23本目の剣

「ちっ!気が滅入るぜ」


男が舌打ちとともにイライラしているさまを吐き出す。


門番はその様を黙って見ていた。


というのも男がここにいる理由は通行証がなかったため。


男は王都に入るのに通行証がいると知らなかったためである。


その時扉が開きもう一人の門番が入ってきた


「ああーっと、入るタイミングまずった?」


門番がぱしん!と紙の束で殴る。


「あなたはまず、門番であることを自覚しなさい。」


「いたい」


もう一人の門番から資料を受け取るとうなづき立ち上がった。


「あなたが商人であることはわかりました。で?商品はどれですか?」


男の目の前には整頓された荷物が広げられていた。


とてもじゃないが売れるものがあるとは思えない。


「俺たちは旅の商人で、王都にいきゃあ売れそうなもんがあるかと思ってたんだよ」


「・・・そうですか。そういうことなら仕方ありませんね。一度帰られて通行証をお買い上げいただき、またこられてください。」


「あぁ!そうかよ!じゃあな!!」


男が椅子を蹴り去っていった。


「ふー。けんせー、若者言葉は仕事で使っちゃだめだよ。特にああいう輩にはね。」


「はい!門番の心得その3!相手になめられてはいけない、ですね!」


けんせーと呼ばれた少女は敬礼しながら答えた。


「けんせー・・・デートしよっか?」


「でもせんぱい女じゃ・・・」


「女の子同士で遊ぶこともデートっていうよ?」


最近のことはけんせーにはわからない。


けんせーは仕方なくこう答えた。


「せんぱいの奢りならいいけど......」


「じゃ、決まりね。明日には仕事片付くと思うから。」


せんぱいは書類に目を通していった。


———次の日


近くの村でピクニックということになった。


「はあ・・・休みの日って言っても人少ないなあ。」


「おねえさん。」


少女が唐突に話しかけてきた。


(この前の女の子か・・・ストーカー?)


「お姉さんに質問。パーシーの好きな言葉はなに?」


「パーシーってだれなの?うーーーん。例えばその人がパーシバルさんなら『質実剛健』とか?でも、こうも言いそうだよね。『人とは剣の道にあり』とかいう造語?みたいな......?」


「けんせー?なに一人でぶつぶつ言ってるの?こわいよ・・・。」


けんせーは謝るとサンドイッチを一口頬張った。


「もぐもぐ......もぐ、ごくん。」


「けんせー。そういえばこの村にもあるらしいよ?聖剣。」


アーサー王が引っこ抜いては伝説をつくるというあれか。


「でもせんぱい。このまえ私が同行した時はかなーり遠くまでいきましたよ。」


「ふむふむ。それで?」


「私がアーサー様なら近いところから回ると思うんだよ。」


「そうだねー。まあわたくしは知らないけどなんかあるんじゃないの?事情ってやつがさ?」


アーサー様か。


「その剣はどこに生えてるんですか?」


「生えてる・・・言い得て妙だね。あれあれ。子供が集まってるところ。」


せんぱいが指さしたところを凝視した。


なにやら子供たちが遊んでいる。


近づいてみるとたしかに剣らしきものが生えていた


「この剣は近くにあるものを引っ張る魔眼らしいよ。」


子どもが投げたボールが軌道を変えて剣に吸い付く。


「なるほど・・・たしかに脅威ではないかな。」


けんせーが妙に納得していると


「おねえさんはあーさーおうなんて信じてるの?」


子どもたちが集まってきた。


なになにー?


「信じるも何も実在しててね?」


アーサー王を知らないのか?


「あーさーおう?あっ!知ってる!ママが夜に話してくれる昔話だ!」


「あれでしょ?悪漢をどったばったと倒していくやつ。」


どうやらアーサー王伝説がここまで根付いているものらしい。


「わ、私せんぱいを待たせてるから行くね!」


けんせーがせんぱいのもとに駆け寄った。


「けんせーって人に好かれるよね。子供が生まれたらどんな子になるんだろうね。」


「せ、せんぱい・・・そういうのは勘違いされるからやめた方が・・・。」


「せんぱいとして聞くけど、アームドパルトのこと好きでしょ?」


「アームド・・・?」


「ああ、けんせーはパーツィーって呼んでるんだっけ?」


けんせーがゆでだこのように赤くなった。


「ち、ちがうよ!パーツィーは同期で、知り合いで、優しくって、かっこいいだけの・・・」


「その割には途中から褒めてるけど?」


けんせーは顔を見られないように伏せてつづけた。


「パーツィーは私のことなんてどうとも思ってないだろうし・・・。」


「玉砕してみれば?骨はおねえさんが拾ってあげるからさ?」


けんせーの短い髪を指先でいじってみる。


「すき・・・きらい・・・すき・・・きらい・・・」


けんせーの横で花占いをしだした。


「きらい・・・すき!」


「せんぱい・・・花占いって最初に花びらが奇数か偶数か数えれば結果がわかるんですよ。」


「たはー」


せんぱいがあたまを手で叩く。


「こういうところもせんぱいって感じ。うん。パーツィーにはそれとなく聞いてみる。私のことどう思ってるかを。」


「そうそうその意気だよ。さてと、帰ろうか?」


(パーツィーと結婚したら先輩とこういうこともできなく・・・)




「さて、けんせーさんはせんぱいのことをどう思っているのでしょうか?」


「次のお話はパーツィーと剣聖です。おやすみなさい。」


23本目の剣読了。

Thi・24本目の剣をはじめますよろしいですか?

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