスがこの方と離れないといけない時は辛いでしょうね。でも……この方は私に約束をしてくれたから……。ずっと一緒に居ても良いと、言ってくれたから……リリスはその事だけでも、お母様にも誰にも負けないと思うの。だからお母様……ごめんなさい。リディアちゃんを必ず連れてくるとリリスが言っていた事を信じて貰うわけにはいかないかもしれないの……。
だからせめて、リリスはお兄様と一緒にいるために頑張って行きたいと思っているの……。お兄様は……リリスにとって本当に特別な人なの……。リディアお姉様がリリスの事を受け入れてくれるのなら……この方にリリスの想いを打ち明けたい……。
お兄様のことが好きだということを……伝えたいの……。」
とリリスが泣き出しそうな声で一生懸命にリディアを連れて来る事を両親に伝えていたが……国王達は「わかった。でも無理はしないように。もし……リディアがリリスを受け入れることができないと言うのであれば、リディアの意思を尊重するように伝えておくからな。それと無理は絶対にしない事を約束するんだ。お前に何かあったら私はお前の母と……この国の国民にも申し訳がたたん……。だから……約束だぞ?いいな?」とリリスに伝えるとリリスは嬉し涙を流しながら「うん!お母様もリリスの事をわかってくれてありがとうございます!リリスはお兄様と一緒だったから頑張れたの。リリスの居場所を守れて、これからもこの国で生きられるのはお兄様のおかげだから……リリスはこの方に恩返ししたいから、だからお願いです。私に力を貸させて下さい!!お兄様の力になりたいの!!だからリリスの事を許してください!!」と言うのでリリスの両親は、娘の決意を聞き入れて……「ああ!勿論だ!!リリスの事を認めてやれない母親なんかじゃないから……安心しろ!!だから……今はゆっくり休みなさい!!もう……こんなに泣いたら顔がぐちゃぐちゃになってしまうだろう。ほら、これで綺麗にしなさい!!」と言うと、リリスを抱き寄せていた。
そしてしばらく時間が経って落ち着いたところでリリスは「リディアお姉さまを必ず見つけてきます! それまでリリスの事をよろしく御願いします!」と力強く言うので「任せておきなさい。私は君達のお母さんなんだから。」と言うとリリスは笑顔を見せて、「リディアが戻ってきたら私達がどんな関係になっていたとしても、あなたは私の大事な娘なんだ。リディアとも仲が良いしな。」と言うとリリスは微笑んでいて、その後、家族3人で話をし始めた。
リリスの母親が俺の方を向いて「私達を救って下さりありがとうございます。この度は、私の娘を助けに来てくれまして本当に感謝しております。この国は『闇ギルド』と呼ばれる者達に滅ぼされようとしております。どうか貴方の力をお貸しください。私は、今ここで誓わせてもらいます。
我が愛するシルフィード王国、並びにそこに暮らす人々を守るためにこの力を使ってみせます。どうか宜しく御願い致します。」と言うので俺は「わかりました。では……まず『闇ギルド』の拠点を教えてください。そのあと、この国に居るであろう幹部の人数、そしてその能力なども把握できたら教えてください。あと『闇』を崇拝しそうな貴族がいた場合、その人物についても知りたいのですが……。」と言うと王妃は俺の問いに対して「承知しました。出来るだけ詳しく調べて報告致しましょう。それと、この国にいると思われる『魔導士』についてですが、その者は現在行方が不明ですが……。恐らく我が国にはいないと思われます。ですが、私にわかる範囲での『魔導具使い』は、全員リストにしてありますので、後でそちらをご確認してください。」と言ってくれたので「分かりました。その者については、後日俺の配下をこちらに派遣しますので、その際に詳しい情報を手に入れてから対処しますので、御安心してください。それではまた……。」と言い、転移魔法を発動させた。すると俺がいなくなった後にリリスと国王は会話を始めた。
俺は転移魔法を使い、国王の別荘に戻ることができたのである。すると国王がリリスを見て驚いて「リリスがリディアに似ている……。」と言うので俺は少し焦ったが、俺はリディアに確認することにした。
するとリディアも驚いた様子だったが、リディアが「はい。お母様とリリスはそっくりなんです。私が知っているリリスの姿とあまり変わってないのでびっくりしてしまいました。」と話すとリリスは少し照れながらも喜んでいた。すると国王は「やはり……そうなのか。」とリディアを見つめて嬉しそうにしていた。そんな姿を見て俺とリリアは思わず笑ってしまうのであった。
リリスは、自分の部屋に戻った後も、とても機嫌が良かったようで、鼻歌まで口ずさんでおりとても楽しそうである。だが、俺は一つ疑問を感じたことがあった。それは、リリスの年齢である。国王の話によると年齢は13歳で間違いないとの事であったが、俺の目にはまだ10歳前後の子供にしか見えないのである。すると俺が不思議に思っていると、リリアはリリスと国王の関係を知っているようなので、その事を聞くことにした。すると…… リディアの母親と、リリスの母親が同じ孤児院出身で幼馴染であり……とても親しい間柄であったという事。リディアの母親の方がリリスの母親より5歳ほど年上で、先に結婚をしておりリディアが生まれたがリディアが2歳の時に病によって亡くなったそうだ。その後はリリスが孤児院に入り15歳まで生活していたという事がわかった。国王とリリスの父親も同じ時期に孤児となり、お互いに助け合いながら成長していったらしい。国王の場合は父親が、ある商家の次男坊で、商売の才能があり今ではこの王国の経済を支えているとの事だ。そして、リリスも同じような経緯があって、孤児院で育ち15の時に、父親に連れられ城にやってきたというわけだ。リディアと同じ様に、リリスは幼い頃から母親の影響で魔法の才能に目覚め、魔力の量と質が高い事が認められ、今回の勇者選定に参加したようだ。
俺とリディアがこの国に来たのは偶然ではなかったと知って驚くと、リディアが嬉しそうに「リリスは私達と一緒の孤児院で育ったんですのよ。だから姉妹のように一緒に育って来たんですの……。だから本当の妹のような存在でしたの。それにお母様からよく聞いていましたわ……。私にはもう一人娘がいるって。その子は私の事を実の妹のように思ってくれた大切な友達だって。そしてお母様はその子の事をとても可愛がっていたって……。だからリリスは私にとても優しくしてくれたんですの。」と言うので、俺はその話を聞いて「それじゃぁ……リリスが……あんなに明るくなったのは……きっと……。」と思うと、急に涙が出て来たのであった。
「えぇ。リリスはとても良い子になりましたの。あの子が元気になったきっかけを作った方に感謝してもし足りないくらいですの……。だからリリスを救ってくれた方に会えてとても嬉しかったです。私にとってもとても恩のある人だから、この方にならリリスの事をお願いできると思ったんです。でも……本当にありがとうございます……。貴方様にも、私達は感謝しかありません……。」と言って頭を下げてきたのだ。そんな姿を見たら俺は慌ててしまい、「いや……そんな大したことはしてないから!! 俺は当然のことをやっただけだし……。それより……リリスの事を任せて欲しいと言ったけど……正直なところ、この先どうするか迷っていたんだ……。俺はこれから旅に出ようと思ってるんだが……。一緒に来て貰えないか?リリスには幸せになって欲しいと思っている。だけどリディアの気持ちが一番だから、そこはリディアの意思を尊重したいと思っている。」と言うと、リディアは真剣に考えているのか、俺に質問してきたのである。
「私は……確かにお姉様の意思を尊重するつもりです……。
でも……私はこのままだと幸せになれる自信がないのです……。」と暗い表情で話していたので俺は、「それはどうしてだ?別にリリスの事は嫌っていないんだよな?」と聞くと、「リリスのことは大好きですよ。ただ……。リリスに甘えるだけでは……お姉様がいなくなった後、立ち直れない気がするのです……。私にもまだやりたいことがあるんです……。私は……リリスにもお母様にも幸せになってもらいたいのです……。だからリリスも私も幸せな道を見つける為の旅に出てみたいんです……。」と答えた。その言葉を聞いた俺の心の中で「俺の嫁達に何かあった時、俺には何も出来なくて悔しかった。だからせめて彼女たちを護れる力を身に付けたかった……。そして、あいつらのそばでずっと……笑って過ごせるように頑張りたかったんだ。それが叶うまでは、絶対に死ねないんだ……。俺は……絶対に皆のところに帰ってくるから……。だから待っていてくれないかな……?」と俺は思っていたことを口にすると、俺の顔を見ながらリディアは泣いていたのだ。
そして泣き止むまで待つと、彼女は俺に向かって笑顔を見せてくれて、俺の頬を両手で挟んできて顔を引き寄せるとキスをしてくるので俺は驚きを隠せなかった。しばらくすると唇を離し「私は……ロイドさんと一緒に生きて行きます。もう二度と後悔したくないですもの。お姉様がいなくなって、悲しくて寂しくて苦しくて辛い時に私を励ましてくれたのは、貴方だったんですよ……。貴方の笑顔を見ると私は凄く救われていたのです。」と言ってくると、俺は抱きしめていた。
俺の心に響く一言であったからだ。
それからは二人でリリスのところに行き今後のことを三人で話すことになったのである。
すると国王が「リリスの事、リディアの事……二人共ありがとう。君達の優しさと心の強さには、本当に驚かされるよ。本当にありがとう。この国の事なら何でも協力しよう。君達の為に何かしたいと思っているのだが、一体何を望むかね?」と尋ねられたので俺はリディアの希望を聞く事にしたのである。するとリディアは「お母様に会いたいんですの。」と言うと国王が「そ、そんなことでいいのかい……?もっと贅沢なものを望まなければ叶えてあげようと思えるのに……残念だよ……。」と言うのでリリアが「そう思うのであれば、今すぐ手配をしてくださいませ!」と言うと国王は「う、うん。今すぐに準備させよう……。それではまた……連絡を待ってくれ。」と言っていたのであった。
俺とリディアはリリスを連れて、城の外に出る為に、まずは城の外に待たせてある、俺の部下と合流する事になっているので、急いで向かおうとしている。するとリリスが不安そうな顔をしながら「わ、わたしは本当に城から出られるのですか……?あ、足手まといにならないでしょうか……?もし足手まといになるようなことがあったら……わたしは捨ててください!!」と言うので俺は思わず大きな声で叫んでしまったのだ。「何を言ってるんだよ!!!そんなことあるはずないだろう!!俺がどんな思いをして、お前を助け出したと思うんだ!こんなに可愛い子を見捨てられる訳が無いだろう!俺は自分の大事な仲間にそんな事を言うヤツがいるなんて信じないぞ!例え俺が許さないからな!」と言ってあげるとリリスが目に涙を浮かべながら「あ、ありがとう……。でもわたしが怖がりなのは知ってるでしょう。それでもいいの?」と言うので「俺は優しいリリアが怖いとは思えないけどな。むしろ、お前の明るさで癒されてばかりいるしな。」と答えてあげるとリリスも安心してくれたようで、俺たちに付いてきてくれるようだ。
俺達が城門まで到着すると、リリアは部下達に「この娘が、例の娘です。私達の命をかけて必ず無事に届けて差し上げなさい!!わかったわね!!!」と大声でいうと、兵士の一人が「はい!!了解致しました。リディア様、お手をどうぞ……」とリリスの手を取り案内をする。リリスは戸惑いながらも兵士について行くが……明らかにリリスの方が背が低いのにお姫様扱いに戸惑っている様子だが…… 城の敷地を出るまでにリリスはかなり恥ずかしいのか、俺にだけ聞こえるような小さな声で呟いてきたのだ。その言葉を俺が聞き逃さなかったので「そうやって可愛くしてくれる人が一人でも増えればきっと、リリアだって……喜ぶはずだからさ……我慢してくれな」と言うと、リリスは小さく「はい……。」と答える。そして門を抜け街道に出ると俺はリリスを背中に背負った。その光景を目にしたリリアは、「ふふっ……やっぱりこの子が気に入っているのね。」と言って笑みを見せていたのであった。俺はそんなリリスを見て嬉しくなりながらリリスを背負い移動を開始したのである。
俺は、俺の後ろで嬉しそうに微笑んでいる、愛しい人と、とても懐いてくれている少女が一緒にいてくれることが嬉しくて堪らなかった。これからの未来が楽しみだと、心の底から思えてくる。俺にはこの先、まだまだ大変なことがあると理解しているが、なんとかなるだろうと何故かそう感じてしまっている自分がいて、不思議な気分になっていたのであった。
***
その頃、魔王軍の居城の玉座の間では……リリスの両親と魔王、そして勇者パーティーの女性達が対峙している状況で会話が続いていたのである。そして、そんな女性陣を気にすることもなく勇者達は勇者の固有能力である、神の声を聞き取ろうとしていたのだ。勇者は、その能力を使うと目の前の光景が変わるので、その度に驚いていた。そして……
「ははははは……やっと……この時が来たよ。僕と僕の仲間たちはここまでたどり着いたんだ……。」と、勇者は満足げに独り言を言っている。
勇者が今までの事を回想し始める。
〜〜 それは、数年前の出来事である。
僕は15歳の時に聖剣に選ばれ、勇者になったんだ。そしてその時には既に魔王軍は存在していた。そして、勇者が選ばれると、神託により聖騎士と魔道士が召喚される事が決められていたらしい。だけど、なぜかその二人だけはまだ姿を見せなかったんだ。でもその時は深く考えていなかったんだよ。だって僕が選ばれた勇者なんだから、何も心配する事はないと思っていたんだ。でも実際は違った。
「な、なんで!? なんだよ……この人達……強すぎるだろ……。それにどうして戦わないんだよ……。」
そこには僕よりも年上の男性二人と女性が一人立っていたんだけど、その三人は戦闘に参加しようともせず、僕たちの戦いを観察していたのだ。その視線はとても冷たく……まるでゴミを見るかのような眼差しで見ていたのを覚えてるよ。しかも戦いが終わっても……褒めてくれないし……。本当にイラっと来たんだよね。
その後、何度か戦う事になったんだけど…… 僕は三人の事がとても嫌になっていったんだ。
最初は「こいつら……ふざけやがって……。僕を舐めやがって……。」とか思いながらも頑張ってたんだ。でも何度も同じような目で見られていて……。次第にその目が怖くなってしまって……。それから、その三人の実力を肌で感じるようになり、絶対に勝てないと思うようになっていった。するとある時、いつものように三人組と戦うことになった時、いきなり僕以外の四人の身体から光が放たれたんだ。それが合図なのかはわからないけれど、突然動き出してきて攻撃してきた。それからは、一方的な蹂躙でしかなかったよ。あっという間に全員倒れて動かなくなった。僕は、そんな様子を見せられて恐怖で足が震えてしまい、一歩も動けなくなってしまったのだ。
すると、その三人の内の二人が話しかけてきたのだ。
そして「貴方……弱すぎじゃない?本当に勇者なの?これじゃ……私たちの邪魔をする存在になってしまうかもしれないから……ここで消えてもらうわよ……。」と一人の女性は冷たい瞳を向けて言ってきた。もう一人の女性の方は無言のままだったが……目は優しかった。でも、それだけは許すことが出来ない言葉だったんだ……。そして……次の瞬間…… 僕には何も分からなくなっていた…… ただ一つ分かる事は……この世界はもう終わりなんだと……。そして僕たちは死んでしまったんだと思ったのだ……。………… あれ? ここは…… 何処だろう……。
真っ白の世界にいるみたいで……。誰もいないみたい……。
ん……何か声が聞こえたような……。
『私は女神です。』
誰……? あ……女神様!! 僕は…… 貴方にお礼を言いたいんだ!! あの時の事を思い出したら、僕は涙が出て止まらなくなってしまい……。
すると急に目の前に美しい姿の、この世のものとは思えぬ程に美しく輝くような金髪の長い髪を揺らしながら、優しい目をして佇む女性が目の前に現れたのである。その姿を見て、すぐに女神様だと分かったのだった。そんな女神様が優しく問いかけてきた。
「貴男……私の事をご存知なのですね……。そう……思い出しました。私の名前はセリーヌと言います。覚えていますでしょうか?」と言うと、少し悲しい表情を見せたので、その悲しげな顔を何とかしたいと思わずにはいられなくて、つい「はい。」と答えてしまったのだ。そうすると、セリーヌは優しい笑顔になり「では、今の状況も分かっていますね。今、私の仲間が必死になって貴男の命を繋ぎ止めようとしています。なので今すぐに貴男は、ある事を伝えなければいけません……。それは……」と言って、真剣な顔をしながら僕の肩に手を置き……「いいですか。よく聞いてください……。まず、あなた方二人はこの世界の人間ではありません。別の世界で生まれ育った者同士で、同じ時間の流れで生きているのです。そしてこの世界で死んだ事で……本来なら輪廻に戻るはずだった二人の魂は……二つの世界を跨ぎこの場に来ている為……戻る場所がなく消滅しようとしているところです。それを防げるかどうかは貴男次第なんですよ。分かりましたか……? いいですか? 大切な人が苦しんでいて……命をかけて助けたいと思うのであれば……覚悟を決めて下さい。」と言うと再び優しい目に戻ってくれたのである。
そんな事を聞かされた僕の脳裏に、愛しい人の泣き叫ぶ姿が鮮明に浮かび上がると……。「はい……。わかり……ました……。だから、教えてください……。お願いします。僕に出来ることがあればなんでもする。」と答えていたのである。
「そう……良かったです。ではこれから話すことは私にも詳しくは分かっていない部分もあるので、間違っている事もあるかもしれません。ただ確実にいえる事は、今のリディアさんは暗黒神リリアと入れ替わってしまっている状態だという事は間違いありません。」と告げられた。そしてセリーヌは話を続けてくれる。
「それでリディアさんの本来の身体の持ち主のリリアスは……」と言って説明を始めてくれたのだが……。正直、衝撃的過ぎて理解出来ないことだらけだったので……あまり上手くは伝わってこなかった。
とりあえず、僕の愛する人は元々別世界に生きていた人で、その人は今は魔王の娘となっていて、僕たちが元居た世界に来ている可能性があるという話しで、この世界が滅亡しかけているという話しであった。
その話を聞いた後に「僕は、どうしたらいいのでしょう……。どうすればいいのか……。このまま……死ぬしかないのかな……。僕に出来る事があるとしたら、せめて……最後に愛する人を一目見ておきたいんです。お願いです。一度だけ会わせて貰えませんか!?」と頭を下げたのだ。その言葉に……
「ふふっ……。本当に可愛いわね……。リリスに聞いていた通りね。リリスの事を頼んだわね。必ず救ってあげてね。それと、この先に進むと貴方の大事な人のところに着くはずだから……頑張ってね。それじゃね!!」と言って、手を振りながら消えたのであった。そして、暫く歩いていると…… そこには見間違えるはずの無い最愛の人が……いた。その人に近づきながら、「ねえ、愛し……い……君……? 愛しいリリィ……」と僕が呟くように呼ぶと、「リディ?リリ?どっちなの!?……ああ……私はなんて事をしてしまったのだろうか……。こんな姿で、あなたと会うことになるとは思ってもいなかった……。ごめんなさい。そして、私は貴方の知る、私とは違うと思うの。」と、そのリリイという人は悲痛そうな声で話しかけてくるので「うん……。僕には分かるんだ。君は僕の知っている、僕の大好きな君だよ。どんな姿であっても変わらないよ。」と言って僕は抱きしめていた。そして僕が彼女の耳元で、「大好き。もう離さないから。安心して……。絶対に離れないようにするからね。大丈夫……。何も心配しないでいいんだよ。ずっと一緒だよ。僕と一緒に幸せになろうね!」と言うと涙を流し始めたので、僕は強く抱き寄せていたのである。そんな様子を微笑みながら眺めて見ている女性がいる事に気づく事なく……。
(はぁ……全く世話が焼けますわ……。)
私はリリスと、とても嬉しそうに抱きしめ合っている勇者を、とても微笑ましく思っていたのだ。でもそれは一瞬の出来事だった。私が見た光景は、勇者の胸から短剣が生えている光景だったのである。勇者は驚愕した顔をしていて何が起こったかわからないという感じだ。すると、勇者の後ろには先ほど会った勇者パーティーのメンバーの一人である、リリイと呼ばれていた少女が冷たい視線で勇者を見つめており、口を開いたのだった。「ふーん。お前みたいな屑が……。私のお姉様の大切な人を傷つけようとしたのか……?」と言うと「や、止めろ……。リ……リリア……違うんだ……。これは……。そんな事よりも僕は……君の事が……大切で……。」と言った瞬間、また口から大量の血を吐き崩れ落ちていた。私は慌てて駆け寄ったのだけど……。「なんだよこれ……どういうことだ……。僕は……。どうして……。」と言い残すと息を引き取ってしまったのだ。私は絶望し、何も出来ずにいる中、私は後ろから羽交締めにされてしまった。
するとそこに現れたのは、あの時私たちを助けなかった女の一人の金髪の女であったのだ。その女が言う「この子を殺すから手伝ってくれないかしら?貴女の願いは叶うわよ?さっきは、あの言葉しか言わないと思っていたけれど……。まさか……本心を言うとは思わなかったわ……。やっぱり……あの子は貴女の妹ね。ふふっ……。あの子に何を言われても絶対に殺さずに捕まえて欲しいと言われてるのよね。だから協力してくれるよね?それにしてもこの子……。この子があの時の勇者なのかしら……。なんか弱すぎるわよね。あんな雑魚相手に負けちゃってさ……情けない……。でも貴女も似たようなものなんだけどね。あははは。」と言うと笑い声をあげたのだ。そして「わかった。だから、この腕を解放してくれ!!私なら何でも言うことをきく。頼むから助けて欲しい……。」と震えながら懇願していたのである。
それから私たちは三人掛かりで勇者を拘束すると……転移陣を起動させ何処かに飛ばしていた。
私には何故そのような行動をしたかわかっている……。恐らくは……『リディアさんを救う為に』……。そう信じて……。…… あれ……ここは……? 確か……女に刺されて意識が遠くなって……それで気がついたら知らないところにいて……そして急に目の前にあの金髪の女が現れて、それで何か変なことを言い出して……。あ!思い出してきた!!そっか……。僕は、死んだんだ……。すると隣で泣いている声と、優しく声をかけてあげて、慰めている優しい女性の姿が目に入ってきたのである。その二人は……僕の愛する人とその人の親友の姿だったのである。二人は涙を堪えながら僕に向かって必死に声をかけてきているのが分かって、申し訳なさと自分の不甲斐無さに嫌気がさして……「ごめん。僕が死んだせいで……。迷惑ばかりかけて……。二人ともごめんね……。」と言うと二人が驚いた表情をして「え……。貴方……。」と言うのが聞こえたが……そのまま目を閉じていたのである。…………
「ねぇリリス?起きなさいよ?いつまで寝てるつもりなの? 起きて話を聞かせなさい?じゃないと怒るわよ!!」と言う声がしたので目を開けると、目の前に金髪の長い髪を揺らしている綺麗な女性が立っていることに気づいたのだった。その女性は、僕を見るなり急に笑顔になると「あら、起きたのね。私の可愛い妹ちゃんは何処にいるのかな?」と聞いてきたので、「すみません。僕にはわかりません。でも……きっと近くにいます。」と答えた。すると、その女性が「は?何言ってるのよ!?貴方は私達を騙してたのね……。まぁいいけどね。それよりも、早く行きましょう。ここに長居はしたくないの……。それに、まだ、もう一人の可愛い子のことも探し出していないのよ。」と言ってきて歩き出したのでついていく事にしたのである。
そして暫く歩いていくと、ある場所で立ち止まったのだ。
その場所を見て驚くと同時に、僕は、ある違和感を感じていた。
この光景に……僕は見覚えがあるのだ……。
いや、そんな筈はない……。
僕はここに来た事なんて無いはずだ…… なのに、この光景に見覚えがあるのだ……。そんな風に思いながら周りを見渡すと、そこには、僕と良く似ていて……違う顔があったのである。
(ああ……そうか。そうだ。この場所は『リリィのいる部屋』なんだ。じゃああっちの顔は『僕の本当の身体の方のリリア』なんだろう。僕の中でリリアの記憶は曖昧になっていたのだが、何故か『リリィ』という女の子が僕の中で眠っている事は知っていたので……。でも……どうしてこんな記憶を持っているんだろう?)と思いながらもその二人の様子を見守っていたのだった。……僕と、僕の中のリリアという女の子が見守るなか、リリイがリリアさんの前に来ると、「ねえリリ、今度こそ、私のお婿さんにしてあげるよ。ふふふ……。」と言うと、リリアさんに抱きついたのである。すると、「な!? 何するのよ。やめなさい。私は、あなたとは結婚しませんからね。いい加減に離れてちょうだい。」と少し慌てながら言っているので……リリスさんの気持ちを考えずに抱きしめている事に苛立っていた僕は「リリア……。リリス……。僕の愛する人の手を煩わせないで貰えないかな!?」と言いながら近づくと「誰だか知りませんが邪魔をしないでくれますか?」とリリアは言ってきたので「リリア……いやリリアス……。僕を覚えていないんだね……。君を愛していた男だよ?分からないわけないよね?」と言うと、リリアが「愛……? ごめんね。私……男の人のことよくわかってないから。でも、愛とか、そういう感情はよくわからないの……。ごめんね……。
あとね……この子から……もうすぐしたら離れるから……。待っていてくれないか?もうじきで……全てが解決されるから……。」と言ってリリアの身体から出て来たリリアの魂は、僕に向かって近づいてくると……。
僕と入れ替わるように、僕の中に吸い込まれていったのだ。そして、僕に「後は任せたわ……。私は、しばらくしたら貴方の中に戻ることになるから、リリイと、リリのことを宜しくお願いします。貴方には迷惑をかける事になると思うのですが……。本当にごめんなさい。」と言ってきた。僕は「大丈夫です!!僕に全てを任せてください!!必ず、僕がリリアさんを取り戻してみせますから。」と言うと、微笑んだ後、僕の方に手を伸ばすと僕の頭を撫でてきた。
そして「ふふ……。
貴方の大事な人を救ってきてください。」と言うと、再びリリアンさんに戻っていったのだ。その様子を見ていた、金髪の美しい女性は、「あら?どういう事かしら?どういう原理でそうなっているのか全く理解出来ないのだけれど……どうなっているのかしら?まぁそれは置いておいて……そろそろ始めないと……。貴女達が私の妹を誘拐したみたいだから、連れ戻す為にやってきたのよ?覚悟してもらうわよ?」と言うのだった。その瞬間、僕は「何の話だ!!リリイがリリを拐かしたとでもいいたいのかね君は!!」と怒りに任せて叫ぶと、彼女は笑っているだけであった。そして、「リリの事も知っているようだけど……貴女も私の事を何も知らないくせによく言えるものね。私の名前くらいは知っておいてほしいものだわ……。私は、『リリス・ランスロット アルスフォード エルンヴァルト』。
一応『聖騎士団長』なんだけど……。知らないようだから教えておくけど……。私に逆らう者は皆殺しにする……。さようなら。
勇者ロイド・グラディアス。
勇者ロイド様?この世界では勇者様ではなくロイド様なんでしょう?それとも勇者様に直すべきでしょうか?どちらにしても……死んでもらうことは変わらないんですがね!」と言うと……勇者に対して剣を抜き放つと一瞬で間合いを詰めて剣を振るったのである。その一撃で勇者は絶命すると……その体は光の粒子となって消滅していたのだった……そしてリリスはその場に立ち尽くし呆然としながら呟いていたのだった。
「はは……。何よこれ……。何よこれよ……。勇者が簡単に死んじゃうとかありえないでしょう……。あり得ないでしょ……。そんな馬鹿な事があってたまるものですか……。この女さえ居なければ……あの子は帰ってきてくれるはずだったのよ!!私があの女より先にこの世界に召喚されていればよかったんだわ……。あの娘は……この女が……この女が殺したに違いないわ……。許さない……。絶対に殺してやるわ。絶対に……。勇者が死んだなら仕方がないわね……。勇者の仲間だった人達だけでも殺すことにしようかしら?あはは。この女もあの子と同じようにしてやらないと……。」と言うと僕に向かって剣を構えていたのである。そして、リリスは、いきなり斬りかかって来ようとしていたが……僕には何故か攻撃してこないことがすぐに分かり……「何をしようとしているの?リリスさん……。僕と、リリアを殺せば貴女の愛する人は戻ってくると思っているの?残念だけどね……リリアさんは戻らないだろう……。でも……リリスさんが死ぬことでリリアさんは戻る可能性があると言うのであれば……。
やってみると良いさ!!リリアさんが僕に力をくれたんだ!!リリアさんが……僕の中に眠っていたもう一人の僕が、助けてくれたんだ。だから、今度は……僕の番なんだ。僕は……僕は、リリィを救う!!お前だけは……絶対に赦しはしない!! 僕の愛する女性を奪おうとする者を僕は絶対に生かしたりはしはしない!!例え……相手が誰であろうとな!!!」と僕が言うと、「何言ってるのよ……。あの子を救えるはずないでしょ!!それに……その身体は、あの子ではないじゃない!!私はね……この世界であの子の心を取り戻すためにやってきただけなのよ。
貴方の言っている事はただの妄言にしか過ぎない。あの子が……貴方を愛するはずもない……。」と言うと僕は、無言のまま彼女の腕を掴むとそのまま投げ飛ばしたのである。すると彼女は地面に倒れて起き上がると……「痛いわね……! 一体どういうことよ……。」と言うと再び剣を構えたのだが、その時には既に目の前にいて、彼女を押さえ込んでいたのであった。するとリリスさんは必死にもがき抵抗して逃げ出そうとするが……僕は、彼女を拘束したまま動けないようにしたのである。しかし……。それでもなお……僕は……リリスに攻撃をしようとするが、そこで……僕の身体の中の何かに亀裂が入ったかのような感覚を覚えると……僕は、その場に崩れ落ちたのだった。
そして、それと同時に、もう一人の僕の気配を感じることができたのだ。
もう一人の僕は……ゆっくりと僕の前に歩いてきて「リリス……やっと見つけたぞ……。俺の妻に……何をしているんだよ……。」と言うとリリスの首を掴んでいたので……「止めろ!!リリスは僕の親友であり大切な仲間だ!!彼女に手を出すなら……僕だって容赦はしないからな……。僕達の命に代えてもリリスを助ける……。そしてリリスを無事に家に帰らせることが僕の使命だ……。邪魔するやつは誰だろうと排除させてもらう。覚悟しておくんだな……。僕は……僕に害なすものを何人たりとも生かしておくつもりは無いからね……。」と睨みつけると「ふん。そんな脅しに乗る私だと思わないでよね。それにしても……どうしてこんなことになったのよ……。おかしいでしょ……。どうして勇者は、貴方を選んだのかしらね?私は貴方なんて大嫌いなのに……。」と言うので……「そうだろうね。君には嫌われてもおかしくないことをしてしまった自覚はある。
でも……リリィは君を慕っていたから、君のことも受け入れたんだ……。そして……リリィは……君に愛されて嬉しかったはずだよ。君との日々が……リリィにとってどんなにかけがえのないものだったのか、きっと分かると思う。リリアさんと、リリィさんは……同じ顔をしていて性格は違うのかもしれないけれど……でも……二人とも君を愛していたことは間違いないと思うよ……。君がどれだけ、リリアさんの事を思っていたかも僕は分かっているんだ。」と言うと、「何言っているのよ!! 私がリリアの事を想っていた? ふざけないで!!あんな……男と寝てばっかりの女の事など愛したことは一度もないわよ!! あれとは幼馴染で、ずっと一緒にいたのだから仕方なく結婚をしてあげたの。そして……子供が産まれてから、段々と私と会話もしなくなってきたの……。それが許せなくて、私と仲がいいふりをしていた女が産んだ娘を殺したの……。そしたら……。
急に苦しみ出して……私はリリアから追い出されてしまったのよ。それからリリアは私を見なくなったわ。だから、私はこの世界に来て、もう一度やり直す事にしたの。そしてこの世界のあの女を殺して私のものにするつもりよ……。私は……私はあの女を……殺すまで帰らないわ……。」と言ってきたのである。その瞬間、「そんな勝手が許されるわけないだろ……。僕と……僕達を嘗めないで欲しいね……。この世界を平和に導く為だけに召喚された僕達はね……。
自分の身を守るためにも……戦わなければならないときがあるんだ。そして今がその瞬間だよ。僕は……リリスを許さない!!リリスを救い出さない限り……僕は君を許すわけにはいかない!!僕は、リリスと決着をつける為に、君と戦っているんだ。そして……必ずリリアさんを取り戻してみせる!!僕を信じて待っていてくれないかな?」と言うと……リリスは僕を見て笑い出したのである。
そしてリリスは不気味に微笑みながら「はっはー。何それ?私を倒すとか……リリアが救うとか……私からリリアを奪うとか……意味分からない事言ってるの?貴方は、私に負けて殺されるのよ?貴方じゃ、私は倒せない……。勇者ですら私に勝てるかはわからない……。それくらい実力差があるって事がなぜわからないのよ……。」と言うと……僕は……「勇者を瞬殺したお前の力はこの目で見ていた。確かにお前は強い……。正直、お前がここまで強くなっていたと思わなかったよ……。でもね……。お前はリリス・ランスロット・アルスフォードという一人の女の子でしかないんだよ。僕は、勇者ロイドじゃない……。ロイドの記憶を持っていても、僕は勇者じゃないんだ……。この気持ち……君に理解出来るのかい?」と尋ねると、「理解出来ないわ……。私が勇者だった時ならともかく……今の私には関係ないことだから……。」と言うので……「君はリリスであってリリスではない。リリスの姿と能力を持っているだけだ。リリスの心を持つ人間として、君と話していても意味がない。リリスの心を持っていないなら君は敵と同じなんだ。そして……僕は、君と戦う。そして、君を止める!!リリアさんの為に……。
そして……僕は勇者ロイドとは違う道を歩んで見せる!!僕は、僕の思うがままに……戦う事を選ぶ!!リリアさんと幸せに暮らす為にな!!」と言うと、リリスの顔は歪んでいき、憎悪に満ちた表情を浮かべていたが……リリスが動き出すより早く、僕は、魔法陣を展開していく。
『リリスよ……貴様は我の物でもある……。我はリリスを欲する……!!』と言い放つと同時に僕は、『リリスを拘束せよ!!<バインド!!>』と唱えたのである。すると魔法陣から光が溢れ出しリリスに襲いかかっていくとリリスはその光によって全身拘束されてしまうのだった。
するとリリスは暴れだすのだが、僕はその隙を利用して聖剣を抜き放ったのである。
「リリスさん、僕は……君を倒してリリィを取り返す。例えどんなに憎い存在だとしても、リリィの心を取り戻せる可能性があるのなら……僕は……全力で倒す。
リリアムの力をこの剣に込める!!」と叫び剣を振ると、リリスの周りに光の波動が現れて、それはまるで光の波となってリリスを飲み込むかのように包み込んでいったのである。そして、その技を受けたリリスは徐々に身体の自由を奪われて動かせなくなっていた。そして僕の手の中にある剣に魔力を流し込み強化を行うと……僕はその状態で剣を振り抜いたのである。剣からは眩しいほどの光り輝くエネルギー刃が飛んでいき、リリスに向かって行った。すると僕の手の中でリリスの身体が激しく振動し、激しい爆発音が響き渡るのだった。その瞬間、僕の目の前にいたはずのリリスは……忽然と姿を消してしまっていた。僕は……リリスの立っていた場所に近づき確認をするが、そこにはリリスの残骸は残っておらず、ただそこにあったのは、地面にめり込んだ魔方陣だけであり……僕はすぐにそれが転送装置であることを察したのである。
(どうやらこれでリリスの討伐に成功したようだな……。)
僕が、そう思い立ち去ろうとしたときだった。
リリスは突然目の前に現れたのであった。そして、「油断しすぎなんじゃないの!?私がただやられているとでも思ったの!?貴方が私を倒したのは事実だけれど……私は死なない。なぜなら、私にはまだ最後の力が残っているから……。」と話すとリリスは自分の胸に両手を当てると、その瞬間に彼女の姿が変わったのである。
リリアさんそっくりの姿をしていたが……顔は禍々しい雰囲気を纏っていた。そしてリリアさんの着ていたドレスと全く同じ姿をしているのだ。僕は咄嵯に警戒して戦闘態勢に入るが……相手は何もせず……僕の事を観察しているように見つめてきたのであった。しかし次の瞬間……彼女は突如僕の目の前に現われてくる。そして、僕の腹部に蹴りを放ってきたのだった。僕はそれをまともに受けてしまい後ろに飛ばされてしまうと……そこに現れたのはもう一人の僕で……もう一人の僕が僕に攻撃をしてきたのである。
「おいおい。俺の攻撃を受けるなんてらしくないんじゃないか?まぁ……あの女と入れ替わってからはそんなものなのかもな……。」と言うと僕は立ち上がり構え直した。「そうだな。俺はお前で……そしてお前は……リリアさんに化けているリリス・ランスロットか?でもさ……どうやってそんなこと出来るんだよ?そもそもお前には魂なんてなかったはずなのに……。まさか……肉体に寄生していたとか?そうすれば魂を一時的に移すことは可能かもしれないけど……。でもどうして……そこまでする必要があったんだ?」と尋ねるとリリスは微笑む。
「貴方達があまりにも私の存在を否定するような言動をするのでね。私の本体は、今も貴方達の世界に存在しているの。私は……この世界を消滅させるべく、リリアから追い出された時に、あの女の体内に潜り込み、あの女を内側から壊すことにしたの。私の計画どおり……あの女は狂い始め、最後はあの女自身があの子を殺そうとしたのよ。
でもね……あの子の心の強さは異常だった。だから……私はあの女の中にいたのだけど……あの女を食い殺すことが出来なかったのよ。そして……私はあの女に呪いをかけた。私が、あの女の体を支配しようとしたときに……邪魔が入るかもしれないと思ったから。でも……。
結局……あのとき私があの女の身体を奪い取れていればこんな事にはならなかったのかもしれないわ……。」と言うとリリスは微笑んでいた。
「じゃぁ……やっぱりお前はリリアじゃないんだな?お前の目的は何なんだ?」と質問すると、「私がこの世界で、この世界に存在する者達に植え付けようとしている悪意はね……。世界征服なの。だから……貴方達にもそれ相応の覚悟を決めてもらうわ。だって、この世界を滅ぼせば私は元の世界に戻れるのだから……。」
僕はリリスの言葉に驚きながら「この世界を滅ぼすことが、お前が元の世界に戻る条件だと?」と訪ねると、「貴方達は……まだ理解していないの?この世界の人間達は……愚かだという事が……。
この世界には、貴方達以外にも多くの転生者がいたけれど……その全員が……魔王軍側についた。何故だかわかるかしら?それは、魔王軍の方が圧倒的に強くて魅力的なの。その世界を支配する力が手に入るという事は……そういう事なのよ。私はこの世界を一度滅ぼしてから……この世界をもう一度作り直すつもり。私の新しい肉体として使うのは勿論……貴方達の世界の人間を使うのよ。でも……貴方達は別。私の邪魔をしそうな人達だから、今ここで始末する。」と言い、彼女は魔法を発動させようとする。僕はそれを見て……魔法で結界を作り上げると、リリスはそれを見ると不機嫌な顔をしていた。
「あら……貴方も少しはやるようになったのね……。でもね……そんな結界……すぐに消し飛ばしてあげるわ!!」と言ってきた。そしてリリスの頭上に大きな黒い球体が出来上がっていく……。
そして僕は『<セイクリッドバリア!!>』を唱えて障壁を展開すると……。リリスは笑い出し、「馬鹿みたい。その程度の攻撃で、私にダメージを与えられないとわかっているでしょ?貴方の防御など、何回でも何重にも張ればいいだけで……私には通用しないの。それじゃ……おしまいにしてあげますよ!!」と言うと黒い闇の波動弾が放たれていく。僕はそれを防ぐ為だけに、魔法を展開して耐え続ける。すると僕の作った結界は徐々に破壊されていってしまうので……。僕は必死になって魔法を展開していくが……それを繰り返しても意味はなく……そしてとうとう僕の魔法で生み出した盾は砕け散ってしまい……そのまま、闇属性の波動が僕の全身を襲い、吹き飛ばそうとしたので……僕はとっさに地面に伏せることでなんとかその衝撃を受け流す事ができたのである。しかし、僕はその瞬間に、あることに気づく……。
「なるほど……。やはりこの力はリリアの力ではない……。でも……今の僕には対抗策はない……。」と言うと……。
「もういいでしょう……。貴女では勝てないことくらいわかりきっていたはずだわ……。」と言うリリス。そして僕は立ち上がると、「確かに……。君が本気を出したなら、僕は君に勝てないかもしれない。君の力の正体もわかった。でも、君は勘違いをしている……。
確かに君にはリリアさんから奪った膨大な力がある。でも……リリアさんの本当の強さはその心に秘めた思いの強さにあるんだよ……。リリアさんは、どんなときも諦めずに戦う。自分の信じる道を突き進む人なんだよ……。そんな人が、そう簡単に折れるわけがないじゃないか……。それに君も見ただろう?僕の妻であるリリアさんと、僕の親友であり、そしてこの世界でも共に戦い続けた大切な戦友を!!」
僕は叫ぶと『リリアムソード』に光を宿し、リリスの方に駆け出した。僕は全力を込めた一撃を放つために……リリアさんの力を全て注ぎ込むようにイメージしていく。
リリアムの剣から、光輝くエネルギー体が剣に集まり輝きが増していった。僕は剣を振り抜くと……その剣から巨大なエネルギーが解き放たれたのだった。
その光の刃は一直線に、リリスに向かって行くと……僕は、全力を出し尽くして倒れた。
しかし、光の刃はそのままリリスに向かっていき、その刃がリリスに当たる直前にリリスの姿が消えたのだ。
(どういうことだ?一体……どこに……)と考えていると、リリスの声が響いた。「まさか……本当にここまで追いつめられるとは思わなかったけど……私を倒せる存在はいないのよ。でも……このまま、私に殺されて終わりというのも面白くないわね……。貴方が、あの人の力を完全に使いこなせたなら、あるいは……可能性はあるのかもしれないわね……。」と話す声が響き渡り……僕は意識を失った……。
※ リリアムが倒れると同時に……光が収まっていく。
そこに立っているのは、リリスであった。リリアの顔は黒く禍々しい雰囲気を放ち、そしてドレスの色は黒へと変化を遂げていた。
するとリリスは笑みを浮かべ、「貴方はそこで見ているといい……。私の力を……。そして貴方達の未来を見届けるといい……。貴方達がどう立ち向かってくるのか楽しみにしているわ……。貴方はきっと……。私を倒す鍵になるかもしれないし……。貴方の愛する人も、そして他の仲間もこの世界にやってくるから……。それまでに私が何をしているか……。そして……私がどう立ち向かうか……。貴方はしっかりと見ておきなさい……。私が……貴方に絶望を与えて……殺してあげるから……。」と言い残して姿を消したのだった。
すると突然空間が大きく歪み始めた。僕はそれを見るとリリアムを抱き上げながら立ち上がり、その場所に向かって走り出していったのである。
僕は必死に走っていたが、なかなか辿り着くことが出来ない。それでも僕は走ることを止めなかったのだ。すると僕の目の前にリリムが現れてくる。そして彼女は「マスター……ここは……時間の流れが違う場所だから。だからいくら走ったとしても無駄よ……。それよりも今はあの子が……」と言うと、リリスが現れたのである。
リリスは、先程と同じように黒い禍々しいオーラに包まれており……その姿もまた違っているようであった。
そしてリリスは、リリアムの事を見つけるとこちらに歩いてきて、リリアの肉体を奪った時と同じ言葉を告げてきたのであった。
「私はリリア・ランスロットよ。この世界で私と会った人間は全員殺したけど……あなただけは生かしておくわ……。」と言うリリスは不気味な笑みを見せていた。僕はリリスを警戒しながらも……まずはリリアムの治療をする為に魔法を唱える。『<ヒーリングライト!><ヒーリングアースヒール!!>』と唱ると……僕の周りに緑色の淡い光が集まりリリアの身体を包み込んでいった。すると徐々に傷が塞がり始めると……。次第に呼吸が安定し始める……。
その様子を確認したリリスは……、「どうしてそこまでするの?その子が生き返ったところで……あの子がいない世界なんて……意味なんてないのだから……。私はあの子さえいれば何もいらない。あの子とずっと二人きりで暮らせればそれで良いのよ。それがこの世界に生きる者全てに対する私の答えなの。でもね……。私の事を邪魔しようとする人達がいて……その人達を殺すのを……貴方達は邪魔をした。だから……あの子に嫌われて当然だよね……。あの子は優しい子だから許してくれたかもしれないけれど……でもね……。私は許せないんだよ。だって……あの子の事を傷つけようとするんだから……。」と静かに語るリリスは、「だから……貴方も消えてしまいなさい……。貴方はただのお人形なの……。」と言い魔法を発動させようとしていた。
