不死鳥とオッサン、ぼっちから脱出!?
六月
第1話
火の鳥、
朱雀、
ファイヤーバード、
フェニックス、
それらを不死鳥とも称したりとカッコ良く言ってるけど、よーするに纏めると、
『焼き鳥』
だよな?
「おい。焼き鳥!」
何か偉そうな雰囲気を醸し出してる赤い鳥に俺は声を掛けてさしあげる。
こいつには誰~れも近付かない。
誰~れも、近付けれない。
ぼっちだ。
周囲はこの焼き鳥から発する熱によって炙られ、乾き、炭化し、今にも大火事になりそうだ。
だが、俺は火属性への高レベルの耐性持ちなので、近付く事が出来る。
熱いには熱いのだが、火傷する程でもない。
身体に熱がこもる事もないので、汗を必要以上にかくこともない。
おかげで、火山帯での依頼をこなすのにはガス、粉塵対策さえ出来れば良いので有利だ。
ガスや粉塵も魔力で防御膜を張って空気をフィルタリングしてれば良いから問題無し。
でも誰でも出来る訳じゃないぞ。
俺だから出来るのだ。
じゃないとこんな危険地帯とも言える状態にしてる迷惑な焼き鳥の相手など出来ようもない事だろう。
なので、こいつはぼっち確定だ。
それなのにこいつは、優しさに溢れた俺の呼び掛けに応えようとしない。
失礼な奴だ。
単にコミュ障なだけか?
無理もない。
そこいらのドラゴンでさえ、近付いても数秒とは持たない熱量らしい。温度目安の配合物の三角錐の棒が全部倒れてる。
ドラゴンブレスは自分自身には熱が伝わらない様になってるから、どんなに高温なブレスが吐けれても自身の熱耐性とは別だという事だ。
コミュニケーションの経験はさぞや少なかろう。
そんな焼き鳥に近付けられる俺、凄い!
そうだろう?
ここいらの環境悪化に今も刻々と貢献し居座る焼き鳥に、人間の生活環境にももっと悪影響を及ぼすのも時間の問題。
最早一刻の猶予もならん。調査せよ。出来れば解決を。と、俺に依頼されたのが三日前の事だった。
全身火達磨の大きな鳥が遠目では分かってはいるが、今までどのパーティーも近付く事も、遠距離特化の弓矢の有効射程距離にさえも難しい。たとえ届いても、この熱量では何らかの成果も得られまい。
何せ、焼き鳥の野郎がいる場所は溶岩プールと化し、奴はプカプカと浮いていやがる。
火山の所々黒っぽい溶岩なんて目じゃない白色溶岩はまるで地上に落ちた太陽かの様。
夜であっても、まるで昼間の様な発光具合。一体どの位の熱があるんだ!?
流石の俺もサングラス無しには現場を直視出来ない。
しかし、こんな状況なのに何で奴の身体の色は、変化無く赤色のままに見えるのだろう?
不思議!?
これぞ、ふあんたぁじぃーってやつか?
理屈に通らない理不尽な現象を目にするとやたらそう言って騒ぐガキがいたなぁ。
そんな訳でここいらの冒険者でこの仕事をこなせるのは俺だけ。
領主軍の出動依頼はとうの昔に出されいるが、間に入る文官達のお役所仕事振りは、物理的に隣の席でも書類が廻るまで10日は掛かると言われる日常業務の実態は、緊急時であっても発揮され、軍の出動準備が整った頃には、事態は手遅れ、又は地元民の努力と費用の捻出によって冒険者の手で終息しているという事が常であった。
良くクビにならないよな?お貴族様だからか?
今回もそのパターンであった。
だから今回も俺にお仕事が回って来るという訳。稼げて良いけど。
まあ、この種の依頼は俺にとって適任だから何の問題は無い。
問題は無い。〔俺〕にとっては。
…………誰か、出来れば可愛い相棒が欲しい。切実。
特殊な事を請け負う事が多いから、能力に似合う相棒が得られ難いんだよ。
大体組んでも一度限りなんだよ。
そーだよ。俺もぼっちなんだよ。
焼き鳥の事をぼっち呼ばわりして上から目線だったけど、俺もお仲間だったんだよ。
悪いか!?
『我の事をぼっち呼ばわりしておいて、お主こそがぼっちオブぼっち、虚なる時を過ごすがいい。』
突然頭の中で男なのか女なのか分からない声らしき響きがした。
「誰だ!」
『我は先程よりお主が呼び掛け様としていた存在じゃ。』
「お前が焼き鳥だとぉ!?」
『焼き鳥では無い!』
「? 焼き鳥以外の何者でもないだろう?それより、虚なる時だなんて呪いの様な事言うな!」
『呪いでは無いが、まあ、我の願いじゃ。』
「嫌な事を願うな!」
『そんな事より、我に何用じゃ?』
「俺にはそんな事で済む問題じゃない!」
『何用じゃ?』
「流しやがった。」
『何用じゃ?』
「……俺は冒険者。お前の調査に来た。お前は何者だ?こんな所で何をしている?」
『そんな事か。』
「早く答えろ。」
『我が人間風情に事情を説明する必要性を感じぬ。去ね!』
「俺は焼き鳥風情の命令を受ける必然性を感じぬ。答えろ!」
『誰が焼き鳥じゃ。不敬な。』
「お前だ。焼き鳥。」
『焼き鳥では無い。フェイニクスじゃ。』
「フェイニクス?フェニックスじゃなくて?」
『あんな者と一緒にするでない。我とは格が違う。』
「俺からしたら、同じ様なのにしか見えないがな。」
『お主が無知で愚かだからではないか。』
「お前が焼き鳥だからではないか。」
『む。』
「…………」
ぐぅー。
「腹が空いたな。一寸おやつでも食うか。まだ夕食という時間でもないし。」
『おやつ?』
俺は黙ったまま空間断裂の結界で自分の周囲を確保し、収納魔法でクッションを取り出しそれに座る。
それから、バタークッキーと、カステーラ。それにバニラシェイクを取り出した。
時間も停められる収納魔法様々だ。
空間断裂の結界と言っても今は外から中が見える設定。
俺はわざと焼き鳥に見せ付ける様に食べ始めた。
奴が人間の食べ物に興味を持つかは五分五分だとは思うが、妙に人間くさい反応があるから試してみるとしよう。
空間断裂空間は一応別次元に相当する為 、奴の念話?は届かない。
興味を持ったのなら、無視されるのも悔しかろう。ハッハァー!
