外伝:パーツィーと剣聖


 この世の中に浮気という物をしない人がいるらしい。

 だけど堂々と浮気していると名乗る人は見たことない。

 けれども離婚する人は時々見かける。

 でもでも理由を聞くのはNGらしい。

 だから浮気は広まらなくて見かけない。

 だってだって浮気した人を見てみたい。

 見るだけなら簡単。私が浮気すればいい。


「パーツィー。」

 アームドパルトが振り返ると女の人が、いや女騎士が立っていた。

「お前か。何か用か。お前の持ち場は門番の教育だろ。」

「いやー♪今日私休みなんだよね♫ちょっと話があるっていうか相談が・・・ね♪」

 仕方がない。いまはアーサー達に見られる前に街の方に行こう。

「わかった。いつもの店でいいだろう。丁度喉が渇いていた。行くか?」

「いくー!(喜)」

 アームドパルトの言う店まで城下町を歩き女騎士の手が纏わりつくのをはらいながら徒歩約30分。店に入るといつも通り窓際の真ん中にある席に案内され注文を済ませた。

「いつものでたのむ。」

「わたしもー!(楽)」

 こいつ、つまりこの女騎士と昼食を食べるのはいつもの店で、いつものメニュー、極めつけはいつも同じ席に座る。

 これだけの理由である。その実アームドパルトは一緒にいて楽しいか。ではなくいつも同じかわらない"日常"を求めているのだ。

「パーツィー。そろそろさぁ私も彼氏とか欲しいんだよね(恋)いい人いないかなーって(紹)誰かいないかなー(チラッ)」

「お前の言いたいことは恋とかチラッでわかる。だが知ってると思うが俺の年齢はまだお前と同じで14だ。紹介しようにも年上の騎士しか周りにいなくてな。残念だが身近で探してくれ。」

「パーツィーって察し悪いかなー?パーツィーと私は同い年でしょ?で、お互い恋人いないわけでしょ?紹介でなくてこの出会いを大事にしたいわけで(爆)」

「俺か?お互い知らないことが多すぎると思うんだけど。俺が何故名前ではなくお前と呼ぶか知ってるか?率直に言って名前知らん。」

「まあそれはお互い自己紹介してないわけで(謎)じゃあ改めて(静)私はウィリアム(名)貴方は?」

 アームドパルトはもぐもぐといつもの。で来たいつものランダムメニューである何かを必死に噛んでいた。この店の店主とはオープンした時このウィリアムと名乗る女騎士と訪れてからこの店のメニューを全部くれ。しかし一度で食べるには多いのだ。これから来る時はこの席で、いつもの。というから店主が選んで持ってきてくれ。だが同じメニューはいらん。同じものがでたら金を払わずこの店のメニュー上から下まで全部食わせてもらう。いいな?

 と脅しをかけたが隣の女の子は(食)とか(減)だの(早)といった単語、というか一文字しか喋らない娘だったので冗談かと考えその日の1番のオススメ、でもこの子達でも手が出しやすい値段の美味いメニューを出した。

 だけどもそのカップルはまた来てくれた。しかも座った席が空くのを外で待ちその席に座り

「いつもの」

 というのでつい嬉しくなり前とは違うメニューを出した。このカップルがお得意様になるのならそれは店の得で、それ以上に求めるものもなかった。それから昼間の間はその席は店が満席にでもならない限り誰も通さない。と。この店がそんなに繁盛したことはなかったが後にその2人がカップルではなく騎士の同僚だとわかり

 密かに"運が良ければ騎士を間近で見れる店"とビラを配っているのは多分バレてない、はず。

 だが店主は私は約束は守っている。メニューを全部食べ終わったら2人がどうするのかはわからないがそれでもメニューに載ってないものは出しはしない。2人の会話を仕事片手に聞いていて誠実さが伝わるのでそれを黒く染めたくはないと。そんな大人のエゴなのだ。