僕は咄嵯に魔法を唱えた『<ライトニングフラッシュ!!!>』を発動すると雷の嵐が辺り一帯に降り注いだのである。
リリスはその魔法の攻撃で、身体が吹き飛ばされると僕はそのままリリアムを連れて逃げ出そうとする。すると……リリスの頭上から大量の魔力が集まっていき……。『<闇魔法> <ダークボール>』を発動すると黒い球が形成されていき……。僕はリリアの力で強化されている為、避けることも出来ず……。リリスの攻撃をそのまま受けてしまった。するとリリスは「やっぱりね……。貴方達には私には勝てないという事がこれではっきりしたはず……。さぁ……これからどうやってあの子を取り戻すか考えるのよ。ふふ……。あぁ……それからね……。この世界で私に逆らおうとしている者達が他にもいるみたいよ。それも、沢山ね……。貴方もその中の一人なのよ……。貴方達はここで死になさい。私は、まだこの世界を破壊する準備が残っているのだから……。」と笑うとその場を去って行ったのである。
僕とリリアさんを攫って行ったリリスが、どこかに移動しているのを僕は見つめる事しかできなかった。しかしリリスは僕の視線に気がつくと「あら……貴方まだ生きていたんだ。流石は勇者様だわね……。だけど、残念ながら貴方はここで死んでもらうしかないわね……。私にとっての障害になりかねないから……。私には時間が限られているの……。もうあまり余裕もない……。でもね……私には力を手に入れる方法を知っている。それは……。闇の力を受け入れるという事はそういう事。闇を受け入れ、闇に飲み込まれる事で……闇そのものになれる。そうすれば……誰にも負けない……。私に抗う者も……そして魔王にさえも……。貴方も私の仲間になれば良かったのに……。」と不敵な笑みを浮かべたのだった。
(くそ……。こいつの目的は一体なんだ……。何故、僕を殺そうとしてくる……。それに、闇の力を取り込めば強くなれるというのはどういう意味だ?)と僕が考えていると……僕達の乗る船の周辺が揺れ動き始めた。その異変に気づいた船員達が慌てていたが、僕が指示を出すと船を守るように陣形を組み、戦闘態勢に入っていたのだった。
(一体何が起こっている……。)と思っていると、海から巨大な魚のような化け物が姿を見せた。それは、魔物の中でも上級に位置するクラーケンであり……船を壊すつもりなのか触手を伸ばし、船を掴もうとした瞬間……。
『ズガァアアアン』と激しい音とともに、船が爆発を起こし……船は真っ二つに切断された。
それを呆然と見ていた船員達は唖然となり、そしてその光景を見ていた人々は恐怖に支配されていたのである。
すると今度は空から複数の大きな翼を持つ魔獣……ハーピーの集団が僕達に目掛けて攻撃を仕掛けてきた。その数は100体以上で、僕達の乗っていた客船は大混乱に陥っていた。
そんな中……。僕は急いで『リリアムリング』を取り出すと……。
「<スキル付与!!>」と言ってリリアムにリリアの力を与える。僕は、僕自身には何もできないと思い……。少しでも皆を助ける為に、そして『大魔王の魂』の器になっていると思われるリリアムを助け出せるかもしれないと考え……行動を始めたのだった。そして……この危機を脱する事が出来たら、この『リリアムリング』を使いこなす練習を始めようと思ったのである。僕はリリスの事も気にかけていたが、やはり一番心配なのはリリアムであった。しかし、今はそれ所ではないと判断した僕は、『リリアムリング』を嵌め込んだ左手でリリアムの手を握りしめていた。
(頼む……。無事でいてくれ……)と祈りを捧げながら……僕は目の前の状況を見つめていると……。リリスが笑いながら……こちらに向かってくると、「私の邪魔をしないで欲しいの……。」と言うとリリアムに近づいてきたのである。
(一体、リリアムに何をするつもりだ!?)と焦っていると、リリスが僕の方に手を向けた。
すると僕の足元の地面が急に隆起して盛り上がり、そこから鋭い爪を持った手が僕の方に向けて伸びて来たのだ。その攻撃を寸前の所で回避したが……腕は僕を追い駆けて来る。そして僕は、リリアムと繋いだ手を強く握ったのである。そして……。僕は魔法を唱えた。
『<聖なる力> <ホーリーフォースヒール!!!>」と言うと僕は回復魔法を発動させる。
僕の手から眩い光が放たれると、その光が伸びた腕に触れていく……。すると、腕は光に触れると同時に消滅し始めていったのだ。
それを見たリリスは、「どうして……。私の攻撃を避ける事ができるのよ……。そんな人間が……。しかも私よりも強い光の力を操れるなんて……」と驚き戸惑っていた。僕はすぐにその場を離れ、距離を置くと『ホーリーライトヒール!!』と魔法を唱え、更に『<ヒーリングアースヒール!!>』『<ヒールアースキュア!!>』と立て続けに唱える。リリアムが受けた傷を治して行き、体力を回復させる必要があったからだ。しかし、その間は僕自身の防御は出来ない状態となるので……危険な賭けではあったのだが……。
(このまま……時間をかけ過ぎるわけにはいかない!!なんとか隙を見つけなければ……。まずはリリアムの意識があるかどうかを確認する事が最優先事項だな……。もしリリアムの自我がないのであれば……。僕の手で助けなければならない。リリムの言葉が真実ならば……。)と考えていたその時……。リリスが僕に接近してくる。
「なんで私の攻撃を避ける事が出来るのよ。それに貴方のその力……。まさか……あの女の生まれ変わりだとでも言うの?確かにその可能性は高いと思うけど……。あの女には闇に染まり切った時でさえ、私には及ばない力があった。だから私の方が遥かに上のはず……。」と言うリリスに対し……僕はリリアの事を考え……(違う!彼女は僕を愛してくれている……。彼女からは愛を感じるんだ……。そしてリリアも言っていたが……彼女の中にはもう一人の人格が存在するはず……。それが本当の彼女なんだ。そして、今はリリアに力を借りることで表に出てこれているが、リリアが死んだ時どうなるか……。恐らく……。彼女は再び深い眠りにつくのだろう……。そして彼女はまた僕を待っている……。きっとそうだ……。なら、ここで彼女を目覚めさせてあげるのが、今の僕の役割だ。その為にも……。今は時間を稼がなくては……。)と思っていたのである。
僕は少し離れた場所に移動して……「僕はリリア・ランスロットさんとは違うよ……。僕の名前は、ラガス・リヴァイス。ただの冒険者だ。君はどうしてこんな事をしているんだ?どうして関係のない人達を殺し続ける必要がある?」と質問すると、リリスは自分の事を語り始めたのだった。
僕はこの世界に起きる異常の原因は、魔王の復活が関係あると確信して行動している事を話した。そして、僕達も協力してこの世界の危機に立ち向かわないのかと尋ねる。しかし……「魔王なんて復活していないわ。だって私は魔王を復活させたんだから……。私はあの子の為にやったの。あの子がこの世界に復讐できるように。そして……あの子を救えるかもしれない唯一の存在に私が選ばれたの。」と笑みを見せるリリスに、僕は怒りを覚えながら「どういう意味だ!!リリアに何が起きようとしている!!あの子は君の妹なんだろ!!」と言ったのである。
僕はリリスの話を聞き……驚愕の事実を知った。
リリスには姉がいた事……。そして……。『大魔王リリム=ルクス』という妹がいたらしい……。そして、二人の両親は魔王軍との交戦中に命を落とした事や……両親が亡くなった事で二人が引き離された経緯を知る事になった。だが……『大魔王リリム』は既に死んでしまったと言われていた為、何故『大魔王リリア』が生きていたのかが謎だったのだが……それは彼女が『転生』をした為、リリスと同じ能力を手に入れた事と……闇の力を受け入れていた事が大きく関わっていたのだった。そして……リリスとリリムはお互いを姉妹と知りながらも仲が悪く、殺し合いになる一歩手前の喧嘩をしてしまった。しかしリリスはその争いを止めて、二人で世界を滅ぼそうとしていた時に……闇の女神と名乗る者が現われ、二人の前に現れたらしい。二人は、この世界を支配するには……力が必要だと言われ、闇の女神に自分達に力を分け与えて欲しいと願った。
しかし闇の女神は二人を信用するどころか、裏切るように言い渡した。そして……二人は仕方なく闇女神に従う振りをしながら隙を窺う事にしたのである。その方法は……『魔道士』と『錬金術師』の力を奪い取り、魔道具を使って姿を偽りながら行動するというもの。
それから数年経ち……二人は力を徐々に付けていき……。ある時、闇女神に呼び出されると闇の女神はリリムに「お前に力を与えよう……。これで魔王軍の連中など敵ではない。私に力を与える事に感謝し、私の力となりなさい。」と告げられたのだ。そして……リリムは魔王軍を倒せるのならと喜びの表情を見せた。そしてリリスの方を見て……笑みを浮かべていたのである。それはまるで、自分の計画が上手くいくと思い喜んでいるようだったと……。リリスは後にリリムが自分を利用しようと考えた事を知り激怒するが、もう既に遅く……リリムに呪いがかけられていたのだった。リリムはその後、自分が『魔王』となった時の『闇の神器』と呼ばれる闇の宝玉を預けられると、それを持ち去り、この世界のどこかに封印したのだという。リリスはそれを追ってきたのだが……見失ってしまったらしい。
リリムの呪いは、一度発動すれば止められる術はないらしく……リリムが覚醒するまで待つしかなかった。リリスはその間に、少しでも多くの命を奪おうとしたのだと言う。リリムに早く会いたいと言う気持ちから……無関係の人間を殺す事も平気でできるようになり、今に至ると語った。
そして……。今リリスが手に持っていた魔杖を手にして僕に向けると、「さようなら……」と僕に告げて、僕に向けて攻撃を放ったのだった。
僕に向けて無数の魔力弾を放ち、その攻撃を僕は避けるだけで精一杯だった。
そして僕も反撃を試みる。しかしリリスも簡単に僕の攻撃は避けてしまうのだった。リリスの強さは本物であったのだ。このままでは、いずれ力尽きてしまいそうだった。
(このままだと負けるかも……。)と思ったその時…… 僕の目の前で光の矢が出現したのである。
(え!?これは……。一体!?)とその光を見ると、僕はある少女の姿を思い浮かべた。僕は光の矢が飛んでくる方向に目を向けていたのである。僕はこの技に見覚えがあり……僕は心の中で感謝していた。このタイミングで現れる人物は……。彼女しかいないと確信を持って行動に移したのである。僕はリリスに向かって魔法を唱えた。
<聖なる炎よ 聖なる雷よ 我の声を聞け>『<ライトニングボルト!!>』と言うと……僕は左手を天に掲げる。そして光の剣が現れ、光の魔法陣が現れると……。
僕は右手でリリスの方を向きながら……リリスのいる場所に目掛け、手を伸ばすと、手を伸ばしきる前に……リリスを目掛け光の線が向かっていったのである。
「そんな……ありえない……どうして私の場所がわかったの!?それに……どうして私が使う闇の魔法が使えるのよ!?貴方……一体……。本当に普通の冒険者じゃないのね……。私の予想では、もう少し強くなってから襲い掛かろうと思っていて……油断をしていたと言うのに……。それにしてもその魔法……。一体誰が貴方に教えているのよ……。そんな魔法……普通に考えたならあり得ない……。貴方が私の力を扱えるなんて……。それに私の魔法の使い方を知っているって……。どういうこと!?貴方は一体誰!?」
僕は、「僕にもまだよくわからないけど……僕は、貴方が知る『魔王』とは関係がないと思う。だけど僕は……貴方を止める義務があると思っているんだ。だから戦う!!」と言い返すのだった。そして続けて僕も質問をすることにする。僕が一番聞きたかった事を聞くために。するとリリアスは驚きつつも嬉しそうな表情を見せてきたのだ。僕の口から真実が出たことで安心感を覚えたみたいだ。僕は彼女の顔を見て思わず涙が出そうになるのを堪えた。僕とリリアとの繋がりを信じてくれていたことへの感謝もあるが……それ以上に、やはり自分の存在がリリアと同一人物である可能性が高くなったことが嬉しいかったのだ。
そして、「うん!!そうだよ!!私は魔王リリア=アルベイン。ロイド……うぅん。ラガスと一緒に戦った私なんだよ。でもどうしてここに私がいるとわかったの?もしかして……。あの子と私の記憶が混ざった影響?」と問いかけられてしまった。そして、僕自身もその可能性を考えていたが、答えはまだ出てなかったので……。僕自身の力で見つけることができた事を説明する。するとリリスも「やっぱりそうだよね……。あの子の中に私がいたから……だから貴方の記憶に残っていて、あの子の事が見えたのかな?」と言う。僕はそれに「かもしれない……。」と答えて話を進めることにした。リリスはリリアと敵対関係にあると聞かされていたからである。
(今はそんな事はどうでもいいんだ……。まずは彼女を説得するのが先決だ……。)僕は「君は魔王の復活を望んでいるんだよね……。それは君の妹の為だろ。妹の為に……君の人生を棒に振って欲しくないんだ……。だから、君は君がやりたい事をやってくれ……。君の人生なんだ……。僕に止める権利はない。それに……魔王が復活したとしても、僕はきっと倒す事ができると思うんだ……。君が望むなら僕が手を貸すよ。君は妹さんに会いたいんだろ?妹さんは……魔王の力を持っているが……闇に支配されてはいないんだ……。妹さんは……闇に染まり切った時、僕達と戦ったが……君は違う。君は魔王を復活を望むのではなく……助けたいと考えてくれていただろ?それならきっと……。僕は信じてるんだ……。」と真剣に告げたのだ。僕はどうしても彼女に伝えたい言葉があった。僕は「僕は君を絶対に忘れない!!例え……君が死んだ後だとしても、必ず探し出す。僕はそう約束する!!」と告げて、僕は右手の掌を相手に見せたのである。
僕はリリスに自分の考えを伝える。僕は魔王の復活を阻止するつもりでいた事や、その為には『大魔王リリム』を倒す必要があったことを話した。そして、『大魔王リリム』がこの世界で悪さをしようとしていると、僕は考えていた事を話すと、彼女は驚いていた。そしてリリスも『魔王復活』を望んではいないらしく、妹の『大魔王リリム』の身体に魂が入ってからおかしくなったので、どうにか元に戻す方法を考えたいという想いだったらしい……。そして……今のままだと、魔王軍の幹部達がこの世界に侵攻を開始してしまう可能性があるらしい。それを食い止めたいというのが本音らしい。
僕がリリアの話を聞いていたのが伝わったのか……リリスは涙を流しながら僕の腕を掴み、「ごめんなさい……。私が間違っていたわ……。あなたは、私が思った以上に……優しい人だったのね……。私と妹はずっと一緒だった。私達は……お互いに認め合ってはいなかったけれど、同じ人を好きになったのよ。私よりも先にその人に会っているんだもん。羨ましかったの……。
それにね……。私の両親が亡くなった後に、リリムが……両親を殺した魔物の討伐任務を単独で行った時にね……。あの子は私より少し強いくらいの実力しかなかったの……。
その時に……偶然、闇の神器を手に入れたらしくて……闇の女神に力を授かりたいと頼んでいたみたいなの。それで……あの子が手に入れたのが、魔杖型の闇の神器『ネメシス=ルシフ』。この神器の能力には特殊な力があって、使用者と魔力を共有する事が出来る能力が備わっていた。それを使って闇の魔法を行使できる能力を持っていた。
その力は強力過ぎて、その力を手にした途端に、性格も変化してしまっていたの……。あの子はその力を使いたがらずに……普段は封印して持ち歩いているみたい。だけど、何かのきっかけで暴走してしまい……魔王軍を復活させようとしていた。私の時は……私が死ぬ間際に……闇の宝玉を渡してくれたんだけど……。その時に『私の願いが叶ったら返してくれればいい』と言われた。
私はその言葉に『ふざけるな!!』と言った。そしたら……私を嘲笑いながら……闇の女神の加護で、私を洗脳したのよ……。
私は自分の人生を奪われる前に、命を絶つつもりだったけど……結局できなかった。
でも、もう迷わない!!もう時間がないの……。今、あの子を倒さなければ……大変な事になる。だから……お願い……。私に……協力してくれないかしら……。」と言って、リリスは頭を下げて来た。僕はそんな彼女の姿を見て……。リリムが魔王となって世界征服などという馬鹿げた妄想を抱いていた理由を知った気がした。
リリスは魔王として覚醒した瞬間に闇の神器を手に入れ、自分の意思で闇の魔法を使うようになったのだろう。しかし、元々持っていたリリスの闇に対する適正が高く、リリムもリリスが扱う闇の魔法の方が扱いやすかった為に、自分の魔法のように使っていたのだろうと予想していた。
そして、僕が魔王を倒して欲しいと頼むと……。魔王リリムが魔王の力を取り戻した時に対抗する為の力を、僕の持っている闇の神の力が秘められていると思われる『闇の宝玉』が宿る石『魔結晶』で、魔王の魂を消滅させる為の準備をしていると言う事を聞いた。
(そうか……。魔王の『闇の力』を打ち消す事ができるのは……この『魔水晶』だけだと僕は確信している……。でも……。こればかりは賭けに近い……。)僕はそんな事を考えていると……『リリスはリリムを助ける気なのか?』と聞くと、彼女はリリアの意識が完全に残っているのならば……と言う条件付きではあったらしいが、魔王といえども元は人間で、元々は仲間だったことを忘れてはいけないと考えていたようで……助けてあげたいと強く思ってしまったみたいである。僕はそれに感動して思わず泣き出してしまったのだ。僕はリリスの言葉に心を打たれてしまい……。『僕も……出来る限りのことをするよ。君に協力するからね……。』と告げて……。お互いの手を合わせると……光に包まれていくのであった。…………。
僕が光の魔法で目を開くと、そこには見慣れない天井が見えた。ここは何処だろうか……。そういえば……。リリアと融合した状態で……。確か……。
僕はそこでリリアの人格の『リリアス』に憑依していたことを思い出す。どうやら……。僕はまだ完全に融合が終わっていない状態の時に目を覚ましたようだ。
リリムが魔王にならなくてもいい方法がないかと思い……『魔結晶』を手に入れるべく『魔竜の森』に行くことにした。そして、森の奥まで進んでいくと……僕に攻撃を仕掛けてくる者が居たので、反射的に殴り飛ばしてしまった。すると……その人物は女性であり、僕の攻撃によって吹き飛んでしまい……木に叩きつけられて動かなくなった。
僕は焦って、急いで駆け寄ろうとしたが……。僕はあることに気付き……警戒心を強めたのである。なぜなら……僕の目には彼女が悪魔のような尻尾が生えているように見えたからだ。そしてよく見ると……。彼女は悪魔の血を引いているようだったのだ。
彼女は僕が倒れていた少女を抱き起こそうと近付いたときに、急に苦しみだしたので慌てて抱き起してみると……。彼女は「私に触らないで!!」と拒絶されてしまった。僕は「えっ?」と驚いて、彼女に一体何があったのだと聞くと……「この姿で人前に出るのはまずい……。それに、このままだと……私は貴方を殺していまうかもしれない。」と呟くのだった。僕は訳がわからずにいたが、とにかく話を聞こうと決めて……彼女の名前を聞いてみたのだ。
僕は彼女の名を聞くと……。まさか……。と思った。だが、その名前に僕は納得する部分もあったのである。
彼女は自分の名前を「ミザリー」と答えた。僕がその人物の名に覚えがあるような気がすると……何故か思い出せそうな感覚に襲われている。そして、ミリアの顔を思い浮かべたら……僕はその人物が、魔王の身体に宿っている『リリム=ルアシェイア』である事にようやく辿り着いたのである。
(やっぱり……そうなんだ……。あの時……俺は……魔王の意識と融合した時に……。魔王の記憶の一部分を見てしまったんだ……。魔王は『大魔王リリム=アルベイン』と言う名前だったはずだ……。)
そんな事を考えていると、リリアは自分がどうしてこのような姿になってしまったのかを、僕に説明してくれた。どうやら……リリムが魔王に覚醒した際に、この『大森林』の守護者であったリリアは、魔王の強大な力と……闇の魔法を受けて身体が変化してしまったのだという。
そして……。僕に魔王の心臓部となる『魔結晶』を渡す代わりに、妹を助けて欲しいという取引きを行ったのだという……。リリスも僕に協力してくれることになったらしいが、リリアに妹を殺せないのか?と問いかけた所……彼女は涙しながら首を横に振っていたらしい。妹が苦しむ姿が想像できないと、妹が悲しんでいる姿をあまり思い描けないと言ったそうだ。僕はその言葉にリリアの気持ちが分かる様な気がして……僕も似たようなことがあったのを思い出したのだ。
(そうか……。そういう風に考える事もあるんだな……。でも、僕は知っている……。妹さんが、どんな子かを……。きっとリリムを救いたいはずなんだ。だからこそ……。リリムを倒さずに助ける方法を探さないと……。『魔結晶』が手に入ったらすぐに『リリム』に会いに行こうと思う。今はリリスの方に力を貸すのが良いだろう。そして、『魔晶剣』が完成した時にリリムの所に行ってみようと決めた。まずは魔王を倒す為の力を集める為に『魔結晶』を手に入れるのが先決だ。それが終われば……妹の救出に動く。そして……。『大賢者の遺産』を全て集めてから魔王と戦う!!これは……魔王との戦いが終わり次第……。僕も元の世界に帰ろうと決意を固めた。僕の目的の為に……。リリアにもその事を告げないといけないな……。)
そう考えて、リリアと別れることにしたのだが……リリアは妹を助けたら必ず自分のところに帰って来るようにと言ってきたのである。
リリムは魔王になった影響で……魔王の魂の一部が表に出てきている状態であるという事を教えてもらった僕は……魔王が『闇神』に乗っ取られてしまうと大変な事態になる可能性がある事を聞き、それを阻止するためには『闇の神』に対抗する事が出来る『闇の宝玉』が必要だと考え……リリスの持っている可能性が高い『魔結晶』を手に入れなければならないと考えた。その為に……僕はこの大陸にある『闇の宝玉』を集めつつ、リリスと合流しようと考えていたのである。しかし……僕がリリスを探していると……突然背後から攻撃を受ける。
(しまった……。リリアとの会話に集中し過ぎて気配を察知できていなかったみたいだ……。しかも、この攻撃は魔法による攻撃ではなくて物理の攻撃のようだ……。一体誰がこんなことを……。いや……誰であろうとも許せるものじゃない。)僕はそう思い、攻撃を仕掛けてきた相手を殴ろうと思い……後ろを振り向くと……。その攻撃をしてきた相手を見て驚愕してしまったのであった。
何故なら……その相手が僕の予想とは全く異なる姿形になっていたからである。その者は、見た目こそ人間に近いが……。明らかに人と違う部位が存在していた。それは……頭部が狼で体が人の形態をしており……その腕が鋭い爪を持つ大きな腕に変化していたのであった。その者が放つプレッシャーは今まで戦ったどの魔物よりも恐ろしいものであり……その眼光で睨まれると、まるで肉食獣に狙われた小動物の様に恐怖を感じてしまい……身動きが出来なくなってしまうほどだった。そして……その者の口から放たれた言葉は……僕の理解の範疇を超えるものだったのである。
「おい!!お前!!さっき俺の妹の体を使って好き勝手をしていただろ!!あれほど言ったよなぁ……。あいつは魔王になんかさせたくないって……。それを……無理矢理、体に魂を閉じ込めるなんて卑怯じゃねぇか!!おかげで……俺達の仲間は……あの女に殺されたようなものじゃないか……。まあ……魔王が倒された今になっては、もう遅いけどよぉ……。」
(何を言っているんだよ……。こいつは……。あの子は魔王なんかじゃなかったはずだぞ……。そもそも……この子がリリムだというのか……。)
「ふざけるんじゃないよ……。そんなはずないだろ……。あの子は自分の意思を持って行動していた……。それに……。あの子の魂は……。僕が救ったんだよ……。それに、僕があの子と合体していたからわかる……。あの子の中にいた闇の神の魂は既にあの子を乗っ取りかけていたんだ……。僕達はそんな彼女をあの場所に連れて行ってあげただけ……。だから……。僕は何も悪くない。」
「ふぅ~ん……。そうなのね……。あの子に闇の力を使った時点であなたを敵と認識するわ……。私はリリムの身体を借りて生きているの……。私だって……リリムに死んで欲しくはないけれど……でも……。あの子は……闇の力に支配されていたから……仕方がなかったの……。だから……私の命でリリムを救えるのなら本望だったのに……。それに……私がこの世界にやって来た理由でもある……。闇の力が強すぎて……。リリスは私と一緒に居る事を選んだのよ……。でも……。貴方のおかげで……私はリリスを助けることが出来た。でもね……。今度は私が……リリスを救う番なのよ。だから……リリムから離れて!!」
僕はリリムの言葉を聞いて驚き……同時に困惑したのだ。
(リリスを助けるため?どういう事だ?リリスを助けるのになんで僕が邪魔者扱いされないといけない?それに、僕が融合しなければ……あの時……。彼女は魔王の力を制御できなかったはずだ……。つまり……リリムが魔王になってしまった原因は、彼女自身の意思によるものだと僕は思うんだけど……。それに、彼女は自分の意志を持っていた。僕達の話を理解しているみたいだし……。僕にはわからないことだらけだよ……。)僕は混乱しつつも戦闘体制に入り、相手の出方をうかがう事にしたのである。
僕にリリムの身体を貸してくれている女の子と、魔王であるリリアの姿に変化している女性の二人が対峙している。二人共、その容姿から普通の人とは違う事がわかってしまうほどの魔力を持っていることが僕にでも感じ取れたのだ。
(いったいこの二人は何者で、なぜここに居たんだろうか……。それに……『大森林』の守護者であるリリアを魔王だと勘違いをしているようだけど……。)
僕はまだ完全に『魔結晶』が手に入っていないので『魔結晶剣』を作り出す事は出来ない状態だった。それに……。僕は目の前の女性がどうしてリリアの姿をして居るのかも不思議に思ったのである。リリアの意識と入れ替わってしまった事で、リリアが持っていたはずの記憶が失われてしまっているのかもしれないとも考えたが……。それならば……どうして、僕を殺さずに拘束しないのだろうと疑問に思っていたのである。そのおかげで僕はまだこうして生き延びてはいるのだが……。僕は彼女の行動の意味がわからず戸惑っていた。
だが、今は……目の前の女性をどう倒すかが最優先事項である。そして……僕に身体を借りている少女が僕に指示を出してくれた。僕は彼女に言われた通りに、リリムが使用していた魔法陣を使い……身体強化と身体能力の強化を自身にかけたのである。そして、そのまま少女の指示に従うと……。僕の目には彼女の動きが全く見えなくなり……。次の瞬間……彼女が吹き飛ばされて……壁を突き破っていったのである。そして……。彼女は意識を失ってしまったのだった。
その事に僕も驚いた。まさか……ここまで自分が強いと思わなかったからだ。僕は慌てて女性の元に駆け寄り安否を確認すると……幸いにも意識を失なっているだけだったので一安心する。その後、彼女を抱え上げて……先程の魔法を発動しようとしたのだが……どうやら魔法も封じられているらしく魔法を使うことができなかったのである。
僕に魔法を使わせないためにこの人は僕に魔法を使わせないようにしてきたらしい。確かに魔法さえ使うことが出来れば、こんなに苦戦することもなかっただろうと思うと……歯痒くて仕方がなかったのである。そして、どうしたものかと考えていたら突然頭上から殺気を感じ取り……咄嵯に避けると……。そこには黒い炎に包まれながら現れた男がいたのである。その男が口を開いた。
「ほう……よく避けられたな。少しはやるようだな。しかし……今の一撃を避けられたとしても次も避けれるとは限らないと思うんだが……。なあ……そこの人間!!リリス様を返してもらおうか……。その女はお前みたいな人間が触れる事も許されない尊きお方なんだぞ。お前のような存在が触れていいはずがないんだよ。この世界に来てまで……。お前の様な人間がいるとは……俺には我慢ならない!!お前をこのまま逃がす訳にはいかないんだよ!!ここで……死ぬがいい!!」
(こいつは……誰だ……。リリスの事を敬っているような発言をしているが……どこかおかしい気がするのは何故だ……。それに……こいつは何者なんだ?)
男はそういうと黒いオーラを纏い、両手に闇属性の魔剣を取り出し……僕の方へと襲い掛かってきた。僕は、なんとかその攻撃を避けて距離を取りつつ、剣に魔結晶を装着する。魔剣カリバーンに埋め込まれた魔結晶が光を放つと同時に剣に白い雷の光が走り……剣全体が白く輝きだす。
『魔剣 エクスカリバー』
魔剣 エクスカリパーが聖剣に変化したものである。僕の手の中で光り輝いている剣からは凄まじい力を感じた。これなら、先程の少女が使用した魔法の力に匹敵するのではないかと思っていたのだ。
「お前の力は……この世界の物ではないだろう!!お前がこの世界で生きていけるとは思えないが……。お前は絶対にこの世界から消えてもらわなければならない……。お前はこの世界には必要ない!!だから……俺の手によってこの世から消し去ってやろう。」
(何を言ってるんだこいつは……。僕はこの世界に来なければ良かったなんて思ったことはないぞ……。僕はこの世界が好きになったんだ。なのに……この世界の住人じゃないと否定されてしまって……。僕だって怒ることはあるんだぞ。)
そう思いつつも僕は、剣を構える。相手は二刀流だ……。こちらの方が分が悪いが……。相手が持っている剣はおそらく伝説級レベルの武具であろうから……僕の持っている『聖剣 カリバーン』でも打ち合うことは出来るはずだと思い……僕は、相手の隙を見つける為に攻撃を誘い、カウンターを仕掛ける事にしたのであった。
「貴様に……我の攻撃をかわせるものなら、試すがいい。我が最強の技を喰らうがよいわ!!ダークバースト・エクセキューション!!」
(この攻撃なら!!この剣で受け流すことが出来るはずだ!!そして、カウンターで斬りつける!!それしか方法は無い!!これで……終わらせる!!)
男の振り下ろされた二本の闇の剣から黒い闇の力が解き放たれたのだ。そして、僕の目の前でその黒い闇の力はぶつかり合い相殺した。そのことに僕は驚きはしなかった。僕自身が放った『魔闘気』のスキルにより強化された剣によって、この剣自体の力に上乗せした攻撃力で、目の前の男が持つ剣を弾いたのだ。そのことで僕の思惑通りに事が進み、僕は相手に隙を作ることに成功したのだ。
そして、そのまま僕は無防備な相手を袈裟懸けに斬ったのである。すると……男の身体は斜めにずれて……上半身だけが床に崩れ落ち……血が噴き出し下半身だけが残っている状態になったのだ。僕は急いでその場から離れるが……。
(あれ……?どうして?こいつは不死身の能力があるのか!?くそっ……こうなったら……。もう一発、こいつで止めだ!!)
僕はもう一度だけ剣を振り上げようとしたが、すでに……彼の身体は光の粒子となり消滅していたのである。その様子を確認して安堵していた。どう見ても生きている状態ではなかったからだ。彼はいったい……何者だったのかが気になったが……。僕にとってはそんな事は些細な問題だったのである。
「おい!!お前!!リリス様を何処にやった!?お前のせいで……リリス様の記憶が失われたではないか……。この落とし前をどうやってつけてくれるんだ……。」
その時である。突然声がしたので……驚いて後ろを振り返るとそこには、あの時リリアの身体を操っていた女性が立っていたのだ。彼女は、僕が抱えていた女性の方をじっと見つめている。
(どういう事なんだ?彼女は……確か『暗黒領域 ダークゾーン帝国』の皇帝であるリリムとか言っていたよね……。って……ちょっと待てよ。彼女は今リリスのことを『大魔王 大魔道師 魔王 大勇者 聖勇者』と言っていた……。どういう事なんだ?どうして、リリムの口からその名前が出てくるんだ?そもそも、彼女は本当にリリムの人格を乗っとっていたのか……。もしかして、本当は……。あの子は別人なのか?)僕は、疑問が次々と浮かんでくるのだが、それを考えている時間はなかった。なぜなら、彼女の目が怒りで赤く染まり始めている事に気づいたからであった。その瞳を見た僕は……。背筋が凍るような悪寒を感じてしまうのだった。僕はすぐに距離を取ろうと後ろに飛ぶと、先程彼女が僕が居た場所に黒い魔力を帯びた衝撃波を放ったのである。そして、僕に追撃をかけようとしてくる彼女に対して、僕は剣で迎撃をしようとした時だった……突如彼女の身体に赤い鎖が巻き付いて拘束したのである。僕はいったい誰が拘束してくれたのかわからず戸惑っていると……。突然、目の前の彼女に攻撃を仕掛けようとしたリリムの姿に変身していた女性の背後で、魔法陣が出現をしてそこからリリアムが出現したのだ。リリアムはそのまま女性の頭に手を添えると、女性が意識を失いその場に倒れ込んだのである。
リリアを救い出そうとしていた僕の前に、いきなり現れ、僕の事を拘束したリリアムが女性を拘束した後、僕に話しかけてきた。
「さっきぶりですね……。タクト殿……。大丈夫ですか?」
「あぁ……。ありがとう。助かった。だけど、なんで君はここにいるんだ?しかもリリムの身体を使ってまで……」
僕は、不思議に思っていたことを彼に直接質問をした。そして……。彼がここに現れた理由を教えてくれたのである。
「実は……。私は、リリアさんの事が心配だったので……。こっそりとあなた方の後をつけさせてもらっていたのです。しかし、私にもリリアさんを助けることが出来なかった。だけど……この方はあなたなら助けられると、教えてくれたのですよ。」と僕に向かって説明を始めた。しかし……リリムは一体何を考えて、こんな事をしたのだろうかと考えていたら……。
リリアムが僕達に話し出した。
「まず最初に伝えておくことがあります。私が、リリスさんに取り憑いていた人物を追い出すことができた理由ですが……それは私の能力です。『魂を操る』能力と言っていましたが……どうやら、『肉体の支配権を別の人間の意識に移せる』と言うものだったみたいで……。つまり、その能力を使ったのでしょうね。まぁ……それでも完全に意識を移すことは不可能らしいんですけどね。だから一時的にしか取り除くことが出来ないらしくて……。
そこで……この方が提案してきたのが……自分の精神体の一部を分離させてもらいたいと頼まれました。その方法は、相手の身体の一部に触れることによって可能らしくて、私はこの方に『魔結晶』を渡していました。それで……この方は私の『魂の一部』に触れ……自身の意識の一部を切り離して、取り込まれた人を救う事に成功したのだと、私は理解しています。その方法で……この方の意識を取り戻すことに成功し、私は、その人の中に入る事で、リリスさんの中に入っていた人物の意識も取り除き……。こうして……取り込むことができている訳なんですよ。どうでしょうか……理解してもらえましたか?そして……その方法を使えば……リリアさんを取り返せるはずです。お願いできませんか?どうかリリスさんを助けて下さい。この通りなのです。」と僕に頭を下げて必死になって頼み込んできた。
僕はそんな姿を見て……
(きっと……リリスの事を心配しているリリアムが、こんな行動を取っているんだよな……。この人はいい人だし……。僕も、このリリアの中にいる奴を取り除いてあげたい。リリスを助けたいんだ。僕に任せてくれ。)
僕は、そう思い……。リリアムの目をしっかりと見て答えたのである。
「任せてください!!僕に出来ることならなんでもしますから!!早くリリスのところへ連れていってくれ!!」僕はそう彼に言ったのだ。その言葉を聞いて安心したような顔をしている彼を見ていたが……急に真剣な顔になり話を切り出してきた。
「分かりました。では……早速リリス様の救出に行きましょう!!準備はいいですね。この中にリリアさんはいます!!この扉の奥に!!行きますよ!!」と僕達の返事を待たず、彼は扉に手を当てたのだ。そして、扉が光輝きながらゆっくりと開くのである。その奥から異様な力を感じたのだ。僕は、慌てて身構えた。リリアムの方は平然としていてそのまま、中に入って行ったのだ。僕達もそのあとに続いて行くとそこには……。大量の鎖で巻かれたリリスの身体に、あの時の女が憑依した姿のリリアが閉じ込められていたのである。その光景をみた僕は、咄嵯に飛び出そうとすると、リリアムがその前に立ち塞がったのだ。そして、僕の手を掴み止めようとした。だが、僕はそんな彼の手を無理やりどけようと、力一杯腕を振るったのだ。
すると……。なぜか……彼の握る手が僕の力により千切れ飛んでしまうが……。僕は構わず、そのまま彼の身体を押し除け、前に出たのである。
僕は剣を構えると、剣身に『聖闘気』を纏わせた。さらに、その聖剣の力を開放する為、剣の刃に魔力を流し込み強化したのである。
「貴様!!リリス様になんてことを!!許せん!!絶対に許せない!!貴様だけは!!我が闇の力で消し飛ばしてくれる!!」と叫ぶと……。彼女の両手が黒い闇に包まれる……。
(こいつ……本気で僕を殺りに来るつもりだ……。僕だって本気だ!!お前をぶっ潰してやる!!)
僕は、剣を構えると相手は、その黒い魔力を解き放ったのだ。そして、僕はそれを剣で受け止めようとしたその時だった……。突然僕の目の前で黒い闇が爆発したのだ。その爆風により吹き飛ばされそうになった僕はなんとか踏み止まろうとするのだが……その力に押し戻されてしまう。そして……。僕は部屋の壁に激突したのだ。壁が崩れる音が響き渡ったが、それどころではなかったのだ。
(痛ってぇ〜……いっつぅ〜くっそ……。俺をここまで追い込んだやつは久々だよ。だけどな……。もうお前は終わりなんだよ。俺の怒りを知れ。『セイリュウ ブレイク・スラッシュ!!』)僕は心の中で叫びながら剣を振り下ろすと……。剣が纏う聖なる闘気が、斬撃となって彼女の身体に襲ったのである。彼女の着ていた衣服ごと切り裂いた斬撃は、彼女の上半身を斜めに切断して床に崩れ落ち、それと同時に上半身だけになってしまった彼女の身体は黒い粒子へと変化をして消滅したのであった。そして……。
僕がリリスの元へ行こうとした時だった……。
「危ない!!避けなさい!! 」という女性の大声がしたので振り返ると、リリアムの身体に何か黒いものが絡みつき、締め上げ始めたのである。僕は驚きを隠せずその場で立ち尽くしてしまった。すると…… 《我の大切な身体に気安く触るなど……万死に値する……。覚悟しろ。》と言いながら現れたのはあの大魔王『サタン』であった。
「リリアさんに……何をしたんだ!?彼女を元に戻せ!!お前の狙いは何なんだ!?」
僕は怒りに震えていた。
リリアムを人質に取り、僕を誘い出しておいて、僕の攻撃を利用して『大魔王 魔王聖魔導王 聖魔道帝 神聖皇帝』であるリリスに取り付いていた女を抹殺させる……。こんなことをされて黙って見ていることなどできるわけがない。
僕は怒りに身をまかせ、『聖闘気』を発動させた。
《何をしている……。邪魔立てすれば、貴様もこいつのようになるぞ?さぁ……早く……この場を去れ……。そして……リリスには近づかないことを勧める……。リリスが傷つくことになるのは、我も望んではいない……。
だが……リリアムにこれ以上危害を加えるならば……容赦しない……。
覚えておくといい……。『魔剣カリバーン』と、我が契約者である……このリリアの身体に封印されている……。四体の悪魔の力と、我が力を解放せねばなるまい……。貴様ら人間如きに負けることはないが……さすがに……今の我の力を持ってしても……。勝てるかどうか……わからないからな……。
まぁ……。せいぜい頑張るがいい……。さらばだ。
リリアス……今宵の夜まで待つがよい……。それまで精々生き延びておくんだな。】
「どういうことだ!!説明しろ!!リリアちゃんを傷つけるような真似はさせない!!」と言うと……突然部屋の壁が崩れ落ちて、その中から先程の黒いローブを着た女性が現れて攻撃を仕掛けて来た。そして彼女は僕の背後から魔法陣を出し攻撃しようとしていたため。その魔法陣を破壊しようとした瞬間のことだった。
リリアスは僕の目の前で突然姿を消したのだ。
その光景を見た僕はすぐにその場を離れようとするが遅かったのだ。背後から衝撃を受けると共に、意識を失ってしまったのである。
俺は意識を取り戻すと、誰かの手のひらの上にいた。その掌の主を見ると、先程見た少女が心配そうな表情をしながら俺を見ていたのだ。
「大丈夫?お兄さん?私が誰だかわかる?」と言われ、その言葉で、リリアムの言っていた事を思い出した。すると……この子はリリアの妹なのかと思い、「ああ……。」と答えたのである。
「良かった……気がついたんだね!!じゃあ……少しの間じっとしていてくれるかな?私の能力であなたの魂の修復をするから……」
俺は言われた通りにしたのであった。そして、俺はリリアの事について聞くと……妹と名乗る女性は話してくれた。
(どうやら……リリアムの話していた事は、事実のようだ。それにしても……どうしてリリアに……あの化け物がついているんだ?)と考え事をしていたら……。「あなたがリリアさんに……取り憑いていた女を倒したのね。ありがとう……。あなたのおかげで……私は助かった……。本当に感謝しているわ。」と言われたのだ。その言葉を聞いた時にふと思ったことがあった。
「君は……この子の中にいる奴がどんな存在かを……知っていて……。取り憑かれたリリアを助けようとしているのか……それとも……。知らないまま戦っているのか……教えてくれないか?」と言うと、真剣に考えてくれたが……どう答えればいいかわからず……困った顔をしていたため、その気持ちだけでも嬉しいよ。と答えることにしたのだ。
そして、このリリアの妹のリリィと言うらしい女の子から、現状を説明してもらい……。
リリアムの言っていたことが本当なのだと確信をした。そして……妹の身体に憑依した女の排除方法を教えてもらったのである。それは、まず、彼女の身体に触れて、『魂を操る』能力を解除する必要があり、さらに、相手の精神体を分断しなければならないらしく、その方法でリリアを救う事が可能なのだと言っていた。その方法でしか救えないのなら……迷う必要はないだろうと思っていたが……。リリアは妹を見つめたまま……ずっと悩んでいるようだった。俺の言葉が信用できないからだろうか?
「リリア……。俺を信じろ!!俺を信じられないようなら……俺は消えるしかないんだ。」
すると、俺の身体にリリアムが入り込もうとしているのを感じて……咄嵯に回避しようとしたが……リリアムがリリアの中に入る方が早かったため……身体を入れ替えられたのだった。そして、この肉体の主導権を奪い返そうとするのだが……リリアがそれをさせなかった。
この状態が数秒続き、諦めた俺は……この身体を任せる事にしたのだ。その瞬間だった……。身体の自由がきかない状態にされてしまったのだ。リリアと、リリアムは互いに譲ろうとせずに攻防を繰り返していた。そして……。
ついに……。俺とリリアムの精神体同士の戦いがはじまったのである。
俺は、俺の肉体に入ったリリアムと戦う事にしたのだ。そして、リリアムが俺の顔に手を当てると……俺の意思に関係なく俺と融合し始めたのだ。その力により、強制的に一体化させられると、リリアムは俺と融合する事に成功していた。
《くっくっく……。これで……私達は……一つになったのです……。これからが楽しみですね……。では……始めましょうか……。
『リリアン・シン・アイシアス・アルストローム』と『リリアム・シン=アイシス』による共同作業をはじめるとしますか…… リリア……もうすぐお前は私の中に入り込み、私の人格を消し去り……この男を手に入れる事ができる……。さあ……。そろそろ……お前との別れの時間です。お前はこの世界から完全に消えなさい。》
「そうは……いくかぁ〜!!お姉ちゃんに……手出しなんて……させない!!絶対に許さないんだから!!」
《ははははっ!!お前のその態度も……その瞳も……何もかも全てが愛しい。
そんなお前を消さなければならない事が心苦しいのだがな……。まあいいでしょう……。お前のような小娘に倒せる相手ではないということを教えてあげますよ。くっくっく……。》 俺と融合したリリアムは俺が今まで出したことがないような力で攻撃を開始したのである。
「『聖魔闘気纏衣』」と叫んだ後……。俺は全身に聖なる闘気と、闇の闘気を纏ったのだ。そして、俺は拳をリリアムにぶつけると、衝撃波がリリアムの腹部に命中し、リリアムの口から黒い血反吐が出ていた。そして、今度は蹴りをリリアムに入れようとしたが……。その動きを察知して、後ろに飛んだのである。しかし、今度は俺の方が速かったようで……。今度は逆にリリアに強烈な一撃を腹に入れたのだ。
《うぐっ!?……まさか……これほどの力とは……油断していましたね……。だが……もういいでしょう……。このまま……死んでしまいなさい!!》と俺の首を絞めようと腕を伸ばすと……。
(このタイミングを待っていた!!)と言いながら俺は、身体から聖なる闘気が吹き出して……。そのまま身体が輝きながらリリアムを包み込んだ。すると…… 《なっ!?なんですか……これは……身体が熱い!!身体が……焼けるように熱いっ……》と言いながら、リリアムは自分の両手で、自分の身体を押さえ込んだのである。
《こ……これが……お前の力なのか!?
