おおじいちゃんとぼく

枡本 実樹

おおじいちゃんとぼく。

おおじいちゃんが目を細めながらスマホとにらめっこしている。

「ううーん。なんでかなぁ。」

今度はメガネをかけながら、呟いている。

おおじいちゃんはメガネをかけると目がおっきくなる。


「どうしたのー?おおじいちゃん。」

ぼくは、縁側にいるおおじいちゃんのところに行って、となりに座る。


「これがわからんのよ。」

おおじいちゃんはイン〇タの画面とにらめっこしながら困っているみたいだった。


ぼくもお兄ちゃんに教えてもらったばっかりだったけど、

算数とちがって、これはわかりやすいのですぐに覚えれた。


さっそく、おおじいちゃんに教えてあげる。

「おお、そうするとね。」

おおじいちゃんは、なっとくといった笑顔を見せる。


そして、おおじいちゃんが前にアップしていた写真についていた、

イイネ!♡やコメントについて話したりする。

英語なのかな・・わからない言葉で書かれたコメントは、

あとで兄ちゃんが帰ってきたら教えてもらおう。


「ケントはすごかねぇ。こがんとばすぐに覚えられて。」

おおじいちゃんにホメられて、ぼくはすごく自慢気になった。

おおじいちゃんは、ホメ上手だ。

ぼくのことを、いつもいつもホメてくれる。


兄ちゃんにバカにされたときも、かあちゃんに怒られたときも、

おおじいちゃんのところに行くと、

いつも 『 ケントにはこんないいところがある。』って、ホメてくれる。

ぼくは、小さい頃から、おおじいちゃんが大好きだ。


おおじいちゃんは、かあちゃんのじいちゃんで、ぼくのひいじいちゃんだ。

でも、『 ひいじいちゃんて呼ばれると、すごく年取ったじいさんみたいだから、大きいじいちゃんで “ おおじいちゃん ” て呼んでくれ。』と言われて、

ずっと、おおじいちゃんって呼んでいる。


おおじいちゃんは、たしかに、すごく年を取ったおじいさんのイメージとはかけ離れている。

絵本や物語に出てくるおじいさんは、いったいいくつなんだろう?と思うけど。

かあちゃんが言うには、おおじいちゃんが本当にめずらしいくらい若いだけ、らしい。


八十歳を過ぎたおおじいちゃんは、髪の毛は前から見ると真っ白いふわふわの羊みたいだ。

そして後ろから見ると銀髪。

服装は、ジーンズが多いけど、シャツはTシャツよりYシャツの時の方が多い。


友達のたっくんや、ユータには、自分とこのおじいちゃんみたいにハゲてもないし、いつもオシャレでカッコイイって言われる。

たしかに、たまに会うじいちゃんより、おおじいちゃんの方が、なんとなく若く感じるから不思議だ。


ぼくの家族は、おおじいちゃんと、かあちゃんと、兄ちゃんと、ぼくの四人家族だ。

保育園のお迎えも、習い事のお迎えも、仕事の帰りが7時を過ぎる かあちゃんの代わりに、いつもおおじいちゃんがしてくれた。

自転車の乗り方も、釣りの仕方も、将棋も、おおじいちゃんが教えてくれた。

おおじいちゃんはぼくの師匠だ。


おおじいちゃんは、趣味がたくさんある。

カラオケ、釣り、山登り、彫刻、園芸、読書・・・。

若い時は、茶道や社交ダンスなんかもしていたらしい。

焼き物の器や、茶釜なんかも見せてもらったことがある。


変わった銀色のコップみたいなやつのことをきくと、お酒好きのおおじいちゃんらしい趣味で、カクテル作りにハマったこともあったな、なんて言っていた。

おおじいちゃんの口癖は、『 お前たち二人と、いつか酒を飲めるまでは長生きしたいな。』だ。


ぼくがお酒を飲めるようになるまで、あと八年。

体を壊さないように、ずっと元気なままのおおじいちゃんでいてほしい。


前に、『 多趣味だから若いのかもね。』と、かあちゃんが言っていた。

おおじいちゃんの手入れのおかげで、ぼくの家の庭は、いつも花が咲いている。

咲かない季節はないくらい、暑い夏も、雪の降る冬も、梅雨時だって咲いている。

そんなきれいな花を、自分たちだけで見るのはもったいないんじゃない?と、

かあちゃんが、おおじいちゃんにイン〇タに載せることを提案したのだ。


おおじいちゃんは、『 スマホとか難しくて無理やけん、せん。』なんて言っていたけど。

かあちゃんはさっさと新しいスマホを買ってきて、おおじいちゃんのアカウントを作っていた。

「わからないときは、ケントにきいたらいいから。」

なんて、人任せだったけど。


その日から、ぼくもわからないときは兄ちゃんにきいて、おおじいちゃんに教えている。

今までぼくは、色んなことをずっと、おおじいちゃんに教えてもらってきた。

だから、今度は、ぼくが教える番だ。


「ケントはスマホの師匠だな。」とおおじいちゃんが言った。

ぼくは、“ ぼくの師匠の師匠 ” になった。

兄ちゃんに自慢したら、『 なに真に受けてんの?』って笑われたけど。

かあちゃんは『 大師匠!すごいやーん。』と言ってくれた。


ぼくがおおじいちゃんに教えれることなんて、そんなにないのかもしれない。

でも、一個でも多く何か教えてあげたいと思うから、ぼくはこれからたくさん、

色んな勉強やスポーツや遊びを、いっぱいしていきたいと思う。

そして、一個でも多く何か教えたいからさ、だからさ、

おおじいちゃん、長生きしてください。ぼく頑張るから。


そして、いつかさ。

おおじいちゃんとお酒が飲める日が、ぼくも楽しみだよ。



ぼくの二十歳のお祝いと、おおじいちゃんの米寿のお祝い。一緒にお酒飲もうね。





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おおじいちゃんとぼく 枡本 実樹 @masumoto_miki

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