 話を戻すがアームドパルトの食べているメニューはこの店の食いたくないメニューの三本指に入ると言われる「ゴムのように硬い!熊の肉の一枚肉」というメニューだった。

 店主に悪気はない。その証に女騎士にはいつも同じだがその日によって味付けが変わる特別メニューの「虹のパンケーキ」を出していた。

 そのパンケーキはメニューにはないが女騎士は特に注文は変えなくていいと後日行って来たのでそうしてるだけ。

 アームドパルトは名乗るのか飲み込むのかそれとも水で流し込むか。いや最後のはダメだ。店主が作ってくれた物しかも味だけならなかなか美味いと来ているそれを水で流し込むのは失礼にあたる。騎士道精神にかけて噛み切ってやる

 それで名前も伝える方法。

 アームドパルトはポケットからペンを取り出し、手や口を拭くナプキンと呼ばれる紙に名前を書いた。

(アームドパルト)

「アームドパルト?じゃあ略してパーツィーで(笑)」

 口の中の謎肉をゴクリと飲み込むと喉から飛び出すのを必死に我慢し、会計を申し出た。

「店主。味は最高だった。だが」

「あっ割り勘で(願)端数はパーツィー持ちなので(任)」

 アームドパルトはもう喋ってやるか。と店主に金を払い店を後にした。

 その後結局何の話がしたかったかわからなかったが早くトイレに駆け込みたくなりわかれ、家に急いだ。


 このウィリアム、通称ウィルは語尾に()がついているがこれは彼女が騎士を挫折しかけたとき、自分と対面した相手にのみ(。)ではなく()に一文字入れたものを理解させる、という特殊なスキルだった。このスキルは対面してさえいればどんな時でも発揮するというもの。

 そして騎士と騎士の試合も対面で行われる。

 なのでこのスキルを連打することで相手に考えることを許さず簡単な何パターンかを予測すれば勝てる絶対技術この世にあると言われていても誰も知らない。だけど使える人間はいる。

 パーフェクトアーツ。と呼ばれるスキルだった

 彼女はこのスキルを使い剣術大会を制し、

 剣聖と呼ばれるほどの人物なのだ

 アームドパルトは城にいて大会など遊びだと一蹴する人だったので出会うことはないかもしれないと思っている人もいた。ウィルだ。

 城と街の騎士、兵士ではレベルが違うのだと。

 しかしあの日出会ってしまった。

 遡ること4年前


 人員の異動とか手違いで街の警備に回されたウィル。そんな仕事は教わってないし、したことがない。だから早く門番に戻ろうとして手柄をとることに躍起になっていた。

 その日は曇り一つない空に太陽が光っていた。

 いい天気だと思っただろう朝5時でなければ。

 何かの手違いは重なる時は重なる。

 ウィルがいる場所にいるべき人がいる。

 たがウィルにはそんなことわかるはずがない。

 きっと門番なんかが剣術大会で優勝するから、いや、スキルを使うのは反則だったのかもしれない。そうとしか思えない状況。行けばわかると先輩に言われ来てみたが女の子の迷子がいただけで家に帰るよう促しただけだった。

 そこに立って上を見上げるだけ。今日はもう帰っていいってことかな?幸いこの仕事の後は好きにすごしていいといってたからなぁ。

 っと、なんか誰か走ってくるなぁ。

 !これか!この男をここに誘い込んで捕まえろってことだね!

「そこの!とっ、とま、」

 ウィルは声を出すのが苦手なので叫ぶのは慣れてない。つまり配役ミスってことか。

 ウィルに男が気づいたが

「チッ、なんでこんな時間に人が、」

 そう悪態を吐くと路地へと曲がっていった。

「えっ?あっ。追いかけないと、。」

 ウィルが曲がって追いかけると男は止まり

「なんだ?やっぱりか。お前女だろ?人質になるのが希望ならそうさせてもらおう!」

 ウィルが女の子だといったがそれは否定しない

 だがタダで人質になるわけがないでしょ。

 ウィルは限界まで引きつけて町の警備についた時渡された使い道がよくわからない棒で殴る。しかもウィルの考えた痛そうな振り方で。

 ウィルに近づいてきた暴漢に気づかれないように棒に手をかけたが、暴漢の視線がふと上へ向いた。そのとき空から少年がカカト落としで男に落ちて来た。その一撃はドゴォと痛いとか通り越して死んでないか心配になる音がした。