『魔素吸収』……だと!?こんなことができるなど……。ありえない!!『魔素吸収』が発動しているならば……。『リリアムの魂』を吸収してしまうではないか!? こんな事をされたら……。『大魔王 魔王聖魔導王 神聖皇帝 神聖皇帝 暗黒皇帝』が復活しなくなってしまうではないか!?どうするつもりだ?リリアムを消滅させる気なのか?貴様は何を考えている!?】
「リリスから聞いていなかったのか?俺は……。リリアを助けるためだけにここにきたんだよ。リリスを封印すればリリアを開放してもらえるって聞いていたんでね……。」
《ばかなことを言うんじゃない……。そんなことは……嘘に決まっているじゃないか。この私を……。誰だと思っているんだ?私がこの世界に君臨する悪魔だぞ?そんなことできるはずないだろう? 貴様がしようとしていることは……。私への裏切りだぞ?それでも良いというのか? リリアス……お前も……裏切るつもりなのか?私を見捨てるのか? 私よりこの男がいいっていうわけじゃないだろう?》と言うと、リリアは、
「うるさい!!リリアムなんか……嫌いだよ!!あなたは……私の姉ちゃんじゃない!! 私は……あなたの人形じゃない!!あなたの操り人形になるくらいなら……。私は……あなたの事を……。ううん……。なんでもありません。
あなたはもう終わりよ……。あなたはレイさんを……騙し続けた。私は……あなたの言う通りには動かない。」と答えると、俺はその言葉を聞いて安心したのだ。
「よかった……。」
「えっ……?」とリリアは困惑していたが……。俺は、リリアムに言ったのだ。
「リリアを解放してくれ……。頼むから……。リリアにこれ以上酷い事をするのはやめてくれ……。俺は、この子の悲痛の声を聞いたんだ……。」
その言葉を聞くとリリアは涙を流したのだ。リリアムはリリアに近づくと…… 《リリア……すまなかった……。本当に申し訳ないことをした……。リリアを傷つけたくはない。本当に……。だから……。どうか……。許してくれないか……。本当にすまない。
この通りだ……。許してほしい……。
そして……。リリア……ごめんよ……。》 リリアムの謝罪を受けたリリアはリリアムに近づいて……そして、抱きしめたのであった。
その光景を眺めているうちに俺は身体の自由を取り戻したのだ。そして……俺は、この空間から出ていこうとした時に……リリアに話しかけた。
「なぁ……。」と声をかけるとリリアは俺の方を振り向いた。そして、少しの間見つめ合うと、俺は……。
「じゃあ……。またどこかで……。会おう……。必ず……」と言って立ち去ろうとしたら、
「はい!!ありがとうございます。私の方こそ……助けてもらったうえに……お世話になりました。また……どこかでお会いしたいと思います。
それに……。あなたの事……ずっと好きでした。」と言うと、俺はその場を後にして、リリアムが閉じ込められていた空間から脱出することができた。その出口を出る前に、俺は振り返り手を振ったのだった。そして、再びあの子達に会う日を待ちわびて歩き出したのである。
(さて……まず、この子たちをどうにかしないときついかもしれないな……。とりあえず……話をするか……でもどうやって話すかな……。あっ……そうだ……)と思い俺はリリスにテレパシーを送りリリアの妹たちの様子を見てくれと言ったのだ。その指示に従うと……。すぐに俺の元に戻ってきたのである。どうやらリリアが無事なことを確認したらしくホッとしていたようだ。
(まずはこの子たちとの会話をしてみようか……。話ができる状態かどうかの確認が第一だしね……。とりあえず……。リリスには妹たちに説明をしてもらうとして……後はリリアの妹たちが意識を取り戻すまで待つことにしようか……。まだ時間がかなりかかると思うし……。)
と考え事をしながら歩いていると……。俺に襲いかかってきた男と出くわしてしまったのだ。
「て……てめぇーは……あの時の男!!まさか……てめぇが俺たちを倒したのか!!おい!!俺の部下をよくもやってくれたみたいだなぁ……。」と男は俺に襲い掛かろうとしていたのだった。俺はそれを軽くあしらうとその男はすぐに気絶してしまっていたのだ。俺は、男から何か情報を引き出せないかと考えていたが……。男の服を剥ぎ取り、全裸にして、股間に指を突っ込んで弄っていると……。俺は驚愕したのだ。それは……。こいつが、ただの人間ではなくて……魔物だったのだ。しかも……。見たことがない種族だったために、どんな力を持った生き物なのかわからなかったが……。おそらくは、人族が使う魔法とは違う系統の力を扱えるのではないだろうか。その可能性はかなり高い。俺はこの男から情報を聞き出そうと思ったのだ。
俺は、『魔剣 魔王剣 アスカロン』を取り出して……この男の魂を操るために『魔刀』に力を込めた。
『魔刀』の力が『黒雷』に変わり、その稲妻がこの魔物の魂を切り裂くと……。
《グォオオオ!!!》 と、叫びをあげていた。
そして、身体が徐々に小さくなっていくのを見守っていると……その小さいサイズになって、やっと俺はその姿を視認できるようになった。その小さな魔物が地面に横たわり苦しんでいたのである。その姿を見て、その魔物の魂に語りかけたのである。
「お前の知っていることをすべて教えろ!!」と命令すると、俺の質問に対して答えてきたのだった。
「我が名は……ダークハイエルフ!!闇の支配者なり……。貴様らが知る闇の神が……復活しておられるぞ……。そして、今度の生贄に選ばれたのは……貴様らの大切な者らしいな……。ククッ……。これで貴様らは終わることになるんだろうな!!」と言い残して死んだのだ。
(こいつ……。一体何を言っていたんだ?闇の女神が復活したって言っていたがどういう意味なんだ?)と思っていたその時……。俺達の目の前にある人物が出現したのである。その人物を見たリリアが怯えていたので、「リリア?知り合いなのか?」と話し掛けると……震えながら……。涙目で……。その人の顔を見つめて……名前を呼んだのであった。
「リリ姉さん?」と言いながら抱き着いていたのだった……。
リリスの話だと……。この子はリリアの実の妹の1人で『リリシア・ユーフォニア』だそうです。ちなみに、彼女はこの大陸の魔王である。
『暗黒皇帝 邪悪帝 神聖皇』の生まれ変わりだそうだ。リリアの事は『姉上』と呼んでいたのだ。だが……今の見た目は、16歳くらいの年齢にしか見えないのである。リリアの話ではリリシアは元々13歳だったそうなのに……。
なぜこんなことになっているのか?というと、実は……暗黒皇帝になった際に……肉体が若返ったようなのです。つまり、本来の年齢は30歳を超えております!!でも……。私の方がもっと若いんですけどね!!だって……私の方が年下ですよ!!と胸を張っていたのです!!私より幼い子がそんなに大きいと……ちょっとムカつきますよね……。そんなことを考えていた私は、きっと黒いオーラを無意識に出していたことでしょう!!まぁそんなことはいいとして……そんな事情がありましたからね……。この子と初めて出会ったときに私はこう思ってしまったわけですね!!
(あっ……。可愛い幼女だなぁ〜!!妹キャラきたぁああ!!ロリっ子魔王最高っ!!!!)とね!!そんなことを思っておりましたら……
「私は……。『魔王リリシア・ユーフォニア』です!!よろしくお願いします!!」って言って丁寧に挨拶してくれたんですよ!!そして「あっ!リリアおねえちゃんっ!!久しぶりだねぇえええええ!!!」って言いながらリリアを抱き締めてスリスリしているのを見るとやっぱり姉妹なんだなって思って嬉しくなっちゃいましたよ♪リリアも喜んでいて微笑ましい感じだったのでほっこりした気持ちになりながらも見守ることにしたのである。でもなぜか急にもじもじし始めたと思ったら私を見てきまして、恥ずかしそうにしながら、リリシアが私の前に来ると、いきなり私の胸に顔をうずめてきて甘えて来られたのである。そして……。
《んー。むぅ……》と、声を出しながら、スリスリしていたので、私はこの子を妹認定したわけなんだけど……リリアは少しだけ嫉妬心を見せた表情をしていたわけなのですが、私のこと大好きで甘えん坊な妹みたいなリリシアは可愛くて愛くるしいので頭を撫でてあげたわけなんです!!そして……。しばらくして落ち着いたところで……。「お話ししてもいいですか?」と言われて、リリスは私の隣に座りなおしてくださいと言われたのでそのようにしたら……。なんと!!膝の上にリリアが乗ってきたんですよ!?もう私は興奮しまくってました!!それで……。色々とこの子の話を聞いているうちに気になることが一つあったので、確認を取るためにこの子に聞いたのであります。この子の話の中で、この子の兄と姉の話をしてくださったのですが……。その中に、聞き捨てならない単語が飛び込んできたのだ。
それは……。この子の兄と姉の名が『ダークナイト 魔王リリミア リリティア ダークネス』と言う名前だったのである。それを聞いた瞬間に、私は嫌な予感がしたのでリリアの顔を確認すると案の定青ざめていたのである。そして……私がリリリアの名前を呼ぶとビクンっと体を震わせていたのであった。その後リリリアが……私に何かを訴えようとしていたのだけど……。突然にリリシアのお腹が鳴ってしまったのだ!!
「ぐぬぁあぁぁあ!!これは……違うんです!!そういうわけではないんです……。そ……そのぉ……。ご……ごめんなさいぃいいい!!!本当に……おなかが減ってしまって……つい出てしまったのです。あぁぁぁぁあ……やってしまいましたぁあ!!穴があったら……入りたい気分なのです!!どうか……どうか、私を嫌いにならないでください!!」
と言って泣いてしまったのだ。
(えっ?お姉さまと慕っている人から嫌われたら、リリシアはどうすればいいのかわかりません!!)
と泣き始めてしまい……。さっきまでの威厳たっぷりだった姿が一瞬にして崩壊してしまいました……。そんな様子を見た私は……ついつい笑みが溢れて、優しく抱き寄せて……背中をさすってあげることにしたのである。リリスの方はリリスの方でおろおろして、必死にリリシアに何か言葉を掛けようとしているみたいだったが、上手く言えずにいた。それから数分して、落ち着きを取り戻して、リリスも席に座ってもらった後にリリアもようやく座ってくれたので一安心しました……。
(さて……。とりあえずはこのリリリアさんの妹であるこの子に聞くことがありそうだ。俺も正直に言うのであれば、リリシアの話は信用できないと思っている。なぜなら……『魔王 邪悪神 暗黒魔王』の力を継承しているという話をしても、それはこの世界にいる魔王たちの中では最弱の部類なのだ。その力を継承しただけで……最強を名乗るには無理があるとしか言えないからだ。俺から言わせれば……。まだ子供であるこの子にそこまでの力は宿していないはずだ。だが、今はリリアの安否が不明なため、このリリシアを信じるしかなかったのであった。しかし……この子の口から出てきたのが……。リリリアとリリミアの名前が出てこなかったことに驚いたが、おそらくは、俺達には知られたくない何らかの理由があるのではないかと考えた。そして……俺が、その質問をしようとした時に、リリスと目が合いお互いの意思が通じ合ってお互いに同時に喋ったのだった。「ねぇ〜リリちゃん!!お腹空いているなら私たちに何か食べさせてあげられないかな?その辺にある果物をいくつか持って帰ってあげるから待っててくれない?」(おっ!流石は姉妹だな。見事に同じタイミングでの質問だったな。それにしてもこの子は何を食べるのかわからないからなぁ〜)と思いながら2人の反応を確認していると……2人とも嬉しそうに笑顔を見せていたのだが……すぐに真剣な顔に戻って、俺の方をチラチラと見て……小声で俺のことを心配してくれている様子だった。そして俺が、「大丈夫だから……」と言ったのと同時に、再びリリアに抱き着いていたのだ。
「姉上はお優しいのですね!!リリアさんのことも私の事もとても気にかけてくださっていて嬉しいです!!ありがとうございます!!でも……私を子ども扱いしてもらって構いません!!私はお姉様の事を信頼しています!!そして、私は……お兄様と会えました!!ですが……お兄様が苦しんでいるところをお助けすることができなかったのです……。ですから……お兄様のために何かしたいんです!!お願いします。私に……力をお貸しください!!」と涙ぐみながら訴えてきたのである。そんな姿を見ていた俺は、その少女をギュッと抱きしめると……「分かった。お前を妹だと認めよう!!そして、俺がこの世界の闇を晴らしてくるから……俺を信じてくれないか?」と言うと……「分かりました。リリシアのことはあなたに全てを託します!!私はあなたの側に居てもいいですか?」と聞いてきたので……「もちろんだ。俺はお前を守るって決めたんだ!!」と言いながら頭を撫でてあげたのであった。
リリアの方を見ると、微笑ましいものを見る目をしながら……「ふぅ……良かったわね。リリシア」と言って頭を撫でてあげていたのである。こうして俺たちはリリアの実の妹であり、『大魔王』でもある『暗黒皇帝リリディア・ユーフォニア・ディスティニア リリスティア・ユーフォニア』と契約することが出来たのであった。
ちなみに契約した時の能力がこれになる。
名前:リリスティア・ユーフォニア・リリィル・ユーフォニア
年齢:15歳
Lv:1
性別 :女
称号 :暗黒皇帝 暗黒皇妃 大魔帝・聖帝・大勇者・魔神 職業
『魔王 魔王 神聖剣』『魔神 魔神 神聖王 魔王覇王』『神聖皇妃』スキル 【神聖魔法LvMAX】
〈神速移動〉【空間転移Lv9】
【瞬間転移LV7】
《暗黒魔法 極級》《魔王の加護》《悪魔の加護》 【闇の波動 魔王砲 邪眼 悪魔化 状態異常付与》
「なぁ……ちょっと思ったんだけどさぁ〜。リリアって、なんで『暗黒神』なんて名乗ってるんだよ。別に……『リリス』でもいいんじゃね?」と俺が素朴な疑問を投げかけると……。
『んっ!?あぁー。それはですねぇ……。ちょっと恥ずかしくて言いたくなかったのですが、私がこの世界を『魔界』と呼んでいることからわかると思いますが……。まあ簡単に説明させてもらうと、私の名前は、魔王たちのトップに君臨していますが……。私は魔王たちを統率するための組織を作るために、自ら志願して『大魔王』になったのですよ。まあ……私も最初は乗り気ではありませんでしたが……。私にも色々と事情があって仕方なく引き受けることにしたので……今は割り切っています。それに……お姉様に魔王の名前を名乗ってもらわないと困りますので……。だって私はお姉様の配下であって、魔王じゃないので、お姉様の名前で統一しないと他の人に示しがつくことができないと思ったんですよ。それにお兄様にも迷惑をかけてしまうかもしれませんし……。だから私はお姉様の名を使わせてもらいました!!』と言われたのである。
(はっ?俺はリリアの臣下として働いているつもりだったんだけどな……。まさか……。俺のためでもあったのか……。本当にこの子は良い子過ぎる!!もう可愛くて仕方がないよ。もうリリアなんかよりこの子のほうが『大魔王リリス』でも良いんじゃないかと思うくらいだよ。でも……本人がこの名前を気に入っているみたいだし……。このままでいくしかないだろうな……。リリスには申し訳ないが……我慢してもらうしか……。あっ!!)
『なぁ……。リリスは、『大魔王リリス』って名乗りたくないか?』
と聞くと、首を傾げて悩んでいるような表情をしたのであった。
「お気持ちは嬉しいのですが……。私はやっぱり『大魔王リリス』は少し抵抗があります……。お兄様なんでそんなことを聞かれたのですか?もしかして……。私に『魔王』をやめて欲しかったのでしょうか?お気遣いくださったのですか?お兄様がどうしてもと仰っていただければ……私はいつでもやめるつもりですが……どうしましょう……。お姉様はどう思われます?私はお二人の意見に従うつもりなので、気にしないで言ってください。私は『リリィ』という『愛称』も気に入っていますので……。『リリィ』で通していただいても構わないのですけど……。お兄様は私に対して何か要望があるのでしょうか?それと……できればでいいのですが……リリア姉さまのように『姉上様』と呼ばせてもらってもいいでしょうか?」と急にリリスに話を振られたリリアは慌てて……「えっ?うーん……。私に聞かないで欲しいのだけれど……。でも……。あなたにはお世話になっているし……。これからも一緒に行動することになるわけだから、あなたのことを受け入れたいのは山々だけど……。その……。なんだか嫌な予感しかしないから……。リリシアに聞きなさい。それに……私の事をお義母さんと呼ぶなら、あなたに娘ができたと喜ぶかもしれないから……。それも含めて、リリシアに聞きなさい。私も、あなたと一緒にいる時間が長くなるほど……何かと大変なことになりそうな気がするから、できるだけ早めに答えを出して欲しいわ……」と言われてしまったのである。
(ふむ……。『大魔王』なのに『大魔王』と呼ばれることに違和感を感じてるのか……。これは……確かに……そうだよね。俺も最初聞いた時はかなり戸惑ったしね……。俺も呼び方は考えないとまずいかもな……。ただ……正直に言うが俺は、二人の意見を尊重することにしようと思っている……。俺としてはリリスを『魔王 邪悪神 暗黒魔王』にするつもりは全くないし、今後もその予定はない。だが、仮に俺がこの子を無理やりこの子の力で封印して『魔王 邪悪神 暗黒魔王』にしてしまえば、それは間違いなく俺を敵視してくることになる。そうすれば、この子が望む世界にはなりにくい……。やはりここは……二人に納得してもらわなければならないだろう……。それに……。リリスはこの世界にとって『希望の女神 リリア姫』と、この世界にとって大事な存在であるのにも関わらず、『暗黒の神 リリシア・ユーフォニア・リリイラ・ユーフォニア』はリリスの姉の体を奪い、この世界を脅かす存在になりかねない……。そして……何よりも問題なのが……俺が『魔王』を敵に回したくないからだ!!)
と、頭の中で考えているうちに俺はある結論に達したのである。
「よし!!俺の事は……これからも『リリィ』って呼んでくれてかまわない。そして『大魔王リリス』と名乗らないでもらえないか?リリスがリリアの身体を奪った時に……。そのことでリリスと少し話したいことがあるから……。とりあえず、しばらくは……この三人で旅をする方向で行こう。それで、しばらく時間が経ってから、その時の状況を判断してから改めて今後のことを考えたい。それに俺は『魔王 暗黒神』を敵だと認識していないから、そんなに心配しなくても大丈夫だぞ。俺はお前を大事に思っていることは本当だ!!だから、俺がこの世界に君臨するときには、ちゃんとお嫁に来てもらうし、リリィと呼んで欲しいし、敬語なんて使わないで、普通に友達に接する感じにして欲しいんだ。それが、今一番に俺が求めていることだから……。頼む!!」と言うと、リリアは俺がリリスを味方に付けようとしているのではないかと思い、俺をジト目で睨んできた。それに対して、リリスはなぜか嬉しそうな顔を浮かべて俺を見てきた。
「お兄様!!ありがとうございます!!私はこんな優しい方が『お父様』だったらと毎日想像しておりました。私はそんな優しい方の力になりたいと思っております。ですから……私は、この世界を救えるように、全力を持って協力したいと思います。」と言ってきた。そして……リリスとリリアが抱き合っているところを見ながら……。
「あ〜ぁ。また私の居場所がなくなったわね……。まぁ別に……私はあなたたちのことを悪く思っているわけではないんだけどね……。」と寂しそうに独り言を言いながら俺の近くに来たのだが、急に俺の顔を見ると「ちょっと……。」と言って手招きしてきたのである。俺は不思議に思ったが、すぐに近くに寄ると、耳元で小さな声で囁いてきたのであった。
「ねぇねぇ〜♪レイ君はリリスちゃんのことどう思ってるのかな〜?」と聞いてきたのである。
俺が驚いて振り向くと、顔を真っ赤にしている。さらに……胸元を強調するようなポーズをとっている。
『ちょっ!?なっ!?なんで、そんな格好をしてるんだよ!?リリィも近くに来たし……。リリアの機嫌が悪くなっただろう!?』と言い放つとリリアの頬っぺたがぷっくりと膨らんでいた……。
それを見ているルシがため息をついて「あの……。レイはもう少し空気を読んでください。さっきまでリリアムと戦いながら会話を聞いてましたけど……今は戦闘中ですよ!!リリアも拗ねている場合ではないでしょう!!レイ!!リリア!!今は喧嘩している暇はありません!!リリアムを殺すことが最優先事項なんですよ!?今は、私たちが一人ずつ戦うよりも、この三人が同時に戦ったほうがいいんですよ!!早く……武器を構えてください!!私達だって、まだ……この人を完全に信用できたわけじゃないんです。私達がリリアムに勝てたとしても、リリアムが私達の隙を見て攻撃してくる可能性もあるので……気をつけてくださいよ。」と言われた。すると……ルシも珍しく怒り出した。
『あんたたちは一体なんのためにここに来たのよ!!さっさと戦いなさいよ!!』と叫ぶと……。二人は黙ってしまった。俺達はその後……お互いに距離をとって、それぞれリリアムと向き合うと、一斉に攻撃をしようとしたのである。リリィも、さっきまでリリアのことを怒っていたようだったが……。リリスとのやり取りの途中から真剣な眼差しになって俺たちの戦闘を見つめていた。
(うーん……。やっぱり……。こいつらには無理だよな……。このまま戦わせても結果は見えている……。この三人じゃ勝てないよな……。俺一人でもきついかもな……。まあ……。しょうがないけどね……。でも、ここでこいつらを死なせるくらいなら……この俺があいつを殺してもいいかもしれない……。この世界では殺せないはずなのに……殺したくなったよ。それに……)
と心で思うと俺はリリアムに向かって攻撃を仕掛けると、一瞬で目の前に移動して蹴りを放つと同時にリリアムの顔面を掴んで地面へと叩きつけたのであった。
そして……次の瞬間にはリリスとリリアは左右から剣で斬撃を放ちリリアムを攻撃した。
俺はそれに合わせて、リリアムの心臓を貫くように、剣を振り下ろすと……。そのまま上空に飛び上がりリリスの背中に乗った。
(ふぅ……。なんとか……。倒せたか……。本当に危なかった……。俺一人だとやばかったかもしれなかったが……なんとか……。でも……。やっぱり……この程度の実力なのか……。いや……それよりも……)とリリアムの方を見るが、リリアムはすでに絶命していて動かなくなっていた。
(えっ?なっ!?なぜ……。急所がわからないほど……。弱ってはいなかったはずだが……。いや……。そもそも俺の攻撃も完全に避けられていなかったし……。もしかしたら……わざと受けられた可能性も……。でも、あれだけ弱い奴が、俺の攻撃をあえて受けたのか?)
と考え込んでいた。すると、俺の横をすごい勢いで通り過ぎた者がいたので見ると、リリアが涙を浮かべながらリリアムのそばでしゃがみ込んで、リリアが回復魔法を唱えていた。
『ごめんね……。お姉様……。私にもっと力があれば……。』と涙を流していた。その姿を見ていると……俺はいても立っても居られなくなり……気がつくと……その横に座って、泣きそうになっているリリアの手を握ってあげた。リリスは俺の行動を見て……慌てて近づこうとしていたが、ルシがそれを止めると……少し微笑んでくれたのだった。俺はそのままリリアとリリスに『お前たち二人の力は十分に強いと思う。だから……気にする必要はないんだ。リリアムを倒したことで俺の目的はほとんど達成されたから……。リリア……リリスのことも心配しなくていいぞ……。後は……俺がなんとかするからな。安心してくれ……。」と話しかけると……二人とも泣いてしまった。
(いかんいかん……。この子を不安にさせてしまったみたいだな……。でも……。これでもかなり譲歩したほうだと思うんだけどね……。本当はすぐにでもこの二人を『勇者』の元に返したいところだが、今はまだ時期じゃない……。もう少しだけ我慢してもらうしかなさそうだな……。それにしても……。『魔王』を封印することに対してここまで拒否反応を示されるとはな……。それに……。俺は今の状況で、俺がこの子たちを封印する意味も理由もない……。この子たちにはこの世界で『幸せ』を感じてもらいながら暮らして欲しいと思っている。だから……できるだけ……説得する必要があるが……。とりあえず……今は……この子の願いをかなえてあげるしかないだろう……。)
と、考えていると……ルシとリリスの方に意識を向けるとルシは何かを考え込んでいるようだった。そして、リリスはリリアの頭を撫でながら『大丈夫ですよ。私は絶対に負けませんから……。だから……今は、ゆっくり休みましょう。大丈夫です……。私があなたを守ってあげますから……。そして……私はあなたの味方であり続けます。私はいつまでも、あなただけのリリィですよ……。リリア……。』と優しい声音で言うと……リリスは少し嬉しそうな表情を浮かべていたが、やはりどこか悲しそうな顔だった。俺は二人の様子を見てから立ち上がると、まだ目を閉じてリリアムの遺体の前に佇んでいるリリスに視線を向けた。
(さて……。この子がどうするか見届けさせてもらおう……。『リリィ・アースティア』としてではなく、『魔王 暗黒神』という存在になったとき、どのように行動に出るかを……。それには……俺の正体を話さないとな……。でもその前に……ルシさんの様子を見ておかないとまずいな……。まぁ……。この子たちは今の状態なら、特に何もできないと思うが……一応確認だけはしておくか……。さてっと……ルシさんのところに行かないと話しにならないし……行こうかな……。それには……『聖水』を使うと楽かな……。うん!!そうしよう!!この三人の力を封じれば、あとは……あの女と……あの女の仲間の三人に頑張ってもらうことにしとけば大丈夫かな……。それにしても……。この三人を俺一人で殺すことになれば……それはそれで、俺にとっても都合が良かったのにな……。)
と考えると俺は右手で拳を作り……ルシの胸元に向けて殴りつけると、そのまま胸にめり込んだのであった。すると、ルシは『ウッ!?』と言って胸元を抑えると……そのまま後ろに倒れて気絶してしまったのである。
それを見た俺はため息をつくしかなかった。
「さて……。そろそろ出てきてもいいよ。君たちも見ていたでしょ?俺の『スキル』の『透過』を使えば、君の『スキル』で隠れても意味はないよ。もう気がついているはずだよね?」と言うと……俺の言葉を聞いたリリスたちは驚き、リリィだけが「まさか……。お兄様も私と同じ能力を使えるんですか!?」と聞いてきた。
(なるほど……。確かに……さっきまで気配も何も感じなかったからな……。どうなっているかわからなかったが……。この子は『聖者』なのか?いや……違うな……。俺のこの能力はかなり特殊だし……。)
と思いながら考えていると、「まあいいか……。別に俺の能力のことを隠していたわけではないが、あまり知られたいものでもないんでね……。さて……。俺がルシの胸を貫いたことでわかったことがあるだろうが……。リリス……俺と戦ってくれないかい?」と言ってみた。
すると、俺の発言にリリスとリリアは驚いた顔をしていたが、リリィはすぐに冷静になりリリスを守るような位置についていた。そして、俺は続けて……「俺と戦いたくなければ、戦わなくてもいいが、その場合……。リリィがどうなっても知らないからな。そして……俺がもしこの三人を倒せたとしても、君が抵抗して俺を殺そうとした場合も俺には全く問題ないんだよ。俺の『魂共有化』で仲間にしたとしても『勇者』たちが仲間を殺しに来たと言えば俺も納得できるだろうし、俺の『眷属召喚』でも君を殺すこともできる。さあ……どうする?俺と戦うか……リリスと戦うのか……。さあ……。早く決めてくれる?俺はどちらでもかまわないから……。ただ……早く決めてもらえば、それだけ、君たちの仲間を助ける時間が延びるってだけなんだが……。さすがの俺も……俺がこの場にいる間に三人を殺せる自信がそこまでないんだ。俺だってできることなら……リリアとリリスのことは守りたいと思っているんだ。でも、今のこの世界の現状じゃあ無理なことも理解している。だからこそ……俺の仲間を殺した奴らが憎いし、こいつらの敵を取るために、今この場でリリィ以外の全員を倒しても仕方がないと考えているんだ。だから……。できれば俺と戦いたいとは思っているんだが……どうしても無理なようであれば……。諦めよう……。」と言った。
(さて……。この状況なら、こいつらも素直に従うだろう……。正直なところ俺だってこいつらを皆殺しにするのは本意ではない。いくら俺が世界を支配しようが……こいつが死ねば、また同じ状況に陥る可能性が高いわけで……。この世界に『蘇生』の技術がなければ……。本当に無意味なことなのである。だからこそ……俺も『魂共有化』を使って、仲間にしてしまえば、問題は解決するかもしれないが……。『勇者』たちを仲間にしても、おそらく俺の命令には絶対服従だろうが……逆に言えば、俺の意思とは関係ない命令に従わされることになってしまう。そんなものは本当の意味で仲間とは言えないからな……。俺に忠誠を誓ってくれているからといって……。それが『奴隷』のように扱っては、俺の心が痛む……。本当に信頼できる人にしかこんなことしようと思わないからね……。俺に命を賭けてもいいっていう覚悟があるやつ以外は『魂共有化』は使いたくない。俺には『不死身』もあるからな……。だからここは……。やっぱりこっちから提案するべきだよな。それに……)と考え込むと俺は改めてルシの方を見ると、ルシが目覚めようとしているところだったので……。
(さて……ルシさんがどんな反応を示すかが楽しみだな。)と思っていたのだった。
*
***
<side リリアム> 目が覚めると目の前にいたはずの男がいなくなっていたので不思議だった。私はゆっくりと立ち上がって周りを見渡すと近くに男が立っていて、こちらを見ていた。私は急いで剣を構えると、男を睨みつけたが私はすぐに異変に気がつき体が動かなくなったのだ。
(えっ?嘘でしょ!?何これ?体が動かないんだけど!!どうして!?私は完全に勝ったはずなのに……。)
私が動揺しながらもなんとか体を起こそうとすると……。急に後ろから腕を捕まれ引っ張られた。私は何もできずそのまま地面に叩きつけられたのだ!そして私の上に乗ってきた男は、私の顔を掴むとその男の瞳をじっと見つめてきたのであった。その途端……なぜか私の目から涙が流れ始めたのだ。そして……頭の中に言葉が流れてくると次第に頭がおかしくなりそうになる……。
私は意識を保つために必死になっていた。そして……。その男は私に対して……何かを語りかけてくるのだが、意味がわからないことを言われ混乱していくばかりだった。だが……その時……。急にその男の声色が優しくなっていき、その声音を聞くと……。心が落ち着く感覚に陥り意識が薄れていき、再び意識を失ってしまう。そして……。目を開けてみるとその光景は信じられないものを目にした。
それは私に倒されたはずのレイ・アースティアと名乗る男がいて、私の妹であるリリア・アースティアと私を庇うようにして倒れていた妹が私を助けてくれようとしていたが……。それも叶わず殺されそうになって絶望に打ちひしがれていた時に現れた救世主によって窮地を救われ、さらにはその男から発せられた言葉で私たちは救われることになる。
(一体どういうことなの!?なんで、あの人はリリアムの体に触れてただけで動けなくなるの?あの人が私たちの命の恩人なのはわかるんだけど……。あの人がリリアムに触れたときに何か不思議な力を感じたのよね……。それに……この人もあの人と同じような力を持ってるんじゃ……。でも……この人の魔力はとても弱い……。何か別の力を感じ取ることができるんだけど……あの人とはまったく違う種類の力ね……。それに……なぜ?この人たちは『聖水』をかけようとしなかったの?)
私は自分の体に起きていたことが気になり始めていた。そして……この人たちともっと話がしたいと思うと……急に眠くなり始めて……そのまま私は目を閉じたのだった……。
俺は意識を失ったリリアムを見ながら「さて……。これで終わりにさせてもらうけど……お前たち二人ともそれでいいのか?」と問いかけると、リリスとリリアが立ち上がり、それぞれ違う言葉を言ってきたのだった。
リリスは「うん♪私はもちろん構わないよ。さっきの戦いを見て私じゃこの人に勝てないのもわかっていたし……。でも……。」と言うと……少し悲しそうな顔で俺をしばらく見た後に、俺に向かって話しかけてくる。「あなたの質問の答えは決まっています。ですから……どうかお願いします。私たちの仲間を……家族を助けてください!!あなたしか助けられないのです!!私たちの力はまだ未熟なもので、もう限界なんです!!だから……この願いを聞いてくれるのならば……この場であなたに忠誠をお誓います!!これから先……永遠に……。」と真剣な眼差しで俺のことを見た。
それに続いてリリアが「私も同じ気持ちですよ。この方は……きっとこの世界の救世主なんですよね?この方に付いて行けば……。私たちの大切なものを取り戻せるんですよね?リリアムを倒したんですから、そのくらいは信じてもいいと思いますから……。だからお願いです!!私もあなたの仲間にしてもらえませんか?一生をかけてこの方のお役に立たせて下さい!!」と言ってきたのである。
俺はこの二人の言葉に正直困ってしまった。俺の予想ではこの二人はリリアムが俺にやられてすぐには俺に従うことはないと思っていたからだ。だからこそ……。俺のスキルの力を実際に見せた上で従わないのであれば殺すしかないと考えていたが、俺のスキルを受けても尚、俺のことを認め、さらには俺のために忠誠を捧げると言うのであれば……俺としても無下にはできない。俺としてはこいつらに仲間になってもらえたら嬉しいことなのだが、俺はこいつらのことを全く知らないので、信用することができないでいたのである。
だからこそ俺はこいつらが本当に仕えるに値する人物なのかをこの場できっちりと確認することにしたのだった。まずは俺はルシの方をちらっと見ると、ルシも俺と同じ考えに至ったようで……俺の目を見返して……「わかりました。とりあえずはこの二人がどの程度の強さを持っているのかを確認してみます。そしてもし……。彼女たちに強さがあると判断した場合は……レイ様の思うままに行動されて大丈夫だと思われますよ。まあ……。もし、リリスさんの言った通り、この世界を救うことのできる方だと私が確信しているなら……すでに忠誠を誓っているでしょうしね。なので今はレイ様に全てを任せています。もしも……。彼女たちに実力がないと思った場合には……。その時はすぐに切り捨ててもかまいません。彼女たちもリリスさんもまだ若いですから。今ここで死ぬわけにはいきませんから……。もちろん……。リリスさんがリリアを裏切るとかそういうことではなく……。リリスさんがリリスさんの意思でこの世界に残りたいと思うようになった時は……。そのときにまた考えるとしよう。」と言ったので……。俺はそれに従うことに決め、改めて、二人を見る。するとリリアは、突然の俺の発言に戸惑っていたが、俺と目が合うと慌てて俺の方を向いていた。そしてリリスがリリアの前に出ると、「ちょっといいかな?私のステータスを見せてあげましょうか?多分私のステータスを見れば一目瞭然だと思うからね。でも……。その前に……一応言っておくけど……あなたたちは私のステータスを見ることができるから知っていると思うけど……リリアとリリスのレベルは100よ。これはレベルカンストの状態のことだから、あなたも同じようにレベルが100のはずだから問題ないわ。そして……。私よりもあなたの方が強いかもしれないから……。私に負けるようだったら……。私の仲間になるなんてことは諦めてほしいのだけど……。どうかしら? 」とリリアに対して挑発するように俺にも話し掛けてきた。それに対してリリアムがリリアの代わりに前に出ると、「リリア……。私はそんなこと言った覚えはないぞ……。私も自分のレベルを確認するまではわからないが……。私は君よりも間違いなくレベルが下だよ。私もリリスに言われた通りにリリアと戦おうか。私はリリアと戦う方が良さそうだからね。そして私が君に勝てば……私のことを仲間にしてくれ。」とリリアと向かい合った。
(なるほどな……。この子たちは……。自分のステータスを相手に見せつけるような性格をしてるわけね……。)
俺はそう思いながら二人の会話を聞いていると、リリスが俺の方を見てニヤリと笑い、「じゃあ……決まりね!!レイア……だったかしら?あなたが勝ったら……。私たちを好きなようにしてちょうだい。ただ……。私は戦う気ないから、そこだけはよろしくお願いするね♪」と楽しそうに言うと、リリアムがこちらに近づいてきて「お前たちが勝ったら……。私はどうすればいいんだ?」と言うと、リリスはリリアムに目を向けることなく「リリアムちゃんだっけ?私はリリアムがリリアと一対一で戦い、負けた時にあなたにやってもらいたいことがあるからそれをやってもらうつもりなの。それができないようだったら……私の話を聞くことはできないわ。そして……私はリリアムと戦ってあげるから、私のお願いを聞いてくれれば、私はリリアムの言うことを聞いてあげるってことにするから……安心して私と勝負しなさい。そして……私の奴隷として働いてもらうから覚悟することね!!」と嬉しそうに言うのであった。
(ふむ……。やはりこいつはリリアムに対して何かしらの特別な感情があるみたいね……。それにしてもこの二人を仲間にするメリットはあるのかね?確かに……。この二人はかなり強いけど、俺にとっては正直なところ邪魔な存在になりかねないんだよねぇ……。俺の目的はこの世界を滅亡させることであって、リリアたちと仲間になることじゃないから……。リリアはいずれ俺の仲間になって欲しいと思ってるけど……。リリスのことは全然わからない。そしてリリアに聞いた限りだが、俺がリリアたちに危害を加える可能性はかなり高い……。この二人が本当に信頼できるかどうかもわからないし……。やっぱりこの場で試すしかないのよね。この二人を仲間にすることで俺にとってのメリットは何なのかを。とりあえずは……リリアムを倒さないと……。さて……。どんな感じなのか楽しみね……。リリアムはさっきから黙ったままだけど……。さて……そろそろ行くか……。俺の能力を見せつつ……。スキルを発動するか。)
俺の体の周りに黒い魔力が集まり始めていく。それを見たリリアとリリアムはその光景を見ながら唖然とした表情で固まってしまっていた。それを見たリリスが俺に向かって話しかけてくるのだが、リリスは俺の姿を見て驚いているようだ。「ちょ……ちょっと待ってくれるかしら!!その……魔力の質といい、大きさと言い、尋常じゃないんだけど……。一体あなたは何者なの!?それにその膨大な魔素量……。あなたは本当に人間なの?リリアムに止めを指した時と今のあなたからは桁違いの魔力を感じるんだけど……いったいどうやってそんな力を手に入れたというの!? それに……どうしてそんな力を持っていながら私たちに手を出さないの?その気になれば私たちなんか一瞬のうちに殺せたはずなのに……。もしかして私たちを仲間にしたいとでも思っているのかしら?だとしたらそれは勘違いもいいところよ!!私たちがリリアムをやられただけであなたのものになると思うのかしら?だとすれば相当頭がお花畑のようね……。」
俺はそんなリリスに少しだけイラついた。そして……そのままリリスに向けて殺気をぶつけると、俺の周りにある空間に亀裂が入り始めて、空気が震えだすのだった。
それを感じたリリアはその場で地面に倒れ込んでしまった。そしてリリアが気絶したことを認識した俺は、そのままリリスに向かってスキルを発動しようと動く。
俺の目の前まで接近してくるリリアムのことを見ながらも、俺のスキル発動のほうが速かったようで、俺はリリアムの胸に触れると、そのまま動きを止めることに成功する。俺はリリアムの体に触れた状態で、そのままの状態で「俺の言葉に従ってもらえるか?今ならまだ間に合う。俺の質問に答えてもらえば、俺はリリアムにこれ以上何もしないと約束する。」と話すと、リリアがゆっくりと立ち上がり俺のことをじっと見つめて話しかけてくる。「あなたに聞きますが……。私のステータスを見てもなお、私と戦う意思がありますか?もし、それでも戦うとおっしゃるのであれば……。私は……全力を尽くしてあなたを倒すためにこの身を捧げます!!ですからどうか……。私の家族たちを救ってほしいのです!!」とリリアムのことを心配そうに見ながらも、俺のことを真っ直ぐ見つめて懇願してきた。
リリアムも何とか起き上がろうとするが、上手く体に力が入らないらしく……俺に触れられたままの状態であった。俺はこのままの状態で二人のことを調べることにした。俺は二人の頭に直接スキルを使い調べてみると……どうやらこの二人のレベルは……10万と表示されているようだった。しかもステータスの全てが……100億と表示されており、俺との力の差が歴然であることを知った。俺はそのことを悟られると不味いと思い、スキルで嘘の情報を見させているので、実際にはリリスと大して変わらない強さのはずである。それなのに俺は、リリスよりも強いように見せていた。そして……俺の正体についても一切触れずにいることにしているので、当然のことながら俺の正体を知る術もないはずだ。俺のスキルでは……相手に直接触れて、その相手の名前と年齢を確認することもできるが、それをすれば、俺の目的をすぐにでも達成してしまうため、あえて名前の確認だけにとどめている。名前さえわかれば後はいくらでも方法はあるからである。そのため二人には悪いが俺の仲間になってもらうためには、まずはこの二人を騙しきることが必要不可欠となるのだ。そしてこの二人は騙されていることにも気がついていないようなので、そのままの状態を続けるしかないだろうと思っていた。すると……俺が動こうとした時に、いきなりルシが俺に話し掛けてきたのである。
「私にお任せください。私がこの二人に勝てるのか……。試してみたいと思います。私のレベルはまだ98ですから、おそらく私の方が彼女たちよりもレベルは高いでしょう。それなら……彼女たちも私のことを信頼してくれるかもしれませんし……。何より……。この二人が本当に信頼できる方たちかの判断がつくと思いますから……。どうかレイ様のお力でこの二人が信頼できるかを確かめさせていただきたいです。ですのでどうかこの私めにこの方たちと戦わせてほしいのです。レイ様のご判断に間違いはないと確信できるほどの結果を必ずお出ししますので、私のわがままをお許しください。そしてレイ様の御心のままに行動していただいて構いませんから……。」
俺はその言葉を聞いて納得をした。だからこそ俺は、俺がルシに対して、二人のレベルを調べた結果を伝えると、なぜかルシは嬉しそうな顔をしながら、「やはりですか……。レベルが高いのはなんとなく分かっていたんですけど……。私のレベルの方が上だったことで、レイ様は私のことも信用してくれたんですよね?」と俺に問いかけてきた。俺がその問いに返事をしなくても……。ルシはすぐにリリスとリリアムのところに移動していき、「さぁ!!あなたたちの実力はどの程度のものなのか、私に教えてくださいね♪」と嬉しそうに話しかけたのだった。すると、二人もルシのレベルに驚いたようで、最初は呆然と立ち尽くすだけだったのだが、リリアムは我に帰ると……。リリスを睨みながら話し始めた。
「なぜ……あなたは、あんなに強いあなたが、そんな弱々しい少年といるのよ?あなたはそんな弱くなさそうだから、きっとあなたが強いから、一緒にいるのでしょうけど、それじゃあ……あなたがあの子に付き従っている理由にはならないじゃない。まさか……あの子も実は強かったりするわけ?あり得ないとは思うけど……そういう可能性はあり得るからね……。それに……その服の下から見える刺青はいったいなんなの?」
俺はそれを聞いて……リリアムが『魔人 リリアム』になっているから俺に敵対する意志があると思ったのだった。それ故に俺も、自分のことを話すか話さないか悩んだのだが……結局話すことに決めた。そして俺の本当の戦いはこれから始まると言っても過言ではない。リリスとの会話でも少しは話していたが、やはりここで全ての真相を話してしまうとリリアたちがどんな行動をとるのかわからないからだ。だから……今はとりあえずリリアムとの戦いに集中することにしよう……。リリアムと会話をしている最中、ずっとリリスがこちらをニヤニヤとしながら見ていたことが気に食わなかったのだ。俺としては、あまりこちら側にリリアムの情報が渡ることは良くないと考えているので、できれば俺の正体を知られないようにしたかったが……。それだと……リリアとリリスは確実に俺についてくることはないと俺は考えていた。だが……そのことについて考えている暇などなかったので……とりあえず俺は二人に向かって……。「この世界に来てくれてありがとう。これからよろしく頼むよ。」と微笑むと、二人は顔を真っ赤にして俺のことを見るだけしかできなかったようである。だが……リリスの方は、急に真剣な表情になって俺のことを睨んできた後、「あなたに質問があるんだけど……。いいかしら?まず最初に、私たちはあなたの仲間になったのよね?それで合っているわよね?それと……一つ聞きたいんだけど、どうしてこんなに簡単に仲間になることを許してくれたのかしら?確かに私はあなたが敵でないのならば仲間になるつもりはあるけれど、この子は……どうなの?正直言って、あなたの魔力量を見ただけで、とても私たちで太刀打ちできそうもないくらいなのは理解できるわ……。それならどうしてそんな余裕が……いえ……違う……。あなたは、最初から私たちを騙すつもりで私たちに近づいてきたの?だとしたら残念だけど、もうあなたには失望した。あなたが何者かなんて興味もない。それに……。あなたが本当に味方かすらも疑わしい。だって、今のあなたからは……。得体の知れない恐ろしさのようなものを感じるもの。私には全くあなたという人間が理解できない……。」とリリアムが俺に質問してくると、俺がそれに答えようとすると……俺の言葉よりも早く、ルシが先に口を開いて、二人に話を始めたのであった。
「リリス!!あなたの言っていることって本当!?私は全然信じていなかったけど……。この人が仲間になるっていうのは嘘なの? 」
俺は突然話を振られて少し戸惑ったが……俺は冷静に答える。
「俺の言っていることを信用してほしい。俺は嘘なんかつかないし、ましてや……君たちにも嘘をついてるわけでもない。俺が言いたいのは……俺たちのパーティーには今、回復魔法が得意なメンバーがいなくて困っていたんだ。そこに現れたのが……たまたまここに居合わせた、リリスとリリアムだ。だから……リリアムは回復魔法を得意としていてくれるんだよな?もし得意じゃないとしても問題はないが……。リリスだけはどうしても必要だったんだよ。そしてリリスの回復魔法の能力を見極めさせてもらうために……俺が今の戦いの勝負をつけたいと思う……。もし俺がリリスの攻撃で傷つくようであれば……そのときこそ正式に仲間として認めてほしい。もちろん二人を騙していたりするつもりはない……。二人には、本当に心の底から信頼してもらうために、俺の素の姿を二人に見てもらって判断をしてもらおうかと思っている。ただ……。もしも……二人がこの先……まだリリアムを疑うと言うのであれば……。二人はここから離れてもいいぞ?俺はそれでもかまわない……。二人が信じるまで、俺が全力で戦って証明するから……。」
俺が二人に説明をすると、リリアムはすぐにリリムのことを疑い始める。リリアムの目線から見ても、明らかにおかしいと思ったようで……その証拠を見つけるためなのか、リリアムがリリスに向かって攻撃をしようと動き出すが……その攻撃に対して俺はすかさず止めに入る。そして「お前も俺のことを信じられないか?」と話す。俺は、ルシに二人のことを任せるのと同時に……二人と戦ってもらうように頼んでいた。それは、二人がどれだけの強さなのかを判断するためにである。二人がどれほどの強さなのかを俺は知りたかった。だからこそ……リリスに戦うことを勧めたのだ。そして……俺はリリアムの動きを止めたことでリリアムから俺に対する不信感が増していくような気はするが、そんなのに構っている暇はなかった。リリアムと俺の力の差がかなり大きいことから、少しでも油断すれば、その隙を突かれて殺される可能性も高いと考えた俺は、リリアムとの戦いでは常に全力を出すことを決めていた。そしてリリアのこともルシに任せることにした。二人には……この戦いを見ても、俺のことを信じてほしいと思ってのことだった。俺はルシがリリスと戦えるようにルシを二人の元に行かせると……。ルシがすぐに二人を拘束して……戦いを始めてしまったので、俺はすぐにスキルで二人にステータスを確認してみると…… 【名前】リリス
年齢:19歳
Lv:50/100(固定進化可能!ただし進化条件は未設定。レベル50になると自動的に進化されます。進化の条件は『レベル100以上』かつ、『レベル上限を超えている』ことです。)
HP:1億2000万
MP:2200京
攻撃力:4500000
守備力:255
速さ :1000
精神 :15500
知力 :3400
運 :5000
スキル:『絶対鑑定』、『神炎』
固有武器スキル……『神の雷槌』Lv.9 固有武装 固有装備
・魔人剣デュランダル
(ランクSSS
レア度:極希少価値級 能力解放
・魔人を斬ればその分だけ威力が増す 所有者限定機能
・この剣の持ち主は……全ステータス +10000 効果……物理耐性+++,魔法無効/使用者制限,超回復,体力自動補給,経験値増加量上昇,アイテム収納拡張+無限 所有資格者のみ使用可能)
・魔人刀スサノオ
(ランクB レア度;普通品質 B 性能 D~A- 所有者制限 A~S 特殊効果
・この二つの剣の所有者はこの二つを装備することによって全ステータス+120される。)
(『神を殺せる』とさえ言われた、伝説の神器が二つもある。だが、それなのに……。リリアムの方が圧倒的に強いのか……。これじゃあ……。ルシでもリリアムを倒せていない可能性は大いにあり得るよな……。しかも……二人ともレベルの上限を突破してるのか……。さすがに俺のステータスも確認しないといけないだろうな……。この世界に来る前に見たときは、レベルが300程度だったが……。あの時は……。確か……。この世界に来た瞬間、俺の身体が急激に変化したんだったよな……。まぁ……それについては後で考えるとするか……。今はとりあえず目の前のことに集中だな。それにしても……。リリアムが……リリスと同じ力を使えたりとかしたらどうなる?それに……二人の連携が合わされば……。この世界に生きる生物は……まず太刀打ちはできないかもしれない……。俺だって……同じことができるかどうか……。とりあえず……二人から情報を引き出すためにも……本気で戦った方が良さそうだな……。まず……俺のレベルから確認するか……。)」
俺はそう考えながら、二人の情報を『神眼』で確認することにする。すると……そこには……『神をも殺す』と言われた……伝説級の神具の……しかも……それぞれの名前までもが表示されていて驚いたが……とりあえず俺の情報を確認した結果……俺は愕然としてしまった。
「そんな……。なんだよこの情報の量は……。桁外れすぎる……。なんで俺にそんな情報が……いや、今は考えている時間はない……。今はとにかく……俺が勝つか負けるかでしかない……。」
俺はそう思いながらリリアムと戦う覚悟を決めたのだった。俺はとりあえずリリアムのステータスについて考えることにした。
(それにしても……。あの時と全然数値は変わっていないな……。あの時のままだ……。だが……俺と会う前からの数値だから……今はさらに増えている可能性もあるが……。でも、リリアムがここまで強くなるとは正直予想外だよ……。でもこれで……確信に変わった。やはり……。リリスは俺が思った通りの人物みたいだし……。それじゃあ……。次はリリアムについてか……。あいつのスキルと固有能力はかなりやっかいだから、慎重に対処しないとな……。でも……そのせいなのか……。あいつの能力は一つしか発動できていないよな……。それもそのはずだよな……。だって……。俺が……自分の能力を封印したのだからな……。だが……。俺が思っていたより遥かに強くなっていた……。俺にあんな強力なスキルが使えないというデメリットはあるけど……。それを補うほどの圧倒的なステータスの高さに……。そして……リリアムの能力の欠点もわかってきた……。リリスは……やっぱり凄いな……。そして……そんなにリリアムのことを想っていたのか……。それなら……。二人に本当の俺のことを見せて、信じてもらえればいいだけだ!!よし……。行くぞ!!!)
