22本目の剣

「剣聖さん。お久しぶりです。」


「アーサー王......!!」


「アーサーはすでに剣聖さんも飛び越してお星さまになったんですよ・・・!ゴゴゴ」


剣聖が剣を構える。


「剣聖は剣聖でけんせー!けんせー!!」


ジリリリリリリリリリリ‼‼‼


「けんせー!あさだよ!」


眠たい目をこすりつつ目覚まし時計を止める。


「せんぱい......今何時ですか?」


シャー―――  先輩がカーテンを開ける。


「もう7時過ぎ!けんせー寝すぎ!これでアーサー様に剣を教えてたっていうんだから不思議だよね?」


門番がシャコシャコと歯を磨きつつ昨日の光景を思い出す。


『アーサー王の伝説にまた一幕。北の農村で伝説をつくる!詳しくは今日発売の新聞にて掲載予定。』


すごいとしか言えない。私は剣聖ではあるけど、何の変哲もない14歳の少女ですよ?


「がらがら・・・」


口をゆすぐついでに顔を洗う。


手探りで手拭いをさぐりとる。


共用の洗面台の壁に掛けてある予定表をみる。


(えっーと......私休み?そういえばアーサー・・・様について行ったのも門番してた扱いになるって言ってたっけ?)


「けんせー。手紙に新聞、チラシに水道光熱費の支払い確認書ほいっ。」


「ありがとうございます。」


門番は受け取ると1分ですべてに目を通した。


その中に・・・。


『剣聖に密命を命ず。一二〇〇(ひとふたまるまる)時に王立公園にて待機されたし。』


———王立公園


(一二〇〇って12時だよね?密命ってなんだろう?)


「おねえさん。また会ったね。今日も一人?」


この前の少女だった。


白いワンピースにベレー帽も白。どこかのお嬢様?って感じの清潔感ある振る舞いをする少女。


「おねえさんは人に話しかけるときどんな表情をする?」


「ひょう・・・じょうですか?場合にもよると思うのですけど楽しいときは笑顔ですし、悲しい話の時は・・・いや、普段の表情?自分は無表情を心構えていて・・・パーシバルは笑顔で話された方が気分いいよね・・・?」


門番が目の前を向くとアーサー様がしゃがんで見上げて・・・。


「あっ!アーサー・・・様!私は密命を受けて、はっ、密命だから喋ったらだめで・・・。」


「わかってます。密命はアーサーの護衛です。アームドパルトの分を剣聖さんで埋める形です。」


「はっ!アーサー様の護衛の任。受けます。うけたまっわっあいたー!舌嚙んだ。」


パーシバルさんの説明によるとまた、馬車で移動するらしい。


騎士さんはみんな歩くのが億劫なのかな。


「パーシバル・・・さんは笑顔で話されると気分がいいのでしょうか?」


「何を唐突に。ですが、世渡りの方法として愛想を周りに振りまくのは有効だと思いますが。」


「にこっ」


「にこっ」


「アーサー......変な笑い方をしないでください。」


「ひっひくひくっ!にこっ」門番は顔が引きつっている。


「にこっ☆」アーサーは自分の笑顔に自信を持っている。


(笑顔は人を幸せにする・・・自信のこもった笑顔は)


「にこーーーっ☆」


(自信のこもった笑顔は”とくに”)


———どこかの村


「そういえば、方角を見ずに来てしまいました。御者さん、ここは王都から見てどの位置に・・・」


パーシバルが後ろを振り向くと馬車は元からそこに何もなかったように消えてしまっていた。


「アーサー。馬車はどこに・・・アーサー!?」


前を向いても誰もいない。


「———ーーー———!」


遠くで人が叫んでいるような。


「剣聖さん。パーシバルさんはどこへ?」


「えっと、後ろにもいないし声も聞こえないし、迷子?」


門番は周りを見渡しつつアーサーの護衛をしていました。


「剣聖さん。先に進めば合流できるはずですよ。進みましょう。」


「わかった。アーサー様がそういうなら。」


村を突っ切るようにパーシバルさんを探していきました。


ですがパーシバルは影も形も見当たりません。


「アーサー様?何かおかしいよ?パーシバルさんほどの人なら村人を皆殺しにしてもおかしくないし・・・。あれっ・・・?」


「確かにそうですね。村人がみんな血を流して泣いています。」


『うぅ・・・いてぇよぉ・・・おれのうでぇ・・・』


『ひっく・・・ひっく・・・おかあさんはどこ?わたしのくまさんは?』


『・・・』返事をすることも辛いようです


「アーサー様・・・やっぱりパーシバルさんほどの人間になるとただの人間は路傍の石ですね。」


「パーシバルさんの前に立つのが悪い。国最優の騎士はこうでなくては。」


アーサー様の後ろから産まれたてのひよこのようについていきました。


もうすでに村を”3周”はしたでしょうか。


通るたびに様々な人々の飢えや渇きを再現していくようでした。


剣聖はスキルをつついてみることにしました。


「(死)」


「剣聖さんはこの美しい世界をそう表現するのか。」


振り向いた少女は・・・アーサー王ではなく・・・ガヘリスという騎士見習いとよく門を行ったり来たりしていた少女でした。


「あなたは・・・ガヘリスの兄妹?」


「そうだとも言えるし、私が否定すれば証拠もない。」


剣聖は静かに剣を抜きました。


ギンッ‼


剣と剣がぶつかり火花が散ります。


ギンッ‼ギンギンッ‼ガガッ‼ギンッ‼


常人には目で追えないほどの高速で剣をぶつけていく。


「モドリッド卿~剣はあったんすか~?」


「あぶな・・・!」


唐突に出てきたガヘリスに咄嗟に身を捩じって避けました。


ごろんごろんっ!ザザー――!!


「最初の剣は見つけた。」


「・・・なら早く逃げるっすよ。」


少女が剣をしまうとあることに気が付きました。


そこら中に人の血が・・・まるで血霞のようにあたりに漂っていました。


「ば、馬車に戻らなくちゃ!」






「・・・」


目の前にいる筆記官殿は言葉なく溜息を吐いた。


「そこから先は馬車にいたアーサー・・・様たちに聞いていただければわかるかと・・・。」


「わかりました。ではこちらをご覧ください。」


模様の入った謎の板を見せられた。


「いいですか?”あなたは今日から48時間以内の記憶”がなくなります。」


「・、・、・、・・・・・・・・・............・・・・・・・・・・」


「それでー?けんせーはどうなったのー?」


「けんせーの話はまたこんどね!早くねなさい。」


22本目の剣読了。

Thi・23本目の剣をはじめますよろしいですか?

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