短編29‐5話  数あるカクヨムな留学生がぐいぐいインタビュー!

帝王Tsuyamasama

短編29‐5話  数あるカクヨムな留学生がぐいぐいインタビュー!

 ……それは。他のみんなが到着するより、三十分前のことだった。


田原たはらくん、いらっしゃい」

「ああ。ちょいとおじゃまするね」

 ねずみ色のちょっとスーツっぽい服を着ておうちにやってきたのは、田原たはら 総一朗そういちろうくん。

 身長は男の子の中ではあんまり高くなく、私、詠篠よみしの 詩雪しゆきと同じくらいかなぁ。髪は短いけど、全体でまんまるな感じに切りそろえられている。

 

 田原くんは、最近私たちの学校へ留学しに来た。いろんな地域の学校へ留学しては、様々な情報を集めているんだって。すごいなぁ、お引っ越しいっぱいしているんだよね?

 黒いカバンを左手に提げている。学校にもいつも持ってきている物で、中は紙がいっぱい。手書きの文字がびっしりっ。

 一ヶ月に十万文字とか書いている~なんて聞いたけど……それ、原稿用紙びっしり詰めて、二百五十枚とかだよね……?

 後からくる二人(と一)も留学してきていて。さらにもう一人、私の幼なじみも来てくれる。


「いらっしゃい、総一朗くん。ゆっくりしていってね」

「ども、おじゃまします」

 お母さんがガラスのコップに注がれたレモネードを、持ってきてくれた。リビングのガラステーブルの上に置かれた。正方形でそんなに大きくないテーブル。

 ……実は私は、今ちょっと緊張している。

 というのも、田原くんによるインタビューが始まるからだ。

 私はちょっとレモネード飲もう。おいしい。田原くんも飲んでいる。口がちょっと内巻き。すっぱかったかな?

 髪をちょっと整えて……肩の後ろに改めて流して……ってしている間に、田原くんは黒いカバンを裏向けて、画板みたいにして(←ごめん、そういうつもりじゃなかったんだけどっ)、束ねた紙と、黒い……ま、万年筆? を用意した。インクはテーブルの上に置かれた。

「それじゃよろしく」

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」

 私は水色のブラウスに白くて長いスカート。それぞれ薄緑色のソファーに座り、田原くんはこっちを見ながら背中をちょっと曲げて、よろしくのポーズ。インタビューが始まった。

「まずいきなりだけども。書句かくくくんと出会ったときと、好きになったのは、いつから?」

「い、いきなり、だね……」

 田原くんは、ちょっと早口な感じかな。わ、私がのんびりしすぎなだけかも。あ、答えなきゃ。

「出会ったのは、小学校に入ってから。その前はお互い、幼稚園と保育園で別々だったの。す、すきぃ、になったのは、五年生くらいからかなぁ」

「つまり片想いは三年くらいと」

「う、うん」

 そんなことをメモされちゃっているのは、なんか、は、恥ずかしいなっ。

「きっかけは」

「同じクラスで隣の席になって、仲良くなったから、だと思う」

「具体的には?」

「え、えっと……同じ班だから、移動教室や掃除とかで、おしゃべりして……こう、楽しませてくれる感じ……?」

「気が合うと」

「うん、そういうことなのかも」

 ……そもそもこのインタビュー。田原くんの情報収集のうちのひとつらしくて。

 もし好きな人とかがいるのなら、インタビューさせてほしい。なんて言われちゃって……

(うぅっ)

