【エッセイ】「エッチな本」について

進藤 進

進少年は頑張りました。

男の子は。

エッチな本が大好きなのです。


女の子は。

きっと、理解できないでしょうね。


昔、むかし・・・。

ある、田舎の高校生。


私、です。

毎晩、悶々としていました。


これでも。

バスケ部のキャプテンで。


結構。

イケてたんですけどね。


球技大会の時なんか。

声援、ありました・・・かも。


それでも。

この頃の高校生は。


今みたいな、ネットも無く。

深夜放送の「11PM」くらいしか。

エッチなものは無かったのですよ。


だから。

深夜、真夜中に。


高校生の僕は。


自転車(5段変速の)にまたがって。

ある場所に向かったのです。


その時の僕の服装は。


パジャマの上に、トレンチコート。

真冬の深夜でしたから。

(今なら、完全に捕まりますな)


体力だけはありましたから。

坂道も何のその。


寒風、吹きすさぶ坂道を。

息も切らせず。


高速で向かっていました。

自動販売機に向かって。


あの頃。

エロ本の自販機は。


昼間はマジックミラーのように。

反射して銀色に光っていて。


中身がエッチな本だとは。

誰も(本当はみんな知っていたけど)気づきませんでした。


だから。


バイパス沿いにある。

ポツンと存在する自販機。


発情する男子高生以外は。

特に、関心はされませんでした。


闇の中に浮かぶ。

妖しい光。


十七歳の僕は。

興奮で血走った目で。


近づいていったのです。


なけなしの小遣い。

500円を握りしめて。


でも。

悲しいかな。


良さげな本は700円。

何とか、妥協できそうな。


300円の本を選んで。

ボタンを押しました。


ゴトンと、音がして。

出てきた本を抱きしめて。


又、自転車(5段変速)にまたがり。

バイパスの坂道を。


ダッシュで駆け抜けるのでした。

(だから、捕まるって・・・)


【ダァーッ・・・。】

自分の部屋で、本を最後まで読んで、叫びました。


「ちがーう!」

そこには、オバサンのような女の人が記載されている、中途半端な記事が載っていました。


あきらめて、寝るしかない。

そう、思うでしょうね。


でも、高校生のスケベパワーを甘くみてはいけない。


ふたたび、パジャマにトレンチコートを着た(笑うなよ!)私は・・・・。

自転車(5段変速・・・もう、ええっちゅうの!)にまたがり。


バイパスの坂道をダッシュしたのでした。


結果。


なけなしの、へそくりで買った700円のエロ本も。

無残にも。


ああ、これ以上は言えません。


若かりし頃の。

僕の青春が・・・。


ウチの奥さんは。

この話が、結構、好きです。


思い出すたびに、笑ってくれます。


だから。

まぁ、いっか・・・。


と。


今は、思っています。


追伸


ちなみに、その700円のエロ本。


三月後に。


オヤジの部屋に、ありました。

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