「はぁー!手間かけさせるな!親父も確かに悪かった!でも盗っ人を捕らえられたからヨシっ!」

 少年がこちらに気づき

「こんなところに人とは!安心してくれ。この男は城に連れて行って出てくることはないだろう!連行?ってやつだ!」

 ウィルはこの少年に聞いた

「君。名前は?城って?その格好って騎士見習い?」

 少年は自分の格好をみて

「これは寝巻きだ。名前か。パー、」

 と言いかけて噛んだ

「パーツィ?よく聞こえなかったもう一回。」

「パーツィーだ。」

 消え入りそうな声で精一杯振り絞り言った。

「私はえぇーと。剣聖、かな。」

 間違ってはいない。剣術大会に優勝した時にそう名乗ってよい。と王様にいわれたから。

「けんせー?ケンセー?男みたいな名前だな。ズバリ偽名だろ?まぁ俺もコイツを連行しなきゃならんのでな。詳しいことは聞かない。さっさと家に帰れ。」

 ウィルの話を聞かず男を背負いグッと片足を曲げもう片方は、ってみてる場合じやないか。

 と思い声を出すより先にパーツィーが消え、気づくと屋根から足音が聞こえて遠ざかっていった。

 その日は休んでいいと言われていたがなんとなく門の近くで木剣を振って自分の技を編み出すことにした。

 しかし午後になると先輩が慌てて城の方から駆け降りてきた。

「ウィル!私王様と話しちゃった!ってそれより王様が剣聖に会いたいって。ウィル呼ばれてるよ!着替えて城に行こう!」

「王様が呼んでるなら早く行った方がいいのでは?この格好でも元々門番の私に違和感はないですし。」

「王様だって女の子の身だしなみに時間がかかるのはわかってくれるよ!」

 そういうもんかなぁ?着替えって言ってもこれと同じ服しかない。というか制服しかない。

 だけど先輩をたてて着替えてこよう。

 着替えにどのくらいの時間が掛かったかはわからない。でもそう長くは掛かってないと思う。

 城に行くと城の兵士に門を通され、メイドに案内されてここからは私が、と兵士が案内した。

 あまりに人がかわるがわる案内するので異世界に迷いこんだかと思うほどだった。

 何回か人が変わると同じところをグルグル回ってるんじゃないかと不安になり兵士に尋ねた。

「あの。ここさっき通ったとおもうんですが」

 兵士は、ははっと笑い

「実はそうなんです。城の兵士やメイドは外に出ることがほとんどないので剣聖というものを見たいと皆が言うので。」

 ウィルにもそのひとたちの気持ちは分かる。

 ウィルが門番に立候補したのは外の情報が入って来るからだ。

 だから文句を言わずかわるがわるメイドと兵士の話を聞いた。

 何時間もたったような気がする。がついに最後の1人になったらしい。部屋に通された。

 その部屋には女の子と王様らしき人。

 とりあえず膝をつき帯剣していた剣を床に置き、王様の言葉を待った。

「剣聖。忙しい中よくぞまいった。しかしアーサーと遊ぶのがいくら楽しいとはいえこんなに遊んでいたのははじめてだ。」

 女の子が

「王が呼び出して3時間26分たってますね。アームドパルトとパーシバルが探しに行くだの行かないだの言ってたのが20分くらい前です。アームドパルト、つまり息子の方はそろそろ帰って来るかもしれません。1番最初に探しに行ったので。」

