第14話


   さっきは電話ありがとう

   指のこと思い出して、なんか懐かしくなって


   僕は忙しくて帰れないから、代わりにあの時の同じところで明日釣りしてよ、   

   受験勉強の息抜きにちょうど良いから

   明後日でも良いから

   

   頼んだ



 メールを送った後は、携帯の電源を切った。電話がまた掛かってくると煩わしいことになる。


 駅に着くと、懐かしい海独特の臭さが漂っていた。

 僕は静かに泣きながら歩いた。波多野の手に握られて身動きの一つも取れぬよう、きつく締め付けられる魚が思い浮かんだ。

 息苦しさと温もりから逃げようと、身をよじる。呼吸ができない。どれだけのたうち回ろうと、抜け出せないような握力に圧迫され、死んでいくみじめな魚が僕だった。

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アクアリウム ニシダ(ラランド) @RRNDNISHIDA

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