ガイド兼メッセンジャーのセリナさんとシズル婆さん~封印迷宮都市シルメイズ物語~
荒木シオン
人を見た目で判断するのは悪手である……
しかし、どんなに覚悟をしていても、誰だって好きこのんでは死にたくはない。
ただ、もし仮に夢破れ迷宮内で力尽きるようなことがあったなら、そのことを仲間や大切な人へと伝えて欲しい……。
そんな探索者たちの切なる願いに
探索者たちを安心安全に迷宮の目的階層へ送り届け、最悪の
――それが『
「だからですね? その金額では
彼らとて
ここはクラン『
「また一段と荒れてますね、アンジェ……。受付なんですから、もっと笑顔、笑顔!」
今しがた新人探索者パーティを鬼の
「はぁ……セリナさんですか。しかし、怒りたくもなります。あの
そう
「確かにそのほうが幸せですよね。表層なら九割は無事に帰ってこれるんですから……」
逆に言えば一割の確率でこの世を去るわけだが、それを恐れるなら受付嬢アンジェの言葉通り、そもそも探索者に向いていない。
もっと
「やぁ、
先ほどの新人探索者パーティとは明らかに違った雰囲気を
★ ★ ★
受付で軽く話を聞き、予想通りの
話が終わると、『
「まさか『骨拾い』専門の『馬の骨』から仕事が持ち込まれる日が来るとわね。にしても
その両脇に座る兎人と蜥蜴人は笑いを
「うっさい。その手の冗談には飽きてるんだ……。一度目は許すけど、次はないよ」
「恐い、恐い。まぁ、内容は分かった。この仕事、引き受けよう。そうだね、こっちからはこのセリナと……あー、シズルを派遣するよ」
ジーンの態度をどこか楽しげに眺め、ナールは仕事の受注と人員を決める。
しかし、これに驚いたのは成り行きで同席したセリナだった。
「え? ちょっとマスター本気ですか!? 私、まだクランに入って二年目ですよ?!」
思わず
けれど、大丈夫なはずがないのだ……。
目指す場所は
挑んだ半数が
――足を踏み入れるのは自殺同然と
それに加えて依頼者は『骨拾い』である。
迷宮の財宝やロマンを追い求める探索者ではなく、死した彼らを回収し売却することを
探索者は己の夢や野望に命を賭ける……。
案内屋と伝言屋はそうした彼ら
しかし、骨拾いは死者から
そんな迷宮へ挑む者の中で、最も命知らずと言われるような連中が、自分たちだけでは手に余る、と持ち込んだ仕事だ……。
目的地が危険なことは間違いないが、骨拾い自体が危ない可能性も大いにあった。
「ふぅ~ん、ボクも見た目で苦労するからとやかくは言わないけどさナールさん、この
頭を抱えこの世の終わりだと絶望するセリナへ、
「若いけどそいつは優秀だよ。この間も表層の最深部から無事逃げ帰ってきた。それにだ、今回はセリナの
ナールの言葉に
しかし、腰を
「元気だったかい、シズル
けれど、ナールは周囲の雰囲気を気にした風もなく、
「あ~? なんじゃって? もう夕飯かい?」
すると耳に手を当て、見当違いの返答をする彼女へ誰もが思った、あ、この婆さんはダメだ、ボケてる!
「ちょっ、ナールさんこれは
あまりの人選に立ち上がり抗議しようとするジーンだが――、
――首元で感じる冷たい感覚に動きを止め、続く言葉と息を
そのあまりの
彼らの反応をクツクツと面白そうに笑うナール。
「どうだい?
そうして葉巻の紫煙をくゆらせつつ、周囲をジロッと睨み付け、言葉を続ける。
「よ~く
これ以降、人選に対する抗議の声が上がることはなかったのであった……。
★ ★ ★
翌日。骨拾いのジーン、兎人のラビ、赤い鱗の蜥蜴人チェルトラ、
目指すは迷宮の中層、第八十二階層・Eの第一区画である……。
彼らはセリナとシズルを先頭に、まずは
現在、とある事情で
だというのに、先頭を行くセリナとシズルはまるで迷宮生物がどこにいるか分かっているかのように、
その様子に、これが案内人の実力かと、骨拾いの三人はただただ呆然とし、無言であとをついて行くしかなかった。
一時間後、あっという間に表層を抜け、
彼らの目の前に広がるのは
「いや、すげーな! この早さは異常だわ!」
上層へあまりに短時間で到達したため、カッカッカッ! と思わず声を上げチェルトラが笑うと、
「坊や、もう少し声をお落とし? この先もその調子だと、戻れなくなるからねぇ~」
昨日の一件もあり、その笑顔と言葉には妙な迫力があった……。
そうしてセリナとシズルの案内で、最小限の会話を徹底して進むこと数時間。
上層も半分を超えた第六十五層で事件が起きる……。
濃い霧の
「おや……、こいつは
「なにやってんだい! セリナ! 走りな!」
その
彼らを見送りシズルは
「さぁ~て、少しばかり遊ぼうかいね? なに、あの子らが表層に到達するまでさ。さほど時間は取らせないよ……」
★ ★ ★
数時間後、上層から休みなく走り続けたセリナたち四人はようやく迷宮の外へと脱出したのだが、
「おや、遅かったじゃないか」
そこには
「し、シズルさん……」
「いや、なんでいるのさ……」
「マジか! すげーな、婆さん!」
「これは
セリナにジーン、チェルトラ、ラビと驚く
「それで? お前さんたち、夕飯はまだかね?」
どこかとぼけた様子でニヤリと笑って返すシズル。
……to be continued?
ガイド兼メッセンジャーのセリナさんとシズル婆さん~封印迷宮都市シルメイズ物語~ 荒木シオン @SionSumire
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