起 1 あの頃は

夏休み。

故郷の夏はここより断然暑かったような気がする。

けど蝉の声と風鈴、川の音に包まれたゆったりと時間の流れる場所だった。



「あっつ」

僕は、アイスを囓りながらそう呟いた。

「そう言ってないで課題やんないと終わんないよ」

向かいで夏休みの読書感想文用の本を読んでいる向坂がそういう。

本が重いのか机に上半身を任せる形で読んでいる僕が見るにかなり難しそうな本だ。なにより厚い。

なぜ読もうと思ったのかそもそも読書感想文で使う本では、ないだろっと思った。

「そういうば読書感想文原稿用紙三枚以内らしいけど説明できるの?」

ふと疑問に思いそういうと

本を半分ほど読み終えていた向坂の顔が青くなっていく。

「、、、忘れてた」

元気の良い大きなやる気の空振りだ。

突然だが僕は、この頃向坂が妙に異性として意識しよく目で追いかけていた。

端的に言えば好きだった。

「読書感想文を終わらす良い方法がある」

僕はそう話を切り出した。

このときの僕はだいぶ緊張していた。

「なに?」

本から目を離し机に突っ伏した向坂がそういった。

「小説が元になった映画を見に行けばいい」

「私今月街に出かける予定ないよ」

その言葉を言うことに緊張した顔は熱くそして鼓動は早くなる。呼吸も乱れていたかもしれない。

「、、、ふた」

「なに?ちゃんと言って」

「、、、二人で映画行かないか?」

ちなみに僕と向坂の親は、仲が良かった。

だからこうやって夏休みにわざわざ家に来て勉強をしているわけだ。

ただ形宮の親とはそんなにというより見たことがない。

向坂が顔を上げる。

難しい顔をして唸りそして声を発する。

「形宮も誘って3人で行こう」

こうして僕の勇気少しが報われることになる。

不本意だけど。



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青空と神隠し 八草秋水 @Rousyu1567

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