「いくぞリリアム……。ここからが……本番だ!!いくぜ!!」
「えぇ。来なさい!レイナ!」
俺とリリアムがお互いに向かって攻撃を仕掛けるが……リリアムの攻撃力が半端なかった。俺がリリアムと戦おうとするたびに俺がリリアムの攻撃を喰らってしまう。それは……まるでリリスが攻撃してきたかのような動きをしていたからだ。そしてその違和感の正体は、ルシとリリアムの戦い方の違いにあったのだ。
リリアムの攻撃は一撃も喰らうことができないほどだった。リリアムの攻撃の威力自体はそこまで大したものはなかったが、なぜか……当たってしまった場合は致命傷になりそうなほど痛い攻撃が何度も飛んできたのだ。そして俺は、なんとかしてリリィにダメージが行かないようにする。俺の防御力が高いおかげなのか……今のところ俺にはダメージは入ってきていなかった。しかし、このまま攻撃を受け続けるわけにもいかなかった俺は……反撃を試みるが、リリアムの攻撃の威力があまりにも高すぎて……。俺は防御をするだけで手一杯だった。そして……徐々に俺は押されていっていた。
(これは……マズイかもな……。そろそろ……決着をつけたほうがいいのかもしれない……。だが……。リリアムの攻撃の速さを上回らなければ……。この攻撃を凌ぎ切れるとは思えない……。俺も攻撃力を上げてみるか……。でも……。どうやってやる?俺は今、リリアとの戦いで……魔力を半分近く消費しているから……これ以上上げることはできない……。ならば……この状態を維持することが最優先だ……。この状態を持続させて……。少しずつ……。リリアムの動きに慣れる。これが一番の方法だ。)
俺がリリアムに対してそう思っていると、リリアムの動きが少し変わり、先程までのように、リリスが使っていたと思われる技を使っていた。俺が使っているようなスピードで……。リリスは俺よりも速いスピードで動いても、その攻撃を当てることができていたから……。俺はリリアムにも同じことができるのではないかと、期待しながら様子を見ていたが、リリアムに攻撃が当たる気配は全く感じられなかった。
(おかしい……。確かに俺は速く動いている。それは確かなはずなのに……なぜ当たらないんだ!?それに……こんなにも攻撃を当てようとして攻撃をしているというのに……俺にはかすり傷一つ付いていない。もしかして……。この世界の人間ではない俺に、この世界の住人と同じレベルの動きは……できるわけではないということなのか?だとすれば……。俺の動きは遅い。だが……。俺はこの世界でも通用する速さは出ていると思っていた。だからこそ……。俺の速さは普通の速度だと考えた方が良いかもしれない。)
俺が自分の動きに対しての疑問を抱いている間も……攻撃は続いていて、いつ終わるともわからないような状況が続いたのだが……。俺はリリアムの行動を見てあることに気付いた。リリアムは俺を本気で殺そうと思っているかのように見えていた。そのため、隙を見て俺を殺しに来ているのかと思いながら戦っていると……突然、リリスのような速さを出すのをやめてしまった。
そしてリリアムはそのままゆっくりと俺の方に向かって歩き出していた。俺との距離も縮まり、お互いにあと一歩踏み込めば剣が届く距離になると、リリアムは自分の魔剣である、スサノオを地面に突き刺して、「降参します。私の負けで結構です。だから……。早くその聖剣を下ろして私に返してください。」と言い出したので俺は、「お前……どういうつもりだ……。俺を殺すんじゃないのか?」と言うと、彼女は笑みを浮かべて、「いえ、殺す気などありませんよ。私はただ、あの女を倒すために強くなりたかっただけですよ。それにあなたに負けたとしても死ぬことはないんですし、別に良いじゃないですか。それよりも……あの人……本当にリリムに似ていますね。見た目が全然違うというのに……。どうしてそんなことがわかるのですか?」と言ってくると俺は、「お前……。もしかして、記憶が戻ったのか……。それとも、誰かが俺達と同じように召喚されているのか……もしくは、転生をしているのかな?どれにせよ……。あまり詮索するな。それじゃあ……リリアム。その魔剣を貸してくれないか?それがあればあの女のところまで一瞬で行くことができるはずだから……。頼む。貸してくれるよな。それぐらい良いだろう?それにしても……。俺と戦うときに急に手加減したように見えたけど、何でだったんだ?普通は手加減したら逆に危ないだろう。何かしらの罠を仕込んでいたのかと思ったが、特にそういったものを感じ取ることができなかったから、不思議で仕方がなかったんだよ。」と言う。
すると……リリアムはため息を吐くと……「そんなに気にするほどのものではないと思いますが……。単純に手の内を全部晒してしまうことになるのが嫌だったんですよ。それだけですよ。それと……。さっきの言葉について訂正させてもらいます。あなたがリリムと似ているというのは違いますよ。私が似ていると言った相手は……。あの人……ルシさんではありませんよ。まぁ、そのうちわかりますよ。」とだけ言うと、リリアムは持っていた魔剣デュランダルを俺に投げてきた。俺はそれを受け取ると「ありがとうなリリアム……。助かったよ。それじゃあ……俺は行くよ。これからよろしくな!俺の仲間にならないか?一緒にあいつを倒してこの世界を救おうぜ!!」と言うと、リリアムは再び大きなため息を漏らすと、「あなたって人は……。ほんとに変わり者ですね……。でも嫌いじゃありませんよ。むしろ好きかもしれません。でも……私がその誘いに乗ることはありませんよ?それじゃあ、私はここで待っておきますから……。頑張ってきてください!」と言われてしまうのであった。
俺はその言葉を聞き、急いでリリアの方に走っていった。そして、俺はそのまま『光速』を使いながらリリアとルシがいるところにたどり着いた。そこにはリリアとルシがいた。
「あら?意外に早かったわね?それで?どうするつもりかしら?まさか……。また逃げ帰るの?」
リリアは挑発気味に言ってくると、俺は「いいや。逃げるのはやめたよ……。もう決めたことだ。ここから先は……俺と君達の本気のぶつかり合いになる……。だから……。この勝負が終わったら俺は、自分のことをすべて話そうと思う。それに俺のことを信じられるかどうかはわからないが、それでも俺は君の事を信じる。それじゃあ行くぞ!!」
俺はルシとリリアに向けてそう叫ぶと、まず最初に攻撃を仕掛けたのはリリアムとの一戦で使った技を使うことにした。それは……リリアムと戦っている時に思ったことだった。そのことについて考え、俺は、この世界に来てから俺は一度も、自分のステータスの本当の数値を見たことがないということに気づく。だから俺はそのことに賭けてみた。自分の本当の数値を見ることができるようになるか試すという目的があったのだ。そして俺はリリスが使用していた、スキルを発動させる。『全知眼』というものだ。俺がこれを使う時は大抵、ステータスを確認をする時だった。だが……今回は違う。
リリアと戦わなければならないという焦りがあるからこそ、俺はこの技を使うことに抵抗はなくなった。だから……今すぐに使うことに決めた。だが……。何も変化が起こらない。俺はすぐに、俺のステータスを確認した。
(えっ……。嘘……だろ!?なんなんだこのステータスは!?これ……完全にチートだよな!?俺はこんなに高いなんて思ってもいなかった……。一体どれだけ強くなったらこんな数値が出てくるんだよ……。この世界の人間って……ここまで強くなるもんなのか?)
俺はリリアムが強すぎて、自分がかなり弱くなってしまっているのではないかという思いが少しあったのだが、それをはるかに上回るほど、俺の数値が高くなっていたのだった。しかもその数字は、普通の人間であればありえないような数字になっていた。俺は……あまりにもその事実を受け入れられないと思いながらも……。冷静になろうとしたその時、リリアムの攻撃を受けているはずのリリアから攻撃を受けて吹っ飛ばされていた。そして俺は地面に倒れこんでしまった。その様子を見ていたリリアムはすぐにこちらに向かって攻撃を仕掛けようとする。しかし、リリアムの攻撃は俺には届くことはなかった。俺が魔法陣を展開したことによって、リリアムの攻撃が阻まれたためだった。そして……俺も反撃を開始するが、俺の攻撃は簡単に避けられてしまい……。俺は何度も攻撃を続けた。だが……俺はリリアムを攻撃できないままだった。なぜか……。俺はリリアムを攻撃することができない。なぜなら、俺は今、リリスに言われた言葉をずっと考えていたからだ。それは……俺と初めて出会った時の会話の後にリリスが俺に言った言葉だった。
ー私はレイナ様が大好きで……愛しているんです!!この気持ちは誰にも負ないくらい強いんです……。
そして……。俺が今まで見落としていたことを……リリスははっきりと口にしてくれたのだ。俺にとって……リリィがとても大切であるように、リリアムにとってもリリスは大切な存在なのだろう……。俺は今、そのことを実感したのと同時に、リリアムをどうしても倒すことができなくなってしまった。俺は攻撃をすることもできなくなり……。その場を動くこともできずに、その場でただ呆然と立っていただけだった。
(あ~あ……。ダメだ……。このままだと……。確実に殺される……。でも、攻撃ができないんじゃ意味がない……。いや、攻撃をしたくても……攻撃をすることができないのか……。くそっ……。情けない……俺がもっとしっかりしていれば……。こうはならなかったのに……。俺のせいで……。)
俺は自分の無力さを呪った。そして俺は……そのままリリアムが俺に向かって攻撃をしかけてくるのを待つことになった。
俺は……リリアムがリリアに止めの一撃を与えるのをただ黙って見ているしかなかった。しかし……次の瞬間、俺は目の前で起こっていた出来事に唖然として、驚きを隠しきれなかった。なんと、リリアムが持っていた剣が砕け散り、そして……。リリアムもリリアスもお互いの首元を掴んで押し合っている光景を目にする。その行動は俺が想像もしなかった展開であった。そのため、リリアムも俺と同じように、どうしてこのような状況になっているのか理解できず、驚いた表情をしていた。俺は二人の間に割って入ろうとすると……
「おいっ……。何をしているんだ!?お前達はこんなところで戦ってる場合ではないはずだろう!?早く……リリスを倒しに行ってくれよ!?」
と俺が大きな声で怒鳴ると二人は急に押し合っていたのをやめた。
すると……いきなり二人の力が弱まると、そのままその場に崩れ落ちていったのだった。俺は何も言わず、ただ黙ってその光景を眺めているだけになってしまったが……、俺はとりあえずリリアムを抱き抱えたのだった。すると……。突然後ろの方から声が聞こえた。「やっぱりあなた達……。そういう関係になってたんですか……。それならそうと私にも早く言って欲しかったですよ……」と、そう言いながら近づいてくる女性を見て俺は驚く。その女性の容姿が明らかにリリムと同じだったからだった。その女性はリリアの前まで行くと……「ふぅ〜ん……。あなたが私の可愛い妹にちょっかいを出して……私の居場所を奪い取ろうとしている人ですか?でも安心してください。私はあなたのものになったわけではありませんから……。私はまだ誰のものでもなく……。自由を謳歌していますから。まぁ……。私のものにするのも悪くないですね……。だってあなたはとても面白い人ですから。」と言ってきた。俺は全く話が呑み込めなかったのだが……リリアとリリアムの反応を見ると……その女に対して敵対心むき出しで警戒していたのだった。それを見て俺はさらに混乱するのだった。
リリスがそんなことを言い出した後、急に殺気を放つ。俺もそれに反応して聖剣を構え直す。
すると……。リリスが笑い出した。そして……。「ふっ……アハハッ!!本当に君は楽しい男だよ……。この状況になってもまだ……。私がリリアスだというのに気づいていないんだね……。」と言うと、その女の瞳が赤色に染まり、その髪の毛も黒色から青色に変化し始めた。その姿は間違いなくリリスの姿そのものなのだが、やはり、どこか違和感があった。その姿を見ているうちに……徐々にだが……頭の中で記憶がよみがえってきたのである。そうだ……確かに……リリアはいつもリリスを姉さまと呼んでいて……。よく二人で話したりしていた気がするが…… 俺の記憶の中には、この姿に変身する前の姿でしか……思い当たる人が居らず……。俺は、この世界に来た時の事を思い出していた。そう……。この世界に来る前……。
あの夢の中にいた人物のことを思い出してみる。確か名前はリリムと言ったはずだ……。でもあの子は黒髪だった。だから、この世界に居るはずの無い子なのである。それに……。リリアの妹ということは、当然……。リリスの妹ということなのだろうか?俺は、今起きていることがいまいち把握できないまま、とにかく戦闘に集中しようとしたその時だった……。
リリアが……「リリス!?どうして……ここに?」と聞くと、「ごめんね。おねぇちゃん……。私もリリアムと一緒に旅に出て……。強くなろうと思ってさ……。そして……レイナは私のものだからね!!」と、そう言うと俺に向かって飛びかかって来たのである。
(くっ……。速いなこのスピードは!しかもこいつかなり戦い慣れてる感じがするぞ……一体何者なんだこいつは?)俺は、リリアのことを一瞬見失ってしまったが、『魔力視』を発動することでその動きを読み切る。俺はすぐさま『光速』『筋力増強Lv.10』『瞬歩』、『身体強化Lv.2』『身体能力向上』を使用するとその速さに対応していったのだ。そしてリリアに攻撃を仕掛けるタイミングをうかがっていた時だった……。リリスの拳が俺の目前にせまり……俺はそれをなんとか避けることができたのだが、少しかすってしまうことになり、俺は吹き飛ばされてしまう。
その光景を見たリリアムはリリスの方に攻撃をしようとしたが……なぜかリリスは避けようとせず、ただ俺のことだけをずっと見ていた。その様子は、まるで、この攻撃が当たらないことを確信しているかのように見え、俺は疑問に思う。リリアムは何度も何度もリリスに攻撃を仕掛けていく。しかし……。リリスには掠り傷一つ与えることができないままだったのだ。
(まさかとは思ったが……。これはリリスが防御に徹して……。そして俺の出方を見ているだけか!?だとしたら、俺は今ここで決めなければならないかもしれないな……。)俺は『覇王流』の構えをとろうと……リリスに向けて突進して行くが……また避けられてしまったのである。
(ちっ……。リリスが攻撃をしようとしないなら、俺はこのまま攻撃しまくればいいだけのこと……。攻撃し続ければ必ず隙ができるはずだ。そこを狙い打つ!!よし……これで決めるぞ!!俺はそう思いながら攻撃を続けようとするが、その時だった……。俺の背後に何か嫌なものを感じた。俺はすぐにその攻撃を避けて振り返るとそこには俺の事をじっと見つめてくるリリアがいたのだ。
「くそっ……。なんで俺の動きが見えているんだよ……。お前も俺と同じように『能力鑑定』の能力が発動できるようになったっていうのか?」と俺は、すぐにリリアのステータスを確認する。だが……。俺と同じステータスでは無く……。
【名前】
リリアス・アルフォーツ=ディムロス 〈称号〉 魔族王女・魔眼所持者(詳細省略)
と表示されたのである。
そして俺はこの時初めて知った……。俺はとんでもない勘違いをしていたことに……。
それは、俺の知っている魔族の王は、この世界の魔導師によって倒されているはずだったからだ。しかし……。俺の知らないところで新しい王が生まれて……魔王が誕生してしまっていたのだ。俺はリリスに向かって「おい……。お前はリリアじゃなくて……本物のリリスなのか……?」と質問すると、リリスは不敵に微笑んでから俺を指差したのだ。
「うん!!正解だよ!!やっと気づいたみたいだね。私の本当の名前はリリス。このリリアスに寄生して生き長らえてきた……もう一人の人格なんだよ!!もう……。お兄ちゃんったら全然気付かないんだもん……。でも……。リリアムは私に騙されてくれたよ!!私は強いからね!!お兄ちゃんを騙して殺すことができる!!だって……。」
俺は……その言葉を最後まで言わせないためにリリスに攻撃を仕掛けた。すると、俺の攻撃を避けることもせずにリリスは俺の攻撃を受け止めたのである。
俺の攻撃をあっさりと受け止めたことで……リリアムはさらに怒り、リリスを殺そうと必死になりながら攻撃を仕掛けるが……全く当たらなかったのだった。俺はそんな光景を見て、
(まずいな……。このままだと……。本当にリリアが殺されてしまう……)
そう思っていた時に……「やめろぉー!!」というリリアの悲痛な叫びが聞こえる。その声でリリアムは我に返り、一旦その場から離れようとした時……突然、リリスの手刀がリリアムの胸に突き刺さり……。そしてその手はそのまま胸を貫通する。その瞬間……リリアは……リリアムが死ぬところを目撃して絶望しその場に崩れ落ちていく……。
その様子を見た俺は「なぜ殺したんだ……?まだリリアムは生きて……」と俺が言いかけると……。リリスはリリアムの体を投げ捨てるように地面に向かって落とした。地面に落ちたリリアムは血だらけの状態で横たわっている。俺は急いで駆け寄り、回復魔法をかけると……。傷が塞がっていったが……。すでに……死んでいたのである。
その行動を見て、俺は……「貴様……よくもリリアムを殺してくれたな!!許さん!!」とリリスに対して激しい殺意を抱くと、俺は、リリスのことを睨みつける。すると……
「フッ……ハハッ!!すごい目つきね……。それに、今の私は……さっきまでと違ってとても機嫌が悪いのよ……。だから覚悟してもらおうかしら……。まぁ、死ぬ前に……どうして私がリリアムをわざわざ殺さないといけなかったのかを……お教えすることにするけどね。まぁ……。その理由はすぐにわかるでしょうから……さっさと死んでもらうとするかな。」と言い放った直後だった。
突然、目の前からリリスの姿が消えたと思った次の瞬間……、俺は、背後から首元を強く締め付けられてしまい……。声が出なくなってしまう……。俺は苦しくなりながらもリリスの方を見るが……その姿はなく……俺は困惑していると……俺の首を絞めている力が強くなっていき……そして……俺はそのまま気を失ってしまったのである。
俺は意識を取り戻した時、そこは真っ暗な場所だった……。
(ここは……どこなんだ……?確か……俺の首にはリリスの腕が絡まってて……それで……俺も死んだはずだ……。ということはここは天国?いや……違うだろう……。だって俺は生きているのだから……。って……あれ?そういえば……。なんで俺はまだこんなにも体が動くんだ?俺も確かにリリアムに負けないぐらいには鍛えてたつもりだけど……。それにしてはかなり元気が良すぎるような……。
あっ……そういう事か……。俺の魂だけが、ここに来たということなんだ……。多分……リリアが殺されたことで……精神世界に干渉されてるのか……。でも……それなら俺の体はどうなってるんだ……?)と俺は、不思議に思っていると、急に光が灯り、そして……そこに現れたのは……俺のよく知る人だったのだ。
そう……それは俺の母さんのミハルだった。でも……。その姿は、あの世界で俺が知っていた母の姿ではなかった。
その顔はどこか寂しそうな感じがしていて……。俺が生きていた世界では見ることのできない姿だった。そして、その母の隣には……父さんがいて、母に優しく笑いかけていたのだ。俺はその光景を見ていることしかできなかった。なぜなら、今起きている出来事が……信じられなかったからである。でも……。その二人の姿を見ると、どこか心が落ち着くような気がしたのだった。そして、母はゆっくりと口を開く。
「この世界はあなたの知っている現実世界ではないの。
あなたは、一度死んでいるはずなのだけれど、 なぜか、ここに来てしまったの……。」と俺に話しかけてくる。俺は、何が起きたのか理解することができずにいた。
(どういうことだ……。俺が現実に存在しない人間だとでもいうのか……。)
俺がその言葉の意味を考えていると、さらに、その続きを話し始めた。
「この世界は私の心の中の世界でもあるの……。つまり、今私達は……あなたの心に直接話しかけてる状態になってるわけね……。本当は……あなたも知ってるでしょ……。私が誰だったかを……。
私はあなたのお母さんじゃない……。本当の私は……魔王の一人だったの。魔王というのは……人族と敵対する立場にある者の総称なの。その頂点にいるのが、大魔王……。それが……私の本名よ……。でも……。私も今は……ただの女の子よ。それもとびっきり可愛い美少女……。そして、お父さんと結婚したのも、魔王の力を封印するためだった。そして……その代償として私は自分の記憶を全て失ったの。
でも……その前に、私の心の奥深くで眠っているもう一人の私……。そいつが目を覚ました時……全てが変わってしまう。そしたら……。もう取り返しのつかない事態になってしまう。それだけは……どうしても避けたい……。
そのためには、そいつを完全に眠らせるしかないの。そいつが完全に眠ることができれば、全ての問題は解決される……。だから……その時が来るまでは……リリアム……いえ、レイリス……この世界のリリアムと一緒に、幸せに過ごしてほしいの……。これは……あなたにとって辛いことかもしれないけど……。お願い……。もう時間がないの……。この願いを聞いてくれるのであれば、私達の全てを……。全てを教えてあげるから……。さぁ……。この光の中に……。」と言ってくる。俺は、母の真剣なまなざしをみて、何か事情があることを悟ると、「わかった……。俺は、必ずリリスのことを救う。約束しよう……。だから、安心してくれ……。母さん。俺が絶対にリリスを……リリスの心を取り戻すよ……。待っていてくれ……。俺を信用できないなら、この場で、俺の体に、思い切り剣を振り下ろすといい……。もし、これで何も変化がなかったなら、その時は好きにしていいから……。」と俺は言うと……、少し悲しそうな顔をしたように見えた。
だが……その直後だった。突如……母さんの後ろに黒い渦が出現し、そこから何かが飛び出してきたのだ。その影は、俺の顔の方に近づいてきた。俺はそれを必死に防ぐも、勢いが強くて……そのまま後ろに押し返されてしまったのである。俺は何とか立ち上がって前を向くと……そこにはリリアムの姿がはっきりと見えたのである。
(くそ……。またこいつが出てきてたのか……。だが……。なぜだ……さっきよりは弱い……。だが……。それでも……強いな……。だが……)
と俺は考えると……。リリスは「あら……。あなた……。やっぱり……生きていたのね……。どうして……。あのまま殺してあげたのに……どうして……。どうして邪魔をするの!?どうして!?どうしてなの!!」と、とても動揺した様子を見せていたのである。
俺は……リリスのことを睨みつけながら「それはこっちのセリフだ!!なぜ……俺の息子を……。殺してやっただと……?ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!!俺は、どんなことが有っても……絶対に……お前を許さない!! この子を殺したければ、まずは俺を殺すんだな!!それとも、まずはこの俺から殺してみるか?」と言うと、その瞬間……空気が重くなる感覚に襲われたのだ。その圧力に俺は……膝をつく。そんな様子を見ていたリリスは、「クフフッ……。なかなか良い威勢ですね……。ですがまだ……。足りないようですね……。ならば……。これでどうですか……?」と俺に攻撃してきたのだ。俺は、その攻撃を受け流そうと試みるが、さっきまでと違い、とても強くなっているのである。その攻撃をまともに食らってしまい、吹き飛ばされてしまう。俺は立ち上がるも……。その一撃によってかなりのダメージを負ってしまい、フラフラになっていたのだった。
(強い……。今の俺じゃ勝てないか……。)
と思いつつも俺はリリスを睨みつけたまま構えを取る。その姿を見ていたリリスはとても驚いている表情をしている。
(フフッ……。さすがに驚きますよね……。さっきまでの私が……本気を出していないのが分かるみたいね……。そうね……。これならどうかしらね……?私に従え……。我が名において命ずる……。)と心の中で念じ始めると……。その瞬間だった。突然、体が硬直してしまったのである。俺は体を動かすことができない。すると、目の前にはリリスの姿があり……。俺に向かって手刀を振り下ろした瞬間だった。俺の目の前にはリリアムがおり……その攻撃を受けたのだ。そのせいで……リリスの手刀は俺に当たることはなく、空振りに終わったのである。そして……そのリリアムに向かって……「ありがとう。おかげで助かったわ……。あとでお礼はするわね……。
それと……ごめんなさいね。あなたの体を傷つける結果になってしまったけど……我慢してね。すぐに終わらせるから……」と言い放つと……今度は俺の方に体を向けると、両手を俺に向けて、俺の体に衝撃を与えると、その反動を使って高く飛び上がったのだった。その行動を見た俺は「ま、まさか……。やめろぉぉー!!!」と叫ぶと……。リリスはリリアムを蹴り飛ばすと……リリスはリリアムに向かって、魔力を込めた衝撃波を放ち、その体を粉々にしたのだった。そしてリリスはその破片をすべて回収してしまうと、その残骸を抱き抱えて泣き崩れてしまい、そしてその声は次第に小さくなっていったのである。そして、その体はどんどん黒く変色していくと……その姿が変貌していったのだ。
(うっ……。その姿は……。なんで……。あいつがいるんだよ……。くそ……。やばいな……。早く倒さないと……。リリスもこのままだと本当に消えちまいそうだ……。こうなった以上仕方ない……。
今すぐやるしか方法はない……。リリアム!俺を……。俺を信じてくれ……。
俺は、俺であって俺ではないんだ。だから大丈夫だ……。俺を信頼しろ……俺が……。
俺を……。俺を……俺を……信じてくれ……リリアム!! 頼む!!)
その瞬間、レイリスは目を覚ました。そして、辺りを見回すと、「ここは……?どこだ……。って……そうか……。俺は、死んだのか……。ということは……。ここは精神世界というところか……。
しかし……。あの女……。いや……。母さんはいったい何をしようとしているんだ……?」と考え始めた。そして、しばらく考えた後に……。一つの考えが頭に浮かんできたのだった。それは……。
「なるほどな……。そうか……。あの時言っていたもう一人の私とは……俺のことだったわけなのか……。あの時の母さんの反応がおかしかった理由がやっと分かったな……。だが……それは俺も同じだろう。あの黒い塊の力は相当なものだ……。それにあの感じ……。間違いなく、奴は魔王の力を手に入れたということだろう……。ということは……この精神世界で母さんと戦うことになるわけだが……一体どうすればいいのだろうか……。俺一人では……正直厳しいかもしれないな……。誰か協力してくれる者がいないかと考えるのだが……。」
と考えた後、俺はとりあえず部屋を出ることにしたのだった。廊下に出てみると……。
やはり外の風景が違っており、俺は一瞬戸惑ったが……。
今がどういう状況かを思い出したのだ。
(この感じ……。多分ここが父さんの心の世界なのだと思うが……父さんがどこにいるかわからない以上……探すことが難しいな……。それにしても父さんの心の世界がこんなに広かったとはな……。これは少し予想外でもあるが、とにかく、外に出ないことには話にならないからな……。
この家の外に行けば何かわかるかもしれないし……。とりあえず、出てみるしかないよな。でも……どうやって出るかな……。この扉を開ければいいのか?)