 と喋っていると後ろからコンコンとノックの音がして王様がうむ。と結構デカめの声でいうと

 ガチャっとドアを見たことある顔が入ってきた

「パーツィー!?」

「む?お前は男女か?アーサーに客人がくると聞いていたがまさかお前か?」

「アームドパルトよ。客人にお前とは。しかし剣聖がこんなに幼い少女とは。剣聖よ。アーサーに剣を教えてやってくれぬか?報酬はそなたののぞみを聞こう。どうだ。」

「はっ。ありがたきしあわせです。私の願いは一つしかありません。門を守る門番にしてくれればそれで。」

 パーツィーは遠慮と言うものを知らないらしい

「むぅ?では何故お前は最初から門番を希望しなかったんだ?仕事がキツイからかえてくれということか?どこもキツイのは一緒だが。」

「違うんですパーツィー。最初門番として働いていたのですが剣術大会のあと急に町に転属になって」

「嘘はよくな、」

 パーツィーははっとして

「まさか親父殿とパーシバルが?」

「うむ。そうかもしれん。最近良くない噂を聴く。外のメイドに全員総がかりでアームドパルトとパーシバルをさがせと伝えてくれ。」

 パーツィーがはっ!といい外のメイドに伝えると外のメイド達の探し周る声や足音が城が崩れそうなくらいドタバタと響いていた。

 ウィルが兵士も合わせてだが3時間くらい掛かる人数がいる。ウィルは2人はすぐ見つかると思っていた。が、実際に見つかったのは半日後だった。ウィルはヒザがバカになるのではないかと思っていたがアーサー以外はそれに気づいていなかった。

 結局アームドパルトは城の宝物庫の扉の前で、

 パーシバルは自室でふてくされていたと。

 2人の言い分を聞いたがいい歳したオッサンが2人でなにしてんだとアーサーに言われ、オッサンという点だけ強く否定してパーツィーがそこを否定しているのはおかしい。つまり2人の喧嘩はオッサンと言われることより小さいことだ。といわれ王様に説教をされているオッサン達は小さく見えた。とかそんなのどうでもいい

 ウィルの足が限界を超えてもはや木の枝で叩かれただけで折れそうな、いやむしろ早く楽になりたいということしか考えられずに思考が停止していた。

 アーサーがやっと助け船を出した

「剣聖さんはそろそろおねむですね。アームドパルト(小)背負って送って行ってあげると良いでしょう。」

「アーサー。俺も眠いんだが。」

「(小)眠れない夜が来ても良いと?」

「悪かった。それはやめてくれ。おいお前。とりあえず抱っこでいいか?」

「・・・・・」

「本当におねむとはな。ふんっ!」

 パーツィーがウィルをお姫様のように抱きかかえると部屋から出てそのまま門番の宿舎まで運んだ。パーツィーは確かに筋肉ダルマかもしれないが、いくらなんでも気を失っている同い年の女の子を城から王都の端にある宿舎に運ぶのは無理があったのかもしれない。がパーツィーのアーサーのことを考えてアーサーに仕える為にこのくらいはしてやると思わせているのは王の素質を感じる。

 宿舎の前まで行くとウィルの先輩がいたので

「詳しいことは後だ!ぜいぜい。はあはあ。

 とりあえずコイツを部屋のベッドに寝かせてくれ!」

「ただごとじゃないわね。OKお姉さんに任せて!」

 ウィルを部屋に運びベッド、は重すぎたので乗せられず結局床に寝かせて布団を被せてパーツィーの所へ戻ってきたのだが、パーツィーはもういなかった。

 その後アーサーは剣を習うはずだった。がアーサーの予定通りウィルは寝込んでしまっていた

 アーサーの予定と一つ違ったのは、パーツィーつまりアームドパルトまで熱と筋肉痛更に頭痛なんかも訴えていた。

 この予定外がありアーサーは大人しくウィルに剣を習うことになった。

 この話を思い出しなにがあったのかを思い出した。この話がありウィルは常にスキルを発動させることにしたのだ。難しいことだったがこれを成し得た時ウィルは真の剣聖と呼ばれる程の絶対技術を身につけていた。

 そしてその弟子であるアーサーもまた特殊なスキルが身につくのは必然だった。

 アーサーのスキル。それは相手の思考を自分の考えにプラスする。つまり足し算か?と思わせるがその実態は相手が考えれば考える程アーサーの思考を加速させる。

 しかしアーサーはウィルに勝つことはなかった

 年齢は同じだが経験が違った。

 それは僅かな差でありアーサーが城から出て人を知り、町を知り、世界を知ることですぐに追い抜きそして経験値としてしか意味をなさないと知る。それはウィルだからこそ。それを望む彼女の願いは他にあるのだから。


 閑話休題読了。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アーサー王100本の剣伝説 中村翔 @nakamurashou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