21本目の剣

「はい。では通行証を確認いたします。」


「剣聖?なんだそれは?」


門番をしている私の耳に”剣聖”の話が入ってきた。


「この国の剣術大会で一番最初に優勝した人と聞きました。アームドは参加したことがないでしょう?」


「剣聖?どこにいるの?」


剣聖は門番をしている。


「門番をしていると聞いています。探してみるのも一興ではないでしょうか?」


流石パーシバルさん...顔が広い。


「次の方どうぞ。ああ、アーサー様でしたか。どうぞ通ってください。」


私は”スキル”を発動させるのをこらえつつアーサー様御一行を門の中に通した。


(アーサー様は覚えてないのかな?まだちいさかったからなぁ・・・)


「剣聖・・・お姉さんではないですよね?」


ビクゥ!


唐突に正解にたどり着く王様に少し臆病が出てしまう。


「アーサー。こいつは違う。その、なんだ。こいつとは知り合いなんでな・・・。」


アームドパルトが口に手を当ててぼそぼそと呟いた。


「アームドの知り合いですか・・・深く考えたら 負けな気がします。」


「アーサーもそう思います。」


アーサー王たちが去っていった。


その数日後・・・。


門番をしている私のもとへ一通の手紙が舞い降りてきた。


『貴殿。王城へ来られたし。これは密命である。明日午後一時になった時に王へ会いに来られたし。』


私のもとへこういう知らせが飛んでくるのは二度目になる。


一度目は・・・うんうん・・・(くびを横にふりつつ)思い出さないでおこう。そういうのはまた今度だ。


私は地べたで突っ伏している新兵・・・つまり今私に負けた男の子に死体蹴りを浴びせ城へと向かった。


———城———謁見の間


『剣聖よ。久しいな。どうだ?剣の腕は衰えておらぬか?』


「私もそう思います!」


なんて言おうかと考えつつも意味の分からない言葉が口から出てしまった。


こういう偉い人と話すことは滅多にない。なので敬称語?やらなんやらは出てこないのだ。


『そうだな。剣聖よ。アームドパルトは知っておるな。』


「はい!かの有名なパーシバル殿とある意味肩を並べるという人だと聞いております!」


『そうだ。そのアームドパルトがしばらく休みを取るというので、貴殿にアーサーのお守・・・いや、護衛の任についてほしいのだ。』


「つまり、私にアーサー様の護衛についてほしいということですね!?」


『???。う、うむ。そう言っているのだが?嫌なのであれば他のものに命じるが・・・嫌なのか?』


「えーっと、アーサー様のお守ですね??わかりました!この剣聖の名に懸けてその任を全うして見せましょう!」


そう言い終わると剣聖は走って外へと行ってしまった。


———三日後


アーサーの前には膝をついた門番の姿が・・・。


「け、剣聖さん??そんなにかしこまらなくていいんですよ??」


「そうですか。」


門番は立ち上がるとアーサーに耳打ちをした。


(アーサー様・・・私こういうの久々なので距離感がわかりません・・・!!)


「そうですかぁ。むむっ、ならばこう命じましょう。」


アーサーは立ち上がるととある命令を下した。


———三日後


「アーサー・・・様!パーシバル・・・はまだかな?」


「ええ。パーシバルはまだですね。」


「パーシバルって言ったら国最優の騎士でs・・・だからね!」


(ぎこちないながらにもちゃんと話せてる・・・よしっ!)


パーシバルがつくころには門番はアーサーにべったりだったとかなんとか・・・。


「さて、ここから北に行くと国境を越えて畑が広がる農村があります。」


「パーシバル・・・それで?」


「・・・フレンドリーなのはいいですが、いきなり呼び捨てというのはどうなんでしょう?」


「ひっ・・・!」


「パーシバル。つづけて?」


「こほん。その農村に剣があるとかなんとか。」


「パーシバル・・・その村で起きている異変について、詳しく。」


パーシバルが咳払いをした。


「ひっ・・・!!」


「ごほん!その村の異変というのは大人たちが働くことをやめてしまっているというものです。」


「パーシバル・・・つまるところ大人の代わりに子供が労働してるってこと?」


パーシバルが貧乏ゆすりを始めた。


「ひっ・・・!!!」


「そ、そうだね。とりあえず行ってみればわかるでしょ。」


そういうとアーサーは門番のあたまを撫でてよしよしとなだめた。


———北の農村


(!!。大人だ!いや・・・子供もいるぞ?)


「パーシバル!あんまり怒ってたら禿げるよ?」


「禿げるのはいわゆるホルモンバランスの変化や食生活のずれなどから起こると言われていますが、私は禿げません。」


「パーシバル・・・のあたまは禿げてるの?」


パーシバルは目も向けず答えた。


「これは兜です。」


もう答えたくないのだろう。すたすたと村の奥へと消えていった。


(パーシバル・・・?あの大人が?)