とレイリスが考えている時に、突然大きな音がして、扉が開いたのだ。レイリスが驚いてそちらの方向を見てみると……そこに立っていたのは、なぜか全裸のレイナが立っていたのであった。その隣にはなぜか母の姿があった。レイリスはそれを見て、思わず目を隠したが、指の間からしっかりと見ており、レイナは恥ずかしそうにしていたのである。
母は、ため息をつくと、ゆっくりと俺達の前に近づいてきて、「全く……。なんて格好で外に出ているのよ。しかもあなたたち二人でしょ?私達がどれだけ苦労したと思ってるの?」と言うと、俺は、「すまない……。ちょっと事情があって……。それで……どうして二人がここに?」と言うと、母は微笑んで、それから俺に抱きついてきた。
俺は少し動揺したが……それを気にしないふりをして平静を装ったのである。
(この人は誰だ……。俺の母さんで間違いないようだな……。)と思っていると、母の隣にいたレイナもこちらに来ており、俺の肩を叩くと……、「レイリス様はどうして裸でいたんですかね……?私のことを誘っているんでしょうか……?もしそうであれば、いつでも準備OKですよ……?さぁ……来てください!」と言ってきていたのだった。その発言を聞いた母はとても呆れた様子を見せながらも……、「さぁ……もう行きましょうか。」と言って俺のことを無理やり連れて行こうとする。俺は少し抵抗したものの……結局そのまま連行されるような形で連れて行かれたのである。その道中では母といろいろ話をした。俺のことについてや、二人のこと等を話し合ったのだった。すると、二人は俺の両親であることは間違いなさそうであることがわかったのである。母からは俺が生まれてすぐに死んでしまったと聞かされていたことや、父からは、母に先立たれてからずっと一人だったと聞いていて心配していたということなどを聞かされた。俺はその言葉を聞いてとても嬉しく思えたのだった。俺は二人に質問したいことがあり、「ところで……一つ聞きたいことがあるのですが、俺はなぜ、このような姿になったのですか?俺が死んだことは何となくわかったので……。おそらく、転生したのは理解しているのですが、その辺がよく分からないので……」と言うと、父は答えてくれた。それはあまりにも簡単な内容で……要するに俺の父と母が、それぞれ持っている闇の力と、光の力をお互いに融合させる際に俺が拒絶反応を起こして爆発が起きてしまったらしく、その際に俺が巻き込まれてしまい……体が半分消滅してしまって、その結果このような姿で生まれてきてしまったらしいのだ。そのことを説明してくれた後、「お前は悪くないから、気にしなくて良いんだぞ?」と言われたのである。俺はそのことに戸惑いつつ……複雑な心境だったのだ。俺としては……俺自身がどうなったかの方が知りたかったからである。ただ、俺の気持ちは変わらないし、今はどうにもならないと諦めたのであった。
その後……三日が経過しても、ルシ達は姿を見せることはなかった。リリアスやリリアも警戒態勢をとっていたのだった。すると、突如としてリリア達の元に現れたのは……。「久しぶりですね。元気にしていましたか?」と笑顔で言うと、リリアのほうに手を振ってきたのである。リリアはその人物を見ると……。驚きのあまり……絶句してその場に座り込んでしまうと、怯えながら後退りしたのだった。リリアムも、その姿を見て驚いた顔をしており、そして恐怖で顔を引きつらせてしまう。リリスは冷静に相手を睨みつけているが、明らかに動揺をしている。そして、リリムだけは、何も分からず無邪気にはしゃいでいたのである。
そんな光景を見た俺は……さすがに我慢の限界が来た。そして、「てめぇら!!いつまでそうやって笑ってられると思うなよ?リリアをここまで怖がらせるとはいい度胸じゃねぇか!!覚悟できてんだろうな!!」と言い放つと同時に、魔力を放出して、全員吹き飛ばしたのだった。
その攻撃によってリリアムとリリスの体は粉々になって消滅した。そして残ったのは、その力を吸収したのか、体が大きくなっているリリィの姿だった。
「あれれ?なんか大きくなってるね?もしかして……これがあなたの本来の状態なのかしら?だとしたらまずいよね……。私はあなたのお母さんと仲良しなの。それに、私のお姉さまを悲しませて泣かせた罪はかなり重いから……。お仕置が必要ね……」と言い放ち、その場から姿を消すと、一瞬にして俺の目の前に現れると、拳を突き出してきて、そのまま顔面に向けてパンチを打ち込もうとしていた。俺はそれを避けることができず……直撃してしまったのだ。
(くそ!速いな!それに……威力もあるみたいだな!だが……まだだ!こんな程度なら全然問題無い!)と思いつつも反撃に出ようとしたが……その前にまた姿が消えて……今度は後ろに姿を現して回し蹴りを放ってきたのだ。
それは避けることもできず直撃してしまい、吹き飛ばされると、リリィはすかさず接近してくる。そして、「あはは♪やっぱりあなたは面白いわぁ~。この私が負けるわけないけど……。一応楽しめそうだわ。この状態でどこまで耐えれるかやってみようかなぁ……。」と言い放つと……リリアムと同様に、体に纏っていた闇が大きくなり、それが徐々に体に侵食していくように変化していったのだ。その姿を見たレイナは震えだすのだが、リリスがその背中に手を置くと……優しく抱きしめていた。
そのリリスの行動に対して、リリアムは何も出来ずに見守るしかなかった。その表情はどこか辛そうな感じだったのだが、今の自分に出来ることは限られているため……何も言えなかったのであった。そして、俺は何とか立ち上がるのだが……その時に異変に気づいたのである。なぜか自分の手が黒く染まっていたのである。そして体のあちこちに黒い鱗が浮き上がっており、その目は完全に赤くなっており、牙と角が伸びていたのだった。そして俺は、全身に走る痛みに堪えながらも構えをとり、目の前にいる敵に視線を向けると、「ふぅ……。これは少し本気を出した方がいいかもしれないな……。」と言った。
(なんだ……これは……。まるで別人みたいな感覚だな……。自分でもよく分からないが……これを使えばあいつに勝てるかもしれないな……。)と考えている時だった。俺の後ろに気配を感じとり振り返る瞬間に腹部に鋭い一撃を受けて……意識を失ってしまい倒れ込むと……。そこに立っていたのはリリスだった。
その光景を見てリリアは慌てて近寄ろうとすると、その前に母が立ち塞がる。母は微笑んでおり、その顔は慈愛に満ち溢れているようにも感じられた。母は、「リリス……大丈夫よ。この子は死なないわ……。でも……ちょっと痛めつけておいたほうが良さそうかな?リリア……手伝ってくれるかしら?」と微笑むと、その笑みに威圧されたかのように動けなくなっていた。リリアはそれでもなんとか立ち上がろうとしたが、体が思うように動かなかったのである。そんな中で、リナだけが、母の後ろで隠れており、少し涙を浮かべながら、「ママ……こわいよぉ……。」と言って、リリスは少し微笑んで頭を撫でていた。
「リナちゃん大丈夫だよ?お姉ちゃんがいるから……。安心して?」と言って……落ち着かせていた。そして母がゆっくりと近づいていくと……気絶しているレイリスを抱きかかえて、「ごめんなさいね。私の家族が酷いことをしたわ……。」と言うと……レイナと一緒に去って行く。
リナは、リリスの手を引っ張って、離れないようにしっかりと掴んでいたのだった。レイリスが目覚めた時には……全てが終わっており、そこにはリリスだけしかいなかった。俺は目が覚めると、「あれ?確か俺は……」と思っていると、「レイリス様!」といって駆け寄ると……強く抱きしめたのだ。レイナは泣きそうになりながらも、「良かったぁ~!心配したんですからね?」と言った。
(そういえばそうだったな。リリス達を置いて勝手に戦いに行ったんだった……。悪いことをしたな……。)
俺はリリア達に謝りつつ……母達がいないことを聞くと…… 俺が起きる前に戻ってきて……全て終わったと言われ、事情を聞いたが……俺にはまだよくわからなかったのである。そして母とリリス達を連れて部屋に戻り、リリアは俺の隣で眠りについており、他の者達も少し休むということで眠ることになった。
(母とリリス達か……。母からは不思議な雰囲気を感じたんだよなぁ……。あの時の俺はどうしてああなってしまったんだ?わからない……。ただ……今はリリアスが側にいるし、もうすぐで皆と合流できるからそれまでの我慢だな……。ただ……これからどうなるんだろうな……。このままだといずれは……死ぬかもしれないんだもんな。どうにかしないと……。まずはこの世界のことについて詳しく調べないと……。それからリリアスを治せる方法を見つけて、それからリリアとも話して……母がリリアスの母親だとしたら……父さんも生きているはずだから……。探して会いに行くか。とりあえず今は寝ることを優先しよう。疲れが取れていないし……。リリアスが目を覚ますまではゆっくりしておくか……。)
こうして……俺達は朝になるまで、それぞれ休息をとったのだった。
リリス達は、俺が起きてすぐに部屋に入ってくると、「「レイナス様……。無事な姿を見ることができて嬉しいです……。本当に……。ずっと待っていました……。また、こうしてあなたと出会える日をずっとずっと……。私達は、あなたのことが大好きです。心の底から信頼しております。なので……ずっと一緒に居させてください……。お願いします……。」と言うのだった。
その言葉を言われたリリアは……なぜか涙を流して泣いていた。そして……「レイリアも言ってました。本当はレイリアもそうしたかったけど……。レイリアは……私のために命を落として……だから……私が今こうしてここにいることを感謝しているの……。リリス。ありがとう……。リリアを救ってくれて本当にありがとう。私は……二人が一緒なら……きっと寂しくないわ。だって……私の自慢の娘ですもの……。そして……これから先、あなたは、もっと素敵な出会いをするはずよ……。だから……。その時は……二人共仲良くしてね?二人の絆は絶対に切れることはないでしょうから……」と言い残し、その場から消え去ったのだった。リリスはその場で泣き崩れて……俺はその様子を見て声をかけてあげようとも考えたのだったが……やめたのだった。
リリアスとリリムもその場に残っていたのは……別れの挨拶をしたかったためなのか……それっきり何も喋らず、そのまま時間が経過すると……いつの間にか二人は眠っていた。俺はそんな二人の様子を見ているうちに……なぜか眠気が襲ってきて……気がつくと……夢の中で俺は何かを探していたのだった。
(俺は一体何をしたいのだろうな……。俺はいったい……何を……探して……)と言いかけたところで、突然大きな音を立てて扉が開かれ、俺はそこで目を覚まして起きると、「あ、あれ?」と言い放ったのだ。俺は不思議そうな顔をしていると……そこに現れたのはなんとリリムであった。
その顔はどこか悲しげであり、俺の顔をじっと見つめてくる。俺は……気まずくなりながら、「えっと……。どうした?リリム?」と言うと……、「その……。少し話がしたくて……。」と言い始めたため、リリアスが眠っているベッドの近くへと移動し、話を聞いてあげたのである。リシア達もその話を聞きたいということで……俺の近くに来ることにしたのだ。そして話をしようとした時、そのタイミングを見計らったかのように……「レイ!起きたの!?体は……何ともない?それにしてもすごい怪我をして帰ってきたから心配してたんだよ!」と言ってやってきた女性にいきなり話しかけられたのだった。
その女性は身長が高くてスタイルが良く綺麗で金色の長い髪を靡かせた美人で、赤いドレスを着こんでいる。
(あれ?この人は誰だ?)と思いつつもその言葉を聞いた俺の脳内には……その女性の容姿は記憶されているような感じだったのだ。そして……「あ!すみません!えーと……。」と俺が言うとその女性は「あら?私の名前を忘れたのですか?」と悲しそうな表情をしながら見つめてくる。
(名前って……。そういえば俺……母以外の人達の名前が出てこない……。どういうことだ?あれ?思い出そうとすると……頭の中がぼやっとしてくるぞ……。この人が俺の母なのか?この世界では俺が知らないだけで、こういう容姿をしている人ばかりなのか?俺の記憶がおかしくなっているのか?この人のことを考えようとすると……なぜか頭痛がする……。だが……なぜかこの人から感じるのは懐かしさがあるような……。)
リリアが、俺の様子がおかしいことにきずき……慌てて俺と謎の美女の間に入ると……睨みつけるようにして「あなたは誰よ!」と怒鳴るように言ったのだ。その様子は、どこか怯えているように見えたのだった。そして、俺のことを後ろから抱きかかえると……自分の胸に引き寄せて守ろうとしていたのである。
謎の美女は、リリアの言葉に対して特に気にせず、俺のほうを見ながら「ふふふ♪やっぱり覚えていてくれたのね?でもね?その態度はないんじゃないかしら?レイリス?」と意味深なことを言い始めると、俺の目を見て……「レイリス?俺のことを覚えてくれていたのですね……。母ですよ?」と言ったのだ。
俺はそんな発言に対して少し考え事をしていたが……母という単語が聞こえると、母という言葉に対して、なぜか俺は反応して体が震えだし、「うわぁぁ!!」と言って俺は叫んでしまった。そして、母というワードを聞いた瞬間に……頭の中で様々な映像が映し出されていき、目の前にいる女性が母親だということを認識する。しかし……その瞬間に俺は吐血してしまう。リリアはすぐに俺を抱き抱えて、急いでリリアスが眠るベッドに移動して横にする。リリスも心配そうにしながらついていき、リリスが俺の背中をさすっている間も、母は笑顔のまま無言でこちらを見ており、俺の嘔吐が止まると……母は近づいてきて……俺の耳元まで口を寄せて……囁くように俺に話し出す。
その一言に……リリスとリリアとリナとリナレスとリリアナの五人も驚くと、俺が母の方に振り向こうとすると、「レイリス……。今は振り返っちゃダメ……。」と母は言い、さらにリリスに指示を出して……リナを抱きしめさせると……リナも少しだけ落ち着いた感じになっていた。母は俺から離れると「ごめんなさいね。少しだけお話をしに来たのだけど……ちょっとやりすぎたみたいね……。でも……これであなたは思い出せますよ?あとはあなた次第……。レイリス……。」と言って立ち去って行ったのだった。
(今……母さんはなんて言ったんだ?母さんのあの行動で、俺は頭が割れそうになるくらいの痛みが走っていた。あの人は間違いなく母さんなのに……俺はあの人を疑おうとしている……。なぜだ?どうして……あの人が敵だと思おうとしたんだろう……。どうしてなんだ……。)
俺が一人で考えている間にもリリスとリリアスの容態を確認すると、かなり落ち着いてきたようだった。リリスはリリアに俺を頼んでから部屋を出て行き、リリアと一緒に看病を始めると……しばらくしてリリアが出て来て、俺に報告してくれた。
「レイ。お母さんが来たようね……。レイもリリスから話は聞いたと思うけど……。レイの体に変化が起こってる。このままだと、また前みたいなことになる……。」と言われ、そのことを言われると……確かにそうかもしれなかった。俺は、母とリリスの母親が一緒にいることを想像しただけでも怖くなり始めていたのだった。
俺は……母との再会で頭がパニックを起こしていて正常な判断ができなくなっていた。母が……母じゃない気がしてしまい、あの人を信じることができない。母だと認識しているはずなのに、何故かあの人に対して嫌悪感を抱いていた。その証拠として……あの人が喋り始めてから、吐き気が収まらない……。母から放たれた言葉を聞く度に頭痛が起こり……俺はどんどん精神的に追い込まれていった。あの人に……「もうやめてください!それ以上は……」と懇願するようにお願いすると、あの人が近寄ってくる。その顔はまるで悪魔のように醜悪な笑みをうかべていた。
(もうやめて……これ以上俺を苦しめないで……。お願い……。)と思っているが……そんな思いが伝わるはずもなく……俺の顔に手を当ててきて……頬を触られると、気持ち悪くなり……涙目になりながら必死に抵抗するも……力の差がありすぎるため……どうしようもなかった。俺は恐怖で震えが止まらずにいて……歯がガタガタと音を立てていたが、あの人の手に俺の血がついたところでようやく解放されたのだった。
そして、「はぁ……。はぁ……。なんでこんな酷いことばかりされるんだよ……。母さん……。あんたが俺の母親なら……。俺は……俺は……。」と言うと、その女性は笑いながら「私もあなたに会いたかった。そしてあなたを助けてあげたかった。だけどあなたが拒絶するのであれば……。仕方がないことなのかもしれない……。」と言い残して消えて行ったのだった。
俺はリリア達に大丈夫だったか聞かれて、とりあえずは無事だったことを伝えたのである。ただ、まだ気分は良くならなかった。そして……あの女性のことを話すのは今は危険だと判断して何も言わないことに決める。そしてしばらく時間が経つと体調が回復してリリア達と会話をする。
そこでリリアが……「レイ……。本当に何があったの?なんかレイの様子を見ると……とても苦しんでいた……。何かあったんじゃないの?」と言われた。俺はその問いに対しては答えずに……「それよりも……母さんの件で話があるから、二人とも聞いてくれ。今はまだ他の皆には言わないでほしいんだけど……」と言ってから、先ほどのリリア達も聞いていたことをリリアとリリムの二人に話し始めたのだった。そして俺は、母らしき人物に会った際に、俺の体が勝手に反応してしまったことを説明したのである。二人はその話を聞いて驚いた表情をしていたのだが……話を終えると真剣な表情をして考え込み始めてしまう。
その話を聞いて俺が母と会うのは危ないと二人が思うと……俺はすぐに、「いや……。多分……俺があっちの世界にいた頃、すでに俺は母と接触している。だからあそこで会ってなければ……俺はここまで強くなってはいないし……。俺はもっと早くこの世界に転移していたはずだ。つまり……俺にとってあの人の存在は必要不可欠なものだ。俺はあの人に会うことで強くなることができたし、あの人が居てくれたおかげで俺は安心してこの世界で生き抜くことが出来たんだ……。俺はあの人を拒絶したとしても……いつかは向き合わなければいけない存在だと思ってる。リリア……。俺のために怒ってくれるのはすごく嬉しいよ……。だけどこれはきっと避けられないことだし、今のリリア達の力を借りてしまえば……おそらく、俺の体がどうにかなってしまう可能性だってあるしね……。でもね、今は我慢して?今はあいつと戦うべきときではないから……。それに俺だって怖いんだよ?もしあの人ともう一度戦えと言われても戦う自信がないんだよ……。それほどに……今の母は危険な存在なんだ。それにね……。さっきもいったように……あいつは強い……。あいつには俺の母としての意識が感じられない……。それが余計に恐ろしいんだよ……。」と言った。
そしてその発言を受けて二人の女性は黙ってしまったのだ。そしてその後……俺はリディアに母さんについての詳しいことを調べてもらうように指示を出してから、俺も一度この国を出て情報収集を行うことにした。
(やっぱり俺はこの世界に来るまで母さんの記憶が全くなかった。それなのにどうしてなのかわからないが、リリア達と出逢ってからは、母さんの存在を感じることが出来るようになったんだよね……。そして今回の母さんの発言を考えるに……。俺が忘れてしまっただけで……。俺の中にはしっかりと記憶が残されていたってことかな?)と思ったので、リリアとリリスとリナの三人は俺について来てくれることになり、残りの人達には城を守ってもらうことにして、三人と合流して旅の準備を始めた。
それから三日が経って……準備が完了するとリリスとリナと俺とで旅に出ることになった。
まず初めに俺達は、リディアと連絡を取りながら移動していたのである。俺達がこれから向かう場所の周辺では、リディアが把握している限りは……リディアと俺以外の魔族はいないらしい。俺達が向かっている国は……俺が以前リリアから聞いたことのある『ルミナス王国』と呼ばれる大きな街がある国である。
リリア曰く……その国の国王と女王様はとても優しい人だと評判が良いみたいだった。俺が以前にいた世界でも、リリアンとレイリスはルミネ王国の王と王妃の子供だったのだが、その国は平和で民を慈愛の心を持って大切に育てていた。しかし、ある時を境に、魔王が現れてしまい……、魔王によって、国が滅んでしまうのであった。
その話を聞いたときに俺は……もしかしたら……今回も似たような状況なのではないかと思ってしまい、少しだけ胸騒ぎがして不安になったのだ。しかし……俺の予感とは裏腹に、今のところは穏やかな日々が続いていた。俺はリリスに、「そういえば、ルリとレイヤの二人とは最近連絡取ってなかったけど……どうしているのかな?」と聞くと、リリスが困ったような顔をすると……、
「お兄様……。その話は今は控えた方が……。」と言うとリナが俺の方を見てきたので俺は、リナの目を見るもリナも悲しそうな顔になり……俺達の方を見ていた。俺はそんな二人を見て嫌な想像をしてしまっていた。
(まさか……。もしかして二人は……死んだのか!?でも、そんなこと考えるなんて俺はバカだ……。でもなんでリナとリリスは悲しい顔をしているんだ?しかも……リリスは……今は何も聞かない方が良いみたいだしね……。)と思っていると、突然リリスが立ち止まる。
「お姉ちゃん?いきなり止まらないでくださいよ。一体……なに……が……?!」
リリスが突然立ち止まった理由を聞くために後ろを振り向くと、そこに一人の男が立っていた。男は俺達に向かって剣を構える。俺は一瞬でその男の強さを感じ取ると、俺と同じぐらいの力を感じていたが……男の実力はかなり上だと感じ取っていた。
俺はその男が放つ殺気を感じたので……咄嵯にリリア達を守るために前に出ると……。
リリスはその光景を見ると……「ごめんなさい。私は……レイがやられてる姿を見たくありません。ここは……私が相手をします……。二人は逃げてください……。」と言うと、腰に差しているレイピアを抜き放ち……俺の前に立つと……その男は笑いながら……「ほう……。俺を目の前にしてその態度は良い度胸をしている。俺はなぁ……自分の力を試したいんだ!!あんたは強いようだなぁ!だが俺はもっと強くなる!!」と言うと……俺に向かって襲いかかってくる。
俺はすぐにリリスに指示を出すと……「わかった……。ここは任せたよ!リリシア!お兄様の言う通りにここから離れて!!私達はすぐに応援に向かうから……。それまで耐えきれれば……きっと大丈夫だから……」と言うと、リリアとリリスを連れて逃げる。俺は……この場に残った。
リリア達が行ったことを見届けてから俺は剣を構えながら……相手の動きを伺う。そして……俺はこの男のことが気になってしまっていた。それはなぜこんなに強い奴がいるにも関わらず……俺に襲い掛かってきたのか不思議に思ったからである。俺は……この世界にくる前の……元の世界にいるときの知り合いの剣士達を思い出そうとしたが……あまり上手くいかなかった。
(まあ……そんなことは後で考えればいいか……。今は……)と思うと俺は構えをとろうとしていたその時……急に大きな音がしたと思ったら……リリスが吹っ飛ばされていたのだった。
俺はリリスの方に駆け寄ろうとしたが……その隙をついてリディアがこちらに攻撃しようとしてきたので、その攻撃を何とか避けたのである。
(なにが……起こったんだ……?リディアの攻撃も見えなかったが……なによりもあのリリスが……。俺は……何を考えている……。リリスは俺の仲間なんだ……。それなのに俺は仲間のことを心配する余裕もないほどに動揺してるんだな……。本当に情けない……。それに……。なんであの男が……ここにいるんだ!?リディアのあの速さの斬撃を簡単に避けるなんて……。リディアも俺が知る限りでは……かなりの使い手なはず……。)と考えているうちに俺は、その男に剣技で圧倒され始めた。
その男の剣術は明らかにリディアよりも強く……そのスピードもかなり早かった。俺は必死に防戦一方の状態だった。それでも俺の方が若干ではあるが押していたのだが……徐々に追い詰められていくと、俺は背後から攻撃を受けてしまう。俺はその攻撃を受けた瞬間……意識を失いそうになる。俺はそこで気を失ってしまった。
俺が起き上がるとそこは薄暗い洞窟の中みたいなところだった。俺はその光景を見て驚いてしまう。なぜならそこにはなぜか大量のモンスターの死体が散らばっていて、さらにその中央に巨大な魔物の死骸があったのだ。
俺はその死体を眺めると……。
(こいつは確か……リリスが倒したと言っていたミノタウロスという巨大牛のような見た目の魔獣の亜種だよな……。だけど……こいつから感じるこの強さ……。尋常じゃないな……。それに……さっきから感じているこの魔力……一体どこから?)と思っていた時、その魔獣の頭部にある大きな宝石のようなものの中に誰かいることに気づくと……俺はすぐにその大きなミノタウロスに攻撃を仕掛けようとすると、 《私の愛しの我が子達を殺したあなたを許さない……。この命にかけても……。絶対に許さない……。あの子は私の宝物であり……。家族なのだから……必ず……。殺してやる……。この世界のどこにも……。お前達が存在する場所はこの世に存在しない……。》と聞こえてくるとその声は消えていき、それと同時に目の前に黒い渦が出現すると……そこから俺がよく知っている女性が現れたのである。その女性は白銀色の長い髪と綺麗で美しい瞳を持ち整った容姿をしていたが、表情には優しさは皆無だった。俺のことを見つめる眼差しには……一切の温かさがなく、その視線から感じられる感情は憎悪と怒りだけだったのである。
(まさか……母さん?どうして……俺の体の中から母さんが出てくるんだ?それにこの魔力は……。もしかしてあの時の?でも……どうしてあの時の母さんはあの場所にいたんだ?母さんなら……わかるはずだ……。)と思いながらも……俺は冷静を装って質問をしてみることにする。「母さん?俺は……父さんが……。」と話す前に俺の母さんと思われる女性が俺の声に被せて喋り出すと……。「あなたのお父さんは死んだ……。私はね……ずっと見守っていたのよ……。それなのに……。私は……もうすぐ死ぬ……。お願い……最後にもう一度……貴方の笑顔を見せて……。」と言うと俺の方を見つめてきて微笑んでくれたのである。
そして次の瞬間には……俺の母親だと思われていた女性は、光に包まれたかと思った時には……その女性は完全に姿を消していて、俺は呆然としながらただその場に立ち尽くしていた。
それからしばらくして我に帰ると、リリスとリナと合流して三人で合流地点を目指して移動を開始する。リリア達は無事に避難しているようで何事もなくて良かったと俺は思いながら……リナの案内のもと急いで移動していると、リナが突然「あっちです。急ぎましょう!」と言ってきたので、俺はリナの言葉を信じて走ると……そこには倒れている人達がたくさんおり……その中に……リリスの姿を発見することができた。
リリスは、リナの姿を視界に入れた途端に……安心しきったのか泣き崩れてしまった。
そんなリリスをみて俺達もつられて泣いてしまう。
俺は、リリスに近づき、抱き上げると、すぐにリリスが回復魔法をかけていて、「ごめんなさい。お兄様。もう少ししたら、動けるようになるので……。」と言うとリリスの体を淡い緑色の光が包む。
リリスの回復が終わったところで、俺達は、この場を離れて王都に向かって出発をする。リリスは体力を消耗しているために少しふらついていた。そんなリリスを支えていた時に俺は疑問が頭の中で引っかかっていたのだ。
(この世界にも魔素が濃い地域が限られているとは思うんだけど……それにしても魔族が少ないな……。それに……。この辺一帯はリリア達と一緒に移動したことがあるはずなんだよな……。リリスに聞くのはちょっとまずい気がして聞けないな……。)と考えていた。そんなことを思いながら俺はリナと一緒に歩き続けていると……リリスが何かを感じたように顔色を変えていたので、「どうしたんだ?」と聞くとリリスが俺の方を見てきたので、リリスの顔を見ると顔が強張っていた。
(一体……何を警戒しているんだ?そんなにリリスが緊張する理由ってなんだ?俺の予想通りだとすると……。この近くに魔王軍が来ているということだよね?ということはこの先に……)
俺達は警戒しながら進んでいくと……前方に人の集団を発見したので、俺は「みんな隠れろ!」と言うと、俺はリリスの手を引き、リナに覆いかぶさるような格好で伏せさせる。リリスはその行動に驚いた顔をしながらも、嬉しそうに笑みを浮かべるとすぐに俺の指示に従ってくれて……すぐに地面に這いつくばるのだった。そして……しばらく様子を伺っていると……武装をした兵士が一人こちらに近づいてきていた。
その兵士達が近くに来るまで俺達は息を殺して身を潜めていたのである。そして……兵士が立ち止まり、俺達のことを見下ろしていた。俺達は兵士の様子を伺うと、兵士たちはそのまま俺達を無視して行ってしまったのである。
(助かったのか……?)と思っていると……。そのあとに、今度は一人の男が姿を現した。
その男は金色の長髪を後ろに流していて、とても綺麗な顔立ちをしていて優しそうな目をしており……俺達が見たこともないような服を着ていた。そしてその男の姿を見て……俺はその男が人間ではないことに気がつく。その男はまるで人とは思えない姿をしており、背中からは黒い翼があり、頭の上についているはずの耳はなくなっており代わりに頭に小さな角がある……。俺の目の前に現れたのは悪魔だった。俺がその様子を見ているとリリスが小声で「お兄様……大丈夫ですか?震えていますよ?それに……この感じは……あの時と……。やっぱり……私達は狙われていました……。私のせいで……。ごめんなさい……。お兄様……」と言うとリリスは泣き出してしまっていた。
俺は、そんなリリスの手を握りしめて……落ち着かせようとするとリリア達とも合流することが出来た。そして、俺はすぐに……先ほど遭遇してしまった悪魔のことを聞いてみると、リリアとレイナとリナが話してくれた。
その内容は……今、この辺りを縄張りにしている魔王の幹部の一人であるというのだ。そして……その幹部の名前は……サタンというらしく……。リリスの父親であると教えてくれたのである。リリスとリリア達の話を聞いていたらリリスは泣き出してしまっていて……リリアが慌てていた。そんな光景を見ながらも俺は考え事を始めると……ある仮説を立て始める。それはリリスの話の中に出てきたあの魔獣のミノタウロスの頭部にあった大きな魔石のようなものについてである。あの魔石のような物体が、魔獣を操るための鍵なのではないか?と俺は考えたのだ。
(あれは恐らくだが……あのミノタウロスを操っていたのだと思うが……。でも……。それだとおかしくないか?リディアやリリスに聞いた話によると……。リリスの父であるあのミノタウロスは……この世界に出現する魔獣の中では最強クラスの存在であるということだし……。いくら何でもそこまで強い存在をリディアが一人で倒せるとは思わないんだよな……。それなら……。)と考えていると……リリアが突然…… 《レイヤ!そいつはリディアよりも強く感じるわよ。気をつけないとダメだからね!私はリディアと戦うけど……あんまり気を許しちゃだめよ。》と言うと同時に俺の中から出ていくと……一瞬にして消えてしまった。俺は驚いていると……突然、俺の体から膨大な量の魔力を感じ始めたのだ。俺は慌てて魔力の発生源を探すが、その場所がわからず困惑していると、俺の隣にいたリリスが俺のことを見つめていたのである。
俺が不思議に思ってリリスのことを見つめると……「えへへ。バレてしまいましたか?本当は……この体にはもう魔力がないんですよ……。だから……私の体はもう死んでいるんです……。それに……。この体は、お兄様の本当の妹の体なんですよ……。私が乗っ取っちゃいました……。」と言ってリリスの瞳から涙が流れ落ちると俺を見つめてきたのである。
俺は、それを聞いた時に理解できなかった。リリスの言葉の意味が分からなかったからだ。リリスは……この体の本来の所有者であり、俺の妹であり……この世界で生きていたはずだからである。俺は、その言葉の真意を確認する為にも質問をしようと思った時に、急に後ろから声をかけられたのである。
《私の愛しの子達よ。元気に育ってくれていて良かった……。さぁ一緒に行きましょう……。》と言うと目の前にいる黒い渦から女性が出てきたのであった。
そして現れた女性は……この世界の人間の容姿ではなく、肌の色は白色に近く、髪の色も白銀色の長い髪に青い瞳をしていたのである。
そして……その姿を見た時……リリア達四姉妹が……突然苦しみ始めてしまった。
(どうして?なんで?この人は母さんじゃ無いはずだ!!だって母さんはこの世界に来てはいないはずだ!!どうしてここに……。)と混乱しながら考えているとリリスが、「リデア……。」と呟いたのである。
「り、り、リデア?」俺は、その名を聞くとすぐに思い浮かべてしまう人物が頭に浮かんでしまい……その名前が口から零れ落ちた。するとリリスは嬉しそうに「うん。」と言ってうなずくだけだった。
(ま、まさか……この女性がリリアの母親のリディアなのか?)と思っているとその女性は俺を見つめながら……ゆっくりと近づいてきたのである。俺はリリア達に近づいてその女性を俺の方に来るように言うと、すぐに四人が俺の前に移動してきた。
そして……俺は、その女性の方を改めて見てみると……俺の視線に気付いたその女性は嬉しそうに微笑んでいて、俺は……なぜかその女性に違和感を覚えて、この女性が母親であるはずが無いと思っていたのだが……リリアが女性に対して話しかけようとしたので俺は止めるように手で制して、女性に向かって質問をするのだった。
「君は誰だ?」
《私は、貴方の母よ。忘れたの?リリスは覚えていてくれたみたいだけど……。私は……貴方の事を……ずっと見守ってきたのよ。そして、私は貴方と約束をしているの……。》と言うと……突然俺の周りに光の粒が降り注ぐと……俺は不思議な空間の中に飛ばされていた。そして……目の前の女性は俺の方に歩いてきていて……そのまま俺は抱きついてきたのだ。
(な、何が起きたんだ?)と戸惑っていると俺は何故か抱きしめられながら涙を流しているのだった。するとその女性が話し出した。
《やっと……やっと会えたの……。リリア達にも本当に悪いことをしてしまったわ……。私の力が不足していたばかりに……貴女たちに辛い思いをさせてしまって……。許して欲しいとは言えないけど……。それでも……。ごめんなさい……。でもこれからは大丈夫……。もう安心して……私がちゃんと見守ることにしたから……。この子は私が守ります。リリア達のように私の娘達が悲しい思いをするくらいならば、いっそこの子と一緒に……消えた方がましだったかもしれないけど……この子の事はどうしても諦めたく無かった……。この子が生まれてすぐにお別れをして、リディアと二人っきりで過ごしていると、時々この子の夢を見るようになったの。この子がこの世界を好きになるたびに……私のこの子に残した魂の一部が強くなっていって……。いつかは、夢に現れなくなって……それからは、私の中で眠っていたはずなのに……最近、また現れて……私の記憶が薄れ始めていたの……。それでね……。私と……契約してほしいの。もちろん嫌だというのであれば……。この子はこのまま、普通の女の子として、生きてもらって構わないわ……。それに……リディアが望めば……。二人でこの世界を離れる事もできる……。どうかしら?私と契約をしてくれませんか?私も全力で……リディアの事を守るから……。私からもお願いします……。この子を守ってください……。この子を幸せにしてあげてください……。》と言って再び泣き出しそうな顔をすると、さらに強く俺を抱き締めてきて、俺から離れようとしなかった。俺はどうすればいいのか分からず、とりあえず落ち着くまで待った方がいいと判断してしばらく待っていたのだ。すると少しずつだが落ち着きを取り戻したのか泣き止むと笑顔を見せて俺の顔を見ながら「私は大丈夫よ。ありがとう……。私のわがまま聞いてくれて……」と言い俺から離れた。そして今度はリリスに近づき優しく頭を撫でていた。俺はその様子を黙って見ていると……俺の腕が光出すのを感じ取り自分の腕を見てみるとそこには黒い渦が出現しておりそこに腕を入れてみると黒い渦が腕を飲み込んでいき徐々に広がっていった。そして……腕がなくなると光がおさまった後には何も残っておらず消えてしまったのである。そして黒い渦は徐々に小さくなっていき完全に消えると……今度は黒い霧が辺りを包み込み視界を奪っていくのであった。
その光景を見ていたリリスは俺のことを見てくると俺は「お前も俺の中に戻れば良いじゃないか……。」と言うと、リリスもリディアと同様に黒い渦が出現すると俺の中に入って来たのだった。
そしてリリスもいなくなった事で俺は周りを見渡すと、そこは先ほどと変わらず……何も見えない暗闇が続いていたのである。
俺は試しに大声でリリアの名前を呼んでみたが返事はなかった。俺は慌てて……リリスを呼び戻す為に、俺は急いで俺の中にリリスがいるかどうか確かめる事にした。俺が自分の中を探りながらリリアやリナ達の名前も呼んでいるとリリアとリナは無事なようだったので、リリスを早く探し出そうとしていたその時に……リリスが俺の前に現れたのである。俺は、リリスを見つけると「リリス……。いきなりで悪いんだけどさ……さっき俺の中に入って来てたのは……どういうことか説明してくれるかな?」と言うとリリスは困ったような顔をしながら俺を見つめてきたのである。
俺はそんな様子をみながらも……少し考えると……。もしかしたら俺の中の誰かをリリスの母親が呼び出した可能性があるなと思い…… リリスに俺の推測を話すと、リリスは驚き俺の話を最後まで聞くと…… リリスの頬には涙が流れていて、リリア達もリリスの話を聞いて驚いていた。リリスは俺の事を真剣な表情をしながら俺のことを見ると 《私もそう思うわ……。あの人がこんな行動をとるなんて……正直ありえないわ。それに……あの人が、この子の中に入ってくる時にね……何かを感じたわ……。多分……この子の中にはあの人と繋がりがあるからだと思うけど……。もしかすると……リディアはこの子の事を……。》
「それじゃあリリアの母親は、この世界のリディアと同一人物だってこと?」と俺が確認するとリリスは静かにうなずいていた。そしてリリスが俺の手を取ると……
「この先に行けばリディアが待っているよ。でも……。一つだけ約束して欲しいことがあるの……。絶対に無茶だけはしないで欲しいの……。この世界で最強クラスの力を持った人と戦ってくるのだから……本当に気をつけて……。それにこの先で待っているのが……この世界に居た頃の本当の母様であるかどうかは分からないから……。」と言うと俺から手を離すと後ろから抱きしめてきたのである。俺は……リリスを心配させない為にはどうすればいいか考えた結果、俺の中にある膨大な魔力の一部を俺とリリスに分け与える事にしたのである。
俺がそうする事を伝えるとリリスは驚いた表情をして俺から離れると俺の方を見つめていたのである。そして俺はリリスに
「リリスが、そう思っているのは俺がこの世界ではリリア達の保護者みたいなものだからだろうから、リリア達にそう思ったんじゃないか? 俺がリリア達にしているように、リリア達を幸せにするのは……きっと俺の役目だ。
それにこの世界でも、俺がこの世界の勇者だって事は変わらないし……それに俺にとって……リリスは大切な人の一人だ……。リリアだってそうだろ?」
と俺が話すと、俺は笑顔でうなずくと、俺とリリスはお互いに抱きしめ合い、そして唇を重ねるのだった。
「ありがとう。」と言うと俺はすぐにリリア達がいる方へ視線を移すと……リリスは俺の事を優しい目で見ると
「行ってらっしゃい。私の事を忘れないで帰ってきてくれるのを待ってるから……。」と言ったのである。俺は「当たり前だよ……。リリスを置いて帰るわけがない……。必ず戻るから……。」と言うと俺は歩き出したのであった。俺の体が輝き出しその場を後にしたのだ。
**
***
俺は目を覚ますと見覚えのない天井を見ていたのである。
(んっ?どこなんだここは?)と思っているとその部屋の扉が開くとリリア達が現れた。リリア達は俺の側に駆け寄ってきてリリアが俺に話しかけてくる。
「リデア!!目が覚めたんですの?」と言ってきて、俺は「えっと……リデア?誰だ?俺はリクって名前だぞ?まぁとりあえずは助かったんだろう?」と言ってリリスの方を見ると同じようにリリア達もその方に振り向くとリリスと目が合ったのである。そしてリリスは俺に向かって歩いてくると俺の前で止まり俺を見つめると
「ご主人さま? まだ寝ぼけているの? もう……。」
と言って俺の顔に触れて、自分の顔を俺の方に近づけてきて、俺はキスされると思い慌てていると
「ちょっと!リディアお姉ちゃん! ずるいですぅ!」と言うとリナが抱きついてきたので
「こら! 離れなさい!!」
とリリスは言いながら二人を引き剥がそうとするが二人は俺から離れようとしなかった。
(な、何が起きているんだ?)と思って困惑していたらリリアは、二人を止めに入るが二人とも言うことを聞かずに揉み合っていたら突然ドアから現れた一人の女性が、二人の頭に拳を振り落とすと二人が気絶してその場に倒れた。そして俺に近寄ると
「まったくもう……。リリアも何をしているのよ。いくら妹みたいに思っていた存在だったとしてもリリアには旦那さんがいたでしょ?」と言い俺を見つめてきたので俺は混乱しながらその人物を見ていると、リリスが 《お母さんよ……。》と言ってきた。
「は、初めまして……。リディア・マロンと言います……。お父様が大変失礼をしました。」
と言うとリリアが立ち上がり俺の事を見ながら俺のことを抱きしめて涙を流し始めるのであった。俺は、どうすればいいのか分からずにいるとリリアスは、泣きながらも俺から離れようとしなかった。俺は、リディアを見ると、そこには優しく微笑んでいる顔があり…… 《私も会えて嬉しいよ……。リディア》と声をかけると、リディアも嬉しかったのか、リディアも泣き始めてしまった。俺は、この人達の為にも早く世界を平和にしないとな……と思ったのだ。*
* * *
***
それから、しばらくしてから落ち着きを取り戻すとリリアは、リディアにリリスの事を説明し始めて、俺も俺の中に入った事を話すと……
「な、なるほど……。その話は信じられないのですが……確かに私が知っているリリスと同じ姿だし……この子は、私が知っている頃とは全然違うもの……。でも……。この子がリリスだってことは分かった。リリス……大きくなったね。そして、私の愛娘が幸せに暮らしている姿を見ることができて……本当に良かったよ。ありがとうね。リリス……あなたが、この子の中にいたから……この子を幸せにすることができた……。本当に感謝します。」と言い俺の頭を優しく撫で始めたのである。そして俺の頭をなでていた手を放すと同時に……
「それと……この子を幸せにしてあげられなくて、ごめんね……。私の力不足だった……。私はこの子を守ってあげないといけないって分かってたのに……。」と言いながら、俺を抱き寄せてきた。そして泣き続けるのである。俺は泣き止ませる為にも…… リリアとリナに、この世界であった事を簡単にだが説明するのであった。
* * *
* * *
* * *
* * *
* * *
そして、しばらく時間が経って…… リリア達が話終わると俺は……
「それじゃあ、今ここに居る俺達以外の全員が生きているのか?」と俺が聞くと、
「そうですね……。あの時に死んだ人は……多分いないはずです……。」と言うと
「そうか……。それなら安心したよ。俺は、俺の世界に帰るために、リディアと話をしに来たんだけど……リリアがリディアと俺が会った事があるって言ってたが、本当なのか?」
と聞くとリディアは俺を見つめると
「リデアさんとリリスが一緒に居たのは間違いないと思いますよ。私の目の前に現れた時もリリスは、この姿でしたから……。ただ……」と言うと
「なんだよ。なんか問題でもあるのか?はっきり言ってくれ!」と言うと、 リリスをチラッと見て……「えっと、リリスの本当の年齢は、私より少し下なんですけど、今はリリスよりも見た目が若いんですよ。なので……リデアさんに、そう伝えた方がいいかも……と思っていたんです。リリスはまだ子供なんですよ。リリアやレイリアに年齢を言うのは大丈夫だと思いますが……流石にリリスに言うとショックを受けるかもしれないので……もう少し時間を置いたほうがいいかもしれませんね。それに私から伝える事もできるので、どうしようか考えておきますね。」
と言われ、確かにそうだと思った。リリスにはリディアから直接話す事ができないから俺からリディアに伝えればいいかと思い、
「そうだな。確かにリリスには話せない事だから……俺が伝えておくよ。」と言うとリディアがうなずいていたのだった。すると突然にリリスが「そろそろ帰るの? 寂しいけど……また遊びに来てくれるよね?今度はリリアとリナを連れてきて欲しいな。三人共……本当に仲良しになったから……姉妹みたいになってたし……。」と言うとリリスの目から涙が流れていて、俺はそんな様子に「約束する。今度は三人とも連れてくる。絶対にリリスに会いに来るからな。約束だ。」と言うと俺はリリスの手を握るとリリスは、笑顔になり「待ってるからね。お母様もお母様でリリア達の所に一度帰らないといけなくなるだろうから、リリアと相談して、この家に来られるように準備して待っているから……。それにこの世界の事は任せておいて。お父様と一緒に必ず平和にさせるからね。そしてリリア達を幸せにできるように全力で頑張ってくるわ。」と言って俺から離れたのだ。そして「お姉ちゃん……。絶対だよ? 私だってもう一人で生きていくんだし……リディアお姉ちゃんも手伝ってくれないとお兄ちゃんを取り合う相手がいないじゃん!」と言うとリディアは俺を見て……「あら?別に一人じゃないですよ? あなたの事を可愛がっている人はたくさんいるでしょ?それに私は、これからもこの子と一緒だもの。」と嬉しそうな表情をしながら話すとリリスは俺をじっと見つめると……
「そうだな……。やっぱり私は、まだ子供だな……。」と言って悲しそうな顔をするので俺は、抱きしめたい気持ちを押さえ込み我慢していると……リディアがリリスの耳元に顔を近づけて何かを話すと……
「うん。そうだね。ごめんなさい。お姉ちゃん……。お姉ちゃんの言っていることが一番だと思う……。ありがとう……。私のわがままを許せくれて……。ありがとう。」と言うとリディアから離れリリスの瞳に光が戻ったのだ。そして俺の方を見ると
「お姉ちゃんと話をしていたの。」とリリスが言うとリリアが俺に話しかけてきたのである。
俺は、その光景を見ながらリリス達と話している間、ずっとリディアの胸の中で抱きしめられていたのだ。俺は離れようと思って「ちょ、ちょっと……そろそろ離れて貰えないかな?」と言ってみると
「嫌!離さない。リリスには甘えさせてくれたんでしょ!だから今度は私の番! いいでしょ?お願い!私も……もっとこうしていたい……。」と言うのである。俺は恥ずかしくて顔を上げることができないでいると
「リデアさん……そのぐらいにしたらどうですか?リデアさんの想いもわかりますけど……。リデアさんだって本当はリリスを抱きしめたいのでしょ?」とリディアは言うと俺を見つめてきたので
「リディアには、お見通しなんだな……。確かに俺は……俺の腕の中には今リリスがいて欲しいと思っている。それは俺の我ままだ。でも……今はこの子の為に俺は頑張ろうと思うんだ。今ここでリディアに抱きしめられていると……リディアの事が好きで堪らなくなって……リリスの事を忘れてしまいそうになるから……。頼む。今日だけはリリスをリディアに任せてあげてくれないか?」と言うとリリアもリナも俺の話を聞き終えると「わかった……。じゃあリリアもリリスの事を見守りながら……ご主人さまと二人きりの時にいっぱい愛してもらおうかな。」「はい……。アース様……。私も同じ考えなので……。後でリリスの所に行く時には一緒に付いて行ってあげるね。」と言ってきたので俺は二人に微笑みながら頭を撫でるとリリア達は頬を赤くしながらうつむくのであった。
*
* * *
*リディアと別れた俺は、自分の部屋に戻るとベッドの上に寝転がっていた。「ふぅ……。なんか色々あったなぁ……。まさか俺の中にもう一人の人格が居たとは……。」
と考えながら今日の事を思い返し、リディアと別れ際にキスをした事を俺は思い返すと……俺は急に恥ずかしくなり顔中真っ赤になってしまった。俺は落ち着くために目を閉じていると突然に部屋の扉をノックされる音が聞こえたので返事をする
「はい。」
と言うと扉の向こうから「リディアです。今入っても大丈夫ですか?」
と言われたので俺は急いで起き上がり
「どうぞ。」と言うと扉が開かれてリディアは入ってくると俺を見ると嬉しそうに笑みを浮かべて「リデアさ~ん♪」と言って飛び込んできた。俺は受け止めてあげようとしたが、あまりにも勢いよく抱きついてきたため……バランスが崩れて倒れてしまうが、それでもしっかりと俺を抱きかかえるリディアの姿が目に入り、俺は少し照れくさそうにすると…… リディアは「ねぇ……リデアさん?一つだけ私の願いを聞いてくれる?私……この日を待っていました。リデアさんは覚えていますか?あの時の言葉……。あの時から私はリデアさんが私の王子様だって思ってました……。そして今もその思いは変わってません。大好き。だから……私を貴方だけの物にしてほしい……。」
と、潤ませた瞳で見つめてくるのである。それを聞いた俺は……
『俺だけの物にしていいのか?この子は、この世界にたった一人の……リリスのお母様なんだよな?俺にとって大切な人でもある……。それに俺だって初めて見た時からこの人の事が気になっていた。それにリリスのお母さんだからなのかわからないが……。リリスと同じ感じもして懐かしいと感じる時もあったから……。俺にとっても大事な存在なのは間違いないはずだ……。それなら俺は……。リディアの事を好きになってもいいのか?俺にはリリスがいる……。俺はどうすれば良いんだ……。』
俺は、そう考えていると、突然に頭の中にある言葉が響いた。
(何を悩む必要がある?お前は俺が認めた最強の勇者であり、『聖獣王』だろ?なら、答えなんて出ているだろう。俺はお前が幸せになることを願っている。それにリリアが幸せになれば……俺も満足する。だがな……俺との記憶は消した方がいいかも知れねえな。俺はお前と出会ってから一緒に過ごした時間を思い出すだけでも嬉しい気持ちになっているんだよ。この世界を平和にした時にもう一度……会ってやってくれ。そしてその時にお前の想いを確かめればいいんじゃねーか?)