俺はゆっくりと旨そうに食べ、実際旨いのだが、冷たいバニラシェイクに頭をキィーーンとさせながらも全部食べきったのだった。
結界を解いた途端に背中に蹴りが入った。
幸い大した力でも無いので無事ではあるが、俺の索敵に引っ掛からないだと!?
一体誰だ?
振り向くと15、6歳位だろうか?
少女が立っていた。
「何しやがる。クソガキ!」
「我はガキでは無いのじゃ!失礼な!」
「ガキだろうが!で、何の用だ?」
「お主が先程食していたのは何じゃ?」
「ああ?菓子だが?スイーツともデザートとも言われるが。」
「かしとな。先程言ってたおやつとは?」
「普通の食事と食事の間の間食の事だよ。」
「そうか。それでのう。先程のかしとやらを我にも分けてくれぬか?」
「先程?お前その時、いたっけか?」
「最初からおったではないか?」
「どういう事だ?俺はお前の存在は感知してなかったぞ?」
「居ったぞ。ほれ、目の前に。」
「焼き鳥しかいないが?」
「焼き鳥では無い。フェイニクスじゃ。」
「フェイニクス?お前が?」
「そうだと言うておろう。」
「…………お前、人化出来るというオチか?」
「オチ扱いとは失敬な!」
「では、アレは何だ?お前がここにいるのなら、何でアレがそこに浮いている?」
「アレは我の脱け殻じゃ。」
「脱け殻!?あい変わらず火達磨のままだが?」
「ああ、アレは熾火の様な物じゃ。」
「熾火?火力は最初から変わって無い様に見えるが?」
「そりゃそうじゃ。お主が来た時には抜けた後じゃ。お主は脱け殻相手に話掛けておったの。背後から見た風景は中々間抜けじゃったわ。」
「……何で今の様に口で話掛けなかった?」
「お主はアホか!?如何にも怪しい風体の男に警戒無しに直接話掛ける訳なかろう?」
「で、今は警戒は解けたのか?」
「ああ、中身が間抜けと解ったからの。」
「お前、喧嘩売ってるの?今なら、高価買い取り強化期間中だぞ。」
「新品400レンのを通常買い取り額10レンを倍の20レンとした所で実質大して違いはなかろうに。」
「俺はそこまでセコくないぞ!」
「わかっとる。わかっとる。皆そう言う物だしのぉ。送料こちら持ちだと大幅赤字で店に進呈した様な物じゃ。」
「俺は古本屋か!」
「して、すぅいーつなるおかしを我は所望する。くれてたもう。」
「ふ~ん。どうしよっかなぁ~♪」
「……ふ~ん。どうしよっかなぁ~♪お主の評価淫獣ゴブリンクラスと喧伝しよっかな~♪♪女の子とオッサンどちらを信じる?」
「止めて。お願い。」
「最初から素直に上肢すれば、ゴブリンも囀ずらば討たれまいに。」
「クソ。負けた!」
「では、早よ。」
俺は渋々取りあえず今回俺が食べた種類のみくれてやった。
「ん~~。旨い!こんなの初めてじゃ。」足、バタバタ
「そりゃ、よー御座いましたね。ま、それも極一部の甘味だがな。」
「何!他にもあるのかや?早よ、早よ。早く出してたも。」
「あ~、又今度な。今はここにはない。(本当は収納に入ってるがな)」
「又今度の言葉に再度訪れる事は稀じゃ。そうじゃ。我はお主に付いて行くぞ。人里に我の拠点を提供するのじゃ!」
「え~~。お前、付いてではなくて、憑いてじゃないのか?」
「男が細かい事を申すでない。可愛い相棒が欲しかったのではなかったか?」
「え?何で知ってる!?」
「ぶつぶつと申していたではないか?」
「う~~。まっいっか!見た目は良い娘だし。」
「周りにはロリコン認定確定」ボソッ。
「何か言ったか?」
「いいや。」
「それより、この脱け殻何時まで熱してるんだ?」
「熾火と言うたろう。そうじゃの。後200年と言った所かの。」
「クソ迷惑な。どんだけ無駄に魔力エネルギー残ってるんだよ!」
「そりゃ、我はフェイニクスだしの!」
「お前は焼き鳥だろぉー!!!」
不死鳥とオッサン、ぼっちから脱出!? 六月 @rokugatu3
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