焼き鳥が登場する物語

蕃茉莉

焼き鳥が登場する物語

「モモと砂肝二本ずつ、塩で。あとおしんこと、生大2つ」

 モモと砂肝、塩で二本ずつ、それとお新香ですね。ありがとうございます。生大二丁!

「久しぶりだね」

「ほんと、引っ越して以来ですよね。お会いするのも久しぶりだけど、この店も久しぶり」

「あたしも。なかなか混んでて入れないから、この前一緒に来て以来かもしれないなぁ」

「そうなんですか。じゃあ今日はラッキーですね」

「開店と同時ならなんとか入れるね」

 はーい、ビールお待たせしました!

「ひゃあ、ほんとにお久しぶりです、かんぱーい」

「おつかれ」

「ぷはー」

「うまい」

 お新香でーす。

「ありがとうございます」

「もう満席だ」

「ほんとだ」

「早めに頼んどくか」

「そうですね、すみませーん!」

 はーい、お伺いしまーす。

「ネギマ二本と、手羽先二本、塩で」

「あとレバー二本、タレで」

 全部二本ずつで、モモとネギマが塩、それとレバーがタレですね。

「はい」

 ありがとうございます!

「まあ、我々ならこのあたりだね」

「そうですね。あとは酒があれば」

「ふっふっふ」

「ふっふっふ」

「で、最近はどうよ」

「最近ですかー?」

「書いてんの?」

「あー、最近はあまり書いてないんですよねー」

「あたしもさぁ、オヤジが退院してきてから家事が増えて、時間なくてさぁ」

「すみませーん!バイスサワーください」

「あ、あたしも」

 バイス二つですね!ありがとうございます!バイス二丁!

「ここは家族でやっててさ、昼ごろ通りかかると、すごい量のモモ肉を串に刺してるよ」

「へえ」

「串差し専門のパートさんがいるんだってさ」

「すごいですね。それが一日分ですもんね」

「そう。あれだけ作って、もう八時過ぎると焼き物はないんだからね。マスター慢性腱鞘炎だってさ」

「だろうなぁ。でも焼き鳥だけで家族養ってパートさんも雇えるってすごいなぁ」

 失礼します!バイスでーす!

「最近入った高校生がイケメンでさぁ」

「バイトさんですか?」

「そうそう、背が高くて。なんで最近の子はみんなかっこいいんだろうね」

「そういえばジャニーズ好きでしたね」

「うん、そう。ハンサム大好き。その高校生、ひとり親家庭なんだって」

「へえ」

「生活苦しいからバイトしてるんだけど、なんかさあ、最近の男の子はお母さんに優しいね」

「ああ、そうかもしれない」

「いつも帰りがけに廉価品の棚見て、お母さんに、って買っていくんだよ。いいなぁ、あんな息子いたら」

 お待たせしました!最初のモモと砂肝です。

「ありがとうございます。ひゃあ、モモでかい」

「あ、バイスおかわり」

「あ、あたしも」

 ありがとうございます。バイス二丁!

「ここのモモはヤケクソみたいにでかいよね。細かく切るのが面倒なんだってさ」

「それでこの値段は安いですよね」

「値段より面倒くさくないほうがいいらしいよ」

「客からしたらありがたいですよ」

「前にオヤジと7時ごろ来たら、もう焼き物売り切れでさ。もつ煮の汁とごはんもらって、汁かけごはん食べさせてもらった」

「それはそれでいいなぁ」

「マスターがめんどくさがりだから、儲けようって気がないんだよね」

 バイスでーす!

「バイスってなんだろ」

「シソとリンゴ酢らと思ったな」

「相変わらず何でも知ってますね」

「くだらないことらけ知ってるんらよな」

「あれ、タバコないんじゃないですか」

「らいりょうぶ。ちゃんと持ってる」

「さすが」

「最近社販からタバコがなくなってさぁ」

「割引?」

「そうなんらよ。外資になってからシビアれさあ。定価れしか買えなくなった」

「残念ですね」

「もうカートンれ買う意味ないから、コンビニれ買ってる。もうタバコ吸わないの」

「すっかりやめました」

「あらしは一生むりらな。酒やめれもタバコはやめらいら。らにしる盲腸れ入院したとき、タバコ禁止令出らら胃潰瘍になったからら」

「あっ、すいません、バイスお代わり」

「あらしも!」

 はーい。バイス二丁!

「あらしはもう描き尽くしたきがするら」

「もう描かないんですか」

「描きたいものららいんらよ」

「頼まれたら描きますか」

「この前のすんれきろおおろうる、みんないいっていってたけろさ、あらしにはみえちゃうんらよ」

 バイスです!

「わらしはいいろおもいましたれろ、やっぱ専門で学んだ人の目から見るろ違うろから」

「小五のときりびりゅずの先生とおそわっれら先生に取り合いされてなんかさめらよれ」

「流派とかいろいろあるみたいれすよね」

「もうおろらろ事情ろか小五れみえりゃっららら」

「なるほどれぇ」

 お待たせしました!ネギマとレバーです。手羽先もう少しお待ちください。

「ありがろうごらいまふ」

「描きたいもろららいんら」

「ネギマおいしい」



 ありがとうございましたー!

「はー酔っら酔っら」

「らのしかったー」

「やっぱ話すの楽しいわ」

「ほんと、楽しいれす」

「また来なよ」

「また来ますー」

「じゃあね。おやすみ」

「おやすみなさーい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

焼き鳥が登場する物語 蕃茉莉 @sottovoce-nikko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