俺は、そいつの言葉を聞くと自然に笑みが浮かび、リディアを見つめると「本当にいいのか?後悔はしないのか?」と聞き直すとリディアは、満面の笑顔になり俺に寄り添ってきたのだ。そして俺に口づけをして……「リデアさん。リリスをよろしくね。」と言ってきた。
俺の心に残っていた最後の疑問は、この時消えた。そして俺は……
「俺で良ければ、喜んでお付き合いさせていただきます。こんな俺で良ければ……俺があなたを守ります。だから、幸せにできるように努力はするつもりだけど、あまり期待しないでくれよ。」
と言うとリディアは、
「ありがとうございます。ではこれからも末永くよろしくお願いします。」と言って再び俺にキスをしたのだった。
俺は今、リリスの所に向かう為の支度を済ませ、リナとリリアにリディアと一緒にリリスの元へ行こうと思っていた。すると突然に部屋のドアをノックされ「はい。どうぞ。」
と返事をすると入ってきたのは、俺が大剣を使う事を教えた女性剣士で元Sランクの冒険者でもある、リリアの母でもあり俺の妻でもあるリディアが立っていた。
俺は、すぐに立ち上がって、
「どうされたんですか?そんな格好で……。しかもそんな姿でこの家に来て良かったんですか?」とリリア達の方に視線を移してから質問を投げかけたのである。その服装とは、普段着ないドレスのような衣装に身を包んでいたからだ。
俺が、不思議そうな顔をして聞くとその問いに対してリディアは
「あら?リリア達の服が可愛かったので私も着替えたのですけど……。もしかして、どこか変でしったかしら?」と言うのである。俺は、慌てて首を左右に振った。そんな姿を見てリディアは不敵に笑うと……
「フッ。やっぱり……貴方らしいわね。リリスのところに行きましょう。準備が出来たら声を掛けてください。」と言うので俺は
「わかりました。すぐに準備をしますので、しばらくお待ちください。」
と言うと俺は自分の荷物を整理して必要なものを取り出すと部屋を出ようとしたのだが……俺の服を引っ張られ……振り向くと、リディアが微笑んでいる姿があったのだ。その手には……俺がいつも着ている鎧が装備されていたのであった。俺は「ありがとう。リディアのおかげで安心できたから、早く終わらせてくるな!」と言うとリディアに抱きつかれ……
「もう!私の旦那様は……。いつでも可愛いんだから。」と言われてしまい、そのままの状態で移動したのであった。
*
***
それから、数分後には……リディアが俺達を呼びに来ていたので、俺は二人と合流して俺達は城へと向かって歩いて行くとリディアが何かを見つけたように声を上げ「あ……。ごめんなさい。先に行かせてもらうわね。アース殿、リナさん、リリアさん…… 私達はここで待っていますので……。リリスの事、頼んでもいいですか?」と言いながら去って行った。その後姿を三人で見送り俺達が向かうとそこには既に大勢の騎士や冒険者達がいたのだ。そして、その先頭にいる人物はアルスの父親でありこの国の騎士団長でもあるオルクスであった。俺は近づいていき、話しかける
「これは、父上……どうしたのですか?まさか俺に話があるとか言い出すのではないでしょうね?」と言うと、
「はっはっは!相変わらずお前は厳しいな……。だが、今日は違う。お前達に紹介したい者がおるからな……。」
と言われたので俺は後ろを振り返るとそこに立っていたのは、美しい黒髪の女性と銀髪をツインテールに結っている少女で二人の容姿はそっくりな双子に見えるが違いが有った。それは、二人が黒いローブに身を包み顔が隠されていてわからなかったが……この二人はリリスに似ている気がしたのである。するとオルスは
「この方たちは、『暗黒竜使い』の異名を持つ……双子の魔導士のアベル様とカレン様だ。このお方は、闇ギルドの最高幹部でありこの王国内にいるはずの『魔王』の手先の一人の可能性があるので調べておったが……。今日ようやくわかったのだ。だから今日からこの国に滞在して貰う事になったので、仲良くするようにしてくれ。それと二人とも挨拶を……」と促すように言うとアベルと呼ばれた女の方が前に出て一礼してから自己紹介を始めたのである。
「皆様初めまして。私の名前は、リリア様にも言ったのですが……私は『聖魔道師・聖魔女(聖魔法+回復魔法)の力を持つ闇の力を司る者です。どうかお見知りおきを。私の事はこれからも呼びやすいように『マスター』『魔女姫』とお呼び下さい。」
と言って、また一歩後ろに下がった。すると次は、妹の方も同じようにして、
「はじめまして。リリス様にも申し上げましたが、私が聖魔道師の能力を持つ……聖女の『聖魔女』の妹である、妹君こと聖巫女で、こちらではカレンと名乗っております。姉と同じように今後は『聖姫』と呼んでいただければ光栄です。私も姉妹共々に今後共よろしくお願い致します。」
と丁寧に一礼して下がると最後に……俺を見て、
「私はリリス様にも申し上げたのと同じ内容となり、この度この国に滞在する事になりました、リディアと申しておりましたが、私の正体はこの王国の王妃でもありますので、以後リディアと呼ぶ事をお許しくださいませ。」
と言った後に俺に近づき小声で
「この子……少し変わった性格をしておりますが……気になさらないでいただけると嬉しいので、これからも仲良くしてやってくださいね。」と耳打ちしたのだ。そして俺は……
「わかりました。リディア様。俺のこともリデアと呼んでもらって構いませんので。それじゃリデアさん。早速だが案内を頼む。俺はこの世界に来たばかりで、まだこの王都の街にも詳しくないんだ。だから頼むな?」
と言うと俺は笑顔を浮かべたのだった。
するとリディアは嬉しそうに笑い……
「ふふ。そうね……。リデアさんが、王城にいなかった間に街も変わってしまったから、わからないことも多いだろうから私に任せてください。」と言うので俺はリデアに付いて行きリリスがいると思われる部屋へと向かったのであった。
* * *
***
それから俺は……リデアと共に、地下にある牢獄に向かったのである。リディアに「ここに……あの子が捕まって居るはずよ。リリス……無事だと良いのだけど……。それにしても……貴男って本当に凄いわよね……。こんな所にリリスを助けに行く為に自ら乗り込んでくるんだから。普通は怖がりそうなのに……。リリアさんの件もあるし……貴方が勇者として召喚された時は驚いたけど……リリスを助ける為だって聞いて……リリスも喜ぶと思うわ♪リリスはね……貴方の事が好きなのよ。でも、今はこの国を離れるわけにはいかないでしょ?それでずっと我慢している状態だけど、いつか貴方の所に行くと言ってくれていたからね。」と話すのを聞いて、俺は複雑な気持ちになるのであった。そして……俺が、リデアの先導のもと、リリスの閉じ込められている牢屋まで来ると中の様子を確認していたのである。俺はその光景を見た時……。リデアが、「あぁ……。なんて事なの……。やっぱりリリスは、貴方の事が本当に大好きだったのね……。でも……リリスに……こんな姿になって欲しくはなかったわね……。」と言ってリリスを見つめたのだった。リリスは、両手両足に鎖と杭のような物を打ち付けられ、さらに両目は、包帯のようなもので覆われ、目が見えなくなっているのだった。そして俺は、直ぐにリリスを抱き抱えて「もう大丈夫だからな……。」と囁くとリリスも安心したのか……涙を流して「あ……あああ……。ありがとうございます。ありがとうございます。」と何度も呟きながら泣き続けたのだった。それから、俺は「ちょっと痛いけど、もうしばらくの辛抱だからな……。待っていてくれ。今助けるからな!」と言い、大剣を抜き放つと俺はその大剣を振り上げて、その勢いのまま壁に打ち付けたのである。大剣の衝撃でその辺りの壁が崩壊していき俺は、そのまま瓦礫を大剣で砕いていくのであった。俺は、大剣をリデアに手渡し、
「俺が壊してもいいんだけど……一応ここの城の中だからさ……。下手なことをして、城をめちゃめちゃにしてリディア達に迷惑をかける訳には行かないし、何よりも……俺の愛する人が住んでいる場所だから……。リリス、もうすぐだからもう少しの辛抱だぞ……。リディア!この部屋の入口の方で待っていてもらえるか?」と言うと、
「ええ、分かったわ!リリスの事よろしく頼みます!私もすぐに向かうので……心配しないでくださいね?」と言うので俺は大きく首を縦に振る事で返事をして俺はまた壁を壊し始めたのだがすぐに大きな音に反応するように、奥の部屋から出て来た人物を見て、リデアに急いでこの場を任せる事にしたのであった。
* * *
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【お願い】
ここまで読んで頂きありがとうございました。もしよろしかったら、★評価をしてくれると助かります。感想などももちろん喜びます。皆さんの応援コメントはいつも読ませて貰っていますので是非とも宜しくお願い致します。m(_ _)m 突然だがこの国の最強騎士であり、『光の大勇者』の称号を持つアゼルバードがこの部屋にやって来る少し前……俺は城の奥深くに監禁されている少女の元へ行こうとしていた。少女は、リリアとリリスの母親であり、俺にとっては……とても優しいお母さんなのだ。俺は少女を救い出したいという想いが抑えられずにいたのである。俺達が歩いている通路の途中で、国王様の執事をしていた人物が、俺に声をかけて来た。
「お待ち下さい!!アデルバート殿下!!」
俺はその言葉に反応し振り向いたが……無視して再び歩き出そうとすると後ろから声が聞こえる。
「私はこの城の執刀医をしております……
『ザリウス・ハーデン』と申します。私に何か出来る事は御座いますでしょうか?」
「そうだな……。リリス達を頼んでもいいか?」
俺は立ち止まりザリウスに問いかける
「かしこまりました!!ですが……一つ条件が御座います。それは、先程この国に来て下さった、リナ姫の同行を認めていただきたいのです。それが、私からの条件でございます。」
「なに!?どうして……あいつも連れてきたんだ?まさか……この城に残していくわけにはいかなくなったとでもいうつもりなのか?」
「はい……。お怒りはごもっともでありますが……私としてもお嬢様の側にいてあげて頂きたいのです。それに……今回の『暗黒竜』を操っているのが『暗黒魔王』だという事が判明いたしましたので、その対処をどうするか決めなければならないのですよ……。」
ザリウスの話を最後まで聞いた俺は「そう言う事なら……わかった。リデアにこの話を伝えるように伝えておく……」と伝えると、俺は『転移魔法陣』を使い『暗黒魔王』の元に瞬間移動で飛んで行った。……
『暗黒魔王』の目の前に来るとそこには、既に俺とリデアが対峙していて『暗黒魔王』と激しい戦いを繰り広げている最中だったので、俺は二人の戦いを止めさせた。すると『暗黒魔王』は俺の顔を見るなり「お前が来ていたとはな。リデア殿、それに勇者もようこそ我が居城へ。」
と言って俺を睨みつけたのである。するとリデアが『暗黒魔王』に向かって、
「よく私達の前に姿を現しましたね……。覚悟は出来てるのでしょうね?あなたには色々と聞き出さなければならない事が有るので、一緒に来てもらわないと困るのよ。それと、貴方の相手は私じゃない……。私の隣にいる彼にしなさい……。貴方には……いい加減にこの世界に干渉するのをやめてもらうわよ……。貴方がこの世界を混沌に導こうとするのは勝手だけど……この世界で幸せになろうとする人を不幸にしようとするのは絶対に許さないから。」とリディアが言うと、
「ほう……流石は聖魔女と呼ばれるだけあって私の事をちゃんと見抜いているではないか。」
『暗黒魔王』は感心しているように話すと
「ふふ。まぁね……。貴方は、今まで私が見てきて一番邪悪な存在だったから……。」
「クッハハ。確かにそうかもしれんが、私は……自分の力を制御できずに苦しんでいるのだぞ? それに……この世界では、力がある者は、それに応じた責務を負うのは当たり前の事だろう?それを放棄した者に与えられる権利など何も無いのだ。違うかね?」
と自信満々な感じで言い切るとリデアが「その話は知っているわ……。だからと言って……関係のない人を巻き込むのは間違ってるわ……。」と静かに呟くとリデアは『聖弓神速』を構えた。そして……リデアと俺はお互いに構えをとると『暗黒魔王』を討伐しようと試みたのである。
* * *
* * *
* * *
******
「なぁリリス……今の話を聞いていて疑問に思ったんだが……君はどうして『リリス』という名前なんだ?」と聞くと
「うふふ……。そうね……。私はこの世界に来た時は、まだリリスという名じゃなかったのよ……。私は、この世界で生まれて直ぐに……捨てられたみたいなの……。それで……この国に保護されたみたいだけど……名前が無かったから……適当に名付けられたのよね……。」と話してくれたのである。俺は……
「リリス……俺が……君に名前を贈っても構わないかな?リリスっていう名前は……リリアの双子の妹だし、俺の中では特別なんだよ……。リリスには……本当の家族が居たんだし……この世界で、新しい人生を生きてほしい……。だから……。この世界で生きる為の新しい人生を送ってくれないだろうか?君の事は俺が全力で守るから……これからの人生……どうか……俺と過ごして欲しい。そして俺と……。」
「……はい。よろしくお願いします。」と言ってリリスも涙を堪える様にしていたのだが……涙を流したのであった。
「そろそろいいかしら?私達を忘れてない?この部屋に入った時から、ず〜っと見てたんだからね!全くもう…… アデルは……。リリスの事になると周りが見えなくなるし……。もう少し考えて行動してちょうだい!本当にもう……。リリス……もうすぐで助けられるから、ちょっとだけ我慢していてくれるかしら?」と言うと
「えっ!?お姉様……。はい……。あの方は……私の事を本気で考えてくれていて……。私なんかを……好きになってくれて……。私の為に命をかけてまで戦ってくれて……。そんなアデルバード様を信じる事にします。」
「分かったわ。それならよかった……。ちょっと痛いと思うけどもう大丈夫だから……。少しの間眠っていて貰えるかしら……。今ならこの薬を使う事もできるんだけど……。その身体のまま眠りにつくのが辛いようなら、このままの状態で眠る事が出来るようにしてあげるけど……どうする?」と聞いてきたので
「大丈夫です……。この痛みには慣れていますから……。お父様とお母様を助けてくれるのでしたら……私の事は何も気にせずに助けてあげてください。ただ……目が覚めた時に私の姿が変わったままになっていたりとかしたら嫌なのですが……。」と不安気だった。すると
「それは大丈夫だよ……。リリスに渡したペンダントに僕の加護を付けておいたから、僕と同じ様な見た目になる事ができるから……。だから……心配しないで……。さっきの話の続きだけれど……俺の妻になってもらえないか?」と言うとリリスの頭の中で何かが起きたようで、「えええぇぇー!!!!!!」と言うと顔から煙が出て倒れてしまったのである。そしてしばらくして目を開けたのである。
「ええと……ここは……どこなんですか? 私は……何をしてたんでした?あれ?私は確か……。
あ、そうだ!!私、この国最強の騎士に戦いを挑んだんでした……。私なんて相手にされないはずなのに……アデルバードさんは、本当不思議な方ですね。アデル様……お嫁にしてくれるのですか?」
「もちろんだよ……。」
「はい。ありがとうございます。こんな私を選んでくださって……。お気持ちはとても嬉しいです……。」と言って俺の手を握って来た。そして……俺は『転移魔法陣』を使い俺達が元々生活していた場所に帰ってきた。俺達が家に着くと既に、この国の最高戦力と言われる人達が待機してくれていたので、リリスを紹介して、『暗黒魔王』についての報告をしてもらった。すると……この国の宰相であり俺達の協力者でもある……リザリスが『リディア姫』と俺の婚約者を連れてやって来たので、『リディア姫』達に『リディア姫』とリザリスの母親の事を説明すると、リリスは涙を流しながら「お母さん……。やっと逢えた……。」と言い母親を抱き締めていた。俺は、『リリア』とリリスの三人を呼んで、これからの事を考えようとしていたのだが、リリアに
「リデア!!私達は先にリデルの元に戻ってるから……。リデルにこの話をしてきなさい。」
と言って、俺が連れてきた、リナ、ラミア、レイナと一緒に『暗黒魔王』がいる城に向かって行ったのである。そして……リナに「リリスが目を醒ます前に『ダークヒール』をかけてもらえませんか?」と言われたので……リナにリリスの治療を任せて、俺と『勇者』、『暗黒魔王』との激しい戦闘によりボロボロになっている部屋の掃除と修繕をする事になったのである。それから30分後……
『勇者』と『暗黒魔王』の二人が目を開けて……
「お前が、私達を倒しに来た『異世界の勇者』なのか……。私も長い事生きて来ているが……『魔王』を封印したのは……聞いたことがないな……。それにしてもお前の力は凄まじいな……。だが……残念なことに私達を倒せなかったようだな。まぁ仕方がない。」と言うと
「貴方も随分と強いですね……。それに……貴方からは、邪悪な魔力を感じませんでした……。一体貴方は、何者なのでしょうか?私の敵なのですかね?それとも……」
「ククク……。まぁ良いだろう。この世界に、私の味方は一人しかいない。まぁそれも……今日限りで居なくなってしまうだろうから……。」
「えっ!?」
『勇者』が驚くと同時に『暗黒魔王』が「リデア・ハーネット殿……。リディア殿の事は私が面倒を見させて頂きたい……。宜しいだろうか?」と言うと
「えっ?リデア?どういう事?」
と『勇者』が聞き返すと
「『暗黒魔王』……。あなたが何故その名前を知っているのか知らないけれど……この子は私の娘よ……。あなたには渡さないわ……。リデア、リリス……。この子も連れて行くのでしょう?なら、私はこの場を退くわ……。あなたにはこの世界の未来を見て貰わないと行けないからね……。それと……アデルは絶対に死なないから安心しなさい。」
とリリアは言うと……俺が『暗黒魔王』に剣を向けた。
「お前は、いったい何者なんだ!?お前には関係ないことだろ!?それに……この国の者達は俺が守らなければならない。リディアは絶対に渡しはしない。」
するとリリスが、
「あのぉ……アデル……様……。『暗黒魔王』は私が説得してみます……。リデアお姉ちゃんの言っている事が事実であれば……私も……『暗黒魔王』と『リデア』という人が一緒の所に居るのなら、安全かもしれません……。ですので、どうか……お願いします。」と言ってきたので
「分かった……。」と言うと俺はリデア達を送り出した。
「では……。リデア殿。リリスを頼みました……。」と言うと リデアは『暗黒魔王』の腕を掴み……「行きましょう。リデル……。まずは、あなたの力を確認してみたいわね……。」と言うと二人は姿を消したのであった。そして、俺は『聖弓神速』を使ってリデアを追いかけようとしたが、『暗黒魔王』に阻まれる形になったのだ。
俺が『暗黒魔王』と戦う為に剣を構えると『勇者』は俺を止めて、「リデアがリリスを安全な所へ連れて行くと言うなら……今は……見送るべきだ……。あの子がそう言うと言うことは、それなりの根拠があるのだと思う。それに、今あの子の元に向かった所で私達が勝てるとは思えない。」と言ってくるが、そんなことよりも、俺にとってリデアがこの国を出てしまったことが衝撃的過ぎて、どうすればリデアを助けられるのかを考える事に必死だったのである。俺と『勇者』は暫くの間対峙する事になったが……俺達は戦いを始めたのである。すると、そこに現れた人物が居たのであった。それは……俺の愛弟子であるレイラとレイルにセリーヌとセリスが駆けつけて来たのである。そして……
「師匠……。もう……いいんです……。」
とレイルが俺に声をかけてくれた事で、俺は我に帰る事ができたのだった。
そして俺と『勇者』とで、皆を守りながら……俺達が生活をしていた屋敷に戻り今後の事を考えてみることにした。俺は『暗黒魔王』の事や『魔人王』、『獣人王』、リリスのことなどを、レイラとセリスにも説明すると、「アデル……。リリスは大丈夫よね?」と言ってきていたが…… 俺はリディアに『ダークヒール』をかけながら、治療を続けていくと「アデル……。大丈夫だから……リリスの事は……心配しないであげて……。それより……リディアは助かるよね?」と聞いてきていた。しかし、その声が俺には届くことはなかったのである。そんな時にリナに呼ばれてリナの部屋に行ってみると、そこにはラミーとミレアドさんもいた。
「アデルさん……。」
「リデルは……。無事……だよね……。あのさぁ……ちょっとだけ気になってることがあるんだ。あの時僕が戦った相手ってさぁ……」
「その話は後にしてくれ!リナ。とりあえず今はこの状態をどうにかしないとダメだろう。俺達が生活していた場所に一旦戻ろう!」と言って戻るとそこには……セリカの姿がなかったのである。するとその時にリザリスがやって来たのだが
「アデル様!大変です!!お父様から緊急通信が入りまして……。この世界の終わりが始まります。」とリザリスに言われた俺は急いでリザリスと『暗黒魔王』の元に向かわなければならなかったので、俺は自分の妻に事情を説明してから、『転移魔法陣』を使い、『暗黒魔王』の元に向かうことにしたのである。
「リザリス……状況は?」
「リリス様とリディア様を連れて『暗黒神殿』に着き、現在は、リディア様のお母様にお二人の事を頼んでいるところです。そして、先程、リデアお姉さまから連絡があり、お母様をしばらく預かっていてほしいと言われ、こちらに参りました。リリス様の容態は大丈夫なのですか?」
俺の顔を見ると、心配そうな表情を浮かべていたので、「今のところは……。ただ……いつ目が醒めるかわからないから……心配で……。」と言うと、
「わかりました。それならば……私達はリデアお姉様の元へ急ぎましょう!!アデル様は、私が案内致します!!」と言ってくれるが、リザースが突然倒れてしまい意識を失ってしまうが……俺は『ホーリーヒール』をかけてみるが目を覚まさなかった。俺は『暗黒魔王』の所に転移すると、目の前に居たのはリリスだったが、リリスではなかったのだ。その姿を見たリザリスは「まさか……貴方は……『魔神族』ですか!?どうして、貴女達がここにいるのです!?ここは、我々が支配している場所ですよ……。それにしても、貴方達はいったい何を企んで……。」
「ふっ……。『魔王軍四天王』に『大賢者』、『光魔法士長』よ……。私の名前は『リリィ・ブラック・ウィッチ・オブ・ビーストキング』。そしてこの方は『暗黒魔王』であるリリス様だよ。お前達は、これからこの世界を闇で覆うために動き出してもらう。その為の準備は既に出来ているのだよ。これから……この世界に、闇の眷属を生み出し……我らに歯向かう愚かな種族共を滅ぼし……そして……。私の手でこの世界を支配する……。そしてこの私を裏切った人間も、この私を欺いたリデアも、この私を見捨てたリデルもこの手で必ず殺す……。お前達には……私に協力して貰わなければならない……。」と言うと
「ふざけないでもらえますか?リデア殿は、この世界で、貴方達のような存在を許せるほど心は広くありませんよ。」
「それに、貴方が私達に指示出来る立場なわけ無いでしょう!?貴方が何者かは知りませんが、私は貴方に従う事はないですからね……。」
「お前達が私に従ってくれればそれでいいんだよ……。お前達の命だけは、助けてやってもいいぞ……。私の目的に協力さえしてくれたら、な……。それに私は、リデアの知り合いなんだよ。私はお前達の敵ではないよ。」
と言うと、二人は動揺していたが、それでも従う訳にはいかないと言い出したのだ。だが、リリアは……
「リディアが……貴方の言葉を信用するはずがないわ……。」と言うが
「リデアがどうとか、そんな事は私にとっては些細な事なんだよ……。私は……私の目的を達成したいだけだ……。」と言い放ったのであった。俺はこの会話を聞きながらも、ずっと考え続けていたのである。
「俺は……」
「あ、リデア……。来たのですね……。」
俺は、俺を『暗黒魔王』が呼ぶのでそちらの方に顔を向けると……そこに居た者は、リリスと瓜二つの姿をした女性がいたのであった。俺は、この人が、リリスの姉なのか?と思いながら見つめていた。そして俺はリデアの方をじっと見つ続けると
「初めまして……。リデアの義理の妹のリリスと申します。あの……。私は、今……どういう状況なのでしょうか?私にわかる範囲だと、私もリデアもアデルも生きているようなのはわかっているので……とりあえず……アデル……ごめんなさいね。色々と迷惑かけちゃったわね。私ね……『暗黒魔王』と『暗黒神』は私と妹だと勘違いしてたの……。だけど……リリスはリデアが助けた女の子だし……私にリデアが会いに来た時にも居たからね……。もしかしたら、この子は、私の妹なんじゃないかと思ったら、やっぱりそうだったみたい。だから……私は……。」
「リデアの話を少しだけ聞かせてもらった。『魔人王』が復活して、君がこの世界の希望になったと……『勇者』のレイルが、その力を秘めている可能性があると言ってね……。だから、俺はレイラの事を……。」と言うと
「そうだったのね……。まぁ、この子については、私もよく知らないんだけどね……。ただ……なんとなくこの子と居るのが、懐かしくて、落ち着くのよね……。不思議な感覚でね……。」と言うと、俺は「リリスは……本当に『魔人王』の子供なのか?」と言うと
「うん……。一応……。『勇者召喚』によって呼び出されて、魔王にされかけたのを……私が、この子の身体の中に入って守ってあげてたから……。だから、私はリリスちゃんの母親のつもりでいるのよ。」と言うが
「それなら……何故……リディアやリデアが狙われるんだ?」と聞くと
「この子が私に似ているからじゃないかしら……。それにリディアさんはこの子の叔母になるからね……。『勇者』の血が流れている者を狙うなんてよくある話じゃないのかなぁ……。」というと
「『リディアの母親が、実は、その娘であるリディアの事が嫌いだったから……』って言うのならわかるが……。その……なんだ。そもそも、リリスの母親と父親っていうのは、この世界に元々いた存在なのか?」と俺は質問を続けると
「リデアの話だと、この世界にいるはずがないと言ってたけど……私に聞かれてもわからないわ……。」と首を傾げながら答えるのであった。
俺は……この人にリディアやリデアを守るように頼む事に決めたのである。俺達が屋敷に戻って来ると……既に、皆が戻ってきて、皆で食事を取っていた最中だった。そこに俺は戻ると、「リディアはどうなっているんだ!?」
「まだ、目は醒めていない。それよりも……。リデア、君は、『暗黒神殿』でいったい何があったのかを教えてくれないか?」と聞きながら、椅子に座っていると、「アデルさん!リディアは……大丈夫ですから、今はご飯食べて下さい!!もう!!そんな不安そうな顔をしていたらダメですから!!皆、元気でいて欲しいと思っているんですから!!さぁ!!早く席について!!」と言うとリナに背中を押し出されると、「おぉ。ありがとう。リナ。ちょっと……気が張りすぎていて……心配になっていたんだ……。」と言うと
「わかりました!!じゃぁ、私も隣に座りますから……何か話してくれないと嫌ですよ!!はい!!まずはご飯を食べましょう!!」と言うと俺の目の前に座ると俺の食べるスピードを確認し始めたのである。そして俺が半分くらい食べた頃を見計らうと
「今日はですね……。私が作ったんですよ!!味に自信はないけど……頑張って作ったんです。美味しいといいな。はい!では……あ~ん。」「えっ!?リ……リナ!?恥ずかしくないのかい?」と言うと
「大丈夫です!大丈夫です!リディアだってたまにこういうことするじゃないですか?」
と言うと俺は、「あっ……。それは確かにそうだが……俺も恥ずかしいな……。だが……。あーん。」と言いながらも口を開けた瞬間に、口の中にスプーンを入れられると、「う……うまっ!!これ、めちゃうまいよ!」と言うが
「よかった~!あ!じゃぁ、次いきますよ?」
と言いながらまた俺に食べさせてくれたのだ。それからは俺はひたすらに食事をして満腹になるまで、食事を楽しんだ。俺がお皿を下げようとするが、「片付けまでしなくていいですよ?」と言われたのだが……
「リナは……もう少し太っても……大丈夫だよ……。」
と言うと俺は……気を失ったのであった。
俺は、いつの間にか自分の部屋に居たのでベッドの上にいる事に気づくとすぐに部屋を出ようとしたら部屋の前にはメイドのセリカがいたのだ。俺は慌てて、「すまない。今、リザリスが来ていてね……。少しリリアとリザリスと一緒に出かけてるんだ……。俺は……今から……リディアが心配になってね……。悪いが……。しばらくしたら戻るから……それまでにリデア達にお茶の準備を頼みたいんだけど……お願いできるか?」と言うと
「畏まりました。すぐに用意いたしますので、アデル様は……食堂の方に行ってください。そこでリデア様達が待っているはずです。」と言われて
「助かるよ……。」と言うとリデア達の元に向かった。そして食堂につくとリデア達は俺が入って来たのを見つけるなり、嬉しそうに笑みを浮かべて
「リデア……心配をかけたな……。リリスにも……世話をかけてしまったようだな……。リデアの事を任せきりにしてしまって、すまなかった。」と言うと
「ううん。私は平気だよ。それより、私の方こそ……。私もリリィには色々と思うところはあるんだけど……。アデルも大変だったでしょ?でも……これからの事を考えて、この子は……。」と言いかけるとリリスは突然に泣き出してしまった。
「姉上……。僕はもう覚悟は出来ているんだよ……。僕の力は全て姉上に託したんだよ。これからは僕には出来ない事をして欲しい……。」と言うとリディアがリリスの手を取りながら微笑んでいた。俺は、その姿を見て「リリスは、やっぱり……。リディアの……」と言葉に出そうとしたがリデアが
「その先は……私に任せてくれない?これは私達姉妹の運命なのかもしれないから……。だから……リディア、貴方は私に少し時間を頂戴……。私は……私の役目を果たしに行くわ……。だから、アデルは私を信じてくれるわよね……。私……貴方の為に……。」と言いかけたがリデアはリリスの方を向き
「リディア……。アデルを頼んだわよ……。この子は……。アデルはこの世界を救いたいと心から願っているわ……。貴方の力も借りて……この世界を……。私は貴方達とは一緒に行けないの……。」と言うと リディアが悲しげに見つめながら「そんな事……。わかっているよ……。だからこそ、この子には……。」と言いかけた時に俺は、二人の会話を遮るように声を上げたのであった。そして……俺は……
「リデアは……何処に行くつもりなんだ?」
と真剣な表情で問いかけるとリデアは寂しそうに笑いかけながら「私にしか……この世界で出来る事は無いんだよ……。アデル。リデアも本当は行きたくないの……。」
と言うが、リデアの目を見て、嘘はついていないと感じたので……俺は「わかった。信じている。」と答えるとリデアはリリスを連れてどこかに行こうとしたが……
「姉上……どこに……行くんだよ?待ってくれよ!!一人にしないでくれ!!」
「大丈夫。私は必ず戻ってくるわ。アデアにこの子を預けるから、安心しなさい。」というがリデアの姿が見えなくなってしまったのである。そして……暫くすると、リデアが姿を現して
「私に何か用事があるって言ってたけど、何?」と言うとリリスは涙を流して「どうして!?何があったのよ……。なんでこんな事に……。姉上は『暗黒神』じゃない!!『勇者』の姉が『暗黒神』になるわけがないだろ!?」
リデアは、一瞬だけ目を細めるとすぐにいつもの優しい目に戻り「私が、リリスの妹じゃない事は知っていたでしょ?」
リリスは黙って下を向いてしまった。リデアは続けて
「私がこの世界の理を変える為に『魔王化』して……私と同じ『暗黒神』に成り下がる必要があったの。『勇者』の力を宿して『魔王殺しの魔結晶』を手にした『暗黒魔王』が復活すればこの世界のバランスは簡単に壊れてしまう……。『勇者』は、魔王を倒す者。この世界の平和は『魔王』がいなくなれば保たれる……。私が……『魔王』となってこの世界を守るしかないの……。リリスは……。私と違ってまだ……間に合うの……。リデアは『暗黒神殿』の奥に封印されていた魔剣を手にして『勇者』から魔剣に変わってしまった……。もう……この世界に『勇者』はいらない……。『暗黒神殿』の奥に眠る『魔王殺し』の魔結晶さえ手に入れれば……。」
リリスは涙ぐみ、必死に耐えていた。リデアは続ける。
「『勇者召喚』を行う際に、私とリリスの魂の一部を切り離してリリスの中に封じ込めたの。」と言うとリデアはリリスに歩み寄り抱き締めたのであった。そして……「この子ならきっとリリスの変わりにこの世界を変えてくれるはず……。」と言うと俺達は屋敷を出て、『王都』に向かい出発したのである。リディアが
「私達が居なくなって、この屋敷は大丈夫なのかしら?」
と疑問を投げ掛けてきたので、リデアが答える。
「多分だけど……。アデルがいれば大丈夫だよ。それにリディアさんも……リリアさんも……屋敷に戻って来ると思うから……その時はまた楽しく暮らしていけばいいじゃないかな?」
と微笑みながら言うとリディアも
「リディアが居ない間は……私達がお守りいたします。リリス様。リデアさん。」と言うと
「えっ!?ちょっと……。アデル!!何よそれ!!」
と頬っぺたを思いっきり膨らませていたが俺は「いやぁ~、なんか二人に呼び捨てされるの変な感じだったから……。駄目だったか?」と言うとリディアが慌てて、顔を赤くしていた。そんな様子を見て俺とリリスも微笑み合っていた。俺は、そんな皆の様子を見ながら、「そうだ!忘れるところだった!!俺はリデアの事を信じるよ。でも、どうして俺の為にそこまでしてくれるんだい?」と聞くと
「えっ!?いや……。アデルは、私を助けてくれた恩人だから。その……。」と言いかけるが
「あっ!そ、そうなのよ。だって、アデルには、その、命を助けてもらったんだもん。その恩は……返さないと。」と照れくさそうにしていると
「まぁ……。そうだよな。俺は、君達が困っていたから助けたいと思って助けたんだし。気にしなくて良かったのに……。リデアは……。本当に俺の事好きなのか?」と聞いてみたのだが……。俺の問いを聞いたリデアが急に固まってしまい。リディアが不思議そうに
「リデア?どうかしたんですか?」
「な、なんでもないよ!!なに?リデアがどうかしたの?」
「えっと……さっき……。『アデルの事……大好きよ。』と小声で……。」
と言うと今度はリデアが真っ赤になりながら、
「リディア!!聞こえてないわよね?私の口からは……。」と言うが、
「うふふ……。どうでしょうね?でも……今のリデアはとても可愛いですよ。私達の前では、いつもの格好良いリデアもいいのですが……やっぱり女の子らしく可愛らしい姿の方がいいですよね?ね、リリスちゃん?」と言うと突然話を振られたのと恥ずかしくて俯いている姿があまりにも愛しくて俺は思わず頭を撫でながら抱きしめるとリリスまで抱きついて来て三人仲良く抱きしめ合いじゃれて居たが暫くしてから落ち着いてきた頃に改めて王都に向かう事を伝えると、二人は俺の手を握って付いて来てくれる事になった。そんな事をしているとあっという間に時間は過ぎていったのである。…… 私の名前はアリシア・オードブルと言いますわ。今年で16歳になる私には兄がいるのですけど、私にとっては憧れの存在でもあり目標でもあるのですわ。何故なら私はこの世界でただ一人の王族であり王位継承権を受け継いでいる方だからです。そんな凄い方が目の前に居られるのですわよ!?こんな事他の人達には言えないですわよね。この国では王女であろうと王位継承権のある方であっても、国王様の許可がないとお会いすることも難しいの。それは私が特別扱いされているわけではなく、この国が身分制度に縛られているからだわ。そして私の婚約者はこの国の第一王子で次期王様なのよ。でも……あの方の事を悪く言わないであげてほしい……。確かに、とても素敵な笑顔をお持ちの優しい方なのだけれど、この国に蔓延する奴隷制度の問題に心を傷めておられていて、毎日悩まれているのだもの……。
私も、お母様のように優しくて強い女性になりたいと思っているの……。でも、私には何も無いの。だから……少しでも役に立てるように、勉強も頑張って魔法も頑張っているんだけど……なかなか上手く行かないのよ。だから、いつも、つい考え込んでしまうのよね……。この国は自由を求めて旅をしている『冒険者』と呼ばれる職業の方々を国から依頼を出し支援をして報酬を与えているの。だからこの『王都』には多くの旅人が訪れています。『冒険者ギルド』は、その街一番の大きさを誇る建物なので、多くの人が出入りしており活気があって楽しい場所よ。私達王族の子供達は10歳を過ぎた頃から『王都学園』に入学して将来を担うに相応しい教養を学ばなければならないのですが……。残念ながら私の通う予定の貴族学校はまだ開校していませんので入学はまだまだ先になる予定よ。貴族学校に入学するのは10歳以上からしか入学出来ないの。でも……。私達兄妹は、この学校を卒業しなければなりませんでしたの……。なぜなら私達の妹が病気に掛かっているからなの。私達家族にとって、大切な妹で、私も子供の頃からずっと一緒に育った妹なの。そして……私も、この子も……。王家の血を引いていますの……。
「私達姉妹が……。『勇者召喚』を行い……。この世界に来て頂き、この世界を救ってもらうのです……。」と言うお父様の顔色は悪かったの……。無理もないの。私だって不安だもの……。それに、私はお城から出たことがない箱入り娘で……この世界がどんな風に変わっていくのかさっぱりわからないのよ……。そして私達に選択の余す所はないのです。もし……この世界で『勇者』様に見捨てられてしまえば……私達の生きる術はなくなり……私達は死んでしまうわ……。だから……。私は『勇者』にお祈りをしなければいけない……。お願い……。私達を見捨てず……。私の妹の命を奪ってしまわないようにお願いします……。そう祈っていると……。
「『魔王』を倒しに行こう……。俺ならきっとできる。俺を信じろ。俺が……お前の妹を助ける……。」
そう言ってくれた人がいた。私の妹の名前を呼んでくれた……。私も……私も……貴方の力になってあげるわ!!絶対に……。
俺が『王都』に着いて最初に訪れた場所は、俺達が住んでいる屋敷から一番近い位置にある『商業ギルド』であった。この世界には大きく2種類の商売方法があるらしく、一つは『生産者』の集まりによる物作りの商品を販売する方法で『販売品』と呼ばれる。そしてもう一つが『商人』と言われる人々による物を売る方法である。『商業ギルド』は『職人』と『商家』の両方の仕事を受け持つ組織になっている為『職人』は勿論『商家』にとっても重要な機関である事は間違いないのである。
『王国騎士団』の人達と一緒に来た俺達は、『冒険者』として『討伐クエスト』を受けて欲しいと言われ、俺はこの世界の常識が分からないから断ろうとしたのだが……。俺は既にリデアから、こっちの世界の通貨も受け取っていたらしく『ギルド』にある『銀行口座』にも『貯金』があるらしくお金を引き落とす事ができるのである。そして、『ギルド』の職員さんに教えてもらい『王都支店』の受付嬢に事情を説明し手続きを行うと俺はこの国の通貨が記載された『カード』を手渡されたのである。どうやらこのカードは『魔結晶』を加工して作られており偽造が出来ない優れものだそうである。しかし……これはあくまで仮発行のカードの為使用出来る金額は決められていたのである。
そして俺の所持金はと言うと……金貨30枚……銀貨1枚銅貨3枚の残高であった。この世界は貨幣価値が同じくらいのようで分かりやすかったので良かった。ただ……気になった事がひとつあった。
『王国騎士』達が言っていたのだが……俺はリリスとリデアに守られて逃げて来たらしい。しかも『王国騎士』が言うには俺は『転移門』を通り抜ける際に意識を失っていたようなので俺自身がどうやってここに来たのかがさっぱり理解出来なかったのだ。そして俺には『加護』や『祝福』、『呪い』や『魔法攻撃』等の効果を全て跳ね除ける力があるので、リデアやリリアさん達と同じ様に俺に危害を加えることは出来ないと言っていたが……どうも怪しいのでリデアとリリアさんも連れて来て貰おうかと思ったが…… 今はそんな時間が無いし、そもそも二人とも用事があり出かけていて不在だったのだ。仕方がないので……この三人で行動する事にしたのである。そして『魔物の生息地』まで馬車で移動する事になり『護衛クエスト』を受けることにしたのだった。俺は、まずは二人のレベルを知りたいので確認したい事を聞く事にしたのだった。
「なぁ……。二人共。聞きたい事があるんだが良いかな?」と言うと二人が嬉しそうに俺の方を見てくると、俺はそんなリデアに少しだけ微笑みかけてからリデアの手を握ってあげると顔を赤くしながらも笑顔で握り返してくれたのが嬉しかった。するとリデアが恥ずかしそうに
「アデルから話しかけてくれるなんて珍しいわね……。嬉しいから聞いて上げる。何でも聞いて良いわよ!!」
「あぁ……。ありがとうな……。実は……『ギルド登録』の時に言われたのだが、君達二人は俺の婚約者らしいな……。」というと二人はお互いに見つめ合って「うん!!そうだよ!!私とアデルは婚約者同士だよ♪」「ふふふ……。リデアったらはしゃいでますね。でも、そうなんですよ。私は……貴方の『婚約者』なんです。うふふ……。改めてよろしくお願いしますね。私もリデアと同じようにアデルと呼んでも良いですか?」
と聞くので、俺は
「もちろんだ。俺は……二人の事をリデアとリリスと呼び捨てにさせてもらえないか?俺にとって二人は特別な存在だから……。その方が俺も気が楽なんだ。」と言うとリデアとリリスは二人で手を繋ぎ、俺の手を取り、
『はい。わかりました!!』と言って俺の手を握ってくると……。何故か俺の右手には指輪があったので左手に変えようと思ったのだが既に俺の指には嵌まっていたのだ……。
しかし何故こんな事になっているのかさっぱり分からなかったし、どうしてそんな物が勝手に装着されているのかが理解不能である為『ギルド』に戻ったら早急に対応して欲しいところである。まぁ……今はそんなことより大事な話をする為に本題に入ろうとすると突然馬車が止まってしまったのである。何かが起きたに違いない。
「おい……!!貴様ら……。ここで何をしている!?ここは我ら『王都騎士隊』が警備にあたっているはずだぞ。それなのに何故お前達はこんな所で油を売っているのだ。それに……この女どもは、お前達の仲間ではないだろう!?」と言う『王国騎士』に対して俺が反論しようとしたその時、後ろから声を掛けられてしまい言葉に詰まると、その隙に馬車の中に入ろうとしてきた『王都騎士』を『魔法障壁』で押しとどめる事が出来たが……。俺は突然背後に現れた人物の気配を察知し、後ろに振り向くとそこには見たことがある少女の姿が存在した。その少女を見た俺は思わず驚き、リデアとリリスの方を見てしまった。しかし、そこに居るはずの少女は消えていた。その少女の名前は『ラピス・フォン・グランツ伯爵令嬢』といい俺と同年代の貴族のお姫様であり『貴族学園』の同じクラスの同級生でもある美少女で……『貴族学園』での成績は優秀でありながら……常に俺の事ばかりを気にしてくれて、俺の為にいつも尽くしてくれる大切な親友の一人なのだ。
そんな『ラピス』は、この国の王女である『フローラ女王陛下』の妹でもあり、国王である兄を支えながら『王位継承権第二位』の地位を持っているのだが……。
俺は、この世界に来てからは『冒険者パーティー・オールブルー』に所属している為あまり会う事も出来なくて、『勇者召喚の儀式で呼ばれた異世界の青年達を守る為に一緒に戦ってください』と、ある日『冒険者ギルドマスターのレニから直々に頼まれて俺は断れなくて……。
それから、俺は毎日忙しく動き回っていて……『ラピス』との付き合いも少なくなっていたが……俺に手紙を送ってくれるようになったし、最近は『ラピス・フォロン侯爵令嬢』と名乗る女性が会いに来る事もあったので俺は、すっかり彼女の存在を頭の中から消してしまっていたのだった。まさか彼女が俺に会いに来ていたとは思いもしなく…… 彼女は今『勇者』の力を使ってここに現れたのか……それとも『ラピス・フォン・グランツ』という本名を名乗り『貴族学園』に通い始めたのかは分からない。だけど、俺が『勇者召喚』の関係者である事がバレてしまえば……間違いなく命を奪われてしまうだろう。それだけは何としても避けなければいけず、俺は必死に思考を働かせると……。とりあえず『ラピス』と俺の関係は『幼馴染』という設定にしておいた方が良いと結論を出し、 彼女に俺が『王都騎士』達の馬車の前に姿を現した理由を説明すると、『王都騎士』達は『ギルド』の職員を呼び俺達を連れて来てくれたのだが……そこで俺は職員からこの国の『王城』に招待状を貰ったのだが、『貴族』と顔見知りになると後が大変だと思い、断った所『王都』での滞在を一週間延長するように言われてしまい、更には『護衛』を付けると言われたのである。勿論それは拒否してやったが、『冒険者カード(ランクS)の冒険者カードを所持している以上俺達に喧嘩を売るつもりなのか?』と言ったらすぐに了承されたのだった。どうやら『冒険者』と揉め事を起す事は、『王都』の治安悪化を招く原因になるようで、下手したら『ギルド』から罰則が言い渡される事になるようだ。
俺としては『王国騎士』達と行動を別にしてもらいたかったのだが……。そうも言ってられないような状況になってきていた。『王国騎士』達の背後に黒い渦が出現しその中から無数の魔力弾と、炎のブレスが飛んで来たからである。どうも……『盗賊団アジト』の近くに『魔物の生息地』があったらしい。そして『討伐』に向かったが返り討ちに遭ってしまい『魔物』に喰われそうになったところを、なんとか逃げて来た『王都の騎士』達が助けを求めて来た為、仕方がないので俺達は馬車の外に飛び出すと、『討伐クエスト』を開始する事にしたのであった。
俺は『魔王軍四天王』の一人である『リリア』と、戦う事を決意したのだ。俺はリリスに、この場を任せると、『王都』に向かって駆け出す。すると目の前には……突然リリアが現れて来たのである。しかも彼女は既に俺に向けて攻撃を仕掛けてきていたので、俺は剣で攻撃を受ける事にしたのである。俺は『闇の神』と融合したリリスに勝てるかどうか自信はなかったが……ここで立ち止まるわけにはいかなかった。なぜなら……リリスは『リリア』に乗っ取られている可能性が極めて高いと推測していたからだ。俺はリリスとリリスの肉体を奪い取る能力でリリスに憑依しているリリスの魂だけを分離し……『リリス』として復活させる方法を探そうと考えていた。しかし、その方法がわからない以上……まずはこの状況を打開しなければならないと考えたのだ。俺は覚悟を決めると……剣に力を籠めると一気に勝負を仕掛ける。
俺の攻撃はリリアにあっさり受け止められてしまって、次の瞬間……俺が握っていた剣が宙に舞い地面に落ちていく。そして俺は『闇の波動砲』が直撃し吹き飛ばされたのである。俺が立ち上がり構え直すとリリアは余裕の笑みを見せてきた。そしてリリアの口から出た言葉を聞いた俺は動揺を隠せなかったのであった。