 すっごく恥ずかしいけど、で、でも真剣に言われちゃったから……。

 あ、書句くんっていうのは、書句かくく 作郎さくろうくんのこと。昔は私の方が身長高かったのになぁ。


 インタビューは続いて、ひととおり私と作郎くんのことについては話せたかな。

「じゃあちょっと言わせてもらうけどね」

 レモネードをちょっと飲んだ田原くん。が、眼力っていうのかな、これ。

「もう三年も経ってるんなら、告白した方がいいね」

「や、やっぱりそうなのかなぁ……」

 今年も同じクラスになれたけど、やっぱり毎日作郎くんのこと、見ちゃうもん。

 元気で明るい感じで。周りにいるみんなも楽しそう。

「待っててもなんにもならないと思うけどね。三年経って手もつないでこないんでしょ?」

「う、うん」

 て、お、おててとか、はぅ。

「書句くんが鈍感なのか遠慮してるのかは知らないけどね。詠篠さんがアクション起こして気づかせないと、付き合うなんて絵空事えそらごとになっちゃうね」

「ぁぅ」

 私からアクション、かぁ。

「ちょうど今日来るからね。横に座って、アクション起こすべきだね」

「よ、よこっ」

「とにかく始めないと。起爆剤がないと、いつまで経っても進まないよ?」

 まっすぐ見て、次から次に、うぅ~っ。

「が……頑張り、ます」

 田原くんはうなずくと、ちょうどこのタイミングでインターホンが鳴った。

 田原くんは右手を上に向けて、いけっの合図。はい、いきます。


「やあ、詩雪! 遊べばわかるさ!」

「こんにちは~詩雪様~」

「よっ!」

「こんにちはっ」

 やってきたのは三人。と、一羽。

 背の小さい男の子は、カタリィ・ノヴェルくん。みんなからはカタリくんって呼ばれている。

 赤茶色の髪に水色の瞳。これだけでもう、人気者間違いなし。

 明るい性格で、小説を書いているみたい。そういえば田原くんも、小説書いたことあるって、言っていたなぁ。

 今日は学校じゃないから私服だ。こげ茶色の服に白い帽子。紺色のカバンを肩から掛けている。

 背の高い女の子は、リンドバーグさん。みんなからはバーグさんって呼ばれている。なんで『さん』なんだろう。

 銀色の髪にはしばみ色の瞳。もちろんこちらも人気者まっしぐら。みんなことを『~~様』って呼ぶ。

 私と同じ色みたいな薄い水色の服を着ているけど、濃い色のところもあって、デザインがかわいいなぁ。帽子も水色だ。

 お手伝いAIの勉強……? を頑張っているみたい。私はのんびりしているだけだなぁ。

 そして、作郎くん。黄色い長そでのシャツに黒いズボン。今日も元気そう。

 あ、それとトリちゃんもいる。濃い茶色と薄い茶色の部分がある。鳥なはずだけど、まんまるしてる。かわいい。バーグさんによると、フクロウらしい。でもまんまる。

 カタリくんかバーグさんと一緒にいることが多いけど、授業中は学校や街を探検しているみたい。

 カタリくんとバーグさんもやってきたのは、そう、こちらのおふたりも、田原くんの取材対象。

 なんだかあれよあれよと、私のおうちがインタビュー会場になっちゃった。



「ここでカタリが勝たないと、よほどのことがない限り、総一朗様が勝っちゃいますねぇ。カタリ、意味はわかります?」

「わかってるよ! オレがあがって親続けろってことだろ!?」

「一発でかいの当てたいよなっ」

「でも田原くんぶっちぎりだよ……?」

「五人と一匹で麻雀マージャンっていうのも、新しくておもしろいね。立直リーチ

 田原くんは、千点棒を捨牌すてはいの前に置いた。

「まあ、なんと容赦ようしゃのない」

「うぇーまたかよー!」

「げぇっ!」

「負けちゃいそう」

 田原くんのインタビューが終わってから、なぜか麻雀をすることになった。私は親戚で集まったときに習ったけど、み、みんなルール知っているんだね。

 バーグさん・カタリくん&トリちゃんチーム・作郎くん&私チーム・田原くんで対局。ちょうどこのリビングのテーブルが正方形で、麻雀をするのにぴったり。麻雀用マットと座るためのクッションもあります。

 作郎くんと同じチームになったけど、その、ち、近い。ひざとか腕とか、当たっちゃってるし、お顔も声もとっても近い。

 半荘ハンチャンじゃなく、トン四局で終わる戦い。今カタリくんが親で、まさにオーラス。点数は、田原くんが独走中。

「とりあえず安全牌がありました。カタリ、わかっていますよね?」

 バーグさんは迷いなく牌を捨てる。

「わ、わかってるからちょっと黙っててよバーグさんっ……くっ、こんな時に限って、捨てられるのないじゃん……」

 焦りの表情。

「……でも、捨てればわかるさ! いけっ! 切り札はフクロウだ!!」

栄和ロンだね」

「ぎゃーーー!!」

「終わった……」

「負けちゃった」

「はぁ。今日もカタリは見事に期待を裏切っていきますね~。もはや芸術ですね! わたくしは最初から、期待していませんでしたけど」


 結局田原くんの独走でおしまい。カタリくんだけ一度もあがれなかったので、ヤキトリとして全員に五千点ずつプレゼント。あぁ、足りなくてマイナスになっちゃってる。


 麻雀が終わると、トリちゃんが右肩に乗っているのに、表情が変わらないままの田原くん・肩を落とすカタリくん・笑顔でカタリくんに語りかける(←だ、だからそういうつもりじゃないんだけどなぁ)バーグさんは、帰っていった。

 麻雀をしながらおしゃべりもたくさんできて、私は楽しかったなぁ。作郎くんもカタリくんと同じように、落ち込んでいるけど。


 作郎くんはまだお時間があるみたいなので、私のお部屋でのんびりすることにした。クッションとテーブル出してっと。


「なんか今日はすげーメンバーだったな!」

「うん。留学生が三人もおうちに来てくれることなんて、もうないかも」

 向かい合わせに座っておしゃべり。作郎くんがよく見えます。わ、私のことも、同じくらいよく見られちゃっているんだよね。

「トリ入れて六人で麻雀とか、レアすぎんだろ!」

「うんうん」

 そして私と作郎くんが、チームで一緒だったもんね。

「さんきゅな、詩雪!」

「ど、どういたしまして? また遊びたくなったら来てね」

 って、ついそう言っちゃったけど

「おうっ!」

 笑顔がまぶしい作郎くんだった。

(きょ、今日で、近づけたかなぁ)

 牌を見ながら考えている作郎くん、その、ちょ、ちょっと、かっこよかった、かな……。

「……また、チーム組んでくれよな!」

「あ、うん」

 麻雀って、そんなにチームで戦うイメージ、あんまりない気がするけど……?

「麻雀以外にもさ! なんかいろいろ、一緒にしようぜ!」

「う、うん」

 あれっ、作郎くん……なんだかいっぱい、私のことを、お誘いしてくれている感じ?

「……で、でさぁ」

 テーブルの上で、手を組み始めた作郎くん。

「さっきみたいに……横、座ってもいい、か?」

 ちょっと言葉が切れ切れに……

(って、さっきみたいにぃ!?)

「う……うんっ」

 アクション、で、できたのかな? それともここからもっとアクションしたらいいのかな、田原くんっ!?

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短編29‐5話  数あるカクヨムな留学生がぐいぐいインタビュー! 帝王Tsuyamasama @TeiohAoyamacho

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