アーサーたちが村長の家につくころには日が暮れていた。


カァーカァー・・・


村長の家からはみ出している少女が一人。門番だ。


(はぁ・・・剣聖になんかなるもんじゃないね・・・。)


門番の少女が黄昏ていると一人の少女が話しかけてきた。


「おねえさん。」


「?。なんですか?」


「おねえさんは大人?子供?」


「そうですね・・・どちらかといえば子供・・・うーん...でも、せんぱいには『大人としてしっかりした対応をしなさい』って言われてるから大人かも。」


「ふーん...難しいお年頃なんだね?」


(子供だからパーシバルさんも怒って・・・いやでも、大人としての対応が出来てないからとも・・・。)


「うーーーん」


門番が一人でうなってある考えに至った。


「さん付けしてみるとか・・・?」


「門番。今日の宿は村長さんの家にお邪魔させてもらいます。」


周りを見回すとパーシバルさんが立っている”ほか”には誰もいなかった。


「えっ?」


「一度しかいいません。さっ、中に入って。」


村長さんは毛糸で編み物をされていた。


村長のお子さん?であろう少年がシチューを煮込んでいた。


「くっくっくっ......ここに一つまみ禁じられた果実を入れて煮込めば出来上がりだな・・・ふっ。」


「なにか怪しいこと言ってますが・・・。」


「しっ!アーサー・・・様、あれは中二病というやつで・・・不治の病なんだよ。」


村長が編み物をやめるとシチューが運ばれてきた。


手を合わせて一斉に口へ運び始めた。


「がつがつがつ!」


門番が「びくっ!!」としたのにも気を止めずにがつがつ、がつがつと平らげていった。


その夜のこと・・・


「アーサー・・・様、あの!パーシバルのことなんだけど・・・。」


「なに?なんか相談ですかね?お姉さんからの相談ってなんか変ですね。」


門番は躊躇いながら口を開いた。


「パーシバルさん・・・とお呼びするっていうのはどう?」


「パーシバルさん?」


門番はメモ帳を取り出すと説明し始めた。


「えっと、パーシバルは呼び捨てにされることを嫌っているよね?でも、アーサー・・・様に呼び捨てにされるのは気にしてない感じ・・・だし、やっぱり初対面で呼び捨てにするのはまずかったかなぁ、と。だから『パーシバルさん』って呼びたいんだけど・・・ダメかな??」


「そういえばパーシバルって普段なんて呼ばれてるんだろう?パーシバルさんかな?うーん。まあ剣聖さんが話しやすい呼び方をすればいいと思いますよ?」


「・・・パーシバルさん、か」


夜は更け朝日があたりを照らすころ・・・。


(ね・・・眠れないーーーーーーー!)


門番はというと眠れぬ夜を過ごしていた。


(素振りでもして過ごしてた方がマシなんですが!?)


門番がこつそりと部屋を抜け出して素振りを始めた。


しゅっ・・・しゅっ・・・しゅしゅっ・・・!


素振りをしているとやはり時間が早く過ぎる。


「1085・・・1086・・・1087・・・ふにゃ?」


門番が素振りしている横を少女が通り過ぎていった。


(昨日の・・・?)


『お姉さんは大人?子供?』


昨日の光景を思い出して


「ヒント・・・くれたんだよね?お礼言わなくっちゃ・・・。」


少女の後を追いかけていった。


「はぁはぁ......素振りの後だからか体が重たい。」


門番が大きな木の根元にたどり着いた。


『オーフェの大樹』看板にはそう書かれていた。


オーフェの大樹に刺さった剣に手をついて息を整えた。


「はあ・・・こんなに私体力なかったっけ?鍛えないとな・・・。」


「がさがさ・・・。」


びくっとしたがよくよく考えるとここにいそうなのはうさぎかもしくはさっきの女の子くらいのもの。


「どうしたの?でておいで~・・・?」


「がさがさ・・・」


そこらじゅうの茂みという茂みからガサガサと聞こえてきた・・・!


がさ・・・顔を出したのはウサギではなく犯罪者顔のおじさんだった。


「へっへっ・・・悪いがその剣をぬいてもらっちゃ困るんだよ。・・・俺たちがな!」


(野盗か!)


剣聖は剣を構え片手で剣をはじいた。


「(群)」


「へ?なんか頭に言葉が飛んで・・・ぐわー!」


「(二)」


「なんだ!?なにしやがっ・・・ぎゃー!」


「(鈍)」


「こいつ、気持ちが悪い!!」


「ぐあー!」


「うわー!」


剣聖の周りは阿鼻叫喚の嵐。


「(静)」


「・・・・・・」


「やっと静かになった。こ、これは仕事だからね!?仕方ないんだから!」


”門番”に戻った少女はそういいながらバッテンマークを腕で作った(かわいい・・・)


「お姉さん。」


横を向くと女の子が立っていた。


「な、なに?」


「お姉さんの悩みはいずれ解消されるでしょう。そう、そして私の悩みも・・・。」


ぼわっ!


女の子は霞のように消えてしまった。




「剣聖さんはこうして悪漢どもから村を救ってくれたのです。後にアーサーがレグレシオンと名前を付けた剣を抜いたのはまた後日の話・・・おしまい!」


「おぎゃーおぎゃー!」


「さて、赤ちゃんが眠るまでまた別の話をしましょうか?次の話も『けんせー』さんのお話です。」


21本目の剣読了。

Thi・22本目の剣をはじめますよろしいですか?

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