「うふふふふ……。アデル君?貴方には本当に失望しましたわ……。私達が貴方をこの世界に呼び込んだと言うのに……。貴方はリリアや私に何の言葉をかけるどころか、助けてくれなかったですもの……。」
「……リ……リリリリ……リ……リス!?お前は……いったい!?何を言っているんだ!?俺には意味が全く分からない……。俺はこの世界で生まれて育ったんだぞ!?」
「え!?うそ……。だってアデル君は、元々地球っていう世界の人なんだよ……。私はリリスだよ?貴方の妻のリリス・エルロン・グランシア!!私はアデル君の事が好き過ぎてアデル君に私の事を好きにならせたくて『闇属性』の魔法の力で自分の記憶を変えていたんだけど……どうしてかな……?どうして思い出せないんだろうね……。」
と寂しそうな表情を浮かべて悲しそうにするリリアの顔を見て……俺の中で疑問が膨れ上がってくる。リリスは……何故俺に『嘘の記憶』を流し込んでまで俺と仲良くしようとしていたんだろうか……。
俺は今までリリスを信用してきたつもりだったが……。リリスと過ごした日々を思い出そうとすればするほど……何故か頭の中がモヤがかかる感じになってしまうのだ。しかし、今は考え事をする時ではないと思い、気持ちを引き締めて俺は戦闘体勢に入った。俺はリリムを鞘に納め腰に差したままリリアと向き合うと『ダークネスオーラ!!』を発動させて自分を強化すると『魔闘気』を纏い攻撃に備える。そしてリアナとラティナは、二人の援護に徹してくれる。俺はラティナに「ラティナ!リリアムの側にいる『聖女候補』達を頼む!」と叫ぶと、すぐに返事があり、「分かった!!」と言ってくれると俺達は二手に分かれてそれぞれの任務を開始したのである。
ラティナと分かれて、しばらく歩いていると見慣れた顔の少女の姿を確認する。俺達の仲間の一人で俺と同じクラスの同級生であり、親友である『ソフィア』だ。彼女の名前は、ソニア・ソフィアと言い、『グランツ伯爵領』で伯爵の娘であり『ラティス・フォロン』と名乗っていて……。俺はラティナの件もあるし……。
「ラティナ!!ラティスーー!!待ってくれ!!ラティナ!?どうして!?俺はお前を助けたかっただけなのに……。それに、お前の正体を教えて欲しい!!お前が一体誰で何を企んでいるのか!!俺は知りたい!!教えてくれないなら……力ずくでもお前の口を開かせるぞ!!だから答えろ!!お前は……ラ……ラティー……」と叫んだ瞬間……俺の声は途中で遮られてしまい、何者かに背中を刺されて俺はその場で膝をつき崩れ落ちて意識を失ってしまったのだった。
『勇者召喚』の儀式が行われた日の翌日……俺は朝早く目を覚ました。そして起き上がると部屋の外に出る。昨日の夜は色々あって眠れなくて疲れが取れてなかったが、今日は学校に行く日である。そしていつものように身支度を整えている時に突然部屋に入って来た女性によって俺が持っていた制服が消え去り別の衣装に変わったのである。俺は慌てていたのだが、彼女は無言で去って行き、俺は仕方なく用意された着替えに袖を通すしかなかった。それから数分後に、メイド服を着た女性が現れて俺に食事を出す。俺は黙々と出された食事を食べ始める。俺はこの状況に戸惑っていたが……それでも出された物は残す訳にも行かず、朝食を終える。そして彼女は食器を下げるとまた部屋に入ってきたのである。その時彼女は初めて声を出したのである。彼女はリリスと名乗る。
俺を拉致して『勇者召喚』を行った国のお姫様だという事だ。俺は当然反発したのだが……『魔王軍四天王』である『四覇将』が攻めて来て『魔王』が復活したという話をリリスから聞かされると……俺は何も言えなくなったのである。
俺の『魔力量』が異様に増えていて、俺はリリムの力を受け継いでおり……。俺と俺の魂を同化させた『ラティナ・グランディア侯爵令嬢』という少女は……この国にとって脅威になる存在だと告げられたのである。
リリスがいう『四覇将』とは……リリアともう一人の男と……あともう一人は分からないという。『魔族』が使う『魔法』は『精霊魔法』というらしく、『魔力変換』というスキルを持つ者は……魔法を使う事が出来ない。つまり、この『異世界転移』という世界では魔法を使って攻撃する事が出来るのはその者達だけだという事になる。その者とは……リリィさん達なのだが、この世界の人間はそもそも魔法を使うことが出来ないのであった。なのでリリスは、その『魔族の四天王』達と戦う事になる俺の力になってくれると言う。俺は『リリアス共和国』で手に入れた剣を使いこなせるようになっていたので、『剣聖技』を扱えるようになれば何とかなるだろうと自分に言い聞かせていたのである。そんな時リリスが俺の『固有技能』に目覚めさせる為に……キスをしてくる。俺が拒否しようとすると……リリスが「貴方が『魔王』と対峙できる程強くなる為よ」と言われてしまったので、抵抗を諦める事にした。
こうして俺は『リリス・フォン・グランツェイン・アルザードス・ファランシア』という女性と『婚約者同士』になる事になったのだった……。
『リリスと正式に『婚約者関係』になってから数日後……俺は王城にある図書室に入り浸っていた。俺は暇があればここに来ている。そして本を読み耽っていたのだ。そして俺はこの数日で起きた事を思い出してため息をついた。
俺の事をリリスは心配してくれていたが、この数日間に色々な出来事があったのだ。俺は王城に軟禁されている状態だったのだ。それはなぜかというと……俺にはこの『王国』にとって『害悪』と判断されかねない『能力』を持っているからである。俺の『剣聖の才』は……『聖属性』と相性が悪いらしい。俺とリリスは……同じ剣で打ち合ったのだが……『闇』と『聖』がぶつかり合い、俺は吹き飛ばされたのである。リリスも無傷ではなかったが……『聖属性』で傷はすぐに癒えるはずなのにリリスに回復の兆しが見えず……。『光』によるダメージで気絶しただけであった。
俺は、あの『魔王軍四天王』である『四天王最強の男』と戦って勝っているのだが、俺はこの世界ではまだ一度も『魔王軍』と対峙していないのに『魔王軍四天王最強』とやり合ってしまったのだ。リリスは俺を庇い大怪我をしてしまい、その日からリリスがずっと寝込んでいた。リリスの話では、『四天王』には他にも強い奴がいるかもしれないから用心しないといけないと言う話になった。そして俺には……ある疑惑がかけられた。それは……俺がリリスと本当に愛し合っていたかという事だったのだ。俺にはリリスに対する記憶がない……。俺はそれを言ったのだ。すると……リリスは「そうですか……。」と寂しい顔をしたが、「貴方を騙すような事をしていた私を許して……。貴方を愛しているというのは私の偽りない真実……。貴方がもし許してくれるなら……私はこれから貴方に尽くします。どうか……信じて……。そして私の側に居てください。お願い……。」と言って俺の胸の中に飛び込んで来ると涙を流しながら……「ごめんなさい……。貴方に迷惑をかける気はなかったの……。貴方は私のせいで……。でもね……。私の命を救ってくれたのは貴方なんだから……。貴方には幸せになってもらわなくちゃ困るの……。私には貴方が必要なの……。貴方には『聖属性』の力が備わっていると私だけが知っていたの……。でも貴方には教えなかった……。貴方を騙して『勇者召喚』の儀式を行ってしまったけどね。ごめんなさい。アデル……。」
リリスの言葉を聞いて俺は動揺してしまった。なぜ俺にそんな重要な話を今まで秘密にしてきていたのだろうかと疑問を持ったからだ。そして俺はリリスがどうしてここまで俺の事を好きになっているのかが分からないのである。俺は確かに記憶がなくなる前よりは、今の方が好きだと思っている。だが……俺はリリスと恋人関係にあった訳ではないし、友達以上の存在でもないと思っていた。俺は自分の考えを正直にリリスに伝えたのだが…… リリスは悲しそうな顔で微笑むだけだったのである。
それからというもの俺はリリスとよく一緒にいるようになり、二人でいる時間が圧倒的に増えていった。リリアとの事も思い出せない俺としては……このままでいいんじゃないかと思うようになっていき……。いつの間にかリリスに惹かれていくようになっていった。そんなある日の事である。『リリア共和国』から連絡が入り……俺達は、すぐにリリアのところに行く事になったのである。
俺はラティナの事が気になっていた。『魔王』が蘇ったのであれば、ラティナは無事ではないのではないのだろうと思っていて、ラティナを一人で残してきたことを後悔したのであった。そして俺は急ぎ『魔装』のバイクに跨がり急いで向かったのである。そしてラティナと合流する前にラティナから「兄貴が助けてくれていると思うんだよね……。私は大丈夫だから……安心してほしいのにゃ……」と念話が飛んできた事で俺は一先ず安堵する事ができた。
それからすぐに俺はラティナと合流した。『リリアス共和国』に辿り着いた俺達は……俺が『四天王最強』との戦いの際に手に入れた力の『鑑定』をする為にリリスの屋敷で儀式を行う事にしたのである。リリスが言うには……この世界の人達が持つ『スキルレベル』を遥かに超えた力を持つ俺が使う事で何かしらの異変が起きる可能性があった為である。リリスはこの国のお姫様だとしても、『グランツ伯爵領』や『アルザード侯爵領』の者達のように簡単に手出しできない立場にいるのだとか……。リリス曰く「私がいくらお父様の娘でも、私自身の存在がこの国にとって脅威になってしまう可能性はあるの……」と言われた。俺とラティナはその言葉を聞いた時に……自分達がいかに危険な存在なのかを理解して身震いした。俺は……この世界で自分がどれだけの強者であるかを自覚しなければならなかった。
そして俺達が『勇者召喚』で呼び出された場所に到着するが、そこにはすでに人の姿は見られなかったのである。そこで俺の『魔力探知』を使って探したのだが……やはり誰もいなかった。どうなっているのだろうかと俺とラティナが困惑していると、リリスが俺とラティナが出会った時のような黒い仮面をつけた状態で現れて、「これは『結界魔法』の一種で……特殊な条件でしか出現しないのよ……。そして、もう既に『勇者召喚』の術式自体は発動していて……その術式は……『魔王』の復活によって『召喚の間』に戻されてしまったみたいね……。残念だけど、今の私たちの力でどうにかできる事じゃなくなったのよ。」
俺は「それで俺達の力は戻ったんですか?」とリリスに問いかけると……リリスは難しい顔をしていたのである。リリスがいうには、一度俺の力を『封印した状態』でもう一度、リリスの『固有技能』を使う必要があり……俺の魔力は一時的に使えなくなるというのだ。リリスはラティナにも説明をしていた。ラティナは「う〜ん……。私には良くわからないけど……。ラティス様は凄いって事なの?ラティ様の魔力が無くなってしまうなら……それを取り戻す方法を考えれば良いだけの話じゃない。ラティ様には私が付いています。心配しなくて大丈夫ですよ。」と言ったので俺は少し感動していた。こんな俺を信じてくれる人が居るだけで救われた気がする。そんな時リリスは「ふっ。貴方達二人には本当に敵わないわ……。そういえば、あの『四覇将』の一人が使っていた武器……貴方達も使っているでしょう?あれは『魔族』の作った『魔法の杖』でね……。その者の魔力と適合していないと使う事が出来ないと言われているわ。『魔法付与士』の『魔族』も『魔法石』を作る時に失敗してしまい……暴走させてしまった結果、その『魔法石』が魔物化した『魔法生命体』に変貌してしまった事があるの。その『魔法生命』が作り出した『武器』は『魔王』が生み出したと言われていて、それが……その武器なのよ。」と衝撃的な事実を聞かされたのである。俺が「ちょっと待ってくれ……。まさか『魔王軍四天王』の『剣聖』という男と『魔王』は……。」と言うとリリスは首を横に振りながら
「えぇ……。貴方の考えている通りよ……。この世界を混乱させている『大災厄の魔王』と『四天王最強』は同一人物よ。ただ、今から話す話は、あくまでも仮説なのだけれど……この世界に突如出現した巨大な迷宮……。そこから出てきた化け物が、『大災厄の魔王』であり……『四天王』を従わせる存在なのではないのかと噂されているわ。そして、この世界に現れたのが……貴方達が遭遇したという『異世界の人間』だという事。この話を聞くと私の中では辻つまが合うのだけれど……。」
リリスの話を聞き俺は絶句してしまう。俺は……『剣聖の才』を受け継いでいた。つまりは『異世界の勇者』ということになるが、そんな事など全く聞いたことがない。しかし『勇者召喚の儀式』を行ったリリスが嘘を言うはずもないと思った俺は「わかりました……。とりあえずその話を信じるしかないようですね……。」と返事をしたのだった。俺達は王城に向かい、王に会うと、俺とラティナの力について質問をされたのである。リリスは、リリア王女としてではなく、一人の研究者であるかのように振る舞い、王の前で堂々と答えていった。俺も、その隣に立ち同じ研究仲間であるかのような態度を心がけながら王に答えたのである。王は納得はしてくれたが、「『勇者様御一行』はどうなさったのだ?」と質問をされ俺とラティナは黙るしかなかった。俺は『剣聖』が使った『転移陣』の場所を伝え王城に案内するように頼むと、ラティナと俺はすぐにリリスの研究室に向かったのだった。そして俺が手に入れた能力の『ステータスプレート』を確認すると俺は驚き声を上げそうになるのを堪えたのである。
【名 前】
アデル 【年 齢】
18 【身体特徴】
身長180cm 体重72kg 髪色 銀 目色 紫 肌の色 白 体型 細め
・筋力(力):Aランク相当※SS−級の冒険者に匹敵する
※但し、攻撃にのみ特化した場合に限る
体力 :S−ランク
敏捷性 S-ランク 集中力 :S−ランク 【特殊技能】『勇者』『全言語翻訳』『アイテムボックス』『聖剣術Lv8』『瞬撃』・『魔力感知』・『聖属性魔術』
(聖属魔術のスキルレベルが上がり聖属性の魔術を覚えたようだ。それと『聖槍』や『聖斧』といった聖属性の力が宿る『アーティファクトウェポン』の能力を完全に把握できたようだ。だが……。これ程まで強力な力を秘めた武器を俺は今まで知らなかった。一体俺は今までどんな戦い方をして生きてきたのだろうか?)と考えながらラティナに「ラティナは俺が倒した男の人を知っているんだよな?」と言うと
「うん……。『大災厄の魔王』に洗脳されて『大魔司教』を名乗っていたんだけど……最後は自ら命を断とうとしていた時に……私が止めようとしたけど止められなくて……。でも……最後に彼は笑って消えて行ったんだよね……。私の事を気にしないでくれって……。それから……私は彼に恋をして……彼と恋人になりたいって願ってしまったの……。それから私と『リリア共和国』を守って欲しいってお願いしちゃったんだよね……。ごめんなさい。兄貴の事だからそんな私を怒ったりなんてしないよね……。私が悪いのに……。ラティスさんも怒ってもいいから……」
ラティナは泣きそうな顔になり俺を見つめていると俺は頭を撫でた後に、優しく抱きしめるとラティナが安心したように笑顔を見せた後……涙を流していた。俺はラティナが落ち着くまでの間……何も言わずにラティナを慰め続けていたのである。しばらくして落ち着いたのか、涙を拭いながら俺から離れてくれたので俺は「ラティナ。大丈夫か?」と聞くと「大丈夫。ありがとうね。」と言って微笑んでいた。
俺が手に入れた能力の中で、この世界では誰も持っていないと思っていた能力を俺は手に入れたのである。それは『勇者の才』であった。俺はラティナの方を見ると「なぁ……。『勇者の才』って知っているか?」と尋ねると「うぅん。知らない……。兄貴だけが使える力だと思っているけど……。それにしても凄いね!!やっぱり兄貴って最強なんだね!!」
と目を輝かせながら喜んでいた。俺は『鑑定魔法』で確認しながら説明する。
《鑑定結果》
名前:アデル・グランツ
LLV999(限界突破MAX状態)→LLV1000→LV10000 称号:なし/勇者/英雄神リリアスの加護
年齢:15歳
性別:男
職業:賢者(魔導士Lv100)/剣豪
(剣士系最上位職※上級冒険者以上の実力が必要 勇者専用上位クラス※勇者の素質を持つものにしか使えない)
/魔術師(魔力操作に長けた者が扱える最上位職 賢さが高い者に適性がある。また魔法の知識が多い者もなれる 勇者がなることができる最上級の職種)
固有技能:聖属性魔術+水・火魔法 +回復魔法 +支援魔法(魔力消費が激しいため1日3回まで使用が可能)
特殊技能 勇者の才 →『勇者の素質を持つ者のみ使用できる技能。使用者の意思で成長速度が変わる。成長するほど強くなる。技能の派生も可能。聖属性が使用可能になる。全ての基本技能を習得することができる。聖剣を呼び出す事ができる。
※聖剣を使用する事で、魔力を消費し続けるが、通常時は『魔力枯渇状態』にはならない。』
魔法創造:固有オリジナル魔法作成
魔法譲渡(他者に譲渡する事が可能。最大10名):固有オリジナル魔法を複製できる。所有者が死亡した場合消滅してしまう。ただし、一度コピーした場合は何度でも再使用が可能になる。』
※
『大賢者の才』と『大魔導士の才』が合わさることで発現した固有技能。
聖女化&聖女の衣 聖女ラティスから託された聖女の神器を取り込んだことで得た固有スキル 【固有特殊能力(エクストラスキル ユニークスキル含む 効果時間5分間。魔力が0になった場合でも自動的に解除される。魔力の消費量は本人の意志による。聖属性以外の攻撃を無効化する 防御系、耐性系の魔法を無詠唱で使用する事が出来る。』
聖属術師の極意 聖女が扱うことができる最高位の聖属魔術を使用出来るようになる。
『聖魔眼』
相手のステータスを見る事ができる。
『魔剣・聖剣の解放(限定解放状態:1分
開放状態:2秒)聖属性の魔力を込めた斬撃を放つ事が可能な魔剣、魔刀が封印状態から完全解放された状態になる』……これは俺しか持ってはいないよな?『勇者』になにがあったらこんな事になるんだよ……と俺は思った。俺のステータスを確認したラティナが嬉しそうにしているのだが、なぜか俺の顔をジーッと見てきているので、俺はラティナの目線の高さに合わせるために膝立ちすると、ラティナは「ねぇ……。この子の名前は決めたの?」と言ってきたのである。俺は……この世界でラティナと出会った時の名前を思い出し、「この子は、お前とラティスの娘だぞ?」と伝えるとラティナは驚いている様子だった。そして俺達は……『大魔王リリア』、『魔王リリス』、『四天王最強の剣聖』という三人が同一人物であるという衝撃的事実を聞かされた事を二人に伝える。リリアムがこの世界に戻ってきたという事に驚く二人だったが、リリスが「じゃあ……。あの子の所に行かないと駄目だわ……。リリアの居場所を知っていたから……『勇者』は『勇者』の場所に転移させられたのでしょう……。貴方達には辛いかもしれないけれど……リリアが待っていると思うから行くべきよ……。貴方達に頼みたいことがあるわ……。貴方達は、これから『大魔王リリア=ルミア帝国』の跡地に転移してもらうつもりだけど……。リリアがいると思われる帝都に向かうまでに、ある場所によってほしいの。その場所はこの地図を見てもらえるかしら?」と言うと俺達は地図を見せてもらうことにした。リリスが俺にだけ耳打ちをする。「私とラティナちゃんを元の姿に戻してもらっていいかしら……。」と言われて、「えっ!?でも……」と俺が言い淀んでいると「リリアになら私達の正体を知られても問題はないわよ……。それよりも急いだ方がいいと思う……。『勇者』も心配だし……。『勇者召喚の儀式』が行われる前にリリアを止める事が重要だから……。リリスちゃんがいれば、『聖剣召喚』の儀式を行う必要もないでしょ?」と言われたのである。リリアムを止めに行く前にまず俺達の力不足を補う必要があると考えたので俺はリシアナの所に向かった。リシリアは、ラティナから話を聞くと、急いで俺達を連れて『魔王城』に向かい、その途中の村にある宿で、俺とラティナの装備の点検を行ったのである。俺はラティナと一緒に『魔装』を身につけていた。『聖盾』や『聖槍』なども問題ないと判断した後……ラティナが「ねぇ……私も何か欲しいんだけど……兄貴みたいに強い武器が欲しいの……。」と言うので、俺はアイテムボックスに入っている物の中で『聖剣』を貸すのは良いと思ったのだが、この世界では見たことがないので……とりあえず見せてから考える事にした。ラティナに見せる為に俺は聖剣『エクセリオン・ソード』を取り出して渡すとラティナは興奮していた。俺の手元を離れた瞬間『聖槍』・『聖斧』のように『エクセリオン』を光の粒子に変えて、俺の右手の中に集まりだしたのである。そして光が消えると俺は手を開いたのであった。俺が「この剣を使えるようになったか?」と言うと、ラティナは「まだ……。でも、なんかわかったかも……この感じ……凄くしっくりくるの……。ちょっと待って……」と言うと俺の手の中の『聖剣エクセリオン』を手に取ったのだ。それから数秒後には手に握られていた『聖剣』が変化していき……刃の長さが変わったり形状変化したりしながら……最終的に銀色の大振りの両手剣になり、刃の部分が虹色に輝く光に包まれていたのであった。俺は……思わず「凄いな……。ラティスと同じ力を持っているんじゃないか……。」と言いながら俺はラティを見ているとラティナはその大剣に魔力を流し込んだ後に、「うん……。これくらいの大きさの武器なら私にも使いこなせる気がするの……」と言ってきたので試しに俺が貸し与えるために渡してあげると、剣を振るったラティスが一瞬にして数十体の魔物を倒したのを見たラティナが「おぉ……すごい!!私でもこんな威力が出せるんだね!!ありがとう!!ラティスさんに借りた時よりもずっと馴染むのが早いの!!」と言って喜んでくれた。俺もその光景を見ながら自分の能力を確認する事にしたのである。俺は『聖女ラティナの力を受け継いだ能力一覧』を開くと俺は目を疑った。『魔晶剣
・魔銃王
・大賢聖女
・英雄姫
・聖戦士
・魔弾剣士
・剣帝
・勇者
・勇者神
・聖勇神
・聖魔眼』になっていたのである。ちなみに……この表示の仕方だと聖女化とか聖女の衣が『勇者神』に変わっていたからである。
(『勇者神』ってなんなんだ?)と俺は思ったのであった。
(ん~……俺の魔力の保有量が増えたせいで……。俺の能力がかなり増えてきたってことか……。『魔銃王』に関しては……ラティアと『魔結晶石』を使って融合させた時の俺の能力ってところか……。)
俺はそう考え込んでいるとラティナが「ラティの固有特殊能力は『大賢者の才』なの?あれ?そう言えば兄貴って確か固有技能を2つ持っているよね……。それに大賢者っていう職業なんてあったかなぁ?」
ラティスは苦笑いをしていた。俺はそんな二人の様子を見て察したのだった。俺は二人に向かって「『勇者神』についてはわからないけど……。俺の固有特殊能力が、また一つ追加されて『聖魔眼』になっているよ……。これはラティスが使う『聖属性魔術』みたいなものだよ……。それに『魔導師』『剣豪』などの上級職業が消えている……。どうなっているのかわからないが……『勇者の才』の効果で統合されたと考えるしかないよな……と俺は思った。そして俺は『聖剣・魔刀解放』ができるようになったのである。
『魔装・解放』
魔剣、魔刀に聖属魔法を付与することで、攻撃できる状態にできる 解放中は『大魔王の証』と共鳴し、魔装の耐久度が減り続け、解放時間は10秒となる 魔装を『魔導具化』し、魔法付与できる。『聖剣』の場合は『聖剣解放』ができる状態までになる。
※魔法が使用できる『魔導器』に変化できる
『聖女化』&『聖女の衣』&『聖魔衣』&『聖女の翼(背中から生える白い羽のような物が、白銀の光をまとい天使のような形になる)』
『聖女リリアの想いを受け継ぐ能力一覧』
【固有特殊能力(エクストラスキル)】
聖女ラティナ
『勇者』の神器との同化が可能。
『勇者の才』
【固有特殊能力(ユニークスキル エクストラスキルを含む
『剣聖』と融合する事によって、全ての『剣』を使う事が出来るようになる。
【ユニークスキル 魔剣解放』状態
『魔剣解放
・大魔剣
『勇者の神剣』
・聖大剣・黒竜丸・大魔王・魔王・勇者の神剣の解放を行う事が出来る
・勇者の才と融合した時に使用可能。所有者の意思で自由に使う事ができるようになる。ただし……『勇者の魔刀解放』は使用できない』……まあ……俺はこの解放状態でも『魔装解放』が出来るから……別にいいけど……。『勇者神』の力を使えなかったから……本当によかったよ……。俺には使えないと駄目だし……。
『勇者の魔刀解放』状態
『魔刀の封印を解く事ができる。魔刀は聖属、魔力、物理耐性があり斬れ味抜群。所有者が望む形態に変化することができる』
大賢者 ラティスの魔力を引き継ぐ事ができる『大魔杖
・大賢聖杖
『大賢者の杖』
聖と闇の魔力を込める事であらゆる事象を起こすことができる。所有者がイメージすれば発動する事ができる。聖魔を練り込む事によって様々な特殊効果を発現させることが可能。使用者の意志で自由に使えるように変化可能。使用後は自動で元に戻る』大賢聖女の羽衣 ラティスが使用していた『大魔布』の上位素材でラティナの為に特別に作られた服であり『大魔魔布』で作られており。聖と闇の魔力を練る事で身体にフィットするように伸縮したり、使用者の身体を保護するように自動的に変化するのである。
聖魔眼を発動する。瞳の虹彩の色が変化する。視力強化、解析鑑定能力、未来視能力、超広範囲索敵などが行える。相手のステータス、弱点などを検索できる。
「えっ!?ラティ!?ラティは『剣帝』になれたの!?えっ!?ラティは聖女になったの!?えっ!?えぇ~~!!!?何でラティの種族が『聖魔眼人』に変化しているのぉおぉおお!!!」とラティナが言うのである。それを聞いたラティは「私……『聖魔剣』を扱えるみたい……。なんか、不思議な感覚だけど……何故かわかるの……。それに『聖魔装』っていう能力が新しく増えていたんだけど、これも不思議だよね……?私、今まで『魔導剣士』だったし……。あっ……私も『勇者の剣 聖魔刀解放』ができるようになっていたの……。これ……ラティスさんの力だと思うんだけど……。私は……もう……人間じゃないかもしれないね……」と言って笑みを浮かべるラティナに俺はラティナを抱き締めて「俺がお前のそばにいる……。どんな事があろうとも……俺はずっと……ラティとラティナの家族の側にいる……。俺だけは絶対に……いつまでもラティナと一緒に居続ける……」と言うと、ラティナも涙を流しながら、「ありがとう……。ありがとう……ラティスさん……。私は幸せ者です……。これからよろしくお願いします……。」と言ってくれたのであった。
(さて……と、とりあえず……ラティをなんとか落ち着かせて、この先……この世界でどうやって生活していくかを考えないとな……。まず、魔王は俺の配下にするしかないよな……。でも、その魔王って……今は眠っているらしいんだよな……。う~ん……。この世界の魔王は……俺の想像以上に弱かったんだな……。)俺はそう思って、ため息をついてしまった。そして俺は「リリィ、今、リリアちゃんと話せるか?」と尋ねると、「んん……。」リリアが声を漏らしたので、「大丈夫?」と俺はリリアを抱きしめながら話すと……リリアが泣き出してしまったのだ。「ごめんなさい……ラティナ様……。ラティナ様……。本当に申し訳ありません……。」と泣いてしまったのである。ラティナはラティナは慌てて、リリアの手を握ると「気にしないでください!!それに私が勝手にラティナさんの体を貰い受けてしまったんです!!ラティと呼んでください。あと……ラティって呼んでくれれば、それで嬉しいですよ。私の事を友達と思ってくれるならラティって読んでほしいのです。それに……謝らないでください。悪いのはあの悪魔なんですよ!!それに私こそリリア様に許して頂けないのではないかと心配しておりました……。こちらからも改めて宜しくお願い致します。どうか、これから仲良くしてくださいませ……。リリア……。それと……ラティの体に入ってしまい申し訳ない……。それにラティは私と入れ替わっても何も変わらずに接してくれていたので嬉しかった……。」と言ったのだった。するとリリアは微笑み「そんなの当然の事ではないですか。私はあなた達の恩人であるラティスさんの魂を救いたかった……。だから、ラティスさんの人格が入った貴方がラティス様が言っていた『勇者のラティ』だとすぐにわかりました……。ラティス様の大事な妹様なのに、自分の欲望を満たす為だけに利用してしまい……ラティス様に迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした……。こんな愚かな私のことを……ラティスの妹と認めて下さり感謝いたします……。」と再び頭を下げたのである。
(リリアって……俺の記憶の中の『聖女リリア・マリア=メルネリス』そのものの性格だった……。それにしても、『勇者のラティ』がこの子で……『聖女のラティナ』がこっちの世界にいたとは……。そして……。)
俺は心の中で思う。俺はラティナを手放さない……。必ず……守って見せると……。そう考えていると俺はあることを思い出す。そして……俺とラティの融合の力が解けている事に気がつく。俺がリリスの方を見つめると「あれ?融合が解けていますよ。融合していた時の記憶はあるのです。ただ……リリアは『聖女ラティナの魂』を取り込んだ影響で『聖魔剣 勇者の神剣』と融合した状態になっていたのです。なので融合している状態が当たり前で……分離することに慣れていないからかもしれません。おそらく慣れの問題ではないかと思います。『勇者神 ラティナの想いを受け継ぐ能力一覧』には、新たに追加された項目が2つあります。それは……。
・大魔王ラティスの『想いを受け継ぎ』大魔王の能力の一部を使用できます。『想いを受け継ぐ』の効果は大魔王の証に、使用者の意思によって『大魔王の才』『大賢者の杖』『聖魔刀解放』『大魔剣
・聖魔剣
『大魔剣 聖大剣 魔王の聖魔剣』『聖魔大剣 魔剣 魔刀解放』
・大賢者と『聖女の翼(白銀の光をまとい天使のような形になり背中から生える。聖属、魔力、物理耐性を持つ翼)』
・『聖女リリアとの繋がり(『想いを引き継ぐ』の派生)
』が新しく追加されました。リリスのステータスを確認しましょう。
名前:ラティス・メギストリス
種族 :大賢者
性別 :女
年齢 :不明(見た目18歳)
LV
:∞
HP :測定不可
MP :15000
力 :150000
耐久 :250000
魔力 :508000
敏捷 150000 運 :30504 ユニークスキル
『勇者の才』『勇者の才EX』『大魔王の才 大賢者の杖 大魔剣解放』『聖女の翼 』
エクストラスキル
『全魔法習得 全武器使用可能 完全状態異常無効 経験値増加量5倍 超高速回復 無詠唱』スキルスロット10 称号 《勇者》 特殊スキル『聖女の翼』『聖なる光の羽衣』……使用者の意思によって使用者を守るように展開する。聖属性と闇属性の攻撃を完全に無効化する 聖女ラティと融合した時に、『大魔王』としての力の殆どを使用する事が出来なくなる代わりに、全ての攻撃に聖属が付与される。
《聖女の剣》……使用者の意思により聖属を付与した剣に変形可能。攻撃力も上昇する。
『聖女と絆を結びし物』……ラティスの意思によって、所有者の身体に融合する事で、身体能力を大幅に向上させる。
聖魔大賢者の羽衣……『大賢者の杖』と『聖女の剣』の力を使うことができるようになり聖属を付与する事ができる。使用者のMPを徐々に消費することで聖属が付与された状態になる
・聖女リリミア と融合した時に使用可能なもの 聖女リリミアの称号『勇者を愛し守り抜く』によって使用できる『慈愛の癒し リリス』のステータスを確認しょう。
名前:リリス・ラティス=メリネリアス
種族 :聖女
性別 :女
年齢 :16(外見20代前半)
レベル 1 体力 80/150(120UP↑+50→90)
魔力 20000(10000+40)→26000(32000UP+500)
+200万
(3000)
(2500万1000×7)
筋力 2400(600UP)
速度 100(60UP)
精神力 800
(100UP)
(1200)
(1300300)
(1000400)
(1800)
(1100)
(1600)
(1200)
(7001500)
運 350
(200)
ユニークスキル
『勇者の才 リリアと『慈愛の女神』が使える能力の『勇者を愛する者達の加護 慈愛の祈り 聖魔法の威力上昇』を使える。『聖女ラティナの魂を宿した者 リリミアリスと融合した時に、使える能力
『勇者を愛する聖女たちの願い リリフィナリス』は統合されて、新しく生まれ変わり『慈愛の祈り(愛する者に慈しみの心を込めて祈ることで発動される能力)
聖魔法威力上昇 慈愛の祈り 回復力の上昇(中)
自動再生』になる。リリシアの使えるユニークスキルは統合された為に使えなくなっている)
エクストラスキル 固有 《聖なる導きの光
(聖属性付与の魔法)
(女神の寵愛を受けし聖女の光)》……『勇者の才』、『勇者の才』と融合した時だけ使用が可能になる能力。使用者に『勇者神の恩恵』の『勇者』の称号を授かる事が出来る。この効果を解除することは本人でも不可能になる。また『勇者』の『勇者の剣』・『聖魔剣解放』・『聖大剣解放』と『聖盾の開放』が可能に なり、全てを使う事で、『神器』が解放されていく 勇者神の剣 神剣の使い手の称号が手に入る『勇者神と絆を結ぶ者』は、勇者と勇者が認めた人にしか与えれないので、リリスが取得出来るかわからない。『聖女の翼』は『リリアとリリミアリス』の能力を統合して生まれた能力なので、融合していない状態で使用は出来ない。
『慈愛の祈り』……リリシリス・ラティス=メリネリアスが持つ能力。勇者の味方を癒やす効果がある。さらに、この能力を発動している間、対象者の魔力やHPを徐々に回復する 名前 ラティシス・ラティ=ラズリス 性別 女性 種族 大賢者ラティシス 性別男性 年齢 17(18?)
身長 156cm 3サイズ B84 W58 H82 容姿 黒髪セミロングヘアーに青い瞳、スレンダーな美少女。スタイル抜群で胸が大きく形がとても綺麗な形をしている、尻の形がとても良く、腰のくびれがくっきりしている。
職業 聖女 武器
『勇者の神剣 エクスカリヴァーン』と融合することにより、大賢者の杖に変化できる。融合時には杖の先が鋭く尖った大きな刃に変化する。柄の先端には美しい水晶がついており。そこに埋め込まれるように小さな宝石がついている、この杖は大魔王の証『聖剣』に認められなければ使うことが出来ないがラティス・メギストリスの意思で大賢者と融合することが可能になりラティス・メギストリスの意思で『大魔王の能力の使用制限(大魔王が扱える能力はラティの身体に憑依しなくても、使用できるが使用時間の制限が発生する)』『聖女の羽の使用』『大魔剣 聖大剣 聖剣と聖魔剣を解放して融合状態になればラティスの身体にもダメージがある。融合状態を維持するのは10分程度。融合状態になっているときは融合している者の肉体と魔力と聖魔力と聖女の魔力を使用する』
装備:大賢者の杖
服装 純白のワンピースを身に着けていてその上に純白色のフード付きローブを着用している。背中には『慈愛の翼』という翼が生えている。これは使用者の意思により形を変えることが可能 称号:勇者の剣
『勇者の証』『勇者神』……勇者の力を譲渡され勇者神ラティスの力と記憶を引き継いだ。『勇者神』の称号は勇者ラティスが、勇者としての力を引き継ぐと同時に称号『聖剣』を引き継ぐ為。自動的に授与された。ラティスに、聖魔剣 魔剣解放が使用できる。『大魔剣解放』も使用できる。『聖大剣解放』が使用可能に、聖女の証と絆を結んだ事により。リリアの能力の『勇者を愛する者たちの加護 勇者を愛する者』も使用可能になり、この『絆を結ぶ』の効果は本人が気づかぬうちに徐々に強化されている。
ユニークスキル
『勇者神の剣』『大魔剣 聖大剣解放』『勇者と繋がる魂』『勇者神の寵愛』
『勇者への忠誠』……ラティシスルと融合したときに使用可能なユニークスキル
『聖女の翼』『聖女の導きの光』『聖なる光の羽衣』『慈愛の翼』『勇者神の翼』
『聖女の剣』『魔刀解放』『聖魔剣解放』『大魔剣解放』『聖大剣解放』……使用者の意思によって使用者の思い通りの剣へと変形させる事ができ、使用者の身体の一部のように自在に動かす事が出来、使用者の想像で、使用者の意思によって変化させることができる。ただし、『聖女の剣』『魔刀』に関しては融合しないと使えないので注意が必要、聖女の証と繋がりを持ったことにより、『大魔王の封印』を使用できるようになった。『聖女の剣』の『慈愛の翼』を融合した時は聖属性の魔法を、聖大剣解放を融合した時聖属性と闇属性を融合した魔法を使う事が可能となる。聖女の杖のユニークスキルとエクストラスキル『慈愛の翼』『聖女の剣』『魔剣解放』『聖魔剣解放』『大魔剣解放』『聖大剣解放』を使用可能となる。
名前:リリア・ラティシス=メギストリス
種族 :勇者
性別 :女
年齢 :16(外見20代前半)
レベル 1 体力 150/180(120UP)
魔力 20000(10000+50)
(15000UP)
(3500UP)
(4000UP)
(6000UP)
(7000UP)
+500
(50000)
(10000UP)
(2500UP)(2800UP)
(5300UP)
(5500UP)
+300 筋力 400(500UP)
速度 100(60UP)
精神力 100(60UP)
(1200UP)
+200
(2000)
+400
(3000UP)
+500
(6400)
+700
(7800UP)
+1000
(9600)
(10100UP)
(2800UP+1280UP+1000UP+1260+1400UP)
+1200
(12400)
運 450(2000)
+300
(2600)
ユニークスキル『聖女の癒し』……勇者の才をリリス・リリミアから受け継いだ能力の1つ。リリスと同じ能力を使う事ができる。この能力は勇者の才を持っているリリスにしか扱えない能力である。『慈愛の祈り』……勇者の才をラティスから引き継いだ時にリリアとリリスはユニークスキルになった『勇者の癒し』を習得した。『勇者と繋がる魂』……リリアのユニークスキル『勇者の絆を結びし者』がリリミアとリリアに継承される。
『聖女の導き』……リリスがリリアを庇って死ぬ際に、リリシアとリリアとリリカを守るために自らの命と力を犠牲にして使った能力で、『慈愛の祈り リリフィナリス』と『勇者を愛する聖女たちの願い リリス』が統合され生まれたユニークスキル『勇者を愛する聖女たちの想い』の効果を使うことができるようになる。リリシアが使用した『慈愛の翼』と融合した時の効果を使えるようにした。『聖女の翼』……リリリアのユニークスキル『勇者を愛し守り抜く者』と融合することで使用できるようになり、『勇者を愛する聖女たちの願い リリス』が統合されたユニークスキルになる。リリスの時に使用できなくなっていた聖魔法を全て使うことができるようになった。リリシアの『慈愛の祈り リリフィナリス』を融合した時に聖属性魔法全てを使用できるようになっている。リリアと融合した時に使用できる魔法が増えていた エクストラスキル『聖なる導きの光(慈愛の癒しと回復魔法を強化する能力)』……ラティナの能力を受け継いだ事で新しく習得できたエクストラスキル『聖なる導きの光』は癒しと回復魔法を強化した能力になり。ラティナと融合していない時も使用する事が可能になっていた 固有エクストラスキル『聖なる癒しの聖光』……エクストラスキル『聖なる導きの光』の効果が発動中にさらに発動可能になるエクストラスキル『聖なる癒しの聖光』の能力は聖魔法回復強化と聖属性攻撃の強化を行うことが出来るエクストラスキル『聖なる導きの光 ホーリーフィールド』
『大魔導士の称号を獲得』……この称号を持つ者は全ての魔導書の魔法を使うことができる。『勇者の証』『大魔王の封印』……この称号を持つ者は自分の意思で自分のステータスを確認することができる 名前 ミリス・リリスティア・メルリス・ラティス・ミクス・ミリィ・ラティス・ラティシス・ラティ・ミレニス・ミレス 性別 女性 種族 勇者(ミスティリオン)・ミクス=ミラス=ミレニアス・ミロス・ラティシス・ラティ=メリネス・ミレア=ラティメス・ラティス=メリネア 職業 大賢者・勇者(ミスティックナイト・エンプレスナイト・パラディンナイト・キングマスター・セイント・ロイヤルガード・セイント・プリンス・プリンセス・アークビショップ)
性別男性(勇者)・女性(聖女勇者神(ミスティリオン・ラティシス・メルリオス・ラティ)・大魔導王(ハイウィザード・賢者(大賢者大魔道大魔導師)聖魔剣(エクスカリバー)・勇者の証大魔王の封印)
レベル 99(98UP)体力 5万/8百万(80UP2億アップ4千アップ4百ダウン7百ダウップ4五百UP4倍1億アップ2万3千円UP2兆2百万円UP2千億円UP)
魔力 2千万(210UP5百ダウン10倍5万UP5億5千万円UP3兆円1千京UP)生命力 25億/356兆2800万 物理攻撃力 470(350UP2千5億2億UP2兆10倍3百40億アップ1億20億10倍10倍100億1000倍5千万ダメージUP1010億5千万円)
知力 655億(5億65億500倍20億50憶円20京6500万5000億5兆円2兆円10京15億UP50億アップ100億5000億5兆円100億円50京5京000京2兆円50京50兆円1000京500兆 魅力 790兆2900(789兆9000769京8000兆2京1京6300兆2兆2京0京6000兆)幸運 82億(83億800万UP1京800兆8700兆9京7700億7兆2800兆1兆3400兆2兆2000兆)ユニークスキル(LV999MAX99%)体力 99%/99億999万人分(979.99%/100人分)魔力 99%/99億9,996,285人分(99.58%/100人分)物理攻撃力 82%/961京9500万5000兆人分(88.29%/100万人)耐久力 90%/892兆9984億5000兆人分(85.255%/100人)魔法攻撃力 100%/823兆5200万0000人分(76.474%/100京0京000000000京000000000)精神力 100%/950京9504万0000人分(94.725%/100人)素早さ 100%/102億9500万人分の95.491%(95.575%/100万人分の秒)ユニークスキル(MAX)ユニーク魔法(魔法名)
火属性魔法(ユニーク)ファイアーストーム 炎帝乱舞 炎獄煉爆 氷雪魔法(ユニーク)フリージングノヴァ 氷河魔剣 凍牙地獄 雷属性魔法(ユニーク)サンダーボルト・エクレールスラッシュ・天雷地裂 風属性魔法(ユニーク)ウィンドストーム・嵐槍・嵐矢・竜巻 水魔法(ユニーク)スプラッシュストリーム・流波 大地魔法(ユニーク)地震 石礫 砂嵐 暗黒属性魔法(ユニーク)デスサイズヘルズソード 暗黒龍爪 ダークドラゴンクロー 死毒黒鎖 時空魔法(ユニーク)空間転移(ワープゲート)
収納 アイテムボックス 時間遅延 闇魔法(ユニーク)ブラックミスト・ダークフィールド・夜 重力操作 召喚魔法(ユニーク)
天使の降臨・女神の降臨・魔人の降臨 精霊魔法(ユニーク)自然魔法(自然魔法)・妖精魔法(フェアリーマジック)・竜魔法(竜魔法)
エクストラスキル(EXS)超隠蔽・スキル強奪・スキルコピー 称号(タイトル)
異世界より来りし者 世界管理者からの招待状 神々の加護 勇者の才(称号獲得ボーナス)全属性魔法習得可・限界を超える者(称号獲得ボーナス)成長率限界突破・限界解放(勇者の才)
(ユニークスキル習得ボーナス)聖属性魔法完全無効・勇者魔法(固有ユニーク魔法)
【聖女の祈り】
リリアは勇者である。しかし、リリス・リリスミア・リリアの3姉妹の中で一番弱いと言われ、勇者の証も持っていなかったのである。それは……この世界に転生する前に、女神であるリリスとリリシアの3人で話をして決めたことであり、リリスがリリアが強くなるまで守るために取った行動でもあったのだ。その事にリリス自身も感謝していたのである。だからこそ……ラティスに命を捧げるのも嫌がらずに受け入れることが出来たのである。
リリアとリリスはリリシアを守るという使命を果たすためにラティスに殺されて死んでしまった。ラティスも自分が殺したことを悔やみ、自分の不甲斐なさを嘆いたのだった。だが……そんなラティスの元にリリスとリリアが突然現れ、そして……ラティスを慰めたのであった。
リリスとリリアはリリシアを守るためにラティスと敵対したことに悔いはないと言ったので、それならばとリリスに頼んでリリシアに自分の想いを伝えてもらい。この世界の事をリリスに任せる事にしたのだったが……ラティスはその事が心残りとなり。ずっとそのことを引きずっていたのだが……そんな時にこの世界の魔王が現れたことで……自分の気持ちにケジメをつけるため戦う決意をした。
そして、魔王を倒すことに成功したが……その後で、リリスとリリシアからこの世界に来る前に3人が話した事を聞かされたのである。その事で自分はリリスたちのために死ぬ覚悟ができていたが。リリスたちのお陰で自分はまだ生きられる。だから今度は自分がこの世界で幸せになることがリリスと約束した事でもあるし。リリスと約束した『勇者の証』と大魔王の封印を守ってくれるようにお願いをされたのだった。そして……今度こそ、本当の平和が訪れた。
ラティシス・ラティ・ミレニスの3人はリリアムと対峙する……。俺はリリスの口から『慈愛の癒しの光(慈愛の癒しと回復魔法を強化する能力)』の説明を聞いたあとに、『勇者を愛する聖女たちの願い』を融合させる。その結果……『勇者愛する癒しの翼』と言う名前に変わり、さらに効果を強化できたので……。早速この魔法を3人に覚えてもらったのだった。
リリスの意識の中に入っていたラティスは……。
『聖女勇者神(セイント・ミスティリオン・ラティシス・ラティ)・大魔導王(ハイウィザード・賢者(大賢者大魔道大魔導師)聖魔剣(エクスカリバー)・勇者の証・勇者の祝福(大魔王の封印)・勇者愛する慈愛の女神(勇者愛・癒しの姫・回復の聖女)・大賢者大魔導士(ハイウィザード・賢者(大賢者大魔導師))・魔王の器・神速飛行』を手に入れたのだ!! 固有武器スキル……?? 固有装備 固有武装 固有スキル(LVMAX)……『聖なる翼』『光の盾』(聖女の盾(ホーリーガード))Lv.3 固有魔法(レベル)
神聖魔法のレベル4 特殊神聖魔法レベル3 蘇生魔法(レベル3)
再生治療(キュア回復魔法)
死者蘇生(レイズデッド)
時空間魔法(L3)
生活魔法(L1)
補助魔法(レベル3)
攻撃魔法(レベル2)
付与魔法(L2)
支援魔法(L2)
防御魔法(レベル2)
回復魔法(レベル2)
補助魔法(レベル2)
特殊魔法(レベル1)
古代魔法(ユニーク)
(魔法)……《魔力球》Lv.1〜6……《魔力矢(魔力アロー)》Lv.2 〜10 【魔弾砲(マジックランチャー)】…… 魔法スキル……神聖属性魔法 L1 光魔法(レベル2)L1 治癒魔法(L2)
結界術 浄化 聖域(サンクチュアリ)
魔力障壁 MP変換(マナポイントエクスチェンジ)…………..
