トレジャーハンターはとまらない

紫月音湖*竜騎士さま~コミカライズ配信中

伝説の秘宝

 俺の名はキュイール・プーレ。世界を股にかけるトレジャーハンターさ。

 忘れ去られた廃墟に眠る呪われた財宝も、天空島にある神々の財宝も、今まで攻略した遺跡は数知れず。それでも、俺はまだ伝説の秘宝を見つけられないでいる。


 俺がそれを知ったのはいつだったか。もしかしたら、生まれたときから俺の遺伝子に組み込まれていたのかもしれない。馬鹿馬鹿しいと思うだろ? でも俺はまだ誰も手にしたことがない、その伝説の秘宝を追い求めることをやめられないんだ。


 一説によれば、それは「モノ」ではなく場所なのだという。日の光の届かない漆黒の沼地であると、どこの誰とも知らない手記が見つかっている。沼地と宝がまったく結びつかないが、もしかしたら沼地の底に沈められているのだろうか。

 だとしたらお手上げだ。なぜなら俺は泳げない。


 またある説によれば、それは甘く濃厚な香りがするという。だとすれば花か? いや、甘い匂いといえば女かもしれない。絶世の美女が伝説の秘宝というのもなかなかドラマティックな話だ。

 しかし塔にも城にも、密林の奥地にも、それらしいお宝を見つけることはできなかった。


 まだ行っていない場所があるとするなら、それは水中だ。俺はカナヅチだが、伝説の秘宝のためならば、たとえ火の中水の中――火の中は既に通ってきたから残るは水の中なのだが――に身を投げ出すことも厭わない。


 どうしてそこまでして伝説の秘宝を追い求めるのか……だって?

 答えは簡単さ。

 その秘宝を見つけることで、俺はようやくひとりの「キュイール焼きプーレ」として一人前になれるんだ。


 だから見かけたら教えてくれよ。

 伝説の秘宝「秘伝のタレ」がどこにあるのかをよ。




 ――――――――――――――――――――――――


キュイール……火を通す(焼く、茹でる等)

プーレ……鶏肉


※フランス語で検索したら、こんなの出たので……使わせてもらいました。

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