【KAC20226】タカナシは走った。

タカナシ

「焼き鳥探して三千里」

 焼き鳥。

 私はやっぱり、ももが好きです。ねぎまもいいですね。タレでも塩でもどっちも好きです。

 つくねは軟骨が苦手なので、入っていない方が好きです。つくねはタレ派。塩もおいしいですけどね。脇に生卵がちょんとついているとテンション上がります。

 皮は断然塩派なんですよね。カリカリに仕上がっているのが好きです。


 さて、そんなことを考えていると、どうしても食べたくなるのが人の性というやつです。

 私の住まいは田舎ですが、それでも焼き鳥屋さんは何件かあります。

 コロナ渦で外食は怖いので、お持ち帰りできるところをネットで探し、いくつか発見。

 その中で、以前にも食べたことがある焼き鳥屋さんを見つけ、味が保証されているので電話で注文を行いましたがっ!


 なんと、電話での返答は、「すみません。うち、テイクアウトはやっていないんです」とのこと。


「え? そんな、ネットにはお持ち帰りありになってますけど?」


 しかし、店員さんがそのあたりの事情が分かる訳もなく、泣く泣く別店舗を探すことに。

 そこもお持ち帰りOKになっていたのですが、曜日限定だったみたいで、混む金土日はやっていなかったんです。

 さらに別の焼き鳥屋さんに電話をしようとしたら、『休業日』の文字。


 もうこうなったら、最初からお持ち帰り限定の焼き鳥屋さんに行くしかないじゃないですかっ!!

 私の家からそう遠くないのでタカナシは走りました。

 これから摂るであろうカロリーを消費する為も兼ねて。

 で、久方ぶりにその焼き鳥屋さんにいくと、潰れていました。


 ちょっと、いや、かなりコロナを恨みましたね。


 外に出てしまった。しかも徒歩で。

 だが、私は諦めませんでした。

 この世には焼き鳥屋さん以外にも焼き鳥を売っているところはあるのです!!

 皆さんはどこか分かりますか?

 この時ほど、私は自分のことを臨機応変な男と思ったことはないですね!

 焼き鳥のある場所。そうっ! それはッ!! コンビニっ!!


 私は意気揚々と駅前のコンビニに赴きました。

 幸い、潰れた焼き鳥屋さんは駅裏でしたので、駅前のコンビニは線路を挟んですぐでした。

 バカみたいに明るい店内も今や私を祝福してくれているようです。

 レジ前のフライヤーに辿り着くと、コロッケや唐揚げが出迎えてくれます。

 そして、徐々に視線を上にあげ、お目当ての焼き鳥へ……。

 お目当ての焼き鳥へ……。


「どこにも見当たらない…………」


 目を皿のようにして、しっかりと見ると、ちゃんと、焼き鳥のプレートはあるのですよ。ですが、品物がないのです。つまり。


 売り切れ!


 目の前が真っ暗になるような感覚です。

 たぶん、空腹の所為なんですが。


 それから、しばらく、悩みました。なぜなら、コンビニにはおつまみとしての缶詰の焼き鳥があるからです。

 しかし、これを買ったら負けだろうと、なけなしのプライドが囁きます。


 私は結局買わずにそのまま自宅へと戻りました。


 それからなんやかんや、未だに焼き鳥は買えていないです。


 しかし、タカナシの焼き鳥の不幸は続きます。


 つい、この前、テレビで私の街が出ていて、鶏肉屋さんで、焼き鳥が紹介されていました。確かに、テレビで紹介されてもいいくらい美味しい鶏肉屋さんなんですが、なぜ、あのとき、ここに考えて及ばなかったのかっ!!


 ああ、こうしてテレビで紹介されたんじゃ、売れてしまって、また食べれないじゃんっ!!

 テレビの前で、項垂れています。

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【KAC20226】タカナシは走った。 タカナシ @takanashi30

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