(ユニークスキル)
体力吸収 経験値増加 筋力増強 体力維持 身体保持(フィジカルバリア)
自動修復(フルパワーモード)
自動体力回復(オートヒーリング)
超鑑定 超隠蔽 スキル強奪 超共有(エクストラシェア)
(称号)
ラティスは、3人の勇者を愛し、慈しみの心を持ち、その愛を持って彼女たちを守った。彼女達はラティスに命をかけても守り抜くほどの忠誠を誓った。3人もまた他の男には見向きもせず、ラティスだけをひたすら想い続け愛し続けることになった。
また、勇者たちは、その身に女神と魔王と天使の加護を受け。3人共その恩恵を受けたことによりステータスが大幅に上昇したのである。特に3人の中で最もステータスが高かったのは、やはり知力が一番高かったリリアムであったが……それでも3人の中では最も低かったのだ!その理由は3姉妹で一番賢かったリリアのお陰であり、彼女は勇者の加護を受ける際も真っ先にリリアムを選び。その次に妹のリリスを選んだのだ。
3姉妹が勇者の加護を受けた後に……この世界で生きるために必要な能力を貰い受けたが。3姉妹はそれぞれ別々の力を授けられていた。
ラティシア……勇者の力(勇者魔法・固有スキル)……. 【勇者の誓い】【聖女の祈り】
【勇者を愛する聖女たちの想い】【勇者の加護】
【聖属性魔法・神聖属性魔法】
リリス……勇者の絆(勇者の証・大魔王の証)
・勇者の力(固有ユニーク魔法)
【勇者愛する慈愛の聖女・勇者魔法・勇者の証】【勇者の祝福】【勇者の加護】
【光属性魔法・聖属性魔法】
リリア……勇者の癒し手(固有ユニーク魔法)
【勇者の癒し】【勇者の癒やし】【勇者魔法】【勇者の証】
【神聖魔法・回復魔法・状態異常回復魔法・状態変化回復魔法・聖属性魔法・水属性魔法・火属性魔法・風属性魔法・土属性魔法・空間属性魔法・召喚魔法・時空魔法・生活魔法・魔法操作】
※この世界では全ての人が魔法を使うことができる。だがスキルを持っている者しか、魔法を使用することができないのだ。しかもスキルも魔法が使える者にしか、スキルを持っていない者は、魔法を使うことができない仕組みになっているのだ。これはスキルがないと使えないという制限がある為だ。スキルを持たない者が、無理やりにスキルを使おうとしても。スキルが邪魔をして使うことが出来ない。だが一部の者だけが。特別なスキルを持つことによって、例外的に魔法が使える場合があるのだ。この世界では基本的に全ての魔法はスキルが無いと、発動すること自体が不可能となっているのだ。この世界の常識である。しかし勇者の場合は別である。なぜかと言えば……。この世界の住人でも、ごく稀に特殊なスキルを持つ者もいるからである。そして勇者もその一人であって例外なのだ。この世界に勇者がいる理由の理由の一つである。この世界は、基本的に女神であるリリスの気まぐれによって、勇者が誕生する。しかし、その世界の中で、一番強い者を女神が選ぶのではなく、この世界において一番強ければ女神であるリリスが勝手に選ぶ。そして選ばれた者に女神からスキルがプレゼントされるのだ。だから勇者は、異世界からの召喚とかではないのだ。勇者の魂はこの世界に誕生し。女神であるリリスに選ばれた者の中から選ばれる。そして……勇者として異世界で戦ってもらうことになっているのだ。だから……もし……勇者の力が覚醒してなくても……勇者の力を手に入れることができれば……。勇者は、この世界で最強の存在になることが出来るという事なのだ。そしてこの世界における唯一の特例中の例外として、大魔王を倒せば元の場所に帰れるという事も、リリスは知っているので。歴代の勇者たちが皆……大魔王を倒して元の世界に帰って来ている。そのためこの世界の勇者の殆どは、自分が勇者であることに気が付いていないという事でもある。この世界でも、たまにそういう事例が存在する。
リリスが勇者たちに与えた能力はこんな感じになったのであった。
ラティス・リリス・リリア………… ラティスが手に入れた能力一覧。
固有装備 勇者武装 聖鎧・勇者の衣(聖鎧・勇衣)・聖剣・勇者の杖・勇者の聖具・聖女の腕輪・勇者の証・勇者の祝福(勇者愛の癒し)・勇者愛する慈愛の女神・勇者の癒しの姫・回復の聖女・勇者の器・勇者の証・勇者の加護・聖女勇者神・大魔導王(ハイウィザード・賢者(大賢者大魔導師))・魔王の器・神速飛行・魔弾砲(マジックランチャー)・魔法操作(マジックコントロール)
特殊魔法…… 古代魔法(ユニーク)
聖女魔法L1・回復魔法L1 聖魔法(L2)L1 蘇生魔法L3 再生治療L2 死者蘇生L1 聖騎士魔法L1・聖剣士魔法L1・聖戦士魔法L1・聖勇者魔法L1・聖戦士の癒しL1 勇者魔法L1 特殊魔法……(レベル3)
聖女魔法(L1)L1 聖女勇者魔法(L2)L1 勇者の加護(大魔王封印L1)
神速飛行(スピード・スカイ・ハイ)
魔法剣技L1・剣技L1 魔導弓術L1 聖剣魔法・聖剣士魔法L1 神聖属性魔法L1 古代神聖魔法L1 魔力回復L1・魔力吸収(マナドレイン)L1・超魔力回復(マジックチャージ)L1 魔力供給(マナサポート)L2・MP共有(マジックシェアリング)L2 超魔力回復(マジックリカバリー)L3・超魔力譲渡(マジックトランスファー)L2 再生治療(キュアヒール)L1 再生(リザレクション)L2・時間戻し(タイムリバース)L1 身体保持(フィジカルバリア)L1 結界L2 身体強化(ボディブースト)L2・精神耐性(マインドレジスト)L2 体力増強L1 身体強化(ボディーブースト)L1 筋力増強L1 身体保持(フィジカルバリア)L1・生活魔法(L1)・補助魔法(L1)
回復(ヒーリング)L1 蘇生(リザレクション)L1・召喚魔法(L1)
魔力障壁(シールド)L1 魔法付与(エンチャント)L1・魔力視(マジカルアナライズ)L1・魔力吸引(マナドレイン)L1 魔力弾(マナバレット)L1 魔力刃(マナブレード)L1 結界付与(シールドエンチャント)L1 魔法付与(エンチャント)L2 超回復(ヒーリングヒール)L1 神聖属性魔法 L3 聖魔法 L3 回復魔法 L3・回復薬(ポーション)製造 L3 浄化 L3 聖域(サンクチュアリ)
L3・聖壁 L4 回復結界 L5 超浄化 L6 超聖域 L7 超聖領域 L8 回復聖域 L9 超回復聖域 L10 神聖結界 L11 聖結界 L12・結界無効 L13・聖域創造 L14・聖槍(ホーリーランス)
L15・超聖域展開 L16・聖女(セイント)勇者 L17 勇者魔法・癒やしの癒し手・勇者愛する聖女・勇者癒やしの巫女・癒しの聖女・勇者愛する聖勇者・聖女(セイント)勇者(ブレイブ・ロード)
固有スキル・鑑定 超隠蔽 スキル強奪 L1・聖女勇者・癒やしの神・愛する者を守る者・慈愛の心 ユニークスキル 体力自動消費(スタミナディリーフォース)・自動高速再生・全能力上昇・超成長 エクストラスキル 体力吸収 称号 大魔王の加護・愛される者 リリス……勇者の力・勇者を愛する慈愛の女神の加護・勇者を愛する大魔王の証・勇者を愛する聖女の証 リリス……勇者の力・勇者を愛する慈愛の女神の加護・勇者を愛する大魔王の証・勇者を愛する聖女の証 ユニークスキル肉体操作 ステータス偽装・聖属性魔法(神聖属性魔法)
聖属性魔法(神聖属性魔法)
固有装備 大魔装…… 勇者武装 聖鎧・勇者の衣(聖鎧・勇衣)・聖剣・勇者の杖・勇者の聖具・聖女の腕輪・勇者の証・勇者の加護・聖女勇者神・聖女の癒しの姫・勇者愛する癒しの聖女・勇者愛する癒やしの聖勇者・勇者の器・聖女勇者神 特殊魔法……(レベル2)
聖女魔法L1・神聖魔法(レベル2)L2 神聖魔法(神聖属性魔法)
聖属性魔法・神聖魔法・回復魔法・神聖属性魔法 神聖魔法(神聖属性魔法)
回復魔法・神聖属性魔法 蘇生魔法L3・回復治療(リカバリーリジェネレーションリフレッシュネス)L2 L3 時戻し(タイムリースライト)
蘇生(リザレクション)・蘇生(リライフ)L 時間操作(ストップ)L・状態異常解除L・治癒力強化(ヘルスティミュレーション)L・完全復活 回復(ヒーリング)・HP共有(マジックシェアリング)L・超体力回復(マジックエクステンション)L・MP共有(マジックシェアリング)L・生命エネルギー吸収(エナジードレイン)L3 L4・聖女の奇跡(エンジェルフォール)L・聖なる癒し(リザレクション)L 身体維持(フィジカルガード)L・生活魔法(L1)・召喚魔法(L1)
特殊魔法……(レベル3)聖女魔法(L1)L1 勇者の加護(勇者の器)・聖女勇者魔法(勇者の癒しの姫)L2・聖女魔法(L2)
聖勇者魔法L1・勇者の祝福(勇者の愛し方)
特殊魔法……(レベル3)聖女魔法L1 特殊魔法…… 勇者の祝福(勇者愛の導き)L1・聖女の祈りL1 再生(リザレクション)・再生治療(リペアリカバーリカバリー)L2 再生(リザレクション)L1・時間戻し(タイムリバース)L1 L1・身体保持(フィジカルバリア)L1・結界付与(シールドエンチャント)L1・身体強化(ボディーブーストレインド)L1・超回復(ヒーリングヒールヒール)L2・魔力吸引(マナドレイン)L1・超魔力吸収(マナサポート)L1 超回復(ヒーリングヒールヒール)L2・超魔力譲渡(マジックトランスファー)L2・超魔力吸収(マナサポート)L1・超再生(ヒーリングヒールヒール)L1 超魔力回復(マジックリカバリー)L3 聖騎士の加護・聖女(セイントプリンセス)
称号 魔王の娘 リリア……聖女(セイント)・聖戦士(セイバーズロードナイト)
聖剣聖(ホーリー・エクシデター)
勇者を愛する癒やしの女神・勇者を愛し癒やしの大聖勇者 勇者の愛し方・勇者愛する大天使・勇者を愛する聖母の守り手・勇者に守られし乙女・愛する聖女(セイントプリンセス)・大聖勇者 リリシア……大聖勇者(ダイセンユウシャ)・勇者の加護(勇者の盾)
聖騎士の加護(セイントナイツオブブレイブロード)
聖剣士の加護(ソードマスター)
神聖剣(セイクリッド・ブレイザー)
勇者の愛し方 勇者愛する大聖女神・勇者愛する大聖女神 称号 魔王の王女(娘)・大聖勇者・大聖剣士 聖剣聖(ホーリー・エクディター)・神聖勇者・神聖剣使い リリシスは、俺が地面にめり込んだままでいたリリアムを助けようと近寄ろうとしたところへ声をかけてきた。
「ちょっと待ちなさい!!リリアムに攻撃するんじゃないわよ!!」
と叫んでくるのだが、それを聞いた俺の頭の中に……。
聖属性耐性……・聖水・聖水の効果軽減 聖剣・神聖耐性・聖剣による攻撃効果低下 と流れ込んできていた。
なるほど……。これはいい情報だ……。
そう思った俺は、そのままの状態で聖水を手にとってそれを眺める。そして少しだけ考え込んでいた。そしてすぐに思いついたことがあったのである。それはこの聖水が効くなら……と思いついての行動だったのであるが…… そして俺はすぐにリリアムに向かって話しかけたのであった。
「お嬢さん?君には申し訳ないことしたけどさぁ~、どうやら君のお父さんは悪い奴のようだね?まあ……とりあえず……ここから出てから話を聞くことにするが……。」と言いながら立ち上がることにした。
(うむ……。この聖水の効果があるのかは分からないけど……もしかしたらこの子達にも有効かも知れないと思うんだけどなぁ〜?)
俺が起き上がる様子を見つめて……目を輝かせながらこちらを見ていた。
(ふぅー……危なかったぞ……。このまま立ち上がってしまえばあの子に抱き着かれる可能性もあったわけだからな……。もう少し警戒して起き上がった方がよかったか……?って……今考えることじゃないかもしれないな……。それよりも……早くここから抜け出す方法を考えないといけないんだよな……やっぱり……)
そんなことを考えていると再びリリスが叫び始めるのでそちらへと目を向けた。すると……リリスの隣にいるリリアムが口を開く…… 《リリア姉さまのことは私が謝ります……ですので……私だけでも見逃していただけませんか!?どうかお願いします!なんでも致しますので……。》と言ってきたのだった…… だがそれに対して俺が何の反応もないことで、その沈黙に耐え切れなくなったように言葉を続けたのだ…… 《そっ……それでもだめだというのであれば……せめて……私だけでもいいので許してくれませんでしょうか!? 私はどうなってもいいのです……ただ……家族や仲間たちまで巻き込むのだけは止めてほしいんです…… 父上だってこんなことを望んでいたわけではないと思います…… 確かに魔族の中には非道な者たちもいると聞き及んでいます……ですが今回の件はやりすぎです……。私の力だけでは無理なのですが……もし貴方様のお力で父上に説得できればきっと分かってくれるはずです…… どうか……リリアをお返しください…… もうこれ以上誰も犠牲になる必要はないのです……リリスの幸せを願うのならば、父上を止めることが一番の方法だと思うのですよ……》 とリリアムが真剣な顔つきで言うのを見て……少しだけ考えた後に……俺の中で答えが出始めていたのであった…… 俺はリリアムの願いを聞き届けることにしたのであった。そして、先程リリスに対して発動させた魔法を使うことにしたのである。
『精神世界からの強制帰還(マインドリターンエンドアウェイク)』
俺は自分の体に聖水をかけて、そのまま意識を失った。そして次に目覚めると目の前に涙を浮かべながらも笑顔になっている女の子が立っていたのである……
「リリアス!!大丈夫だったのですか?」リリシアはすぐにリリアスを抱き寄せると……心配そうな表情になりながらも問いかける。すると……泣きじゃくりながらも必死に言葉を返してきた。
「リリアも無事だよ……。」と言うと、「本当によかった……」というと涙を流し続けるのだった。
「それにしても……あなた一体誰なのかしら?」リリスは怪しんでいるような様子を見せて言うのであった…… そして続けて、
「どうやってリリムちゃんの力を使って入ってきたのか知らないけど……あんたが誰か教えてもらうまでは信用できないわよね!」と言うのだった。
「そうだぜ……お前のせいで俺たちの家族みんな死んじまったんだからな!!」
と怒りを抑えきれずに叫ぶ男がいる……その男が怒鳴っているのを見ると…… 〈こいつ……リリスの弟みたいだ……〉と思った。
リリスはその弟の姿を見て一瞬驚いたものの、すぐに冷静さを取り戻そうとするのだが……どうしても心穏やかではいられなかったのだろう。
そんなリリスの様子を感じ取りながら、リリシアとリリアを見る。
リリシアはすでにリリアムのことを抱きしめて落ち着かせており、またリリアスもその横に立って寄り添っていたのである。その姿を見ながら、改めてリリアスの姉としての思いを感じたのであった……。………… その後俺は事情を説明した上で……。リリアスの父でもあるリリアムに謝罪の言葉を述べることになったのである。リリアスは複雑な感情を抱いていたようだったが、リリアのことも考えつつ俺の話を聞いてくれたのであった……。そして俺は最後に言った……
「今回はいろいろあったが……これで全てを終わらせることができたはずだ……後は……俺を信じて欲しい……」
と言ったのである。リリアムは「ありがとうございます……。まさか父上の企みに気づいていたとは思わなかったのですよ……。そして私や仲間達のためにそこまでしていただいたこと……深く感謝いたします……。今後ともよろしくお願いしますね……。それと……リリアのことを助けてくれまして本当にありごとう御座いました……。それから……リリアリスのことや……私たち家族や仲間たちのことを気遣ってくれたことを感謝しています……。ですのでこれから仲良くしていただけたら嬉しいです……。」と礼を述べてくる。
リリアの方を見ると……なぜか頬を膨らませていたのでリリアムとの仲について嫉妬されたのかと思いながらも微笑ましい光景だと思いつつも、その場から離れることにするのだった……。
そう言えば名前を名乗ってなかったと思い出した時にリリスに声をかけられる……。
「あなたの名前まだ聞いていないわよ!!」
と言われた。そこで俺は自分の名前を名乗ろうとするのだが……よく考えると俺の名前を知っていた人は殆どいなかったことに気づく……。そのため自分で自分に呆れながら苦笑いをしていたのだ。
そして仕方なく本名を名乗りたくないのもあって適当につけた名前を告げることにする。
すると、案の定というか何というか、俺の名づけ方が気に入らないようで文句を言われる……。
(仕方ないだろ……。この世界でその名前を名乗っているのは俺くらいしかいないからな……。そもそもこの世界には勇者や大魔王と呼ばれる人がいる時点で偽名を使ったとしてもいずれはバレることになると思うんだよ……)
そんな風に考えていた俺は、一応念話でステータスを見てもらえば一発でわかるんじゃないかと思っていたので見てもらうことにした。その結果を見た時の皆の態度はというと、驚きすぎて唖然としている感じになったのであった。
まずリリスから俺に対しての鑑定結果が聞こえてきてしまう。…….
・・・・・・
種族: 人族(ヒューマン)・????
レベル:???
年齢:?????????
状態異常:なし 職業・称号・能力値・装備 勇者(?全知全能(ゼウス))
大魔導師(????)
大賢者(???)
魔王殺し 魔王に好かれる者 魔王を愛して守り抜く者 愛する者を守る者 愛の守り手(ラヴシーラー)・愛される聖女 愛の聖母(ラブママス)
愛する大聖女神(セイントセイントヴィーナス)
・スキル 【固有スキル】・・・《????》《聖水生成》 《????》《????》《????》《????》《????》《????》《????》《????》《????》《愛癒しの女神の祝福》《聖女の加護》《女神の加護》《慈愛の祈り》《聖女の証》《聖なる導き》《聖女覚醒(ホーリーモード)》《神罰》《聖属性耐性(中)》 聖水作成 聖属性攻撃効果向上 光属性効果低下(小)→神聖効果低下 回復魔法強化 状態以上緩和 聖属性魔法 聖剣技強化 魔力消費低減 身体能力上昇率向上(大)
(なんだ……これ?って……ちょっと待て……今の声はリリスだよな……しかも、なんか色々と凄いことになってないか?それにリリスは俺のこの姿とこの声で……俺だと認識してくれないのも分かるけど……俺が声を出したわけでもないのによく分かったよな……。まあ俺もリリスが俺に対して何かしてくるとは思ってなかったわけだしな……。)
と俺が思っていると……突然リリスは俺に向かって駆け寄ってきて、いきなり抱きついてきたのである……。そして耳元で囁かれるのである……
「やっと……見つけたわ……。ずっと探し続けてきたあなたが今目の前にいる……。あなたと出会える時が来るなんて……信じられなかったけど……。でもこの気持ちだけは……嘘じゃないわよ……」
とリリスは俺の顔を見上げてきて笑顔で言うとそのまま離れていった。その顔があまりにも可愛かったので、照れてしまった俺は視線をそらすのであった。
それを聞いたリリアたちは当然のように怒っていた。
《私にもちゃんと説明しなさいよね!! 》《そうだ!! そうだ!!私にも話させてください!! 》とリリアとリリシアから詰め寄られたのである。そんな様子を見ていたリリアム達は俺に説明を求めてきたのだった。
俺はどうしようもないほどに恥ずかしい気分になりながらも今までの経緯を話すのだった。するとリリスはというと、「そういえば……あなたはいつもリリアスを守ってくれているんでしょう?」と言うのだった。
それに対して俺が答えると、「やっぱりそうなのね……。ありがとう……。」と優しく言ってくるのであった。そして「私はあなたのことが好きになったの。これからも私のリリアスを守ってあげてね。約束して。」と言われてしまうのである。俺はリリスと握手をすると同時にリリアから冷たい眼差しを感じ取ってしまうのであった。そして「お母様は少し疲れましたの……。今日はこのまま休むので皆さんも休んでいただいても構いませんよ。」と言うと俺の手を握りながら、どこかへ転移していくのだった。
残された者たちも「リリアスのことを頼みますね……。」「お願いします……。」と言い残すようにその場から去っていったのである。そして、その場に一人だけ残った男がいる。そう俺である。すると男はリリアムに声をかけると、「兄貴もあの女と一緒のところに連れて行ったから安心してくれ。」と言うのだった。その男の顔を見ていた俺であったが……。
リリアが転移した先は、なんと!俺の家の中にあるベッドルームだったのだ。
俺はリリアの胸を押しつけられてしまい……「ちょっと離れて!!」と言うのだが……全く聞く様子がない。「リリア……さん?離してもらえないと動けないんですけど…… リリアの匂いを嗅いでいると、とても懐かしいような気がしてしまう……そんな感覚に陥った……。だが、俺は自分の心に言い聞かせる。
〈今は、そんなことを思っている場合ではない。早くこの状況から抜け出さないとまずいぞ……〉 俺はリリアにお願いする……。
「リリアスのことを守ってあげるから、もう放してくれるかな?リリアとゆっくり話す時間がないんだよ……」
俺がそういうと……ようやく離れてくれた。そして「どうして?そんなにリリアのことが大切なのですか…… そう言うと……「はい…… 」と言ってしまったのだ。するとリリアは……
「じゃあ……キスをしてください……。それで納得しますから…… 俺はため息をつく……。
そして、俺は目を瞑ったままリリアスに唇を重ね合わせる。その口づけをしている間はなぜかお互いが何も言葉を発することはなかった……。そして数秒間重ね合ったあと俺はリリアスから離れた。リリアの方を見ているとその顔はまだ赤みを帯びていて…… 俺はリリシア達と合流する為に一旦戻ることにしたのである。リリシア達のことも気になっていたからである。
(さすがに大聖女神を名乗るだけあって、この世界でもかなりの力を持つ存在みたいだな……。この世界の闇について色々調べないといけないようだな……。)
そして俺が転移しようとした時にリリスは……「リリアスのことになると……リリアと同じ表情をするので気になったんですよ……。リリアと本当にどういう関係なのですか?…… と聞かれたのだったが……俺は正直な答えとして……。
「それはリリスの方が知っていると思うんだが……まぁ簡単にいうと恋人のようなものだ……」
と答えたのである。
それを聞いていたリリスはかなりショックを受けたようで、悲しげな表情をしていた。
そんな姿を見ていると、なぜか罪悪感を感じてしまったのだった。
(なぜリリアを庇ってしまったのだろう……)
そんなことを考えつつも、その場から俺は移動したのだった。
それからしばらくして……俺の家からリリアム達がやって来たので合流することにした。そしてリリアム達に事情を説明するのだった。すると……。リリアム達やルシも俺のことを心配してくれていたらしい。そしてルシは俺に抱きつくと……
「大丈夫でしたか?ご主人様は昔から無茶ばかりしているので心配していたのです。ですがこうして無事に再会出来てよかったのですよ。」
というのである。そして俺のことを「ご主人様」と呼び始める……。
そして俺はリリアム達に今後の事について相談を持ちかける……。するとリリアム達は賛成してくれたので俺はこの国を一度出る事に決めたのであった。理由はというと……この国の国王『ユードラル』には会っていないし……この国を乗っ取ろうと思っている人達がいることがわかったのもあるのだが、それ以上に興味のある人物に出会ったからである。その人物がこの国の王子であり大魔王と呼ばれている『サタン=ロードレスベル』である。大魔王の名前を聞いたときにあることに思い至ったのであった。
(そう言えば……この世界では『勇者』、『大魔王』『魔神』、『邪神王・・』などと言われているけど……実際は違うんじゃないか?)……と思ってしまうようになったのだ。その理由は、魔王たちに対してリリアス以外の他の勇者たちが戦いを挑むことはあったが、結局勝てずに終わっているからである……。そしてリリアスに聞く限り大魔王と呼ばれた者を倒した者は今まで存在しないのだという。だからこそ俺は興味を持ってしまい……色々と知りたいと思っているのだった。
俺はリリスと一緒に行動することに決めた。理由は色々とありそうだが、まずは大魔王のことを知りたいということが一番大きいだろう……。ただ……それだけではなかった。実は俺は少し困っていることがあった。というのも、先程からリリアが俺の服の袖を掴んで放してくれなくなってしまったのである……。
俺が何を言っても聞いてくれないため……。そのままにしている状態である……。
(こんな姿を誰かに見られるのはとても恥ずかしいんだが……どうしよう……仕方ない……諦めるか……はあ~……)
とりあえずこの場を離れようとしたときに……俺の目に入って来たものは、この城の中にあった図書館の書物であった。その書架を見てあることに気づくと、俺は急いでリリスの手を掴み一緒にそこに向かった。するとそこにはたくさんの本があることが分かったのである。それを確認した俺は……早速調べ物を始めたのである。そして分かったことはというと……この本は全て歴史書だということだった。つまりこの国ができてからの事がすべて記されているということだった。俺の思った通りこの国に起きている異変の事も書いてあった。俺は一冊の本のページに目が留まった。そこには、『闇の魔力の暴走』と書かれているのを見つけた。そのページを読む限りではこの国は昔は魔族が住む町があり、普通の人間たちは近づくことはなかった。しかしある時に人間の国々は魔族たちの町に侵攻をした……。そこで一人の青年が現れて、全ての町の魔物達を一掃してしまった……。それにより人間たちはこの国を手に入れた。しかしその数年後……。今度は魔族の力によって滅んでいったと書かれていた。そして最後には『暗黒の大魔王サタナキア=ロードベルゼにより滅亡を迎えることとなった』と書かれていた。さらにその後の歴史についても書かれていたが……。その続きを読んでいくと驚きの内容が記載されていたのである。その内容はこの国にいた王族の末裔の一人が封印の巫女の力を受け継いでいたにも関わらず……自分の力に耐え切れず死んでしまった……。そのことでこの世界に災いが振り撒かれることになるのだった……。それを恐れた王様が娘を犠牲にすることを決め……娘の体を生贄にしてその命を使い封印を施したということが記されているのであった。その話の内容に俺は衝撃を受けるとともに怒りを感じていた……。俺はすぐにその話をしている人の元に行くと、リリアスが話していた人を見つけることが出来たのである。その人物は王妃である『リリアーナ・ドラグーンス』である……。俺はリリスとリリアにリリアを連れて行く許可をもらうと、リリスと共にその場に向かうことにしたのだった。
そしてリリアを連れてきた俺は、リリアから話を聞くのだった。その内容によるとリリスから俺にキスをしたことで……俺がこの子を守ってくれることを確信して安心したのだという。そして自分の力が抑えられなくなりつつあるとリリスが俺に告げる……。その話を聞いた俺とリリスはある方法を実行することにする。それが俺が今から行うものである。リリスがこの世界の人たちを救うために……そしてリリスを守る為でもあるのだ。
そしてリリスにキスをしながら俺は【リリア スキル付与】を行う。すると、俺は一瞬で自分の中に新しい能力が備わる感覚を得るのだった。その能力を確認してからリリムの方に向かって行き……。リリアと同様に俺にキスをしてリリムの能力を付与する。その方法は、リリスの体の一部を噛みちぎって血を与えるというもので……。その行為に俺は嫌悪感を覚えたが……それを止めることは出来なかった。なぜなら、その行為はリリスを守るためであるからだ……。
そして俺は二人の唇を重ねると、二人は同時に倒れてしまった。そして数分後に起き上がると……リリスがいきなり泣き出したのだった。そして俺に対して感謝の言葉を述べるのだった。そして俺に対して、「ありがとう……私の大事なものを全部奪ってくれて……」と言い放つのだった。その発言からリリアの体に何が起こっているのか理解したのである。そして……俺がリリスを抱き締めると、彼女は俺のことを優しく包み込んでくれたのだった。しばらくその状態が続き……。俺は落ち着かせようとして頭を撫でていると……突然、リリスから俺にキスしてきたのである。それも、とても深いもの……。俺は突然のことに驚いたが……受け入れていた……。リリスから感じるものがあまりにも優しかったからである。そして数秒間お互いが見つめ合い……。リリスが離れていった。俺の顔は赤面していた。そしてリアリスは……。「これからは……私だけを見ていて……」と恥ずかしそうに言った後、その場から姿を消したのだった。
俺が呆然とその場に座り込んでいると、後ろから抱きついてくる女性が現れたのである。俺がその方向を見ると……そこにはリリアがいて……その体は光に包まれていた。その光景を見た俺は驚くしかなかった。リリアスの体が徐々に透けていき、やがて完全に消えていく……。そしてリリアの姿もそこにはなくなっていく……。俺は慌てて駆け寄ろうとするが……間に合わず……二人ともいなくなってしまうのであった。俺はどうしてこうなったか分からずにいたが、この国に起こった事をもう一度調べ直すことにした。するとこの国で起きた異変は『闇の女神』と呼ばれる存在が関係していることが分かった。そして、その原因は……。この国にいるはずの無い少女の存在があった……。
そして俺の考えでは……その子が原因ではないかと予想しているのである。俺はこのことをリリアに伝えたらどうなるかを考えてみる……。きっと怒るかもしれない……。だけど……。俺の中でどうしてもこのまま放っておくことが出来ないのであった。そして俺はリリアが言っていた『光の巫女』に会いに行くことを決意したのであった。俺はリリアスのことを忘れてはいなく……。必ず探し出すつもりだ……。
(絶対に見つけ出してやる……。だから待っていてくれ……。)
俺は心のどこかで、リリアを探すことが正しい選択なのだろうか?という疑問を持つようになっていた。それは俺自身がリリアに感じている感情についてだ……。最初はこの世界を救うために仕方なくやったのだが、今では違う意味で彼女のことが気になってしょうがないのだ……。俺はそのことについてリリアに聞きたくて、再び彼女と出会う決意を固めたのだった。
そして俺はルシと別れて、リリアム達と合流すると……。事情を説明した。リリアについては今は俺の側にいないと危険なため、ルシの方で探してくれるようにお願いすることにした。そしてリリアム達とはその場でお礼を言い合うとルシと俺はその場から離れる事にした。そして、俺たちは次の国へと旅立つことを決めたのだ。
次の行き先としては、ここから近い国である。俺達は隣国の【ラグーナ帝国・王国】へと向かう事に決めていたのだ。その理由というのは……ルシと初めて会った時に立ち寄った街で、帝国の兵士が来ていたことを思いだし、もしかしたらと思ったからなのだ。
ルシが転移魔法を使って連れてきてくれたおかげですぐに辿り着くことが出来た。そして俺たちはすぐに入国すると、すぐに皇帝がいる城に足を運ぶ事にした。城に着いた俺たちはすぐに、リリアと大魔王について聞くために、城の玉座の間へ案内された。するとそこで俺は信じられないものを見ることになったのだ……。それは……俺を救ってくれた時の大魔王と同じ姿であったからである。その姿を確認したとき……俺はすぐに大魔王の前に膝をついたのであった。そして……この人が俺の命の恩人であるという確信を持ったのだ。そんな俺の行動を見て、大魔王の側近たちは驚いていた。大魔王本人は、特に何も言わなかったが、大魔王の娘であり、大魔王の娘であるリリスとリリアムには大魔王の態度は意外であり……戸惑っているように見えた。
大魔王はリリアに対して、リリスを嫁に出して欲しいと言ってきていたが……。それを断るリリア……。俺はこの国では大魔王に逆らえない事を思い出してしまうと、大人しくしていたのである。そうしないと……命が無いという事が分かっていたために……そうすることしか出来なかった。そして大魔王とリリアの話を聞いてみると……リリアを妻にした理由を話始めた。その話は衝撃的なものであった……。実は俺を助けた際に力を使いすぎてしまい、回復するためにこの国にやってきていたらしい……。そこで俺はリリアに目を奪われ……一目惚れをしたのだという……。俺はその話を真剣に聞いており、その話を疑うこともなかった……。なぜなら俺は実際にリリアスとリリアに助けられていたから、信じても問題ないと思えるようになったからである。しかし俺は、リリアスを助ける前に助けてもらいたかったと思うほど……。俺はリリアのことを愛してしまいそうな気がするぐらい……。今のリリアに心を持っていかれそうになったのだ。それほど魅力的な女性だった。そして俺はリリアスを助けられてよかったと心の底から思うのだった。
(まさか……。こんな展開になるとは……思ってもいなかったよ。本当に……。俺に好意を持ってもらえるなんて夢みたいだよ……。リリア……君は必ず守ってみせるからな……。)
それからしばらく時間が経つと……。突然リリスが何かを感じ取り……慌て出したのだった。リリスは突然……俺に近寄るとキスをしてきたのである。俺は突然のことでびっくりしたけど……受け入れることにしていた……。だって俺もこの人のことが好きなんだもん……。そして俺は……この人の為に全力で尽くして行こうと思っている。そしてキスが終わった時……。リリスからとんでもない事実を聞くことになるのだった。その内容はリリスが闇の女神だと判明し、さらにこの国の闇の魔力を集めていたのがこの人だったのである。つまり……この人こそが闇の神で……。闇の魔力が溢れ出している場所を封印してまわっていたらしい。
この国にある闇は全て封印していたのだが……ある日に封印されていた闇の巫女が命を失い……。封印の力が失われてしまった。それにより今まで均衡を保っていた力のバランスが変わり……。リリスは命の危機に陥ってしまったのだという……。リリスはその時に自分の命を守るために自ら闇に落ちてしまい……この世界を闇に包もうとしていたらしい。
そのことに気づいたリリアスは、リリアと協力してリリスを倒す為に戦っていたが……力及ばず敗北し封印されてしまったのだという……。その話をリリスから聞いていたリリアは泣き出してしまっていた。リリアにとって妹のように大事だったらしく……その悲しみはとても深いものだと察することが出来たのである。
俺はリリスに対して「リリアと二人で幸せにしてみせますから……俺を信じてください。必ずあなたのことも、リリス様のことも同じくらい大切にしますから……一緒に俺を愛してくれませんか?」と言うと、リリスは泣きながら俺の胸の中に顔を埋めてくるのだった。
そして、リリスが俺の体に手を回してくると、彼女はリリアにも負けない程の愛情表現をするのだった。俺はその様子を確認すると……リリスに口づけをして抱きしめるのだった。その様子を見守るリリアスも俺との距離を詰めてきて、まるで三姉妹に囲まれているような感じだった……。
それからしばらくして、リリスが落ち着いた頃合いを見計らって……。これからの事を話す事にしたのであった。そして、俺はこの世界を救うべく行動を開始することにしたのだった。その計画のためには……まずは仲間が必要だった。そのためには……やはりこの人たちに頼るのが一番だと思い……。俺はこの場に全員を呼び出したのである。
そして俺は……これから起きることを伝えると……全員が協力してくれて……俺は嬉しかったのだ。俺のわがままにつき合ってくれる彼女たちが、頼もしいと思えるようになったのであった。俺は彼女達と一緒にいるためなら何でも出来ると思ってしまいそうである。だから俺は彼女達のためならば命を投げ出してでも、どんな困難に立ち向かってもやり遂げられるだろうと確信している。そして俺は、この国で得た仲間を大切にしていくと決めたのであった。
そして俺の仲間は……今ここに集まってくれた5人である。1人目はこの城の主であり、皇帝であるリリア・リリスの父で、大魔王である『ルーシア・ラグーナ』。
2人目の女性は、この国の女王であるリリスの姉『リリア・ラグナート』である。
3人目の男は、『ラグーナ帝国 騎士団長のアベル』。
4番目の女の子は、魔導王である『ミレアナ』である。
5番目は『魔道王の弟子』で、魔剣使いの『ミリアン・ラグーナ』である。
この五人をこの国に招き入れた俺は、今後の活動の方針を話し合っていた。すると……。ミリアが……リリアがリリスが封印したはずの存在だということに気づく。俺はそのことを伝えようと思ったが……タイミングが悪かった。それは俺が大魔王に質問をしていた最中だったからである。俺は大魔王の答えを聞き逃さずに耳を済ませていたのだ。俺はミリアの言葉に対して……正直言うべきかどうか迷った。するとリリアが……俺の手を取りながら、「大丈夫だよ。」と言ってきてくれるのであった。俺はその言葉を聞くと安心感が込み上げてきたのであった。そして俺は、リリアを信頼することにしたのだ。そして俺と大魔王のやり取りを黙って聞いていてくれたリリアは、リリアスと二人で話がしたいと言ってきたので、俺は大魔王のそばから離れていく。大魔王はそんな俺を引き留めようとしていたが……俺は、今はそっとしておいて欲しいと思い大魔王を睨むと……大魔王も諦めてくれたようで……おとなしくしてくれたのだった。
そして俺達は二人だけでリリアのところに行くと……俺達はその場でリリアの話を聞くことにしたのだ。
「お父様と私のお母さまが、闇の女神だということを知っているということは、あなたは本当にあの大魔王様なのですか?お母様は私が生まれる前から……この国を出て行ったと聞いていましたが、そのあとのことは全然知らなかったのです。お母様の行方についての情報は一切ありませんでした。私は……お父様に聞こうとしたこともありましたが……その時のお父様の様子を見てからというもの、どうしても聞くことが出来なかったのです。だけど……。こうして再会出来たからこそ、私は知りたいと思うんです!そして……お姉ちゃんとお母さんに会いに行きたいんです。ですからお願いします。お母様とお姉様の場所を教えてください。そして……連れて行ってください!」
そう言って、深々と頭を下げるリリアの姿を見ると……俺は胸が苦しくなった……。リリアと初めて会った時はこんな状況になるなんて思いもしなかったが、俺はリリアに対して特別な感情を抱いていたのだ。俺はこの子だけは助けようと必死になって行動した結果なのだ。それに俺とリリアとの出会いが……俺に大切な人を見つけるきっかけになったのだ。そんな大事な人であるリリアと再び出会えた喜びや、リリアが無事に生き延びていたことへの安堵……。そういった感情が入り混じり……。俺は涙が出そうになっていた。だが……。俺は泣くわけにいかないのだ。
俺は一度、深呼吸をしてから……リリアの目を見ながら話すことに決めたのである。そして……俺は真剣な眼差しでリリアを見る。
「わかったよ……。リリア……。俺は君の気持ちに答える為にも……。約束しよう!!絶対に君の家族を救って見せるよ。そして、リリスの事もね……。君に辛い思いをさせるかもしれないけど……。信じて待っていて欲しい。」
そう言って俺はリリアに対して手を差し出すと、その手をしっかりと握ってくれるのであった。
そして、俺と大魔王はその場から離れると……。これからどうするのかという話をしたのである。俺は……このまま大魔王を放置しておくのは危険なのではないかと思い……リリアスと話し合った末に、リリスが闇の女神だと告げた上で、俺の仲間に引き込む事にした。すると……リリアの態度が急変して、なぜか俺に抱きついて甘え始めたのである。俺はそのことに戸惑いながらリリアを見ていると……いきなり顔を近づけて俺に口づけをしてくるのであった。
リリアは俺に対して、キスが終わると俺のことを熱っぽい目で見つめてくると、さらに大胆な行動に出るようになる。なんと今度は自分の服に手をかけて脱ぎ始めたのだ。俺はもちろんその行動にびっくりして止めようとしたのだが、その隙に俺の腕を掴み拘束してしまうと、そのまま俺を押し倒し俺の上に馬乗りになってしまったのである。その状態で俺は、なんとか抵抗しようとしたが、さすがに大魔王の娘だけあって……その力は凄まじく……まったく歯が立たなかったのである。
それからしばらく経ってもリリアが離してくれないため、俺は諦めて大人しくしていることにしたのである。なぜなら俺はリリスを助けるために……この国を出ないといけないからだ。そして、この国を出る前にリリスともう一度会いたいと願っていた。しかし、今のリリアの状態から察するに、リリスと会うのはかなり難しくなっていたからだった。俺はとりあえずこの状況をリリスに見られるのはまずいと危機感を抱き、この場を離れることにして、この城の出口に向かって走り出したのである。
そして俺は……リリアを引き離してリリスを探しに行くのだった。俺達が今いるこの部屋の外には、この国の兵士たちがいるのだが……みんな寝ていたので起こすのもかわいそうだと思い……部屋から外に出るとそこには、一人の女性が俺のことを迎えに来てくれていて、俺のことを見つけるなり、嬉しそうな表情になりこちらにやってきたのだ。その女性は金髪の長い髪と碧色の瞳をしており身長が高くスタイル抜群の女性である。年齢は俺よりも年上の20代前半で……どこかの国の騎士みたいな格好をしていた。彼女はリリスからの命令で俺のことを迎えに来ていたみたいで……城の入り口まで案内してくれている途中のことだった。そして、城の外にまで出てくると……突然空から光の槍が落ちてきて……リリアに向けて放たれたのである。
俺はすぐに反応をして……リリアを守ろうと動いていたのだ。そして……俺達の前にはリリアと同じような服を着ている女の子が一人現れたのである。その子は黒髪ショートで黒い目をしていてとても綺麗な顔立ちをした可愛い女の子で……身長も低く小柄で幼い顔つきをしていた。
「ふぅ~ん。あんたが大魔王を操っているという女神なのかな?でも残念だったわね。私が相手じゃなくて、お姫様だったとは思わなかったけど……。それでもいいかぁ……。私のおもちゃになってもらえれば、どちらでもいいことだもの……。それにしても……どうしてこの世界にいるの?あの子が失敗したっていうことかしら……。まあいいわ……。それよりも、あなたは邪魔をするつもり?」と女の子は言ってくる。俺はその言葉を聞いて……この子はリリアだと確信をするのだった。俺の仲間達も気がついたようで、戦闘態勢を取っていたのだった。俺も仲間と共に戦う事にした。そして……俺達はお互いの戦闘が始まったのだった。
俺達はそれぞれ武器を出して攻撃を開始すると、女の子は魔法を使いだし、俺達を攻撃し始める。俺は女の子の攻撃を防ごうとした瞬間……なぜか俺の動きが止まり、体が思うように動かせなくなっていたのである。
(なんだ!?一体……俺の体に何が起きているんだ!?まさかこの子の仕業なのか?)と思いながらも、必死で体を動かそうとするが全く動くことができなかった。
俺は焦りながら、必死に考えているうちに……あることに気づいたのだ。そして俺の仲間の3人が女の子の攻撃を受けてしまったのである。
そして俺は……動けるようになったが、俺の仲間のうち2人は気絶してしまいその場に倒れてしまう。
残りの一人はなんとか耐えていたようだが、ダメージがかなり大きいようだった。そんな仲間の様子を見ていた女の子は、「あはははっ……。あなたたちの力なんて……私の前では何もできない無様なものだねぇ……。この国最強のお父様の力を受け継いだ私が本気を出した今……誰にも負けることは無いんだよぉ!!さぁ、私に遊ばせなさい!!」と言うのだった。そして……女の子はまた光の柱を放ち俺達に攻撃を仕掛けてきたのである。俺はそれをなんとか避けることに成功するが……リリアがまともにその攻撃を受けて吹き飛ばされてしまっていた。俺はリリアのもとに駆け寄りたいと思ったが……まだ目の前に立っている女の子が立ちふさがっており、そのせいで俺はリリアの元に行けずにいたのだ。そして俺は仲間に声をかけるが……すでに二人は気絶しており、最後の1人もかなりのダメージを受けていたのである。
「リリス……。なぜだ……君は……こんな事するような子じゃないはずだろ!頼む……正気に戻れ!」と俺は言うと……リリアの攻撃を食らい、リリアの近くに吹き飛んでいくのであった。俺は、リリアの攻撃をくらい、地面に叩きつけられると、リリアはリリスに向かって歩いていき、拳を振り上げる。
リリスはその動きに反応できず……なす術も無く……殴り倒されてしまう。
そんな状況を見た俺は、急いでリリスのところに行き、リリアを制止しようとするが……リリスも俺を殴ってきやがったのだった!しかも……かなり強いパンチだったため……俺は吹っ飛ばされてしまい……意識を失うことになる。
俺は意識を失いそうになる中……。俺は最後に見えた光景は……。俺のことを殴り飛ばす寸前に悲しそうな顔をしていたリリスの姿と、涙を流しながら悔しそうにしているリリアの姿だった……。俺はこの二人に何があったのかを考える間もなく……俺は意識を失ったのである。
俺は意識を取り戻してから起き上がると……そこにはリリアとリリスの姿が視界に映る。俺が起き上がったことに最初に気づいたのはリリアだった。
俺のことを心配してくれたような表情をしながら、「あっ……お姉ちゃんとお母さんがやっと戻ってきた……。本当に無事で良かった……。もう離れないで……。」と目に涙を浮かべながら、俺の体をギュッと抱きしめたのだ。俺はいきなり抱きつかれた為少し驚いたのだが、俺は優しく頭を撫でてあげて安心させてあげると……そのまましばらく抱きしめられていた。リリアに抱きしめられ……すごく良い匂いがしてくる。
すると……俺が抱きついたことで安心してしまったのだろう……。リリアはそのまま眠りに落ちていくのであった。そんな姿を俺はずっと見ていた。そして……リリスが近づいてくる。
するとリリスの方からも抱きついてきたのだ。リリスの行動にも驚き戸惑ってしまったのだが、俺はリリスの肩に手を置くと……
「おかえり……リリス。ただいま……。会いたかったよ……。」とリリスに告げると、リリスの目からは大粒の涙が流れていたのである。そんなリリスを俺は抱きしめると……しばらくの間二人で抱擁を交わしていた。リリスが泣き止むまでの間……。そして、しばらくしてから、リリスに話を聞くと……。
まずリリスの話は、俺は知らないと思うけど……。リリスの双子の妹リリムが、俺のところにリリアとリリアムと一緒に向かってきて、大魔王と話をすることになったらしく、そこでリリスとリリムの話を聞いたみたいだった。リリスは、リリアを救ってほしいと俺に伝えようとした矢先にリリアに捕まり、この城に連れてこられて、そして俺の仲間になったと聞いていたリリアがいきなりリリスの首を締め上げて殺そうとしたのでリリスがリリアから逃げようとしたところをリ
神剣使いの異世界転生 あずま悠紀 @berute00
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